特許第6585651号(P6585651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6585651モータ制御装置及びステッピングモータの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585651
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】モータ制御装置及びステッピングモータの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/04 20060101AFI20190919BHJP
   H02P 8/38 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H02P8/04
   H02P8/38
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-63803(P2017-63803)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-166387(P2018-166387A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】島田 彩加
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆之
(72)【発明者】
【氏名】高田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】宮路 永
(72)【発明者】
【氏名】佐野 英生
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−146096(JP,A)
【文献】 特開2014−128070(JP,A)
【文献】 特開2015−035926(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0118919(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1095319(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/04
H02P 8/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータを駆動させるモータ制御装置であって、
前記ステッピングモータの起動動作が行われた後で、前記ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出部と、
前記脱調状態検出部により前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定部と、
前記再起動判定部により再起動動作を行うと判定されたとき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御部と、
前記ステッピングモータの起動動作が行われた後に、前記脱調状態検出部により前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出されたとき、前記ステッピングモータが脱調状態になった位置を算出する脱調位置算出部と、を備え、
前記再起動判定部の前記判定条件は、前記ステッピングモータの起動動作の初期位置から前記脱調位置算出部により算出された前記ステッピングモータが脱調状態になった位置までの距離が所定の距離以内であることを含む、モータ制御装置。
【請求項2】
ステッピングモータを駆動させるモータ制御装置であって、
前記ステッピングモータの起動動作が行われた後で、前記ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出部と、
前記脱調状態検出部により前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定部と、
前記再起動判定部により再起動動作を行うと判定されたとき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御部と、
前記ステッピングモータにより駆動される対象の温度又はそれに対応する温度を測定する温度計測部と、を備え、
前記再起動判定部の前記判定条件は、前記温度計測部により測定された前記温度が予め設定された温度よりも低いことを含む、モータ制御装置。
【請求項3】
ステッピングモータを駆動させるモータ制御装置であって、
前記ステッピングモータの起動動作が行われた後で、前記ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出部と、
前記脱調状態検出部により前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定部と、
前記再起動判定部により再起動動作を行うと判定されたとき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御部と、
前記モータ制御装置に入力される入力電圧を測定する入力電圧測定部と、を備え、
前記再起動判定部の前記判定条件は、前記入力電圧測定部により測定された前記モータ制御装置の前記入力電圧が、所定の電圧以下であることを含む、モータ制御装置。
【請求項4】
前記ステッピングモータの複数相のコイルのうち、通電が停止しているコイルに誘起される逆起電圧を測定する逆起電圧測定部をさらに備え、
