(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1配管は、前記混合タンク内から供給された前記混合燃料を再び前記混合タンクに戻すための循環経路を形成している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造装置。
前記製造装置は、前記エマルジョン燃料を貯蔵するための貯蔵タンクと、第2ポンプと、圧力調整器と、前記エマルジョン燃料をこの順に送液するための第2配管と、を備え、
前記第2配管は、前記第1配管から前記エマルジョン燃料を燃焼装置に供給する経路を形成し、
前記第2ポンプは、前記エマルジョン燃料を前記圧力調整器に向けて圧送し、
前記圧力調整器は、前記第2ポンプによって圧送される前記エマルジョン燃料に印加される圧力が所定の圧力となるように調整する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造装置。
前記第2配管は、前記貯蔵タンク内から供給された前記エマルジョン燃料を再び前記貯蔵タンクに戻すための循環経路を形成している、請求項10又は11に記載の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のエマルジョン燃料の製造装置は、燃料油と水との混合燃料をポンプで圧送して微粒子化装置を通過させることにより、混合燃料中の水又は燃料油を分散質として微粒子化して、W/O型(油中水滴型)又はO/W型(水中油滴型)のエマルジョン燃料を製造するものである。以下では、微粒子化装置を通過した混合燃料を特にエマルジョン燃料という場合がある。
【0022】
〔エマルジョン燃料の製造装置〕
以下、W/O型のエマルジョン燃料を製造する場合のエマルジョン燃料の製造装置の具体例を示す。
図1は、本発明の実施形態に係るエマルジョン燃料の製造装置の概念図である。
図2は、本発明の他の実施形態に係るエマルジョン燃料の製造装置の概念図である。
【0023】
エマルジョン燃料の製造装置Aは、
図1に示すように、ボイラ、エンジン、バーナー、燃焼炉、乾燥炉、発電所等の燃焼装置Bに接続されており、製造装置Aで製造されたエマルジョン燃料が燃焼装置Bに供給されるようになっている。製造装置Aは、水を供給するための水タンクT10、燃料油を供給するための燃料油タンクT20、水、燃料油が供給されて混合されるための混合タンクT30、貯蔵タンクT40、コンプレッサC50(気体供給部)を備えている。
【0024】
水タンクT10と混合タンクT30との間には、水タンクT10側から順に、水用ポンプP11、水流量計R1、水用配管チーズV13、水投入電磁弁V11、水流量調整弁V12が直列的に配設されている。水タンクT10には、水タンクT10の排出側から順に循環方向に、水用ポンプP11、水流量計R1、水用配管チーズV13、ウルトラファインバブル水の生成装置90’が直列的に配設されており、この順に水を送液することにより、水タンク10から排出された水が再び水タンク10に戻されるための循環経路11が形成される。水タンクT10から混合タンクT30に向かう経路と循環経路11との切替は、水投入電磁弁V11の切替えによって行われる。
【0025】
水用ポンプP11の吸入側には、水用の気体供給部であるコンプレッサC10から圧縮された気体を供給できるようになっている。コンプレッサC10と水用ポンプP11の吸引側との間には、図示していないが、後述するコンプレッサC50とポンプP31の吸入側との間と同様に、コンプレッサC10側から順に、手動弁、比例制御弁、気体流量計、逆止弁が設けられている。コンプレッサC10から水用ポンプP11の吸引側に供給される圧縮された気体は、0.1MPa〜1.0MPaに圧縮されていることが好ましく、0.2MPa〜0.3MPaとすることがさらに好ましい。また、上記気体としては、空気、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、オゾン等を挙げることができるが、特別な気体雰囲気を必要としない空気を用いることが好ましい。
【0026】
燃料油タンクT20と混合タンクT30との間には、燃料油タンクT20側から順に燃料油流量計R2、燃料油投入電磁弁V21が直列的に配設されている。
【0027】
混合タンクT30には混合タンク撹拌モータM3に取り付けた撹拌装置が設けられ、混合タンクT30で水、燃料油が混合されて混合燃料が生成される。混合タンクT30には配管30(第1配管)が接続されており、この配管30により、混合タンクT30から送出された混合燃料が配管30を通って再び混合タンクT30に戻るための循環経路31が形成されるとともに、混合燃料を混合タンクT30から後述する移送電磁弁V35に送出する経路32が形成される。混合タンクT30にはレベルゲージG3を設けてもよい。レベルゲージG3を設けた場合には、水流量計R1や燃料油流量計R2を省略することも可能である。
【0028】
配管30には、混合タンクT30の排出口側から順に循環方向に、第1循環電磁弁V31、ポンプP31(第1ポンプ)、配管チーズV32、微粒子化装置90、第2循環電磁弁V34が直列的に配設されており、この順に混合燃料を送液する循環経路31が形成される。また、配管30には移送電磁弁V35が配設されており、混合タンクT30の混合燃料が配管チーズV32から微粒子化装置90に向かう循環経路31とは別に、混合タンクT30の混合燃料が配管チーズV32から移送電磁弁V35に向かう経路32が形成される。配管30の循環経路31と経路32との切替えは、移送電磁弁V35の切替えによって行われる。
【0029】
配管30のポンプP31の吸入側(配管30の循環方向の上流側)には、コンプレッサC50から圧縮された気体が供給されるようになっている。コンプレッサC50とポンプP31の吸入側との間には、コンプレッサC50側から順に、手動弁V51、比例制御弁V52、気体流量計R5、逆止弁V53が設けられている。コンプレッサC50から配管30に供給される圧縮された気体は、0.5MPa〜1.0MPaに圧縮されていることが好ましく、0.7MPa〜0.9MPaとすることがさらに好ましい。また、上記気体としては、空気、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、オゾン等を挙げることができるが、特別な気体雰囲気を必要としない空気を用いることが好ましい。
【0030】
配管30に設けられた移送電磁弁V35の切替えによって、混合タンクT30から配管チーズV32、移送電磁弁V35を経て、燃焼装置用配管40(第2配管)に繋がる経路が形成される。燃焼装置用配管40は、移送電磁弁V35から貯蔵タンクT40に導入されたエマルジョン燃料を、燃焼装置Bに供給する経路42を形成するとともに、貯蔵タンクT40から送出されたエマルジョン燃料を貯蔵タンクT40に戻す循環経路41を形成する。
