(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記植込型医療機器の制御モジュールおよび前記外部プロセッサのうちの少なくとも1つは、ベクトル選択パラメータを前記複数の感知ベクトルのそれぞれに対して前記心臓電気信号から決定するように構成され、
前記感知ベクトルデータの少なくとも一部分の表示は、前記ベクトル選択パラメータのプロットを含み、そして、前記感知ベクトル受容性基準の表示は、前記プロットの領域を含み、
前記ベクトル選択パラメータが、R波振幅、P波振幅、T波振幅、QRS信号幅、またはR波勾配を含む、
請求項4に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示に従う植込型医療機器システムは、心臓信号感知ベクトルデータを決定し、そして、グラフィカルユーザインタフェースの部分として感知ベクトル受容性基準と共に少なくとも感知ベクトルデータの一部分の表示を生成する。グラフィカルユーザインタフェースは、臨床医または別のユーザによる感知ベクトルデータおよび受容性基準の理解を促進し、そして、心臓律動を検出および識別するために心臓電気信号を監視するためのIMDによって使用される感知ベクトルを選択およびプログラミングすることを容易にする。
【0012】
図1および
図2は、患者12に植え込まれた状態で示された、本明細書で説明される技術が有効に実行されてもよいIMDシステム10の概念図である。
図1に示すように、IMDシステム10は、IMD14および外部機器40を含む。IMD14は、患者12の胸郭外側、例えば、噴門切痕前方の皮下または筋肉下に植え込まれてもよい。IMD14は、IMD14の電子回路を封入するためのハウジング15を含む。
【0013】
感知および電気除細動/除細動療法送達リード18が、IMD14に電気的に結合され、患者12の広背筋の後方場所の中に、例えば、それの一部分に隣接して皮下に貫通される。リード18は、IMD14の内側インプラントポケットから患者の背中の側方および後方に心臓16の大体反対側の場所まで皮下を貫通されることにより、心臓16は、IMD14と、リード18の遠位除細動電極24および遠位感知電極26との間に配設される。
【0014】
皮下リード18は、遠位除細動コイル電極24を含み、この電極は、悪性頻脈性不整脈を停止させるために心臓16に高電圧電気除細動または除細動ショックを送達するためのコイル電極または別の比較的大きい表面積の電極であってもよい。皮下リード18は、心臓16を監視するために、心臓電気信号、例えば、皮下心電図(ECG)信号を感知するために使用される遠位感知電極26を更に含んでもよい。遠位感知電極26は、リング、チップ電極、または除細動電極24よりも比較的小さい表面積の別の電極であってもよい。
【0015】
電極24および26は、細長絶縁可撓性リード本体17(
図2に示す)によって保持される。リード本体17は、非導電性材料、例えば、シリコーン、ポリウレタン、フルオロポリマー、若しくはその混合物、または別の適切な材料から形成されてもよく、そして、1つまたは複数の電気導体がその中で延在する1つまたは複数の管空を形成するように成形される。電気導体(図示せず)は、各遠位電極24および26のそれぞれから近位コネクタピン27まで延在する。コネクタピン27は、時には「コネクタブロック」または「ヘッダ」とも呼ばれるコネクタアセンブリ25を介してIMD14に接続するように適合される。コネクタアセンブリ25は、コネクタピン27および必要な電気コネクタを受け取るためのコネクタボアと、電極24および26をIMDハウジング15内部に封入されたIMD回路に電気的に結合するためにIMDハウジング15を横断する貫通接続と、を含む。電気導体は、療法をIMD14内部の療法モジュールから電極24まで送信し、感知された電気信号を感知電極26からIMD14内部の検出モジュールまで送信する。リード18が単一の感知電極26を保持した状態で示されるが、リード18は、別の例では、心臓電気信号をIMD14内部の感知モジュールに提供するために2つ以上の感知電極によって構成されてもよい。感知電極は、リード本体17の任意の部分に沿って、すなわち、除細動電極24よりもより近位に、および/または除細動電極24の遠位に保持されてもよい。
【0016】
更に、1つまたは複数の電極が、IMDハウジング15の外面に沿って配置されてもよい。示している例では、集合的に電極28とも呼ばれる、3つのハウジングに拠点を置く電極28A、28B、28Cが、また、ハウジング15に沿って提供される。ハウジングに拠点を置く電極は、米国特許第6,522,915号(Ceballosら)に全体として開示されるような囲い板を使用するハウジング15に沿って配置されてもよい。別の例では、ハウジング15の全部または一部分は、時には「缶電極」と呼ばれるハウジング電極を画定してもよく、その電極は、心臓療法を送達するか、またはECG信号を感知するために、遠位電極24または26との組合せで使用されてもよい。ハウジング15が電極として機能し、そして、ハウジングに拠点を置く電極28が存在する場合、ハウジング15は、電極28から電気的に絶縁される。本明細書で更に詳細に説明するように、ハウジング15は、1つまたは複数のプロセッサ、メモリ素子、送信機、受信機、センサ、感知回路、療法回路、および別の適切な構成要素を封入してもよい。
【0017】
電極28および遠位感知電極26は、心臓電気信号を感知するために、任意の組合せで選択されてもよい。3つのハウジングに拠点を置く感知ベクトルは、電極28Aと28B、電極28Aと28C、および28Bと28Cのそれぞれの組合せを使用して利用できる。電極28は、遠位感知電極26と別個に、またはそれとの任意の組合せで選択されてもよい。一例では、少なくとも4つの異なる感知ベクトルが、3つのハウジングに拠点を置く電極組合せ、およびハウジングに拠点を置く電極28A、電極28Bまたは28Cと遠位感知電極26の1つの組合せを使用して、感知ベクトル信号品質について試験される。別の例では、ハウジングに拠点を置く電極28のそれぞれの1つを使用する追加のベクトルが、6つの感知ベクトル(3つのハウジングに拠点を置く感知ベクトルおよび遠位感知電極26を用いる3つのベクトル)と1つのハウジングに拠点を置く電極28A、電極28Bおよび28Cの合計について1つずつ遠位感知電極26との組合せで試験されてもよい。更に別の例では、感知ベクトル信号品質について試験される追加の感知ベクトルは、除細動電極24を使用してもよい。IMD14は、ユーザへの視覚的表現のための感知ベクトルデータを外部機器40に提供するために、感知試験中に、感知ベクトルデータを取得する。
【0018】
図1に示すリードおよび電極構成は、皮下ECG信号を感知すること、および電気除細動/除細動ショックを送達することのために使用されてもよい電極の1つの配列を示す。別の例では、1つまたは複数のハウジングに拠点を置く電極、および/またはIMD14から離れる方に延在する1つまたは複数のリードによって保持される1つまたは複数のリードに拠点を置く電極が提供されて、多重の選択可能ECG感知ベクトルを提供するための様々な組合せでの使用に利用可能であってもよい。そのような構成は、皮膚、筋肉、または患者体内の別の組織層の下に植え込まれた非経静脈的な心臓外電極を使用してECG信号の感知を可能にする。