前記脱調状態検出部は、前記逆起電圧測定部による前記逆起電圧の測定結果に基づいて、前記ステッピングモータが脱調状態であることを検出する、請求項1から3のいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記再起動判定部の前記判定条件は、前記再起動制御部により前記ステッピングモータの再起動動作が行われた回数が所定の回数以下であることを含む、請求項1からのいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記再起動制御部は、前記ステッピングモータの再起動動作を行う前に、予め決定した再起動位置に前記ステッピングモータが移動するように制御する、請求項1からのいずれかに記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記再起動位置は、前記ステッピングモータの起動動作の初期位置である、請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
ステッピングモータの起動動作が行われた後で、前記ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出ステップと、
前記脱調状態検出ステップにより前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定ステップと、
前記再起動判定ステップにより再起動動作を行うと判定されたとき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御ステップと
前記ステッピングモータの起動動作が行われた後に、前記脱調状態検出ステップにより前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出されたとき、前記ステッピングモータが脱調状態になった位置を算出する脱調位置算出ステップと、を備え、
前記再起動判定ステップの前記判定条件は、前記ステッピングモータの起動動作の初期位置から前記脱調位置算出ステップにより算出された前記ステッピングモータが脱調状態になった位置までの距離が所定の距離以内であることを含む、ステッピングモータの制御方法。
【請求項9】
ステッピングモータの起動動作が行われた後で、前記ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出ステップと、
前記脱調状態検出ステップにより前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定ステップと、
前記再起動判定ステップにより再起動動作を行うと判定されたとき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御ステップと、
前記ステッピングモータにより駆動される対象の温度又はそれに対応する温度を測定する温度計測ステップと、を備え、
前記再起動判定ステップの前記判定条件は、前記温度計測ステップにより測定された前記温度が予め設定された温度よりも低いことを含む、
ステッピングモータの制御方法。
【請求項10】
ステッピングモータの起動動作が行われた後で、前記ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出ステップと、
前記脱調状態検出ステップにより前記ステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定ステップと、
前記再起動判定ステップにより再起動動作を行うと判定されたとき、前記ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御ステップと、
モータ制御装置に入力される入力電圧を測定する入力電圧測定ステップと、を備え、
前記再起動判定ステップの前記判定条件は、前記入力電圧測定ステップにより測定された前記モータ制御装置の前記入力電圧が、所定の電圧以下であることを含む、 ステッピングモータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータ制御装置及びステッピングモータの制御方法に関し、特に、アクチュエータに用いられるモータ制御装置及びステッピングモータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、その制御が容易であることなど種々の特長を有するものであり、各種アクチュエータなどに広く用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
例えばステッピングモータなどのモータを用いたアクチュエータとしては、車載用途などのものなど、気温が低い場所などの低温環境下で用いられるものがある。このようにアクチュエータが低温環境下にあるとき、アクチュエータの駆動部に塗布された潤滑油が硬くなる。このような状態に陥ったアクチュエータを起動させるときに、アクチュエータを駆動するモータを定常運転時(低温環境下でアクチュエータの起動完了後において通常のモータ動作中である状態をいう)のトルクで動作させようとしても、アクチュエータを起動させることができず、脱調が検出される場合がある。
【0004】
このような問題に関連して、下記特許文献2には、モータ制御装置において、温度が低いとき、モータの起動開始後のブースト期間のみ、定常駆動時よりも大きな駆動電力がモータに供給されるように駆動電力のブースト制御を行い、低温環境下においても起動できるようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−170790号公報
【特許文献2】特開2014−143775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献2に記載されているような駆動方法では、ブースト期間に定常駆動時よりも大きな駆動電力を供給する必要がある。しかしながら、このような大きな駆動電力よりも小さい、所定の駆動電力で駆動することが要求される場合もある。
【0007】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、所定の駆動電力が供給される場合であっても起動をより確実に行うことが可能なモータ制御装置及びステッピングモータの制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、ステッピングモータを駆動させるモータ制御装置は、ステッピングモータの起動動作が行われた後で、ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出部と、脱調状態検出部によりステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定部と、再起動判定部により再起動動作を行うと判定されたとき、ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御部とを備える。
