(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれ少なくとも1つの特定の食品原材料を収容するための少なくとも2つのカプセル(11)のキットであって、前記カプセルが、複数原材料食品製品の調製のために食品調製マシン(1)の淹出用キャビティ内に選択的に機能的に挿入されるようになっている、カプセル(11)のキットにおいて、
前記カプセルが前記マシンのキャビティ内に挿入されるときに及び/又は前記キャビティが閉じられるときに変形される少なくとも1つの変形可能部分(17、19、20、21、22、23、25、26、27、29、31、33、34、35、38)を前記キット内の各カプセル(11)が備え、前記変形された変形可能部分によって前記マシンのキャビティにかかる反力を検知することにより少なくとも1つのマシン動作パラメータが設定されることを特徴とし、前記キットが、前記マシン内に挿入される各カプセルに合わせて前記マシンの淹出機能パラメータを調整するように、前記キット内の異なるカプセルが、異なる所定の機械的特性を有する変形可能部分を備えることを更に特徴とする、カプセル(11)のキット。
前記カプセルの外寸の少なくとも1つが前記キャビティの対応する内寸よりも大きく、前記キャビティが機能的な構成において閉じられると、前記変形可能部分が前記カプセルを弾性的に圧縮させ、前記キャビティ内に嵌めるように配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカプセル(11)のキット。
前記カプセルの外寸の少なくとも1つが前記キャビティの対応する内寸よりも小さく、前記キャビティが機能的な構成において閉じられると、前記変形可能部分が前記カプセルを弾性的に拡張させ、前記キャビティ内に嵌めるように配置されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカプセル(11)のキット。
前記変形可能部分が、0.1mm〜20mm、好ましくは0.15mm〜10mm、より好ましくは0.5mm〜5mmの程度にて変形可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカプセル(11)のキット。
前記変形可能部分が、前記カプセルの垂直軸線に実質的に平行な軸線Dに沿って変形するように方向付けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカプセル(11)のキット。
前記変形可能部分が0.2N〜500N、好ましくは20N〜300Nの力の作用によって変形可能である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のカプセル(11)のキット。
請求項1〜8のいずれか一項に記載の少なくとも2つの原材料カプセル(11)のキットと、前記カプセルと機能的に連係するようになっている食品調製マシン(1)であって、前記マシンから前記カプセル内に流体を注入することによって前記カプセル内で食品製品を調製することができるように前記カプセルを選択的に受け入れるためのキャビティを備えるマシンと、を備える、食品調製システムにおいて、
前記キャビティが、各カプセルの前記変形可能部分と協働して前記カプセルから前記マシンに動作データを伝達するようになっている力感知部を備え、前記データが前記変形可能部分の変形特性の関数であることを特徴とする、食品調製システム。
前記カプセルの変形可能部分が前記感圧部分に機械的変形を伝達すると、前記マシンの感知部分と前記カプセルの変形可能部分との間の協働により、前記マシン内の動作を引き起こすように、前記感圧部分が前記マシンの制御盤に連結されており、前記動作が、前記マシンをオン又はオフに切り替えること、並びに/又は注出される食品の量、温度及び/若しくは粘性、前記カプセル内に注入される流体の圧力、及び/若しくは浸出/混合時間のリスト内に含まれるが、これらに限定されない食品調製パラメータを設定することの認識である、請求項9に記載の食品調製システム。
前記食品製品が、前記カプセルに入れられた原材料と混合される流体を、0.5〜30バール、好ましくは1〜20バール、より好ましくは2〜15バールの圧力で注入することによって前記カプセル内で調製される、液体又は半液体製品である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の食品調製システム。
【背景技術】
【0002】
飲料調製マシンは、食品科学及び消費財の分野においてよく知られている。こうしたマシンにより、消費者は家庭で、所与のタイプの飲料、例えば、エスプレッソ又は淹出様コーヒーカップなどのコーヒーベース飲料を調製することができる。
【0003】
今日では、家庭飲料調製用飲料調製マシンの多くは、飲料調製用にポーション化された原材料を収容することができるマシンから構成されるシステムを備える。こうしたポーションは、軟質のポッド若しくはパッド又はサッシェであってもよいが、硬質のポッド又はカプセルなどの半硬質の又は硬質のポーションを用いるシステムが増えている。以下では、本発明の飲料マシンは剛性又は半剛性カプセルとともに機能する飲料調製マシンであると考えられる。
【0004】
マシンは、前述のカプセルを収容するための受器又はキャビティと、圧力下でカプセル内に流体、好ましくは水を注入するための流体注入システムと、を含む。本発明による、コーヒー飲料の調製のため圧力下でカプセル内に注入される水は、高温、すなわち70℃超の温度であることが好ましい。しかしながら、いくつかの特定の例では、周囲温度とされる可能性も、更には冷却される可能性もある。カプセル内容物の抽出中及び/又は溶解中のカプセルのチャンバ内の圧力は、典型的には、溶解生成物については約1〜約8バール、及び焙煎して粉にしたコーヒー抽出物については約2〜約12バールである。こうした調製工程は、特に、茶及びコーヒー用の飲料調製のいわゆる「淹出」工程とは大きく異なる。淹出は、時間をかけて、原材料と流体(例えば、温水)と浸出させることを伴うが、この飲料調製工程により、消費者は、飲料、例えばコーヒーを数秒以内に調製することができる。
【0005】
加圧下での封止カプセルの内容物の抽出原理及び/又は溶解原理は公知であり、典型的には、カプセルをマシンの収容部又は空洞に挿入することと、一般に、マシンに取り付けられた流体注入ニードルなどの穿孔注入要素によりカプセルの1つの面を穿孔した後、任意の量の加圧水をカプセルに注入することと、これにより、カプセル内で加圧環境を作り出して、物質を抽出するか又は物質を溶解し、次いで、抽出された物質又は溶解された物質を、カプセルを介して放出することと、からなる。この原理の適用を可能にするカプセルについては、例えば、本出願人の欧州特許第1472156(B1)号及び欧州特許第1784344(B1)号にすでに記載されている。
【0006】
この原理の適用を可能にするマシンについては、例えば、スイス特許第605293号及び欧州特許第242556号にすでに記載されている。これらの文献によれば、マシンは、カプセル用の収容部又は空洞と、その遠位領域に1つ以上の液体注入オリフィスを備える中空ニードルの形態で作製されている穿孔及び注入要素とを備える。本ニードルは、2つの機能を有し、一方で、カプセルの頂部を開口し、他方で、カプセルへの水注入チャネルを形成する。
【0007】
マシンは、加圧下でカプセル内に含まれている原材料(複数可)の溶解及び/又は浸出及び/又は抽出に使用される流体(ほとんどの場合、流体は水である)を貯蔵するための流体タンクを更に備える。マシンは、ボイラー又は熱交換器などの加熱要素を備え、これらは、その中で使用される水を使用温度まで加温することができる(一般的には、温度80〜90℃以下)。最終的には、マシンは、タンクから、任意により加熱要素を介して、カプセルに水を循環させるポンプ要素を備える。例えば、マシン内で水を循環させる手法は、例えば、本出願人の欧州特許出願公開第2162653(A1)号に記載されている種類の蠕動バルブなどのバルブ手段の選択を通じて選択される。
【0008】
調製される飲料がコーヒーの場合、コーヒーを調製するための興味深い手法の1つは焙煎して粉にしたコーヒー粉末を含むカプセルを消費者に提供することである。焙煎して粉にしたコーヒー粉末はカプセル内に注入される湯で抽出される。
【0009】
