特許第6585641号(P6585641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585641
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】防振ゴム組成物および防振ゴム部材
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20190919BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20190919BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20190919BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20190919BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08K3/26
   C08L51/06
   C08K5/20
   F16F15/08 D
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-13312(P2017-13312)
(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公開番号】特開2018-119111(P2018-119111A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年2月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】内木 博章
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲仁
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−198974(JP,A)
【文献】 特開昭63−125541(JP,A)
【文献】 特開2006−291019(JP,A)
【文献】 特開2006−096830(JP,A)
【文献】 特開平05−295187(JP,A)
【文献】 特開2017−137424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
F16F 1/00−6/00、15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)成分とともに摺動剤を含有する防振ゴム組成物であって、上記摺動剤が、下記の(D)成分であり、かつ、下記の(A)成分100重量部に対する(C)成分の含有量が0.1〜10重量部の範囲であることを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)ジエン系ゴム。
(B)カーボンブラック。
(C)シリカ、クレー、および炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの白色充填剤。
(D)オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン。
【請求項2】
上記(D)成分のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンが、ポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなるオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンである、請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
上記(D)成分のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンが、ポリプロピレン系樹脂およびポリプロピレンワックスと、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンである、請求項1または2記載の防振ゴム組成物。
【請求項4】
上記(D)成分のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンが、融点150℃以下のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項5】
上記(A)〜(D)成分に加え、さらに、不飽和脂肪酸アミドを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項6】
上記白色充填剤(C)が、シリカである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項7】
上記白色充填剤(C)のBET比表面積が、15〜250m2/gの範囲である、請求項1〜のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物。
【請求項8】
相手側部材に対し摺接するための摺接部を備えた防振ゴム部材であって、少なくとも上記摺接部が、請求項1〜のいずれか一項に記載の防振ゴム組成物の加硫体からなることを特徴とする防振ゴム部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,電車等の車両等に対する防振用途に用いられる防振ゴム組成物および防振ゴム部材に関するものであり、詳しくは、スタビライザブッシュ等のように摺動性が要求される部材に用いられる、防振ゴム組成物および防振ゴム部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両用の防振ゴム部材である、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、エンジンマウントストッパー、コイルスプリングシート等には、相手側部材(金属シャフト等)に対し摺接するための、摺接部が設けられている。上記防振ゴム部材の摺接部は、通常、防振性を高めるため、ジエン系ゴムによって形成されているが、上記ゴムの摩擦係数が大きいと、摺動時に異音(スティックスリップ音)が発生し、車両の乗り心地が悪くなる等の懸念がある。そのため、従来では、そのジエン系ゴム組成物中に脂肪酸アミド等の摺動剤を練り込み、加硫させたものが、上記摺接部に用いられている。すなわち、このようにすることにより、上記摺接部と相手側部材との間に摺動剤が析出(ブリード)して膜を形成し、自己摺動性を発現させることができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3648869号公報
【特許文献2】特開2010−143280号公報
