(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底壁につながった一対の導体加締片の先端と前記底壁との間に電線の芯線を挟み込んだ芯線圧着部と、前記電線の被覆に対して圧着された被覆圧着部とを含む端子を有する端子付き電線に対して、前記芯線および前記端子を一体に覆う紫外線硬化型樹脂の被膜を形成する被膜形成工程と、
前記被膜に対して紫外線を照射する照射工程と、を含み、
前記被膜形成工程において、
前記端子は、軸方向に沿って前記被覆圧着部側から前記芯線圧着部側へ向かうに従って鉛直方向の上側に向かう傾斜姿勢で保持され、
前記傾斜姿勢の前記端子付き電線に対して、吐出口から間欠的に射出する前記紫外線硬化型樹脂の液滴によって、前記芯線圧着部と前記被覆圧着部との間で露出している前記芯線に前記被膜を形成し、
前記傾斜姿勢における水平方向に対する前記端子の傾斜角度は、前記芯線圧着部における前記被覆圧着部側の端部の上端と、前記被覆圧着部における前記芯線圧着部側の端部の上端とが鉛直方向において実質的に同じ位置となる角度以上の角度である
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態に係る端子付き電線の製造方法につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
[実施形態]
図1から
図14を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、端子付き電線の製造方法に関する。
図1は、実施形態に係る圧着端子および電線を示す斜視図、
図2は、実施形態に係る端子圧着用金型による圧着端子の圧着について説明する正面図、
図3は、実施形態に係る被膜形成前の端子付き電線を示す斜視図、
図4は、実施形態に係る被膜形成前の端子付き電線の断面図、
図5は、実施形態に係る射出装置を示す図、
図6は、実施形態の被膜形成工程を示す斜視図、
図7は、実施形態の被膜を説明する斜視図、
図8は、実施形態の被膜を説明する断面図、
図9は、実施形態の照射工程を示す斜視図、
図10は、実施形態の被膜を説明する他の断面図、
図11は、実施形態の液滴の広がりを示す平面図、
図12は、実施形態に係る射出装置の別の態様を示す図、
図13は、実施形態に係る被膜形成前の端子付き電線の断面図、
図14は、実施形態の被膜を説明する断面図である。
図4は、
図3のIV−IV断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る圧着端子1は、端子接続部11、芯線圧着部12、および被覆圧着部13を有する。端子接続部11、芯線圧着部12、および被覆圧着部13は、この順序で圧着端子1の長手方向に沿って配置されている。圧着端子1は、母材としての導電性の金属板(例えば銅板、銅合金板)から形成される。圧着端子1は、母材に対する打ち抜き加工や折り曲げ加工等により所定の形状に形成される。圧着端子1の表面には、スズ(Sn)等のメッキがなされていてもよい。
【0015】
本明細書では、圧着端子1の説明において、相手側端子との接続方向、すなわち相手側端子との挿入方向を第一方向Lと称する。第一方向Lは、圧着端子1の長手方向である。圧着端子1の幅方向を第二方向Wと称する。第二方向Wは、第一方向Lと直交している。圧着端子1において、第一方向Lおよび第二方向Wの何れとも直交する方向を第三方向Hと称する。第三方向Hは、圧着端子1が圧着される際のクリンパ50による圧縮方向である。第三方向Hは、圧着端子1の高さ方向である。
【0016】
端子接続部11は、相手側端子と電気的に接続される部分である。本実施形態の端子接続部11の形状は、角筒形状である。芯線圧着部12は、電線60の芯線61に対して圧着される部分である。電線60は、芯線61と、被覆62とを有する。芯線61の材料は、例えば、銅やアルミニウムである。圧着端子1の圧着対象である電線60は、端部の被覆62が取り除かれて芯線61が所定の長さ露出している。本実施形態の芯線61は、複数本の素線の集合体である。ただし、芯線61は、同軸ケーブルのような単線であってもよい。圧着端子1は、電線60の端部に圧着されることで、露出している芯線61に対して電気的に接続される。
【0017】
芯線61に対して圧着される前の芯線圧着部12の形状は、
