(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施形態]
本実施形態に係る通信システム及び通信装置について、
図1〜
図12を用いて説明する。
【0020】
[1.構成]
[1−1.全体構成]
図1は、本実施形態に係る通信システムの全体構成を示す図である。本通信システムは、異なる種類の通信装置1、2をそれぞれ複数有する。通信装置1と通信装置2とは有線又は無線で通信する。
【0021】
通信装置1、2は、具体的には、端末装置、中継機である。ここでは、通信装置1を端末装置とし、通信装置2を中継機とした例で説明する。
【0022】
本通信システムは、複数の端末装置1と複数の中継機2とサーバ3とを有する。サーバ3と各中継機2とは有線又は無線のネットワークNにより接続されている。端末装置1は中継機2に端末情報を送信し、中継機2が当該情報をサーバ3に送信することで、各端末装置1の端末情報をサーバ3に集約する。
【0023】
例えば、本通信システムは、位置把握システムとして用いることができる。すなわち、スタジアムやショッピングモール、大型倉庫などの大規模な人数や物を収容可能な設置対象に、通信可能範囲Rが重複するように中継機2をメッシュ状に配置する。つまり、設置対象の範囲は、各中継機2の通信可能範囲Rによってカバーされる。中継機2の通信可能範囲Rは、半径数十m〜数kmの範囲であり、例えば半径30mの範囲である。端末装置1は、設置対象内の人や物に保持されて移動可能である。例えば、端末装置1は、リストバンドやタグであり、中継機2との通信可能範囲は半径数m〜数kmであり、例えば半径数m〜数十mである。中継機2は、例えばアクセスポイント(AP)であり、通信可能範囲R内に位置する端末装置1と通信し端末装置を特定することで、端末装置1の情報を把握し、当該情報を上位のサーバ3に送信する。これにより、各端末装置1がどの中継機2の位置にいるかを把握することができる。中継機2による端末装置1の特定は、例えば、端末装置1が自身の固有の識別子を中継機2に送信し、当該識別子を自身の識別子と共にサーバ3に送信することで特定する。中継機2の設置対象は、例えば10万人を収容できる規模の施設等であり、端末装置1の数は例えば10万台である。中継機2の数は特に限定されないが、例えば200台である。この場合、1台の中継機2に約500台の端末装置1が通信により接続される。なお、端末装置1と中継機2の台数は特に限定されない。
【0024】
本実施形態では、端末装置1と中継機2とは、2.4GHz帯通信や5GHz帯通信、920MHz帯通信(特定省電力無線)等の免許不要なISMバンド通信(Industry Science Medical,産業科学医療用バンド)を用い、時分割多元接続方式(TDMA方式:Time Division Multiple Access)で通信する。
【0025】
本通信システムにおいて、中継機2同士は、直接通信することはなく、また、上位のサーバ3を介して通信することもない。サーバ3をマスターとして中継機2間が同期することもない。また、端末装置1同士も直接通信することはない。つまり、通信システムにおいて通信するのは、中継機2、端末装置1間と、中継機2、サーバ3間であり、中継機2間は、端末装置1を介して間接的に同期する。そのための構成を以下で詳細に説明する。
【0026】
[1−2.詳細構成]
図2を用いて、通信装置1,2の構成について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る通信装置の機能ブロック図である。
【0027】
通信装置1,2は、コンピュータを含み構成されて、プログラムをHDDやSSD等の記録媒体に記憶しており、CPUで処理することにより、後述する各演算処理を行う。
【0028】
図2に示すように、通信装置1,2は、共通した構成を有する。すなわち、通信装置1,2は、送信器31、受信器32、発振部33、時計34、送信時刻検出部35、受信時刻検出部36、間隔算出部37、記憶部38、ずれ算出部39、送信タイミング補正部40、及び送信制御部41を有する。なお、通信装置1と通信装置2とは異なる種類の装置である。種類が異なるとは、例えば、端末装置1又は中継機2としての構成上の違いがあること、又は、構成としては同じでも、移動可能な端末装置1、特定の箇所に設置される中継機2のように用途上の違いがあることをいう。また、通信装置1,2は、同じ構成でも良いし、各部31〜41以外にも、端末装置1又は中継機2として必要な構成を有していても良く、これらの構成は公知であるため、説明は省略する。
【0029】
送信器31は、外部に情報を送信する機器であり、受信器32は、外部から情報を受信する機器である。例えば、端末装置1の送信器31は、自身の端末情報を中継機2に送信し、当該情報を中継機2の受信器32が受信する。また、中継機2の送信器31は、自身の情報を端末装置1に送信し、当該情報を端末装置1の受信器32が受信する。このようにして端末装置1と中継機2とが通信する。
【0030】
発振部33は、固有の周波数を有するクロック信号を出力し、通信装置1、2の各部の動作タイミングを与える発振回路又は発振器である。この発振部33により、装置1,2内の各部が同期して動作する。発振部33は、例えば、水晶振動子などの周波数固定の発振器である。
【0031】