【0009】
好ましくは、モータ制御装置は、ステッピングモータの複数相のコイルのうち、通電が停止しているコイルに誘起される逆起電圧を測定する逆起電圧測定部をさらに備え、脱調状態検出部は、逆起電圧測定部による逆起電圧の測定結果に基づいて、ステッピングモータが脱調状態であることを検出する。
【0010】
好ましくは、モータ制御装置は、ステッピングモータの起動動作が行われた後に、脱調状態検出部によりステッピングモータが脱調状態であることが検出されたとき、ステッピングモータが脱調状態になった位置を算出する脱調位置算出部をさらに備え、再起動判定部の判定条件は、ステッピングモータの起動動作の初期位置から脱調位置算出部により算出されたステッピングモータが脱調状態になった位置までの距離が所定の距離以内であることを含む。
【0011】
好ましくは、モータ制御装置は、ステッピングモータにより駆動される対象の温度又はそれに対応する温度を測定する温度計測部をさらに備え、再起動判定部の判定条件は、温度計測部により測定された温度が予め設定された温度よりも低いことを含む。
【0012】
好ましくは、モータ制御装置は、モータ制御装置に入力される入力電圧を測定する入力電圧測定部をさらに備え、再起動判定部の判定条件は、入力電圧測定部により測定されたモータ制御装置の入力電圧が、所定の電圧以下であることを含む。
【0013】
好ましくは、再起動判定部の判定条件は、再起動制御部によりステッピングモータの再起動動作が行われた回数が所定の回数以下であることを含む。
【0014】
好ましくは、再起動制御部は、ステッピングモータの再起動動作を行う前に、予め決定した再起動位置にステッピングモータが移動するように制御する。
【0015】
好ましくは、再起動位置は、ステッピングモータの起動動作の初期位置である。
【0016】
この発明の他の局面に従うと、ステッピングモータの制御方法は、ステッピングモータの起動動作が行われた後で、ステッピングモータが脱調状態であることを検出する脱調状態検出ステップと、脱調状態検出ステップによりステッピングモータが脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、ステッピングモータの再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定ステップと、再起動判定ステップにより再起動動作を行うと判定されたとき、ステッピングモータの再起動動作を行うように制御する再起動制御ステップとを備える。
【発明の効果】
【0017】
これらの発明に従うと、所定の駆動電力が供給される場合であっても起動をより確実に行うことが可能なモータ制御装置及びステッピングモータの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態におけるモータ制御装置が用いられるアクチュエータの一例を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態の1つにおけるアクチュエータの構成をなすモータとモータ制御装置のブロック図である。
図3】ステッピングモータの回路構成を模式的に示す図である。
図4】CPUの動作を示すフローチャートである。
図5】リトライ判定処理を示すフローチャートである。
図6】再起動動作が行われる場合のモータ制御装置の動作を説明する図である。
図7】再起動動作が行われない場合のモータ制御装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ制御装置について説明する。
【0020】
モータ制御装置は、例えば、複数相のコイルを有するステッピングモータを駆動させるためのものである。モータ制御装置は、ステッピングモータを駆動させるために各相のコイルの通電状態を制御する。本実施の形態において、モータ制御装置は、ステッピングモータのコイルに通電する駆動回路と、駆動回路の制御を行うモータ制御装置とを有している。
【0021】
モータ制御装置と、それにより駆動されるステッピングモータとその他の機構部品とで、アクチュエータが構成される。アクチュエータにおいて、ステッピングモータは、駆動回路から駆動電力が供給されることで駆動される。アクチュエータにおいて、モータ制御装置によって駆動回路が制御されることにより、ステッピングモータの駆動が制御される。
【0022】
[実施の形態]
【0023】
図1は、本実施の形態におけるモータ制御装置が用いられるアクチュエータの一例を示す分解斜視図である。
【0024】
図1に示されるように、アクチュエータ1は、ケース51とカバー52とで覆われている。アクチュエータ1の内部には、モータ制御装置10、ステッピングモータ20、2次ギヤ31、3次ギヤ32、出力ギヤ33などが収納されている。ケース51の底面には、出力ギヤ33に設けられている外部出力ギヤが露出し、この外部出力ギヤよりアクチュエータ1の駆動力が外部に伝達される。
【0025】
ステッピングモータ20は、アクチュエータ1の駆動力を発生させる。ステッピングモータ20の出力軸25には、1次ギヤ26が取り付けられている。ステッピングモータ20の1次ギヤ26は、2次ギヤ31と噛み合う。2次ギヤ31は、3次ギヤ32と噛み合う。3次ギヤ32は、出力ギヤ33と噛み合う。
【0026】
モータ制御装置10は、プリント基板42や、プリント基板42とステッピングモータ20のモータ端子29とを接続するフレキシブルプリント基板43などを有している。プリント基板42には、ステッピングモータ20を駆動する駆動回路14(図2に示す)や、その制御を行うモータ制御回路12(図2に示す)などが設けられている。プリント基板42には、ケース51及びカバー52の外側に露出する外部接続端子41が設けられている。外部接続端子41を介して外部からモータ制御装置10に電圧が入力されたり、外部機器からの指示信号を受けたりすることで、モータ制御装置10が動作する。