【0019】
更に
図1を参照すると、外部機器40が、RF通信リンク42によるIMD14と遠隔通信する状態で示される。外部機器40は、「プログラマ」としばしば呼ばれるが、その理由は、それが、IMD14において動作パラメータをプログラミングするために、医師、技術者、看護師、臨床医または別の有資格者によって一般的に使用されるからである。外部機器40は、診療所、病院、または別の医療施設に設置されてもよい。外部機器40は、あるいは、家庭用モニター、または医療施設、患者の家庭若しくは別の場所で使用されてもよい手持ち式機器として具現化されてもよい。動作パラメータ、例えば、感知および療法送達制御パラメータが、外部機器40を使用してIMD14の中にプログラミングされてもよい。
【0020】
外部機器40は、プロセッサ52および関連メモリ53と、ユーザディスプレイ54と、ユーザインタフェース56と、テレメトリモジュール58と、を含む。プロセッサ52は、外部機器動作を制御し、そして、データおよびIMD14から受け取られた信号を処理する。本明細書で開示される技術によると、プロセッサ52は、IMD14によって取得され、IMD14からテレメトリモジュール58まで送信される感知ベクトルデータを受信する。プロセッサ52は、ユーザに表示するためにメモリ53に記憶されてもよい感知ベクトル受容性基準と共に少なくとも感知ベクトルデータの一部分をユーザディスプレイ54に提供する。
【0021】
プロセッサ52は、データをユーザディスプレイ54に提供する前に、IMD14から受信された感知ベクトルデータを分析してもよい。一部の例では、プロセッサ52は、感知ベクトルデータを生の心臓電気信号として受信する。プロセッサ52は、感知ベクトル選択パラメータを感知ベクトルデータから決定することと、IMD14によって試験されたそれぞれの感知ベクトルについて決定された感知ベクトル選択パラメータをユーザディスプレイ54に提供することと、を行うように構成されてもよい。別の例では、IMD14は、IMD14によって実行される試験中、心臓電気信号から感知ベクトル選択パラメータを決定する。IMD14から外部機器40まで送信される感知ベクトルデータは、感知ベクトル選択パラメータを含む。プロセッサ52は、感知ベクトルデータを受け取り、そして、少なくとも感知ベクトル選択パラメータをユーザディスプレイ54に提供する。IMD14によって受信される心臓電気信号から感知ベクトル選択パラメータを決定するように構成されたプロセッサは、IMD14に含まれた植込み型プロセッサであるか、外部機器40に含まれた外部プロセッサ52か、または両方の組合せであってもよい。
【0022】
ユーザディスプレイ54は、プロセッサ52から受信した感知ベクトルデータおよび感知ベクトル受容性基準についての表示を提供する。表示は、外部機器40と相互に作用するユーザによって1つまたは複数の感知ベクトルをプログラミングすることを容易にするグラフィカルユーザインタフェースの部分であってもよい。外部機器40は、IMD動作およびプログラミングされたパラメータ、および問合せセッション中にIMD14から読み出されるECG信号または別の生理的データを再検討するために、IMD機能に関する別のデータおよび情報をユーザに表示してもよい。ユーザインタフェース56は、ユーザが外部機器40と相互に作用するのを可能にするためのマウス、タッチスクリーン、キーボード、および/またはキーパッドを含むことにより、IMD14への所望の感知および療法送達管理パラメータを選択およびプログラミングするために、データをIMD14から読み出すおよび/またはデータをIMD14に送信するためのIMD14とのテレメトリセッションを開始する。
【0023】
テレメトリモジュール58は、IMD14に含まれる植込型テレメトリモジュールと双方向通信するように構成される。テレメトリモジュール58は、IMD機能に関するデータを、通信リンク42を介して送信および受信するために、プロセッサ52と共に動作するように構成される。通信リンク42は、高周波(RF)リンク、例えば、BLUETOOTH(登録商標)、Wi−Fi、医療用植込型通信サービス(Medical Implant Communication Service(MICS))、または別のRFバンド幅を使用して、IMD14と外部機器40との間で確立されてもよい。一部の例では、外部機器40は、通信リンクを確立および維持するためにIMD14近傍に設置されたプログラミングヘッドを含んでもよく、そして、別の例では、外部機器40およびIMD14は、距離テレメトリアルゴリズム、およびプログラミングヘッドの使用を必要とせず、かつ通信リンクを維持するためのユーザ介入を必要としない回路を使用して通信するように構成されてもよい。
【0024】
外部機器40が、患者12の遠隔管理を可能にするための遠隔データベースまたはコンピュータにデータを転送するために、テレメトリモジュール58を介して通信ネットワークに有線または無線接続されることが意図される。遠隔患者管理システムは、臨床医が感知ベクトルデータを再検討すること、および、自動的に推奨された感知ベクトルをプログラミングすること、または感知ベクトルデータの視覚的表現を検分した後にIMD14においてプログラミングされるべき感知ベクトルを手動で選択することを許可することを可能にするために本開示技術を利用するように構成されてもよい。例えば、感知ベクトルデータは、診療所または別の専門家総合施設で検分するために、IMD14から外部機器40まで、そして、外部機器40から患者から遠隔にあるコンピュータまたはデータベースまで転送されてもよい。臨床医または別のユーザは、次いで、感知ベクトルおよび心臓信号を感知するために使用されるIMD14の別の制御パラメータをプログラミングすること、および、通信ネットワークおよび外部機器40を介して療法を送達することを許可してもよい。遠隔患者監視および機器プログラミングを可能にする遠隔患者管理システムの概説および例に関して、本願発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,599,250号(Webbら)、同6,442,433号(Linbergら)、同6,418,346号(Nelsonら)号、および同6,480,745号(Nelsonら)が参照される。
【0025】
図3は、除細動リード118に連結されたIMD114を含む別の例のIMDシステム100についての概念図である。IMD114は、上記のように、通信リンク42を介して外部機器40との双方向通信するように構成される。除細動リード118は、IMD114に接続された近位端、および1つまたは複数の電極を含む遠位端を含む。除細動リード118は、皮下に、例えば、皮膚と胸郭32および/または胸骨22との間の組織および/または筋肉に植え込まれた状態で
図3に示される。除細動リード118は、IMD114から剣状突起20に向かって皮下に延在する。剣状突起20近くの場所において、除細動リード118は、曲がるかまたは方向転換して胸骨22に概ね平行に皮下上部に延在する。
図3の例では、胸骨22から側方にずれており、そして、それに概ね平行に延在するように示されているけれども、除細動リード118は、胸骨22からずれているが、胸骨22に平行でない状態で胸骨22の上方に植え込まれてもよい(例えば、リード118の近位端または遠位端のいずれかで胸骨22から側方に角度をなしている)。