図1に示すようにU字状の形状である。芯線圧着部12は、底部21と、第一バレル片部22と、第二バレル片部23とを有する。底部21は、芯線圧着部12の底壁部であり、後述するアンビル40によって支持される。第一バレル片部22および第二バレル片部23は、芯線61に加締められる一対の導体加締片である。第一バレル片部22は、底部21の幅方向の一端から突出している側壁部である。第二バレル片部23は、底部21の幅方向の他端から突出している側壁部である。第一バレル片部22および第二バレル片部23は、底部21の幅方向に対して交差する方向に延出している。第一バレル片部22と第二バレル片部23とは第二方向Wにおいて互いに対向している。
図1および
図2に示すように、第一バレル片部22と第二バレル片部23との間隔は、底部21側から先端側へ向かうに従って広がっている。
【0018】
図1に示すように、被覆圧着部13は、底部31、第三バレル片部32、および第四バレル片部33を有する。被覆62に対して圧着される前の被覆圧着部13の形状は、
図1に示すようにU字状の形状である。底部31は、被覆圧着部13の底壁部である。第三バレル片部32は、底部31の幅方向の一端から突出している側壁部である。第四バレル片部33は、底部31の幅方向の他端から突出している側壁部である。第三バレル片部32と第四バレル片部33とは第二方向Wにおいて互いに対向している。第三バレル片部32と第四バレル片部33との間隔は、底部31側から先端側へ向かうに従って広がっている。被覆圧着部13は、アンビル40およびクリンパ50によって被覆62に対して圧着される。
【0019】
端子接続部11と芯線圧着部12とは、中間部14を介してつながっている。中間部14の高さは、端子接続部11の高さおよび芯線圧着部12の高さの何れよりも低い。芯線圧着部12と被覆圧着部13とは、中間部15を介してつながっている。中間部15は、底部15aおよび側壁部15bを有する。底部15aは、芯線圧着部12の底部21と被覆圧着部13の底部31とをつないでいる。側壁部15bは、底部15aの両側からそれぞれ延出している。一方の側壁部15bは第一バレル片部22と第三バレル片部32とをつないでいる。他方の側壁部15bは、第二バレル片部23と第四バレル片部33とをつないでいる。側壁部15bの高さは、芯線圧着部12の各バレル片部22,23の高さおよび被覆圧着部13の各バレル片部32,33の高さの何れよりも低い。
【0020】
電線60は、
図1に示すように、電線60の軸方向が圧着端子1の長手方向と一致するようにして圧着端子1に載置される。圧着端子1に載置された状態で、芯線61の先端61aは、端子接続部11に向けられている。被覆62から外部に露出した芯線61は、芯線圧着部12に載置される。このときに、芯線61の先端61aは、芯線圧着部12から端子接続部11側に突出していてもよい。被覆圧着部13には、電線60の被覆62が載置される。つまり、電線60は、被覆62の先端62aが芯線圧着部12と被覆圧着部13との間に位置するように設置される。
【0021】
芯線圧着部12および被覆圧着部13は、
図2に示すアンビル40およびクリンパ50によって電線60に対して圧着される。アンビル40およびクリンパ50は、端子圧着装置100の構成要素である。アンビル40は、芯線圧着部12および被覆圧着部13を下方から支持する支持側の金型である。アンビル40の支持面40aは、芯線圧着部12の底部21の外側面を支持する。従って、芯線圧着部12がアンビル40によって支持されている状態で、第一バレル片部22および第二バレル片部23は、底部21から斜め上方に向けて延出した姿勢となる。アンビル40は、同様にして、被覆圧着部13を下方から支持する。
【0022】
クリンパ50は、圧着端子1および電線60をアンビル40との間に挟み込んで圧着端子1を電線60に対して圧着させる端子圧着用金型である。クリンパ50は、芯線圧着部12および芯線61をアンビル40との間に挟み込んで芯線圧着部12を芯線61に対して圧着させる。また、クリンパ50は、被覆圧着部13および被覆62をアンビル40との間に挟み込んで被覆圧着部13を被覆62に対して圧着させる。
図2に示すように、クリンパ50は、アンビル40の上方に配置されている。クリンパ50は、アンビル40に対して第三方向Hに沿って相対移動する。端子圧着装置100は、クリンパ50を第三方向Hに上下動させる駆動装置を有する。
【0023】
図2に示すように、クリンパ50は、凹状の加締め部50aを有する。加締め部50aは、クリンパ50の下面に設けられた溝状の凹部である。本実施形態のクリンパ50は、所謂B型圧着方式(
図4参照)で芯線圧着部12を芯線61に対して圧着させる。
図2に示すように、加締め部50aは、第一壁面51および第二壁面52を有する。第一壁面51と第二壁面52とは第二方向Wにおいて互いに対向している。
【0024】
