(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図17に示す冷却システムにおいて、キャピラリチューブ(C.Tube)を上述した電子膨張弁に置き換えた場合、きめ細やかな温度制御が可能になり、適正な温度管理をすることが可能になるが、一つの冷却システムに二個の電子膨張弁を使用することになり、電子膨張弁を設置するスペースが必要になる。さらに電子膨張弁はコストが嵩むという問題もある。また、二つの電子膨張弁を作動させるためには、その分の電力も必要となる。
【0007】
本発明の目的は、冷却システムにおいてキャピラリチューブによる室内温度制御に比べ、より精度良く温度制御ができ、且つ膨張弁の設置スペースを広げず、消費電力を抑えることができる電動弁、および電動弁を用いた冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動弁は、
弁座面と対向配置された単一の弁体を軸回りに回転させることによって絞り流量を制御する電動弁であって、
前記弁座面には、前記弁体の回転方向と同方向に円弧状に延在し、溝幅が漸次変化する第1凹溝、および第2凹溝が形成され、
前記弁体の前記弁座面側には、第1入口ポートと前記第1凹溝に連通する第1出口ポートとを前記第1凹溝を介して連通させる主弁部が配置され、
前記主弁部のシール面には、前記弁体の回転方向と同方向に円弧状に延在し、第2入口ポートと前記第2凹溝に連通する第2出口ポートとを連通する連通溝が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このように、弁座面に第1凹溝と第2凹溝を形成し、弁体に第1入口ポートと第1出口ポートを第1凹溝を介して連通させる主弁部、第2入口ポートと第2出口ポートを第2凹溝を介して連通させる連通溝を設けることにより、一つの電動弁で二つの異なる流路の流量を制御することができる。このため、冷却システムの省スペース化を図ることができる。また、弁座面に絞り流量を可変設定する凹溝を形成することにより、キャピラリチューブによる室内温度制御(
図17参照)に比べ、より精度よく温度制御を行うことができる。
【0010】
また、本発明の電動弁は、
前記主弁部が、
前記第1凹溝を介して前記第1入口ポートと前記第1出口ポートとを連通させるために外径に形成された切欠き、
前記第1凹溝を介して前記第1入口ポートと前記第1出口ポートとを連通させるために中央に設けられた空間
の少なくとも一方を有することを特徴とする。
これにより、第1入口ポートと第1出口ポートを的確に連通させることができる。
【0011】
また、本発明の電動弁は、
第1凹溝の溝幅と、第2凹溝の溝幅とが、同じ方向に向かって漸次変化することを特徴とする。
これにより、二つの流量特性を同方向にすることができ、ステッピングモータに印加するパルスを上昇させた場合に、双方の流量を増加させることができる。
【0012】
また、本発明の電動弁は、
第1凹溝の溝幅と、第2凹溝の溝幅とが、互いに反対方向に向かって漸次変化することを特徴とする。
これにより、一方の冷却器に冷媒を供給する際に、他方の冷却器への冷媒供給を止めたり制限することが可能となり、三方弁を使用しない冷却システムを実現することができるため、更なる省スペース化とコスト面の改善を図ることができる。また、冷蔵室冷却器、冷凍室冷却器のいずれを主要として冷却する場合にも、主要としていない他方の冷却器に常に少量の冷媒が供給されるため、他方の冷却器の温度上昇を抑制することができる。
【0013】
また、本発明の電動弁は、
第1凹溝と第2凹溝とが、同一円周上に形成されていることを特徴とする。
これにより、凹溝の配置をコンパクトにまとめることができる。
【0014】
また、本発明の電動弁は、
第1凹溝と第2凹溝とが、それぞれ異なる径の円周上に形成されていることを特徴とする。
これにより、各凹溝の長さを長くすることができる。よって、流量を制御できるパルスの範囲を広くすることができ、精密な温度制御を行うことができる。
【0015】
また、本発明の冷却システムは、上述の電動弁を用いたことを特徴とする。