【特許文献3】特許第5780639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、脂肪酸アミド等といった従来の摺動剤による、上記のような膜は、加硫ゴムの表面に対し、化学的に結合しているわけではなく、単に物理的に付着しているだけであるため、相手側部材と摺動することにより掻き取られやすい。また、従来の摺動剤は、使用環境の温度が上昇すると液化しやすく、このことが、摺動性の低下の要因となる。さらに、低温環境下では、加硫ゴムの表面へ上記摺動剤が析出するスピードが低下しやすいため、摺動性を発現しにくい。これらのことから、ゴム組成物中に摺動剤を練り込むといった手法では、温度環境や、防振ゴム部材の継続的な使用により、摺動性が低下しやすくなるといった課題が依然として残る。
【0005】
上記のような課題を解決する手法として、ゴム組成物中に摺動剤を練り込まずに、加硫ゴムの表面に、固体潤滑材のコーティング層やポリテトラフルオロエチレン繊維を編み込んだ摺動層を形成するといった手法も検討されている。しかしながら、これらの層形成には焼き付け工程が必要となる等のように、製造工程が煩雑になる問題がある。また、このようにして形成された層も、継続的な使用により摩擦して剥がれやすいといった欠点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、温度環境や継続的使用に起因する摺動性の低下を解消することができ、相手側部材との間の摩擦抵抗の上昇を効果的に抑えることができる、防振ゴム組成物および防振ゴム部材の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(C)成分とともに摺動剤を含有する防振ゴム組成物であって、上記摺動剤が、下記の(D)成分であり、かつ、下記の(A)成分100重量部に対する(C)成分の含有量が0.1〜10重量部の範囲である防振ゴム組成物を、第一の要旨とする。
(A)ジエン系ゴム。
(B)カーボンブラック。
(C)シリカ、クレー、および炭酸カルシウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの白色充填剤。
(D)オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン。
【0008】
また、本発明は、相手側部材に対し摺接するための摺接部を備えた防振ゴム部材であって、少なくとも上記摺接部が、上記第一の要旨の防振ゴム組成物の加硫体からなる防振ゴム部材を、第二の要旨とする。
【0009】
すなわち、防振ゴム組成物のポリマーであるジエン系ゴムに対し、脂肪酸アミド等の、従来の摺動剤のみを使用した場合では、温度環境や継続的使用に起因する摺動性の低下を引き起こしやすいことから、本発明者らは、従来の摺動剤のようにブリードさせて摺動性能を高めるようなものではない、新たな摺動剤の使用について研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)を、ジエン系ゴム組成物中に練り込んで使用した。その結果、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)がエラストマー成分としてポリマー中に分散し、かつ、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)のポリプロピレン部がジエン系ゴムと架橋反応するとともに、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)のポリシロキサン部が上記ジエン系ゴム組成物の加硫体の表面に対し配向することから、上記加硫体の全体が摺動性に優れた性質を示すようになり、摩耗による摺動性の劣化も解消することができることを突き止めた。さらに、上記ジエン系ゴム組成物中に、シリカ等の白色充填剤(C)を配合したところ、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)のポリシロキサン部と白色充填剤(C)とのなじみがよいことから、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の分散性が高められて良好な摺動性能が得られ、しかも、上記白色充填剤(C)を特定量配合することにより、防振ゴム部材における、温度環境や継続的な使用による摺動性の低下、および動倍率の悪化を引き起こすことなく、良好な摺動性能が得られることを突き止めた。その結果、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A)、カーボンブラック(B)、および白色充填剤(C)とともに、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)を含有し、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し白色充填剤(C)を0.1〜10重量部の範囲で含有する。そのため、動倍率の悪化を引き起こすことなく、温度環境や継続的使用に起因する摺動性の低下を解消することができ、相手側部材との間の摩擦抵抗の上昇を効果的に抑えることができる。そして、本発明の防振ゴム組成物の加硫体からなる摺接部を備えた防振ゴム部材は、自動車等の車両に用いられるスタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、エンジンマウントストッパー、コイルスプリングシート等のように、摺動性が要求される防振ゴム部材として、好適に用いることができる。これらの防振ゴム部材は、摺動時に異音(スティックスリップ音)が発生し、車両の乗り心地が悪くなる等の問題を解消することができる。
【0011】
特に、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)が、ポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなるものであると、摺動性に優れるようになり、更に、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)が、ポリプロピレン系樹脂およびポリプロピレンワックスと、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンであると、より摺動性に優れるようになる。
【0012】
また、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)が、融点150℃以下のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンであると、ポリマーであるジエン系ゴム(A)に対する上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の分散性がより高められ、より摺動性に優れるようになる。