【0026】
別の例では、リード118は、別の血管外の場所に植え込まれてもよい。例えば、リード118が、胸骨下の場所、例えば、胸郭32および/または胸骨22と心臓26との間に少なくとも部分的に植え込まれてもよい。1つのそのような構成では、リード118の近位部分が、IMD114から胸骨22に向かって皮下に延在し、リード118の遠位部分が、肋膜によって側方、心膜によって後方、および胸骨22によって前方が拘束された前縦隔の胸骨22の下または下方の上部に延在する。一例では、リード118の遠位部分は、疎性結合組織および/または前縦隔の胸骨下の筋肉組織の概ね内部の胸骨22の後方側に沿って延在する。リード118は、別の胸腔内の場所、例えば、間隙、組織、または心臓16の心膜若しくは別の部分に隣接するが付着されていないおよび胸骨22または胸郭32よりも上方でない外周部の周りの別の解剖学的特徴を含む別の血管外、心膜外の場所に少なくとも部分的に植え込まれてもよい。
【0027】
別の例では、IMD114は、右胸の皮下ポケットに植え込まれてもよい。この例では、除細動リード118は、機器から胸骨22の胸骨柄に向かって皮下に延在してもよく、そして、胸骨22と概ね平行な胸骨22の胸骨柄から皮下にまたは下方の胸骨下に曲がるか、または方向転換して延在してもよい。
【0028】
除細動リード118は、リード本体117の全長のうちの遠位部分に沿って位置する電極124、128および130を保持する細長リード本体117を含む。リード本体117は、それぞれの電極124、128および130からIMD114に連結された近位コネクタ(図示せず)を通って延在する1つまたは複数の細長電気導体(図示せず)を絶縁する。導体は、リード118の近位コネクタを受け取るためのコネクタボアを含むIMDコネクタアセンブリ125の結線を介してIMD回路、例えば、療法モジュールまたは検出モジュールに電気的に結合される。
【0029】
除細動リード118は、除細動リード118の遠位部分に沿った細長コイル電極であってもよい除細動電極124を含むように
図3に示される。除細動電極124は、IMD114が植え込まれると、除細動電極124とIMD114のハウジングまたは缶電極115との間の療法ベクトルが、心臓26の1つ以上の心室を概ね通るかまたは横切るようにリード118上に位置する。
【0030】
除細動リード118は、また、除細動リード116の遠位部分の方に配置されてもよい1つまたは複数の感知電極128および130を含む。
図3に示す例では、感知電極128および130は、除細動電極124によって互いに分離される。言い換えると、感知電極128は、除細動電極124の遠位に位置し、感知電極130は、除細動電極124に近位にある。IMDシステム100は、電極128および130と、IMD114のハウジングまたは缶電極115との組合せを含む感知ベクトルのうちの1つまたは複数のものを介して心臓26の電気的活性を感知してもよい。例えば、IMD114は、電極128と130との間の感知ベクトル、電極128と導電性ハウジングまたは缶電極115との間の感知ベクトル、電極130と導電性ハウジングまたは缶電極115との間の感知ベクトル、または、電極128、130とハウジングまたは缶電極115との任意の組合せ全体でECG信号を受信してもよい。一部の例では、IMD114は、除細動電極124を含む感知ベクトルを使用して心臓電気信号を感知さえしてもよい。
【0031】
IMD114は、頻脈性不整脈を検出するために上述の感知ベクトルのうちの1つまたは複数から心臓電気信号を受信する。IMD114は、心室性頻拍(VT)または心室細動(VF)の検出に応じて、除細動電極124を介して1つまたは複数の電気除細動または除細動ショック送達してもよい。IMD114は、また、電極124、128、130のうちの任意のものおよびハウジング電極115を使用する電気除細動または除細動ショックの後に、ペーシング療法、例えば、ポストショックペーシング療法を提供してもよい。
【0032】
IMD114は、本明細書においてハウジング電極または缶電極115とも呼ばれるハウジング115を含み、そのハウジングは、IMD114の内蔵電子部品を保護するハーメチックシールを形成する。ハウジング115は、電極として機能する導電性材料、例えば、チタン、チタン合金、または別の導電性材料から形成されてもよい。ハウジング115は、導電性ハウジングまたはその一部分が、感知または除細動ショック送達中の未分化または接地電極として使用されるべき内部回路に連結されてもよいので、「缶電極」として機能してもよい。IMD114は、また、電気貫通接続を含むコネクタアセンブリ125を含み、その電気貫通接続を通って、電気接続がリード118内部の電気導体とハウジング115内部に含まれる電子部品との間に形成される。
【0033】
本明細書で開示される技術は、1つまたは複数のハウジングに拠点を置く電極、および/または、多重の選択可能感知ベクトル全部での心臓電気信号の感知を可能にするための1つまたは複数のリードに拠点を置く電極を含む多数のIMDおよび電極構成に実装されてもよい。IMDシステム10および100は、リード18および118が、血管外場所に、すなわち患者12の血管および心臓16の外部に配置される非経静脈的リードであるので、血管外IMDシステムと呼ばれる。
【0034】
IMD14および114並びに関連リード18および118が、それぞれ、患者12の皮膚と筋肉層との間に位置してもよい一方で、IMD14および114は、別の例では、噴門上部のリードまたは経静脈的なリード、例えば、心臓内のリードまたは冠静脈洞リードに連結されるように構成されてもよいことが理解される。例えば、IMDシステムとして、電極を右心房、左心房、右心室および/または左心室の中にまたはそれに沿って配置するために使用される1つまたは複数のリードを使用して、心臓ペーシングおよび/または電気除細動/除細動療法を送達するように構成されたIMDが挙げられてもよい。本明細書で開示される技術に従って動作するIMDシステムに含まれてもよい経静脈リードおよびIMDの例は、本願発明の譲受人に譲渡された米国特許第8,355,784号(Rochatら)において全体として開示される。
【0035】
IMDシステム10およびIMDシステム110によって使用される感知ベクトルは、所定の感知ベクトルにおいて選択された電極全体でECG信号を受信するために使用される。経静脈または噴門上部電極が使用されるとき、感知される心臓電気信号は、心臓電位図(EGM)信号と呼ばれる。本明細書で開示される技術は、ECGおよびEGM信号、並びに外側皮膚または表面電極を使用して取得された皮膚または外部ECG信号さえ含む任意の心臓電気信号と関連して使用されてもよいことが理解されよう。
【0036】
図4は、一実施形態に従うIMD14の回路図である。IMD14に含まれる回路の以下の説明は、