このように、冷却システムに上述した電動弁を用いることにより、複数の電子膨張弁等を用いる必要がなくなるため、冷却システムの省スペース化を図ることができる。また、冷却システムに配置する電子膨張弁が一つになることにより、消費電力を節約できる他、部品点数が削減できるため低コストの冷却システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発明によれば、精度良く温度制御ができ、且つ膨張弁の設置スペースを広げず、消費電力を抑えることができる電動弁、および電動弁を用いた消費電力が少なく安価な冷却システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、第1の実施の形態に係る電動弁について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る電動弁の断面図であり、
図2は、
図1に示す電動弁の分解斜視図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは
図1に示された電動弁10を基準として規定したものである。
【0019】
図1に示すように、電動弁10は、内部に後述するロータ31などの駆動機構が収容され、円盤形状の底蓋部材11と、底蓋部材11上に気密に溶接されたケース12とを有し、ケース12の内側には、気密室構造の弁室13を形成している。また、ケース12の外周には後述するステータ組立体(不図示)が装着される。
【0020】
図2に示すように、ケース12の上部ドーム部12Bは、ロータ収容円筒部12Aと上部ドーム部12Bの中央部に形成された軸受係合凹部12Cとの同芯度を確実に得るために、ロータ収容円筒部12Aと一体成形してある。なお、底蓋部材11と接合されるケース12の下方開口部12Dは、ロータ収容円筒部12Aの外径よりも大径に設定される。
【0021】
底蓋部材11の上面にはケース12の下方開口部12Dの内径にほぼ等しい外径の段差部11Aが形成されており、この段差部11Aにケース12の下方開口部12Dが嵌合している(
図1参照)。この嵌合によって底蓋部材11とケース12との同芯度を得ることができる。
【0022】
底蓋部材11とケース12との溶接は、段差部11Aと下方開口部12Dとの嵌合部で行われる。これにより、溶接時の熱影響の低減と弁室13へのスパッタの飛散等を防止できる。
【0023】
ここで、底蓋部材11には、管継手挿入用のろう付け代を確保した複数の貫通孔11Bが形成されている。この貫通孔11Bには、管継手14aの上端部が挿入される貫通孔11Ba、管継手14bの上端部が挿入される貫通孔11Bb、管継手14cの上端部が挿入される貫通孔11Bc、および管継手14dの上端部が挿入される貫通孔11Bdがそれぞれ存在する。また、4本の管継手14は、各々ろう付けによって、後述の接合により一体化された底蓋部材11と中間板17とに固定され、底蓋部材11の下方に延びている。
【0024】
なお、底蓋部材11の上面には、管継手14および中間板17のろう付けのろう材が、底蓋部材11とケース12との溶接面まで流れることを防止するために、段差部11Aより少し小さい径の円環U溝11Hが形成されている。
【0025】
底蓋部材11の上面には中間板17がろう付けによって固定されている。中間板17の中心部には、軸支持孔17Fが形成されている。中間板17の下面側には、軸支持孔17F周りの環状凸部17Aがあり、この環状凸部17Aが底蓋部材11の中心部に中心凹部11Eに嵌合している。また、中間板17には底蓋部材11に位置決め凸部11Fに嵌合する位置決め孔17Bが形成されている。この2箇所の嵌合によって中間板17と底蓋部材11とが同芯・位置合わせされる。
【0026】
底蓋部材11の中心凹部11Eは余裕のある深さを有し、ろう材溜まり部として作用し、ろう材が軸支持孔17Fへ流れるのを防止する。また、中心凹部11Eは後述の中心軸21の軸長のばらつきの逃げ部としても作用する。
【0027】