第一壁面51および第二壁面52は、それぞれ曲面部53,56、中間部54,57、および裾部55,58を有する。第一壁面51と第二壁面52とは、例えば、第二方向Wに関して対称に形成されている。曲面部53,56は、それぞれ第一壁面51および第二壁面52における最も奥側に位置している。曲面部53,56は、第三方向Hにおいてアンビル40と対向する対向面である。中間部54,57は、曲面部53,56と裾部55,58とを繋いでいる。中間部54,57の断面形状は、例えば、直線状もしくは略直線状である。中間部54,57は、曲面部53,56から裾部55,58へ向かうに従ってクリンパ50における第二方向Wの端部へ向かうように傾斜している。
【0025】
裾部55,58は、第一壁面51および第二壁面52における最も入口側に位置している。裾部55,58は、中間部54,57から加締め部50aの入口へ向かうに従ってクリンパ50における第二方向Wの端部へ向かうように湾曲している。
【0026】
(端子付き電線の製造方法)
本実施形態に係る端子付き電線の製造方法について説明する。端子付き電線の製造方法は、圧着工程、被膜形成工程、および照射工程を含む。圧着工程は、電線60に対して圧着端子1を圧着させる工程である。被膜形成工程は、芯線61および芯線圧着部12を一体に覆う紫外線硬化型樹脂7の被膜6を形成する工程である。照射工程は、被膜6に対して紫外線を照射する工程である。
【0027】
(圧着工程)
圧着工程は、端子圧着装置100によって実行される。端子圧着装置100は、圧着端子1および電線60がアンビル40によって支持された状態で、クリンパ50をアンビル40に向けて下降させる。芯線61は、
図2に示すように、底部21、第一バレル片部22、および第二バレル片部23によって囲まれた内部空間に設置され、例えば、底部21の内側面に載置される。クリンパ50がアンビル40に向けて下降していくと、
図2に示すように、第一バレル片部22が第一壁面51に接触し、第二バレル片部23が第二壁面52に接触する。
【0028】
第一壁面51の曲面部53は、第一バレル片部22を第二バレル片部23側へ向けて折り曲げて第一バレル片部22を湾曲させる。より詳しくは、第一壁面51は、第一バレル片部22の先端22aが第三方向Hにおいて芯線61と対向するように、第一バレル片部22を略J字形状に湾曲させる。第二壁面52の曲面部56は、第二バレル片部23を第一バレル片部22側へ向けて折り曲げて第二バレル片部23を湾曲させる。より詳しくは、第二壁面52は、第二バレル片部23の先端23aが第三方向Hにおいて芯線61と対向するように、第二バレル片部23を略J字形状に湾曲させる。
【0029】
また、第一壁面51および第二壁面52は、第一バレル片部22を第二バレル片部23側に向けて押圧し、かつ第二バレル片部23を第一バレル片部22側に向けて押圧する。その結果、
図3および
図4に示すように、芯線圧着部12は、その断面形状が略B字形状をなすようにして芯線61に対して圧着される。
図4に示すように、圧着後の芯線圧着部12では、第一バレル片部22および第二バレル片部23にそれぞれ湾曲部22b,23bが形成されている。湾曲部22b,23bの形状は、底部21側とは反対側に向けて凸の湾曲形状である。
【0030】
第一バレル片部22の湾曲部22bは、先端22aが基端部22cよりも第二バレル片部23側に位置するように折れ曲がっている。第二バレル片部23の湾曲部23bは、先端23aが基端部23cよりも第一バレル片部22側に位置するように折れ曲がっている。各バレル片部22,23の先端22a,23aは、底部21との間に電線60の芯線61を挟み込んでいる。バレル片部22,23は、湾曲部22b,23b、基端部22c,23c、および底部21によって芯線61を包み込み、芯線61に対して圧着されている。
【0031】
第一バレル片部22の湾曲部22bと第二バレル片部23の湾曲部23bとは互いに当接している。より詳しくは、湾曲部22b,23bにおける先端側の部分同士が第二方向Wにおいて互いに当接している。互いに当接した湾曲部22b,23bによって、溝部24が形成される。溝部24は、湾曲部22b,23bの壁面によって形成される溝状の部位であり、第一方向Lに沿って延在する。溝部24の第二方向Wの幅は、底部21へ向かうに従って狭くなる。
【0032】
なお、被覆圧着部13は、例えば
図3に示すように、互いに重なるようにして被覆62に対して圧着される。例えば、第三バレル片部32が被覆62の外周面に対して巻き付けられ、第三バレル片部32の外側に第四バレル片部33が巻き付けられる。ただし、被覆圧着部13の圧着形態はこれには限定されない。例えば、第三バレル片部32および第四バレル片部33は、被覆62における第一方向Lの互いに異なる位置に対して巻き付けられてもよい。