図3に示すIMD114にも同様に関連する。ハウジング15内部に封入された電子回路は、ソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを含み、これらは、協力して1つまたは複数のECG信号を監視し、電気除細動−除細動ショックが必要なときを決定し、処方された電気除細動−除細動療法を送達する。一部の例では、IMD14は、リード、例えば、リード16に連結され、心臓ペーシングパルスを送達するために患者の心臓16に対して影響を及ぼす関係に配置された電極、例えば、電極24および26を保持し、それにより、低電位ペーシングパルスおよび高電圧電気除細動−除細動ショックパルスを送達する能力を有してもよい。
【0037】
IMD14は、制御モジュール80と、関連メモリ82と、療法送達モジュール84と、電気感知モジュール86と、テレメトリモジュール88と、を含む。電源90は、必要に応じて、モジュール80、82、84、86および88のそれぞれを含むIMD14の回路に電力を提供する。電源90は、1つまたは複数のエネルギー蓄積装置、例えば、1つまたは複数の充電式または非充電式電池を含んでもよい。電源90と様々なIMDモジュール80、82、84、86および88との間の接続は、明確のために
図4には示さない。
【0038】
図4に示すモジュールは、IMD14に含まれてもよい機能を表し、そして、本明細書のIMD14によるものと考えられる機能を生成することができるアナログおよび/またはデジタル回路を実装する任意の別個のおよび/または統合された電子回路構成要素を含んでもよい。例えば、モジュールは、アナログ回路、例えば、増幅回路、フィルタリング回路、および/または別の信号整形回路を含んでもよい。モジュールは、また、デジタル変換器、組合せまたは連続の論理回路、集積回路、プロセッサ(共有、専用、または集合)および、1つまたは複数のソフトウェア若しくはファームウェアプログラムを実行するメモリ、特定用途向け集積回路(ASIC)、メモリ素子、状態機械などを含む。本明細書で用いられるとき、「モジュール」という用語は、説明される機能を提供する任意の電子回路または好適な構成要素を指す。
【0039】
メモリ82は、任意の揮発性、不揮発性、磁気、または電気的非一過性コンピュータ可読記憶媒体、例えば、ランダムアクセスメモリー(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去書込み可能ROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、または任意の別のメモリ素子を含んでもよい。更に、メモリ82は、1つまたは複数の処理回路によって実行されると、制御モジュール80または別のIMDモジュールにIMD14によるものと考えられる様々な機能を実行させる命令を保存する非一過性コンピュータ可読媒体を含んでもよい。唯一の例外は一過性伝搬信号であるが、命令を保存する非一過性のコンピュータ可読媒体は、上記の媒体のうちの任意のものを含んでもよい。
【0040】
本明細書のモジュールのものと考えられる機能は、1つまたは複数のプロセッサ、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはその任意の組合せとして具現化されてもよい。モジュールとして異なる機構の描写は、異なる機能上の態様を強調することを目的とし、そのようなモジュールが別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを必ずしも意味するわけではない。むしろ、1つまたは複数のモジュールと関連する機能は、別個のハードウェアまたはソフトウェア構成要素によって実行されてもよいか、または共通のハードウェアまたはソフトウェア構成要素内部に統合されてもよい。
【0041】
制御モジュール80は、心臓電気的活性を感知し、心臓律動を検出し、そして、感知された信号に応じて心臓療法を生成するために、療法送達モジュール84および電気感知モジュール86と通信する。療法送達モジュール84および電気感知モジュール86は、電極24、26、28、および共通または接地電極として機能してもよいハウジング電極15に電気的に結合される。
【0042】
電気感知モジュール86は、電極24および28、一部の例ではハウジング電極15、および除細動電極26に選択的に連結されることにより、患者の心臓の電気的活性を監視する。感知モジュール86は、利用可能電極24、26、28および15から選択された1つまたは複数の感知ベクトルを選択的に監視することが可能である。例えば、感知モジュール86は、感知モジュール86に含まれる感知増幅器または別の感知回路に連結された電極24、26、28およびハウジング電極15のうちのいずれかを選択するためのスイッチング回路を含んでもよい。スイッチング回路は、スイッチアレイ、スイッチマトリクス、マルチプレクサ、または感知増幅器を選択された電極に選択的に連結することに適した任意の別の種類のスイッチング機器を含んでもよい。
【0043】
一部の例では、電気感知モジュール86は、電極24、26、28およびハウジング電極15から同時に選択された多重ECG感知ベクトルを感知するための多重感知チャネルを含む。例えば、電極28A、28B、および28Cのうちの1つと、電極26との間の感知ベクトルが、1つのチャネル上で第1の感知ベクトルを感知するように選択されてもよく、そして、少なくとも1つの追加の感知ベクトルが、電極26と対になった電極28A、28Bおよび28Cのうちのものとは別の1つと、別の感知チャネルに受信されるものとの間で選択されてもよい。それぞれの感知チャネルは、ECGを増幅およびフィルタリングすることにより、心臓イベント、例えば、R波を感知するために信号品質を改善するように構成されてもよい。
【0044】
感知モジュール86のそれぞれの感知チャネルは、選択された電極全体で発生させられたECG信号を受信するための感知増幅器を含んでもよい。感知チャネルは、感知イベント信号を制御モジュール80に渡す。例えば、受信されたECG信号が、一部の例での自動調整感知閾値であってもよいR波感知閾値を越えるとき、R波感知信号は、制御モジュール80に渡されてもよい。
【0045】
感知モジュール86は、それぞれの感知チャネルから制御モジュール80にデジタルECG信号を提供するためのアナログディジタル変換器を含んでもよい。1つの例では、2つの感知チャネルは、電極28A、28B、および28C並びに電極26のうちの任意の2つの間の第1の感知ベクトル、および電極28A、28Bおよび28C並びに電極26についての異なる1対から選択された第2の感知ベクトルからECGを受け取るように提供される。2つのECG信号は、感知モジュール86によってマルチビットデジタル信号に変換され、感知ベクトルデータを取得するために制御モジュール80に提供される。
【0046】
制御モジュール80は、上室性頻拍症(SVT)、VTおよびVFを検出および識別するための頻脈性不整脈検出器を含む。制御モジュール80は、時間間隔、例えば、RR間隔を測定する、および時間窓、例えば、信号解析窓を設定するための様々なタイマおよび/または計数器を含むタイミング回路を更に含んでもよい。感知モジュール86から受信されるR波感知信号のタイミングは、感知ベクトルデータを取得するために使用される心臓信号解析窓のために使用されてもよい。
【0047】