中間板17には貫通孔(第1入口ポート)11Baを弁室13に開放する切欠部17Cが形成されている。その他、中間板17には、貫通孔11Bに連通する長円形の連絡開口17Dが複数形成されている。具体的には、貫通孔(第1出口ポート)11Bbに連通する連絡開口17Db、貫通孔(第2入口ポート)11Bcに連通する連絡開口17Dc、貫通孔(第2出口ポート)11Bdに連通する連絡開口17Ddが形成されている。
【0028】
中間板17には後述の弁体20の第1ストッパ片20Fが当接する基点出し用のストッパ片17Gが折り曲げ形成されている。ストッパ片17Gにはストッパ片17Gを取り囲むようにOリング18が取り付けられている。
【0029】
中間板17の上面には弁座シート19が取り付けられている。弁座シート19は、平らなステンレス板を所定形状に両面エッチング処理したものである。弁座シート19は、両面エッチングでの端部エッジの除去と弁座面19Gの平滑度・面粗度を向上させ、弁体20の摺動潤滑性を得る目的で、厳選したバレル処理が行われている。
【0030】
弁座シート19には、中間板17の二つの位置決め凸部17H、17Jの各々に嵌合する位置決め孔19A、19B、それぞれの連絡開口17Dに連通する複数の全開ポート19C、および中心軸21が貫通する中心孔19Dが貫通形成されている。ここで、全開ポート19Cには、連絡開口17Dbに連通する全開ポート19Cb、連絡開口17Dcに連通する全開ポート19Cc、連絡開口17Ddに連通する全開ポート19Cdが存在する。
【0031】
弁座シート19の上面の弁座面19Gには絞り流量を可変設定する凹溝16Aが形成されている。この凹溝16Aには、第1凹溝16A1と第2凹溝16A2が存在し、それぞれ、
図3に示すように、後述の弁体20の回転方向と同方向に円弧状に延在し、均一深さで延在方向に溝幅を漸次変化させている。第1凹溝16A1は、一端の最大溝幅部16B1で全開ポート19Cbと連通し、他端に最小溝幅部16B2が形成されている。同様に、第2凹溝16A2は、一端の最大溝幅部16B3で全開ポート19Cdと連通し、他端に最小溝幅部16B4が形成されている。なお、第1凹溝16A1、第2凹溝16A2のいずれも、
図3の時計廻り方向に溝幅が漸次狭くなるように形成されている。
【0032】
また、弁座シート19は、位置決め孔19A、19Bが中間板17の位置決め凸部17H、17Jに各々嵌合することにより、位置・角度出しが行われる。弁座シート19の中間板17への接合は、接着・シール剤、ろう付け、ハンダ付け、熱圧着や溶接等の方法がある。
【0033】
また、弁座シート19には、中間板17の切欠部17Cと同様に、貫通孔(第1入口ポート)11Baを弁室13に開放する切欠部19Fが形成されている。
弁体20は、弁座面19Gと対向配置された、摺動、耐冷媒性を考慮した樹脂材料による成形品である。
図4は、弁体20を示す斜視図である。また、
図5(a)は、弁体20を上方から視た図であり、
図5(b)は、弁体20を下方から視た図である。
【0034】
図4、5に示すように、下底面にC字状の主弁部20Aが突出して形成されている。この主弁部20Aは、上方から弁座シート19上の主弁部20Aを視た場合において、凹溝16Aと全開ポート19Cがすべて主弁部20Aの外径の内側に位置するように構成され(
図7(a)参照)、外径に切欠20A2を備え、中央に略円筒状の空間20Pを備えている。また、主弁部20Aの底部には、弁座面19Gと摺接するシール面20Bが形成され、シール面20Bには、弁体20の回転方向と同方向に均一深さ、同幅で延在する連通溝20A1が形成されている。連通溝20A1は、後述するように、弁体20の回転角度が所定の範囲にある場合に全開ポート19Ccと全開ポート19Cdを連通させる。
【0035】
弁体20の中心部には中心軸21が回転可能に貫通する中心孔20Dが貫通成形されており、中心軸21によって回転中心を設定され、中心軸21に案内されて中心軸線周りに回転する。
【0036】
弁体20には、径方向外方に突き出た二つの突出片20H、20Jが周方向に小さい間隔をおいて一体成形されている。突出片20Hは第1ストッパ片20Fと同じ周方向位置にある。弁体20は、二つの突出片20Hと20Jとの間に、ステッピングモータのロータ31(
