特許第6585627号(P6585627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーシン イタリア ソチエタ ペル アツィオーニの特許一覧

特許6585627車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車
<>
  • 特許6585627-車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車 図000002
  • 特許6585627-車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車 図000003
  • 特許6585627-車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車 図000004
  • 特許6585627-車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車 図000005
  • 特許6585627-車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車 図000006
  • 特許6585627-車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車 図000007
  • 特許6585627-車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585627
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/06 20140101AFI20190919BHJP
   E05B 85/16 20140101ALI20190919BHJP
   B60J 5/00 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
   E05B77/06 A
   E05B85/16 Z
   !B60J5/00 L
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-565667(P2016-565667)
(86)(22)【出願日】2015年5月4日
(65)【公表番号】特表2017-515020(P2017-515020A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】EP2015059713
(87)【国際公開番号】WO2015169744
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2018年3月5日
(31)【優先権主張番号】14425053.7
(32)【優先日】2014年5月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516180070
【氏名又は名称】ユーシン イタリア ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】シモーヌ イラルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットリオ ジャッコーネ
(72)【発明者】
【氏名】アントニー ゲラン
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第10114966(DE,A1)
【文献】 特表2006−504016(JP,A)
【文献】 特表2007−535627(JP,A)
【文献】 特開平10−018664(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0313036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− ブラケット(108)と、
− 初期位置から最終位置まで、前記ブラケット(108)に相対的に変位することによって、錠(102)を作動させるように構成されており、前記ブラケット(108)への、一衝撃方向に沿う衝撃(136)によって、前記初期位置から前記最終位置まで変位し得る作動素子(110)と、
− 前記衝撃(136)によって、前記作動素子(110)の、前記最終位置への到達を可能にしている非組合い位置から、前記作動素子(110)を、前記初期位置と前記最終位置との間にある第1中間被阻止位置(708)に留めるための妨害位置(706)に向かって、前記ブラケット(108)に相対的に変位するように構成されている阻止素子(140)とを備えている車両錠作動システム(106)であって、
前記阻止素子(140)は、前記非組合い位置から前記妨害位置(706)まで変位するときに、1つまたはいくつかの連続する中間妨害位置(706、‥、706)を通るように構成されており、かつ前記阻止素子(140)は、前記1つまたはいくつかの連続する中間妨害位置(706、‥、706)を通る間に、前記作動素子(110)を、前記第1中間被阻止位置(708)に向かって順に存在する、前記第1中間被阻止位置(708)以外の、1つまたはいくつかの連続する中間被阻止位置(708、‥、708)の1つに留めることが可能であるように構成されており、