多くの場合、マシンはカプセルを保持するためのカプセルのホルダを含み、このカプセルのホルダはマシンの対応するキャビティ又は受器に挿入され、取り出されるものである。カプセルのホルダにカプセルが装填され、機能的な手法でマシン内に挿入されると、カプセルにマシンの水注入手段が流体連通され、上述のように、食品調製のためカプセル内に水を注入することができる。カプセルのホルダについては、例えば、本出願人の欧州特許第1967100(B1)号に記載されている。
【0010】
そのような食品調製、特に、飲料調製の用途のためのカプセルが開発されており、これについては本出願人の欧州特許第1784344(B1)号又は欧州特許出願公開第2062831号に記載及び請求されている。
【0011】
すなわち、このようなカプセルは、一般に、
中空本体と、液体及び空気不浸透性であり、本体に取り付けられ、例えば、マシンの注入ニードルによって穴が開けられるように構成された注入壁と、
抽出される焙煎して粉にしたコーヒーの層又は可溶性原材料若しくは可溶性原材料の混合物を収容するチャンバと、
カプセルの底端部に配置され、カプセルを密封してチャンバ内圧を維持するアルミニウム膜と、を含む。
【0012】
アルミニウム膜は穿孔手段で穿孔されるように設計されている。穿孔手段は、カプセルに組み込まれているか、カプセルの外部、例えば、マシンのカプセルのホルダ内に配置されているかのいずれかである。
【0013】
穿孔手段はチャンバ内の内圧が特定の所定値に達するとアルミニウム膜に注出用の穴を開けるように構成されている。
【0014】
また、任意選択的に、カプセルは、カプセル内に注入される流体ジェットの速度を低下させ、流体を物質の層全体に低下させた速度で分配するために、流体ジェットを遮断するように構成された手段を更に含み得る。
【0015】
従来技術のカプセルは、流体システムの一部である飲料調製マシンの流体注入要素(例えば、ニードル)によって穿孔される予定の注入壁又は膜(上部膜と称する)を特徴としている。上述のように、流体がカプセルの区画に注入されると、圧力が生じ、この圧力は、カプセルの内部に含まれる原材料の抽出及び/又は溶解のための抽出手段として機能する。こうした原材料は、例えば、焙煎して粉にしたコーヒーの層であってもよい。焙煎して粉にしたコーヒーの代わりに又は併せて、原材料は、例えば、飲料プレミックスなどの可溶性原材料を含み得る。
【0016】
マシンによるカプセルの識別のためにいくつかのシステムが現在使用されているが、既存の解決策の主な欠点は識別システムの比較的高いコスト並びに/又はそのような識別に適応させたカプセルの複雑さ及びコストである。このような識別システムとしては、色認識、バーコード、カプセルの表面に配置された突起、溝又は他の人工物の認識、導電率、抵抗率、及び電流若しくは磁場によるカプセルの検知又は識別において知られているほぼすべての手段が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、複数レシピ用飲料調製システムで用いるための様々な種類のカプセルの使用に適用可能である一方、上記の欠点を排除する、信頼性が高く、コスト効果的なシステムはこれまでのところ提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、原材料カプセルと飲料調製マシンとの間のデータ通信の改善及び簡略化を含む飲料調製における解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的は、それぞれ少なくとも1つの特定の食品原材料を収容するための少なくとも2つのカプセルのキットであって、カプセルが、複数原材料食品製品の調製のために食品調製マシンの淹出用キャビティ内に選択的に機能的に挿入されるようになっており、上記カプセルがマシンのキャビティ内に挿入されると及び/又は上記キャビティが閉じられると変形される少なくとも1つの変形可能部分をキット内の各カプセルが備え、変形された変形可能部分によってマシンのキャビティにかかる反力を検知することにより少なくとも1つのマシン動作パラメータが設定されることを特徴とし、上記キットが、マシン内に挿入される各カプセルに合わせてマシンの淹出機能パラメータを調整するために、キット内の異なるカプセルが、異なる所定の機械的特性を有する変形可能部分を備えることを更に特徴とする、キットによって達成される。
【0019】
カプセルの「少なくとも1つの変形可能部分」とは、カプセルの少なくとも1つの部分が、この部分に荷重が付加されると、この部分を弾性的又は可塑的のいずれかにおいて機械的に変形可能にする形状を有する又はそのような材料で作製されることを意味する。このカプセルの少なくとも1つの部分の機械的変形は、マシンのキャビティ内にカプセルが挿入されたとき及び/又はマシンのキャビティが閉じて上記カプセルを機能的に密閉したときにマシンがカプセルに付加する機械的荷重によるものである。いくつかの実施形態について、以下の発明を実施するための形態において記載する。
【0020】
「変形特性」とは、各物体(本場合においてはカプセルの変形可能部分)の、その形状及びそれを構成する材料に依存する特定の材料の挙動を意味する。変形可能な材料挙動の法則は、カプセルの変形可能部分に荷重が付加されたときにカプセルの変形可能部分が押し返し、それを平衡位置から移動させる力が、この平衡位置から上記舌状部の距離の関数であることを示す。換言すると、材料の種類、各物体の大きさ及び幾何学的形状、並びに付加される力に応じて、様々な種類の変形が生じる場合がある。
【0021】
「動作データ」とは、マシン動作に機能的に関連する任意のデータ、換言すると、マシンの電子回路が飲料調製パラメータを設定するために使用可能な任意のデータを意味する。より正確には、動作データは飲料調製パラメータの設定値に相当し、例えば、飲料調製パラメータが水温である場合、動作データは、マシンの電子基板において、上記電子基板が水ヒータを作動して特定の対応する温度で水を加熱するようにプログラムされたこの水温の値である。本場合の食品又は飲料調製マシンにおいて、調製前原材料と混合されて最終食品又は飲料製品を作製する水に使用される温度は、全般的に、4℃〜100℃の範囲内、好ましくは12℃〜85℃の範囲内である。より明確な例として、市販のほとんどの飲料調製マシンでは生成される飲料の種類に応じて2つの異なる温度が使用されている。この場合、水温に相当するマシン動作データはどの種類の飲料が淹出されるかに応じて「高温」又は「低温」の値を有し得る(そのような値は、当然、マシンの電子プログラム内においてデジタル値としてコード化されている)。
【0022】
本発明の非常に好適な実施形態において、各カプセルの変形可能部分は以下のリスト内、すなわち、
(i)一連の舌形の突起、
(ii)コイルばね部分、
(iii)カプセル側壁のベローズ部分、
(iv)リングの最下部内面から上記リングの中央に向かって内方及び上方に延出する一連の湾曲可撓性アーチを有するリング、
(v)下方に方向付けられ、カプセルの底部縁端から延出する一連の湾曲突起、
(vi)カプセルの上端の凹設部と組み合わせた、カプセルの上部膜の変形可能な領域、
(vii)カプセルの上端の周縁部に配置された一連の波形の突起、
又はそれらの組み合わせにおいて選択される。
【0023】
好ましくは、変形可能部分は、上記カプセルの外面の周縁部、より好ましくは、上記カプセルの上部分に配置されている。
【0024】
本発明の第1の実施形態においては、キット内の少なくとも1つのカプセルの外寸の少なくとも1つはキャビティの対応する内寸よりも大きくすることができ、その場合、キャビティが機能的な構成において閉じられると、変形可能部分は上記カプセルを弾性的に圧縮させ、上記キャビティ内に嵌めるように配置されている。
【0025】
本発明の第2の代替的実施形態においては、キット内の少なくとも1つのカプセルの外寸の少なくとも1つはキャビティの対応する内寸よりも小さく、その場合、キャビティが機能的な構成において閉じられると、変形可能部分は上記カプセルを弾性的に拡張させ、上記キャビティ内に嵌めるように配置されている。
【0026】
有利には、キット内の各カプセルの変形可能部分は、0.1mm〜20mmを含む、好ましくは0.15mm〜10mmを含む、より好ましくは0.5mm〜5mmを含む程度にて変形可能である。更に、上記変形可能部分は、好ましくは、上記カプセルの垂直軸線に実質的に平行な軸線Dに沿って変形するように方向付けられる。
【0027】
また、カプセルの変形可能部分は0.2N〜500N、好ましくは20N〜300Nの力の作用によって変形可能である。
【0028】