【0033】
本実施形態では、圧着後の圧着端子1および電線60に対して、紫外線硬化型樹脂7の被膜6が形成される。そこで、被膜6が形成される前の端子付き電線を「被膜形成前の端子付き電線4」と称し、被膜6が形成された後の最終的な端子付き電線を単に「端子付き電線5」と称する。
【0034】
(被膜形成工程)
被膜形成工程は、例えば、
図5に示す射出装置70によって実行される。射出装置70は、紫外線硬化型樹脂7の液滴3を間欠的に射出する装置である。紫外線硬化型樹脂7は、例えば、ウレタンアクリレート系の樹脂である。
図5に示すように、射出装置70は、本体71、射出部72、および保持部73を有する。本体71は、射出装置70の本体部分であり、作業台等の載置台に対して固定される。射出部72は、アーム部74を介して本体71によって支持されている。射出部72は、ノズル72aおよび射出機構72bを有する。ノズル72aは、円筒形状の中空の部材である。ノズル72aの先端の吐出口72cは、保持部73を向いている。
【0035】
射出機構72bは、紫外線硬化型樹脂7の液滴3を間欠的にノズル72aから射出させる機構である。射出機構72bは、ピストンの往復動などによって定量の樹脂をノズル72aに間欠的に圧送する。ピストンに対して付勢力を与える手段は、例えば、バネや圧電素子である。ノズル72aに送り込まれた樹脂は、ノズル72aの先端から飛び出す。ノズル72aから飛び出した樹脂は、液滴3となって保持部73上に向けて飛んでいく。液滴3には、射出機構72bによって加速度が与えられている。従って、液滴3は、ノズル72aの延長線上の軌道を進む。
【0036】
保持部73は、被膜形成前の端子付き電線4を保持する。保持部73は、ノズル72aと対向する位置で被膜形成前の端子付き電線4を保持する。被膜形成前の端子付き電線4は、底部21を下側に向け、かつ湾曲部22b,23bを上側に向けて保持される。つまり、被膜形成前の端子付き電線4は、第三方向Hが鉛直方向と一致する姿勢で保持部73によって保持される。また、被膜形成前の端子付き電線4は、圧着端子1の軸方向が水平方向となるように、保持部73によって保持される。つまり、被膜形成前の端子付き電線4は、第一方向Lが水平となるように保持される。
【0037】
保持部73は、射出装置70の本体71に対して第一方向Lに沿って相対移動可能である。射出装置70は、保持部73を本体71に対して第一方向Lに相対移動させる駆動機構を有する。駆動機構は、例えば、モータを含む機構である。保持部73が第一方向Lに移動することで、ノズル72aに対する被膜形成前の端子付き電線4の相対位置が変化する。保持部73の可動範囲は、芯線61の先端から被覆圧着部13までの範囲に対して液滴3を付着させることができるように定められている。つまり、保持部73は、被膜形成前の端子付き電線4を、芯線61の先端がノズル72aと対向する位置から、被覆圧着部13がノズル72aと対向する位置まで第一方向Lに移動させることができる。
【0038】
射出機構72bは、ノズル72aを第二方向Wに移動させる機構を有する。第二方向Wは、
図5において紙面と直交する方向である。つまり、射出装置70は、被膜形成前の端子付き電線4とノズル72aとの相対位置を第一方向Lおよび第二方向Wに変化させることができる。ノズル72aの可動範囲は、芯線圧着部12の幅に対応している。ノズル72aは、芯線圧着部12における第二方向Wの一端と対向する位置から第二方向Wの他端と対向する位置まで移動可能である。なお、本実施形態の射出装置70は、第三方向Hにおいて、保持部73に対するノズル72aの相対位置が固定されている。言い換えると、ノズル72aは保持部73に対して第三方向Hに相対移動しない。
【0039】
図6には、ノズル72aと被覆圧着部13とが対向する位置に位置付けられた被膜形成前の端子付き電線4が示されている。本実施形態の射出装置70は、被覆圧着部13側から端子接続部11側へ向けて紫外線硬化型樹脂7を塗布していく。射出装置70は、ノズル72aから一定の時間間隔で液滴3を射出させる。射出された液滴3は、第三方向Hに沿って空中を進み、被膜形成前の端子付き電線4に付着する。射出装置70は、間欠的に液滴3を射出させながら、ノズル72aを矢印Y1で示すように第二方向Wに往復動させる。
【0040】
また、射出装置70は、保持部73を矢印Y2で示すように第一方向Lに移動させる。保持部73の移動方向は、芯線圧着部12から被覆圧着部13へ向かう方向である。射出装置70は、上記のように被膜形成前の端子付き電線4とノズル72aとを相対移動させながら液滴3を所定の間隔で連続的に射出し、芯線61および芯線圧着部12を一体に覆う被膜6(
