特許第6585572号(P6585572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585572
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】フラックス組成物及びソルダペースト
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20190919BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20190919BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   B23K35/363 D
   B23K35/363 C
   B23K35/363 E
   !B23K35/26 310A
   !C22C13/00
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-184908(P2016-184908)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-47488(P2018-47488A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】大年 洋司
(72)【発明者】
【氏名】倉田 宏健
(72)【発明者】
【氏名】大野 耐一
(72)【発明者】
【氏名】田中 沙佑美
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−144292(JP,A)
【文献】 ターレン VA−79 パンフレット,2012年 3月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ベース樹脂と、(B)溶剤と、(C)活性剤と、(D)チクソ剤とを含み、
前記溶剤(B)として(B−1)末端にヒドロキシル基を有さないエステル系溶剤を含み、
前記エステル系溶剤(B−1)は、エステル結合を2つ有し、
前記チクソ剤(D)は、(D−1)脂肪酸ポリアマイド構造を有し当該脂肪酸が炭素数12から22の長鎖アルキル基を有するチクソ剤を含み、
前記チクソ剤(D−1)は、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法(加熱炉昇温速度:20℃/分)による揮発最大ピーク値の検出温度が450℃から480℃であり、
前記チクソ剤(D−1)は、ターレンVA−79(共栄社化学(株)製)であることを特徴とするフラックス組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のフラックス組成物と、はんだ合金粉末とを含むことを特徴とするソルダペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラックス組成物及びソルダペーストに関する。
【0002】
従来、基板(プリント配線板やシリコンウエハ等)上に形成される電子回路に電子部品を接合する際には、ソルダペーストを用いたはんだ接合方法が採用されている。そしてこのはんだ接合方法の1つとして、ソルダペーストを基板上に印刷する印刷法が挙げられる。
この印刷法においては一般的にメタルマスクが用いられ、スキージによりメタルマスク開口部にソルダペーストを充填して基板をメタルマスクから離すことにより基板側にソルダペーストが転写される仕組みである。この際、ソルダペーストがスキージやメタルマスクの開口部壁面に付着等し、基板側に転写されるその体積や形状がメタルマスクの設計通りに行われなくなる現象が生じる。
これを防止するため、ソルダペーストにはメタルマスクの設計通りにこれを印刷し得る、所謂印刷性が求められる。特に近年の電子部品端子のファインピッチ化に伴いメタルマスクの開口部も更なる微細化が進んでいるため、このような微細な開口部を有するメタルマスクにも対応し得る印刷性の重要性は高まっている。
【0003】
このような微細な開口部を有するメタルマスクにも対応し得る印刷性を実現する方法として、パラフィンを添加したソルダペースト組成物が提案されている(特許文献1から特許文献3)。
【0004】
しかし基板にはファインピッチ電子部品と従来の大型部品が混在して搭載されることがある。また車載用基板においては、はんだ接合信頼性を確保するためにパターンは微細であってもメタルマスクは薄型ではないものを使用することが少なくない。これらの場合、メタルマスクは一定以上の厚み(例えば150μmから160μm)に設定されることが多い。
このように開口部は微細でメタルマスクが厚くなるとメタルマスクの開口部のアスペクト比が大きくなり、ソルダペーストがメタルマスク開口部壁面に付着し易くなる。例えば0.5mmピッチのQuad Flat Package(QFP)に対応するパターン且つ厚み150μmのメタルマスクでスクリーン印刷を行うと、ソルダペーストの転写形状の異常が起こり、転写率が安定しない傾向にある。上記特許文献1から3には、このようにメタルマスクの開口部が高アスペクト比となるような場合における不具合等とそれを克服する印刷性については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−132395号公報
【特許文献2】特許第4396162号公報