【0013】
そして、上記(A)〜(D)成分に加え、さらに、不飽和脂肪酸アミドを含有すると、特に初期の摺動性能を効果的に改善することができる。
【0014】
さらに、上記白色充填剤(C)が、シリカであると、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の分散性がより高められ、動倍率の悪化を引き起こすことなく、より良好な摺動性能を得ることができる。
【0015】
また、上記白色充填剤(C)のBET比表面積が、15〜250m2/gの範囲であると、摺動を繰り返し行うことによる動摩擦係数の上昇を、より抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0017】
本発明の防振ゴム組成物は、先に述べたように、ジエン系ゴム(A)、カーボンブラック(B)、および白色充填剤(C)とともに、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)を含有し、上記ジエン系ゴム(A)100重量部に対し白色充填剤(C)を0.1〜10重量部の範囲で含有するものである。
【0018】
〔ジエン系ゴム(A)〕
上記ジエン系ゴム(A)としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、強度や低動倍率化の点で、天然ゴムが好適に用いられる。
【0019】
〔カーボンブラック(B)〕
つぎに、上記カーボンブラック(B)としては、例えば、SAF級,ISAF級,HAF級,MAF級,FEF級,GPF級,SRF級,FT級,MT級等の種々のグレードのカーボンブラックが用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0020】
そして、上記カーボンブラック(B)の配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対し、20〜100重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは30〜80重量部の範囲である。すなわち、上記カーボンブラック(B)の配合量が少なすぎると、一定水準の補強性を満足できなくなるからであり、逆に上記カーボンブラック(B)の配合量が多すぎると、動倍率が高くなったり、粘度が上昇して加工性が悪化したりするといった問題が生じるからである。
【0021】
〔白色充填剤(C)〕
また、上記白色充填剤(C)としては、例えば、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、セリサイト、モンモリロナイト等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の分散性がより高められ、動倍率の悪化を引き起こすことなく、より良好な摺動性能を得ることができることから、シリカが好ましい。
【0022】
上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ等が用いられる。そして、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0023】
また、上記白色充填剤(C)のBET比表面積は、摺動を繰り返し行うことによる動摩擦係数の上昇を、より抑えることができることから、15〜250m2/gの範囲であることが好ましく、同様の観点から、より好ましくは、60〜230m2/gの範囲である。なお、上記白色充填剤(C)のBET比表面積は、例えば、試料を200℃で15分間脱気した後、吸着気体として混合ガス(N2:70%、He:30%)を用いて、BET比表面積測定装置(マイクロデータ社製、4232−II)により測定することができる。
【0024】
そして、先に述べたように、上記白色充填剤(C)の配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であり、好ましくは、1〜8重量部の範囲である。すなわち、上記白色充填剤(C)の配合量が少なすぎると、前記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の分散性の向上効果が得られず、温度環境や継続的使用に起因する防振ゴム部材の摺動性低下を引き起こすおそれがあり、逆に、上記白色充填剤(C)の配合量が多すぎると、防振ゴム部材における動倍率の悪化を引き起こすおそれがあるからである。
【0025】
〔オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)〕
上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)は、特にポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合(グラフト化)してなる結合体(グラフト体)であると、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンの好ましい分子量に制御できるため、摺動性が向上する。
【0026】
また、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)が、ポリプロピレン系樹脂およびポリプロピレンワックスと、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンであると、より摺動性に優れるようになる。
【0027】
上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の構成材料であるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、エチレン,ブテン−1等のプロピレン以外のα−オレフィンとプロピレンとのブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等の共重合体、およびこれらの混合物からなる樹脂である。これらのポリプロピレン系樹指のなかでも、ランダム共重合体のポリプロピレン系樹脂は、融点が低く、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の低融点化に寄与し、ポリマーであるジエン系ゴム(A)に対するオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の相溶性向上に寄与するため、好ましい。
【0028】
