特許第6585622号(P6585622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6585622管腔外抗菌コーティングを有するカテーテルチューブ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585622
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】管腔外抗菌コーティングを有するカテーテルチューブ
(51)【国際特許分類】
   A61L 29/16 20060101AFI20190919BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20190919BHJP
   A61L 29/14 20060101ALI20190919BHJP
   A61L 29/18 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   A61L29/16
   A61L29/06
   A61L29/14
   A61L29/18
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-564229(P2016-564229)
(86)(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公表番号】特表2017-513640(P2017-513640A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】US2015025795
(87)【国際公開番号】WO2015164132
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年2月19日
(31)【優先権主張番号】14/260,056
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シッダールタ ケー. シェヴゴーア
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−533005(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/151860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 29/16
A61L 29/06
A61L 29/14
A61L 29/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルチューブ上に抗菌コーティングを適用するための方法であって、
溶媒および抗菌剤を含有する溶液を、カテーテルチューブの外表面に適用するステップと、
前記カテーテルチューブをダイに通して、前記外表面から前記抗菌コーティングの一部を除去し、前記カテーテルチューブが前記ダイを通った後に前記抗菌コーティングのパターンが前記外表面上に残るようにするステップと、
前記カテーテルチューブの前記外表面上に前記抗菌剤のコーティングを残すように前記溶媒を蒸発させるステップと、
前記コーティングの上に潤滑剤を適用するステップであって、前記カテーテルチューブの前記外表面が流体にさらされたときに、前記潤滑剤は前記コーティングからの前記抗菌剤の拡散速度を制限する、ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記溶媒は、第1の温度における気圧に少なくとも等しい蒸気圧を有し、前記第1の温度は、前記抗菌剤の最高安全温度であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒はエタノールを含み、前記抗菌剤はグルコン酸クロルヘキシジンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑剤は、抗菌剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カテーテルチューブは、ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は、前記カテーテルチューブを拡張させて、前記抗菌剤が前記カテーテルチューブに浸透することを可能にすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パターンは、1または複数のストライプを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カテーテルチューブの前記外表面は、1または複数の溝を含み、前記パターンは、前記1または複数の溝内に前記抗菌コーティングを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記パターンは、前記抗菌コーティングを含まないかまたは前記抗菌コーティングのうちのわずかな量を含む、前記外表面の1または複数の部分を含み、したがって、前記カテーテルチューブの内腔の内容物が、前記1または複数の部分を通して視認可能なままになることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記パターンは、前記カテーテルチューブ中に含有された放射線不透過性材料に合致することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ダイは、前記ダイの内表面上に1または複数の溝を含み、前記1または複数の溝は、前記パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記カテーテルチューブは、先端部を有するカテーテルチューブのセグメントを備え、前記抗菌コーティングは、前記先端部に適用されないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記カテーテルチューブの前記外表面に前記抗菌コーティングを適用する前に、前記カテーテルチューブの一端部にマンドレルを挿入して前記抗菌コーティングが前記端部へ入るのを防止するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記端部は、前記カテーテルチューブに形成された先端部の反対側の端部を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項の前記方法によって製造されるカテーテルチューブであって、外周を有する外表面と、
