(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
排尿管理を目的とした従来のカテーテルとして、先端にバルーンを取り付けたいわゆるバルーンカテーテルが知られている。このバルーンカテーテルを尿道へ挿入するときは、バルーンは収縮される。また、バルーンカテーテルが膀胱に留置されているときには、バルーンカテーテルの後端から滅菌水をバルーン内に注入し、バルーンを膨張させる。これにより、バルーンカテーテルの先端が膀胱から脱落することが防止される。このバルーンカテーテルを長時間使用すると尿路感染症を起こす場合があり、また、使用者の行動を制限する。
【0003】
そこで、尿路感染を防止し、使用者の行動の自由をある程度保証することのできるネラトンカテーテルが開発された。このネラトンカテーテルは、先端にバルーンが取り付けられていないので、カテーテルを尿道に長時間留置しておくことはできない。使用者は、ネラトンカテーテルを消毒液の入ったケースに入れた状態で常時持ち運ぶ。使用者は、必要に応じて、ネラトンカテーテルをケースから取り出し、自分で尿道から膀胱まで挿入して排尿をする。
【0004】
このネラトンカテーテルは、使い捨てのものが一般的であるので、必要な数のネラトンカテーテルを常時持ち運ばなければならず、不便である。また、使い捨てのネラトンカテーテルでは、廃棄数量が多くなるという問題がある。そこで、従来のバルーンカテーテルが有する留置機能と、従来のバルーンなしカテーテル(ネラトンカテーテル)が有する自己導尿機能とを兼ね備えた間欠尿道留置カテーテルセットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の間欠尿道留置カテーテルセットは、消毒することで複数回使用することができるので、上記の使い捨てのネラトンカテーテルに比べて、廃棄数量を低減することができる。一方で、この間欠尿道留置カテーテルセットは、所定期間使用した後は廃棄される。
【0007】
間欠尿道留置カテーテルセットの使用のランニングコストを低減するためには、間欠尿道留置カテーテルセットのうち、必要な部分のみ交換可能なことが好ましい。しかしながら、特許文献1の間欠尿道留置カテーテルセットは部分的な交換をすることを前提としたものではない。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、尿道留置カテーテルを部分的に交換できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のバルーンカテーテル用ユニットの一形態は、第1導尿通路を有する導尿管と、バルーンを膨張又は収縮させるための流体が通過する第1通路を有する分岐管と、を有するバルーンカテーテル用管路と、一端が前記第1導尿通路又は前記第1通路に接続されるように構成される接続管と、を有する。
【0010】
本発明のバルーンカテーテル用ユニットの一形態において、バルーンカテーテル用ユニットは、バルーンカテーテルを挿入するための挿入部と前記挿入部と連通する第2導尿通路及び第2通路とを有するジョイントを有し、前記接続管は、他端が前記第2導尿通路又は前記第2通路に接続される。
【0011】
本発明のバルーンカテーテル用ユニットの一形態において、前記バルーンカテーテル用管路は、前記第1導尿通路と前記第1通路とが合流する空間を形成するファネル部を有し、前記ジョイントは、前記ファネル部に嵌挿されるように構成され、前記接続管は、前記第1導尿通路又は前記第1通路を前記空間から分離するように構成される。
【0012】
本発明の尿道留置バルーンカテーテルの一形態は、上記バルーンカテーテル用ユニットと、前記第1導尿通路と流体連通する第3導尿通路と、前記第1通路と流体連通する第3通路と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、尿道留置カテーテルを部分的に交換することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る尿道留置バルーンカテーテルの全体概略図である。図示のように、尿道留置バルーンカテーテルは、バルーンカテーテル用管路10と、接続管30と、ジョイント40と、バルーンカテーテル50と、ケース60と、を有する。バルーンカテーテル用管路10は、ジョイント40及び接続管30を介してバルーンカテーテル50と流体連通する。ジョイント40は、バルーンカテーテル50をバルーンカテーテル用管路10に接続するための部材である。ケース60は、内部に消毒液を貯留することができる。バルーンカテーテル50は、使用された後、消毒液に浸されて消毒される。
【0017】
この尿道留置バルーンカテーテルは、排尿時のみ尿道に留置して、間欠的に使用してもよいし、例えば1か月程度の長期間にわたって尿道に留置して使用してもよい。
【0018】
本実施形態では、バルーンカテーテル用管路10と、接続管30と、ジョイント40とによってバルーンカテーテル用ユニットが構成される。本実施形態に係る尿道留置バルーンカテーテルは、所定期間使用された後、バルーンカテーテル50のみが交換され、バルーンカテーテル用ユニットは長期間繰り返して使用することができる。または、バルーンカテーテル50とジョイント40を同時に交換し、バルーンカテーテル用管路10及び接続管30を長期間繰り返して使用するようにしてもよい。以下、バルーンカテーテル用管路10と、接続管30と、ジョイント40について詳細に説明する。
【0019】