R波感知信号のタイミングは、患者の心臓律動を監視するために、制御モジュール80によってRR間隔を測定するように使用されてもよい。制御モジュール頻脈性不整脈検出器は、タイミング回路によって測定されたRR間隔を計数してもよく、そのタイミング回路は、心室性頻脈性不整脈を検出するために、心室拍動数を測定するか、または別の速度ベース若しくは間隔ベースの評価を実行するための様々な速度検出ゾーンの中にある。頻脈性不整脈を検出、識別、および処置するためにIMD14によって実行されてもよいアルゴリズムの例が、米国特許第5,354,316号(Keimel)、米国特許第5,545,186号(Olsonら)、米国特許第6,393,316号(Gillbergら)、米国特許第7,031,771号(Brownら)、米国特許第8,160,684号(Ghanemら)、および米国特許第8,437,842号(Zhangら)に全体として開示されている。
【0048】
療法送達モジュール84は、1つまたは複数のHV出力コンデンサ、および、一部の例では、低電位療法送達モジュールを含む高電圧(HV)療法送達モジュールを含んでもよい。悪性頻脈が検出されると、HVコンデンサは、HV充電回路によって事前にプログラミングされた電圧レベルまで充電される。制御モジュール80は、HVコンデンサがプログラミングされたショックエネルギーを送達することが必要な電圧に到達したことのフィードバック信号を療法送達モジュール84から検出すると、HVコンデンサの放電を始動させるために信号を印加する。このように、制御モジュール80は、療法送達モジュール84の高電圧出力回路の動作を制御することにより、除細動電極24およびハウジング電極15を使用して、高エネルギー電気除細動/除細動ショックを送達する。制御モジュール80は、療法送達モジュール84を制御して、R波同期ショックパルスを送達してもよい。
【0049】
実装された心臓監視アルゴリズムは、療法または患者12を監視するために概して必要な生理的信号を適用または保留することについての制御モジュール80による決定に寄与するために、心臓電気信号解析法を利用するだけでなく、例えば、血圧、組織酸素負荷、呼吸、患者活性、心音などのような補足センサ96を利用してもよいことに留意すべきである。
【0050】
IMDテレメトリモジュール88は、RF通信を使用して外部機器40(
図1に示す)と通信するための送受信器およびアンテナを含む。制御モジュール80の制御下で、テレメトリモジュール88は、ダウンリンクテレメトリを外部機器40から受信し、そして、アップリンクテレメトリをそれに送信してもよい。VTまたはVFの検出、および電気除細動または除細動ショックの送達に関するECGエピソードデータは、メモリ82に記憶されてもよい。記憶されたエピソードデータは、問合せコマンドの受信時に、外部機器40にテレメトリモジュール88によって送信される。エピソードデータについての臨床医の再検討は、プログラミング可能VT/VF検出および療法送達制御パラメータを選択することを含む、患者の心臓状態および療法管理決定についての診断および予後を容易にする。
【0051】
感知ベクトル試験中、制御モジュール80は、ECG信号を感知するために、電極24、26、28および15から利用可能な多重試験感知ベクトルを使用して、感知モジュール86を制御する。制御モジュール80は、受信されたECG信号を解析することにより、メモリ82に記憶され、そして、植込型テレメトリモジュール88によって外部機器40に送信される感知ベクトルデータを決定する。下記のように、感知ベクトル選択パラメータは、心臓律動を検出および識別するためにIMD14によって心臓電気信号についての最も信頼できる感知を提供することが期待される1つまたは複数の感知ベクトルを選択するために使用されるそれぞれの感知ベクトル信号から決定されてもよい。一部の例では、試験感知ベクトルのそれぞれによって感知されるECG信号のエピソードは、また、メモリ82に記憶され、外部機器40に送信されてもよい。
【0052】
図5は、一例に従う1つまたは複数の感知ベクトルの選択およびプログラミングを容易にするために、グラフィカルユーザインタフェースの部分としてベクトル受容性基準および感知ベクトルデータを取得し、表すための方法についての流れ
図200である。ブロック202では、感知ベクトル受容性基準が確立される。感知ベクトル受容性基準は、心臓電気信号から決定される少なくとも1つの感知ベクトル選択パラメータのそれぞれに対して1つまたは複数の閾値を含んでもよい。感知ベクトル受容性基準は、選択パラメータに適用される閾値または範囲を含んでもよい。一例では、更に下記で説明するように、受容性基準は、R波振幅閾値および緩勾配成分閾値を含む。受容性基準は、それぞれの感知ベクトル選択パラメータの範囲、例えば、R波振幅範囲および緩勾配成分範囲として画定されてもよい。範囲は、受容性閾値を表す範囲の下側境界と、それぞれの選択パラメータの最大可能値を表す上側境界とを含んでもよい。
【0053】
ベクトル受容性基準は、外部機器40にプログラミングされ、メモリ53に記憶された固定値であってもよい。代替として、ベクトル受容性基準は、IMD14にプログラミングされ、IMDメモリ82に記憶されてもよい。この場合、受容性基準は、患者特有の値にプログラミングされてもよい。ベクトル受容性基準は、受容可能感知ベクトルと受容不可能感知ベクトルとの間で識別するために使用される。ベクトル受容性基準に加えて、ベクトル選択基準が規定されてもよい。ベクトル選択基準は、ベクトル受容性基準を満たすベクトルから1つまたは複数の感知ベクトルを選択するために使用される。下記のように、選択された感知ベクトルは、心臓信号を感知するためにIMDにプログラミングされてもよい。
【0054】
ブロック204では、1つまたは複数のベクトルが、感知ベクトル試験を開始するために最初に選択される。感知ベクトル試験は、外部機器40と相互に作用するユーザによって開始されてもよい。ユーザは、外部機器40のユーザディスプレイ54上の「感知ベクトル試験スタート」ボタンを選択して、感知ベクトル試験を開始する。感知ベクトル試験が、次いで、外部機器40から受信された「試験スタート」コマンドに応じて、IMD14によって自動的に実行され得る。別の例では、感知ベクトル試験は、規則的な周期基準、例えば、毎日、毎週、毎月、または別の頻度に従って、IMD14によって自動的に実行されてもよい。試験中に得られたデータは、テレメトリ通信セッションがIMD14によって確立される次のときに、外部機器40に送られてもよい。感知ベクトル試験は、付加的または代替的に、心臓イベントの疑わしいアンダーセンシングまたはオーバーセンシングに応じて、IMD14によって自動的に開始されてもよい。
【0055】
試験が開始されると、感知ベクトルは、ブロック204で、IMD感知モジュール86に利用可能な電極の組合せを連結することによって選択される。多重感知チャネルが利用可能であるとき、多重感知ベクトルは、同時に多重ベクトルから感知ベクトルデータを取得するように選択されてもよい。