前記作動素子(110)と前記阻止素子(140)とのうちの少なくとも一方は、階段状に互いにずれた複数のストッパ(122、124;702、702、‥、702)を備えており、
前記複数のストッパ(122、124;702、702、‥、702)のうちのいずれか1つは、前記作動素子(110)を、前記第1中間被阻止位置(708)および前記連続する中間被阻止位置(708、‥、708)のうちのいずれか1つに留めるために、前記作動素子(110)と前記阻止素子(140)とのうちの他方に接するように構成されていることを特徴とする車両錠作動システム(106)。
【請求項2】
前記階段状に互いにずれた複数のストッパ(124、122;702、‥、702、702)の、最も上側から最も下側までの各1つは、前記作動素子(110)の、連続する中間被阻止位置(708、‥、708)および第1中間被阻止位置(708)のうちのいずれか1つに対応しており、前記階段状に互いにずれた複数のストッパ(122、124;702、702、‥、702)のうちの最も下側のストッパ(122)は、前記作動素子(110)の第1中間被阻止位置(708)に対応している、請求項に記載の車両錠作動システム(106)。
【請求項3】
前記作動素子(110)が、前記階段状に互いにずれた複数のストッパ(122、124)を備えている、請求項またはに記載の車両錠作動システム(106)。
【請求項4】
前記非組合い位置から前記妨害位置(706)までの前記阻止素子(140)の変位は、前記作動素子(110)が、前記初期位置から前記最終位置まで変位したときに、前記階段状に互いにずれた複数のストッパ(122、124;702、702、‥、702)のたどる軌道(704、704、‥、704)に実質的に直交している、請求項に記載の車両錠作動システム(106)。
【請求項5】
前記階段状に互いにずれた複数のストッパは、2つのストッパ、すなわちベースストッパ(122)およびトップストッパ(124)を有しており、該ベースストッパ(122)は、該トップストッパ(124)から突き出ており、
前記阻止素子(140)は、前記阻止素子(140)が、前記非組合い位置から前記妨害位置まで変位するときに、最初に、前記トップストッパ(124)の変位を停めて、前記作動素子(110)を、第2中間被阻止位置に留めるための中間妨害位置を通り過ぎ、
次に、前記妨害位置において、前記ベースストッパ(122)の変位を停めて、前記作動素子(110)を、前記第1中間被阻止位置に留めるように構成されている、請求項またはに記載の車両錠作動システム(106)。
【請求項6】
前記作動素子(110)は、作動軸(112)のまわりに回転するように構成されている、請求項1〜のいずれか1つに記載の車両錠作動システム(106)。
【請求項7】
前記阻止素子(140)は、阻止軸(142)のまわりに回転するように構成されている、請求項1〜のいずれか1つに記載の車両錠作動システム(106)。
【請求項8】
前記阻止軸(142)は、作動軸(112)に実質的に直交している、請求項に記載の車両錠作動システム(106)。
【請求項9】
− ドアと、
− 前記ドアのための錠(102)と、
− 前記錠(102)を作動させるための、請求項1〜のいずれか1つに記載の車両錠作動システム(106)とを備えている自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両錠作動システム、およびこの車両錠作動システムを備える自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の安全規格によって、車両のドアは、衝撃を受けた際に、閉じられたままになるように義務付けられている。
【0003】
このような要件を満たすために、特許文献1は、次のものを備えている車両錠作動システムを開示している。
− ブラケットと、
− 初期位置から最終位置まで、ブラケットに相対的に変位することによって、錠を作動させるように構成されており、ブラケットへの、一衝撃方向に沿う衝撃によって、初期位置から最終位置まで変位し得る作動素子と、
− 衝撃によって、作動素子の最終位置への到達を可能にしている非組合い位置から、作動素子を、初期位置と最終位置との間にある第1中間被阻止位置に留めるための妨害位置に向かって、ブラケットに相対的に変位するように構成されている阻止素子。
【0004】
阻止素子は、阻止慣性系を構成している。
【0005】
一般に、作動素子および阻止素子の質量は、衝撃を受けたときに、それらの相対変位速度が、阻止素子による、錠作動レバーの変位の効果的な阻止に適合するように選ばれ、割り当てられる。この場合に、 作動素子と阻止素子とは、同調していると称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/042177号公報