同発明の別の態様においては、本願は、上記のような少なくとも2つの原材料カプセルのキットと、上記カプセルと機能的に連係するようになっている食品調製マシンであって、上記マシンが、上記マシンから上記カプセル内に流体を注入することによってカプセル内で食品製品を調製することができるように上記カプセルを選択的に受け入れるためのキャビティを備えるマシンと、を備える、食品調製システムであり、上記キャビティが、各カプセルの変形可能部分と協働して上記カプセルから上記マシンに動作データを伝達するように適合された感圧部分、より正確には、力感知部分(force sensitive portion)を備え、上記データが、上記変形可能部分の変形特性の関数、特に、上記部分がマシンの淹出用キャビティへのカプセルの挿入によって変形されたとき及び/又は上記キャビティが上記カプセル上で閉じられたときに、各カプセルの変形可能部分によって生じた反力の関数であることを特徴とする、食品調製システムに関する。
【0029】
有利には、カプセルの変形可能部分が上記感圧部分に機械的変形を伝達すると、上記マシンの感知部分と上記カプセルの変形可能部分との間の協働により、上記マシン内の動作を引き起こし、上記動作が、上記マシンをオン又はオフに切り替える、並びに/又は注出される食品の量、温度及び/若しくは粘性、カプセル内に注入される流体の圧力、及び/若しくは浸出/混合時間のリスト内に含まれるがこれらに限定されない食品調製パラメータを設定すると認識されるように、上記感圧部分は上記マシンの制御盤に連結される。
【0030】
また、好ましくは、上記感圧部分は電気スイッチに接続された圧力センサである。
【0031】
いずれの場合においても、食品製品は、好ましくは、カプセルに入れられた原材料と混合される予定の流体を、0.5〜30バールを含む圧力、好ましくは1〜20バールを含む、より好ましくは2〜15バールを含む圧力で注入することによってカプセル内で調製される液体又は半液体製品である。
【0032】
本発明の基となる一般原理として、カプセルの変形可能部分に適用される変形は材料挙動の法則に従う。そのため、変形の種類が圧縮、屈曲又はねじれのどれであっても、上記変形可能部分の変形によって生じた力は上記変形の一次関数である。あらゆる種類の変形において、材料挙動の法則は、ばね又は舌状部又はねじれ部分が押し戻す力が、以下の通り、その平衡長さからの距離の関数であることを示す。
F=f(x)
式中、
「x」は変位ベクトル−変形可能部分がその平衡長さから変形される距離及び方向。
「f(x)」は、ばねが発揮する復元力の大きさ及び方向。
【0033】
コイルばね及び他の一般的なばねは、通常、フックの法則に従う。フックの法則に従わない有用なばねがある。はりの曲げに基づくばねは、例えば、変位により非線形的に変化する力を生成することができる。
【0034】
本発明の場合、カプセルの変形可能部分は変形下において変形程度に必ずしも直線的に関連しない力を生成する複雑なばね要素であると想定される。カプセルがマシンのキャビティ内に挿入されると及び/又はカプセルがキャビティ内の所定の位置に配置され、マシンが閉じられると、カプセルの変形可能部分は機械的に変形され、それに応じて、カプセルに当接するマシンのキャビティ部分に対する反力を生成する。この反力はマシンに組み込まれた荷重センサによって測定される。測定された力の値はマシンによって、特定レベルの温度、注入圧力、カプセル内に注入されるべき水の量又はそのようなパラメータの組み合わせなどの少なくとも1つの動作/機能パラメータ値に変換される。変換は、カプセルの変形可能部分において測定されたそれぞれの測定された変形力について、マシンが飲料調製パラメータの対応する所定値を関連付けるようにマシンを予め、すなわち工場内でプログラムすることによって実施される。変形可能部分の変形ステップ全体にわたり、それぞれ1つの変形程度に対応するいくつかの力値が測定され得る。例えば、3つの異なる反力値が測定され、1つの力値が、変形可能部分が0.1mm変形されたとき、次に、第2の力値が、変形可能部分が0.5mm変形されたとき、最後の1つの力値が、例えば、変形可能部分の1.2mmの完全な変形に相当する、マシンが完全に閉じられたときに測定され得る。これら3つの変形段階のそれぞれについて、1つの特定の力が測定され、この力はそれぞれマシンの飲料調製設定の数値に翻訳され得る。例えば、測定された第1の力は温度設定(セルシウス度)に相当し、第2の力測定値は水注入圧力値(バール)に相当し、測定された力の最後の値はマシンのポンプによってカプセル内に注入される水の量に相当する。マシン内に挿入されるカプセルの機械的特性に応じて、より正確には、機械的パラメータなどの変形可能部分の形状(幾何学的形状)、カプセルにおける変形可能部分の数、変形可能部分を作製するのに用いられる材料、マシンに組み込まれた力センサに対する変形可能部分の位置に応じて、同じ変形程度に対し、異なる力値が測定される。このため、マシンはその設定(注出される量、調製される製品の温度、調製される製品の量)をカプセルの機械的変形特性に基づき適応させることができる。
【0035】
「食品」とは、あらゆる種類の食用製品を意味する。これには、液体飲料(例えば、茶、コーヒー、チョコレートベース飲料、スープ)、ピューレ、アイスクリーム又はシャーベット、ソフトアイスクリーム、ヨーグルト調製品、乳児用ミルクなどの乳児用栄養物、シリアルベース調製品などの多少の粘性を有するペースト状製品、半液体製品、液体製品を含むが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の好適な実施形態において、上記食品製品は液体又は半液体であり、特に、低温、常温又は高温飲料である。以下の説明においては、一例として、本発明によるカプセルは液体飲料調製マシンとともに使用されるとみなされる。
【0037】
本発明の更なる特徴及び利点については、以下、図面を参照して説明する本発明の好適な実施形態の説明に記載されるとともに、同好適な実施形態から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明によるキットの各カプセルは
図1に示される飲料調製マシンとともに使用され、これにより、飲料調製システムを形成する。
【0040】
図1に示すように、マシン1は、マシン本体2と、補充のためにマシン本体2から取り外すことができる水貯蔵部3と、を備える。本体2はオン/オフ押しボタン4を含む。マシン1は抽出ヘッド5を更に含む。ヘッド5は、温水又は冷水の水温選択部6と、ロック用レバー7と、カプセルホルダ9を挿入するための開口部8と、を備える。マシン1は、抽出ヘッドの下にカップを保持するためのカップトレイ10を更に含む。
【0041】
カプセルホルダ9はカプセル11を受け入れるようになっている。
図2A及び
図2Bに、カプセル11が配置されたカプセルホルダ9の輪郭断面図を示す。上記ホルダ9及びカプセル11は抽出ヘッドの対応する受器に挿入されている。カプセルホルダ9は、カプセル11の受器として設計された本体部分12を備え、ハンドル13を更に備える。
【0042】
キット内の各カプセル11は、その底部が本体側壁と一体形成された底壁によって閉じられたほぼ円錐台形の本体を有するカプセル本体を備える。底壁の中心には、カプセル内で調製した飲料を、上記カプセルから、ここでは下に配置されるカップ内に流出させるための注出開口部として機能する開口部を備える。カプセルは、底壁の近傍においてカプセル内部に密閉された穿孔可能なアルミニウム膜と、カプセル内部の圧力が増加すると上記アルミニウム膜に穿孔するための穿孔プレートと、を更に備える。穿孔プレートはアルミニウム膜とカプセルの底壁との間にある。最終的に、カプセルは穿孔可能な膜によってその上部が閉じられている。カプセルは湿気及び酸素バリアとなるように作製される。
【0043】
より正確には、
図2Aは、カプセルホルダ9内に装填されたカプセル11を示し、その両者は、抽出ヘッド5が開状態にあるときに抽出ヘッド5に挿入される。その開状態において、ロック用レバー7は上向き状態にあり、ロック解除されている。抽出ヘッド5は、ニードル15を有する可動ニードルプレート14を備える。ニードル15は、カプセルの壁に穴を開け、カプセル内に圧力下で水(又は別の流体)を注入するようになっている。水は圧力下で水貯蔵部3からマシンのポンプによって送られ、パイプシステム(図示しない)及び抽出ヘッド5の流体コネクタ16を通過する。
図2Aに示されるように、抽出ヘッド5が開状態にあるとき、ニードルプレートはカプセルホルダから離れて配置され、ニードル15もカプセルから離れている。
【0044】