【0031】
燃焼装置用配管40には、移送電磁弁V35から順に燃焼装置Bに向けて、貯蔵タンクT40、手動弁V41、吐出ポンプP41(第2ポンプ)、第2配管チーズV42、第2移送電磁弁V44がこの順に直列的に配設されており、この順にエマルジョン燃料を送液する経路42が形成される。また、燃焼装置用配管40には、貯蔵タンクT40の排出口側から順に循環方向に、手動弁V41、吐出ポンプP41、第2配管チーズV42、圧力調整器V43が直列的に配設されており、この順にエマルジョン燃料を送液することにより、エマルジョン燃料が貯蔵タンクT40に戻される循環経路41が形成される。燃焼装置用配管40の循環経路41と経路42との切替は、第2移送電磁弁V44の切替えによって行われる。
【0032】
燃焼装置用配管40には、燃焼装置Bで消費されなかったエマルジョン燃料を再び貯蔵タンクT40に戻す戻り経路43が形成されている。この戻り経路43を設けることにより、燃焼装置Bで消費されなかったエマルジョン燃料を再び貯蔵タンクT40に回収することができるため、エマルジョン燃料のロスを低減することができる。また、戻り経路43を経て貯蔵タンクT40に回収されたエマルジョン燃料を、経路41を循環させることによって乳化状態を安定化させることができる。なお、戻り経路43は、燃焼装置Bの種類に応じて、設けても設けなくてもよい。
【0033】
貯蔵タンクT40には貯蔵タンク撹拌モータM4に取り付けた撹拌装置が設けられている。貯蔵タンクT40にはレベルゲージG4を設けてもよい。レベルゲージG4を設けることにより、貯蔵タンクT40内の流量管理が容易となる。
【0034】
製造装置Aには、図示しないコントローラが設けられており、コントローラには、コンピュータ等の操作部(図示せず)、水流量計R1、燃料油流量計R2、気体流量計R5、混合タンクT30及び貯蔵タンクT40に設けられたレベルゲージG3、G4からの出力情報が入力される。そして、コントローラは、これらの出力情報に基づいて制御情報を生成し、水用ポンプP11、ポンプP31、吐出ポンプP41、水投入電磁弁V11、水流量調整弁V12、燃料油投入電磁弁V21、第1及び第2循環電磁弁V31、V34、移送電磁弁V35、第2移送電磁弁V44、比例制御弁V52、混合タンク撹拌モータM3、貯蔵タンク撹拌モータM4に制御情報を出力する。
【0035】
〔ポンプ〕
水用ポンプP11、ポンプP31及び吐出ポンプP41としては、特に限定されず、遠心ポンプ、プロペラポンプ、渦巻ポンプ、セントヒューガルポンプ、カスケードポンプ、過流タービンポンプ等の非容積式ポンプ、往復動ポンプや回転ポンプ、ギアポンプ等の容積式ポンプ等を用いることができる。このうち、水用ポンプP11及びポンプP31としては、これらのポンプの吸入側においてコンプレッサC10、C50から気体を導入し、これらのポンプにより予備撹拌できるように、カスケードポンプ、過流タービンポンプを用いることが好ましい。また、水用ポンプP11、ポンプP31及び吐出ポンプP41の吐出圧力、吐出量も特に限定されないが、吐出圧力は0.5MPa〜1.0MPaであることが好ましい。
【0036】
〔微粒子化装置〕
微粒子化装置90は、混合タンクT30で生成された燃料油と水とを含む混合燃料中の水(分散質)を微粒子化するためのものである。
図3(a)は、本発明の実施形態に係る微粒子化装置を示す斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)の分解斜視図であり、
図3(c)は、
図3(a)のC−C断面図である。また、
図4は、本発明の実施形態に係る微粒子化装置の使用形態を示す斜視図である。
【0037】
本実施の形態の微粒子化装置90は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、上流側エレメント91(第1エレメント)、下流側エレメント92(第2エレメント)、ガスケット93とを有する。上流側エレメント91と下流側エレメント92とは、製造装置Aにおける送液方向上流側からこの順に配置され、
図3(c)に示すように、ガスケット93を介して、一定の間隔を保持しつつ対向させて配置される。
【0038】
(上流側エレメント)
上流側エレメント91は、円盤状のプレートに円形の孔を複数形成したものである。上流側エレメント91は、その中心側に第1の径を有する中心側孔91a(第1孔)を例えば1〜10個有し、その外周側に第2の径を有する外周側孔91b(第2孔)を2〜20個有することができる。
図3(b)に示す上流側エレメント91では、4個の中心側孔91aを有し、8個の外周側孔91bを有する例を示している。
図3(b)に示す4つの中心側孔91aは、上流側エレメント91の中心から同心円状の位置に等間隔に配置されている。
図3(b)に示す8つの外周側孔91bは、中心側孔91aの外周側であって、上流側エレメント91の中心から同心円状の位置に等間隔に配置されている。なお、中心側孔91aは、1〜8個とすることが好ましく、2〜6個とすることがより好ましい。また、外周側孔91bは、2〜16個とすることが好ましく、4〜8個とすることがより好ましい。
【0039】
上流側エレメント91では、中心側孔91aの直径は外周側孔91bの直径に比べて小さい。具体的には、微粒子化装置90を通過する混合燃料の線速度が6m/sec〜9m/secとなるように設定すればよい。例えば、流量5L/minの場合には、中心側孔91aは、0.4mm〜1mmの直径を有し、外周側孔91bは、0.8mm〜2mmの直径を有することが好ましい。上流側エレメント91は、例えばSUS、アルミニウム、銅、プラスチック等の材料で形成され、厚みは0.1mm〜0.3mmである。
【0040】
なお、上流側エレメント91の大きさ、形状、厚みは上記したものに限定されない。上流側エレメント91が有する孔の形状、個数、配置位置も
図3(b)に示された中心側孔91a及び外周側孔91bに限るものではなく、上流側エレメント91に、2種以上の径からなる複数の孔を有していればよい。上流側エレメント91が有する孔の形状は、円形に限らず楕円形、正方形、長方形等であってもよい。
【0041】
特に、界面活性剤等を別途添加することなく燃料油と水とを混合してエマルジョン燃料を製造する際に本実施の形態の微粒子化装置90を用いる場合には、水の微粒子化のされやすさの点から、上流側エレメント91の中心側に配置された相対的に径の小さい孔を取り囲むように、相対的に径の大きい孔を設けることが好ましい。特に、
図3(a)〜
図3(c)に示すように、上流側エレメント91に設けられる孔は、上流側エレメント91の中心から同心円状に等間隔に孔を設けることが好ましく、この際、上流側エレメント91の孔の直径は、中心側に配置された孔から外周側に配置された孔に向かって、段階的に大きくなることが好ましい。