図2参照)に設けられている突出片31Aが係合することにより、回転方向の位置出し状態で、ロータ31とトルク伝達関係に連結され、これにより弁体20とロータ31とが同期回転する。
【0037】
弁体20の第1ストッパ片20Fは、ロータ31の基点方向回転によって基点出し用のストッパ片17Gに被せられたOリング18と当接し(
図7(a)参照)、この当接により基点出しを行う。また、弁体20には、基点方向回転を終了させる第2ストッパ片20Gが形成されており、第2ストッパ片20GがOリング18と当接することにより、ロータ31、弁体20の回転が終了する(
図7(e)参照)。
【0038】
また、弁体20は押さえばね23の組立を容易にするためのテーパガイド軸状部20Kを有している。
中心軸21(
図2参照)は、下端21Aを軸支持孔17Aとの嵌合によって中間板17により回転可能に支持されている。中心軸21の上端21Bは軸受部材22の軸受孔22Aに回転可能に嵌合している。軸受部材22は、上部中央突起22Bによってケース12の軸受係合凹部12Cに係合している(
図1参照)。
【0039】
弁室13内には、ロータ31が回転可能に設けられている。ロータ31は外周部31Bを多極着磁されたプラスチックスマグネットであり、前述したように、突出片31Aによって弁体20とトルク伝達関係に連結され、弁体20を回転駆動する。
【0040】
ロータ31のボス部31Cには中心軸21が貫通する貫通孔31Dが成形され、外周部31Bとボス部31Cを接続するリブ形状部31Eには均圧連通孔31Fが設けられている。貫通孔31Dの軸方向長さは、がたつきや傾きなどのロータ31の回転ぶれを防止するために、可及的に長くされている。均圧連通孔31Fは、少なくとも一つ設けられていればよく、ロータ31の上下の圧力バランスを取る以外に、冷凍機油や液冷媒の上部堆積を防止する機能を有する。
【0041】
ロータ31のボス部31Cの下端部と弁体20の上面部20Eの内側に形成された段差20Lとの間には、圧縮コイルばねによる押さえばね23が挟まれている。押さえばね23は、弁体20のシール面20Bを弁座シート19の弁座面19Gに押し付けて低差圧状態での弁シールの安定性を確保している。押さえばね23は、同時に、ロータ31、軸受部材22を上方へ付勢し、軸受部材22の上部中央突起22Bをケース12の軸受係合凹部12Cに押し付けている。
【0042】
なお、ここでは図示していないが、ケース12の外周部には、ステッピングモータのステータ組立体が位置決め固定されている。ステータ組立体は、上下2段のステータコイル、複数個の磁極歯、電気コネクタ部等を有している。
【0043】
図6は、第1の実施の形態に係る電動弁10を使用した冷却システムの冷媒回路を示す図である。
図6に示す冷却システムの動作は、以下に説明するように行われる。
まず、圧縮機41から吐出された冷媒が凝縮器42に流入すると、冷媒の熱が室内に放出されて冷媒が凝縮される。凝縮器42を通過した冷媒は、三方弁43でその流路を分岐され、管継手14a、管継手14cに送り込まれる。
【0044】
管継手14aに送り込まれた冷媒は、冷却システムの膨張弁として作用する電動弁10内で弁体20の分割回転駆動によって流量を制御された後、冷蔵室用冷却器44に供給される(以下、この流路を流路ABという)。同様に、管継手14cに送り込まれた冷媒は、電動弁10内で弁体20の分割回転駆動によって流量を制御された後、冷凍室用冷却器45に供給される(以下、この流路を流路CDという)。なお、冷蔵用経路、冷凍用経路の詳細や、弁体20の分割回転駆動による流量の制御については、後に詳しく説明する。
【0045】
冷蔵室用冷却器44、冷凍室用冷却器45に供給された冷媒は、再び圧縮機41に吸入される。圧縮機41は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。以下、同様の動作が繰り返されて家庭用冷蔵庫における冷蔵・冷凍が行われる。
【0046】
次に、上述の冷却システムにおいて弁体20を分割回転駆動させた場合の流量特性の変化について、
図7〜9を参照しながら説明する。
図7は、ステッピングモータの分割回転駆動によって回転する弁体20を上方から視た図であり、