【0027】
モータ制御装置10は、入力された入力電圧に基づいてステッピングモータ20に駆動電力を供給し、ステッピングモータ20を駆動させる。ステッピングモータ20が駆動すると、出力軸25とともに1次ギヤ26が回転する。この回転の駆動力は、2次ギヤ31、3次ギヤ32、出力ギヤ33、外部出力ギヤと順に伝達され、外部出力ギヤにより外部に出力される。
【0028】
なお、ケース51及びカバー52の内部に収納されている回路は、例えば駆動回路14だけであってもよい。この場合、モータ制御装置10は、ケース51及びカバー52の内部の駆動回路14と、その駆動回路14に接続された外部のモータ制御回路12によって構成されるようにしてもよい。
【0029】
図2は、本発明の実施の形態の1つにおけるアクチュエータの構成をなすモータとモータ制御装置のブロック図である。
【0030】
図2に示されるように、アクチュエータ1は、モータ制御装置10と、ステッピングモータ20とを有している。ステッピングモータ20は、例えば、A相及びB相の2相励磁で駆動される。ステッピングモータ20は、A相のコイル及びB相のコイル(図3に示す。)を有している。ステッピングモータ20は、モータ制御装置10から各相のコイルに駆動電力が供給されて駆動される。アクチュエータ1は、例えば、車両に搭載される空調装置などに利用される。なお、ステッピングモータ20及びアクチュエータ1の用途はこれに限られるものではない。
【0031】
モータ制御装置10は、モータ制御回路12と、駆動回路14とを有している。後述するように、モータ制御装置10は、ステッピングモータ20の起動動作が行われた後で、ステッピングモータ20が脱調状態であることを検出する脱調状態検出部と、脱調状態検出部によりステッピングモータ20が脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、ステッピングモータ20の再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定部と、再起動判定部により再起動動作を行うと判定がされたとき、ステッピングモータ20の再起動動作を行うように制御する再起動制御部とを備えている。また、モータ制御装置10は、ステッピングモータ20の起動動作が行われた後に、脱調状態検出部によりステッピングモータ20が脱調状態であることが検出されたとき、ステッピングモータ20が脱調状態になった位置を算出する脱調位置算出部をさらに備え、再起動判定部の判定条件は、ステッピングモータ20の起動動作の初期位置から脱調位置算出部により算出されたステッピングモータ20が脱調状態になった位置までの距離が所定の距離以内であることを含んでいる。また、再起動制御部は、ステッピングモータ20の再起動動作を行う前に、予め決定した再起動位置にステッピングモータ20が移動するように制御する。
【0032】
駆動回路14は、モータ駆動部142と、電流センサ144とを有している。駆動回路14は、ステッピングモータ20に駆動電力を供給し、ステッピングモータ20を駆動する。
【0033】
モータ制御回路12は、CPU(中央演算処理装置;脱調状態検出部の一例、判定部の一例、再起動制御部の一例、脱調位置算出部の一例)122と、電流測定部124と、入力電圧測定部125と、逆起電圧測定部126と、温度計測部128とを有している。モータ制御回路12は、駆動回路14の制御を行うことで、ステッピングモータ20の駆動を制御する。本実施の形態において、モータ制御回路12は、IC(集積回路)としてパッケージ化されているが、これに限られるものではない。
【0034】
モータ駆動部142は、ステッピングモータ20の各相のコイルに電圧を印加する。モータ駆動部142には、CPU122から制御信号が送られる。モータ駆動部142は、制御信号に基づいて、電圧を印加する。本実施の形態では、駆動回路14とステッピングモータ20とは、A相の正極(+)、A相の負極(−)、B相の正極(+)、B相の負極(−)の4つのラインで接続されている。モータ駆動部142は、制御信号に応じて、これらの各ラインを介して、ステッピングモータ20に駆動電力を供給する。制御信号は、PWM信号であり、PWM信号のデューティ比に応じて駆動電力が変化する。
【0035】
電流センサ144は、ステッピングモータ20の各相のコイルに流れる電流(コイル電流)を検出する。電流センサ144は、コイル電流の検出結果を、電流測定部124に出力する。
【0036】
電流測定部124は、ステッピングモータ20のコイル電流を測定する。電流測定部124には、電流センサ144から出力されたコイル電流の検出結果が入力される。電流測定部124は、入力されたコイル電流の検出結果に基づいて、コイル電流を測定する。電流測定部124は、コイル電流の測定結果を、CPU122に出力する。
【0037】
入力電圧測定部125は、モータ制御装置10に入力される入力電圧を測定する。入力電圧測定部125は、入力電圧の測定結果を、CPU122に出力する。
【0038】
逆起電圧測定部126は、ステッピングモータ20の複数相のコイルのうち、通電が停止しているコイルに誘起される逆起電圧を測定する。本実施の形態において、逆起電圧測定部126は、駆動回路14とステッピングモータ20とを接続する4つのラインのそれぞれに接続されている。逆起電圧測定部126は、逆起電圧の測定結果を、CPU122に出力する。
【0039】
温度計測部128は、ステッピングモータ20により駆動される対象、すなわちアクチュエータ1の温度又はそれに対応する温度を測定する。温度計測部128は、例えば、モータ制御回路12のIC内部温度を測定する温度センサである。モータ制御回路12のIC内部温度は、アクチュエータ1に対応する温度である。温度計測部128は、モータ制御回路12の温度を示す温度情報をCPU122に出力する。
【0040】