【0042】
(下流側エレメント)
下流側エレメント92は、円盤状のプレートに円形の孔を形成したものである。下流側エレメント92は、その中心に中央孔(第2孔)92aを例えば1〜16個有することができる。
図3(b)に示す下流側エレメント92では、その中心に1つの中央孔92aを有する例を示している。なお、中央孔92aは、1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。下流側エレメント92は、微粒子化装置に組立てる際の簡便性等の点から、上流側エレメント91と同じ直径を有することが好ましいが、異なる直径であってもよい。
【0043】
微粒子化装置90を通過する混合燃料の線速度が6m/sec〜9m/secの場合には、例えば中央孔92aは、2.5mm〜4mmの直径を有することが好ましい。下流側エレメント92の中央孔92aは、上流側エレメント91に形成されたすべての孔の総面積の0.8倍〜1.2倍の面積を有することが好ましく、0.8倍〜1.0倍の面積を有することがさらに好ましい。このうち、下流側エレメント92の中心に、上流側エレメント91に設けられたすべての孔の面積の総和である総面積と同面積を有する孔を設けることが最も好ましい。これにより、本実施の形態のエマルジョン燃料の製造装置のように界面活性剤等を別途添加することなく燃料油と水とを混合してエマルジョン燃料を製造する際に、水を効率よく微粒子化することができる。
【0044】
下流側エレメント92は、例えばSUS、アルミニウム、銅、プラスチック等の材料で形成され、厚みは0.1mm〜0.3mmである。
【0045】
なお、下流側エレメント92の大きさや厚みは上記したものに限定されない。下流側エレメント92が有する孔の形状は、円形に限らず楕円形、正方形、長方形等であってもよい。また、中央孔92aの中心は、下流側エレメント92の中心と同心としてもよく、同心でなくてもよい。さらに、下流側エレメント92に中央孔92a以外に孔を設けてもよい。
【0046】
(ガスケット)
ガスケット93は、例えばへルールガスケットとして知られるものを用いることができ、円盤状のプレートに孔を形成したものである。ガスケット93の一方の面に上流側エレメント91を配置し、他方の面に下流側エレメント92を配置することにより、上流側エレメント91と下流側エレメント92とをガスケット93を介して、互いに一定の間隔を保持しつつ対向させることができる。
【0047】
ガスケット93には、その中央に空間形成用孔93aが形成されている。空間形成用孔93aにより、微粒子化装置90を組立てたときに、
図3(c)に示すように、上流側エレメント91と下流側エレメント92とガスケット93の空間形成用孔93aとによって囲まれた空間90aが形成される。
【0048】
ガスケット93に設けられた空間形成用孔93aは、ガスケット93を介して上流側エレメント91と下流側エレメント92とを対向させたときに、上流側エレメント91に設けられたすべての孔、及び、下流側エレメント92に設けられた孔と対向する大きさ及び形状を有している。したがって、空間形成用孔93aを設けることによって、ガスケット93が上流側エレメント91及び下流側エレメント92に設けられた孔を塞ぐことはない。これにより、微粒子化装置90に供給された流体は、上流側エレメント91の孔を通って空間90aに導入され、この空間90aに導入された流体は、下流側エレメント92の中央孔92aを通って微粒子化装置90から排出されるようになっている。
【0049】
空間形成用孔93aの大きさは、微粒子化装置90を通過する混合燃料の線速度が6m/sec〜9m/secの場合には、10mm〜80mmの直径を有することが好ましい。ガスケット93は、例えばシリコーンゴム製やフッ素系樹脂ゴム製等の材料で形成される。また、ガスケット93の空間形成用孔93aが形成される部分の厚みは、例えば10mm〜80mmとすることができる。
【0050】
ガスケット93の大きさや厚みは上記したものに限定されない。上流側エレメント91が有する孔の形状、配置位置も
図3(b)に示す空間形成用孔93aに限るものではない。ガスケット93を介して上流側エレメント91と下流側エレメント92とを対向させたときに、上流側エレメント91に設けられたすべての孔、及び、下流側エレメント92に設けられた孔と対向する位置に、空間形成用孔93aを有していればよい。ガスケット93が有する孔の形状は、円形に限らず楕円形、正方形、長方形等であってもよい。
【0051】
図3(a)及び
図3(c)に示すガスケット93では、ガスケット93の両面に上流側エレメント91及び下流側エレメント92を配置する場合を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。例えば、空間形成用孔93aを有するガスケット93に、凹部やツメ等を設けて、上流側エレメント91及び下流側エレメント92を嵌め込んで保持するようにしてもよい。さらに、ガスケット93を設けることに代えて、上流側エレメント91の下流側エレメント92との対向面の外周及び/又は下流側エレメント92の上流側エレメント91との対向面の外周を取り囲むように壁部を設けて、両エレメント91,92間を対向させたときに空間90aが形成されるようにしてもよい。
【0052】
微粒子化装置90は、
図3(a)及び
図3(c)に示すように、ガスケット93の一方の面に上流側エレメント91を配置し、他方の面に下流側エレメント92を配置して、上流側エレメント91と下流側エレメント92とが、一定の間隔を保持しつつ対向した状態となるように組立てられる。これにより、上流側エレメント91と下流側エレメント92とガスケット93の空間形成用孔93aとによって囲まれた空間90aが形成される。上流側エレメント91と下流側エレメント92との間の間隔は、微粒子化装置90を通過する混合燃料の線速度が6m/sec〜9m/secの場合には、10mm〜80mmとすることが好ましい。
【0053】
上記のようにして組立てられた微粒子化装置90は、
図1に示す製造装置Aの配管30の送液方向上流側に上流側エレメント91が配置され、送液方向下流側に下流側エレメント92が配置されるように配管30に配設される。製造装置Aに微粒子化装置90を設けるために、
図4に示すフランジ付き管部材94,94を用いることが好ましい。具体的には、
図4に示すように、フランジ付き管部材94,94のフランジ94a,94aの間に微粒子化装置90を挟持し、管94b,94bにおいて製造装置Aの配管30と接続する。フランジ94a,94aの部分でクランプを用いて、上流側エレメント91、下流側エレメント92、ガスケット93を固定する。フランジ付き管部材94,94としては、例えばへルールとして知られるものを用いることができる。上流側エレメント91、下流側エレメント92、ガスケット93は、クランプを用いて固定することに代えて、接着剤や両面テープ等の接着手段やネジ等の締結手段を用いてフランジ付き管部材94,94に固定してもよい。