発振部33は、固有の有限な周波数偏差を有している。すなわち、工場出荷時等で決まる公称周波数fに対して周波数偏差e’を有している。そのため、各端末装置1、各中継機2は、それぞれクロック信号の周波数が異なり、それぞれ固有の時間を有している。各端末装置1の公称周波数、周波数偏差をf
M、e’
Miとし(i=1,2,…,M)、各中継機2の公称周波数、周波数偏差をf
A、e’
Ajとすると(j=1,2,…,N)、端末装置1のクロック信号の周波数f
Miは、f
Mi=(1−e’
Mi)f
Mと表せ、中継機2のクロック信号の周波数f
APjは、f
APj=(1−e’
Aj)f
Aと表すことができる。f
Miとf
APjは、一般的にはそれぞれ異なる。
【0032】
また、一般に、周波数と周期の関係は逆数の関係にあるから、端末装置1の周期T
Mi(=1/f
Mi)、中継機2の周期T
Aj(=1/f
APj)もそれぞれ異なる。換言すれば、発振部33は、工場出荷時等で決まる公称周期Tに対して、固有の有限な周期偏差eを有している。後述するように、各装置の固有の周期偏差をe
Mi、e
Ajとすると、T
Mi=(1+e
Mi)T、T
Aj=(1+e
Aj)Tと表すことができる。
【0033】
時計34は、発振部33のクロック信号を源振として刻時する。通信装置1、2のクロック信号がそれぞれ異なる周波数であるため、各装置1,2は時間の進み方が違う。例えば、ある端末装置1において1秒の時間は、他の端末装置1では1.01秒であったり、ある中継機2では、1.02秒であったりする。
【0034】
送信時刻検出部35は、送信器31が送信する時刻を検出する。すなわち、通信装置1,2の送信時刻検出部35は、各他種の通信装置2,1に送信器31が送信するタイミングにおいて時計34を参照し、当該送信時刻をそれぞれ検出する。例えば、端末装置1の送信時刻検出部35は、自身の送信器31によって各中継機2に送信する時刻を自身の時計34を参照してそれぞれ検出する。また、中継機2の送信時刻検出部35は、自身の送信器31によって各端末装置1に送信する時刻を自身の時計34を参照してそれぞれ検出する。
【0035】
受信時刻検出部36は、受信器32が受信した時刻を検出する。すなわち、通信装置1,2の受信時刻検出部36は、受信器32が各他の通信装置2,1から受信するタイミングにおいて時計34を参照し、当該受信時刻をそれぞれ検出する。例えば、端末装置1の受信時刻検出部36は、自身の受信器32によって各中継機2から受信する時刻を自身の時計34を参照してそれぞれ検出する。また、中継機2の受信時刻検出部36は、自身の受信器32によって各端末装置1から受信する時刻を自身の時計34を参照してそれぞれ検出する。
【0036】
なお、送信時刻検出部35が時刻を検出するタイミングは、例えば、シンクワード(syn word)の送信完了時点や、パケットの送信完了時点とする。受信時刻検出部36が時刻を検出するタイミングは、例えば、シンクワード(syn word)の受信完了時点や、パケットの受信完了時点とする。なお、これらのタイミング位置は、通信システム内で予め設定されている。
【0037】
間隔算出部37は、CPUを含み構成され、受信時刻検出部36により検出した受信時刻と、送信時刻検出部35により検出した送信時刻との差分を算出して、当該差分である送受信時間間隔を求める。
【0038】
記憶部38は、HDD、SSD、メモリ、レジスタなどの記録媒体である。記憶部38は、各演算を行うのに必要な情報が記憶されている。例えば、送信から受信、受信から送信までの1送信間隔を1セットとするスーパーフレーム長P(すなわち、発振部33のクロック信号の1送信間隔分のサイクル数)が予め記憶されている。
【0039】
スーパーフレーム長Pは、クロック信号のサイクル数の側面から見ると、送信から受信までのクロック信号のサイクル数F
ijと、受信から送信までのクロック信号のサイクル数S
ijとの和である。添え字iは、端末装置1の識別番号であり、1,2,…N(Nは自然数)である。添え字jは、中継機2の識別番号であり、1,2,…、M(Mは自然数)。スーパーフレーム長Pは各端末装置1、中継機2間で一定である。一方、各端末装置1,中継機2間でF
ij、S
ijはそれぞれ異なっており、それぞれ記憶部38に予め記憶されている。例えば、1番目の端末装置1と5番目の中継機2のサイクル数F
15と、1番目の端末装置1と7番目の中継機2のサイクル数F
17とは異なっていても良いし、同様にS
15はS
17とも異なっていても良く、それぞれが記憶されている。つまり、送信から受信までのサイクル数と受信から送信までのサイクル数の合計Pは、どの端末装置1,中継機2間でも同じである一方、送信から受信までのサイクル数F
ijと、受信から送信までのサイクル数S
ijのデューティー比が、端末装置1,中継機2間でそれぞれ異なる。
【0040】
記憶部38には、通信相手となる他の通信装置1,2に情報を送信してから当該通信装置1,2から情報を受信するまでの時間間隔が通信相手となる他の通信装置1,2毎に予め記憶された送受信間隔記憶部381と、通信相手となる他の通信装置1,2から情報を受信してから当該通信装置1,2に情報を送信するまでの時間間隔が通信相手となる他の通信装置1,2毎に予め記憶された受送信間隔記憶部382とが設けられている。送受信間隔記憶部381が記憶する時間間隔は、他の通信装置1,2との間で送受信する通信装置1,2の送信から受信までの予定時間である。受送信間隔記憶部382が記憶する時間間隔は、他の通信装置1,2との間で受送信する通信装置1,2の受信から送信までの予定時間である。