CPU122には、電流測定部124から出力されたコイル電流の測定結果と、入力電圧測定部125から出力された入力電圧の測定結果と、温度計測部128から出力された温度の計測結果と、逆起電圧測定部126から出力された逆起電圧の測定結果とが入力される。
【0041】
CPU122は、本実施の形態において、ステッピングモータ20の起動動作が行われた後で、脱調状態検出部として、逆起電圧測定部126による逆起電圧の測定結果に基づいて、ステッピングモータ20が脱調状態であることを検出する。すなわち、CPU122は、所定の検出閾値と逆起電圧測定部126から出力された逆起電圧の値とを比較することにより、ステッピングモータ20が脱調状態であるとき、それを検出する。CPU122は、ステッピングモータ20が脱調状態であることを検出すると、その検出結果に応じて、制御信号を生成し、生成した制御信号をモータ駆動部142に出力する。ステッピングモータ20が脱調状態であることが検出された場合は、CPU122は、例えば、モータ駆動部142からステッピングモータ20への駆動信号の出力を停止してステッピングモータ20を停止させるなどの制御を行う。なお、ステッピングモータ20が脱調状態であることが検出された場合のCPU122の動作の詳細については後述する。
【0042】
図3は、ステッピングモータ20の回路構成を模式的に示す図である。
【0043】
図3に示されるように、ステッピングモータ20は、2つのコイル21a,21bと、ロータ22と、複数のステータヨーク(図示せず)とを有している。
【0044】
コイル21a,21bは、それぞれ、ステータヨークを励磁するコイルである。コイル21a,21bは、それぞれ、駆動回路14に接続されている。コイル21aは、A相のコイルである。コイル21bは、B相のコイルである。コイル21a,21bには、それぞれ異なる位相のコイル電流が流される。
【0045】
ロータ22は、円周方向に沿って、S極22sとN極22nとが交互に反転するように多極着磁された永久磁石を備える。なお、図3においては、ロータ22は、S極22sとN極22nとが1つずつ設けられているように簡略化されて示されている。ステータヨークは、ロータ22の周囲に、ロータ22の外周部に接近して配置されている。ロータ22は、コイル21a,21bのそれぞれに流れるコイル電流の位相が周期的に切り替えられることで回転する。
【0046】
ここで、本実施の形態において、逆起電圧は、例えば次のようにして測定される。CPU122は、A相及びB相のうちいずれか1つの相のコイル21a,21bに流れるコイル電流Ia,Ibの向きが切り替わる際に、一時的に、そのコイル21a,21bへのパルス電圧の印加を停止させる(停止期間)。そして、逆起電圧測定部126は、このような停止期間中に、パルス電圧の印加が停止されている相のコイル21a,21bに誘起される逆起電圧を、個別に(相毎に、又はコイル毎に)測定する。
【0047】
すなわち、コイル電流Iaの極性が変わるときには、コイル電流Iaがゼロになるように、コイル21aへのパルス電圧の印加が停止される。この停止期間においては、コイル21aに逆起電圧が誘起される。また、コイル電流Ibの極性が変わるときには、コイル電流Ibがゼロになるように、コイル21bへのパルス電圧の印加が停止される。この停止期間においては、コイル21bに逆起電圧が誘起される。逆起電圧測定部126は、これらの逆起電圧を測定する。
【0048】
より具体的には、ステッピングモータ20の駆動時において、CPU122の制御により、コイル21a,21bにパルス電圧が印加される(PWM制御)。これにより、コイル21a,21bにそれぞれコイル電流Ia,Ibが流れる。
【0049】
PWM制御が行われると、その後、通電停止処理及び定電圧制御が実行される。例えばコイル21aの通電停止処理が行われる場合には、所定の停止期間だけコイル21aへのパルス電圧の印加が停止される。これにより、コイル電流Iaがゼロになる。停止期間は、CPU122により任意に設定される。例えば、CPU122は、予め決められた停止期間を設定してもよいし、モータ駆動装置1の外部から停止期間の設定を受け付けてもよい。このような停止期間中に、逆起電圧測定部126は、コイル21aに誘起される逆起電圧を測定する。逆起電圧の測定結果は、CPU122に出力される。
【0050】
なお、本実施の形態において、このようにコイル21aについて通電停止処理が行われる場合、CPU122は、定電圧制御として、その停止期間中においてコイル21bのコイル電圧Vbを固定電圧に設定する。すなわち、CPU122は、停止期間中に、逆起電圧を測定するコイル以外のすべてのコイルを固定電圧に設定する。固定電圧の電圧レベルは、直前のコイル電圧と同じ電圧レベル(例えば、電源電圧レベル又はグラウンド(GND)レベルなど)であってもよいし、所定の基準電圧レベルであってもよい。これにより、例えばコイル21aについて通電停止処理が行われる場合には、コイル21bのコイル電圧Vbが一定(本実施の形態では、例えば、入力電圧のレベル)になる。
【0051】
固定電圧の電圧レベルが入力電圧のレベルであるとき、コイル21aについて通電停止処理が行われる場合におけるコイル21bのコイル電流Ibは、上述のPWM制御が行われている期間におけるコイル電流Ibに比べて多少上昇する。停止期間中のコイル電圧Vbは一定であるので、コイル電圧Vbの印加に伴うノイズは発生しない。その結果、停止期間中のコイル21aのコイル電圧Vaにはノイズが重畳されない。すなわち、停止期間中のコイル電圧Vaを測定することにより、コイル21aに誘起される逆起電圧が正確に測定される。これにより、脱調状態の誤検出を防ぐことができる。
【0052】
上述のようにして逆起電圧測定部126で逆起電圧が測定されると、CPU122は、脱調状態検出部として、逆起電圧の測定結果に応じて、ステッピングモータ20が脱調状態であるか否かを検出する。
【0053】
具体的には、CPU122は、逆起電圧測定部126で測定された逆起電圧の値と、予め設定された判定閾値とを比較することで、ステッピングモータ20が脱調状態であるか否かが検出可能である。例えば、CPU122は、測定された逆起電圧の値が判定閾値に達しているとき、ステッピングモータ20が脱調状態であると判定する。