【特許文献2】国際公開第2012/1755599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存の公知のシステムにおける1つの問題は、作動素子および阻止素子が、例えば衝撃の持続時間や衝撃の強さ(加速度)に応じて、さまざまに反応し得るということである。したがって、ある種の衝撃に対して、同調が最適になされていたとしても、その同調は、他の種の衝撃に対しては最適でない場合がある。
【0008】
したがって、このような欠点を少なくとも部分的に克服する慣性系の創出が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような慣性系の創出のために、本発明は、阻止素子が、非組合い位置から妨害位置まで変位するときに、1つまたはいくつかの連続する中間妨害位置を通るように構成されており、かつ、これらの中間妨害位置を通る間に、作動素子を、第1中間被阻止位置に向かって順に存在する、第1中間被阻止位置以外の、1つまたはいくつかの連続する中間被阻止位置の1つに留めることが可能であるように構成されていることを特徴とする、上述のタイプの車両錠作動システムを提供するものである。
【0010】
本発明によれば、阻止素子は、各中間妨害位置において、作動素子の変位を妨害することができる。したがって、阻止素子の変位が、作動素子の変位に対して遅く、または早い場合にも、作動素子の変位を妨害することができる。
【0011】
任意選択的に、作動素子と阻止素子とのうちの少なくとも一方は、階段状に互いにずれた複数のストッパを備えており、これらの複数のストッパのうちのいずれか1つは、作動素子を、第1中間被阻止位置および連続する中間被阻止位置のうちのいずれか1つに留めるために、作動素子と阻止素子とのうちの他方に接するように構成されている。
【0012】
同様に任意選択的に、階段状に互いにずれた複数のストッパの、最も上側から最も下側までの各1つは、作動素子の、連続する中間被阻止位置および第1中間被阻止位置のうちのいずれか1つに対応しており、階段状に互いにずれた複数のストッパのうちの最も下側のストッパは、作動素子の第1中間被阻止位置に対応している。
【0013】
同様に任意選択的に、作動素子が、階段状に互いにずれた複数のストッパを備えている。
【0014】
同様に任意選択的に、非組合い位置から妨害位置までの阻止素子の変位は、作動素子が、初期位置から最終位置まで変位したときに、階段状に互いにずれた複数のストッパのたどる軌道に実質的に直交する。
【0015】
同様に任意選択的に、階段状に互いにずれた複数のストッパは、2つのストッパ、すなわちベースストッパおよびトップストッパを有しており、ベースストッパは、トップストッパから突き出ており、阻止素子は、阻止素子が、非組合い位置から妨害位置まで変位するときに、最初に、トップストッパの変位を停めて、作動素子を、第2中間被阻止位置に留めるための中間妨害位置を通り過ぎるように構成されている。さらに、阻止素子は、次に、妨害位置において、ベースストッパの変位を停めて、作動素子を、第1中間被阻止位置に留めるように構成されている。
【0016】
同様に任意選択的に、作動素子は、作動軸のまわりに回転するように構成されている。
【0017】
同様に任意選択的に、阻止素子は、阻止軸のまわりに回転するように構成されている。
【0018】
同様に任意選択的に、阻止軸は、作動軸に実質的に直交している。
【0019】
本発明は、さらに、次のものを備えている自動車を提供する。
− ドアと、
− ドアのための錠と、
− 錠を作動させるための、本発明による車両錠作動システム。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】阻止素子が非組合い位置にあるときの、本発明によるドア開放システムの斜視図である。
図2図1のドア開放システムの拡大部分斜視図である。
図3】非組合い位置、中間妨害位置、第1中間妨害位置にある阻止素子を重ねて示している、図1のドア開放システムの拡大部分斜視図である。
図4】衝撃を受けている間の一時点における、阻止素子と作動素子との相対的位置を説明する模式図である。
図5図4の一時点に続く一時点における、阻止素子と作動素子との相対的位置を説明する模式図である。
図6図5の一時点に続く一時点における、阻止素子と作動素子との相対的位置を説明する模式図である。
図7】一代替実施例の阻止素子と作動素子との、衝撃を受けている間の相対的位置の変化を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、添付図面を参照しながら、本発明の非限定的な一実施形態について説明する。
【0022】
以下の説明において、前、後ろ、左、右などの位置をあらわす用語は、次の3つの方向、すなわち前−後方向F−B、左−右方向L−R、上−下方向T−Bに対応する直交基底を基準としている。本明細書で説明される例においては、これらの3つの方向は、自動車において通常用いられる方向に対応している。しかしながら、本発明の別のいくつかの実施形態においては、前−後方向F−B、左−右方向L−R、上−下方向T−Bは、直交基底を構成する任意の3方向のいかなるセットでもあり得る。