【0054】
フランジ付き管部材94,94の管94b,94bは、上流側エレメント91に設けられたすべての孔、及び、下流側エレメント92に設けられた孔と対向する大きさ及び形状を有している。したがって、フランジ94a,94aが、上流側エレメント91及び下流側エレメント92に設けられた孔を塞ぐことはない。これにより、一方のフランジ付き管部材94から微粒子化装置90に供給された流体は、上流側エレメント91の孔を通って空間90aに導入され、この空間90aに導入された流体は、下流側エレメント92の中央孔92aを通って、他方のフランジ付き管部材94から排出される。
【0055】
なお、本実施の形態の
図3(a)〜
図3(c)に示す微粒子化装置90では、上流側エレメント91、下流側エレメント92、ガスケット93を用いた場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限らず、両端にフランジを有する管(例えば、延長用のヘルール)のフランジ部分に、孔を有しないプレート状のパッキン(例えば、空間形成用孔93aを有しないガスケット)をそれぞれ配置し、一方のパッキンに、上記中心側孔91a及び外周側孔91bのように孔を形成し、他方のパッキンに、上記中央孔92aのように孔を形成してもよい。この場合、この2つのパッキンがそれぞれ上記上流側エレメント91及び下流側エレメント92となり、両端にフランジを有する管が、上流側エレメント91と下流側エレメント92とを互いに一定の間隔を保持しつつ対向させて配置させるための部材となる。
【0056】
微粒子化装置90は、上流側エレメント91、下流側エレメント92及びガスケット93として、それぞれに設けられた孔の大きさや孔の配置が異なるものを複数用意し、要求される水の微粒子化の程度(水の粒子径)等に応じて、用いる上流側エレメント91、下流側エレメント92及びガスケット93を変更するようにしてもよい。このように微粒子化装置90は、上流側エレメント91、下流側エレメント92及びガスケット93、フランジ付き管部材94といった簡易な構造の部品を組立てて作製することができ、また、この微粒子化装置90を製造装置Aの配管に組み込むという簡便な操作でエマルジョン燃料を製造する製造装置を作製することができる。
【0057】
図3(a)〜
図3(c)に示す微粒子化装置90は、上記のとおりエマルジョン燃料の製造装置Aで用いることができる。しかしながら、本実施の形態の水と燃料油とを混合してエマルジョン燃料を製造する場合やウルトラファインバブル水を製造する場合に限らず、燃料油とその他の添加剤(例えば、乳化剤、酸化防止剤、粘度調整剤、防錆剤、分散剤、消泡剤、香料、着色剤、潤滑剤)との混合や、燃料油と空気等の気体と混合等、液体と液体、液体と気体等の流体の混合、流体と固体との混合等、任意の材料を混合するための混合装置として好適に用いることができる。
【0058】
〔ウルトラファインバブル水の生成装置〕
ウルトラファインバブル水の生成装置90’は、ウルトラファインバブル水(ナノバブル水)を生成することができるものを用いることができる。具体的には、超音波方式、旋回流方式、加圧溶解方式等によってウルトラファインバブル水を生成することができる装置の他、上記した微粒子化装置90と同様の構造を有する装置を用いることができる。微粒子化装置90と同様の構造を有する生成装置90’では、生成装置90’に導入された水に微細な気泡が形成されることによりウルトラファインバブル水を製造することができる。ウルトラファインバブル水とは、1μm以下のナノサイズの気泡を含む水をいう。
【0059】
〔圧力調整器〕
圧力調整器V43としては、エマルジョン燃料を圧送するときの圧力が所定の圧力となるように調整できるものであればよい。例えばエマルジョン燃料の送液を所定の圧力まで抑制するものや、エマルジョン燃料が通過する圧力調整器V43の流路面積(流路)を、燃焼装置用配管40の他の部分に比べて小さい流路とすることによって、エマルジョン燃料の流量を抑制するものを用いることができる。圧力調整器V43として具体的には、上記した微粒子化装置90、圧力調整弁、リリーフ弁、手動弁、安全弁、減圧弁等を用いることができる。
【0060】
圧力調整器V43によって調整される圧力は、0.1MPa以上あることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることがさらに好ましい。圧力調整器V43によって調整される圧力が0.1MPa未満であると、得られるエマルジョン燃料の乳化状態が安定化しにくくなる傾向にあり、上記圧力が2.0MPaを超えると、配管30として耐圧性の高いものを用いる必要が生じる等、製造装置Aの設計が複雑になる傾向にある。
【0061】
〔エマルジョン燃料の製造方法〕
エマルジョン燃料の製造装置Aを用いてW/O型のエマルジョン燃料を製造する製造方法について説明する。
【0062】
図示しない操作部を操作して、水及び燃料油を所望の混合重量割合に設定することにより、水量、燃料油量がそれぞれ算出され、それに適した開口量で水投入電磁弁V11、燃料油投入電磁弁V21の開口量が決定される。燃料油投入電磁弁V21が開口すると、燃料油タンクT20から混合タンクT30に燃料油が供給され、燃料油流量計R2によりその流量が検出されて混合タンクT30に所定量まで供給される。なお、混合タンクT30に設けたレベルゲージG3によって、水流量計R1や燃料油流量計R2を用いずに、水及び燃料油の供給量を制御するようにしてもよい。
【0063】
続いて、混合タンクT30内で、混合タンク撹拌モータM3に取付けられたスターラー等の撹拌装置で撹拌を開始し、操作部を操作して第1及び第2循環電磁弁V31、V34を開口させ、ポンプP31を作動させる。ポンプP31の作動直後に、水投入電磁弁V11を開口し、水用ポンプP11によって吸込まれた水タンクT10内の水を混合タンクT30に供給する。これにより、混合タンクT30では、燃料油と水とが混合された混合燃料が生成される。水は水流量調整弁V12で流量を調整しながら混合タンクT30に供給され、その流量は水流量計R1で検出される。
【0064】
混合燃料中の水の含有率は、エマルジョン燃料を形成することができれば特に限定されないが、混合燃料の総重量に対して10重量%以上とすることが好ましく、20重量%以上とすることがより好ましい。また、混合燃料中の水の含有率は、混合燃料の総重量に対して50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。水の含有率が10重量%未満であると、エマルジョン燃料を用いたときの燃費や燃料コストの向上が大きくは期待できない。一方、エマルジョン燃料に含まれる水の量が多いほど燃料コストが下がるため、水の含有率は大きい方が好ましい。水の含有率が50重量%を超えると、製造装置Aで安定した乳化状態のエマルジョン燃料を製造しにくくなる傾向にある。