【0054】
本実施の形態において、ステッピングモータ20の制御方法として、以下に記述するように、ステッピングモータ20の起動動作が行われた後で、ステッピングモータ20が脱調状態であることを検出する脱調状態検出ステップと、脱調状態検出ステップによりステッピングモータ20が脱調状態であることが検出された場合において、所定の判定条件に基づき、ステッピングモータ20の再起動動作を行うか否かを判定する再起動判定ステップと、再起動判定ステップにより再起動動作を行うと判定されたとき、ステッピングモータ20の再起動動作を行うように制御する再起動制御ステップとを備えている。CPU122は、ステッピングモータ20の起動動作が行われた後、ステッピングモータ20が脱調状態であることが検出する(脱調状態検出ステップ)。そして、脱調状態検出ステップによりステッピングモータ20が脱調状態であることが検出された場合には、CPU122は、所定の判定条件に基づき、ステッピングモータ20の再起動動作を行う(起動動作を再度行う)か否かを判定する(再起動判定ステップ)。そして、CPU122は、再起動判定ステップにより再起動動作を行うと判定されたとき、ステッピングモータ20の再起動動作を行うように制御する(再起動制御ステップ)。
【0055】
なお、CPU122が再起動判定部として判定に用いる所定の判定条件には、以下のものが含まれる。
【0056】
判定条件は、温度計測部128により測定された温度が予め設定された温度(例えば、摂氏マイナス30度)よりも低いことを含む。すなわち、判定条件は、アクチュエータ1の温度又はそれに対応する温度が低温(ここでは、予め設定された温度よりも低いことをいう)であることを含む。
【0057】
また、判定条件は、入力電圧測定部125により測定されたモータ制御装置10の入力電圧が、所定の電圧(設定閾値VRT;例えば、10ボルト)以下であることを含む。
【0058】
また、判定条件は、ステッピングモータ20の起動動作の初期位置から、ステッピングモータ20が脱調状態であることが検出された位置(以下、脱調位置ということがある)までの距離が、所定の距離DS以内であることを含む。ここで、本実施の形態において、CPU122は、脱調位置算出部として、ステッピングモータ20が脱調状態であることが検出されたとき、ステッピングモータ20が脱調状態になった位置を算出する。脱調位置の算出は、例えば、起動開始から脱調状態であることを検出するまでの制御ステップ数や、経過した時間等に基づいて行われるが、これに限られるものではない。
【0059】
また、判定条件は、CPU122によりステッピングモータ20の再起動動作が行われた回数が所定の回数RN(例えば、3回)以下であることを含む。
【0060】
所定の判定条件が満たされるか否かは、CPU122が判断を行う。本実施の形態においては、CPU122は、これらの所定の判定条件に含まれる条件のすべてが満たされるときに、再起動動作を行うとの判定を行う。
【0061】
なお、CPU122は、これらの所定の判定条件に含まれる条件のいずれかが満たされるときに再起動動作を行うとの判定を行ったり、特定の1つ又は複数の条件が満たされるときに再起動動作を行うとの判定を行うようにしてもよい。
【0062】
判定条件は、以上のものに限られない。判定条件に他の条件が含まれていてもよいし、上述の条件のいずれかが含まれなくてもよい。
【0063】
図4は、CPU122の動作を示すフローチャートである。
【0064】
図4に示されるように、ステップS11において、CPU122は、駆動開始命令を受け付ける。CPU122は、リトライカウンタをリセットする。リトライカウンタは、再起動動作を行う回数を係数するためのカウンタである。
【0065】
ステップS12において、CPU122は、駆動開始命令に応じて、ステッピングモータ20が駆動を開始する(起動動作をする)ように駆動回路14に制御信号を出力する。
【0066】
ステップS13において、CPU122は、脱調状態検出部として、ステッピングモータ20が脱調状態であるか否かを検出する。ステッピングモータ20が脱調状態でなければ(ステップS13でNO)、そのままステッピングモータ20の駆動を行う。
【0067】
ステッピングモータ20が脱調状態であることが検出されると(ステップS13でYES)、ステップS14において、CPU122は、再起動判定部として、リトライ判定処理を行う。すなわち、CPU122は、所定の判定条件が満たされるか否かを判定する。リトライ判定処理については、後述する。
【0068】
ステップS15において、CPU122は、リトライ判定処理においてリトライすると判定されたか否かを判断する。すなわち、CPU122は、ステッピングモータ20の再起動動作を行うと判定されたか否かを判断する。リトライする(再起動動作を行う)と判定されたとき(ステップS15でYES)、ステップS17に進む。他方、リトライすると判定されなかったとき(ステップS15でNO)、ステップS16に進む。
【0069】
ステップS16において、CPU122は、ステッピングモータ20を停止させる制御を行う。すなわち、CPU122は、脱調状態であることが検出され、再起動動作を行うと判定しなかったとき、ステッピングモータ20を停止させる。
【0070】
他方、ステップS17において、CPU122は、リトライカウンタをインクリメントする(リトライカウンタに1を加算する)。
【0071】
ステップS18において、CPU122は、再起動制御部として、ステッピングモータ20を、予め決定した再起動位置として、起動動作を開始した初期位置へ移動させる。すなわち、CPU122は、ステッピングモータ20を逆転させ、ステッピングモータ20のロータの回転位置を初期位置に戻す。その後、ステップS12に戻り、CPU122は、再起動制御部として、再起動動作が行われるように制御する。
【0072】