【0023】
さらに、用語「実質的に」は、複数の方向間の比較において用いられるときには、特に、自動車に対して既に定められている方向と、以下において説明されるドア開放システムの構成要素の変位方向との比較において、±15°の許容誤差が存在することを意味している。この許容誤差、特に、以下において説明されるドア開放システムの2つの構成要素の変位方向間における許容誤差は、±10°であることが好ましい。例えば「実質的に平行な2つの方向」という表現は、2つの方向間の角度が、±15°の許容誤差を有して0°であること、すなわち、−15°〜+15°の範囲にあることを意味している。
【0024】
次に、図1図3を参照しながら、自動車(図示せず)のためのドア開放システム100について説明する。
【0025】
ドア開放システム100は、第一に、車体104と組合わされているときには、自動車のドア(図示せず)を、車体104に対して閉じたままにし、車体104との組合いを解かれているときには、ドアの開放を可能にしているように構成されている錠102を備えている。本明細書で説明される例においては、ドアは、車両の左側のドアである。
【0026】
ドア開放システム100は、さらに、錠102が、その組合い位置から非組合い位置に変位するように、錠102を作動させる車両錠作動システム106を備えている。
【0027】
車両錠作動システム106は、第一に、ドアに取り付けられるブラケット108を備えている。
【0028】
車両錠作動システム106は、さらに、錠102を作動させるために、ブラケット108に相対的に、初期位置から最終位置まで変位するように構成されている作動素子110を備えている。本明細書において説明される例においては、作動素子110は、実質的に自動車の前−後方向F−Bに沿って延びる作動軸112のまわりに回転するように構成されている。
【0029】
作動素子110は、第一に、作動軸112を囲んで延在している円筒体114を有している。
【0030】
作動素子110は、さらに、円筒体114の前端から上方に、半径方向に突き出ている錠作動レバー116を有している。
【0031】
作動素子110は、さらに、円筒体114の後端に位置しており、円筒体114と共に、部分的円柱形状のリセス120を画定している部分的円筒形状のハウジング118を有している。
【0032】
作動素子110は、さらに、部分的円柱形状のリセス120内に、階段状に互いにずれた複数のストッパを有している。次に説明する例においては、これらの複数のストッパは、ただ2つのストッパ、すなわち作動軸112に近いほうに位置しているベースストッパ122、および作動軸112から遠いほうに位置しているトップストッパ124から成っている。ベースストッパ122は、トップストッパ124から、部分的円筒形状で突き出ている。
【0033】
車両錠作動システム106は、さらに、錠作動レバー116を錠102に接続しているボーデンケーブル126を備えている。したがって、作動素子110が、その初期位置から最終位置に変位することによって、ボーデンケーブル126が引っ張られ、それによって、錠102が解錠される。
【0034】
車両錠作動システム106は、さらに、作動素子110の左側に位置しており、ユーザが操作することによって、作動素子110が、その初期位置から最終位置まで変位するように構成されているドアハンドル128を備えている。
【0035】
本明細書において説明する例においては、ドアハンドル128は、フラップタイプのハンドルと呼ばれるものである。ドアハンドル128は、実質的に自動車の上−下方向T−Bに沿って延びるハンドル軸132のまわりに、ブラケット108に相対的に回転することができるように、後端を、ブラケット108のピン130に取り付けられている。
【0036】
ドアハンドル128は、さらに、錠作動レバー116を抱えるように湾曲しており、したがって、ユーザが、ドアハンドル128を左側に向かって、すなわち自動車から離れる方向に、ハンドル軸132のまわりに回転させたときに、錠作動レバー116を押す鉤状のアーム134を、前端に有している。
【0037】
ブラケット108への、左から右への向きの衝撃136によって、作動素子110が、その初期位置から最終位置に向かって変位し得ることが理解されるであろう。実際、衝撃136によって、ブラケット108は、右側に向かって押される。反作用として、慣性の働きによって、ドアハンドル128および作動素子110は、ブラケットに相対的に、左側に向かって変位するような力を受ける。ドアハンドル128および作動素子110が、そのような力を受けると、作動素子110は、作動軸112のまわりに、最終位置に向かうように回転しようとする。それによって、衝撃136を受けている間に、錠102が、車体との組合いを解かれて、ドアが解放される危険性がある。
【0038】
衝撃136を受けている間に、ドアが開放されることを防ぐために、車両錠作動システム106は、さらに、作動素子110の変位を阻止するように、カウンターウェイト138および慣性質量系を備えている。
【0039】