図1および2の例を参照すると、ハウジングに拠点を置く電極28A、28B、28Cおよびリードに拠点を置く電極26の可能な組合せのそれぞれは、IMD感知モジュール86が2つの感知チャネルを含む場合に、一度に2つが選択されてもよい。例示のため、電極28Aおよび28Bが、試験されるべき第1の感知ベクトルとして選択され、そして、感知モジュール86の第1の感知チャネルに連結されてもよい。電極28Bおよび28Cが、試験されるべき第2の感知ベクトルとして選択され、そして、第2の感知チャネルに連結されてもよい。感知ベクトルデータは、第1および第2の感知ベクトルの両方から同時に取得される。次に、電極28Aおよび28Cは、第3の試験ベクトルとして選択されて、第1の感知チャネルに連結され、そして、電極26と共に電極28A、28Bおよび28Cのうちの任意の1つは、第4の試験ベクトルとして選択されて、第2の感知チャネルに連結される。感知ベクトルデータが、次いで、第3および第4の感知ベクトルに対して同時に取得される。一部の例では、電極28A、28Bおよび28Cのそれぞれは、追加の感知ベクトルを試験するために、一度に1つまたは2つ若しくは全3つの組合せで感知電極26と対にされてもよい。更に、除細動電極24は、追加の感知ベクトルを試験するために、感知電極26および28のうちの任意のものと共に選択されてもよい。
【0056】
ブロック206では、最初に選択される1つ以上の感知ベクトルは、ブロック206でそれぞれの心臓電気信号を得るために使用される。心臓電気信号は、心臓外電極が信号を感知するために使用されるとき、ECG信号であってもよい。別の例では、信号は、心臓内、噴門上部、または冠静脈洞感知電極が使用されるとき、EGM信号であってもよい。心臓電気信号は、心筋の脱分極および再分極に伴う信号、例えば、心房におけるP波、並びに心室におけるR波およびT波を含んでもよい。ECG信号が受信されているとき、P波およびT波は、R波と比較して非常に小さい振幅を有することがある。
【0057】
ベクトル選択パラメータは、選択された感知ベクトルのそれぞれに対してブロック208で感知された心臓信号から決定される。ベクトル選択パラメータの決定は、解析窓の間に心臓信号を解析することを含んでもよい。場合によっては、解析窓は、n秒の心臓信号区間、例えば、3秒、8秒、10秒、または別の継続時間信号区間であってもよい。n秒の解析窓は、R波のような心臓イベントのタイミングと無関係に、所望の継続時間にわたって取得されて保存されてもよい。本明細書において開示される技術において使用されてもよいベクトル選択パラメータのいくつかの例は、n秒の区間にわたって取得された信号サンプル点、例えば、信号周波数成分、信号振幅成分、信号勾配成分、または真の心臓信号成分対ノイズまたは別の非生理的信号成分である心臓電気信号の比率を表示し得る別の全体的な心臓電気信号成分の定量を使用して決定されてもよい。
【0058】
別の場合では、ベクトル選択パラメータは、心臓イベントを感知することに基づいて、1つの心臓周期またはその部分にわたって設定される心臓信号解析窓から決定されてもよい。例えば、R波は、R波またはQRS群を包含するように、1つのR波から次に感知されたR波まで及ぶ、または、感知されたR波よりも早い時間から感知されたR波の後の時間まで及ぶ心臓信号解析窓を設定するために感知されて使用されてもよい。1つまたは複数の心臓信号解析窓は、決定されている特定のベクトル選択パラメータに基づいて、感知された心臓信号に適用されてもよい。
【0059】
ベクトル選択パラメータは、全体として、真の心臓イベント(例えば、R波、P波、またはT波)を感知するため、心臓イベント間隔を計測するため、および/またはQRS群の形状のような心臓イベント信号形態または波形を解析するための心臓電気信号の品質および信頼性の指標であるパラメータである。ベクトル選択パラメータは、選択された心臓イベント、例えば、IMD感知モジュールの感知チャネルによって感知されることが望ましいR波、T波、および/またはP波の信号強度に関する1つまたは複数のパラメータを含んでもよい。心臓イベント信号の強度に関する選択パラメータとしては、R波振幅、P波振幅、T波振幅、QRS信号幅、またはR波勾配を挙げてもよいが、これらに限定されない。心臓イベント信号の強度を示す振幅または別の心臓イベント信号特性として決定されるベクトル選択パラメータは、多重心臓イベントの平均特性として決定されてもよい。例示するために、R波振幅は、連続して感知されたR波のうちの8〜10(または、別の所望の数)の平均ピーク振幅として決定されてもよい。代替として、R波振幅は、所定数のR波の中の第n番目に低いピーク振幅、例えば、10個の連続的なR波の中の最も低いピーク振幅または2番目に低いピーク振幅として決定されてもよい。感知モジュール86によって感知されるか、または心臓律動を検出して識別するために制御モジュール80によって使用されることが望ましい心臓イベント信号の強度の指標である多数のベクトル選択パラメータが、決定されてもよいことが認識される。
【0060】
ベクトル選択パラメータは、付加的または代替的に、関心の1つ以上の心臓イベント信号の明瞭度を示すパラメータを含んでもよい。心臓イベント信号の明瞭度の指標は、所望の心臓信号成分対生理的および非生理的ノイズを含み得る不要信号成分の比率であってもよい。例えば、信号解析窓にわたる心臓信号の周波数または勾配成分の指標であるベクトル選択パラメータが決定されてもよい。緩勾配成分(LSC)は、信号明瞭度の指標として決定されてもよい1つのベクトル選択パラメータである。例えば、R波が、例えば、心室拍動数またはRR間隔を決定するために、IMD14によって受信されたECG信号から感知されているとき、R波は、所望の心臓イベント信号である。比較的平坦な基線信号によって分離されるR波は、所望の心臓信号成分を表す。P波、T波、および別の生理的または非生理的ノイズは、不必要な信号成分を表わし得る。非生理的ノイズは、周波数が所望の心臓イベント信号成分よりも概して高く、そして、短時間のバーストに存在することがある電磁干渉または別のノイズを含んでもよい。別のノイズは、患者体動、筋肉活動、または呼吸運動に起因する電極移動によって生じさせられることがある。
【0061】
急勾配、狭いQRS群と共に比較的平坦なまたは明確な基線を有する心臓信号は、特に低いまたは安静時の心拍数の間に、所望のR波を感知するための高い信号明瞭度を示す高いLSCを有する。対照的に、高頻度の、非生理的なノイズのバーストは、再度の間隔の間に、心臓信号のLSCを減少させる。R波として過大に感知される広範囲の大きい振幅のP波またはT波が、また、LSCを減少させる。その上、呼吸、体動、または別の望ましくない心臓信号成分に起因する基線ノイズまたは変動は、LSCを減少させることがある。このように、LSCは、受容可能な感知ベクトルを識別するための感知ベクトル試験の間に決定される1つのパラメータであってもよい。高いLSCによって示されるような高い信号明瞭度を有する感知ベクトルは、受容可能な感知ベクトルであり、そして、所望の心臓イベント信号の過少感知または過大感知をもたらすことがあるより低い信号明瞭度を有する別のベクトルよりも、患者の心臓律動を決定するのにより望ましい。
【0062】
一例では、LSCは、n秒の時間間隔の間の緩勾配閾値未満の勾配データ点の数のデータ点の全数に対する比率として決定される。勾配データ点は、生の心臓信号のサンプル間の差として決定される。一例では、緩勾配閾値は、n秒の信号区間から決定される最大絶対勾配の百分率、例えば、10%として規定されてもよい。緩勾配成分は、次いで、n秒の解析時間間隔に生じる勾配データ点の合計数に対する緩勾配閾値未満の絶対値を有する勾配データ点の数として決定される。
【0063】