なお、上記ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等の各触媒を用いて各単量体を重合して合成して得られる。なかでも、メタロセン触媒を用いて合成したポリプロピレン系樹脂は、他の触媒で合成したポリプロピレン系樹脂よりも融点が低く、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の低融点化に寄与し、ポリマーであるジエン系ゴム(A)に対するオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の相溶性向上に寄与するため、好ましい。上記メタロセン触媒を用いて合成したポリプロピレン系樹脂は、市販のものでは、日本ポリプロ社製のウィンテックWFX4T、プライムポリマ一社製のプライムポリプロMF257等の、メタロセン系ランダムポリプロピレン等があげられる。
【0029】
また、上記ポリプロピレン系樹脂と併せて用いられる、ポリプロピレンワックスとしては、プロピレンを重合もしくは一般の高分子量のポリプロピレンを解重合して得られるものが用いられる。上記ポリプロピレンワックスの重量平均分子量は、好ましくは、1000〜20000の範囲である。このような低分子量のポリプロピレンワックスは、市販のものでは、三洋化成工業社製のビスコール330−P、ビスコール440−P、ビスコール550−P、ビスコール660−Pや、三井化学社製のハイワックスNP055、ハイワックスNP105、ハイワックスNP505、ハイワックスNP805や、クラリアント社製のリコワックスPP230等があげられる。
【0030】
上記のようにポリプロピレン系樹脂とポリプロピレンワックスとを併用する場合、その配合比率は、重量比率で、ポリプロピレン系樹脂:ポリプロピレンワックス=99:1〜40:60が好ましく、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂:ポリプロピレンワックス=90:10〜45:55の範囲であり、さらに好ましくは、ポリプロピレン系樹脂:ポリプロピレンワックス=80:20〜50:50の範囲である。このような範囲でポリプロピレンワックスを併用すると、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の溶融粘度が下がり、ポリマーであるジエン系ゴム(A)に対するオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の相溶性向上に寄与するため、好ましい。
【0031】
また、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の構成材料である、オルガノポリシロキサンのうち、ラジカル重合性官能基を有するオルガノシロキサンは、その骨格が、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、またはこれらの混合物であってもよい。上記オルガノポリシロキサンの例としては、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルビニルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン、両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルヘキセニルシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニル共重合体等があげられる。
【0032】
上記ラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素の二重結合を有し、ラジカル重合可能な官能基のことであり、例えば、アクリロキシメチル基、3−アクリロキシプロピル基、メタクリロキシメチル基、3−メタクリロキシプロピル基、4−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、4−(2−プロペニル)フェニル基、3−(2−プロペニル)フェニル基、2−(4−ビニルフェニル)エチル基、2−(3−ビニルフェニル)エチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、デセニル基等があげられる。前記オルガノポリシロキサンは、こられのラジカル重合性官能基を少なくとも一つ有するものであり、合成、入手のしやすさから、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0033】
なお、上記オルガノポリシロキサンは、ラジカル重合性官能基以外にも、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;ヒドロキシ基、等の官能基を有していてもよい。
【0034】
上記オルガノポリシロキサンの25℃における動粘度は、好ましくは200〜1000000mm2/sの範囲であり、より好ましくは500〜1000000mm2/sの範囲である。すなわち、このような動粘度を示すオルガノポリシロキサンを用いると、所望のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)を合成するのが容易となるからである。
【0035】
上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の合成方法としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂やポリプロピレンワックスと、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとを、有機過酸化物の存在下で加熱混練して、化学結合させる方法があげられる。なお、上記混練は、バンバリーミキサー、ニーダー、二軸スクリュー式撹拌機等により行われる。
【0036】
上記有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;イソブチリルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン−3等のジアルキルパーオキサイド;1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ブタン等のパーオキシケタール;t−ブチルパーオキシ−ピバレイト、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル;t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーカーボネート、等があげられる。
【0037】
上記有機過酸化物として、市販のものでは、アルケマ吉富社製の、ルペロックス101、ルペロックスルDC、ルペロックスF、ルペロックスDI等があげられる。
【0038】