【特許文献3】特開2013−71152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、メタルマスクの厚み及び開口径にかかわらず良好な版離れ性及び印刷性を確保し得るフラックス組成物及びソルダペーストを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るフラックス組成物は、(A)ベース樹脂と、(B)溶剤と、(C)活性剤と、(D)チクソ剤とを含み、前記溶剤(B)として(B−1)末端にヒドロキシル基を有さないエステル系溶剤を含むことをその特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)に記載の構成にあって、前記エステル系溶剤(B−1)は、エステル結合を2つ有することをその特徴とする。
【0009】
(3)上記(1)または(2)に記載の構成にあって、前記チクソ剤(D)は、(D−1)脂肪酸ポリアマイド構造を有し当該脂肪酸が炭素数12から22の長鎖アルキル基を有するチクソ剤を含むことをその特徴とする。
【0010】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1に記載の構成にあって、前記チクソ剤(D−1)は、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法(昇温速度:20℃/分)による揮発ピーク値の検出温度が450℃から480℃であることをその特徴とする。
【0011】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1に記載の構成にあって、前記チクソ剤(D−1)は図1に表すクロマトグラムを示すことをその特徴とする。
【0012】
(6)本発明に係るソルダペーストは、上記(1)から(5)のいずれか1に記載のフラックス組成物と、はんだ合金粉末とを含むことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メタルマスクの厚み及び開口径にかかわらず良好な版離れ性及び印刷性を確保し得るフラックス組成物及びソルダペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るチクソ剤(D−1)であって、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法(昇温速度:20℃/分)による揮発ピーク値の検出温度が450℃から480℃のものに係るクロマトグラムである。
図2】本発明に係る実施例及び比較例に用いるチクソ剤を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法(昇温速度:20℃/分)を用いて測定したクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のフラックス組成物及びソルダペーストの一実施形態を以下に詳述する。なお、本発明がこれらの実施形態に限定されないのはもとよりである。
【0016】
(1)フラックス組成物
本実施形態のフラックス組成物は、(A)ベース樹脂と、(B)溶剤と、(C)活性剤と、(D)チクソ剤とを含む。
【0017】
(A)ベース樹脂
前記ベース樹脂(A)としては、例えばロジン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂、ポリアルキレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、特にロジン系樹脂及びアクリル樹脂が好ましく用いられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0018】
前記ロジン系樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;ロジンを重合化、水添化、不均一化、アクリル化、マレイン化、エステル化若しくはフェノール付加反応等を行ったロジン誘導体;これらロジンまたはロジン誘導体と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等)とをディールス・アルダー反応させて得られる変性ロジン樹脂等が挙げられる。これらの中でも特にフラックス組成物の活性化向上の観点から水添ロジンが好ましく用いられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0019】
また前記ロジン系樹脂の酸価は80mgKOH/gから350mgKOH/gであることが好ましく、その重量平均分子量は250Mwから1,100Mwであることが好ましい。
【0020】
前記アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル酸を含むモノマーを重合することにより生成されるものであればいずれも使用することができる。また当該アクリル樹脂は、1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0021】
また前記アクリル樹脂の酸価は30mgKOH/gから100mgKOH/gであることが好ましく、その重量平均分子量は3,000Mwから30,000Mwであることが好ましい。
【0022】
前記ベース樹脂の配合量は、フラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