なお、ステッピングモータ20の回転位置を移動させる位置は、初期位置に限られない。本実施の形態において、CPU122は、再起動動作を行う前に、再起動位置を決定し、決定した再起動位置にステッピングモータ20が移動するように制御を行う。CPU122は、通常は、起動動作を開始した初期位置を再起動位置に決定するが、例えば、再起動動作を行った回数(リトライカウンタの値)や、計測された温度、入力電圧の値などに応じて、例えば初期位置よりも回転方向とは反対側の方向に戻った位置を再起動位置とするようにしてもよい。なお、再起動位置は、常に初期位置に設定されていてもよい。
【0073】
再起動動作が行われた後に(2回目以降のステップS12)、脱調状態であることが検出された場合にも(ステップS13でYES)、同様の処理が行われる。以下のように、リトライ判定において各種の条件が満たされる場合、リトライ回数が所定回数RN以下と判定されなくなるまで(図5のステップS24でNOとなるまで)、再起動動作が繰り返される。すなわち、1回ステッピングモータ20の駆動開始命令が行われる度、再起動動作は、最大で所定回数RNだけ行われる。
【0074】
図5は、リトライ判定処理を示すフローチャートである。
【0075】
リトライ判定処理では、再起動判定部としてのCPU122によって、上述の所定の判定条件が満たされるか否かが判定され、すべての条件が満たされる場合に、再起動動作を行う(リトライする)と判定される。
【0076】
図5に示されるように、ステップS21において、CPU122によって、アクチュエータ1の温度またはこれに対応する温度が低温であるか否かが判定される。すなわち、CPU122により、温度計測部128により測定された温度が予め設定された温度よりも低いか否かが判定される。アクチュエータ1の温度またはこれに対応する温度が低温であると判定されない場合には、再起動動作を行うと判定(ステップS25)せずに、リトライ判定が終了する(ステップS21でNO)。
【0077】
アクチュエータ1の温度またはこれに対応する温度が低温であると判定された場合(ステップS21でYES)、ステップS22において、CPU122により、入力電圧測定部125により測定されたモータ制御装置10の入力電圧が所定の電圧(設定閾値VRT)以下であるか否かが判定される。入力電圧が所定の電圧以下であると判定されない場合には、再起動動作を行うと判定(ステップS25)せずに、リトライ判定が終了する(ステップS22でNO)。
【0078】
入力電圧が所定の電圧以下であると判定された場合(ステップS22でYES)、ステップS23において、CPU122により、起動動作の初期位置から脱調位置までの距離が、所定の距離DS以内であるか否かが判定される。起動動作の初期位置から脱調位置までの距離が所定の距離DS以下であると判定されない場合には、再起動動作を行うと判定(ステップS25)せずに、リトライ判定が終了する(ステップS23でNO)。
【0079】
起動動作の初期位置から脱調位置までの距離が所定の距離DS以内であると判定された場合(ステップS23でYES)、ステップS24において、CPU122により、再起動動作が行われたリトライ回数が所定回数RN以下であるか否かが判定される。すなわち、リトライカウンタの値が、所定回数EN以下であるか否かが判定される。リトライカウンタの値が所定回数RN以下であると判定されない場合には、再起動動作を行うと判定(ステップS25)せずに、リトライ判定が終了する(ステップS24でNO)。
【0080】
リトライ回数が所定回数RN以下であると判定された場合(ステップS24でYES)、ステップS25において、CPU122は、リトライすると判定する(再起動動作を行うと判定する)。すなわち、このようなステップS21からステップS24の各条件がすべて満たされる場合に、再起動動作を行うと判定し、リトライ判定が終了する。
【0081】
なお、リトライ判定において、ステップS21からステップS24の判定の順番はこれに限られるものではなく、適宜順番が入れ替わっていてもよい。また、各判定が並行して行われてもよい。
【0082】
以上のように、本実施の形態においては、ステッピングモータ20の起動動作が行われた後に、脱調状態であることが検出されたとき、所定の判定条件が満たされるか否かに応じて、ステッピングモータ20の再起動動作が行われる。
【0083】
ステッピングモータ20が用いられるアクチュエータ1において、アクチュエータ1の温度が低温であることにより潤滑油が固くなる場合(低温時不良が発生している場合)に、これに起因して起動動作後に脱調状態が検出されることがある。このような低温時不良が発生している可能性がある場合に、低温時不良を解消するために再起動動作を行うことができる。再起動動作は、ステッピングモータ20の回転位置を初期位置等に移動させてから行われる。したがって、大きなブースト電力等を使用せず、再起動動作により、潤滑油が固くなった状態でも、ステッピングモータ20が脱調状態に陥らないようにして駆動を行うことができる。すなわち、このように低温時の特定の場合において、再起動動作を行うことにより、低温時不良を解消して起動に成功する可能性を高めることができる。大きなブースト電力等は使用しないので、入力電圧の大きさなどに制限が設けられているような用途においても、ステッピングモータ20の起動をより確実に行うことができる。
【0084】
再起動動作は、アクチュエータ1の温度またはこれに対応する温度が低温時にのみ行われる。低温時にのみ再起動動作が行われるので、無駄な動作を省くことができる。
【0085】
再起動動作は、入力電圧が所定の電圧よりも低いときにのみ行われる。入力電圧が高い場合、低温時不良の発生を原因とした脱調状態が発生しない可能性が比較的高いため、入力電圧が所定の電圧よりも低いときにのみ再起動動作が行われるので、無駄な動作を省くことができる。
【0086】
再起動動作は、所定回数RNを超えて行われることがない。所定回数RNは、例えば、低温時不良が発生していることに起因して脱調状態が発生する状況下において、低温時不良の改善に有効であると考えられる再起動動作の回数が設定されている。そのため、再起動動作を繰り返すことで解消できる可能性がある程度の低温時不良が発生しているときには、所定回数RN以内の再起動動作によって起動動作を完了させることができる。他方、再起動動作を繰り返しても解消できないような重度の低温時不良が発生していたり他の要因で脱調状態が発生したりしている場合には、所定回数RNより多くの再起動動作を行うことを防止することで、無駄な動作を省くことができる。