図2は、バルーンカテーテル用管路10の概略断面図である。バルーンカテーテル用管路10は、第1導尿通路14を有する導尿管13と、第1通路12を有する分岐管11とを有する。使用者が尿道留置バルーンカテーテルを使用したとき、第1導尿通路14には尿が通過する。また、バルーンカテーテル50のバルーンが膨張又は収縮するときに、第1通路12内を滅菌水やエア等の流体が移動する。
【0020】
分岐管11の一端には、滅菌水又はエアを貯留するリザーバを接続するためのリザーバ接続部17が形成される。導尿管13の一端には、排尿部18が形成される。この排尿部18には、例えば特許公開平9−206370号公報に開示される人体留置医療器具用キャップを接続することができる。
【0021】
分岐管11及び導尿管13の他端には、ファネル部15が形成される。ファネル部15は、分岐管11及び導尿管13から延在する略円筒状の部材である。ファネル部15は、第1導尿通路14と第1通路12とが合流する空間19を形成する。即ち、ファネル部15によって形成される空間19は、第1導尿通路14及び第1通路12と流体連通する。
【0022】
バルーンカテーテル用管路10の外周部には、略円筒状の嵌合部16が形成される。嵌合部16には、
図1に示したケース60の開口部が嵌合される。言い換えれば、ケース60の開口部は、バルーンカテーテル用管路10の嵌合部16により閉止され、ケース60内部の消毒液が外部に流出することが抑制される。
【0023】
図3は、接続管30の概略部分断面図である。接続管30は、第1導尿通路14(
図2参照)に接続される第1端部31と、ジョイント40の後述する第2導尿通路41(
図4参照)に接続される第2端部32とを有する。接続管30は、軸方向(長手方向)の略中間部にフランジ34を有する。接続管30を導尿管13(
図2参照)に挿入したときに、導尿管13の端部がフランジ34に当接する。これにより、接続管30が導尿管13の内部に入りすぎることが防止される。
【0024】
接続管30の内部には、管路33が形成される。接続管30の第1端部31が第1導尿通路14(
図2参照)に接続され、第2端部32が第2導尿通路41(
図4参照)に接続されたとき、管路33を介して、第1導尿通路14が第2導尿通路41と流体連通する。
【0025】
図4は、ジョイント40の概略断面図である。ジョイント40は、管状の部材であり、第1端部44がバルーンカテーテル用管路10のファネル部15(
図2参照)に嵌挿される。ジョイント40は、バルーンカテーテルの端部が挿入される挿入部43と、挿入部43に連通する第2導尿通路41及び第2通路42と、を有する。挿入部43は、第2端部45側に形成され、第2導尿通路41及び第2通路42は第1端部44側に形成される。第2導尿通路41には、
図3に示した接続管30の第2端部32が接続され、第2導尿通路41と管路33とが流体連通する。
【0026】
ジョイント40は、例えばプラスチックなどの樹脂から形成され、所定の剛性を有する。これにより、バルーンカテーテル用管路10のファネル部15に、ジョイント40の第1端部44を嵌挿しやすくなる。
【0027】
図5は、バルーンカテーテル用ユニットの概略断面図である。
図5に示すように、バルーンカテーテル用管路10の第1導尿通路14に、接続管30の第1端部31が接続される。接続管30の第2端部32は、ジョイント40の第2導尿通路41と接続される。ジョイント40の第1端部44は、ファネル部15に嵌挿される。
【0028】
上述したように、ファネル部15の空間19には、第1導尿通路14及び第1通路12が流体連通している。しかしながら、接続管30の第1端部31が第1導尿通路14に接続されると、第1導尿通路14は接続管30の管路33(
図3参照)と流体連通するので、第1導尿通路14はファネル部15の空間19とは連通しなくなる。したがって、接続管30は、第1端部31を第1導尿通路14に接続することにより、第1導尿通路14をファネル部15の空間19から分離することができる。
【0029】
加えて、接続管30の第2端部32がジョイント40の第2導尿通路41と接続されているので、第2導尿通路41もファネル部15の空間19から分離される。したがって、第1導尿通路14が管路33(
図3参照)を介して第2導尿通路41と流体連通するので、第1通路12及び第2通路42とは独立した導尿通路が画定される。
【0030】
図5に示す状態において、ファネル部15の空間19は、第1通路12及び第2通路42と流体連通する。したがって、ファネル部15の空間19を介して、第1通路12は第2通路42と連通する。
【0031】
図6は、ジョイント40とバルーンカテーテル50を接続した状態を示す概略断面図である。バルーンカテーテル50は、第3導尿通路51と、第3通路52と、第3導尿通路51と連通する孔53と、第3通路52と連通するバルーン54と、を有する。孔53は、バルーンカテーテル50の先端に形成される。
【0032】
図示のように、バルーンカテーテル50の一端がジョイント40の挿入部43に挿入されたとき、第3導尿通路51及び第3通路52がそれぞれ第2導尿通路41及び第2通路42と流体連通する。したがって、第3導尿通路51は、第2導尿通路41を介して、
図2に示した第1導尿通路14と流体連通する。同様に、第3通路52は、第2通路42を介して、
図2に示した第1通路12と流体連通する。
【0033】
バルーンカテーテル50を使用者の尿道に挿入すると、孔53は使用者の膀胱と連通する。膀胱内の尿は、孔53と、第3導尿通路51と、第2導尿通路41と、接続管30と、第1導尿通路14とを通じて、排尿部18から排出される(
