(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585712
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】貴金属含有触媒型本体から貴金属を除去するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B01J 38/48 20060101AFI20190919BHJP
B01J 38/00 20060101ALI20190919BHJP
B01J 38/60 20060101ALI20190919BHJP
B01J 38/72 20060101ALI20190919BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20190919BHJP
B01J 23/96 20060101ALI20190919BHJP
C22B 11/00 20060101ALI20190919BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20190919BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20190919BHJP
C22B 3/08 20060101ALI20190919BHJP
C22B 3/10 20060101ALI20190919BHJP
C22B 61/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
B01J38/48 B
B01J38/00 301J
B01J38/60
B01J38/72
B01J23/44 Z
B01J23/96 Z
C22B11/00 101
C22B7/00 B
C22B3/06
C22B3/08
C22B3/10
C22B61/00
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-522952(P2017-522952)
(86)(22)【出願日】2015年10月12日
(65)【公表番号】特表2017-537774(P2017-537774A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015073542
(87)【国際公開番号】WO2016074872
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年6月14日
(31)【優先権主張番号】14192464.7
(32)【優先日】2014年11月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】レーリッヒ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ティール ファスコ
(72)【発明者】
【氏名】フックス アラメダ シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】シャップ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フォス シュテッフェン
【審査官】
西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−008113(JP,A)
【文献】
特開昭57−169027(JP,A)
【文献】
米国特許第03016354(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型本体および貴金属を含む貴金属含有触媒型本体から貴金属を除去するためのプロセスであって、除去される前記貴金属はAu、Ag、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、OsおよびReからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属であり、以下のステップ:
(a)少なくとも1Nである少なくとも1種の鉱酸中で貴金属含有触媒型本体の混合物を製造するステップ;
(b)貴金属含有触媒型本体および鉱酸を含む前記混合物に不活性ガス、または空気もしくは酸素と不活性ガスとの他のガス混合物からなる酸化ガスを供給するステップ;
(c)少なくとも1種の酸化剤を固体または液体形態で貴金属含有触媒型本体および鉱酸を含む前記混合物に導入するステップ;および
(d)前記型本体を液体から分離するステップ
を含むプロセス。
【請求項2】