図2Bに示すように消費者がロック用レバー7を下方に作動させると、ニードルプレート14が下方に動き、抽出ヘッド5が閉じる。その状態において、ニードル15がカプセルの上壁に穴を開け、カプセル内に圧力下で水を注入するのに適切な構成となる。
【0045】
換言すると、理解され得るように、マシンの抽出ヘッド5は、カプセルの外部容積及び形状に実質的に類似する容積及び形状を有するカプセルの受器を備える。上記抽出ヘッドのカプセルの受器は、カプセルホルダ9と、カプセルホルダ上方に位置するニードルプレート14とによって画定される。ニードルプレートは、カプセルの受器をそれぞれ閉じる及び開くために、上記カプセルのホルダに向かう方及び上記カプセルのホルダから離れる方に実質的に垂直に動くことができる。ニードルプレートがカプセルホルダから離れる方に持ち上げられると、すなわち、抽出ヘッドが開状態にあるとき、カプセルホルダを引出しのようにスライドさせることによって抽出ヘッドに入れる又は抽出ヘッドから出すことができる。
図2Bは、カプセルホルダにカプセルが装填され、抽出ヘッド内に挿入された状態で閉じられ、ニードルプレートが閉じた(すなわち下がった)状態にある抽出ヘッドを示す。
図2Bにおいて明らかなように、その閉状態において、カプセルの外部容積及び形状はカプセルホルダ及びニードルプレートによって画定される受器の容積及び形状にほぼ一致及び合致する。
【0046】
上で説明したように、本発明は、カプセルの構造にデータを統合するためのシンプルでコスト効率的かつ信頼性の高い手法を提供することを目的とする。このようなデータは、カプセル内に収容された原材料の種類に相当し得る及び/又はカプセルから食品若しくは飲料を調製するための1つ若しくはいくつかのパラメータに相当し得る。カプセルの機械的構造に組み込まれたデータはカプセルとマシンとの間の相互作用によって使用され得るものの、これは必須ではない。例えば、このようなデータは、工場内で取り付けられる圧力荷重センサなどの、ライン上で製造されるカプセルの品質を読み取り制御するための機械的な読み取りデバイス40によって読み取ることができる。
【0047】
圧力センサ28は、カプセルがマシンのカプセルの受器内に投入されたときに又は上記カプセルの受器が閉じられたときに、上記センサがカプセルの弾性及び/又は塑性変形を検知することが可能になる、マシン内の任意の適切な位置に取り付けることができる。例えば、
図2A及び
図2Bに示されるように、センサ28はニードルプレート14に組み込むことができ、マシンのカプセルホルダ内にカプセルが投入されると、センサ28は、
図2Bに示すように、マシンのカプセル受け入れキャビティが閉じられたときに、及び上記ニードルプレート14がカプセルの弾性的に変形可能な部分と接触したときにカプセルの変形を検知することができるように機能し得る。その状態においては、
図2Bに示されるように、カプセルの弾性変形可能部分(そのような変形可能部分のいくつかの代替的な実施形態については以下に記載する)は、センサ28がカプセルに接触しそれを押すと弾性的に変形され、マシンにより検知され得る変形力を生成する。検知された機械的変形の値は、マシンの電子チップに記憶されたプログラムによって、水温値又はマシンの貯蔵部からカプセル内に送られるべき水の量などのマシン動作データへと変換される。
【0048】
本発明によるキットのカプセルは、カプセルの機械的特性のデータを読み取り、比較するための安価で信頼性の高い手法を提供することから、品質管理において特に有利である。通常、同じ外観を有するカプセル内に種々の原材料が充填され得る。本発明によれば、例えば、1つの特定の種類の原材料が十分な量でカプセル内に存在するようにするために、1つの充填パラメータをカプセルの機械的特性になることが可能である。この場合においては、工場の製造ラインには、各カプセルを計量するスケールと、カプセルの変形可能部分の弾性特性を検知する圧力荷重センサとが備えられる。このような方法は信頼性が高く、迅速で安価である。更に、カプセルの構造体に収容されたデータの検知が材料の弾性変形範囲内で実施されることにより、比較的大規模なコーディング値の可能性を示す一方で、カプセルが破損しないことを保証する。
【0049】
工場での品質管理の代わりに又はそれに加えて、本発明は、飲料調製マシン内にカプセルが挿入されたときに有用となり得る。通常、上記カプセルの変形可能部分に格納されたデータは、飲料調製マシン又はその代わりにカプセルホルダに組み込まれた圧力センサによって読み取ることができる。圧力センサは、実際には、上記カプセルがマシン及び/又はカプセルホルダ内に機能的に挿入されたときに上記センサがカプセル、特にカプセルの変形可能部分と接触する限りは、マシン又はカプセルホルダの任意の位置に組み込むことができる。
【0050】
ばね効果により、カプセルによってマシンに、より正確には、上記マシンに組み込まれた圧力(より正確には荷重)センサに反力が付加される。
【0051】
圧力センサによって測定された抗力に応じて、マシンは、カプセル内に収容された原材料に関連する少なくとも1つの飲料調製データ及び/又は上記原材料から飲料を調製するためのパラメータを読み取る。対圧測定値の、データへの翻訳はマシン内部に組み込まれたコンピュータチップを用いることにより実施される。コンピュータチップは、検知された圧力を、飲料調製パラメータコード又は挿入されたカプセルの種類若しくはカプセル内に収容された飲料原材料の種類などの任意の他の類似のデータに翻訳する。
【0052】
カプセル11の変形可能部分は種々の形態、形状及び寸法を採ることができ、ここでそのいくつかについて添付図面を例として参照しながらより詳細に記載する。
【0053】
図3に示される第1の実施形態においては、カプセル11の変形可能部分は、カプセルの上端18の周縁部に配置された一連の波形の突起17の形態を採ることができる。カプセルの上端18の周縁部全体における波形の突起17の数は本発明の原理によるデータを担持するのに必要な力(対圧)に応じて変更することができる。
図4に示すように、必要であれば、波形の突起17の数は
図3に示されるカプセルの数に比べて減らすことができる。
【0054】
この第1の実施形態によるカプセルがカプセルホルダ内に配置され、飲料調製マシンの対応する凹部に機能的に挿入されると、波形の突起17の頂面がカプセルホルダの上面の高さを超えて突出する。したがって、
図2Bを参照して上記したように、使用者がマシンのヘッドを閉じるとニードルプレート14の下面が各突起17の先端部に接触するように、カプセルはカプセルのホルダよりも高い。ロック用レバー7が押し下げられてマシンのヘッドを完全に閉じると、ニードルプレート14によって波形の突起17に圧力が作用され、上記突起17の弾性変形を引き起こす。この変形により、突起がニードルプレートに対し抗力を機械的に作用する。上記ニードルプレートは、変形された突起17によって付加された抗力を検知する圧力センサ(図示しない)を備える。生成される抗力は突起17の機械的特性の関数であり、より具体的には、その構成材料、その形状、特に、その厚さ及びその曲率の関数である。また、上で説明したように異なり得る突起の総数の関数でもある。突起の数が多いほど上記突起の変形によって生じるばね効果におけるエネルギーの量が大きくなる。すなわち、抗力が大きくなる。
【0055】
図5に示される第2の実施形態においては、カプセル11の変形可能部分は複数の舌状部19を備える。舌状部の数及び幅は様々とすることができ、例えば、
図6は、舌状部が
図5の実施形態に示されるものに比べてより少数ではあるがより広いカプセルを示す。
図5及び
図6に示される舌状部はカプセルの上端18から外側に延出し、水平面に対し0〜70度を含む角度で下方に方向付けられている。この場合、
図2Aに示されるように、カプセル11がカプセルホルダ9内に挿入されると舌状部の先端はカプセルホルダ9の頂面に載り、このため、飲料マシンの抽出ヘッド5が使用者によって閉じられると、下方に動くニードルプレート14がカプセルの上端18に接触して、マシンヘッド5の閉鎖動作の間カプセルの上端18を下方に押し、舌状部19を弾性的に変形して、その先端が上昇しヘッド5の閉鎖を可能にする。抽出ヘッドが閉じられると、舌状部19はカプセルホルダ9の上面とニードルプレート14の下面との間に挟まれ、このため、例えば
図2Bに示されるように、上記舌状部がカプセルの上端18の残り部分とほぼ同じ面内に、すなわちほぼ水平に方向付けられる。抽出ヘッドが再び開かれ、ニードルプレート14が上昇すると、舌状部19は戻り、