【0041】
また、記憶部38は、各通信装置1,2の送信間隔を予め記憶していても良い。この送信間隔は、送受信間隔記憶部381が記憶する時間間隔と受送信間隔記憶部382が記憶する時間間隔の和である。
【0042】
ずれ算出部39は、CPUを含み構成され、間隔算出部37により算出した送受信時間間隔と、送受信間隔記憶部381に記憶された時間間隔との差分を送受信相手の通信装置1,2毎に算出し、当該通信装置1,2の時間のずれを求める。このずれ算出部39が求める時間のずれは、送信から受信までの間隔における時間のずれとしても良いし、送信から受信までの間隔における時間のずれを正規化し、送信間隔分の時間のずれとしても良い。例えば、ずれ算出部39は、まず、間隔算出部37により算出した送受信時間間隔と、送受信間隔記憶部381に記憶された時間間隔との差分から送受信間隔のずれを送受信相手の通信装置1,2毎に算出する。このずれは、送受信間隔分の時間のずれであるから、送信してから受信し、再び送信するまでの送信間隔分、すなわちスーパーフレーム長P分の時間のずれを求めて正規化するようにしても良い。すなわち、ずれ算出部39は、求めた送受信間隔分の時間のずれにP/F
ijを乗算しても良い。ずれ算出部39は、その際に発生しうる演算誤差を考慮するようにしても良い。
【0043】
送信タイミング補正部40は、CPUを含み構成され、通信相手となる他の通信装置1,2の1台に対して情報を送信する際に、他の通信装置1,2と通信するときに生じる自身と他の通信装置1,2とのそれぞれの時間のずれを足し合わせて当該他の通信装置1,2の1台に情報を送信するタイミングを算出する。すなわち、送信タイミング補正部40は、受送信間隔記憶部382が記憶する送信相手となる通信装置1,2に対する受送信予定時間間隔に、送信相手以外の通信装置1,2の時間のずれの和を加算する。
【0044】
このとき、送信タイミング補正部40は、ずれ算出部39により算出した送受信時間間隔分の時間のずれをスーパーフレーム長P分(送信間隔分)に正規化しても良い。換言すれば、時間のずれの正規化の演算は、ずれ算出部39又は送信タイミング補正部40の何れかが行えば良い。また、ずれ算出部39又は送信タイミング補正部40は、何れかがずれ算出部39により求めたスーパーフレーム長P分の時間のずれを、受送信間隔分にする逆正規化をしても良い。
【0045】
送信制御部41は、送信タイミング補正部40で求めた送信タイミングで送信器31が当該送信相手となる通信装置1,2に対して送信するよう送信器31を制御する。
【0046】
[2.作用]
本実施形態に係る通信装置及び通信システムの作用について、
図3〜
図12を用いて説明する。説明を簡単にするため、通信装置1を端末装置1とし、通信装置2を中継機2とする。また、端末装置1と中継機2は無線(電波)により通信するものとする。
【0047】
なお、前提条件として、電波の伝搬遅延が無視できるシステムを本通信システムの対象とする。例えば、中継機2の通信範囲が30mであり、その範囲内に端末装置1が位置する場合、伝搬遅延は0.1μs以下のわずかな遅延しか生じないので無視することができる。また、中継機2間は、直接通信しないものとする。また、サーバ3を介しての中継機2間の通信もしないものとする。
【0048】
さらに、端末装置1と中継機2は、それぞれ発振部33の発振するクロック信号に固有の周期偏差eが存在する。そのため、各端末装置1をM
i(i=1,2,…,M)と表記し、各中継機2をAP
j又はA
j(i=1,2,…,N)と表記すると、各装置1,2は固有の周期T
Mi、T
Ajを有する。すなわち、実際の各装置1,2の固有の周期T
Mi、T
Ajは、公称周期Tから固有の周期偏差e
Mi、e
Aj分ずれており、T
Mi=(1+e
Mi)T…(1)、T
Aj=(1+e
Aj)T…(2)と表すことができる。
【0049】
また、各端末装置M
i、中継機AP
j間のスーパーフレーム長は一定値Pとする。すなわち、端末装置M
iが中継機AP
jから受信し、送信するまでのクロック信号のサイクル数F
ijと、当該中継機AP
jが当該端末装置M
iから受信してから当該端末装置M
iに送信するまでのクロック信号のサイクル数S
ijとの和Pは、一定である(P=F
ij+S
ij…(3))。
【0050】
以下、端末装置1を介して中継機2間が間接的に同期する原理について、順を追って説明する。まず、(1)1台の端末装置1と1台の中継機2に着目した場合の相互同期の様子を示す。次に、(2)1台の端末装置1と複数の中継機2に着目し、端末装置1を介して中継機2間が間接的に同期することを示す。そして、(3)複数の端末装置1と複数の中継機2に着目し、(2)の端末装置1を介して中継機2間が間接的に同期することが、端末装置1、中継機2の台数に依らずに拡張できることを示す。
【0051】
(1)1台の端末装置1と1台の中継機2の同期について
図3は、複数ある端末装置1と中継機2の中から、1台の端末装置M
iと1台の中継機AP
jに着目した、M
i、AP
j間の通信の様子を示す模式図である。中継機AP
jの端末装置M
iへの送信間隔と、端末装置M
iの中継機AP
jからの受信間隔とを求め、両間隔が一致、すなわち端末装置M
iと中継機AP
jとが同期することを示す。
【0052】
まず、中継機AP
jの端末装置M
iへの送信間隔を求めるべく、中継機AP
jの送受信間隔と、受送信間隔に分けて考える。前者の送受信間隔を求めるため、端末装置M