前記固体が洗浄される追加のステップ(e)を特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記鉱酸は塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸およびリン酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1種の酸化剤は塩素酸塩、硝酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、亜塩素酸塩、亜臭素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、次亜ヨウ素酸塩、過塩素酸塩、臭素、ヨウ素、過酸化物、過マンガン酸塩およびクロム酸塩からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記貴金属含有触媒型本体は前記混合物中の液体により完全に覆われることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記貴金属含有触媒型本体は酸化段階(0)の貴金属を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記型本体の75〜100重量%は酸に対して不活性であるAl、Ti、Mg、Zr、Sn、FeおよびSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(a)に使用される前記貴金属含有触媒型本体は0.1重量%〜50重量%の量の貴金属を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップ(c)における前記少なくとも1種の酸化剤の曝露時間は5〜240分であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(b)および(c)における処理温度は15℃から沸点の範囲であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(b)および(c)における前記処理温度は30〜90℃の範囲であることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記少なくとも1種の酸化剤は反応槽の下半分の前記混合物に導入されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
貴金属を含まない型本体を回収するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセスの使用。
【請求項14】
Au、Ag、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、OsおよびReからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属を含む溶液を回収するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプロセスの使用。
【請求項15】
前記溶液は前記貴金属含有触媒型本体から同様に除去される非鉄金属からなる群から選択される金属をさらに含む、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属含有触媒型本体から貴金属を除去するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの化学プロセスでは、触媒として貴金属および貴金属含有種を使用する。原則として、貴金属はこのプロセスにおいて存在し得る2つの状態がある。触媒活性種は、反応物を含む均一な混合物中に存在するか、あるいは、触媒活性種は、ほとんどの場合、不活性な担体材料に付着させ、反応物を含む不均一な混合物として存在する。多くの場合、不均一触媒は、たとえば濾過により反応混合物から容易に除去できるため、好ましい。工業規模の多くの化学プロセス、たとえば、燃料製造、高分子化学のためのモノマーの製造またはアンモニアの製造などにおける改質は、数トン規模で不均一触媒を利用する。
【0003】
不均一触媒材料の取り扱いの改善のため、貴金属は通例、たとえば酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素からなる通常不活性な巨視的型本体に付着される。このタイプの型本体に使用される材料は通常高度に多孔性であり、よって大きな表面全体に貴金属の均一な分布を可能にする。表面上に微細に分布した貴金属中心に接近しやすくなると、高い触媒活性が確保される。特に押出またはプレスにより製造され得る、たとえばコード、シリンダー、ペレット、リング、マルチホール(multi−whole)リング、球、サドル、車輪、椅子、気泡体またはハニカムが型本体として使用される。
【0004】
貴金属含有触媒の活性は特定の作用時間後に減少し、触媒を交換する必要がある。貴金属は高価なため、貴金属含有触媒の利用は、多くの場合、プロセスに使用される貴金属を回収できない限り経済的でない。典型的には、担体として多孔性型本体を用いた使用済み不均一貴金属触媒は再加工の根拠となり、貴金属はその後溶解により除去される。あるいは、貴金属含有触媒型本体は、溶融冶金法により貴金属および担体材料に分離される。いずれの場合も、型本体は破壊されている。