図8は、主弁部20A(弁体20)の回転角度によって変化する冷媒の流れを示している。また、
図9は、電動弁の流量特性を示すグラフである。
図9において、グラフの横軸は、ステッピングモータに印加するパルスの印加量を表し、グラフの縦軸は、流量を表している。
【0047】
まず、ステッピングモータにパルスが印加されていない0パルス状態において、弁体20は、
図7(a)に示すように、弁体20の第1ストッパ片20FがOリング18に当接した基点位置にある。このように、弁体20が基点位置にある場合、凹溝16A、全開ポート19Cのすべてが主弁部20Aによって閉塞され、流量が0となった完全弁閉状態が実現される(
図9のグラフ原点参照)。
【0048】
具体的には、三方弁43で分岐されて管継手14aを通過し、貫通孔11Baから弁室13に流入した冷媒は、
図8(a)に示すように、主弁部20Aに形成されたC字の切欠20A2に到達する。ここで、第1凹溝16A1は、主弁部20Aによって完全に閉塞されているため、切欠20A2に到達した冷媒は第1凹溝16A1を介して全開ポート19Cbに流出することが阻止され、流路ABが遮断される。
【0049】
同様に、三方弁43で分岐されて管継手14bを通過した冷媒は、全開ポート19Ccから連通溝20A1に流入する。ここで、0パルス状態においては、連通溝20A1が第2凹溝16A2と重複した位置にないため、冷媒が連通溝20A1から第2凹溝16A2を介して全開ポート19Cdに流出することが阻止され、流路CDが遮断される。
【0050】
なお、流路AB、流路CDがそれぞれ遮断された状態は、
図7(b)に示すように、ステッピングモータに2パルスが印加されるまで維持される。
ステッピングモータに印加される電圧が2パルスを超えると、第1凹溝16A1と切欠20A2、第2凹溝16A2と連通溝20A1がそれぞれ一部重複することにより、第1凹溝16A1、第2凹溝16A2に冷媒が流入し、流路AB、流路CDが開通する。以降、流路AB、流路CDの流量は、パルスの印加量に伴ってリニア状に増加する(リニア範囲)。これは、上述したように、第1凹溝16A1、第2凹溝16A2が、いずれも
図3の時計廻りに向けて溝幅が漸次狭くなるように形成されているためである。
【0051】
図7(c)は、11パルスの電圧がステッピングモータに印加された状態における弁体20を示す図である。この状態において、貫通孔11Baから弁室13に流入した冷媒は、
図8(b)に示すように、切欠20A2から第1凹溝16A1を介して全開ポート19Cbに流出する。また、全開ポート19Ccから供給された冷媒は、連通溝20A1、第2凹溝16A2を介して全開ポート19Cdに流出する。
【0052】
ここで、電動弁10における冷媒の流量は、凹溝16Aにおいて冷媒の流路を構成する部分の最小断面積によって決定される。たとえば、流路ABの流量は、切欠20A2の一端部20Xが位置する部分の直下の第1凹溝16A1の断面積によって決定され、流路CDの流量は、連通溝20A1の一端部20Yが位置する部分の直下の第2凹溝16A2の断面積によって決定される。
【0053】
したがって、11パルスの電圧がステッピングモータに印加された状態において、切欠20A2の一端部20X、連通溝20A1の一端部20Yは、それぞれ凹溝16Aの長さ方向の中央に位置することから、この時点における流路AB、流路CDの流量は、それぞれ全開状態(
図7(d)参照)の流量の約50%となる。
【0054】
ステッピングモータに印加される電圧が20パルスになると、
図7(d)に示すように、切欠20A2の一端部20X、連通溝20A1の一端部20Yがそれぞれ全開ポート19Cb、19Cdの手前に位置し、流路ABの流量がリニア範囲の最大値になると共に、流路CDの流量が分割回転範囲全体における最大値となる(
図9参照)。
【0055】
20パルス以上の電圧がステッピングモータに印加されると、リニア範囲が終了して流路AB、流路CDの流量が急激に変化する。ここで、
図7(e)は、23パルスの電圧がステッピングモータに印加された状態を示す図である。この状態において、