前記外表面にパターンで適用された抗菌コーティングであって、前記パターンが前記外表面の前記外周の全体は覆わないようにされた抗菌コーティングと
を備えることを特徴とするカテーテルチューブ。
【請求項16】
前記パターンは、前記外表面の前記外周の全体に前記抗菌コーティングが適用された後に前記カテーテルチューブをダイに通すことによって前記外表面に形成された、複数のストライプを含むことを特徴とする請求項15に記載のカテーテルチューブ。
【請求項17】
前記複数のストライプは、前記外表面における複数の溝内に形成されることを特徴とする請求項16に記載のカテーテルチューブ。
【請求項18】
前記カテーテルチューブは、前記カテーテルチューブの長さに沿って延びる放射線不透過性材料の帯をさらに備え、前記パターンの前記複数のストライプは、前記放射線不透過性材料の帯と実質的に平行に伸びることを特徴とする請求項16に記載のカテーテルチューブ。
【請求項19】
前記カテーテルチューブは、前記抗菌コーティングが及んでいない先端部を備えることを特徴とする請求項15に記載のカテーテルチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、カテーテルチューブの外表面上に抗菌コーティングを有するカテーテル、およびそのようなカテーテルを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
末梢挿入中心静脈カテーテルおよび他の中心静脈カテーテルは、増加する院内感染率に関連している。カテーテルチューブに起因する院内感染は、典型的には、カテーテルチューブの外表面に沿ったバイオフィルム形成によるものである。この問題に対処するために、カテーテルチューブの外表面に抗菌コーティングを有する多くの中心静脈カテーテルが製造されている。そのようなコーティングは、カテーテルチューブが患者の脈管構造内に配置されているときに表面に微生物がコロニーを形成する可能性を最小にする。
【0003】
末梢静脈カテーテルは、典型的には滞留時間が中心静脈カテーテルよりも短く、それにより、本質的に末梢静脈カテーテルの外表面上のバイオフィルム形成のリスクが低減される。これにも関わらず、末梢静脈カテーテルの外表面上のバイオフィルム形成による院内感染のリスクが依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0065798号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0009831号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0135949号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カテーテルチューブの外表面に抗菌コーティングを適用するために使用される現在の技術は中心静脈カテーテルに有効であるが、これらの技術はしばしば末梢静脈カテーテルには不適切なことがある。たとえば、末梢静脈カテーテルは、カテーテルの挿入中に血液フラッシュバックが視認できるように構成されることが多い。中心静脈カテーテル上に使用されるコーティングは典型的には透明性が低く、したがってフラッシュバックの視認性を妨げる。また、末梢静脈カテーテルの製造時には、一般的にフレアまたはスエージ工程中にチューブを伸張する。現行の抗菌コーティングを使用して処理されているカテーテルチューブが伸張されると、コーティングがしばしば裂けてカテーテルが使用できなくなる。したがって、抗菌コーティングをカテーテルチューブに適用するための現在の技術は、末梢静脈カテーテルで使用するのに適していないことが判明している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カテーテルチューブの外表面上に抗菌コーティングを含むカテーテル、およびそのようなコーティングを有するカテーテルを製造するための方法に及ぶ。抗菌コーティングは、カテーテルチューブが患者の脈管構造内に配置されたときのカテーテルチューブの外表面における微生物コロニー形成のリスクを最小限にする。
【0007】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、抗菌コーティングの上に潤滑剤を適用する前に抗菌コーティングをカテーテルチューブに適用する前処理工程を用いて製造され得る。そのような場合、潤滑剤は、外表面上にコーティングを保持し、またコーティングからの抗菌剤の拡散を制限する働きをすることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、フラッシュバックの視認性を妨害しない抗菌コーティングを含むことができる。抗菌コーティングは最小限に透明化され得るので、コーティングは、コーティングされていないまたは最小限にコーティングされた外表面の部分を残すストライプ状にされたパターン(模様、以下パターンとする。)または他のパターンで外表面に適用され得る。すると、フラッシュバックは、コーティングが無いまたは最小限のコーティングが存在するカテーテルチューブの部分を通して視認可能なままになる。