iの受信から送信までの端末装置M
iの時間F
ijT
Miについて考える。この時間F
ijT
Miは、式(1)より、下記の式(4)の通り表すことができる。
(数1)
【0053】
式(4)から明らかなように、端末装置M
iの受送信間隔は、中継機AP
jの時間T
Ajで表すことができる。換言すれば、この端末装置M
iの受送信間隔は、中継機AP
jの送受信間隔に相当する。なお、中継機AP
jでは送受信間隔をF
ijT
Ajと予定していたが、実際には式(4)の第2項、すなわち装置間の周期偏差による受信タイミングのずれ(F
ij(e
Mi−e
Aj)T)が加算された、予定とは異なる時間(=F
ijT
Mi)が観測される。
【0054】
中継機AP
jの受送信間隔は、予め設定されたサイクル数S
ijに中継機AP
jの1周期乗算したS
ijT
Ajである。
【0055】
したがって、中継機AP
jの送信間隔は、{F
ijT
Aj+F
ij(e
Mi−e
Aj)T}+S
ijT
Ajと表すことができる。この送信間隔は、式(2)を用いて、下記式(5)の通り変形することができる。
(数2)
【0056】
次に、端末装置M
iの受信間隔を求めるべく、端末装置M
iの受送信間隔と、送受信間隔とに分けて考える。前者の受送信間隔は、予め設定されたサイクル数F
ijに端末装置M
iの1周期乗算したF
ijT
Miである。後者の送受信間隔を求めるため、中継機AP
jの受信から送信までの中継機AP
jの時間にS
ijT
Ajについて考える。この時間S
ijT
Ajは、式(2)より、下記の式(6)の通り表すことができる。
(数3)
【0057】
式(6)から明らかなように、中継機AP
jの受送信間隔は、端末装置M
iの時間T
Miで表すことができる。換言すれば、この中継機AP
jの受送信間隔は、端末装置M
iの送受信間隔に相当する。なお、端末装置M
iでは、送受信間隔をS
ijT
Miと予定していたが、実際には式(6)の第2項、すなわち装置間の周期偏差による受信タイミングのずれ(S
ij(e
Aj−e
Mi)T)が加算された、予定とは異なる時間(=S
ijT
Ai)が観測される。
【0058】
したがって、端末装置M
iの受信間隔は、F
ijT
Mi+{S
ijT
Mi+S
ij(e
Aj−e
Mi)T}と表すことができる。この送信間隔は、式(1)を用いて、下記式(7)の通り変形することができる。
(数4)
【0059】
ここで、式(5)と式(7)から明らかなように、中継機AP
jの端末装置M
iへの送信間隔と、端末装置M
iの中継機AP
jからの受信間隔とは一致することが確認することができる。よって、端末装置M
iと中継機AP
jは同期することが確認できる。
【0060】
(2)1台の端末装置M
iと複数台の中継機AP
jについて
1台の端末装置M
iと複数台の中継機AP
jの通信について考える。
図4は、1台の端末装置M
iと複数台のAP
jとの通信の様子を示す模式図である。
図5は、通信装置1,2(ここでは、端末装置M
i)の動作フローチャートである。
【0061】
まず、
図4及び
図5に示すように、前提として、端末装置M
iは、各中継機AP
j、AP
hからの送信を同時に受信し、予め決められた予定時間F
ijT
Mi、F
ihT
Mi後に中継機AP
j、AP
hに送信する(ステップS01)。なお、ここでは説明の簡素化のために同時受信としたが、必ずしも同時受信である必要はない。次に、端末装置M
iは、各中継機AP
j、AP
hに送信した時刻を送信時刻検出部35によりそれぞれ検出し、その後各中継機AP
j、AP
hからの受信時刻を受信時刻検出部36によりそれぞれ検出する(ステップS02)。なお、中継機APhは、中継機APjと区別できる他の任意の中継機2である。
【0062】
そして、端末装置M
iの間隔算出部37は、送信時刻検出部35及び受信時刻検出部36により検出した各中継機AP
j、AP
hに対する送信時刻及び受信時刻の入力を受けて、各中継機AP
j、AP
hに対する送受信間隔を算出する(ステップS03)。
【0063】
さらに、端末装置M
iは、ずれ算出部39により、各中継機AP
j、AP
hとの時間のずれを求める(ステップS04)。すなわち、ずれ算出部39は、送受信間隔記憶部381から予め記憶された端末装置M
iの各中継機AP
j、AP
hに対する送受信予定時間S
ijT
Mi、S
ihT
Miを読み出し、間隔算出部37により求めた送受信間隔と送受信予定時間間隔との差分を各中継機AP
j、AP
hについて算出する。
【0064】
ここで、上記(1)で示した通り、中継機AP
jの受送信間隔S
ijT
Ajと端末装置M
iの間隔算出部37が求めた送受信間隔とは一致する。そのため、ずれ算出部39は、下記の式(8)に基づいて、時間のずれS
ij(e
Aj−e
Mi)Tを算出する。
(数5)
【0065】
この時間のずれS
ij(e
Aj−e
Mi)Tは、S
ijサイクル期間における、端末装置M
iを基準とした中継機AP
jの時間のずれを示している。そして、周期偏差e
Ajは、各中継機によって異なる。そのため、この時間のずれも、各中継機によって異なるものである。
【0066】
このように、端末装置M
iは、ずれ算出部39により、各中継機AP
j、AP
hとの時間のずれを求め、その結果を送信タイミング補正部40にそれぞれ出力する。
【0067】
次に、端末装置M
iは、各中継機AP
j、AP