図8(c)に示すように、貫通孔11Baから弁室13に流入した冷媒は、第1凹溝16A1を介さず切欠20A2から直接全開ポート19Cbに排出される。一方、全開ポート19Cc上に連通溝20A1が位置しなくなるため、全開ポート19Ccは主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞され、流路CDの流量は0になる。なお、23パルスの電圧がステッピングモータに印加された時点で、第2ストッパ片20GがOリング18と当接し、ロータ31、弁体20の回転が終了する。
【0056】
この第1の実施の形態の電動弁10によれば、弁座面19Gに第1凹溝16A1と第2凹溝16A2を形成し、弁体20に貫通孔(第1入口ポート)11Baと貫通孔(第1出口ポート)11Bbを第1凹溝16A1を介して連通させる切欠20A2と、貫通孔(第2入口ポート)11Bcと貫通孔(第2出口ポート)11Bdを第2凹溝16A2を介して連通させる連通溝20A1を設けることにより、一つの電動弁10で二つの異なる流路の流量を制御することができる。
【0057】
また、第1の実施の形態の冷却システムによれば、一つの電動弁10で冷蔵室用冷却器44、冷凍室用冷却器45に供給される冷媒の流量を制御することができるため、複数の電子膨張弁等を配置する必要がなく、冷却システムの省スペース化を図ることができる。また、コントロールバルブを一つにすることにより、消費電力を節約することができる上、部品点数を減らすことができるため、安価な冷却システムを提供することができる。また、弁座面19Gに絞り流量を可変設定する凹溝16Aを形成することにより、キャピラリチューブによる室内温度制御(
図17参照)に比べ、より精度よく温度制御を行うことができる。
【0058】
次に、第2の実施の形態に係る電動弁について説明する。第2の実施の形態では、第1の実施の形態と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については説明を省略する。ここで、
図10は、第2の実施の形態に係る冷却システムの冷媒回路を示す図である。また、
図11は、第2の実施の形態に係る電動弁においてステッピングモータの分割回転運動によって回転する弁体を上方から視た図である。
【0059】
図11(a)に示すように、第2の実施の形態における第1凹溝16A1、第2凹溝16A2、連通溝20A1は、それぞれ第1の実施の形態における位置(
図7(a)参照)を略90度時計回りに回転させた位置に配置されている。また、第1凹溝16A1は、第1の実施の形態とは反対方向、すなわち、反時計廻りに向けて溝幅が漸次狭くなるように形成されている。
【0060】
次に、第2の実施の形態の冷却システムにおいて、弁体20を分割回転駆動させた場合の流量特性の変化について説明する。まず、
図11(a)に示すように、0パルス状態における弁体20が基点位置にある場合、切欠20A2の一端部20Xが全開ポート19Cb上に位置し、全開ポート19Cbが半開状態にある。この場合、
図12(a)に示すように、貫通孔11BaからC字の切欠20A2に流入した冷媒は、第1凹溝16A1によって流量を絞られることなく全開ポート19Cbに排出される。このため、
図13に示すように、流路ABの流量は最大となる。
【0061】
一方、連通溝20A1の一端部20Yは、第2凹溝16A2の位置と重複していないため、第2凹溝16A2は主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞される。このため、全開ポート19Ccから連通溝20A1に流入した冷媒は、全開ポート19Cdから排出されることが阻止される。よって、0パルス状態における流路CDの流量は0となる。
【0062】
ステッピングモータに印加される電圧が2パルスになると、
図11(b)に示すように、切欠20A2の一端部20Xが第1凹溝16A1上に移動し、第1凹溝16A1による流量制御が開始される。すなわち、