カウンターウェイト138は、衝撃136が生じた際に、作動素子110の、初期位置から最終位置に向かう変位を相殺するためのものである。この目的を達成するために、カウンターウェイト138は、作動軸112の下方に配置されている。一方、作動素子110の質量の大部分、特に錠作動レバー116、部分的円筒形状のハウジング118、ベースストッパ122およびトップストッパ124は、作動軸112の上方に配置されている。さらに、作動素子110は、その最終位置に向かうように変位するときに、カウンターウェイト138を押すように構成されている。
【0040】
本明細書において説明する例においては、カウンターウェイト138は、右側に向かう向きには、作動軸112のまわりに自由に回ることができるフリーホイール機構(自転車のような)を備えている。したがって、ブラケット108が、右側から左側への向き、すなわち衝撃136と逆向きの衝撃を受けた際に、カウンターウェイト138は作動素子110から離れ、したがって、作動素子110を、その最終位置に向かうように引っ張ることはない。一代替例として、カウンターウェイト138は、作動素子110に取り付けられている場合がある。
【0041】
慣性質量系には、衝撃136を受けて、非組合い位置から、1つまたはいくつかの連続する中間妨害位置を経由して妨害位置まで、ブラケット108に相対的に変位することができるように構成されている阻止素子140が含まれる。図4を参照して、これらの位置について、より詳細に説明する。
【0042】
本明細書において説明する例においては、阻止素子140は、実質的に自動車の上−下方向に沿って延びる阻止軸142のまわりに、ブラケット108に相対的に回転するように構成されている。阻止素子140は、第一に、阻止軸を囲んでいるスリーブ144を有している。阻止素子140は、さらに、スリーブ144から、実質的に前方向に突き出ている阻止アーム146を有している。阻止アーム146は、その前端148を、作動素子110の部分的円柱形状のリセス120内に配置されている。阻止素子140は、さらに、スリーブから、実質的に後ろ方向に突き出ている質量アーム150を有している。
【0043】
図4に示すように、作動素子110が、その初期位置から最終位置まで変位するときに、ベースストッパ122、トップストッパ124は、それぞれの軌道202、204をたどる。本明細書において説明される例においては、軌道202、204は、作動軸112を囲む円弧形状を呈している。
【0044】
阻止素子140が、非組合い位置にあるとき、阻止アーム146の前端148は、図4に示されているように、作動素子110が、その最終位置に達することができるように、ベースストッパ122、トップストッパ124の軌道202、204から外れている。
【0045】
衝撃136が生じると、質量アーム150は、ブラケット108に相対的に左側に変位し、したがって、阻止アーム146は右側に変位して、作動軸112に、より接近する。したがって、阻止アーム146の前端148は、軌道204、202に、順に、実質的に直角に交差する。
【0046】
図5を参照すると、阻止アーム146の前端148が、トップストッパ124の軌道204に交差すると、前端148は、トップストッパ124の変位を妨害することが可能になる。したがって、阻止素子140は、作動素子110を、第2中間被阻止位置に留めるための中間妨害位置にある。
【0047】
図6を参照すると、阻止アーム146の前端148が、ベースストッパ204の軌道204に交差すると、前端148は、ベースストッパ202の変位を妨害することが可能になる。したがって、 阻止素子140は、作動素子110を、第1中間被阻止位置に留めるための妨害位置にある。第1中間被阻止位置においては、作動素子110は、第2中間被阻止位置におけるより、初期位置により近い。すなわち、錠102は、作動素子110が、第2中間被阻止位置にあるときより、第1中間被阻止位置にあるときのほうが、より強固に車体2と組合っている。作動素子が、その初期位置から第1中間被阻止位置まで変位したときに、ボーデンケーブル126の引っ張られる距離は、最大でも2.5mmであることが好ましい。したがって、作動素子110を、第1中間被阻止位置に留めることが好ましい。前端148が、ベースストッパ122の軌道202に達すると同時に、作動素子110が、第1中間被阻止位置に留められていると、最良である。
【0048】
しかしながら、阻止素子140の変位が、作動素子110の変位に比して遅すぎて、阻止素子140は、作動素子110を、第1中間被阻止位置に留めることができる時間内に、ベースストッパ122の軌道202に達することができないという事態が生じる場合があり得る。逆に、阻止素子140の変位が、作動素子110の変位に比して早すぎて、前端148が、ベースストッパ122の変位を妨害する前に、円筒体114上ではね返って、非組合い位置に向かって戻ってしまう場合があり得る。どちらの場合にも、前端148が軌道204に交差して、トップストッパ124の変位を妨害し、したがって、作動素子110は、第2中間被阻止位置に留められる可能性が存在する。
【0049】