図7)を形成する。本実施形態の被膜6は、芯線61の露出部分を覆い、芯線61の露出部分を外部空間から遮断する。本実施形態の被膜形成前の端子付き電線4において、芯線61の露出部分は、芯線61の先端61aおよび中間露出部61bである。
【0041】
先端61aは、被膜形成前の端子付き電線4において、芯線圧着部12から端子接続部11側に向けて露出している部分である。中間露出部61bは、被膜形成前の端子付き電線4において芯線圧着部12と被覆圧着部13との間で露出している部分である。本実施形態の被膜6は、先端61a、芯線圧着部12、中間露出部61b、中間部15、被覆圧着部13、および被覆62を一体に覆う。
【0042】
より詳しくは、被膜6は、芯線61の先端61aおよび芯線圧着部12の先端12aを一体に覆っている。被膜6は、先端61aを外部空間から遮断し、水分等が端子接続部11側から先端61aに向けて浸入することを規制する。被膜6は、芯線圧着部12の先端12aを全体的に覆っていてもよい。スズ等のメッキがなされた母材から形成された圧着端子1において、プレス加工等によって切断された箇所、例えば先端12aに銅が露出している場合がある。先端12aにおいて銅が露出している場合、先端12aが全体的に覆われることで、芯線61の腐食が発生しにくくなる。
【0043】
また、被膜6は、芯線圧着部12の溝部24を覆っている。
図8に示すように、紫外線硬化型樹脂7の被膜6は、溝部24に充填される。被膜6は、例えば、第三方向Hにおける被膜6の表面6sの位置が湾曲部22b,23bの頂点位置H1と同等の位置となるように形成される。溝部24に形成された被膜6は、水分等が溝部24を介して芯線61に向けて浸入することを規制する。また、溝部24に形成された被膜6は、溝部24に水分等が溜まることを抑制する。溝部24に水分等が溜まりにくいことで、芯線圧着部12のメッキの劣化が抑制される。
【0044】
芯線圧着部12上に形成される被膜6は、第二方向Wにおける溝部24の範囲に形成されることが好ましい。例えば、被膜6は、湾曲部22bの頂点から湾曲部23bの頂点までの範囲に形成されてもよい。被膜6の形成範囲が溝部24の範囲よりも外側に広がらないようにされることで、芯線圧着部12の側面に紫外線硬化型樹脂7が付着しにくくなる。その結果、クリンプワイドのバラツキが生じにくくなる。
【0045】
図7に示すように、被膜6は、芯線圧着部12の後端12b、中間部15、被覆圧着部13の先端13a、被覆62の先端62a、および中間露出部61bを一体に覆う。被膜6は、中間露出部61bを外部空間から遮断し、水分等が中間露出部61bに向けて浸入することを規制する。なお、被膜6は、被覆圧着部13の外周面に掛からないようにされてもよい。例えば、被膜6は、被覆圧着部13の先端13aを覆い、かつ被覆圧着部13の外周面は覆わないように形成されてもよい。被覆圧着部13の外周面に被膜6が形成されないようにすることで、被覆圧着部13の高さ寸法や幅寸法にバラツキが生じにくくなる。
【0046】
以上のように、被膜6は、芯線61を外部空間から遮断し、芯線61と圧着端子1との間に水が浸入することを規制する。よって、被膜6は、端子付き電線における腐食の発生を抑制することができる。例えば、芯線61の材料がアルミ、圧着端子1の材料が銅である場合、両者の間に水が浸入すると、イオン化傾向の違いによって芯線61が腐食(ガルバニック腐食)してしまう。被膜6によって水の浸入が規制されることで、腐食の発生が抑制される。
【0047】
(照射工程)
照射工程は、被膜6に対して紫外線を照射する工程である。照射工程は、被膜形成工程の完了後、または被膜形成工程と並行して実行される。照射工程は、専用の照射装置によってなされても、射出装置70によってなされてもよい。照射工程では、
図9に示すように、紫外線照射装置76によって被膜6に対して紫外線が照射される。被膜6は、紫外線が照射されることで硬化する。照射工程によって被膜6が硬化すると、端子付き電線5の製造が完了する。
【0048】
本実施形態の端子付き電線の製造方法では、間欠的に射出される液滴3によって被膜6が形成される。射出部72は、狙いの箇所に精度良く液滴3を付着させることができる。比較対象の被膜形成方法としては、例えば、ノズルを移動させながら、ノズルからペースト状の樹脂を連続的に切れ目なく吐出する塗布方法がある。この塗布方法では、ノズルの移動に対する樹脂の追従性が高くない。このため、ノズルの移動速度が制限され、生産性の向上が困難である。樹脂の追従性が低いことから、ノズルの位置と、吐出された樹脂が実際に電線等に付着する位置とにずれが生じる。比較対象の方法では、塗布位置や塗布範囲の制御が難しく、塗布ムラが発生して高い防食信頼性を実現できない可能性がある。