hに送信するタイミングを補正する(ステップS05)。すなわち、送信タイミング補正部40により、各中継機AP
j、AP
hに送信するタイミングを求める。
【0068】
ここで、端末装置M
iの中継機AP
jへの送信について考えると、送信タイミング補正部40は、受送信間隔記憶部382から端末装置M
iの中継機AP
jとの受信から送信までの予定時間F
ijT
Miを読み出して、下記の式(9)に示すように、当該予定時間F
ijT
Miに、端末装置M
iに対する他の中継機AP
hとの時間のずれをそれぞれ足し合わせる。
(数6)
【0069】
そして、送信タイミング補正部40は、各中継機AP
jに対する送信制御部41に求めた送信タイミングを出力する。送信制御部41は、送信タイミング補正部40から入力された送信タイミングに基づいて、送信器31に各中継機AP
jに送信させる(ステップS06)。
【0070】
これにより、端末装置Miを介して中継機AP
j、AP
h間を間接的に同期することができる。すなわち、
図4に示すように、端末装置M
iが、各中継機AP
j、AP
hに送信してから受信するまでの時間には、ずれΔが生じる。これに対し、送信タイミング補正部40は、受送信予定時間F
ijT
Miに、他の中継機AP
hとの時間のずれを全て足し合わせることで、時間のずれがどの中継機AP
jに対しても、同じになる。
【0071】
換言すれば、受送信予定時間F
ijT
Miには、中継機AP
jとの時間のずれが織り込まれている。時間ずれの総和は、
図6の黒塗りの矢印が示すように、端末装置M
iと中継機AP
jとの間の時間のずれS
ij(e
Aj−e
Mi)Tと、
図6の白抜きの矢印が示すように、端末装置M
iと中継機AP
j以外の中継機AP
k≠jとの間の時間のずれの総和Σ
k≠jS
ik(e
Ak−e
Mi)Tとの和となり、時間のずれがブレンドされ、時間のずれの総和はどの中継機AP
jに対しても一致する。そのため、以降同じように送信タイミングの補正を行うことで、送信タイミングの補正を行う前に生じたずれΔを保ったまま、端末装置M
iと各中継機AP
jとが通信可能になる。言い換えると、端末装置M
iは、各中継機AP
jとのタイムフレームの位相差を保ったまま通信することができ、本通信システムは、端末装置M
iを介して中継機AP
j、AP
h間で同期することができる。
【0072】
以上より、送信タイミング補正部40により補正した後の端末装置M
iの受信間隔は、式(10)の通り表すことができる。なお、この受信間隔は、補正後の受信から送信までの間隔と、中継機AP
jの受信から送信までの間隔S
ijT
Ajの和に分解することができる。
(数7)
【0073】
式(10)が示すように、補正後の端末装置M
iの受信間隔は、端末装置M
iの予定受信間隔に、全ての中継機APとの時間のずれの総和を足し合わせた間隔になることが分かる。
【0074】
(3)複数台の端末装置M
iと複数台の中継機AP
jについて
次に、複数の端末装置1と複数の中継機2とを有する通信システムにおいても、上記(2)と同様に、中継機2間で間接的に同期することを、下記に示すステップ1〜6に分けて示す。
【0075】
ステップ1,2において中継機AP
jにおける各端末装置M
iとの時間のずれを算出して、中継機AP
jの送信タイミングを補正する。ステップ3,4において、ステップ2を受けて、各端末装置M
iにおける各中継機AP
jとの時間のずれを算出し、端末装置M
iの各中継機AP
jへの送信タイミングを補正する。そして、ステップ5,6において、ステップ4を受けて、中継機AP
jにおける各端末装置M
iとの時間のずれを算出し、中継機AP
jの送信タイミングを補正する。
【0076】
以下では、各ステップの詳細について、各装置1,2の概略動作と理論的な意味合いを含めて説明する。
【0077】
(3−1)ステップ1
図7は、1台の中継機AP
jが複数の端末装置M
iに送信し、受信するまでの様子を示した模式図である。
図7に示すように、中継機AP
jは、各端末装置M
iにそれぞれ情報を同時に送信し、各端末装置M
iからの情報を受信する。このとき、中継機AP
jは、送信時刻検出部35、受信時刻検出部36により、当該送信時刻及び受信時刻を検出し、間隔算出部37により、送受信時間間隔を算出する。そして、ずれ算出部39により、算出した送受信時間間隔から、送受信間隔記憶部381から読み出した中継機AP
j自身の送受信予定時間間隔F
ijT
Ajを差し引き、当該中継機AP
jにおける各端末装置M
iとの時間のずれを算出する。さらに、ここでは、送信タイミング補正部40により、ずれ算出部39で求めた時間のずれを正規化する。すなわち、送信タイミング補正部40は、ずれ算出部39で求めた時間のずれを(P/F
ij)倍し、各端末装置M
iにおける平均を求める。(P/F
ij)倍するのは、ずれ算出部39で求めた時間のずれが、中継機AP
jの送信から受信までの時間のずれであるから、中継機AP
jの送信間隔分の時間のずれを求めるためである。
【0078】
このように送信タイミング補正部40により求める、中継機AP
jにおける端末装置M
iとの正規化した時間ずれの平均は、下記の式(11)の通り表すことができる。
(数8)
【0079】
式(11)において、L
ij(0):=F
ijT
Mi−F
ijT
Ajである。L
ij(0)の上付き(0)は、端末装置M
iと中継機AP
jの双方向同期通信の初回を示す。また、<x>は、xの平均を示す。なお、<ε