上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の合成時における、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンの配合量は、ポリプロピレン系樹脂およびポリプロピレンワックスの合計配合量(ポリプロピレンワックスを配合しないときはポリプロピレン系樹脂のみの配合量)100重量部に対して、0.5〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは2〜150重量部であり、さらに好ましくは10〜150重量部である。また、上記合成時における、有機過酸化物の配合量は、ポリプロピレン系樹脂およびポリプロピレンワックスの合計配合量(ポリプロピレンワックスを配合しないときはポリプロピレン系樹脂のみの配合量)100重量部に対して、0.01〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは0.05〜3重量部である。すなわち、このような配合量とすることにより、所望のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)を合成するのが容易となるからである。
【0039】
このようにして得られるオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)は、その融点が150℃以下のものであることが好ましく、なかでも、融点が65〜145℃のものがより好ましく、融点が85〜135℃のものがさらに好ましい。すなわち、このような融点のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンであると、ポリマーであるジエン系ゴム(A)に対する上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の相溶性や分散性がより高められ、より摺動性に優れるようになるからである。
【0040】
そして、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.5〜30重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜15重量部の範囲である。すなわち、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の配合量が少なすぎると、所望の摺動性能が得られず、逆に、上記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)の配合量が多すぎると、物性が下がるおそれがあるからである。
【0041】
〔その他の材料〕
本発明の防振ゴム組成物には、上記(A)〜(D)成分に加え、通常、硫黄系加硫剤が配合される。また、任意成分として、好ましくは、不飽和脂肪酸アミドが配合される。さらに、非ラジカル重合性のオルガノポリシロキサン、加硫助剤、加硫促進剤、老化防止剤、プロセスオイル、加工助剤、反応性モノマー、発泡剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。
【0042】
上記硫黄系加硫剤としては、例えば、硫黄、塩化硫黄等の硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)や、2−メルカプトイミダゾリン、ジペンタメチレンチウラムペンタサルファイド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0043】
上記硫黄系加硫剤の配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲であることが好ましい。すなわち、上記加硫剤の配合量が少なすぎると、充分な架橋構造が得られず、動倍率、耐へたり性が悪化する傾向がみられ、逆に上記加硫剤の配合量が多すぎると、耐熱性が低下する傾向がみられるからである。
【0044】
また、前記のように、不飽和脂肪酸アミドを配合すると、そのブリードにより摺動性を一層高めることができ、特に初期の摺動性能を効果的に改善することができるため好ましい。
【0045】
上記不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、初期の摺動性能を効果的に改善する観点から、オレイン酸アミドが好ましい。
【0046】
上記不飽和脂肪酸アミドの配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることが好ましい。すなわち、上記不飽和脂肪酸アミドの配合量が少なすぎると、初期の摺動性能の改善効果が得られず、逆に上記不飽和脂肪酸アミドの配合量が多すぎると、物性が低下したり、動倍率が悪化したりする傾向がみられるからである。
【0047】
また、前記の、非ラジカル重合性のオルガノポリシロキサンとしては、その骨格が、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、またはこれらの混合物であってもよい。上記非ラジカル重合性のオルガノポリシロキサンの種類としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルハイドロジェンシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、カルビノール変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン、フェノール変性ポリジメチルシロキサン、シラノール変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0048】
上記非ラジカル重合性のオルガノポリシロキサンの配合量は、前記オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(D)100重量部に対して、5〜200重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜100重量部の範囲である。
【0049】
また、前記加硫助剤としては、例えば、モノメタクリル酸金属塩(亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、ジメタクリル酸金属塩(亜鉛塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0050】
上記加硫助剤の配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは3〜10重量部の範囲である。
【0051】
また、前記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0052】