より一般的な一代替例である図7を参照すると、階段状に互いにずれた複数のストッパには、作動軸112に最も近いベースストッパ702、その直上段のストッパ702、および作動軸112から最も遠いトップストッパ702を含むN個のストッパが設けられている。Nは、3以上の正の整数である。添え字1〜Nが、ベースストッパ702からトップストッパ702まで、順に振り当てられている。これらのN個のストッパは、作動素子が、その初期位置から最終位置まで変位するときに、互いに平行な軌道704、704、‥、704をたどるように構成されている。
【0050】
さらに、阻止素子140は、第1に、作動素子を、連続する中間被阻止位置708、‥、708のいずれにも留めることが可能であるように、(N-l)個の連続する中間妨害位置706、‥、706を通り、その間に、トップストッパ702の軌道704から始まって、軌道704、‥、704に交差することが可能である構成になされている。
【0051】
阻止素子140は、さらに、作動素子を、第1中間被阻止位置708に、すなわち、初期位置に最も近い被阻止位置に留めるために、妨害位置706に達して、ベースストッパ702の軌道704に交差することが可能である構成とされている。
【0052】
複数のストッパが、階段状に積み重なっているために、作動素子の中間被阻止位置708、‥、708が、第1中間被阻止位置708に向かって連続的に存在する。これは、阻止素子140が、妨害位置706に向かって、より変位するほど、作動素子は、より初期位置の近くで留められる、したがって、錠102と車体との組合いが、より強固になるということを意味する。
【0053】
阻止素子140は、可逆的である場合があるということに注意されたい。この場合には、阻止素子140は、衝撃136が収まると、例えば復帰ばね(図示せず)の作用によって、非組合い位置に戻る。
【0054】
しかしながら、一代替実施例において、阻止素子140は、不可逆的である場合がある。これは、例えば、阻止素子140が非組合い位置に戻らないようにする、ラチェット(図示せず)などの復帰防止システムを用いることによって実現することができる。復帰防止システムは、阻止素子140が妨害位置に達したときに、非組合い位置への阻止素子140の復帰が不可能になり、阻止素子140が、中間妨害位置までしか達しない場合には、非組合い位置への阻止素子140の復帰がなされるように構成されることが好ましい。
【0055】
また、車両錠作動システム106は、さらに、妨害位置から非組合い位置への、阻止素子140の復帰速度を低下させるためのダンパー機構を備えている場合がある。例えば特許文献2に記載のダンパー機構の1つを用いることができる。
【0056】
上述の説明から明らかなように、本発明は、広範な持続時間および加速度の衝撃に対して、作動素子が最終位置まで変位することを阻止することができる。
【0057】
さらに、フリーホイール機能を有するカウンターウェイト138を用いると、逆向きの衝撃を受けた場合、すなわち、自動車の、考えている側のドアと反対側のドアに衝撃が加わった場合の信頼性が、より高くなる。
【0058】
さらに、種々の車両錠作動システム、例えば種々のドアハンドルおよび/または種々のカウンターウェイトに対して、同一の作動素子および阻止素子を用いることができる。
【0059】
さらに、単一のストッパしか用いない公知の車両錠作動システムに比して、コストおよび重量に大きな影響が及ぼされることはない。
【0060】
さらに、用語「錠」には、車両のドアを閉じたままに維持するためのいかなる手段も含まれる。
【0061】
請求項において用いられている用語は、請求項を、本明細書において説明されている実施形態に限定するためのものとして解釈されるべきではなく、請求項が、それらの表現において対象にしようとする均等物の全て、および当業者が、上に開示されている教示に自身の一般的知識を適用することによって描くことができる均等物の全てを含むように解釈されるべきである。
【0062】
特に、階段状に互いにずれた複数のストッパは、作動素子ではなく阻止素子に備えられている場合がある。
【0063】
さらに、上述の機構は、いかなるタイプのドアハンドルにも、例えばグリップハンドルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 ドア開放システム
102 錠
104 車体
106 車両錠作動システム
108 ブラケット
110 作動素子
112 作動軸
114 円筒体
116 錠作動レバー
118 ハウジング
120 リセス
122、702 ベースストッパ
124、702 トップストッパ
126 ボーデンケーブル
128 ドアハンドル
130 ピン
132 ハンドル軸
134 アーム
136 衝撃
138 カウンターウェイト
140 阻止素子
142 阻止軸
144 スリーブ
146 阻止アーム
148 前端
150 質量アーム
202、204、704、704、704 軌道
702 ストッパ
706 妨害位置
706、706 中間妨害位置
708 第1中間被阻止位置
708、708 中間被阻止位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7