【0009】
1つの例示的な実施形態では、本発明は、カテーテルチューブ上に抗菌コーティングを適用するための方法として実装される。溶媒および抗菌剤を含有する溶液が、カテーテルチューブの表面に適用され得る。次いで、溶媒が、カテーテルチューブの表面上に抗菌剤のコーティングを残すように蒸発することを可能にされる。次いで、潤滑剤がコーティングの上に適用される。潤滑剤は、カテーテルチューブの表面が流体にさらされたときにコーティングからの抗菌剤の拡散速度を制限する。
【0010】
いくつかの実施形態では、溶媒は、第1の温度における気圧に少なくとも等しい蒸気圧を有し、第1の温度は、抗菌剤の最高安全温度である。
【0011】
いくつかの実施形態では、溶媒はエタノールを含み、抗菌剤はグルコン酸クロルヘキシジンを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、溶媒は、カテーテルチューブを拡張させて、抗菌剤がカテーテルチューブに浸透することを可能にする。
【0013】
別の例示的な実施形態では、本発明は、カテーテルチューブに抗菌コーティングをパターンで適用するための方法として実装される。抗菌コーティングは、カテーテルチューブの外表面上に適用される。次いで、カテーテルチューブが、ダイに通されて、外表面から抗菌コーティングの部分を除去され、カテーテルチューブがダイを通った後に抗菌コーティングのパターンが外表面上に残るようにされる。
【0014】
いくつかの実施形態では、パターンは、抗菌コーティングの1または複数のストライプを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブの外表面は、1または複数の溝(チャネル)を含み、パターンは、1または複数の溝内に抗菌コーティングを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、パターンは、抗菌コーティングを含まないかまたは抗菌コーティングのうちのわずかな量を含む、外表面の1または複数の部分を含み、したがって、カテーテルチューブの内腔の内容物が、1または複数の部分を通して視認可能なままになる。
【0017】
いくつかの実施形態では、パターンは、カテーテルチューブ中に含有された放射線不透過性材料に合致する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ダイは、ダイの内表面上に1または複数の溝を含む。1または複数の溝はパターンを形成する。
【0019】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブは、先端部を有するカテーテルチューブのセグメントを備え、抗菌コーティングは、先端部に適用されない。
【0020】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブの外表面に抗菌コーティングを適用する前に、カテーテルチューブの一端部にマンドレルを挿入して抗菌コーティングが端部へ入るのを防止する。いくつかの実施形態では、この端部は、カテーテルチューブに形成された先端部の反対側の端部を含む。
【0021】
別の例示的な実施形態では、本発明は、外周(環状面;circumference)を有する外表面と、外表面にパターンで適用された抗菌コーティングであって、パターンが外表面の外周の全体は覆わないようにされた抗菌コーティングと、を備えるカテーテルチューブとして実装される。
【0022】
いくつかの実施形態では、パターンは、外表面の外周の全体に抗菌コーティングが適用された後にカテーテルチューブをダイに通すことによって外表面に形成された、複数のストライプを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数のストライプは、外表面における複数の溝内に形成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブは、カテーテルチューブの長さに沿って延びる放射線不透過性材料の帯をさらに備える。パターンの複数のストライプは、放射線不透過性材料の帯と実質的に平行に伸びる。
【0025】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブは、抗菌コーティングが及んでいない先端部を備える。
【0026】
この概要は、以下の発明を実施するための形態でさらに説明される一連の概念を単純化された形式で紹介するために提供されている。この概要は、請求される主題の主要な特徴または本質的特徴を識別することを意図していない。
【0027】
本発明の追加の特徴および利点は以下の説明に記載され、一部は説明から明らかになり、または本発明の実施によって認識され得る。本発明の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される手段および組合せによって実現され獲得され得る。本発明のこれらのおよび他の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになり、または以下に記載される本発明の実施によって認識され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の上記および他の利点および特徴が得られる方法を説明するために、簡単に上述された本発明のより具体的な説明が、添付の図面に示されるその特定の実施形態を参照して与えられる。これらの図面は本発明の典型的な実施形態を示すにすぎず、したがってその範囲を限定するとみなされるべきでないことを理解した上で、本発明は、添付の図面の使用を通じてさらに具体的かつ詳細に記述され説明される。