図5又は
図6に示すように再度下方に方向付けられ、このため、カプセル全体がカプセルホルダ9から自動的に上昇する。この状態において、
図2Bに示すように、カプセルの変形可能部分、すなわち舌状部19は変形され、この機械的変形により、マシンの抽出ヘッドの要素、特に、ニードルプレート及びその中に組み込まれた圧力センサに対し抗力が生成される。機械的変形はセンサによって検知され、マシンの電子チップによって、マシンによりカプセル内に送達されるべき水の量、圧力又は温度設定パラメータ値などのマシン動作データに変換される。舌状部19の機械的変形は弾性(すなわち可逆)又は塑性(すなわち永久)のいずれかとされ得る。更に、センサは、ある特定の時間における(例えば、マシンの抽出ヘッドが完全に閉じているときの)1つの変形力値を検知するようにプログラム可能である、あるいは、センサ28はマシンの抽出ヘッドが閉じている間のカプセルの種々の変形力値を検知し記憶するようにプログラム可能である。この後者の場合においては、マシンはカプセルの変形プロファイルを設定することができ、このプロファイルは、カプセルの変形可能部分を作製するために使用される材料(本実施形態においては、舌状部19を作製するために使用される材料)の関数である。単一の変形力値よりもむしろカプセルの機械的変形プロファイルを検知すると、いくつかの動作データを計算するようにマシンをプログラムすることが可能である。換言すると、カプセル内の設定パラメータのコーディングがより複雑になり、カプセル構造体内に1つより多い情報がコード化される。例えば、単一の変形値よりもむしろ変形プロファイルを検知することによって水温及びカプセル内に注入されるべき水の量もコード化することが可能である。マシンのチップにプログラムされる厳密なアルゴリズムは、カプセル構造体に応じて、また、いくつの異なる動作データを各カプセル構造体に組み込むべきかに応じて異なり得るとともに適切に選択され得る。
【0056】
例えば、わずか1つの動作データ、例えば水温をカプセル構造体内にコード化することができる。高温又は低温の2種類の温度のみがコード化される場合、それぞれ異なる種類の変形可能部分を有する2つの異なる種類のカプセルが作製される。本実施形態においては、第1の種類のカプセルは
図5に示されるような小さな舌状部を有し得る。小さな舌状部は、
図2Bに示されるように抽出ヘッドが完全に閉じられたことにより水平に変形されると、例えば0.5Nの変形力を発生させる。この0.5Nという値は、ニードルプレートに組み込まれたセンサによって検知され、マシンのヒータが始動されてカプセルに送達されるべき湯が生成されるように、適切なアルゴリズムにより、動作データ、例えば、水温の「高温」の値に変換される。より大きな舌状部19を有するカプセル(
図6に示すような)がマシンに挿入される場合、カプセルの変形可能部分の異なる機械的構造のため(すなわちこの場合における舌状部はより大きい)、センサによって検知される変形力が異なる。例えば、舌状部がより大きいことから、その機械抵抗が大きくなり、抽出ヘッドが閉じられたときに発生する変形力も例えば、1Nと、大きくなる。この場合、測定された変形力はマシンによってカプセルに注入される水温の「低温」値として変換される。
【0057】
水温の代わりに、カプセルの変形可能部分の検知された弾性又は塑性変形から他のマシン動作データを変換することができる。
【0058】
また、舌状部19などのカプセルの一部が変形可能となり得るだけでなく、カプセル全体を変形可能な材料で作製することができる。この場合においても結果は同じであり、閉鎖時及び/又は抽出ヘッドが閉じられるときにカプセルに接触するようにマシンに組み込まれたセンサは、マシンのプログラムが機械的変形をマシン動作データ(水温設定又は水圧又はカプセル内に注入される水の量)に変換することができるように、機械的変形を検知することができる。
【0059】
その代わりとして、
図7及び
図8に示すように、舌状部19は水平面に対し0〜70度を含む角度で上方に方向付けることができる。この実施形態においては、マシンの抽出ヘッドの閉鎖時における舌状部19の変形動作は、
図5及び
図6に関して上記したものとは逆である。より正確には、抽出ヘッド5の閉鎖時にニードルプレート14が下方に動くと、
図7及び
図8に示される舌状部の先端はニードルプレート14の下面に接触し、ヘッドが閉じるまで上記舌状部19を押して下方に動かす。抽出ヘッドの閉状態において、舌状部は、また、カプセルの上端18の残り部分とほぼ同じ面内に、すなわち
図2Bに示すようにほぼ水平に配置される。その後、抽出後に使用者が抽出ヘッド5を再度開くと、ニードルプレート14が再度上昇し、舌状部を解放する。舌状部は再度上昇し、
図7又は
図8に示すようなその通常の形状を回復する。
【0060】
図5〜
図8に示し、上述した真直の舌状部の代わりとして、カプセルは
図9に示すようなより複雑な形状を有する変形可能な舌状部を備えることができる。この場合、各舌状部19は、ほぼ水平であり、カプセルの残り部分に舌状部を連結する第1の下部分20を備える。舌状部は、上向きの第2の中間部分21と、第1部分20と同様に実質的に水平の第3の上部分22と、を更に備える。第3部分22は、抽出ヘッド5が閉じられるとニードルプレート14の下面に接触し、各舌状部19の第1の下部分20はカプセルホルダ9の上面に載る。抽出ヘッド5が閉じられたことによりニードルプレート14が下方に動くと、各舌状部の中間部分21は弾性的に変形し、上部分22を第1部分20と同じ面上に移動させる。抽出ヘッドが閉じられると、各舌状部は平らになり、弾性変形によって上記舌状部が抗力を生じる。この抗力はニードルプレートとカプセルホルダとを引き離す傾向にある。この抗力は例えばニードルプレート内にある圧力センサによって測定され得る。
【0061】
図3〜
図9を参照して上述した第1及び第2の実施形態においては、カプセルの変形可能部分は、カプセルホルダ内に挿入されるとカプセルの上部分がカプセルホルダから突出するようなものである。このため、ニードルプレートが上述の波形の突起17又は舌状部19に接触し、それらを変形し始めると、カプセルの変形された部分によって生じた対圧力(counterpressure force)が測定されるように、圧力センサの好適な位置はニードルプレート内となる。
【0062】
重要なことには、好ましくは、第1及び第2の実施形態を参照して上述したように、カプセルの容積は飲料マシンの抽出ヘッド内の受器の容積よりも大きいことは明らかである。上で説明したように、このカプセルと、その抽出ヘッド受器内の受器との間の容積の差のため、上記抽出ヘッドが閉じられたときに、より小さな容積になるようにカプセルが変形する。この変形は主として上記カプセルの変形可能部分に関連する。この原理は本発明の好ましいオプションであるとみなされる。しかしながら、カプセルの変形可能部分を変形するための他の可能性も考慮することができ、これについては第3の実施形態及び
図10A及び
図10Bを参照して以下に記載する。
【0063】
図10A及び
図10Bに示される第3の実施形態において、カプセルの変形可能部分は、カプセルの上端18の凹設部との組み合わせにおいて、カプセルの上部膜の変形可能な領域23の形態を採る。
図10Aに示されるように、変形可能な領域23は、上部膜24がカプセルの上端18上で密閉される上部膜24の最も外側の区域にある。このカプセルの変形可能な領域23は、
図10Aに示すように、領域23の中間部分に径方向に延びるスリット25を備える。スリット25は上部膜の領域23に脆弱さをもたらし、領域23内に変形可能な可撓性部分を形成する。更に、
図10Bは、カプセルの上端の凹設部26を示し、凹設部26により、カプセル上方から上記領域23に圧力がかけられると上部膜の切込み領域23が上記凹部26内へと下方に曲げられることが保証される。
【0064】
図10Bに点線で示されるマシンのニードルプレート14の最も外側の部分は下方に延びる一連のピン形の突起27を備える。ピン形の突起27は、マシンの抽出ヘッドが閉じられニードルプレートがカプセルに向かって下方に動くと、変形可能な領域23に接するように配置されている。その状態において、上端18が上記カプセルホルダの頂面上に載り、上記カプセルホルダの頂面から突出するように、及び変形可能な領域23に上記カプセルの上方から直接アクセス可能となるように、カプセルはカプセルホルダ9内に配置される。マシンの抽出ヘッドの閉鎖時、ニードルプレート14がカプセルホルダ9及びその中に挿入されたカプセルに向かって下方に動くと、ピン形の突起27が上部膜の変形可能な領域23に押し付けられ、変形可能な領域23を凹設部26へと下方に曲げる。ピン形の突起27はニードルプレート14内にある、上部膜の弾性的に変形された領域23によって生じた弾性抗力(elastic counterforce)を検知し測定する圧力センサ28に又はその一部に連結される。