【0049】
これに対して、本実施形態に係る端子付き電線の製造方法では、液滴3を間欠的に射出する射出部72によって被膜6を形成する。この方法では、ノズル72aの射出位置と、射出された液滴3が付着する位置とのずれが生じにくい。言い換えると、狙いの箇所に精度良く液滴3を命中させることが可能である。本実施形態の射出装置70は、比較対象の方法のような追従性の制約を受けにくい。このため、射出装置70は、ノズル72aの移動速度や保持部73の移動速度を高速として生産性の向上を図ることが可能である。
【0050】
また、本実施形態の射出装置70は、被膜6の厚さを容易に調節することができる。被膜6の厚さは、例えば、ノズル72aと被膜形成前の端子付き電線4との相対移動速度によって調節される。上記の相対速度を低速にし、または相対移動を停止させることで被膜6の厚さを大きくすることができる。一方、上記の相対速度を高速にすることで被膜6の厚さを小さくすることができる。
【0051】
また、本実施形態の射出装置70は、第三方向Hへの相対移動を行うことなく被膜6を形成する。比較対象の方法では、所望の塗布量(塗布厚さ)を実現しようとすると、ノズルを上下動させる必要がある。例えば、芯線圧着部12や芯線61などの塗布対象部位の高さに応じてノズルを第三方向Hに移動させる必要がある。
【0052】
これに対して、本実施形態の射出装置70は、ノズル72aを第三方向Hに移動させることなく被膜6を形成する。射出装置70は、被膜6を形成する対象の部位(以下、単に「対象部位」と称する。)の高さにかかわらず、任意の量の液滴3を対象部位に付着させることができる。よって、本実施形態の端子付き電線の製造方法では、第三方向Hへのノズル72aの移動がないため、被膜形成工程の加工時間が短縮される。また、本実施形態の射出装置70は、塗布時の樹脂ダレをなくし、材料ロスを低減することができる。
【0053】
なお、射出装置70は、
図10に示すように、被膜6の表面6sを頂点位置H1よりも盛り上げてもよい。
図10に示す被膜6は、湾曲部22b,23bの頂点位置H1よりも高い位置まで盛り上がるように溝部24に充填されている。このようにした場合、溝部24に水分や油分などが入り込みにくい。よって、端子付き電線5をガルバニック腐食からより確実に保護することができる。
【0054】
本実施形態において、一回に射出される液滴3の量は、例えば、以下のように定められている。
図11には、芯線圧着部12に命中して付着した液滴3aが示されている。付着した液滴3aの直径D1は、芯線圧着部12に付着したときの液滴3の広がり幅に相当する。液滴3aの直径D1は、芯線圧着部12の幅(クリンプワイド)Wd1よりも小さい。従って、紫外線硬化型樹脂7が芯線圧着部12の側面へ付着しにくい。よって、本実施形態の射出装置70は、紫外線硬化型樹脂7が側面に付着してしまうことによる幅Wd1の変動を抑制することができる。
【0055】
図12には、本実施形態に係る射出装置70の別の態様が示されている。
図12に示す射出装置70において、保持部73Aは、被膜形成前の端子付き電線4を傾斜姿勢で保持する。保持部73Aの移動方向Xは、ノズル72aの軸方向と直交する方向、言い換えると、液滴3が射出される射出方向と直交する方向である。移動方向Xは、例えば、水平方向である。保持部73Aは、第一方向Lが移動方向Xに対して傾斜するように被膜形成前の端子付き電線4を傾斜姿勢で保持する。なお、
図12から
図14では、被膜形成前の端子付き電線4が断面で示されている。この断面は、電線60の中心軸線に沿った断面であり、かつ第二方向Wと直交する断面である。移動方向Xに対する第一方向Lの傾斜角度θは、例えば、以下のような角度である。
【0056】
図13には、
図12の要部が拡大して示されている。本実施形態の傾斜角度θは、仮想線LIを移動方向Xと平行にするように定められている。仮想線LIは、芯線圧着部12の後端12bの上端と被覆圧着部13の先端13aの上端とを結ぶ線である。つまり、本実施形態の傾斜角度θは、後端12bの上端と先端13aの上端とが鉛直方向において実質的に同じ位置となる角度である。このような傾斜角度θで被膜形成前の端子付き電線4が保持された場合、芯線圧着部12と被覆圧着部13との間において芯線61が実質的に水平に延在することになる。
【0057】