図1A】製造者の種々の段階におけるカテーテルチューブ100の部分を示す図のうち、抗菌コーティングの適用前のカテーテルチューブ100を示す図である。
図1B】製造者の種々の段階におけるカテーテルチューブ100の部分を示す図のうち、抗菌コーティングの適用後のカテーテルチューブ100を示す図である。
図1C】製造者の種々の段階におけるカテーテルチューブ100の部分を示す図のうち、抗菌コーティング101の上に潤滑剤102を適用した後のカテーテルチューブ100を示す図である。
図2A】本発明の1または複数の実施形態による抗菌コーティング101および潤滑剤102をカテーテルチューブ100に適用する工程を示す図のうち、カテーテルチューブ100が溶媒および抗菌剤を含む溶液200に浸されている状態を示す図である。
図2B】本発明の1または複数の実施形態による抗菌コーティング101および潤滑剤102をカテーテルチューブ100に適用する工程を示す図のうち、溶液200から取り出された後に、カテーテルチューブ100の外表面に抗菌剤を残しながら蒸発溶媒が蒸発するカテーテルチューブ100を示す図である。
図2C】本発明の1または複数の実施形態による抗菌コーティング101および潤滑剤102をカテーテルチューブ100に適用する工程を示す図のうち、蒸発溶媒が蒸発した後にカテーテルチューブ100上に残る抗菌コーティング101を示す図である。
図2D】本発明の1または複数の実施形態による抗菌コーティング101および潤滑剤102をカテーテルチューブ100に適用する工程を示す図のうち、カテーテルチューブ100の抗菌コーティング101の上に適用されている滑剤102を示す図である。
図3A】カテーテルチューブ中に含有された放射線不透過性材料305に概ね揃うパターンでカテーテルチューブに適用される抗菌コーティング301を含むカテーテルチューブ300を示す図のうち、放射線不透過性材料の帯305がカテーテルチューブ内で長さ方向に伸びているカテーテルチューブ300の斜視図である。
図3B】カテーテルチューブ中に含有された放射線不透過性材料305に概ね揃うパターンでカテーテルチューブに適用される抗菌コーティング301を含むカテーテルチューブ300を示す図のうち、カテーテルチューブ300の断面図である。
図3C】カテーテルチューブ中に含有された放射線不透過性材料305に概ね揃うパターンでカテーテルチューブに適用される抗菌コーティング301を含むカテーテルチューブ300を示す図のうち、抗菌コーティング301がカテーテルチューブの外表面の放射線不透過性材料の帯305の上に適用されたときのカテーテルチューブ300を示す図である。
図4A】抗菌コーティング301を含むための放射線不透過性材料405および溝406を含むカテーテルチューブ400を示す図のうち、放射線不透過性材料の帯405がカテーテルチューブ内で長さ方向に伸びているカテーテルチューブ400の斜視図である。
図4B】抗菌コーティング301を含むための放射線不透過性材料405および溝406を含むカテーテルチューブ400を示す図のうち、溝406がどのように放射線不透過性材料の帯405に概ね揃うかを示すカテーテルチューブ400の断面図である。
図4C】抗菌コーティング301を含むための放射線不透過性材料405および溝406を含むカテーテルチューブ400を示す図のうち、抗菌コーティング301が溝406内に適用されたときのカテーテルチューブ400を示す図である。
図5A】カテーテルチューブの外表面に抗菌コーティング301のパターンを形成するためにダイがどのように使用されるかを示す図のうち、6つのストライプが形成されるパターンを形成するためのダイの内表面に形成された6つの溝501を有する例示的ダイ580の上面図である。
図5B】カテーテルチューブの外表面に抗菌コーティング301のパターンを形成するためにダイがどのように使用されるかを示す図のうち、カテーテルチューブ300であって、それがダイ580を通ることで抗菌コーティング301の6つのストライプを残したカテーテルチューブ300の断面図である。
図5C】カテーテルチューブの外表面に抗菌コーティング301のパターンを形成するためにダイがどのように使用されるかを示す図のうち、抗菌コーティング301を含有する溶液にカテーテルチューブが浸された後に、どのようにカテーテルチューブ300をダイ580に通すことができるかを示す図である。
図6A】どのように抗菌コーティングをカテーテルチューブの部分に適用することができるかを示す図のうち、抗菌コーティング301がカテーテルチューブの本体に適用されているが先端部に適用されていないカテーテルチューブ600の例を示す図である。
図6B】どのように抗菌コーティングをカテーテルチューブの部分に適用することができるかを示す図のうち、コーティングをパターンで適用するためにダイ680を使用しながら、先端部にコーティングを適用することなく、どのように抗菌コーティング301をカテーテルチューブ600に適用できるかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、カテーテルチューブの外表面上に抗菌コーティングを含むカテーテル、およびそのようなコーティングを有するカテーテルを製造するための方法に及ぶ。抗菌コーティングは、カテーテルチューブが患者の脈管構造内に配置されたときのカテーテルチューブの外表面における微生物コロニー形成のリスクを最小にする。