【0005】
しかしながら、担体として機能する型本体の製造も非常に高くつく可能性があるため、貴金属のみならず、型本体も再使用することが望ましい。これには、使用済み貴金属含有触媒型本体から効率的かつ非破壊的に貴金属を除去できるプロセスが必要になる。
【0006】
特許文献1には、塩酸および白金含有触媒型本体の混合物に塩素ガスが供給される、白金含有触媒型本体から白金を回収するためのプロセスが教示される。
【0007】
ガス状塩素および他のガス状酸化剤の供給は、いくつかの不都合に関連する。
【0008】
第1に、塩素ガスの使用には、この高反応性ガスの供給および排出の両方のため相当な機器関連の対策が必要になる。
【0009】
第2に、ガス状態の酸化剤、たとえば塩素の供給は、この目的のために使用される相当量のガスが貴金属含有触媒型本体に十分に接触することなく溶液内を流れるため、効率的でない。この事実から、たとえば塩素ガスまたは対応する排ガス処理用の技術的に高度な回収施設が必要とされるか、または高過剰の塩素ガスの使用が不可欠である。塩素回収、排ガス処理および過剰塩素ガスの使用によりこのプロセスは不経済になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,016,354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、貴金属含有触媒型本体(=不均一触媒)から貴金属をほぼ完全に除去するための効率的なプロセスであって、型本体が破壊されず、不均一触媒の製造に再使用できるプロセスを開発することが本発明の目的であった。この文脈で利用される酸化剤を従来技術より利用しやすくするプロセスを提供することが本発明のもう1つの目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、請求項1に記載の本発明のプロセスにより達成される。これは、型本体および貴金属を含む貴金属含有触媒型本体から貴金属を除去するためのプロセスであって、除去される貴金属はAu、Ag、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、OsおよびReからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属であり、以下のステップ:
(a)少なくとも1Nである少なくとも1種の鉱酸中で貴金属含有触媒型本体の混合物を製造するステップ;
(b)貴金属含有触媒型本体および鉱酸を含む混合物に不活性ガスまたは酸化ガスを供給するステップ;
(c)少なくとも1種の酸化剤を固体または液体形態で貴金属含有触媒型本体および鉱酸を含む混合物に導入するステップ;および
(d)型本体を液体から分離するステップ
を含むプロセスにより実行される。
【0013】
この文脈では、ステップ(a)はステップ(b)および(c)に先行する。好ましい実施形態では、ステップ(b)および(c)は平行して、すなわち同時に進行する、または互いに重複する。あるいは、ステップ(b)を最初に、続いてステップ(c)を行ってもよいし、またはステップ(c)をステップ(b)の前に行う。
【0014】
本発明によるプロセスは、ステップ(a)、(b)、(c)および(d)の前、後またはそれらの間に進行するさらなるプロセスステップを含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の範囲において、型本体という用語は、触媒的に有効な貴金属を載せられる基本的に貴金属を含まない無機担体を意味すると理解すべきである。
【0016】
本発明の範囲において、貴金属含有触媒型本体という用語は、触媒活性貴金属を含む型本体を意味すると理解すべきである。
【0017】
貴金属から分離された外来本体が、不均一触媒として使用できる貴金属含有触媒型本体の製造に再利用するのに好適であるように、貴金属含有触媒型本体から貴金属を十分に完全かつ穏やかに除去することが、本発明の目的である。貴金属が除去される貴金属含有触媒型本体は特に、使用済み不均一触媒である。
【0018】
本発明によるプロセスは、貴金属含有触媒型本体に適用することができ、貴金属は元素Au、Ag、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、OsおよびReであると理解されるべきである。貴金属は、単独または任意の組み合わせで貴金属含有触媒型本体上および/または貴金属含有触媒型本体内に存在してもよい。この文脈では、単数または複数の貴金属は、一部または全部が酸化段階(0)の元素として存在してもよい。典型的には、貴金属含有触媒型本体は、それらの総重量に対して貴金属を0.1〜50重量%含む。
【0019】