【0065】
ポンプP31の作動直後にコンプレッサC50の手動弁V51を開放し、コンプレッサC50から圧縮された気体を、配管30のポンプP31の吸入側に供給して、混合燃料と気体とを混合する。気体は比例制御弁V52で流量を調整しながら供給され、逆止弁V53で逆流しないようになっている。また、気体の流量は気体流量計R5で検出される。気体の供給量はポンプP31の吐出圧力や吐出量に応じて選定すればよいが、ポンプP31の吐出圧力を0.1MPa〜2.0MPa、ポンプP31での混合燃料の吐出量100体積%に対してコンプレッサC50からの気体の供給量を1〜5体積%とすることが好ましい。
【0066】
混合燃料に混合される気体の混合率は、エマルジョン燃料を形成することができれば特に限定されないが、混合燃料の総重量に対して1体積%以上とすることが好ましく、2体積%以上とすることがより好ましい。また、混合燃料に混合される気体の混合率は、混合燃料の総重量に対して50体積%以下であることが好ましい。気体の混合率が1体積%未満であると、燃焼性を高めることができる効果が大きくは期待できない。一方、気体の混合率が50重量%を超えると、燃焼性が高すぎる状態になる傾向がある。
【0067】
ポンプP31を作動させると混合タンクT30から混合燃料が吸込まれ、配管30のポンプP31の吸入側において、混合燃料とコンプレッサC50から供給された気体とが混合される。ポンプP31は気体が混合された混合燃料を微粒子化装置90に向けて圧送する。
【0068】
微粒子化装置90は、
図4に示すように、フランジ付き管部材94,94のフランジ94a,94aの間に挟持され、管94b,94bの部分で配管30と接続されている。ポンプP31により圧送された混合燃料は、微粒子化装置90の送液方向上流側に配置されるフランジ付き管部材94から上流側エレメント91に導入される。
【0069】
上流側エレメント91には、
図3(a)〜
図3(c)に示すように、径の異なる中心側孔91a及び外周側孔91bが形成されている。中心側孔91aを通過した混合燃料と外周側孔91bを通過した混合燃料とでは、その流速が異なる。空間90aに導入された流速の異なる混合燃料は、その速度差によって空間90a内において流れ方向が撹乱され、空間90a内で撹拌された状態となる。このように空間90a内で撹拌された混合燃料は、下流側エレメント92に設けられた中央孔92aから微粒子化装置90の外部に排出される際に、渦を巻きながら排出される。上記のような空間90a内における混合燃料の撹拌、及び、下流側エレメント92の中央孔92aから渦巻き状に生じる混合燃料の排出により、混合燃料に含まれる水が微粒子化されて、安定な乳化状態のエマルジョン燃料を製造することができる。
【0070】
微粒子化装置90を通って放出された混合燃料は、第2循環電磁弁V34を通って再び混合タンクT30に供給される。混合タンクT30に戻された混合燃料は、混合タンク撹拌モータM3で撹拌されることにより、安定した乳化状態を維持することができる。また、混合燃料が、混合タンクT30と配管30とで形成される循環経路31を2〜5回循環し、上記のように微粒子化装置90を通過することによって、水をさらに微粒子化し、安定な乳化状態のエマルジョン燃料を製造することもできる。循環経路31での混合燃料の循環回数を変更し、混合燃料が微粒子化装置90を通過する回数を調整することによって、エマルジョン燃料中の水の粒子径を調整することもできる。
【0071】
また、ポンプP31の吸入側にコンプレッサC50から供給された気体を供給し、混合燃料が気体と混合された状態で微粒子化装置90に導入されると、燃料油と水との混合性を高めることができる。これにより、より乳化状態が安定化したエマルジョン燃料を得ることができる。
【0072】
本実施の形態の製造装置Aを用いることにより、用いる燃料油の種類にもよるが、エマルジョン燃料中の水の粒子径を、例えば2000nm以下に形成することができる。また、微粒子化装置90における上流側エレメント91及び下流側エレメント92に設けられた孔の径や配置等を調節することにより、用いる燃料油の種類にもよるが、水の粒子径を50nm〜1000nmまで微粒子化することもできる。さらに、混合タンクT30の混合燃料が微粒子化装置90を複数回通過するように、混合燃料が循環経路31を循環することによっても水を微粒子化することができる。したがって、微粒子化装置90の上流側エレメント91及び下流側エレメント92に設けられた孔の径や配置、混合燃料が循環経路31を循環する回数を調整することにより、水の粒子径が所望の大きさに調整されたエマルジョン燃料を製造することができる。
【0073】
本発明者の知見によると、例えば、燃焼装置Bとして、0.5〜2.5MPa程度の加圧側ポンプが搭載されたバーナーでは、エマルジョン燃料中の水の粒子径が300〜700nmである場合に、NO
x濃度の低減率が高くなり、かつ、燃費の改善率が高くなる傾向にある。したがって、燃焼装置Bとして上記バーナーを用いる場合には、水の粒子径を300〜700nmに調整することによって、NO
x濃度の低減率を高め、燃費の改善率を高めることができる。本実施の形態の製造装置Aでは、上記のとおり、エマルジョン燃料中の水の粒子径を調整することができるため、例えば、要求されるNO
x濃度の低減率及び燃費の改善率に応じて、所望の粒子径を有する水粒子を含むエマルジョン燃料を製造することができる。
【0074】
上記のようにして乳化状態が安定化したエマルジョン燃料は、移送電磁弁V35の切替えにより、混合タンクT30から配管チーズV32、移送電磁弁V35を経て、燃焼装置用配管40に移送されて貯蔵タンクT40に導入される。エマルジョン燃料は、例えば循環経路31を所定時間循環した後に移送電磁弁V35が切替えられることにより、その全量が貯蔵タンクT40に供給されてもよく、移送電磁弁V35が間欠的に切替えられることにより、循環経路31を循環するエマルジョン燃料の一部を貯蔵タンクT40に間欠的に供給するようにしてもよい。また、移送電磁弁V35の切替えによって貯蔵タンクT40に供給されたエマルジョン燃料の供給量に応じて、混合タンクT30に、水タンクT10からの水の供給や燃料油タンクT20からの燃料油の供給を行うようにして、連続的にエマルジョン燃料を製造するようにしてもよい。
【0075】