【0030】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、抗菌コーティングの上に潤滑剤を適用する前に抗菌コーティングをカテーテルチューブに適用する前処理工程を用いて製造され得る。そのような場合、潤滑剤は、外表面上にコーティングを保持し、またコーティングからの抗菌剤の拡散を制限する働きをすることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、カテーテルは、フラッシュバックの視認性を妨害しない抗菌コーティングを含むことができる。抗菌コーティングは最小限に透明化され得るので、コーティングは、コーティングされていないまたは最小限にコーティングされた外表面の部分を残す、ストライプ状にされたパターンまたは他のパターンで外表面に適用され得る。すると、フラッシュバックは、コーティングが無いまたは最小限のコーティングが存在するカテーテルチューブの部分を通して視認可能なままになる。
【0032】
1つの例示的な実施形態では、本発明は、カテーテルチューブ上に抗菌コーティングを適用するための方法として実装される。溶媒および抗菌剤を含有する溶液が、カテーテルチューブの表面に適用され得る。次いで、溶媒が、カテーテルチューブの表面上に抗菌剤のコーティングを残すように蒸発することを可能にされる。次いで、潤滑剤がコーティングの上に適用される。潤滑剤は、カテーテルチューブの表面が流体にさらされたときにコーティングからの抗菌剤の拡散速度を制限する。
【0033】
いくつかの実施形態では、溶媒は、第1の温度における気圧に少なくとも等しい蒸気圧を有し、第1の温度は、抗菌剤の最高安全温度である。
【0034】
いくつかの実施形態では、溶媒はエタノールを含み、抗菌剤はグルコン酸クロルヘキシジンを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、溶媒は、カテーテルチューブを拡張させて、抗菌剤がカテーテルチューブに浸透することを可能にする。
【0036】
別の例示的な実施形態では、本発明は、カテーテルチューブに抗菌コーティングをパターンで適用するための方法として実装される。抗菌コーティングは、カテーテルチューブの外表面上に適用される。次いで、カテーテルチューブは、ダイに通されて、外表面から抗菌コーティングの部分を除去され、カテーテルチューブがダイを通った後に抗菌コーティングのパターンが外表面上に残るようにされる。
【0037】
いくつかの実施形態では、パターンは、抗菌コーティングの1または複数のストライプを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブの外表面は、1または複数の溝を含み、パターンは、1または複数の溝内に抗菌コーティングを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、パターンは、抗菌コーティングを含まないかまたは抗菌コーティングのうちのわずかな量を含む、外表面の1または複数の部分を含み、したがって、カテーテルチューブの内腔の内容物が、1または複数の部分を通して視認可能なままになる。
【0040】
いくつかの実施形態では、パターンは、カテーテルチューブ中に含有された放射線不透過性材料に合致する。
【0041】
いくつかの実施形態では、ダイは、ダイの内表面上に1または複数の溝を含む。1または複数の溝はパターンを形成する。
【0042】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブは、先端部を有するカテーテルチューブのセグメントを備え、抗菌コーティングは、先端部に適用されない。
【0043】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブの外表面に抗菌コーティングを適用する前に、カテーテルチューブの一端部にマンドレルを挿入して抗菌コーティングが端部へ入るのを防止する。いくつかの実施形態では、この端部は、カテーテルチューブに形成された先端部の反対側の端部を含む。
【0044】
別の例示的な実施形態では、本発明は、外周を有する外表面と、外表面にパターンで適用された抗菌コーティングであって、パターンが外表面の外周の全体は覆わないようにされた抗菌コーティングと、を備えるカテーテルチューブとして実装される。
【0045】
いくつかの実施形態では、パターンは、外表面の外周の全体に抗菌コーティングが適用された後にカテーテルチューブをダイに通すことによって外表面に形成された、複数のストライプを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、複数のストライプは、外表面における複数の溝内に形成される。
【0047】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブは、カテーテルチューブの長さに沿って延びる放射線不透過性材料の帯をさらに備える。パターンの複数のストライプは、放射線不透過性材料の帯と実質的に平行に伸びる。
【0048】
いくつかの実施形態では、カテーテルチューブは、抗菌コーティングが及んでいない先端部を備える。
【0049】
本発明の第1の実施形態によれば、カテーテルチューブは、潤滑剤を適用する前に抗菌コーティングがカテーテルチューブに適用される前処理工程を用いて製造され得る。この前処理工程を用いて製造されるカテーテルチューブ100が、製造の種々の段階中の図1A図1Cに示される。図1Aは、抗菌コーティングの適用前のカテーテルチューブ100を示す。カテーテルチューブ100は、ポリウレタンを含むカテーテルとして静脈内で使用するのに適した任意の材料から作られ得る。
【0050】