また前記ベース樹脂の酸価は30mgKOH/gから350mgKOH/gであることが好ましい。
【0024】
前記ベース樹脂としてロジン系樹脂を用いる場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
前記ベース樹脂としてアクリル樹脂を用いる場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
また前記アクリル樹脂と前記ロジン系樹脂とを併用する場合、その配合比率はロジン系樹脂:アクリル樹脂の比率で10:90から50:50であることが好ましく、15:85から40:60であることがより好ましい。
【0027】
(B)溶剤
前記溶剤(B)としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルジグリコール、(2−エチルヘキシル)ジグリコール、フェニルグリコール、ブチルカルビトール、オクタンジオール、αテルピネオール、βテルピネオール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビスイソプロピル等を使用することができる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0028】
本実施形態のフラックス組成物においては、前記溶剤(B)として(B−1)末端にヒドロキシル基を有さないエステル系溶剤を含むことが好ましい。
フラックス組成物に用いられる溶剤としては、所謂グリコール系の溶剤が用いられるのが一般的である。しかし本実施形態のフラックス組成物は、前記溶剤(B)として末端にヒドロキシル基を有さないエステル系溶剤(B−1)を含むことにより、メタルマスクの開口部が高アスペクト比となるような場合においても安定した版離れ性及び印刷性を確保することができる。
【0029】
前記エステル系溶剤(B−1)としては、例えばコハク酸ジイソブチル、コハク酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、デカン二酸ジイソプロピル、n−オクタン酸アミル等が挙げられる。
これらの中でもエステル結合を2つ有するエステル系溶剤を用いるとフラックス組成物及びソルダペーストの印刷性をより向上することができる。またこれらの中でも脂肪酸ジカルボン酸ジエステルが好ましく、デカン二酸ジイソプロピルが特に好ましく用いられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0030】
前記溶剤(B)の配合量は、フラックス組成物全量に対して10質量%以上65質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は20質量%以上50質量%以下であり、特に好ましい配合量は25質量%以上45質量%以下である。
また前記エステル系溶剤(B−1)の配合量は、前記溶剤(B)全量に対して20質量%から100質量%であることが好ましい。
【0031】
(C)活性剤
前記活性剤(C)としては、例えば有機酸、有機ハロゲン化合物、有機酸塩、有機アミン塩等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。なお、活性剤(C)として臭素および塩素が単独で900ppm以下のものが好ましく用いられる。
【0032】
前記有機酸としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸、その他の有機酸等が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、プチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等が挙げられる。
また前記ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等が挙げられる。
更にその他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等が挙げられる。
これらの中でも特にソルダペーストの良好な濡れ性、加熱ダレ性を得る目的で、ピコリン酸が好ましく用いられる。
なお、これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0033】
前記有機ハロゲン化合物としては、例えばジブロモブテンジオール、ジブロモコハク酸、5−ブロモ安息香酸、5−ブロモニコチン酸、5−ブロモフタル酸等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
前記活性剤(C)の配合量は、フラックス組成物全量に対して1質量%から20質量%であることが好ましい。より好ましい前記配合量は1質量%から15質量%であり、特に好ましい前記配合量は1質量%から10質量%である。
【0035】
(D)チクソ剤
前記チクソ剤(D)としては、例えば水素添加ヒマシ油、飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド類、オキシ脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール類等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0036】