【0065】
すでに上で説明したように、カプセルの変形可能な変形された部分によってセンサに付加された、測定された力は所定値に一致する。所定値は、上部膜24の機械的特性に依存し、特に、カプセルの変形可能部分の力定数「k」に依存する。この測定された力はマシンにおいて設定される飲料調製パラメータに相当するデータ値に直接関係する。飲料マシンのコンピュータチップは、測定された力を、カプセル内に注入される流体の特定の温度及び/又は特定の流体注入圧力及び/又はカプセル内に注入される流体の特定量などの飲料調製パラメータの所定値として解釈する。
【0066】
例えば、センサによって測定された弾性力が0.2Nであれば、マシンはそれをカプセル内に83℃の60mLの水を注入するものと解釈する。測定値が0.6Nであれば、マシンは180mLの常温水を注入する。
【0067】
本発明によれば、カプセルの変形可能部分の機械的特性、特に、弾性変形特性は、使用される材料の種類、変形可能部分の形状、例えば、上部膜24の厚さ、並びに上述の第3の実施形態におけるプレカットスリット25の幅及び長さ、又は上述の第1又は第2の実施形態における変形可能な舌状部19の長さ、厚さ及び角度等などの、カプセルの変形可能部分の構造パラメータを(どの種類の変形可能部分が使用されるかに応じて)慎重に選択することによって予め決定される。マシンは、その後、測定された力を特定の飲料調製パラメータ(例えば、カプセル内に注入される流体の量、圧力及び/又は温度)に変換できるようにプログラムされる。
【0068】
カプセルの変形可能部分の各特定の実施形態によれば、マシン又はカプセルのホルダ内の圧力センサは、したがって、上記変形可能部分が変形されたときに(工場内で又は使用時にマシン内において)カプセルによって生じた弾性変形力を検知できるように適宜適応される。
【0069】
図11に示される第4の実施形態においては、カプセルの変形可能部分は、下方に方向付けられた、カプセル11の底部縁端30から延出する一連の湾曲突起29を備える。各突起30の曲率により、突起30が圧力下で曲がるほどの十分な可撓性がもたらされる。使用時、カプセルがカプセルホルダ内に投入されると、カプセル全体がそのような突起を備えないカプセルに比して持ち上がるように、及びカプセルの上端18がカプセルホルダ上面の高さを超えて持ち上がるように、突起30はカプセルホルダの対応する縁端(図示しない)に載る。マシンの抽出ヘッドが閉じられると、ニードルプレート14がカプセルの上面に押し付けられ、上端18がカプセルホルダの上面に接触して載るまで下方に動かされる。抽出ヘッドのその閉状態において、すなわち、上端18がカプセルホルダとニードルプレートとの間に挟まれると(例えば
図2Bに示されるように)、カプセルの湾曲突起29は内方に弾性的に変形され(すなわち、突起29はカプセル内部に曲がる)、そのためカプセルの外部容積が減少してマシンの抽出ヘッド内部のカプセルの受器の容積に一致する。この状態おいて、弾性的に変形された突起29によりカプセルの頂部に向かって垂直に方向付けられる抗力が生じる。この抗力は、ニードルプレート内にある又はニードルプレートに接触する圧力センサ28によって測定され得る。マシンの抽出ヘッドが再度開かれると、ニードルプレートはカプセル及びカプセルホルダから持ち上げられて外される。そのとき、カプセルがカプセルホルダから持ち上げられるように突起29はその通常の位置に曲がって戻る。本発明によってもたらされる利点以外に(すなわち、カプセルが、突起29によって生じる所定の弾性変形力内に飲料調製パラメータデータを含む)、カプセルの弾性変形の効果により、飲料が調製されカプセルが廃棄されるときの使用済みカプセルの取り扱い及びそのカプセルホルダからの取り出しを容易にする持ち上げ効果がもたらされ、カプセルの上端18がカプセルホルダよりも上に配置されるために、使用者がカプセルホルダからカプセルを取り出すのに上記上端をよりつかみやすくなるという点でもこの実施形態は興味深い。
【0070】
図12A及び
図12Bに示される第5の実施形態においては、カプセル11の変形可能部分は、実質的にカプセルの中間の高さに位置する一連の水平舌状部31を備える。これら舌状部31は、好ましくは射出成形によってカプセル本体の残り部分と一体的に作製される。水平舌状部31の数は変更することができるが、それらは少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも10個あり、カプセルの外周部に等しく分配されている。
図12Aに示すように、水平舌状部31はカプセル本体の外側において外方向に延出する。
【0071】
図12Bに示されるように、カプセル11がカプセルホルダ9内に機能的に挿入されると、水平舌状部31がカプセルホルダの中間高さの縁32に載ることからカプセルの底部部分はカプセルホルダと接触しない。この状態においては、
図12Bに示されるように、水平舌状部31以外のカプセル全体はカプセルホルダから持ち上がり、カプセルホルダに接触していない。
【0072】
マシンの抽出ヘッド5が閉じられると、ニードルプレート14はカプセル11及びカプセルホルダ9に向かって下方に動く。ニードルプレート14はカプセルの上部端18に接触し、例えば、
図2Bに示される原理に即して、上端18及びニードルプレートがカプセルホルダの上面に接触するまでカプセル全体を下方に動かす。ニードルプレートによって作用された圧力によってカプセルがカプセルホルダ内に移動すると、舌状部31は上向きに曲がる。舌状部31の弾性変形により、ニードルプレートに向かって垂直及び上方に方向付けられた抗力が生じる。先行する上述の本発明の別の実施形態と同様に、この抗力はカプセルの上端18と直接又は間接接触する圧力センサによって測定され得る。
【0073】
これまでのところ、本発明については、マシンの抽出ヘッドの閉鎖時にカプセルの変形可能部分に適用される弾性変形がマシンのニードルプレートによって適用されるように記載した。しかしながら、カプセルの変形可能部分の種類が何であってもこの変形は別の手法で適用できることは自明であろう。例えば、ニードルプレートは、工場内のカプセルの製造ラインの一部である圧力測定プレートと入れ替えることができる。この場合、変形されるカプセルの変形可能部分によって生じる弾性変形抗力を、例えば、品質管理ツール又は追跡ツールとして用い、工場内において種々の種類のカプセル(異なる飲料調製原材料を収容するそれぞれの異なる種類のカプセル)を区別することができる。この場合、各カプセルは、飲料調製マシン内のカプセルホルダによって所定の位置に保持されるため、製造、充填及び/又は密封ライン上の所定の位置に保持される。その後、測定プレートがカプセル上方から移動し、カプセルの上端を下方に押して、すでに記載した実施形態のそれぞれにおいて上述したように、カプセルの変形可能部分を弾性的に変形させる。測定プレートは、圧力荷重センサを備えるか、圧力荷重センサに直接的又は間接的に連結される。各カプセルの必須の特徴である測定された力は、上記カプセルに特定の及び所定の種類及び/又は量の飲料原材料を適切に充填するために使用され得る。
【0074】
図13A及び
図13Bに示される第6の実施形態においては、カプセルの変形可能部分はカプセル本体12の残り部分と一体的に製造されない。上記変形可能部分は、
図13Aに示すように、リング33の最下部内面から上記リングの中央に向かって内方及び上方に延出する一連の湾曲可撓性アーチ34を有するリング33を備える。
【0075】
各可撓性アーチ34の先端35は、リングがカプセル内部で組み立てられ、
図13Bに示すようにカプセルがその上側を上部膜24によって閉じられると、可撓性アーチ34の先端35が上部膜24に接触し、それを持ち上げるように配置される。
【0076】
カプセルがカプセルホルダ内に挿入され、抽出ヘッドが閉じられると、ニードルプレート14は上部膜24に接触し、それを押す。その結果、上部膜は、特定の変形程度(deformation amplitude)で下方に弾性的に変形される可撓性アーチ34とともに下へと曲がる。したがって、弾性的に変形されたアーチ34によって生じた抗力は、すでに上述した原理に即して、例えばニードルプレート内に位置する又はニードルプレートに直接又は間接接触している圧力センサによって検知され得る。この実施形態においては、アーチの数、長さ、曲率及び断面は、適切な所定の弾性変形特性、特に、特定の及び所定の力定数「k」を得るようになり得る。上で説明したように、所定の係数「k」はカプセル及び/又はその内容物に固有の飲料調製パラメータ又は他のデータの関数である。