貴金属含有触媒型本体の外来本体に好適である担体材料に関しては、多様な反応条件に対してできる限り化学的に不活性でなければならない。特に、型本体は、強酸性または酸化反応条件に対して不活性でなければならない。化学的安定性に加えて、材料が高い機械的応力に耐え得ることも同様に要求される。貴金属含有触媒型本体は、多くの場合、バルク触媒として使用されるため、摩耗に対する高い抵抗性が特に要求される。無機セラミック材料は特に、型本体用の材料としての使用によく適していることが明らかになっている。この文脈では、純粋な酸化物セラミックス、たとえば酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素と、混合された酸化物セラミックス、たとえば、チタン酸アルミニウム、分散セラミックス(Al
2O
3/ZrO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛およびチタン酸バリウムとの両方を使用してもよい。さらに、外来本体を構成する担体材料には、化学的安定性をさらに増加させるため、さらなる元素、たとえば希土類金属などをドープしてもよい。好ましくは、型本体の75〜100重量%は、酸に対して不活性(酸に対して本質的にまたは完全に不活性)であるAl、Ti、Mg、Zr、Sn、FeおよびSiからなる群から選択される少なくとも1つの元素の酸化物からなる。
【0020】
酸化物材料に加えて、非酸化物セラミックス、たとえば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ホウ素および窒化ホウ素などを型本体の担体材料として使用してもよい。
【0021】
触媒活性貴金属をできる限りうまく取り込むため、1つの好ましい実施形態は、触媒活性貴金属ができる限り微細に分布して存在する大きな表面積を有する多孔性材料を使用する。多孔性α−Al
2O
3は、特によく適していることが立証されている。
【0022】
不均一触媒は典型的には、その取り扱い性を向上させるため、様々な外来本体、たとえばコード、シリンダー、ペレット、リング、マルチホール(multi−whole)リング、球、サドル、車輪、椅子、気泡体またはハニカムに加工される。たとえば製造には押出およびプレスが使用される。こうして製造される型本体は、たとえば、その最も厚い場所で100μm〜50センチメートルの直径を有してもよい。
【0023】
使用済み貴金属含有触媒型本体から貴金属を回収する場合、溶解により型本体から貴金属をほぼ完全に除去することが必要である。溶解により完全に除去するという語句は、本発明によるプロセスにおいて貴金属が除去される型本体は、総重量に対して貴金属を≦100ppm含むことを意味すると理解すべきである。
【0024】
本発明によれば、本プロセスにおいて鉱酸、たとえば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸および/またはリン酸などが使用される。プロセスステップ(a)に使用される単数または複数の鉱酸は濃縮されるか、あるいは1リットルあたり≧1molの酸(H
3O
+)の濃度を有する希釈溶液である。
【0025】
本発明によれば、少なくとも1Nである鉱酸中の貴金属含有触媒型本体の混合物は、プロセスステップ(a)で製造される。好ましくは、貴金属含有触媒型本体は、混合物中の液体および/または鉱酸により完全に覆われる。
【0026】
本発明のプロセスステップb)によれば、ガスは混合、たとえば連続混合を行うため、上記のように製造された混合物に供給される。この文脈では、貴金属含有触媒型本体および鉱酸で作られた混合物の下半分にガスを供給することが好ましい。反応容器の底部にガスを供給することが特に好ましい。好ましくは、ガスは、液体中に上昇するガス泡が混合物をパーコレートし、十分な混合を行うように適切に供給される。好ましくは、ガス流は、ガス泡が貴金属含有触媒型本体の周りを流れるように、液体の大部分が混合されて触媒型本体が全くまたはわずかしか動かないように適切に設定される。これにより、型本体の摩耗を防止することができる、すなわち、型本体を機械的に保護することができ、したがってより頻繁に再使用することができる。好ましくは、ガス流は、混合物が混合されている間に跳ねないように適切に設定され得る。ガス流の特定の設定により、混合物は反応が反応槽全体に均一に進行するように適切に移動できる。
【0027】
本発明によれば、混合用に考えられるガス(混合ガス)は、不活性であるまたは酸化作用を有する、たとえば貴金属に対して不活性であるまたは酸化作用を有するガスである。たとえば空気または酸素と不活性ガスとの他のガス混合物は、酸化作用を有する混合ガスとして使用することができる。本発明によれば、塩素ガスまたは塩素ガス含有ガス混合物の使用を控えることが好ましい。酸化作用を有する混合ガスの使用は、溶解により除去され得る貴金属の収量を増加させることができる。本発明によれば、不活性ガス、たとえば、窒素、アルゴンまたは二酸化炭素などは、混合ガスとして使用してもよい。混合のための不活性ガスまたは酸化作用を有するガスの使用により、混合物の反応性を制御することができる。不活性な混合ガスを使用する場合、混合物の反応性を低下させることができ、酸化ガスの使用により混合物の反応性を増加させることができる。