貯蔵タンクT40内に供給されたエマルジョン燃料は、貯蔵タンク撹拌モータM4に取り付けた撹拌装置で撹拌されながら、レベルゲージG4によってその供給量が検出される。貯蔵タンクT40内のエマルジョン燃料の量が所定量に達すると、手動弁V41、第2移送電磁弁V44を切替えて、吐出ポンプP41を作動させる。吐出ポンプP41を作動させると、貯蔵タンクT40からエマルジョン燃料が吸入され、圧力調整器V43に向けてエマルジョン燃料が圧送される。このとき、圧力調整器V43は、上記したようにエマルジョン燃料の流れを抑制する等により、エマルジョン燃料を圧送するときの圧力が所定の圧力となるように調整するようになっており、吐出ポンプP41の作動に伴って吐出ポンプP41と圧力調整器V43との間のエマルジョン燃料の圧力が徐々に上昇する。これにより、エマルジョン燃料が加圧された状態で循環経路41を循環するため、エマルジョン燃料の乳化状態を安定に保つことができる。
【0076】
循環経路41を循環しているときにエマルジョン燃料に印加される印加圧力の大きさは、圧力調整器V43によって調整することができる。圧力調整器V43によって調整される圧力は、0.1MPa以上あることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることがさらに好ましい。
【0077】
一方、貯蔵タンクT40から燃焼装置Bにエマルジョン燃料を供給するときには、第2移送電磁弁V44を切替えて、吐出ポンプP41により、貯蔵タンクT40から第2移送電磁弁V44を経て、燃焼装置Bにエマルジョン燃料が圧送される。上記のとおり、エマルジョン燃料は循環経路41を循環することにより加圧されているため、貯蔵タンクT40から燃焼装置Bにエマルジョン燃料を圧送する際にも、0.05MPa以上1.0MPa以下の加圧された状態で移送することができる。
【0078】
このように、エマルジョン燃料に所定の圧力が印加されるように調整しながら圧送することによって、水を微粒子化した状態に維持し、エマルジョン燃料の乳化状態を安定に保つことができる。これにより、安定した乳化状態のエマルジョン燃料を燃焼装置Bに供給することができるので、燃焼装置Bでのエマルジョン燃料の燃焼性を向上することができる。
【0079】
なお、エンジンやバーナー等の高圧のエマルジョン燃料を供給することができない燃焼装置Bにエマルジョン燃料を供給する場合には、第2移送電磁弁V44と燃焼装置Bとの間で、エマルジョン燃料を任意の圧力まで減圧して燃焼装置Bに供給すればよい。減圧の方法は、特に限定されないが、減圧弁やバイパス配管を用いて行えばよい。
【0080】
本実施の形態のエマルジョン燃料の製造装置Aでは、
図1に示すように、混合タンクT30及び微粒子化装置90等を用いて得られたエマルジョン燃料を一旦貯蔵タンクT40に貯蔵して燃焼装置Bに供給している。そのため、混合タンクT30及び微粒子化装置90でのエマルジョン燃料の生成を連続的に行いながら、燃焼装置Bへのエマルジョン燃料の供給は、貯蔵タンクT40からの供給量で調整することができる。また、貯蔵タンクT40内のエマルジョン燃料は、循環経路41を循環することにより加圧されているため、安定した乳化状態のエマルジョン燃料を燃焼装置Bに供給することができる。
【0081】
しかしながら、
図2に示すように、
図1に示す貯蔵タンクT40、手動弁V41、吐出ポンプP41、第2配管チーズV42、圧力調整器V43、第2移送電磁弁V44を有していない製造装置A3を用いて、エマルジョン燃料を燃焼装置Bに直接供給するようにすることもできる。具体的には、配管30に設けられたポンプP31を用い、配管チーズV32を経て、移送電磁弁V35から燃焼装置用配管40に、混合タンクT30内のエマルジョン燃料を圧送して燃焼装置Bに直接供給してもよい。
【0082】
図2に示す製造装置A3には、燃焼装置Bで消費されなかったエマルジョン燃料を再び混合タンクT30に戻す戻り経路44が形成されている。この戻り経路44を設けることにより、燃焼装置Bで消費されなかったエマルジョン燃料を再び混合タンクT30に戻すことができる。混合タンクT30に戻されたエマルジョン燃料を、循環経路31で循環させることにより、乳化状態を安定化させることができる。なお、戻り経路44は、燃焼装置Bの種類に応じて、設けても設けなくてもよい。
【0083】
本実施の形態のエマルジョン燃料の製造装置A,A3では、ポンプP31の吸入側においてコンプレッサC50からの気体を導入し、混合燃料に気体を混合して燃料油と水との混合性を高めている。しかしながら、コンプレッサC50を用いずに、圧縮した気体を導入するようにしてもよい。また、混合燃料に気体を導入することなくエマルジョン燃料を生成してもよい。
【0084】
上記では、燃料油に混合する水として、水タンクT10に貯蔵された水を用いた場合について説明したが、
図1に示すウルトラファインバブル水の生成装置90’を用いてウルトラファインバブル水を製造し、このウルトラファインバブル水を用いてもよい。
【0085】
ウルトラファインバブル水は、
図1に示すように、水タンクT10から排出された水が生成装置90’を通過する循環経路11を循環することによって製造される。生成装置90’としては、上記したように、ウルトラファインバブル(ナノバブル)水を生成することができるものを用いることができるが、例えば微粒子化装置90と同様の構造を有するものを用いることもできる。この場合、
図4に示すように、生成装置90’は、微粒子化装置90と同様に、フランジ付き管部材94,94のフランジ94a,94aの間に挟持され、管94b,94bの部分で循環経路11をなす配管と接続される。
【0086】
水タンクT10から排出された水は、水用ポンプP11の吸入側において、水とコンプレッサC10から供給された気体とが混合されて気体混合水が生成される。水用ポンプP11は、気体混合水を、水流量計R1、水用配管チーズV13、生成装置90’の順に圧送する。
【0087】
ウルトラファインバブル水の生成装置90’として、微粒子化装置90と同様の構造を有するものを用いた場合、水用ポンプP11により圧送された気体混合水は、生成装置90’の送液方向上流側に配置されるフランジ付き管部材94から上流側エレメント91に導入される。生成装置90’の上流側エレメントには、
図3(a)〜
図3(c)に示す微粒子化装置90で説明したとおり、径の異なる中心側孔及び外周側孔が形成されている。中心側孔を通過した気体混合水と外周側孔を通過した気体混合水とでは、その流速が異なる。そのため、生成装置90’の空間(
図3(c)の空間90aに対応する空間)に導入された流速の異なる気体混合水は、その速度差によって空間内において流れ方向が撹乱され、空間内で撹拌された状態となる。このように空間内で撹拌された気体混合水は、下流側エレメントに設けられた中央孔から生成装置90’の外部に排出される際に、渦を巻きながら排出される。上記のような空間内における気体混合水の撹拌、及び、下流側エレメントの中央孔から渦巻き状に生じる気体混合水の排出により、気体混合水に含まれる水が微粒子化されて、ウルトラファインバブル水を製造することができる。
【0088】