図5及び
図6参照)。
【0034】
また、バルーンカテーテル50を使用者の尿道に留置するときは、リザーバ接続部17に接続されるリザーバから滅菌水又はエアを、第1通路12、ファネル部15、第2通路42、第3通路52を介して、バルーン54に供給する(
図5及び
図6参照)。これにより、バルーン54が膨張する。バルーン54が収縮するときは、同様の経路を通じて滅菌水又はエアがリザーバに戻る。これにより、バルーンカテーテル50を使用者の尿道から除去することができる。
【0035】
バルーンカテーテル50は、その表面を親水性ポリマー等の親水性材料でコーティングされていてもよい。この場合、バルーンカテーテル50は、使用者の尿道に挿入しやすくなるので、使用者の尿道を傷つけることを抑制することができる。したがって、使用者の尿道が傷つくことによる尿路感染を防止することができる。
【0036】
また、バルーンカテーテル50は、その表面を二酸化チタン等の光触媒材料でコーティングされていてもよい。この場合、バルーンカテーテル50が紫外線又は可視光に曝されることにより、カテーテル表面を殺菌することができる。
【0037】
また、バルーンカテーテル50は、その表面を抗菌性材料でコーティングされていてもよい。この場合、バルーンカテーテル50が抗菌作用を有することができる。
【0038】
また、バルーンカテーテル50は、予め滅菌されたものをジョイント40に接続して、使用することもできる。この場合、バルーンカテーテル50を使用前に消毒する必要がなく、すぐに使用することができる。また、このバルーンカテーテル50を使い捨てとして使用すれば、所定時間使用した後は廃棄される。したがって、消毒処理が不要になるので、
図1に示したケース60が不要になる。
【0039】
バルーンカテーテル50の孔53は、例えばバルーンカテーテル50の側面に形成されていてもよいし、孔53の穿孔方向がバルーンカテーテル50の流路方向を向くように先端部に形成されていてもよい。孔53がバルーンカテーテル50の流路方向を向くように先端部に形成されている場合は、バルーンカテーテル50を洗浄する際に、バルーンカテーテル50の先端部に汚れが溜まることを抑制することができる。
【0040】
バルーンカテーテル50のバルーン54が、滅菌水ではなくエアで膨張又は収縮するように構成される場合、バルーン54は、ガスバリア性を有する材料で形成されてもよい。
【0041】
以上で説明したように、本実施形態の尿道留置バルーンカテーテルは、接続管30を有するので、バルーンカテーテル用管路10とバルーンカテーテル50とを着脱することができる。したがって、尿道留置バルーンカテーテルを複数回使用することにより、バルーンカテーテル50が交換時期に達したとき、バルーンカテーテル50のみを交換することができる。ひいては、使用者の自己導尿に係るランニングコストを低減することができる。また、バルーンカテーテル50のみを短期間で交換すれば、より衛生的な自己導尿を行うことができる。
【0042】
また、接続管30の第1端部31が第1導尿通路14に接続されるので、第2端部32がバルーンカテーテル50と流体連通することで、第1導尿通路14がバルーンカテーテル50と流体連通することができる。
【0043】
本実施形態では、ジョイント40が設けられ、接続管30の第2端部32がジョイント40の第2導尿通路41に接続される。これにより、接続管30を介して第1導尿通路14が第2導尿通路41と流体連通することができる。
【0044】
本実施形態では、接続管30が第1導尿通路14に接続されることにより、第1導尿通路14がファネル部15の空間19から分離される。これにより、第1導尿通路14を流れる尿と、第1通路12を流れる滅菌水又はエアとが混合されることを防止することができる。
【0045】
本実施形態では、ジョイント40がファネル部15に嵌挿される。これにより、ファネル部15の空間19を介して、第1通路12が第2通路42と連通することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、接続管30の第1端部31が第1導尿通路14に接続されるものとして説明されているが、第1端部31は第1通路12に接続されてもよい。この場合、接続管30の第2端部32は、ジョイント40の第2通路42に接続されることになる。
【0047】
また、接続管30を2つ用意し、それぞれの接続管30の第1端部31を第1導尿通路14と第1通路12に接続してもよい。この場合、第1導尿通路14と第1通路12は、それぞれ接続管30を介して第2導尿通路41と第2通路42と連通するので、ファネル部15が不要になる。
【0048】
また、本実施形態では、ジョイント40を有するものとして説明されているが、ジョイント40を設けずに、接続管30の第2端部32がバルーンカテーテル50の第3導尿通路51又は第3通路52に直接接続されてもよい。この場合、バルーンカテーテル50の端部がファネル部15に直接嵌挿されることになる。
【0049】
また、本実施形態では、ファネル部15はバルーンカテーテル用管路10に設けられているが、これに代えてジョイント40にファネル部15が設けられてもよい。この場合、ジョイント40のファネル部15に、バルーンカテーテル用管路10が嵌挿されることになる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲及び明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、又は省略が可能である。