Aj>は、式(12)の通り定義される。
(数9)
【0080】
関数ξは、e
Mi−e
Ajの関数である。正規化する際のP/F
ijが除算であることから生じ得る演算誤差である。関数ξは、特に限定されないが、例えば、e
Mi−e
Ajの1次関数とすることができる。この演算誤差は、式(11)では考慮しているが、必ずしも考慮しなくても良い。
【0081】
(3−2)ステップ2
図8は、ステップ2を説明するための図であり、中継機AP
jの各端末装置M
iへの送信の際の様子を示す模式図である。ステップ2では、中継機AP
jにより各端末装置M
iへの送信タイミングを補正する。すなわち、中継機AP
jは、送信タイミング補正部40により、式(13)に示すように、中継機AP
jの送信間隔予定時間PT
Ajとステップ1で求めた時間ずれの平均を加算し、補正後の送信タイミングを求める。なお、中継機AP
jの送信間隔予定時間PT
Ajは、記憶部38に記憶された送受信間隔予定時間F
ijT
Ajと受送信間隔予定時間S
ijT
Ajの和である。
(数10)
【0082】
なお、P(1+<e
M>)Tは、平均端末Mの受信間隔と解釈できる。平均端末Mとは、平均的なクロックの周期偏差を有する仮想的な端末である。
【0083】
(3−3)ステップ3
図9は、ステップ3を説明するための図であり、中継機AP
jによって補正後の送信タイミングで送信された情報を各端末装置M
iが受信する際の様子を示す模式図である。ステップ3では、端末装置M
iの各中継機AP
jとの時間のずれを求める。すなわち、端末装置M
iは、送信時刻検出部35により中継機AP
jへの送信時刻を検出し、受信時刻検出部36により中継機AP
jからの受信時刻を検出する。この受信時刻は、中継機AP
jがステップ2で求めた送信タイミングで送信した情報を端末装置M
iが受信した時刻である。端末装置M
iは、間隔算出部37により、検出した各時刻から送受信時間間隔を算出し、次いで、ずれ算出部39により、求めた送受信時間間隔から記憶部38に記憶された送受信予定時間S
ijT
Miを差し引いて、時間のずれα
ijを求める。
【0084】
この時間のずれα
ijは、下記の式(14)からも求めることができる。すなわち、式(14)は、端末装置M
iの送受信間隔を示しており、端末装置M
iの送受信間隔=端末装置M
iの受信間隔−端末装置M
iの受送信間隔である。また、電波の伝搬遅延が無視できるから、端末装置M
iの受信間隔=中継機AP
jの送信間隔である。中継機AP
jの送信間隔は、ステップ2で求めた式(13)である。したがって、端末装置M
iの送受信間隔は、式(14)の通りとなり、式(14)の{P(<e
M>−e
Mi)T+<ε
Aj>T}がα
ijである。この式からも分かるように、この時間のずれα
ijは、平均端末装置Mと端末装置Miとの間隔Pにおける時間ずれと、中継機AP
jにおいて正規化の際に生じた演算誤差との和である。
(数11)
【0085】
(3−4)ステップ4
図10は、ステップ4を説明するための図であり、端末装置M
iによって送信タイミングが補正されて各中継機AP
jに送信する際の様子を示す模式図である。ステップ4では、端末装置M
iが、送信タイミング補正部40により、ステップ3で求めた時間のずれα
ijを加味して、中継機AP
jに送信するタイミングを補正する。すなわち、送信タイミング補正部40は、式(15)に示すように、通信相手となる中継機AP
j以外の他の中継機AP
kと端末装置M
iとの時間のずれα
ikを当該他の中継機AP
kについて足し合わせて逆正規化し、さらに自身の受送信間隔予定時間F
ijT
Miを加算する。
(数12)
【0086】
式(15)は、端末装置M
iの受送信予定時間と、逆正規化した他の中継機AP
kと端末装置M
iとの時間のずれα
ikの総和との和であり、時刻検出部35、36により、送信タイミングの補正を加味した観測可能な端末装置M
iの受送信間隔である。
【0087】
ここで、式(15)は、式(16)のように変形することができる。ε
Miは、式(17)で定義される。ε
Miは、逆正規化する際に(F
ij/P)を演算する際に生じうる演算誤差である。関数ζは、特に限定されないが、例えば、<e
M>−e
Miの1次関数とすることができる。この演算誤差は、式(16)では考慮しているが、必ずしも考慮しなくてもよい。
(数13)
(数14)
但し、式(16)の<ε
A≠j>は、ε
Ajを除いた<ε
Ak>の総和である。
【0088】
そして、式(15)は端末装置M
iの受送信間隔であり、電波の伝搬遅延が無視できることから、中継機AP
jの送受信間隔でもある。そのため、式(18)が成立する。
(数15)
【0089】
L
ij(1)は、中継機AP
jが送信してから受信するまでの時間間隔と、自身の送受信間隔時間F
ijT
Ajとのずれである。L
ij(1)の上付き(1)は、端末装置M
iと中継機AP
jの双方向同期通信の2回目を示す。
【0090】
(3−5)ステップ5
図11は、ステップ5を説明するための図であり、端末装置M
iによって送信タイミングが補正され、中継機AP
jで受信する際の様子を示す模式図である。ステップ5では、
図11に示すように、中継機AP
jは、端末装置M
iに情報を送信してから、端末装置M
iが補正を考慮して送信した情報を受信する。このとき、中継機AP