1つまたは複数のn秒の時間間隔が、所定のベクトルに対する多重LSC値を取得するために解析されてもよい。多重LSC値の平均値、中央値、モード、または別の計量は、感知ベクトルについての信号明瞭度の指標として決定されてもよい。
【0064】
別のベクトル選択パラメータは、R波振幅の平均化基線振幅に対する比率、P波振幅の平均化基線振幅に対する比率、T波振幅の平均化基線振幅に対する比率、R波振幅のT波振幅に対する比率、または、感知モジュール86によって感知されるべき心臓イベントの、非心臓イベント若しくは感知モジュールによって感知されることが望ましくない心臓イベントに対する比率を含んでもよい。例えば、T波は、R波として過大感知されることがある心臓イベントであり、したがって、使用目的によっては感知モジュール86によって感知されることが望ましくないイベントである。ベクトル選択パラメータを決定するために使用される方法は、米国特許第7,904,153号(Greenhutら)に全体として開示された技術に対応してもよい。
【0065】
ベクトル選択パラメータは、ブロック208で、IMD制御モジュール80によって決定され、そして、選択された感知ベクトルのそれぞれに対してメモリ82に記憶されてもよい。一部の例では、選択パラメータがそれから決定される心臓電気信号のサンプル信号区間も、また記憶されてもよい。現在選択されている感知ベクトルに対してベクトル選択パラメータを決定した後に、IMD制御モジュール80は、決定ブロック210で、追加の感知ベクトルが利用可能か否かを決定する。プロセスが、ブロック204に戻って、選択パラメータが全ての利用可能な感知ベクトルに対して記憶されるまで、試験されるべき次の1つ以上のベクトルを選択する。
【0066】
IMD14によって試験される感知ベクトルは、ユーザによってプログラミング可能でない利用可能な感知ベクトルの固定集合であってもよい。代替として、ユーザが、どのベクトルが、試験を始める前に評価されなければならないかを指定することが可能であってもよい。
【0067】
ブロック210で感知ベクトル試験が完了したことを確認すると、IMD制御モジュール80は、ブロック212で、外部機器40に送信される感知ベクトルデータをテレメトリモジュール88に提供する。一例では、ユーザが、外部機器40を使用して感知ベクトル試験を開始する。IMD14が、それぞれの利用可能な試験感知ベクトルの選択によって自動的に進行し、それぞれのベクトルに対してベクトル選択パラメータを決定し、そして、「試験スタート」コマンドを外部機器40から受信することに応じて、感知ベクトルデータを外部機器40に送信する。別の例では、感知ベクトル試験が、IMDによって自動的に実行されてもよく、そして、感知ベクトルデータが、ブロック212で、外部機器40によって次のテレメトリセッション中に送信される。送信されるデータは、試験されたそれぞれの感知ベクトルに対して決定されたベクトル選択パラメータを含み、そして、試験されたそれぞれの感知ベクトルに対するサンプル心臓信号区間を含んでもよい。送信されるデータは、ベクトル受容性基準が所定の患者に対してIMD14における特有の設定値にプログラミングされた場合に、ベクトル受容性基準を更に含んでもよい。
【0068】
別の例では、感知ベクトル試験中にIMD14から外部機器40まで送信される感知ベクトルデータは、信号を得るために使用される生の心臓電気信号および対応する感知ベクトルを含む。生の心臓電気信号は、実時間において、または、それぞれの試験ベクトルに対してn秒の信号区間を取得して記憶した後に、外部機器40まで送信されてもよい。外部機器プロセッサ52は、送信された心臓電気信号からベクトル選択パラメータを決定してもよい。
【0069】
ブロック214では、外部機器40は、ベクトル選択表示を生成する。外部機器プロセッサ52は、感知ベクトルデータをユーザディスプレイ54に提供する。例えば、それぞれの感知ベクトルに対するベクトル選択パラメータ値は、ユーザディスプレイ54に提供される。一部の例では、外部プロセッサ52は、ブロック214で、IMD14から受信された感知ベクトルデータを使用して、ベクトル選択指数を計算してもよく、そして、推奨される感知ベクトルのベクトル選択指数または指標をユーザディスプレイ54に提供してもよい。推奨される感知ベクトルを識別するために使用されるベクトル選択指数の決定が、以下で更に詳細に説明される。
【0070】
外部機器プロセッサ52は、ブロック214で、外部機器メモリ53に記憶されるか、またはIMD14からユーザディスプレイ54に受信されるベクトル受容性基準を更に提供する。受信された感知ベクトルデータおよびベクトル受容性基準に応じて、ユーザディスプレイ54は、グラフィックユーザインタフェースの部分として、ベクトル受容性基準に対するベクトル選択パラメータデータのグラフィック表示を含む表示を生成する。表示は、ベクトル選択パラメータデータの要目表を更に含んでもよい。
【0071】
図6は、ユーザが手動で感知ベクトル試験を始めるのを可能にするための、ユーザディスプレイ54によって生成されたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)250の線図である。GUI250は、試験スタートボタン252を含み、そして、試験ストップボタン254を含んでもよい。試験スタートボタン252がユーザによって選択されると、進行中の試験バー266は、試験が進行中であること、および完了に向けての時間または百分率を表示してもよい。患者は、試験中、じっとしているか、または望ましい姿勢をとることを助言されてもよい。試験が進行中である間に、動きまたはノイズがもたらされる場合、試験ストップボタン254が使用されてもよい。一旦感知ベクトル試験が完了すると、GUI250は、試験結果GUI、例えば、
図7に示すようなGUI300によって自動的に置き換えられてもよい。
【0072】
試験スタートGUI250は、感知されたイベント、例えば、心室の感知されたイベント(VS)を示す対応ECG信号262の実時間表示と共に、別の特性、例えば、現在プログラミングされている感知ベクトル260の指標を含んでもよい。感知制御パラメータ264は、それぞれの感知ベクトル、例えば、感度、空白間隔、感知閾値などについて表示されてもよく、これらのパラメータは、現在プログラミングされている感知ベクトルに対してプログラミングされるか、および/または感知ベクトル試験中にIMD14によって使用されてもよい。
【0073】
図7は、感知ベクトル試験完了時にベクトル選択データを表すために、ユーザディスプレイ54によって作成されるGUI300の線図である。GUI300は、グラフィック表示領域301および要目表表示領域304を含む。グラフィック表示領域301は、2次元プロット302、および対応する凡例308を含む。プロット302は、第1のベクトル選択パラメータに対応するx軸304と、第2のベクトル選択パラメータに対応するy軸306と、を有する。この例では、プロット302は、2つの異なるベクトル選択パラメータを表すために生成された2次元プロットである。プロット302が、単一の選択パラメータまたは3つの選択パラメータを表すためにそれぞれ生成される1次元プロットまたは3次元プロットであってもよいことが企図される。別の例では、4つ以上のベクトル選択パラメータが、別のカルテまたはグラフィック様式、例えば、棒グラフに表されてもよいことが企図されるが、それぞれの感知ベクトルについての1、2、または3つのベクトル選択パラメータの1、2または3次元プロットがユーザに最も理解され易いものであろう。