気体混合水が生成装置90’を通過することによって製造されたウルトラファインバブル水は、再び水タンクT10に供給される。水タンクT10に戻されたウルトラファインバブル水は、循環経路11を2〜5回循環し、上記のように生成装置90’を複数回通過することによって、さらに気泡を微細化し、安定な状態のウルトラファインバブル水を製造することができる。
【0089】
なお、
図1に示す製造装置Aは、燃料油にウルトラファインバブル水を混合するために、ウルトラファインバブル水の生成装置90’を備えているが、燃料油に水道水等のウルトラファインバブル水以外の水を混合する場合には、生成装置90’及び水用配管チーズV13を有する循環経路11は設ける必要はない。また、
図2に示す製造装置A3には、ウルトラファインバブル水の生成装置90’及び水用配管チーズV13を有する循環経路11を示していないが、製造装置A3に、生成装置90’及び水用配管チーズV13を有する循環経路11を設けてもよい。
【0090】
上記では、W/O型のエマルジョン燃料を製造する場合について説明したが、
図1に示す製造装置A,
図2に示す製造装置A3を用いて、O/W型のエマルジョン燃料を製造することもできる。O/W型のエマルジョン燃料を製造する場合には、水タンクT10から混合タンクT30に水を供給した後、燃料油タンクT20から燃料油を混合タンクT30に供給して、水と燃料油とを混合した混合燃料を生成すればよい。この場合、混合燃料が微粒子化装置90を通過することにより、燃料油(分散質)を微粒子化することができる。
【0091】
〔エマルジョン燃料〕
(燃料油)
燃料油は、温度50℃における動粘度が2mm
2/s以上であることが好ましく、5mm
2/s以上であることがより好ましく、10mm
2/s以上であることが最も好ましい。上記燃料油として具体的には、温度50℃における動粘度が通常1.5〜20mm
2/sであるA重油、温度50℃における動粘度が通常2.5〜100mm
2/sであるB重油、温度50℃における動粘度が通常80〜200mm
2/sであるC重油、温度50℃における動粘度が通常80〜200mm
2/sである石炭油、温度50℃における動粘度が2〜100mm
2/sである再生油(廃油)よりなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができ、2種以上を混合して用いてもよい。このうち、A重油、B重油、C重油、石炭油、再生油(廃油)よりなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。上記燃料油と水とを、上記したエマルジョン燃料の製造装置を用いて混合することにより、界面活性剤を別途添加することなく又は界面活性剤の使用量を低減して、上記燃料油をエマルジョン化することができる。
【0092】
(水)
水は、水道水、蒸留水、精製水、イオン交換水、アルカリ水、酸性水、純粋、超純水、廃水、これらを用いて作製したウルトラファインバブル水等を用いることができる。
【0093】
(その他の成分)
本発明のエマルジョン燃料は、燃料油、水以外のその他の成分として、乳化剤(界面活性剤)、酸化防止剤、粘度調整剤、防錆剤、分散剤、消泡剤、香料、着色剤、潤滑剤などを含んでいてもよい。エマルジョン燃料に含まれるその他の成分の含有率は、本発明のエマルジョン燃料の安定した乳化状態を維持できる範囲であれば特に限定されないが、エマルジョン燃料の総重量に対して20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0094】
上記のその他の成分は、予め燃料油と混合しておいてもよく、燃料油とは別の専用タンクから、混合タンクT30に燃料油とともに供給して混合するようにしてもよい。
【0095】
〔エマルジョン燃料の製造装置の用途〕
本発明のエマルジョン燃料の製造装置で製造されたエマルジョン燃料は、ボイラ、ディーゼルエンジン、燃焼炉、乾燥炉、発電所等の燃焼装置に供給されて使用される。
【実施例】
【0096】
[油水分離評価]
エマルジョン燃料の油水分離試験は、エマルジョン燃料の製造装置で製造された直後にエマルジョン燃料を200mLのメスシリンダーに150mL投入して静置した後、油水分離が生じる時間までの時間を計測することによって行った。静置後、24時間以内に油水分離が生じた場合には、油水分離が生じる時間を計測し、24時間以内に油水分離が生じなかった場合には分離なしと判定した。
【0097】
[水の粒子径の測定]
エマルジョン燃料をプレパラートに0.1mL採取した状態で顕微鏡(GR−D8T2、松電舎製)で撮影し、撮影画像を画像分析装置(A像君、旭化成エンジニアリング製)で粒径分析して、エマルジョン燃料中の水の粒子径を算出した。
【0098】
[燃焼試験]
実施例及び比較例で得たエマルジョン燃料を、バーナ(MC−3G、HODAKA製、吐出圧力1.0〜2.8MPa、吐出流量8〜15kg/h、ノズルチップ2.25(60°),2.5(60°)、ノズルチップ及び吐出圧力で吐出流量を制御)を用い、噴射圧力1.0MPaの範囲で噴射して、簡易燃焼炉(炉サイズ:内径600mm、幅1500mm)内で燃焼させる燃焼試験を行った。排ガス分析器(Testo350S、テストー製)を用いて、簡易燃焼炉から排出される排ガスの排気煙道から、排ガス分析器のプローブで排ガス0.6L/minを採取し、排ガス内のCO、NO、NO
2、SO
2の量を測定した。
【0099】
[燃費評価]
実施例及び比較例で得たエマルジョン燃料について、
図2に示す製造装置A3を用い、上記燃焼試験で用いたものと同じ簡易燃焼炉、排ガス分析器を用いて燃費評価を行った。具体的には、簡易燃焼炉の温度を十分に昇温した後、エマルジョン燃料を燃焼させ、簡易燃焼炉の排気煙道から排ガス分析器のプローブで採取した排ガスを排ガス分析器で検出して、排ガスの温度が425±5℃、酸素濃度が3.5±0.2%となるように、エマルジョン燃料の燃焼状態を維持して30分間燃焼させた。実際の燃焼温度及び酸素濃度は表2に示すとおりである。
【0100】
この30分間の燃焼の前後において、混合タンクT30のエマルジョン燃料の油量を貯蔵タンク油量計で検出して、燃焼の前後における油量の体積差[L]を測定した。この体積差[L]の値とエマルジョン燃料の比重とを用いて、単位時間[h]あたりに消費されたエマルジョン燃料の消費重量[kg/h]を算出し、この消費重量中のC重油の重量をエマルジョン燃料の燃費[kg/h]として算出した。
【0101】
比較のために、燃料としてC重油のみを用いた場合(C重油=100)についても上記と同様の方法で実験を行い、単位時間[h]あたりに消費されるC重油の重量を、C重油の燃費[kg/h]として算出した。
【0102】
〔実施例1〕
図2に示す製造装置A3を用い、ポンプP31として15NED02Z(NIKUNI製)を用い、微粒子化装置90として、