jは、送信時刻検出部35、受信時刻検出部36により、当該送信時刻及び受信時刻を検出し、間隔算出部37により、送受信時間間隔を算出する。そして、ずれ算出部39により、算出した送受信時間間隔から、送受信間隔記憶部381から読み出した中継機AP
j自身の送受信予定時間間隔F
ijT
Ajを差し引き、当該中継機AP
jにおける各端末装置M
iとの時間のずれを算出する。さらに、ここでは、送信タイミング補正部40により、式(19)に示すように、ずれ算出部39で求めた時間のずれを正規化し、各端末装置M
iにおける平均を求める。
(数16)
【0091】
ここで、下記の式(20)〜(22)が成立するから、式(19)は、式(23)のように表すことができる。
(数17)
(数18)
(数19)
(数20)
【0092】
この式(23)(式(19))は、1スーパーフレームで生じうる中継機AP
jを基準とした平均的な端末装置の時間のずれと、平均的な演算誤差の和である。
【0093】
(3−6)ステップ6
図12は、ステップ6を説明するための図であり、中継機AP
jが送信タイミングを補正して送信した端末装置M
iからの情報を受信してから送信するまでの様子を示す模式図である。ステップ6では、中継機AP
jの送信タイミング補正部40が、式(24)に示すように、中継機AP
jの送信間隔予定時間PT
Ajとステップ5で求めた時間ずれの平均を加算し、補正後の送信タイミングを求める。なお、中継機AP
jの送信間隔予定時間PT
Ajは、記憶部38に記憶された送受信間隔予定時間F
ijT
Ajと受送信間隔予定時間S
ijT
Ajの和である。
(数21)
【0094】
なお、<T
M>は、<T
M>=(1+<e
M>)Tであり、平均的な端末装置のクロック信号の1周期を示す。P<T
M>は、平均的な端末装置の通信周期を示す。εは、ε=<ε
A>+<ε
M>であり、εTは、各中継機及び各端末装置における演算誤差の総和を示す。
【0095】
式(24)が示すように、中継機2間の通信周期に偏りがなく、中継機2同士が平均的な端末装置1を介して間接的に同期することができるのが分かる。
【0096】
ステップ6以降は、ステップ3〜6を繰り返すことで、フレーム位相差を保ったまま各中継機2を間接的に同期させることができる。このように、本実施形態によれば、発振部33のクロック周波数を制御出来なくても、周期偏差による時間のずれが累積することがない。
【0097】
なお、式(24)が示すP(1+<e
M>)T+εTは、端末装置1、中継機2が多数存在すると、PTに収束する。すなわち、端末装置1,中継機2が多数存在すると、周期偏差のばらつきは中心極限定理により正規分布に従う。そのため、各端末装置M
iの周期偏差e
Mi、各中継機AP
jの周期偏差e
Ajは正規分布に従ってばらついている。そのため、周期偏差e
xの期待値を考えると(x=Mi、APj)、大数の法則により、式(25)〜式(28)が成立する。
(数22)
(数23)
(数24)
(数25)
【0098】
そのため、送信タイミングを端末装置M
iと中継機AP
jとで補正する際、端末装置1や中継機2が多数あると、他の通信装置1,2との時間のずれの足し合わせても誤差の総和が大きくなって同期するまでに時間がかかるようなことはなく、実際にはその影響は無視できることが分かる。つまり、多数の端末装置M
iと多数の中継機AP
jとで同期を取ると、各装置の発振部33の周期は、公称周期Tに漸近する。そのため、中継機間で通信しなくても同期を図ることができる。例えば、通信システムにおいて、1台の中継機AP
1と、中継機AP
1と通信可能な200台の端末装置M
1〜M
200からなるネットワークN1と、1台の中継機AP
2と、中継機AP
2と通信可能な200台の端末装置M
201〜M
400からなるネットワークN2とがあった場合、端末装置M
1〜M
400の何れかが両方の中継機AP
1、AP
2と通信可能であれば、中継機AP
1、AP
2間が直接通信せずともネットワークN1、N2の各装置が同期を取ることができる。
【0099】
なお、端末装置M
1〜M
200及び中継機AP
1のいずれもが端末装置M
201〜M
400及び中継機AP
2と通信せずネットワークN1とネットワークN2とが孤立していても、端末装置1を相当数有していれば、ネットワークN1とネットワークN2の同期は可能である。但し、この相当数はシステムに要求される同期精度により決定される。例えば、システムに要求される同期精度が5ppmであり、端末装置M
1〜M
200の平均的な周期偏差が±14ppm、端末装置M
201〜M
400の平均的な周期偏差が±20ppmとした場合、本実施形態によれば同期精度は、通信可能な端末装置1の台数の平方根に反比例することから、周期偏差は1/14に低減することができ、それぞれ±約1ppm、約1.4ppmとなる。したがって、周期偏差が要求される同期精度を下回っているため、ネットワークN1、N2は同期するとみなすことができる。
【0100】
また、本実施形態の通信システムが孤立して複数(例えば、2つ)存在する場合も同様である。例えば、要求される同期精度が100ppbとし、一方の通信システム内の端末装置1の平均的な周期偏差が±15ppm、他方の通信システム内の端末装置1の平均的な周期偏差が±12ppmとした場合、各通信システムが90000台の端末装置1を有するとき、周期偏差は1/300に低減することができる。したがって、それぞれ±50ppb、40ppbとなり、周期偏差が要求される同期精度を下回っているため、通信システム間で通信しなくても同期するとみなすことができる。