図13に示すように、流路ABの流量特性がリニア範囲に移行する。このため、この時点における流路ABの流量は、リニア範囲における最大流量となる。なお、全開ポート19Cdは、未だ主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞された状態にあるため、流路CDの流量は0のままである。
【0063】
なお、ステッピングモータに印加される電圧が2パルスを超えてしばらくすると、連通溝20A1の一端部20Yもまた第2凹溝16A2上に位置するため、流路CDの流量特性もリニア範囲に移行する。
【0064】
ステッピングモータに印加される電圧が11パルスになると、
図11(c)に示すように、切欠20A2の一端部20X、連通溝20A1の一端部20Yは、それぞれ凹溝16Aの長さ方向の中央に位置する。この時点における流路AB、流路CDの流量は、それぞれ全開状態の流量の約50%となる。
図12(b)は、この時点における冷媒の流れを示す図である。
図12(b)に示すように、貫通孔11Baから切欠20A2に流入した冷媒は、第1凹溝16A1を介して全開ポート19Cbに流出する。また、全開ポート19Ccから供給された冷媒は、連通溝20A1、第2凹溝16A2を介して全開ポート19Cdから流出する。
【0065】
ステッピングモータに印加される電圧が20パルスになると、
図11(d)に示すように、第1凹溝16A1が主弁部20Aのシール面20Bによって覆われ、その後、流路ABの流量特性においてリニア範囲が終了する。一方、連通溝20A1の一端部20Yは、全開ポート19Cd上に位置し、流路CDの流量はリニア範囲の最大値になる。
【0066】
ステッピングモータに印加される電圧が20パルスになると、
図11(e)、
図12(c)に示すように、第1凹溝16A1が主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞されて全開ポート19Cbから冷媒を排出することができなくなり、流路ABの流量は0となる。また、全開ポート19Ccも主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞されるため、流路CDも遮断され、流路CDの流量も0となる。
【0067】
この第2の実施の形態の冷却システムによれば、第1凹溝16A1と第2凹溝16A2の溝幅が反対方向に狭まるようにすることにより、電動弁の流路ABと流路CDの流量特性が逆傾向になるため、
図10に示すように、一方の冷却器に冷媒を供給する際に、他方の冷却器への冷媒供給を止めたり制限することが可能となり、三方弁を削除することが可能となる。これにより、第1の実施の形態の冷却システムよりも更に設置スペースの省スペース化を図ることができるとともに、コスト面の改善を図ることができる。
【0068】
また、三方弁で交互に流路を切替えて冷却運転する場合においては、冷凍室の冷却中は冷蔵室冷却器には冷媒が流れなくなり、冷蔵室の温度が少しずつ上昇してしまうが、第2の実施の形態の冷却システムによれば、冷凍室の冷却中に冷蔵室冷却器にも少量の冷媒が流れることになり、冷蔵室の温度上昇をできるだけ抑えつつ冷凍室をより適正な温度に制御することができる。同様に冷蔵室を冷却する場合にも、冷凍室冷却器に少量の冷媒が流れることになり、冷凍室の温度上昇を抑えつつ冷蔵室をより適正な温度に制御することができる。この結果、冷却システムの省エネを実現することができる。
【0069】
次に、第3の実施の形態に係る電動弁について説明する。第3の実施の形態は、第2の実施の形態の変形例であるため、第2の実施の形態と異なる部分について詳細に説明し、重複する部分については説明を省略する。
図14は、第3の実施の形態に係る電動弁においてステッピングモータの分割回転運動によって回転する弁体を上方から視た図である。
【0070】
図14(a)に示すように、第3の実施の形態においては、第1凹溝16A1、第2凹溝16A2、連通溝20A1がそれぞれ同一円周上に配置されておらず、第2凹溝16A2と連通溝20A1が第1凹溝16A1の外側に形成されている。これに伴って、連通溝20A1の長さが長く形成されている。
【0071】
次に、第3の実施の形態の冷却システムにおいて、弁体20を分割回転駆動させた場合の流量特性の変化について説明する。まず、