前処理工程を通過した後、図1Bに示されるように、抗菌コーティング101がカテーテルチューブ100の外表面上に形成される。次いで、図1Cに示されるように、潤滑剤102がカテーテルチューブの抗菌コーティング101の上に適用され得る。抗菌コーティング101の上に潤滑剤102を適用することによって、カテーテルチューブ100が患者の脈管構造内に配置されたとき、抗菌コーティング101内の抗菌剤の拡散が、望ましい速度に制限される。言い換えれば、抗菌コーティング101上における潤滑剤102の存在が、抗菌剤がコーティングから血流中へ溶ける速度を低下させる。これは、血液内の抗菌剤の過剰濃度による毒性の可能性を最小にし、またコーティングの有効寿命を延長することができる。
【0051】
図2A図2Dは、抗菌コーティング101および潤滑剤102をカテーテルチューブ100に適用するための工程を示す。1または複数の本発明の実施形態によれば、カテーテルチューブの外表面に溶液を適用し、次いで溶液中の溶媒を蒸発させて抗菌剤を含有するコーティングを残す工程を用いて、抗菌コーティング101がカテーテルチューブ100に適用され得る。
【0052】
図2Aは、溶媒および抗菌剤を含む溶液200に浸されているカテーテルチューブ100を示す。図2Aは、浸されているカテーテルチューブ100の短い部分のみを示しているが、相当な長さのカテーテルチューブが同時にこのようなやり方で処理され得ることを理解されたい。さらに、カテーテルチューブ100は既に先端部を有するものとして示されているが、いくつかの実施形態では、カテーテルチューブの上または内に先端部または他の特徴を形成する前に、溶液200がカテーテルチューブに適用され得る。また、いくつかの実施形態では、カテーテルチューブ100の端部は、溶液200がチューブの内腔に入るのを防止するために塞がれ得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、溶液200中で使用される溶媒および抗菌剤は、溶媒の蒸気圧がおよそ、抗菌剤の最大安全温度未満の温度における気圧以上になるように選択され得る。このようにして、抗菌コーティングを適切に形成されることを確実にするために溶媒の適切な蒸発速度を得ることができる。たとえば、溶液200は、80℃でおよそ800mmHg(およそ106658Pa)の(80℃で気圧に近い)蒸気圧を有するエタノールと、90℃まで安全に使用できるグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)とを含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、溶液200をカテーテルチューブ100に適用することによって、溶媒がカテーテルチューブ100を拡張または膨張させる。この拡張は、カテーテルチューブ材料(たとえば、ポリウレタンなどのポリマー)の有孔性を大きくして、抗菌剤が材料に浸透できるようにする。溶媒がカテーテルチューブ100から蒸発し、材料がその通常のサイズに戻ったとき、抗菌剤が材料内に残るので、チューブの表面上のみのコーティングの寿命を超える抗菌性を提供することができる。
【0055】
図面に戻ると、図2Bは、溶液200から取り出された後のカテーテルチューブ100を示している。溶液200の量がカテーテルチューブ100の表面に残り、溶媒はカテーテルチューブ100の表面から蒸発する。カテーテルチューブ100を熱および/または減圧された気圧にさらすことによって、蒸発が加速され得る。図2Cに示されるように、溶媒が完全に蒸発した後に抗菌コーティング101が残されている。
【0056】
最後に、図2Dに示されるように、抗菌コーティング101が形成された後、潤滑剤102がコーティングの上に(たとえば噴霧によって)適用され得る。カテーテルチューブ100と患者の皮膚との間に潤滑を与えるのに加えて、潤滑剤102は、抗菌コーティング101上における一時的なシーラントの役割もして、コーティング(またはコーティング内の抗菌剤)が血液などの周囲の液体に溶ける速度を低下させることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、潤滑剤102は抗菌剤を含有することもできる。そのような場合、潤滑剤102内の抗菌剤は、チューブの挿入の際に余分な潤滑剤がたまり得るカテーテルチューブ100の挿入部位において微生物バリアを提供することができる。適切な潤滑剤として、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Anti−Infective Lubricant For Medical Devices およびMethods For Preparing The Sameという名称の特許文献1、およびAnti−Infective Lubricant For Medical Devices およびMethods For Preparing The Sameという名称の特許文献2に開示されたものがある。
【0058】
本発明の第2の実施形態によれば、抗菌コーティングはカテーテルチューブにパターンで適用され得る。(チューブの外周全体を覆う途切れのない層と対照的に)コーティングをパターンで適用することは、様々な理由により望ましいことがある。たとえば、多くのコーティングは、カテーテルチューブの内腔内のフラッシュバックの視認性を制限する。そのような場合、チューブの外周全体は覆わないストライプ状または他のパターンでコーティングを適用することができ、それにより、コーティングが無いカテーテルチューブの部分が残され、それを通してフラッシュバックが容易に視認可能なままになる。また、途切れの無いコーティングは、末梢静脈カテーテルの製造中に一般的にあるようにカテーテルチューブが大きく伸ばされたときに、より裂けやすい。そのような場合に、裂ける可能性を最小にするために非連続的コーティングが使用され得る。
【0059】