【0101】
[3.効果]
(1)本実施形態の通信装置1,2は、異なる種類の複数の通信装置1,2と通信する通信装置1,2であって、複数の相手方となる通信装置1,2の1台に対して情報を送信する際に、他の相手方となる通信装置1,2と通信するときに生じる通信装置1,2と他の通信装置1,2とのそれぞれの時間のずれを足し合わせて相手方となる複数の通信装置の1台に情報を送信するタイミングを算出する送信タイミング補正部40を備えるようにした。
【0102】
これにより、異なる種類の通信装置1,2のそれぞれと通信する際に生じる時間のずれが、それぞれ同じになるので、時間のずれを固定でき、通信相手の異なる種類の通信装置1,2を介して、同種の複数の通信装置1,2間で同期することができる。同種の通信装置1,2間が直接通信することなく同期させることができるので、同種の通信装置1,2間を直接同期させるために必要な設備や設計が不要となり、柔軟なシステムの構築及び運用が可能となる。
【0103】
例えば、本実施形態では、通信装置1を端末装置1とし、通信装置2を中継機2とした。端末装置1は、自身と異なる種類の複数の中継機2と通信し、送信タイミング補正部40により各中継機2への送信タイミングを補正するようにしたので、各中継機2との時間のずれを固定でき、各中継機2とのタイムフレームの位相差を保ったまま通信することができる。すなわち、端末装置1を介して各中継機2を間接的に同期することができる。
【0104】
また、中継機2は、自身と異なる種類の複数の端末装置1と通信し、送信タイミング補正部40により各端末装置1への送信タイミングを補正するようにしたので、各端末装置1との時間のずれを固定でき、各端末装置1のタイムフレームの位相差を保ったまま通信することができる。すなわち、中継機2を介して各端末装置1を間接的に同期することができる。
【0105】
このように、端末装置1と中継機2が情報通信する通常の仕組みを使用して同期を図ることができるため、サーバ3が同期に関与することはない。言い換えると、同期専用の通信ルートを設けたり、通信する情報に時刻情報を含めたりする必要もなく、任意の情報の通信と同時に同期を取ることができる。
また、サーバ3が同期に関与することもなく、かつ、特定の通信装置1,2が時刻同期の基準になることもないので、柔軟なシステムの構築及び運用が可能となる。
【0106】
(2)通信相手となる各通信装置1,2に対する送信時刻を検出する送信時刻検出部35と、通信相手となる各通信装置1,2に対する受信時刻を検出する受信時刻検出部36と、受信時刻と送信時刻との差分から送受信時間間隔を算出する間隔算出部37と、通信相手の通信装置1,2に送信してから当該通信装置1,2から受信するまでの送受信予定時間間隔が通信相手となる通信装置1,2毎に予め記憶された記憶部38と、算出した送受信時間間隔と記憶部38の送受信予定時間間隔との差分を通信相手となる通信装置1,2毎に算出し、通信相手となる各通信装置1,2の時間のずれを求めるずれ算出部39と、を備えるようにした。
【0107】
これにより、通信装置1,2による送信時刻及び受信時刻の実測により、通信装置1,2自身が他の種類の通信装置1,2との時間のずれを把握することができる。
【0108】
(3)送信タイミング補正部40は、ずれ算出部39により求めた時間のずれを正規化し、通信装置1,2が相手方の通信装置1,2に送信してから再び送信するまでの送信予定時間間隔に、他の相手方の通信装置1,2との正規化した時間のずれの和を加算することで、相手方となる複数の通信装置1,2の1台に情報を送信するタイミングを算出するようにした。これにより、送受信間隔の実測という最小限の実測により次に送信する際の送信タイミングを補正し、同種の通信装置1,2間を同期することができる。
【0109】
(4)相手方となる通信装置1,2と時分割多元接続方式で通信するようにした。これにより、多数の通信装置1,2が送信干渉することなく、事前のキャリアセンスも不要で効率良く通信することができる。
【0110】
(5)相手方となる通信装置1,2とISMバンド通信するようにした。これにより、免許不要で容易に汎用性の高い通信装置、通信システムを構築することができる。
【0111】
(6)本実施形態の通信システムは、複数の端末装置1と複数の中継機2とを有する。この通信システムは、サーバ3を更に有し、各中継機2は、通信可能範囲Rをそれぞれ有し、通信可能範囲Rが重複するように所定範囲に点在して設置され、端末装置1と通信して、中継機2の通信可能範囲R内の端末装置1を特定し、特定した端末装置1の情報をサーバ3に送信するようにした。これにより、サーバ3側で端末装置1の位置を把握することができる。
【0112】
[4.他の実施形態]
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0113】
上記実施形態では、送信時刻検出部35及び受信時刻検出部36は、送受信タイミングの検出の際、送受信のタイミングで時計34を参照するようにしたが、時計34が常時時刻情報を各検出部35、36に伝達し、送受信タイミングで受けた時刻情報を送受信時刻として採用するようにしても良い。
【0114】
上記実施形態では、送受信間隔記憶部381と受送信間隔記憶部382に分けて送受信予定時間間隔、受送信予定時間間隔を記憶させ、送信タイミング補正部40において、1送信間隔分の予定時間を算出したが、記憶部38が1送信間隔分の予定時間を予め記憶していても良い。