射出部72は、傾斜姿勢で保持された被膜形成前の端子付き電線4に対して、紫外線硬化型樹脂7の液滴3を射出する。射出装置70は、ノズル72aを第二方向Wに往復動させながら、ノズル72aから間欠的に液滴3を射出させる。また、射出装置70は、射出装置70によって液滴3を射出させながら、保持部73Aを移動方向Xに沿って移動させる。つまり、射出装置70は、ノズル72aと被膜形成前の端子付き電線4とを液滴3の射出方向(鉛直方向)と直交する二方向に相対移動させる。被膜形成前の端子付き電線4に付着した液滴3は、被膜8(
図14参照)を形成する。射出装置70は、例えば、被覆圧着部13側から端子接続部11側に向けて順に被膜8を形成していく。
【0058】
形成される被膜8は、上記の被膜6と同様に、芯線61および圧着端子1を一体に覆う。被膜8は、例えば、
図14に示すように、芯線61の先端61a、芯線圧着部12、芯線61の中間露出部61b、被覆62、および被覆圧着部13を一体に覆う。紫外線硬化型樹脂7は、芯線61の素線の間にも浸透する。素線の間に浸透した紫外線硬化型樹脂7は、被覆62の開口を閉塞する。つまり、紫外線硬化型樹脂7は、芯線61の外周面を覆うだけでなく、素線の間に浸透して各素線を覆い、かつ被覆62の開口を閉塞する。
【0059】
また、紫外線硬化型樹脂7は、圧着端子1と芯線61との間に生じる空隙16に充填される。
図13に示すように、圧着端子1の内方には、空隙16が形成される。空隙16は、芯線61と、圧着端子1の内側面と、被覆62の先端62aとによって囲まれる空間部である。
図13に示す空隙16は、中間部15の底部15aの内側面と芯線61との間の空間部である。空隙16は、被覆62の先端62aによって生じる段差に応じて形成される。
【0060】
被膜形成前の端子付き電線4が傾斜姿勢で保持されていることで、空隙16に対する紫外線硬化型樹脂7の充填が促進される。芯線61の素線の間に浸透した紫外線硬化型樹脂7や、芯線61の外周面に沿って垂れる紫外線硬化型樹脂7は、空隙16に導かれる。導かれた紫外線硬化型樹脂7によって、空隙16が充填される。また、本実施形態では、被覆圧着部13に最初に被膜8が形成されることで、紫外線硬化型樹脂7が下方に向けて浸透していくための時間が確保される。
【0061】
仮想線LIが実質的に水平であることから、芯線61に付着した紫外線硬化型樹脂7が第一方向Lに沿って流出しにくい。従って、被膜8において、中間露出部61bを覆う部分に厚さのバラツキが生じにくい。また、紫外線硬化型樹脂7が第一方向Lに沿って移動しにくいことから、矢印Y3で示すように、中間露出部61bの上面に付着した紫外線硬化型樹脂7がそのまま下方へと浸透していきやすい。よって、空隙16が紫外線硬化型樹脂7によって充填されやすい。
【0062】
また、被膜形成前の端子付き電線4が傾斜姿勢で保持されていることで、矢印Y4で示すように、被覆62の内方に位置する芯線61へ紫外線硬化型樹脂7が浸透しやすくなる。つまり、紫外線硬化型樹脂7による被覆62の開口の閉塞が促進される。被膜形成前の端子付き電線4が傾斜していることで、紫外線硬化型樹脂7が第一方向Lの奥部まで浸透しやすくなる。空隙16に紫外線硬化型樹脂7が溜まり、液面レベルが上がることで、被覆62の開口の内方へ紫外線硬化型樹脂7が流れ込みやすくなる。また、中間露出部61bに塗布された紫外線硬化型樹脂7の芯線61に対する密着性が向上する。空隙16が紫外線硬化型樹脂7によって充填されること、および被覆62の内方の空間へ紫外線硬化型樹脂7が浸透しやすくなることで、端子付き電線5がより確実に腐食から保護される。
【0063】
また、被膜形成前の端子付き電線4が傾斜姿勢で保持されていることで、紫外線硬化型樹脂7が端子接続部11側へ流れにくい。また、芯線61の先端61aを覆う被膜8を厚くすることができる。先端61aを覆う被膜8が厚くなることで、先端61aの露出防止における冗長性が向上する。
【0064】
なお、傾斜角度θは、仮想線LIが水平となる角度よりも大きな角度とされてもよい。すなわち、傾斜角度θは、芯線圧着部12の後端12bの上端が被覆圧着部13の先端13aの上端よりも鉛直方向上側に位置する角度であってもよい。傾斜角度θの最大値は、例えば、45度とされてもよい。
【0065】
被膜8が形成されると、照射工程がなされる。照射工程は、被膜形成工程の完了後、または被膜形成工程と並行して実行される。照射工程では、例えば、
図9に示す照射工程と同様に、被膜8に対して紫外線照射装置76によって紫外線が照射される。照射工程で紫外線の照射を受けることで、被膜8が硬化する。照射された紫外線は、芯線61の素線の表面で乱反射し、芯線61の内部に浸透した紫外線硬化型樹脂7まで届く。従って、素線の間に浸透した紫外線硬化型樹脂7や、被覆62の内方の空間に浸透した紫外線硬化型樹脂7は、照射工程において硬化する。なお、照射工程と並行して、あるいは照射工程の前後に、紫外線硬化型樹脂7を硬化させる処理がなされてもよい。例えば、熱硬化させる処理がなされてもよい。