図3A図3Cは、どのように抗菌コーティング301がストライプ状にされたパターンでカテーテルチューブ300に適用され得るかに関する1つの例示的実施形態を示す。この例では、カテーテルチューブ300は、図3Aの斜視図および図3Bの断面図に示されるように、放射線不透過性の帯305を含む。放射線不透過性の帯305はカテーテルチューブ300内に組み入れられて、X線でのカテーテルチューブ300の視認性を向上することができる。カテーテルチューブ300においてフラッシュバックが容易に視認可能であり得る部分を保持するために、放射線不透過性の帯305と概ね揃うストライプパターンで抗菌コーティング301が適用され得る。
【0060】
図3Cは、どのように抗菌コーティング301がカテーテルチューブ300の外表面上にストライプとして適用され得るかを示す。図示されるように、カテーテルチューブ300は、放射線不透過性の帯305と概ね揃う抗菌コーティング301の6つのストライプを含む。このようにすると、放射線不透過性の帯の間のカテーテルチューブ300の部分は、抗菌コーティング301を含まず、または最小限の抗菌コーティング301だけを含み、したがって、これらの部分を通したフラッシュバックの視認性を制限しない。抗菌コーティング301のストライプは放射線不透過性の帯305と同様の幅で示されているが、ストライプは所望に応じてより広い幅または狭い幅を有してよい。
【0061】
図4A図4Cは、どのように抗菌コーティング301がストライプ状にされたパターンでカテーテルチューブ400に適用され得るかに関する別の例示的実施形態を示す。カテーテルチューブ400は、図4Bの断面図に最も良く示されるように放射線不透過性の帯405に概ね平行に伸びる溝406をカテーテルチューブ400が含むこと以外は、カテーテルチューブ300と同様である。抗菌コーティング301がこれらの溝406内に適用される一方、カテーテルチューブ400の外表面の部分は抗菌コーティング301が無い(または実質的に無い)ままとなり、これらの部分を通したフラッシュバックの視認性を維持することができる。
【0062】
図3A図3Cおよび図4A図4Cに示された実施形態のそれぞれにおいて、抗菌コーティング301は、カテーテルチューブの外周全体にわたっては連続していない。したがって、チューブが伸張されたときに抗菌コーティングが裂ける可能性が低くなる。たとえば、これらの図は先端部を既に有するものとしてカテーテルを示しているが、いくつかの実施形態では、抗菌コーティングがチューブに適用された後に先端部が形成されてもよい。コーティングの非連続的パターンは、先端部形成の間、またはスエージなどによってカテーテルアダプタにカテーテルを固定する工程の間にコーティングが裂ける可能性を最小にする。
【0063】
また、カテーテルチューブが抗菌コーティングを適用された後に熱成形工程にさらされる場合、抗菌コーティングは、熱成形工程中にカテーテルチューブと共にコーティングが変形することを可能にする熱可塑性接着剤マトリックス(たとえばポリウレタン)から構成され得る。たとえば、先端部は、しばしば熱成形工程を使用してカテーテルチューブに形成される。そのような場合、抗菌コーティングは、角度が付けられた先端部に抗菌コーティングが合致することを可能にして先端部が抗菌コーティングを保持するようにするために、熱可塑性接着剤マトリックス(たとえばポリウレタン)から構成され得る。このように、図3Aおよび図4Aで抗菌コーティングが先端部に適用されないことが示される場合でも、本発明の技術は、先端部の形成が抗菌コーティングの適用の前であるか後であるかに関わらず、カテーテルチューブの本体および先端部に沿って延びることが可能な抗菌コーティングのパターンの適用を促進する。
【0064】
図5A図5Cは、ストライプ状にされたパターンで抗菌コーティングを適用するための例示的工程を示す。図5Aに示されるように、ダイ580は、所望のパターンで抗菌コーティングを適用するために使用され得る。ダイ580は、その内表面に沿って延びるいくつかの溝501を含む。図5Bに示されるように、溝501は、図3Cに示されたパターン(すなわち、放射線不透過性材料の帯と概ね平行に伸びる6つのストライプのパターン)と同様のパターンを適用するために構成される。
【0065】
図5Cは、抗菌コーティング301がチューブの外表面に適用された後に、どのようにカテーテルチューブ300をダイ580に通すことができるかを示す。図示されるように、カテーテルチューブ300は、抗菌コーティング301を含有する溶液に浸される。次いで、カテーテルチューブ300が溶液から引き出されると、チューブがダイ580に通される。ダイ580の内径は、カテーテルチューブ300の外径に近接して合致して、チューブの外表面から抗菌コーティングを拭い落とすように構成される。しかしながら、ダイ580は溝501を含むので、抗菌コーティング301の6つのストライプがカテーテルチューブ300の外表面上に残ることになる。いくつかの実施形態では、抗菌コーティングがカテーテルチューブに適用された後、コーティングが(たとえば熱または紫外線を使用して)硬化され得る。
【0066】
図5Cでは、抗菌コーティングが適用されるときに既にカテーテルチューブ300が先端部を含んでいるように示しているが、上述されたように、コーティングが適用された後に先端部が形成されてもよい。そのような場合、熱可塑性接着剤マトリックスを使用することにより、熱成形工程中に抗菌コーティングを再形成することができ、したがってストライプが先端部の角度を付けられた表面に合致することが可能である。このようにして、抗菌ストライプは、カテーテルチューブの長さ全体に沿って延びることができる。
【0067】