【0028】
本発明によるプロセスのステップ(c)では、貴金属含有触媒型本体および鉱酸を含む混合物に少なくとも1種の酸化剤が導入される。本発明によれば、少なくとも1種の酸化剤は、固体または液体形態で混合物に導入される。少なくとも1種の酸化剤は、たとえばランスまたはホースによって混合物に導入することができる。少なくとも1種の酸化剤、特に液体酸化剤を反応容器の下半分、特に好ましくは底部の混合物に導入すると好ましい場合がある。
【0029】
特別な実施形態では、少なくとも1種の酸化剤は、基本的に混合ガスと同じ場所の混合物に導入される。
【0030】
好ましくは、少なくとも1種の酸化剤は、固体または液体形態で、プロセスに使用される鉱酸に可溶である。
【0031】
本発明によるプロセスに使用される典型的な酸化剤は、塩素酸塩、硝酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、亜塩素酸塩、亜臭素酸塩、亜ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、次亜ヨウ素酸塩、過塩素酸塩、臭素、ヨウ素、過酸化物、過マンガン酸塩およびクロム酸塩からなる群から選択される。本発明によれば、複数の異なる酸化剤の組み合わせを、固体または液体形態で、同じように混合物に導入してもよい。酸化剤は固体として加える場合、たとえばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩として存在してもよい。特に、塩素酸ナトリウムまたはカリウムを使用してもよい。
【0032】
取り扱いおよび投入を容易にするため、溶液の形態の少なくとも1種の酸化剤を加えることが実行可能である。好ましくは、加えられる少なくとも1種の酸化剤および鉱酸は、均一溶液を形成する。場合によっては、こうして製造された混合物の鉱酸は、同様に酸化作用を有してもよい。「少なくとも1種の酸化剤」という語句は、本発明によるプロセスのステップ(c)において、本発明によるプロセスに使用される単数または複数の鉱酸と異なる酸化剤を意味すると理解すべきである。
【0033】
少なくとも1種の酸化剤の曝露時間は、いかなる限定も受けない。好ましい実施形態では、曝露時間は、5〜240分、特に好ましくは10〜120分、特に15〜60分であってもよい。
【0034】
本発明によるプロセスは、室温、たとえば15〜25℃で実行され得る。しかしながら、沸点まで高温でプロセスを実行することが好ましい場合もある。特に、この方法は30〜90℃の温度で実行される。
【0035】
固体または液体形態の少なくとも1種の酸化剤の導入は、ガス状酸化剤と比較していくつかの利点を有する。第1に、使用されるすべての酸化剤が混合物中に実際に存在することを確認できるため、必要とされる酸化剤の量を非常に正確に投入することができる。第2に、固体または液体の少なくとも1種の酸化剤の添加により、溶解により除去される貴金属と酸化剤との間で最適な接触が確保され得る。一方、特許文献1から知られるプロセスの場合のように、塩素ガスなどのガス状酸化剤では、すべての酸化剤が酸化されるべき貴金属に到達するとは限らない。ガス状酸化剤は混合物に完全には溶解せず、貴金属と限定な接触しか有さないためである。
【0036】
本発明によるプロセスの利点の1つは、互いに独立している混合ガスおよび少なくとも1種の酸化剤の供給の結果である。これにより少なくとも1種の酸化剤の最適な投入が可能になり、同時に型本体を小さすぎる機械的応力にさらしながら、溶解により貴金属が遊離されるべき型本体から貴金属が完全にまたはほぼ完全に除去され得るような最適な混合が行われる。貴金属と少なくとも1種の液体または固体酸化剤との間の接触の向上のため、ガス状酸化剤と比較してより短期間で溶解により貴金属含有触媒型本体から貴金属を除去することが、実行可能である。その結果、外来本体は、より短期間の機械的および化学的応力にさらされる。
【0037】
本発明によるプロセス中の外来本体に対する機械的応力が小さくなることは、特に、ごく少量の摩耗した材料が製造されることに反映される。プロセス中に製造される、微粒子とも呼ばれる摩耗した材料が少ないほど、型本体に対するプロセスは温和になる。
【0038】
少なくとも1種の液体または固体酸化剤の供給が終了し、貴金属が溶解により貴金属含有触媒型本体から除去されたならば、この固体(型本体)は、プロセスステップ(d)において、たとえばデカント、濾過または遠心分離により溶液から分離される。
【0039】