本実施形態のフラックス組成物には、チクソ剤(D)として(D−1)脂肪酸ポリアマイド構造を有し当該脂肪酸が炭素数12から22の長鎖アルキル基を有するチクソ剤を含めることが好ましい。なお当該長鎖アルキル基は直鎖状のもの、分岐状のもののいずれも用いることができる。また前記長鎖アルキル基は繰り返しにより炭素−炭素結合で長鎖に繋がったものでも良い。
【0037】
前記脂肪酸を構成する炭素数12から22の長鎖のアルキル基は疎水性が高く、且つ当該脂肪酸はアミド結合により高重合化されて脂肪酸ポリアマイド構造となっているため、より高い疎水性を有する。そして前記エステル系溶剤(B−1)もヒドロキシル基を有さない、即ち疎水性の性質を有しているため、両者は親和力があるために疎水結合し易いと考えられる。そのためこれらを併用することにより、メタルマスクの開口部からの版離れ性が向上するため、当該開口部が高アスペクト比となるような場合においても安定した印刷性及び転写率を確保することができると考えられる。
【0038】
また前記エステル系溶剤(B−1)及びチクソ剤(D−1)をフラックス組成物に併用することにより、これを用いて形成されるフラックス残渣と空気の界面に疎水性の膜を形成することができ、フラックス残渣の空気中の水分の吸湿を抑制し、マイグレーションの発生をも抑制し得る。
【0039】
なお、当該チクソ剤(D−1)は、ガスクロマトグラフ質量分析法(昇温速度:20℃/分)による揮発ピーク値の検出温度が450℃から480℃であることが好ましい。
【0040】
なお本実施形態において、前記チクソ剤(D−1)の揮発ピーク値は、以下の測定条件にて、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて測定される。
(試料)
前記チクソ剤(D−1) 0.3mg
(熱分解)
熱分解装置:マルチショットパイロライザー EGA/PY−3030D(フロンティア・ラボ社製)
熱分析条件:(発生ガス分析)
熱分解条件:炉温度40〜700℃(1分間保持)、インターフェース温度320℃
(ガスクロマトグラフ質量分析)
ガスクロマトグラフ質量分析装置:JMS−Q1050GC(日本電子(株)製)
ガスクロマトグラフ条件
キャピラリーチューブ:Ultra ALLOY不活性化金属キャピラリーチューブ 型番 UADTM−2.5N(フロンティア・ラボ社製)
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:320℃
カラム温度:350℃(34分間保持)
スプリット比:1/50
質量分析条件
イオン源温度 300℃
GCインターフェース温度 320℃
検出器電圧 −1000volt
イオン化電流 50μA
イオン化エネルギー 70eV
サイクルタイム 300msec
質量範囲 m/z 10〜500
【0041】
前記チクソ剤(D−1)としては、例えばターレンVAシリーズ(共栄社化学(株)製)が好ましく用いられる。
また上記測定条件下で測定した場合のガスクロマトグラフが図1に示すものとなるものが、前記チクソ剤(D−1)として特に好ましく用いられる。なお、これらは1種単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0042】
前記チクソ剤(D)の配合量は、フラックス組成物全量に対して1質量%から10質量%が好ましい。更に好ましいその配合量は、フラックス組成物全量に対して2質量%から9質量%である。
また前記チクソ剤(D−1)の配合量は、フラックス組成物全量に対して1質量%から12質量%が好ましい。更に好ましいその配合量は、フラックス組成物全量に対して2質量%から9質量%である。
【0043】
酸化防止剤
本実施形態のフラックス組成物には、はんだ合金粉末の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。このような酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。このヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えばイルガノックス245(BASFジャパン(株)製)等が挙げられる。またこれらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
【0044】
前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス組成物全量に対して0.5質量%から10質量%程度であることが好ましい。
【0045】
また本実施形態のフラックス組成物には、消泡剤、防錆剤、界面活性剤、熱硬化剤、つや消し剤等の添加剤を配合することができる。当該添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して10質量%以下、特に5質量%以下であることが好ましい。
【0046】
(2)ソルダペースト
本実施形態のソルダペーストは、上記フラックス組成物とはんだ合金粉末とを混合することにより得られる。
前記はんだ合金粉末としては、例えば錫および鉛を含む合金、錫および鉛並びに銀、ビスマスおよびインジウムの少なくとも1種を含む合金、錫および銀を含む合金、錫および銅を含む合金、錫、銀および銅を含む合金、錫およびビスマスを含む合金等を用いることができる。またこれら以外にも、例えば錫、鉛、銀、ビスマス、インジウム、銅、亜鉛、ガリウム、アンチモン、金、パラジウム、ゲルマニウム、ニッケル、クロム、アルミニウム、リン等を適宜組合せたはんだ合金粉末を使用することができる。なお、上記に挙げた元素以外であってもその組合せに使用することは可能である。