【0087】
本実施の形態においては、脱調位置が初期位置から所定の距離DSを超えない場合に、再起動動作が行われる。脱調位置が初期位置から所定の距離DSを超えた場合は、低温時不良による脱調状態ではない可能性が高い。したがって、低温時不良に起因して脱調状態となっている可能性が高い場合に、再起動動作を行って、確実にステッピングモータ20を起動させることができる。
【0088】
本実施の形態においては、再起動動作を行う前に、再起動位置を決定し、決定した再起動位置にステッピングモータ20が移動してから、再起動動作を行う。再起動位置を脱調した位置より初期位置の方向に戻すようにすることで、戻した位置から加速を付けて再起動することができ、ステッピングモータ20の再起動をより確実に行うことができる。
【0089】
なお、所定の距離DSは、例えば、アクチュエータ1におけるギヤの減速比等に応じて、適宜設定すればよい。
【0090】
図6は、再起動動作が行われる場合のモータ制御装置10の動作を説明する図である。
【0091】
図6において、横軸はステッピングモータ20のロータの回転位置を示す。図において左側の破線が初期位置を示し、右側の破線が初期位置から所定の距離DSだけ離れた位置を示す。
【0092】
起動動作が行われると、初期位置から右側にステッピングモータ20の回転位置が移動する(ステップS51)。ここで、初期位置からの移動距離が所定の距離DSに達するより前に脱調状態であることが検出された場合を想定する。このとき、温度、入力電圧、リトライ回数の各条件が満たされる場合には、再起動動作を行うとの判定が行われる。そのため、ステッピングモータ20を初期位置まで逆転させる制御が行われる(ステップS52)。ステッピングモータ20の回転位置が初期位置まで戻ると、再起動が行われ、再びステッピングモータ20の回転位置が右側に移動する。
【0093】
図7は、再起動動作が行われない場合のモータ制御装置10の動作を説明する図である。
【0094】
図7においても、図6と同様に、破線で初期位置及び初期位置から所定の距離DSだけ離れた位置が示されている。
【0095】
図7に示されるように、起動動作が行われ、初期位置から右側にステッピングモータ20の回転位置が移動し、初期位置からの移動距離が所定の距離DSを超えてから脱調状態であることが検出された場合を想定する(ステップS61)。このとき、温度、入力電圧、リトライ回数の各条件が満たされる場合であっても、再起動動作を行うとの判定は行われない。そのため、再起動動作も行われず、上述の図6に示されるような、ステッピングモータ20を初期位置まで逆転させる制御も行われない。CPU122は、ステッピングモータ20を停止させる制御を行う。
【0096】
なお、図7に示されるように、このように脱調状態であることが検出されてステッピングモータ20を停止させるとき、CPU122は、いわゆるストールリバース動作を行ってもよい(ステップS62)。すなわち、脱調位置から逆方向に若干量だけ戻った位置でステッピングモータ20を停止させることにより、ステッピングモータ20等に負荷等がかかったままになることを防止することができる。
【0097】
[その他]
【0098】
上述のアクチュエータの構成、ステッピングモータの構成、モータ制御装置の構成等は一例であり、上述とは異なる構成であってもよい。
【0099】
温度計測部により計測する温度は、ICの内部温度に限定されない。ステッピングモータ付近の温度を計測するようにしてもよいし、アクチュエータの他の部位にセンサを設けて温度を計測するようにしてもよい。
【0100】
再起動動作を開始する位置は、初期位置に限定されない。任意の位置であってもよい。また、前回の起動動作が行われたときの脱調位置から再起動動作が行われるようにしてもよい。
【0101】
制御回路の一部分のみが集積回路として構成されていてもよい。また、モータ制御装置のうち、制御回路とは異なる部分の一部が集積回路として構成されていてもよい。モータ制御装置の全部が集積回路として構成されていてもよい。
【0102】
上記実施の形態において、逆起電圧の測定は、各相のコイルの制御電流の停止中において、他のコイルを固定電圧に設定して行われるが、これに限られるものではない。当該他のコイルについては固定電圧に設定するか否かにかかわらず、ある相のコイルの制御電流の停止期間において、そのコイルについての逆起電圧を測定するようにすればよい。また、逆起電圧は、種々のタイミングで適宜測定するようにすればよい。
【0103】
脱調状態の検出方法は、逆起電圧による方法に限られない。例えば、電流や電圧に基づいて検出するようにしてもよい。
【0104】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。
【0105】
上述のフローチャートにおいて、特定の処理の削除や、処理の順番変更や、他の処理の挿入などがあってもよい。
【0106】
上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャート及び文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
【0107】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
1 アクチュエータ
10 モータ制御装置
12 モータ制御回路
14 駆動回路
20 ステッピングモータ
21a,21b コイル
122 CPU(中央演算処理装置;脱調状態検出部の一例、再起動判定部の一例、再起動制御部の一例、脱調位置算出部の一例)
124 電流測定部
125 入力電圧測定部
126 逆起電圧測定部
128 温度計測部
142 モータ駆動部
144 電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7