図14(a)に示すように、0パルス状態における弁体20が基点位置にある場合、全開ポート19Cbが半開状態にあるため、
図15に示すように、流路ABの流量は最大となる。なお、第3の実施の形態において、貫通孔11Baから弁室13に流入した冷媒は、弁体20の上面部20Eや段差20L(
図4参照)などに形成された空間20Pへ連通する通路(図示せず)から空間20Pを経由して全開ポート19Cbに到達する。一方、第2凹溝16A2は主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞されているため、0パルス状態における流路CDの流量は0となる。
【0072】
ステッピングモータに印加される電圧が5パルスになると、
図14(b)に示すように、主弁部20Aのシール面20Bが第1凹溝16A1に一部覆い被さり始め、第1凹溝16A1による流量制御が開始される。すなわち、
図15に示すように、流路ABの流量特性がリニア範囲に移行する。このため、この時点における流路ABの流量は、リニア範囲における最大流量となる。なお、全開ポート19Cdは、未だ主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞された状態にあるため、流路CDの流量は0のままである。
【0073】
ステッピングモータに印加される電圧が20パルスになると、
図14(c)に示すように、第1凹溝16A1、第2凹溝16A2がそれぞれ主弁部20Aのシール面20Bによって半分閉塞される。このため、流路AB、流路CDの流量は、それぞれ全開状態の流量の約50%となる。
【0074】
ステッピングモータに印加される電圧が35パルスになると、
図14(d)に示すように、第1凹溝16A1が主弁部20Aのシール面20Bによって覆われ、その後、流路ABの流量特性においてリニア範囲が終了する。一方、連通溝20A1によって全開ポート19Ccと全開ポート19Cdが繋がれ、流路CDの流量はリニア範囲の最大値になる。
【0075】
ステッピングモータに印加される電圧が37パルスになると、
図14(e)に示すように、第1凹溝16A1が主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞されて全開ポート19Cbから冷媒を排出することができなくなり、流路ABの流量は0となる。また、全開ポート19Ccも主弁部20Aのシール面20Bによって閉塞されるため、流路CDも遮断され、流路CDの流量も0となる。
【0076】
この第3の実施の形態の電動弁によれば、第2凹溝16A2と連通溝20A1を第1凹溝16A1の外側に形成し、それぞれの長さを長くすることにより、流量を制御できるパルスの範囲を広くすることができるため、精密な温度制御を行うことができる。
【0077】
なお、第3の実施の形態において、第1凹溝16A1の位置と第2凹溝16A2の位置を入れ替え、
図16に示すように、第1凹溝16A1が第2凹溝16A2の外側に位置するようにしてもよい。この場合においても、
図16(a)〜(e)に示すように、第3の実施の形態の電動弁と同様の流量制御を行うことができる。
【0078】
また、上述の各実施の形態において、連通溝20A1は、必ずしも均一深さ、同幅で形成されていなくてもよい。また、上述の各実施の形態において、凹溝16Aは、溝幅の代わりに、あるいは、溝幅と共に、溝深さを延在方向に漸次変化させて、均一溝幅とした場合は一端の最大溝深さ部、溝幅及び溝深さを共に延在方向に漸次変化させる場合は、一端の最大幅かつ最大深さ部で全開ポート19Cと連通する構成としてもよい。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成及び材質等はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0080】
たとえば、円盤形状の底蓋部材11は、必ずしも円盤形状でなくてもよい。また、管継手14は、必ずしも底蓋部材11の下方に接続されている必要はない。たとえば、底蓋部材11を円筒形状の部材とし、円筒側面に形成された貫通孔に管継手14を接続してもよい。