【0074】
示している例では、R波振幅が、心臓イベント信号強度に関するベクトル選択パラメータとして、y軸306に沿って示され、信号明瞭度が、感知ベクトル信号の心臓信号成分の比率に関するベクトル選択パラメータとして、x軸304に沿って示される。R波振幅は、mV単位で決定されてもよく、または、例えば、感知ベクトルのうちの任意のものについて測定された最大R波振幅によって正規化されてもよい。信号明瞭度は、この例では、上記のようにLSCとして決定される。信号明瞭度は、百分率で表示され、そして、0%(勾配点が下側勾配閾値を下回らない)から100%(全ての勾配点が下側勾配閾値を下回る)までの範囲に及んでもよい。
【0075】
感知ベクトル試験に含まれるそれぞれの感知ベクトルは、凡例308によって表示されるような記号によってプロット302中に表される。それぞれの感知ベクトルは、このベクトルについて決定されたそれ自体のそれぞれのベクトル選択パラメータによって表される。この例では、4つのECG感知ベクトルは、ハウジングに拠点を置く電極28A(缶1)、28B(缶2)および28C(缶3)、並びにリードに拠点を置く電極26(リング)を使用して試験された。ベクトル缶1〜3(
図2に示すように電極28Aと28Cとの間の)に対する選択パラメータが、ベクトル缶1〜3から取得されたECG信号から決定されるR波振幅および信号明瞭度に対応して、x−y座標に三角形記号312を使用してプロットされる。同様に、別の3つの試験されたベクトル缶2−3、缶1−リングおよび缶1−2が、凡例308に指定されたようなそれぞれの記号314、316および318によって表され、そして、R波振幅とそれぞれのベクトルに対して決定された信号明瞭度パラメータ値とによって画定されたx−y座標のプロット302にプロットされる。
【0076】
どの感知ベクトルが受容可能であり、どれがそうでないかをユーザが理解することを助けるために、ベクトル受容性基準を表すベクトル受容性領域310が表示される。この例では、領域310は、60%の信号明瞭度ベクトル受容性閾値に対応する左側の下側x境界340を有する長方形である。領域310は、100%の信号明瞭度パラメータの最大可能値に対応する右側の上側x境界342を有する。底部の下側y境界344は、0.3mVのR波振幅ベクトル受容性閾値によって画定され、そして、最上部の上側y境界346は、感知モジュール86の最大感知範囲に設定されてもよい。領域310の特定の境界は、例示的なベクトル受容性基準を表し、ベクトル受容性基準を規定するために使用される特定の閾値または範囲は、実施形態相互間で変動し得ることが理解されるであろう。受容性領域310は、特定の用途および/または患者に対して規定された特定の受容性基準に基づいて設定される。
【0077】
ベクトル受容性領域310は、一緒にベクトル受容性基準を満たすベクトル選択パラメータ(R波振幅および信号明瞭度)の両方についての全ての値を示す。示している例示的な例では、ベクトル缶1−リング、ベクトル缶2−3およびベクトル缶1−2を表す点314、316および318は、ベクトル受容性領域310内部にある。これらに関して、右端点316および318がより高い信号明瞭度を有するとともに、3つ全てが同様のR波振幅を有する。このように、点316および318に対応するベクトル缶2−3および缶1−2は、それぞれ、凡例308において推奨されるベクトルとして自動的に指定される。
【0078】
多重ベクトルが閾値、範囲、または個々のベクトル選択パラメータに適用される別の要件に基づくベクトル受容性基準に合致するとき、ベクトル選択基準が、受容性基準に合致するベクトルに適用されてもよい。一実施形態では、選択指数が、ベクトル受容性基準に合致する全てのベクトルに対して、ベクトル選択パラメータの重み付き組合せとして計算されてもよい。例えば、R波振幅、心臓イベント信号強度若しくは信号明瞭度を示す別のパラメータ、または信号全体の心臓信号成分の比率を示す別のパラメータのうちの1つが、別のパラメータよりも大きい重みを付与されてもよい。
【0079】
一例では、外部機器プロセッサ52が、受容性領域310内部にあるベクトルのそれぞれに対する選択指数(SI)を次式のものとして計算してもよい。
SI=(LSC*W1+R波振幅*W2)/((W1+W2)*R波振幅*LSC)
2つの感知チャネルが感知モジュール86において利用可能である場合、最高のSIを生じさせる2つのベクトルが、患者の心臓律動を監視するための推奨される感知ベクトルとして指定される。プロセッサ52が、受容可能なベクトルに適用される選択基準に基づいて、例えば、選択指数、またはベクトル選択パラメータの別の組合せを決定することによって、推奨される感知ベクトルを決定するとき、プロセッサ52は、グラフィカルユーザインタフェース300を生成するために、このデータをユーザディスプレイ54に提供する。
【0080】
ベクトル選択基準を受容性基準に合致する全てのベクトルに適用することによって選択された推奨されるベクトルは、ユーザによるプログラミングのための、要目表表示領域304における保留の感知ベクトル選択316および318として、自動的に設定されて表示されてもよい。保留の値は、保留の値がプログラムボタン326を使用してプログラミングされるまで、色、フラッシング表示、または別の特徴によって強調されてもよい。
【0081】
ユーザは、推奨されるベクトルをプログラミングするために、GUI300上のPROGRAM(プログラム)ボタン326を選択してもよい。ユーザは、代替として、異なる感知ベクトル316および318をドロップダウン窓から手動で選択してもよい。
【0082】
ユーザは、試験ストリップ表示312を選択して、試験される感知ベクトルのそれぞれについて記憶された信号サンプルを検分してもよい。ユーザは、Undo Pending(保留取消)ボタン314を選択して、保留の感知ベクトル選択316および318を消去してもよく、そして、異なるベクトルを選択するか、または感知ベクトル試験を再開してもよい。
【0083】
要目表表示領域304において、試験される感知ベクトル320のそれぞれが、それらのそれぞれのベクトル選択パラメータ、例えば、R波振幅値322および信号明瞭度値324と共に表にされてもよい。このように、ユーザは、感知ベクトルデータについての要目表および図形表示の両方を有することにより、どのベクトルが受容可能であり、どれがそうでないかということ、そして、自動的に推薦された感知ベクトルが、受容性基準に合致するベクトルから保留の感知ベクトル316および318として選択された理由についての自身の理解を容易にする。
【0084】
GUI300は、別の特徴、例えば、表面ECG表示(図示せず)、感知ベクトル選択GUI300を離れて別のプログラミングまたはデータ表示スクリーンに移動するためのClose(閉鎖)ボタン328、IMD14に問合せコマンドを送るためのInterrogate(問合せ)ボタン330、および、全ての所望のプログラミングが行われた後にIMD14とのテレメトリセッションを終了するためのセッション終了ボタン332を含んでもよい。