この固体は、プロセスステップ(e)において、たとえば鉱酸または、好ましくは水で少なくとも1回洗浄してもよい。この文脈では、貴金属は、できる限り完全に近く固体から除去することができる。次いで、溶解により除去された貴金属の大部分を含む最初の反応液は、洗浄液と組み合わせてもよい。貴金属は、既知の技術的プロセスにより、組み合わせた溶液から回収することができる。
【0040】
貴金属に加えて、非鉄金属、特にカドミウム(Cd)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)のほか鉄(Fe)も、本発明のプロセスにより貴金属含有触媒型本体から除去することができる。
【0041】
本発明によるプロセスの使用により、新しい触媒に再度加工することができる、貴金属を含まない型本体を回収することができる。好ましくは、前記貴金属を含まない型本体は、プロセスの実行後に総重量に対して貴金属を≦100ppm含む。
【0042】
本発明によるプロセスの使用により、触媒型本体から除去された貴金属に加えて1種または複数種の非鉄金属を含み得る貴金属含有溶液をさらに得ることができる。
【0043】
本発明によるプロセスにより、貴金属含有触媒型本体上に最初に存在する貴金属の99重量%超を溶解により除去することができる。
【実施例】
【0044】
実施例1は、パイロット規模の本発明によるプロセスの好ましい実施形態を示す。
【0045】
実施例1:
入れ物の中で、592kgの貴金属含有触媒型本体(直径4mm、α−Al
2O
3製の球上に0.510wt.%Pd;3019gのPdに相当)を213Lの水および321Lの10M HClと混合した。次ぎにこのバルク材料を十分に、しかし溶液の表面が跳ねないように圧縮空気を供給した。これを60℃に加熱した。
【0046】
合計10Lの0.45M NaClO
3溶液を入れ物の底面に供給し、これを15分間静置した。この手順を2回繰り返した。混合物を60℃でさらに2時間維持した。次いで、反応液を入れ物から圧送した。
【0047】
次いで固体残渣を水で6回洗浄した。この目的のため、水が材料を覆うまで加え、これを圧縮空気により30分間混合し、その後溶液を圧送により除去した。
【0048】
反応液および洗浄液を入れ物の中で組み合わせた。組み合わせた溶液を一晩静置し、その間に微細画分が沈降した。溶液をデカントし、残渣を微粒子フィルター(「ブラウバンド(Blauband)」)で濾過し、洗浄した。集めたフィルター残渣(微細画分)を乾燥させた。合計380gのサイン(signs)を得た(出発材料の0.064%)。
【0049】
型本体を入れ物から除去し、その重量が一定のままになるまで乾燥させた。ICP−OESによるパラジウム解析により、型本体の総重量に対して60ppmのPdの残存含有量が得られ、99%の収率に相当した。
【0050】
実験室規模の実施例2〜4から、塩素ガスの供給と比較して酸化剤としての塩素酸ナトリウム溶液の使用における摩耗の違いが証明される。
【0051】
実施例2:
200gの貴金属含有触媒型本体(直径4mm、α−Al
2O
3製の球上に0.510%Pd;1020mgのPdに相当)を500mLの三口フラスコに秤量し、200mlの5M HClで覆い、60℃に加熱した。その後、圧縮空気を、供給管を用いて注入し(40L/h)、ピペットを使用して2mLの4.5M NaClO
3溶液をこの材料に下から注入し、5分間作用させ、次いでさらに1.5mLを加え、10分間反応させた。型本体を篩い分けにより反応液から分離した。120mLの水を6回外来本体に加え、これをそれぞれ1〜2時間静置し、その後再び篩にかけた。その中に含まれた微粒子画分を含む合わせた溶液を微粒子フィルター(「ブラウバンド(Blauband)」)で濾過し、濾液を混合し、次いでそのアルミニウム含有量について解析した。得られた型本体および微粒子画分をそれぞれ乾燥させ、秤量した。
【0052】
実施例3:
実施例2と同様にし、唯一の違いは、混合物に圧縮空気に加えて、塩素酸ナトリウム溶液を加える代わりに塩素(3L/h)を15分間供給したことである。
【0053】
実施例4:
実施例2と同様にし、唯一の違いは、混合物に圧縮空気に加えて、塩素酸ナトリウム溶液を加える代わりに塩素(3L/h)を60分間供給したことである。
【0054】
以下の表は、実施例2〜4の外来本体への応力(摩耗した材料および溶解したAl)のほかPd残渣含有量の結果の比較を示す。実施例2と3の比較から、塩素酸塩による処理の結果、等量の塩素ガスによる処理と比較して同じ期間のパラジウムの移動が改善することが示される。実施例2と4の比較から、より多くのパラジウムを移動させるには、塩素ガスによる処理を長くする必要があることが示される。実施例3と4の比較から、型本体は、処理時間が長くなれば、より強いストレスを受けることが示される。処理が長くなると、より多くのアルミニウムが溶解により型本体から除去され、より多くの摩耗した材料(微粒子)が生じる。
【0055】
【表1】