【0077】
本発明のこの実施形態の代わりとして、
図14Aに示すように、アーチ34はリング33の最上内面から上記リングの中央に向かって延出し得る。動作原理は
図13A及び
図13Bを参照して上述したものと同じままである。この場合もまた、アーチは上部膜24の下面に接触し、上記上部膜を、
図14Bに示されるように、上向き凸状態に持ち上げる。
【0078】
図15A、
図15B及び
図15Cに示される本発明の第7の及び好適な実施形態においては、カプセル本体は酸素バリア膜37によって被覆された半剛性骨組構造体36(
図15Aに示される)で作製される。膜37は、例えば、本出願人の欧州特許出願第AN11178061号に記載されるようなインモールドラベリング(IML)プロセスを使用することによって、例えば、半剛構造体36と共射出成形される。
【0079】
半剛性骨組構造体36は、ベローズ部分38を形成する少なくとも1つの脆弱領域を備える。例えば、可撓性であるこのベローズ部分38以外の構造体の残り部分を剛性とすることができる。構造体におけるこの部分38の可撓性は、好ましくは、構造体の残り部分に比べるとより小さな断面によって実現される。それは、また、(より小さな断面の代わりとして又はそれに加えて)構造体36の残り部分とともに共射出されたより軟質の材料によって実現され得る。
【0080】
図15Aに示される実施形態においては、ベローズ部分38は、すなわち、垂直圧縮力が上記カプセルに付加されるとカプセルが実質的に垂直な軸線に沿って変形することができるように半剛性構造体の垂直領域の上部分に配置されている。
【0081】
カプセルがカプセルホルダ内に配置され、マシンの抽出ヘッドが開かれると、
図15Bに示されるように、カプセルホルダの上面の高さを超えて持ち上がる上記カプセルの上端18以外のカプセル外面全体がカプセルホルダに接触する。換言すると、カプセルの高さはカプセルホルダのカプセルの凹部よりも高い。この高さの差は図面内の矢印で示される。
【0082】
マシンの抽出ヘッドが閉じられると、
図15Cに一連の矢印により概略的に示されるニードルプレートがカプセルに押し付けられ、カプセルがカプセルホルダと上記ニードルプレートとの間に画定される容積に機能的に収まるようにカプセルを押し込む。
図15Cに示すように、上記カプセルの上端18がカプセルホルダの上面とニードルプレートの下面との間に挟まれるまでカプセルはその構造体36の可撓性ベローズ部分38の領域内において曲がる。この状態において、カプセルはマシンの抽出ヘッド内の機能的所定位置にあり、水注入ニードル(
図15Cに図示せず)がカプセルの上部膜に穴を開け、淹出サイクルが漏れのない状態で開始され得る。
【0083】
ベローズ部分38内で生じた抗力はニードルプレート内に配置されたセンサによって測定され得る。センサはカプセルにより上記ニードルプレートに付加された垂直力を検知する。
【0084】
マシンの抽出ヘッドが再度開かれると、カプセルは
図15Bに示されるその本来の状態に曲がって戻る。
【0085】
本発明の基となる一般原理として、カプセルの変形可能部分に適用される変形は材料挙動の法則に従う。そのため、変形の種類が圧縮(
図16Aと同様)、屈曲(
図16Bと同様)又はねじれ(
図16Cと同様)のどれであっても、上記変形可能部分の変形によって生じた力は上記変形の一次関数である。あらゆる種類の変形において、材料挙動の法則は、ばね又は舌状部又はねじれ部分が押し戻す力が、以下の通り、その平衡長さからの距離の関数であることを示す。
F=f(x)
式中、
「x」は変位ベクトル−ばねがその平衡長さから変形される距離及び方向。
「f(x)」は、ばねが発揮する復元力の大きさ及び方向。
【0086】
単純なばね要素の場合、材料内で生じる弾性変形力は変形程度の一次線形関数であり(F=k.x)、その両者は材料に固有の特徴である「ばね定数」又は「ヤング率」として知られる定数「k」によって関連付けられる。
【0087】
上で説明したように、本発明の一般原理は、各カプセルの係数「k」が飲料調製マシンによって測定され、飲料調製パラメータ又は他のデータとして、及びカプセルが工場内にある場合は製造ラインによる認識データとして解釈されるというものである。
【0088】
本発明の場合、カプセルの変形可能部分は変形下において変形程度に必ずしも直線的に関連しない力を生成する複雑なばね要素であると想定される。
【0089】
加えて、本発明によるカプセルは再利用不可能なカプセルであることが最も好ましい。その場合においては、消費者にとって、カプセルの変形可能部分がその弾性変形程度においてのみならず、その弾性変形限界を超えて、その塑性変形領域で変形されることが非常に望ましい。換言すると、カプセルの変形可能部分は、その塑性変形領域に達するように変形されることが好ましく、適用される変形により材料の固有の機械的特性が変化する。このような場合では、食品又は飲料淹出サイクル後にマシンの淹出用ヘッドが開かれると、カプセルの変形可能部分に保存されていた変形エネルギーが解放され、このため、上記変形可能部分はその初期状態に近い状態に戻る。しかしながら、このような場合では、材料の塑性変化により、及び
図17の点線曲線に示されるように、変形能プロファイルは初期のもの(
図17の実線曲線)とは異なる。使用済みカプセルが再度マシン内に挿入された場合、マシンはマシンの弾性変形能特性が新品のカプセルの変形特性に一致しないことを検知する。この場合、マシンは停止し、任意選択的に、カプセルを未使用のものと交換すべきであるという警報を使用者に伝達する。マシンが変形能曲線の変化を検知し得る手法は、例えば、
図17に示されるように、複数の変形程度において、例えば、
図17に示すように2つの点(第1の点は変形可能部分を構成する材料の弾性変形領域内において測定し、次いで、第2の点は、より大きくかつカプセルの変形可能部分を構成する材料の塑性変形領域内に位置する変形程度において測定した)おいてカプセルの変形可能部分内で生じた力を検知し、測定することによるものである。
図17に示すように、同じ伸度においては、カプセルの変形可能部分の材料内で生じる力は、カプセルが新品/未使用(実線曲線)のとき、又はカプセルが使用済みのとき又は破損している場合(点線曲線)で異なる。
【0090】
同様に、カプセルが工場での製造中に破損した場合、それを検出し、製造ラインから取り除くことができる。
【0091】
当然、マシン内に挿入される各カプセルについて、マシンがそれぞれ所定の変形程度に一致する特定数の反力を検知するようにマシンは(工場内で)プログラムされ得る。以下に記載の例では、マシンはマシン内に挿入された各カプセルについて3つの特定の変形程度を検知するようにプログラムされる。3つの変形程度はマシン内に挿入されるすべてのカプセルにおいて同一である。しかしながら、3つの変形程度それぞれにおいて検知される対応する反力は、各カプセルの変形特性の差異、ゆえに、本発明の原理によるキット内の各カプセルになっている異なるマシンの設定によりカプセルの種類ごとに異なる。
【0092】
本発明によれば、少なくとも2つのカプセルのキットが提供される。その例をここでより詳細に記載する。
【0093】
一例として、キットは2つのカプセル、すなわち、水溶性ミルク原材料を収容する第1のカプセルと、焙煎粉末不溶性コーヒー粉末を収容する第2のカプセルと、を備え得る。両カプセルはカプチーノなどの複数原材料の飲料を調製するためにマシンに連続的に挿入され、使用されるようになっている。
【0094】
第1のカプセルは
図3を参照して上述した第1の実施形態に相当し、第2のカプセルは
図4を参照して上述した第1の実施形態に相当する。
【0095】
最初にミルク相、次に、ミルクに追加されるコーヒー相を、両者を同じカップに注出することによって調製するために、両カプセルをマシン内に順次連続的に挿入する必要がある。キット内のカプセルは単回使用カプセルであり、使用後に廃棄される。
【0096】