図3(a)〜
図3(c)に示す装置を用いた。上流側エレメント91及び下流側エレメント92は、いずれも直径が24mmであり、ガスケット93は、直径が35mmである。また、上流側エレメント91に設けられた4つの中心側孔91aは、それぞれ直径が0.5mmであり、この中心側孔91aの外側に同心円状に設けられた8つの外周側孔91bは、それぞれ直径が1mmである。下流側エレメント92に設けられた中央孔92aは直径が3mmであり、ガスケット93の空間形成用孔93aの直径は12mmであり、厚さは1.5mmである。なお、コンプレッサC50は作動させず、気体の供給は行わなかった。
【0103】
燃料油タンクT20から燃料油としてC重油(LPC28、昭和シェル石油(株)製、温度50℃における動粘度157.2mm
2/s、硫黄分濃度1.15wt%、窒素分濃度0.19w%)350gを1Lの混合タンクT30に供給し、吐出圧力を約0.6MPa、吐出量を約4L/minでポンプP31を作動させた。ポンプP31の作動直後に水タンクT10から混合タンクT30に水道水150gをゆっくりと供給して混合燃料を生成した(C重油の重量:水の重量=70:30)。ポンプP31を5min稼働して、混合燃料を、混合タンクT30と配管30とで形成される循環経路31に1回通し、エマルジョン燃料を得た。得られたエマルジョン燃料について、油水分離評価、水の粒子径の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0104】
〔実施例2〕
混合燃料を生成した後、コンプレッサC50から減圧した0.3MPaの圧縮空気を0.05L/minで供給した(C重油の重量:水の重量=70:30、水エマルジョン燃料の体積:圧縮空気の体積=98:2)こと以外は、実施例1と同様の製造装置でエマルジョン燃料を得、油水分離評価、水の粒子径の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0105】
〔比較例1〕
実施例1で用いた微粒子化装置90に代えて、せん断式のミキサ(ラモンドナノミキサ、ナノクス製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の製造装置でエマルジョン燃料を得、油水分離試験を行った。また、比較例1について水の粒子径の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0106】
〔比較例2〕
実施例1で用いた微粒子化装置90を用いずに、混合タンクT30でスターラ(ナノクス製)を用いて撹拌したこと以外は、実施例1と同様の製造装置でエマルジョン燃料を得、油水分離試験を行った。また、比較例2について水の粒子径の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示すように、微粒子化装置90を用いた場合(実施例1、2)には、24時間以内に油水分離が生じず、安定した乳化状態のエマルジョン燃料が得られた。せん断式のミキサを用いた場合(比較例1)にも安定した乳化状態のエマルジョン燃料が得られたが、スターラを用いた場合(比較例2)には、約5分程度で油水分離が生じ、安定な乳化状態のエマルジョン燃料は得られなかった。また、微粒子化装置90を用いた場合(実施例1)には、上述したように、NO
x濃度の低減率を高め、燃費の改善率を高めることができる水の粒子径(300〜700nm)を有するエマルジョン燃料が得られた。一方、せん断式のミキサやスターラを用いた場合(比較例1、2)には、水の粒子径は上記した300〜700nmの範囲外であった。
【0109】
〔実施例3〕
図2に示す製造装置A3及び燃焼装置Bを用い、ポンプP31として25KLD07Z−V(NIKUNI製)を用いた。また、上記微粒子化装置90として、実施例1と同様のものを用い、上記燃焼装置Bとして、上記燃焼試験の項に記載したバーナー及び簡易燃焼炉を使用した。なお、コンプレッサC50は作動させず、気体の供給は行わなかった。
【0110】
燃料油タンクT20から燃料油としてC重油(LPC28、昭和シェル石油(株)製、温度50℃における動粘度157.2mm
2/s、硫黄分濃度1.15wt%、窒素分濃度0.19w%)を30Lの混合タンクT30に14kg供給し、ポンプP31を吐出圧力を約0.6MPa、吐出量4L/minで作動させた。ポンプP31の作動直後に水タンクT10から混合タンクT30に水道水6kgをゆっくりと供給して混合燃料を生成した(C重油の重量:水の重量=70:30)。混合タンクT30の撹拌装置である撹拌スターラ及びポンプP31を常時稼働して、混合燃料を、混合タンクT30と配管30とで形成される循環経路31に1回通し、エマルジョン燃料を得た。得られたエマルジョン燃料について、燃焼試験及び燃費評価試験を行った。
【0111】
その結果を表2に示す。表2には、燃焼評価試験でのエマルジョン燃料の燃焼条件(燃焼温度[℃]、燃焼時の酸素量[%])も示している。
【0112】
〔実施例4〕
混合燃料を生成した後、コンプレッサC50から減圧した0.3MPaの圧縮空気を0.3L/minで供給した(C重油の重量:水の重量=70:30、水エマルジョン燃料の体積:圧縮空気の体積=98:2)こと以外は、実施例3と同様の製造装置でエマルジョン燃料を得、燃焼試験及び燃費評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0113】
〔比較例3〕
実施例3で用いた微粒子化装置90に代えて、比較例1に記載のせん断式のミキサ(ラモンドナノミキサ、ナノクス製)を用いたこと以外は、実施例2と同様の燃焼装置Bを用いて燃焼試験及び燃焼評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0114】
〔比較例4〕
実施例3で用いた微粒子化装置90に代えて、比較例2に記載のスターラー(ナノクス製)を用いたこと以外は、実施例2と同様の燃焼装置Bを用いて燃焼試験及び燃焼評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0115】
〔比較例5〕
実施例3及び比較例3で用いた製造装置を使用せず、燃焼装置Bに直接C重油を供給して、燃焼試験及び燃費評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
表2に示すように、微粒子化装置90を用いた場合(実施例3、4)には、せん断式のミキサを用いた場合(比較例3)、スターラを用いた場合(比較例4)、C重油を燃料とした場合(比較例5)に比較して、有害物質の排出量を低減することができ、燃費も向上できた。また、微粒子化装置90を用い、コンプレッサC50から空気を供給することにより、有害物質(特に、NO、CO)の排出量を低減することができ、燃費を向上できることがわかった。