【0047】
前記はんだ合金粉末の配合量は、ソルダペースト全量に対して65質量%から95質量%であることが好ましい。より好ましい配合量は85質量%から93質量%であり、特に好ましい配合量は88質量%から91質量%である。
前記はんだ合金粉末の配合量が65質量%未満の場合には、得られるソルダペーストを用いた場合に充分なはんだ接合が形成されにくくなる傾向にある。他方はんだ合金粉末の含有量が95質量%を超える場合にはバインダとしてのフラックス組成物が足りないため、フラックス組成物とはんだ合金粉末とを混合しにくくなる傾向にある。
【0048】
更に前記はんだ合金粉末の平均粒子径は、20μmから38μm以下であることが好ましい。なお、当該平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定し得る。
【0049】
本実施形態のソルダペーストは、上記フラックス組成物を使用することにより、メタルマスクの開口部が高アスペクト比となるような場合においても安定した版離れ性及び印刷性を確保することができる。
【0050】
なお、上記においてはフラックス組成物をソルダペーストに使用する実施形態について説明したが、本実施形態におけるフラックス組成物の用途はこれに限定されず、例えばはんだボール用ボンドフラックス等の他のフラックス用途にも種々適用可能である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
表1に記載の各成分を混練し、各フラックス組成物を得た。そしてこれら各フラックス組成物11質量%と、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金粉末(平均粒径28μm)89質量%とを混合し、実施例1から7、参考例8、9及び比較例1から4に係る各ソルダペーストを作製した。
なお、特に記載のない限り、表1に記載の数値は質量%を意味するものとする。
【0053】
また実施例1から7、参考例8、9及び比較例1から4に用いたチクソ剤を以下の測定条件にて熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法を用いて測定した。そのガスクロマトグラフを図2に示す。
(試料)
0.3mg
(熱分解)
熱分解装置:マルチショットパイロライザー EGA/PY−3030D(フロンティア・ラボ社製)
熱分析条件:(発生ガス分析)
熱分解条件:炉温度40〜700℃(1分間保持)、インターフェース温度320℃
(ガスクロマトグラフ質量分析)
ガスクロマトグラフ質量分析装置:JMS−Q1050GC(日本電子(株)製)
ガスクロマトグラフ条件
キャピラリーチューブ:Ultra ALLOY不活性化金属キャピラリーチューブ 型番 UADTM−2.5N(フロンティア・ラボ社製)
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:320℃
カラム温度:350℃(34分間保持)
スプリット比:1/50
質量分析条件
イオン源温度 300℃
GCインターフェース温度 320℃
検出器電圧 −1000volt
イオン化電流 50μA
イオン化エネルギー 70eV
サイクルタイム 300msec
質量範囲 m/z 10〜500
【0054】
【表1】
【0055】
<印刷性(1)>
ガラスエポキシ基板と100ピン0.5mmピッチのQFP(パッケージサイズ:14mm×14mm×1.0mm)を用意した。前記ガラスエポキシ基板に前記QFPに対応するソルダレジストと電極(210μm×1,100μm)を設け、次いでこれと同じパターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用い、各ソルダペーストを、印刷機(製品名:SP60P−L、パナソニック(株)製)を用い、1種につき先ずは前記基板に捨て刷りとして2枚印刷した後、6枚の前記基板に連続で印刷し、各試験基板を作製した。なお、印刷時の条件はスキージ速度:30mm/秒、版離れ速度:1.0mm/秒とした。
各試験基板上の印刷パターンについて画像検査機(製品名:aspire2、(株)コーヨンテクノロジー製)を用いて100ピン中の差分高さ(印刷形状の頂点の高さから平均高さを減じた値。以下同じ。)が180μm以上のツノの発生個数を測定した。その結果を表2に表す。
【0056】
<印刷性(2)>
印刷性(1)で作製した各試験基板につき、パターンの印刷性(にじみの発生の有無等)を画像検査機(製品名:aspire2、(株)コーヨンテクノロジー製)を用いて以下の基準にて評価した。その結果を表2に表す。
◎:非常に良好
○:良好
△:普通
×:悪い
【0057】
【表2】
【0058】
以上に示す通り、実施例1から7、参考例8、9に係るソルダペーストは、フラックス組成物に末端にヒドロキシル基を有さないエステル系溶剤(B−1)を含むことにより、微細なパターンを有する150μmのソルダマスクを使用した場合であっても安定した版離れ性及び印刷性を確保し得る。特にフラックス組成物にエステル結合を2つ有する前記エステル系溶剤(B−1)を含み、チクソ剤(D)として脂肪酸ポリアマイド構造を有し当該脂肪酸が炭素数12から22の長鎖アルキル基を有するチクソ剤(D−1)を含む実施例1から7のソルダペーストは特に優れた版離れ性及び印刷性を奏する。
図1
図2