使用者は第1のカプセル11、例えば、可溶性ミルク粉末カプセルを、マシンのキャビティ内に挿入し、マシンの閉鎖レバーを作動することによってキャビティを閉じる。マシンを閉鎖する間、第1のカプセルは変形され、カプセルの変形可能部分によって生じた反力がマシンの荷重センサによって検知される。荷重センサは測定された力値を少なくとも1つの飲料調製パラメータの設定値に変換する。本例では、マシンはカプセルの変形された変形可能部分によって生じた3つの異なる反力を検知し、3つの力はそれぞれ、マシンのキャビティの閉鎖動作時の特定の変形程度に相当する。
【0097】
第1の反力値は、マシンのプログラムによって、カプセルの変形可能な突起の0.2mmの変形程度に対し110mL量のミルクを注出する値に変換される。第2の反力値は、マシンのプログラムによって、0.5mmの変形程度に対し75℃の温度の水がカプセル内に注入される(カプセルから使用者のカップに注出される飲料の温度に実質的に相当する)値に変換される。第3の反力値は、マシンのプログラムによって、1.2mmの変形程度から、マシンのパイプシステム内のバルブの作動、及び淹出プロセスの終了時に空気を注入することによってカプセルを空にするための淹出サイクルの終了時における空気ポンプの作動に対応する値に変換される。上記空気は水注入ニードルと同じニードル内を循環する。使用者は、その後、マシンの制御盤の作動ボタンを押すことによって淹出サイクルを開始する。あるいは、マシンはキャビティが閉じられた数秒後に自動的に開始し、ミルクの淹出が完了すると、使用者はマシンのキャビティから第1のカプセルを取り出す。
【0098】
その後、使用者は、キットの第2のカプセルをマシンのキャビティ内に挿入する。このカプセルは焙煎粉末コーヒーのカプセルである。マシンのキャビティ内に挿入されたカプセル上でマシンのキャビティを閉じることによって、変形可能な変形部分にキャビティ壁によって閉鎖力が付加される。これに応じて、変形可能部分は抗力(又は反力)生じ、この力はマシンの力センサによって検知される。
図3及び
図4に示すような第1のカプセルに比べて、第2のカプセルにおけるより少数の変形可能な突起により、マシンのキャビティが閉じられたときにカプセルによって生じる力は概して低くなり、第2のカプセルの変形プロファイルは第1のカプセルのものと異なる(すなわち、
図17に示されるようなその変形グラフは異なる)。3つの力測定値はマシンによって検知され、そのそれぞれは、第1のカプセルにおいて検知された3つの変形程度よりも、変形可能部分の同じ所定の与えられた変形程度に一致する。3つの測定値は、第2のカプセルに特有であり、2つのカプセル間の機械的変形特性の差異により、第1のカプセル変形から変換されたものとは異なる対応する動作淹出設定に変換される。第2のカプセルの場合、変換されるマシンの設定は以下の通りである。すなわち、温度90℃の40mLの水をカプセル内に注入し、淹出プロセスの終了時にカプセルは空にされない。このような設定はこの第2のカプセル内に収容された焙煎粉末コーヒー原材料の淹出に特有であり、適切である。本発明は、したがって、マシン内に挿入されたそれぞれ特定のカプセル内に収容された原材料(又は複数の原材料)の最適な淹出要件にマシンの設定を自動的に適応させる使用者にとって簡単な手法を提供する。上記例では、ミルク調製でより多量の水をミルクに注入することが必要であるが、水をより低温で注入しなければならず、その一方で、焙煎粉末コーヒーはより少量の水を使用するが、より高温で淹出される。
【0099】
使用者が「スタート」を押すか、その代わりに、第1のカプセルについて記載したように、マシンは自動的に始動し、コーヒーの製造が開始されて、第1のカプセルから調製されたミルクをすでに含む同じカップ内に注出され、それにより、美味しいカプチーノが用意され、消費に供される。第2の淹出プロセスの終了時、使用者はマシンの淹出用キャビティからカプセルを取り出すことができ、又はその代わりに、淹出用キャビティからマシンの使用済みカプセル貯蔵部に落下させる使用済みカプセルの自動排出システムがマシンに設けられる。
【0100】
当然、上記例ではマシン内で連続的に使用される2つのカプセルのみを備えるカプセルのキットについて記載するが、本発明は、複数のカプセルを有するすべてのキットを含む。したがって、上記例に記載されるように、異なる特定及び適切な調製動作設定を用いることによってキットの各カプセル内に収容された原材料が淹出されるように、各カプセルがマシンの特定の設定プロファイルに相当する特定及び所定の変形プロファイルを有する、本発明の原理による2つを超えるカプセルを有するキットもまた適用可能である。
【0101】
本発明は、したがって、異なる調製パラメータ、ゆえに、以下のリスト、すなわち、カプセル内に注入される水の量、注入圧力、カプセル内に送達される水の流量、カプセル内に注入される水の温度、又はこれらの組み合わせから選択される異なる対応する飲料マシンの機能パラメータを必要とする、異なる原材料を有する異なる飲料を選択的に送達するためのシステムを提供する。
【0102】
調製は、飲料形成物質、より一般には、食品形成物質を収容するカプセル内に圧力下で流体を注入することによって実施される。
【0103】
本発明によるキットは、複数のカプセルを備え、カプセルは、物質を収容するチャンバと、飲料をカプセルから流出させる前にチャンバ内に特定の抽出圧力を保持するようになっている飲料注出構造体を含み、システム内における選択的使用のために第1及び第2のカプセルが提供される。
【0104】
第1のカプセルは、マシンを第1セットの飲料調製設定に設定するためにコード化された、特定の形状及び材料変形能特性に相当する第1の機械的変形プロファイルを有する組込み式変形可能部分を有する。
【0105】
上記のすべての実施形態において、変形可能部分は0.1mm〜20mmを含む、好ましくは0.15mm〜10mmを含む、より好ましくは0.5mm〜5mmを含む程度にて変形可能である。
【0106】
上記のすべての実施形態において、変形可能部分の特定の変形特性の特徴は、上記変形可能部分の変形程度に対する上記変形可能部分の反力の測定を含む。反力は荷重センサ又は圧力センサを使用することによって上述のように測定され得る。変形可能部分に適用される変形程度は、光センサ、電気機械センサ(複数位置)、誘導センサ又は変形された領域の、その変形時における位置を十分に高精度で(通常、0.01〜0.5mmの精度)測定することができる任意の他のセンサによって測定される。
【0107】
好ましくは、飲料マシンは、カプセルの変形可能部分によって上記センサに付加される戻り力(backforce)を検知するための圧力センサと、変形可能部分が変形されている間の上記変形可能部分の変位量を測定するための電気機械センサと、を併せて備える。電気機械センサは、例えば、カプセルが挿入されるマシン淹出用キャビティの1つの部分の表面に配置され、そのため、上記センサは以下のようなカプセルの変形可能部分の状態、すなわち、淹出用キャビティの開構成に相当する休止中の状態(すなわち、センサとカプセルとの間に接触はない)、次いで、中程度の変形(すなわち、淹出用キャビティが閉じられており、そのため、センサがカプセルの変形可能部分に接触する)及び最後に、変形可能部分の完全変形(すなわち、淹出用キャビティ及びセンサによってカプセルの変形可能部分に最大圧力が付加され、変形可能部分が、したがって、最大程度で変形されるような状態でマシンの淹出用キャビティがカプセル上で完全に閉じているとき)を検知する。
【0108】
上記変形可能部分によって付加された戻り力の少なくとも3つの異なる測定値が変形可能部分の3つの異なる状態(すなわち変形程度)において検知される。例えば、戻り力は以下のような変形可能部分の状態において測定される:1番目に、0mmの変位量(すなわち休止中)、その後、2番目に、0.5mmの変位量、3番目に、1mmの変位量。本発明によるカプセルのキット内の2つの異なるカプセルにおいては、圧力センサよって測定される戻り力は同じ変形程度において異なる。測定される変形特性の差異により、どの種類のカプセルがマシン内に挿入されたかをマシンに知らせる。そのため、マシンのプログラムは適切な飲料調製パラメータ(例えば、カプセル内に注入するのに適した水の量、水の温度等)を自動的に選択することができる。
【0109】
本明細書中に記載される本好適な実施形態に対する種々の変更及び修正は当業者には明らかであろうことは理解すべきである。このような変更及び修正は本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、かつその付随する利点を減じることなく施すことができる。したがって、このような変更及び修正は添付の請求項によって包含されるものとする。