【0066】
なお、被膜形成前の端子付き電線4を傾斜姿勢で保持する射出装置70は、ノズル72aと被膜形成前の端子付き電線4とを鉛直方向に相対移動させてもよい。例えば、射出装置70は、射出部72を本体71に対して鉛直方向(射出方向)に相対移動させる移動機構を有していてもよい。あるいは、射出装置70は、保持部73Aを本体71に対して鉛直方向(射出方向)に相対移動させる移動機構を有していてもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の端子付き電線の製造方法は、被膜形成工程(
図13、
図14)と、照射工程(
図9)と、を含む。被膜形成工程は、圧着端子1を有する端子付き電線4に対して、芯線61および圧着端子1を一体に覆う紫外線硬化型樹脂7の被膜8を形成する工程である。圧着端子1は、底部21につながった一対のバレル片部22,23の先端22a,23aと底部21との間に電線60の芯線61を挟み込んだ芯線圧着部12と、電線60の被覆62に対して圧着された被覆圧着部13とを含む。照射工程は、被膜8に対して紫外線を照射する工程である。
【0068】
本実施形態の端子付き電線の製造方法では、被膜形成工程において、圧着端子1は、軸方向に沿って被覆圧着部13側から芯線圧着部側へ向かうに従って鉛直方向の上側に向かう傾斜姿勢で保持される。被膜形成工程は、傾斜姿勢の端子付き電線4に対して、吐出口72cから間欠的に射出する紫外線硬化型樹脂7の液滴3によって被膜8を形成する。傾斜姿勢における圧着端子1の傾斜角度θは、芯線圧着部12における被覆圧着部13側の端部12bの上端と、被覆圧着部13における芯線圧着部12側の端部13aの上端とが鉛直方向において実質的に同じ高さとなる角度以上の角度である。
【0069】
本実施形態の端子付き電線の製造方法は、傾斜姿勢の端子付き電線4に対して被膜8を形成する。よって、被覆62の内方への紫外線硬化型樹脂7の浸透が促進される。その結果、紫外線硬化型樹脂7を被覆62の内方の空間に浸透させるために要する時間が短縮され、生産性が向上する。また、傾斜角度θが上記のように定められていることで、紫外線硬化型樹脂7が芯線圧着部12側に流出しにくくなり、紫外線硬化型樹脂7が被覆62の内方の空間に浸透しやすくなる。
【0070】
本実施形態において、傾斜姿勢における圧着端子1の傾斜角度θは、芯線圧着部12と被覆圧着部13との間において芯線61が実質的に水平に延在する角度以上の角度である。よって、紫外線硬化型樹脂7が芯線圧着部12側に流出しにくくなり、紫外線硬化型樹脂7が被覆62の内方の空間に浸透しやすくなる。
【0071】
本実施形態では、被膜形成工程において、吐出口72cと端子付き電線4とを相対移動させながら、吐出口72cから射出する紫外線硬化型樹脂7の液滴3によって被膜8を形成する。被膜形成工程における吐出口72cと端子付き電線4との相対移動の方向は、紫外線硬化型樹脂7の液滴3の射出方向と直交する方向である。本実施形態の端子付き電線の製造方法は、間欠的に射出する紫外線硬化型樹脂7の液滴3によって被膜8を形成する。この被膜形成方法によれば、射出方向における吐出口72cと対象部位との距離が変動したとしても、液滴3が付着する位置にずれが生じにくい。吐出口72cと被膜形成前の端子付き電線4とを射出方向に沿って相対移動させることなく被膜8を形成することで、被膜形成工程に要する時間を短縮し、生産性の向上を図ることができる。
【0072】
[実施形態の変形例]
被膜形成工程において、芯線61における被覆62によって覆われた区間への紫外線硬化型樹脂7の浸透を促進させる手段が用いられてもよい。例えば、加圧室において被膜形成工程がなされてもよい。この場合、射出装置70および被膜形成前の端子付き電線4が加圧室に置かれる。なお、電線60における圧着端子1側とは反対側の端部は、加圧室の外部に置かれることが好ましい。芯線61に付着した紫外線硬化型樹脂7は、圧力差によって被覆62の内方へ向けて浸透しやすくなる。
【0073】
紫外線硬化型樹脂7の被膜6,8は、被覆圧着部13を覆わず、かつ被覆62を覆うように形成されてもよい。例えば、被膜6,8は、少なくとも被覆圧着部13の外周面を覆わないように形成されてもよい。この場合において、被膜6,8が、被覆圧着部13の先端13aを覆うことが許容されてもよい。
【0074】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。