上記加硫促進剤の配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜7重量部の範囲である。
【0053】
なお、上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0054】
また、上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0055】
また、上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0056】
前記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0057】
そして、上記老化防止剤の配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。
【0058】
前記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0059】
そして、上記プロセスオイルの配合量は、ポリマーであるジエン系ゴム(A)100重量部に対して、1〜50重量部の範囲が好ましく、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。
【0060】
〔防振ゴム組成物の調製方法〕
ここで、本発明の防振ゴム組成物は、その必須材料である(A)〜(D)成分、および必要に応じて上記列記したその他の材料を用いて、これらをニーダー,バンバリーミキサー,オープンロール,二軸スクリュー式撹拌機等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
【0061】
本発明の防振ゴム組成物は、高温(150〜170℃)で5〜30分間、加硫することにより防振ゴム(加硫体)となる。そして、本発明の防振ゴム組成物の加硫体からなる摺接部を備えた防振ゴム部材は、自動車等の車両に用いられるスタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、エンジンマウントストッパー、コイルスプリングシート等のように、摺動性が要求される防振ゴム部材として、好適に用いることができる。なお、上記摺接部の形状は、摺接する相手側部材の形状に依存する。そのため、例えば、相手側部材が金属シャフトのようなものであれば、上記摺接部の形状は、上記金属シャフトを挿入するための挿入孔が設けられた形状となる。そして、これらの防振ゴム部材は、動倍率の悪化を引き起こすことなく、温度環境や継続的使用に起因する摺動性の低下を解消することができ、相手側部材との間の摩擦抵抗の上昇を効果的に抑えることができる。そのため、摺動時に異音(スティックスリップ音)が発生し、車両の乗り心地が悪くなる等の問題を解消することができる。
【実施例】
【0062】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0063】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0064】
〔NR〕
天然ゴム
【0065】
〔不飽和脂肪酸アミド〕
オレイン酸アミド(ライオンアクゾ社製、アーモススリップCP−P、融点70℃)
【0066】
〔摺動剤1〕
ポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製、SG−271P、融点125℃)
【0067】
〔摺動剤2〕
ポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製、SG−370P、融点85℃)
【0068】
〔摺動剤3〕
ポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製、SG−471P、融点145℃)
【0069】
〔摺動剤4〕
ポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製、SG−571P、融点135℃)
【0070】
〔摺動剤5〕
ポリプロピレン系樹脂と、ラジカル重合性官能基を有するオルガノポリシロキサンとが化学結合してなる、オルガノポリシロキサン変性ポリプロピレン(理研ビタミン社製、SG−671P、融点65℃)
【0071】
〔カーボンブラック〕
FEF級カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)
【0072】
〔シリカ1〕
東ソー・シリカ社製、ニプシールVN3、BET比表面積200m2/g
【0073】
〔シリカ2〕
東ソー・シリカ社製、ニプシールER、BET比表面積100m2/g
【0074】
〔クレー〕
イメリヌ社製、Eckalite 1、BET比表面積18m2/g
【0075】
〔炭酸カルシウム1〕
白石カルシウム社製、白艶華CC、BET比表面積27m2/g
【0076】
〔炭酸カルシウム2〕
白石カルシウム社製、ホワイトンSB、BET比表面積1m2/g
【0077】
〔加硫剤(硫黄)〕
軽井沢精錬所社製
【0078】
〔加硫促進剤〕
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)(ノクセラーCZ、大内新興化学社製)
【0079】
〔酸化亜鉛〕
堺化学工業社製、酸化亜鉛2種
【0080】
〔プロセスオイル〕
ナフテン系プロセスオイル(出光興産社製、ダイアナプロセスNM−280)
【0081】
〔ステアリン酸〕
花王社製、ルーナックS30
【0082】
〔老化防止剤1〕
N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(精工化学工業社製、オゾノン3C)
【0083】
〔老化防止剤2〕
2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン(精工化学社製、ノンフレックスRD)
【0084】
[実施例1〜12、比較例1〜8]
上記各材料を、後記の表1および表2に示す割合で配合して混練することにより、防振ゴム組成物を調製した。なお、上記混練は、まず、加硫剤と加硫促進剤以外の材料を、バンバリーミキサーを用いて140℃で5分間混練し、ついで、加硫剤と加硫促進剤を配合し、オープンロールを用いて60℃で5分間混練することにより行った。
【0085】
このようにして得られた実施例および比較例の防振ゴム組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1および表2に併せて示した。なお、後記の表1および表2には、比較例1品であるサンプルの測定値を基準とした時の、各実施例および比較例のサンプルの測定値の指数評価を示す。そして、後記の表1および表2における全ての指数評価において、1〜4の範囲にあるものを「×」と表記し、5〜7の範囲にあるものを「△」と表記し、8〜10の範囲にあるものを「○」と表記した。