カテーテルチューブが溝を含む場合、溝を全く有さない(すなわち円形の内径を有する)ダイを使用して、チューブのすべての外表面から抗菌コーティングを拭い落とし、それにより溝内のみにコーティングを残すことができる。また、異なるパターンを形成する溝を有するダイが使用されてもよい。たとえば、ダイ580よりも多数もしくは少数の溝、または様々な幅もしくは深さの溝を有するダイが使用され得る。また、カテーテルチューブがダイに通されるときにダイ(またはカテーテルチューブ)を回転させることにより、らせん状パターンが適用されてもよい。したがって、本発明は、様々なタイプの抗菌コーティングパターンに及ぶ。
【0068】
図3A図3C図4A図4C、および図5A図5Cは、放射線不透過性の帯を含むカテーテルチューブに対するコーティングの適用を示しているが、コーティングをパターンで適用するための技術は、放射線不透過性材料を含まないカテーテルチューブに同様に使用され得る。たとえば、カテーテルチューブ300およびカテーテルチューブ400について、それらが放射線不透過性の帯305および405をそれぞれ含有していなくても、同じパターンが適用され得る。
【0069】
ダイを使用してパターンを適用するための技術は、一般に相当な長さのカテーテルチューブに対して使用されてよい。たとえば、いくつかのカテーテルを作るために十分な長さのカテーテルチューブが、抗菌剤301を含有する溶液に浸され、次いでダイ580に通されてよい。次いで、カテーテルチューブは、所望の長さのセグメントに切断されることができ、先端部がセグメントに形成されることができる。そのような場合、熱成形工程を用いて先端部を形成するのが一般的であるので、熱可塑性接着剤マトリックスからなる抗菌コーティングを使用するのが望ましいことがある。
【0070】
しかしながら、場合によっては、再熱成形されることがない熱硬化性ポリマーからなる抗菌コーティングを使用するのが望ましい。そのようなコーティングは再熱成形されることがないので、抗菌コーティングを適用する前に先端部を有するセグメントを形成するのが望ましい。
【0071】
図6Aおよび図6Bは、図6Aに示されるようにコーティングが先端部に沿って延びないように、抗菌コーティングをどのようにカテーテルチューブのセグメントに適用することができるかに関する例示的実施形態を示す。上述された工程は、抗菌コーティングを含有する溶液にカテーテルチューブを浸すことを伴うので、抗菌コーティングの量が、カテーテルチューブの内腔に入ってチューブの内表面上にコーティングを形成する。これは、長い長さのカテーテルチューブが切断前に処理される場合には、内表面にコーティングを有するチューブのいずれの部分も除去するようにチューブの端部が切断され得るので、問題ではない。対照的に、カテーテルチューブが抗菌コーティングを受ける前にまずセグメントに切断され先端が形成される場合は、コーティングがセグメントの内腔に入るのを防止することが望ましい。
【0072】
図6Bは、コーティングがセグメントの内腔内に入るのを防止しながら、コーティングを先端部に適用することなく、図5A図5Cに使用されるのと同様の工程を用いて、抗菌コーティングのパターンをカテーテルチューブ600のセグメントにどのように適用することができるかを示す。図示されるように、抗菌コーティングを含有する溶液にセグメント600を浸す前に、マンドレル670が、先端部の反対側のセグメント600の端部に挿入される。次いで、セグメントは、先端部が浸されないようにしながら、マンドレル端部の方から溶液に浸される。次いで、セグメントをダイ680に通して、余分な抗菌コーティングを除去して所望のパターンを残すことができる。次いで、マンドレルが除去され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、マンドレルを除去するのではなく、マンドレルを含むセグメントの部分を切り離せるように、セグメントは、必要とされるよりも少し長い長さで初めに切断され得る。マンドレルが切り離された後で得られるセグメントの長さは、カテーテルチューブの所望の長さとすることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、参照により組み込まれるAntimicrobial Coatingsという名称の特許文献3に説明された抗菌コーティングの配合が、パターンが形成される実施形態で使用され得る。具体的な例では、そのような配合がポリウレタンカテーテルチューブに適用され、紫外線を使用して硬化され、バイオフィルム成長を阻止するクロルヘキシジン溶出層を形成することができる。
【実施例】
【0075】
[実施例1]
阻止帯(Zone-of-Inhibition;ZOI)試験
【0076】
5%CHG、20%水、75%エタノールからなる溶液にカテーテルを浸すことによって、20ゲージ×1.25インチ(3.175cm)カテーテルを前処理して、抗菌コーティングを形成した。コーティングされたカテーテルを2分間乾燥させた。次いで、抗菌コーティングされたカテーテルに、0.5w/w%CHGを含有するシリコーン潤滑剤エマルジョンを噴霧した。前処理を受けなかったカテーテルにも同じ潤滑剤エマルジョンを噴霧した。次いで、前処理済みと未処理の両方のカテーテルの小さいセグメントを阻止帯(ZOI)試験にかけた。前処理済みカテーテルは表皮ブドウ球菌について最大19mm ZOIを示したのに対し、未処理のカテーテルはわずか1.5mm ZOIを示した。
【0077】
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で実施され得る。説明された実施形態は、すべての点において例示にすぎず限定するものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上記の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に入るすべての変更は、その範囲内に包含されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B