【0086】
≪摩擦係数≫
[初期、高温時、低温時]
各防振ゴム組成物を用いて、150℃×20分の条件で加硫して、厚み2mmのゴムシートを作製した。ついで、このゴムシートを用いて、JIS K 7125に準拠して、動摩擦係数(μk)を測定した。なお、上記測定は、はじめに25℃で測定したものを「初期」とし、80℃で0.5時間放置した上記ゴムシートに対して測定したものを「高温時」とし、イソプロパノール(IPA)にてシート表面を洗浄した後に0℃で0.5時間放置した上記ゴムシートに対して測定したものを「低温時」とした。
そして、「初期」、「高温時」、「低温時」における、比較例1品であるサンプルの動摩擦係数の各測定値を、基準値とし、実施例および比較例のサンプルの動摩擦係数の各測定値を、上記基準値に対する指数で示した。すなわち、上記基準値以上の動摩擦係数を示すものを「1」と評価し、基準値の0.9倍以上1倍未満の動摩擦係数を示すものを「2」と評価し、基準値の0.8倍以上0.9倍未満の動摩擦係数を示すものを「3」と評価し、基準値の0.7倍以上0.8倍未満の動摩擦係数を示すものを「4」と評価し、基準値の0.6倍以上0.7倍未満の動摩擦係数を示すものを「5」と評価し、基準値の0.5倍以上0.6倍未満の動摩擦係数を示すものを「6」と評価し、基準値の0.4倍以上0.5倍未満の動摩擦係数を示すものを「7」と評価し、基準値の0.3倍以上0.4倍未満の動摩擦係数を示すものを「8」と評価し、基準値の0.2倍以上0.3倍未満の動摩擦係数を示すものを「9」と評価し、基準値の0.1倍以上0.2倍未満の動摩擦係数を示すものを「10」と評価した。
【0087】
[繰返し性]
また、上記の、25℃での動摩擦係数(μk)の測定を5回繰り返し行った後、「初期」の動摩擦係数(μk)の値から上昇した割合を、「繰返し性」とした。
そして、上記の繰り返し試験を行った結果、「初期」の動摩擦係数(μk)の値のままか、あるいは「初期」の動摩擦係数(μk)の1.1倍未満の動摩擦係数の上昇がみられたものを「10」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.1倍以上1.2倍未満となったものを「9」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.2倍以上1.3倍未満となったものを「8」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.3倍以上1.4倍未満となったものを「7」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.4倍以上1.5倍未満となったものを「6」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.5倍以上1.6倍未満となったものを「5」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.6倍以上1.7倍未満となったものを「4」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.7倍以上1.8倍未満となったものを「3」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.8倍以上1.9倍未満となったものを「2」と評価し、「初期」の動摩擦係数(μk)の値の1.9倍以上となったものを「1」と評価した。
【0088】
≪ばね特性≫
各防振ゴム組成物を、150℃×20分間の条件で加硫して、厚み2mmの加硫ゴムシートを作製した。このシートから幅5mm×長さ30mmの短冊状の試験片を切り出して、室温(25℃)にてユービーエム社製のRheogel−E4000を用い、周波数100Hz、歪み0.05%のときの貯蔵弾性率(E’100Hz)および周波数15Hz、歪み4.5%のときの貯蔵弾性率(E’)をそれぞれ測定した。そして、ばね特性として、動倍率(E’100Hz/E’)を示した。
そして、比較例1品であるサンプルの動倍率を基準値としたときの、実施例および比較例のサンプルの動倍率を、指数で示した。すなわち、上記基準値以下の動倍率を示すものを「10」と評価し、上記基準値の5%未満上昇した動倍率を示すものを「9」と評価し、上記基準値の5%以上10%未満上昇した動倍率を示すものを「8」と評価し、上記基準値の10%以上15%未満上昇した動倍率を示すものを「7」と評価し、上記基準値の15%以上20%未満上昇した動倍率を示すものを「6」と評価し、上記基準値の20%以上25%未満上昇した動倍率を示すものを「5」と評価し、上記基準値の25%以上30%未満上昇した動倍率を示すものを「4」と評価し、上記基準値の35%以上40%未満上昇した動倍率を示すものを「3」と評価し、上記基準値の45%以上50%未満上昇した動倍率を示すものを「2」と評価し、上記基準値の50%以上上昇した動倍率を示すものを「1」と評価した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
上記表の結果から、実施例の防振ゴム組成物には、「×」の評価が全くない。すなわち、実施例の防振ゴム組成物は、動倍率が低く抑えられているため、防振特性であるばね特性に優れるとともに、温度環境や継続的使用に起因する動摩擦係数の上昇もみられず、高い摺動性能を示すことがわかる。
【0092】
これに対し、比較例1の防振ゴム組成物は、摺動剤を含有しておらず、他の比較例および実施例に比べ、摩擦係数は高い。比較例2の防振ゴム組成物は、不飽和脂肪酸アミドを含有しており、初期の摩擦係数は低いが、高温環境や低温環境により摩擦係数の上昇がみられ、さらに、前記の基準にもとづいた繰返し性評価にも劣るものであった。比較例3〜7の防振ゴム組成物は、特定のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンを摺動剤として含有しており、前記の基準にもとづいた繰返し性評価およびばね特性評価には優れるものの、初期の摩擦係数が高く、高温環境や低温環境による摩擦係数の上昇もみられた。比較例8の防振ゴム組成物は、特定のオルガノポリシロキサン変性ポリプロピレンを摺動剤として含有しており、さらに、シリカも含有しているが、上記シリカの含有量が多すぎることから、ばね特性の低下がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の防振ゴム組成物は、自動車等の車両に用いられるスタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、エンジンマウントストッパー、コイルスプリングシート等のように、摺動性が要求される防振ゴム部材の形成材料として、好適に用いることができる。