(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、アンテナと導波管との間の結合効率を改善するために使用され得るレンズ構造を記載する。レンズ構造は、低い比誘電率を有する材料で形成された基材と、高誘電性共振器(HDR)間のエネルギー伝達を可能にするように基材内に離間した複数のHDRとを含む。HDRは、特定の周波数で共振するように巧妙に作られた物体であり、例えば、セラミックタイプの材料で構成することができる。HDRの共振周波数又はその近傍の周波数を有する電磁(EM)波がHDRを通過するとき、その波動のエネルギーは拡大される。HDR間のエネルギー伝達が、HDRの共振によるEM波エネルギーの拡大と組み合わされた場合、EM波は、導波管のみを通過する波の電力比の3倍を超える電力比を有する。このレンズ構造を導波管とアンテナとの間のインターフェースとして使用することにより、様々な通信システムにおける同軸ケーブル及び他のポイントツーポイント技術に代わる低損失かつ低反射のものが得られる。
【0017】
図1は、本開示の1つ以上の技術に係る、導波管及び高誘電性共振器を有する誘電結合レンズを含むシステムの例を示すブロック図である。このシステム10では、導波管12は、導波管12を通って延在するポート14を有する。レンズ16は、導波管12とアンテナ20との間に配置される。レンズ16は、幾何学的パターンでレンズ16全体に分散された複数のHDR18を含む。レンズ16はアンテナ20から信号を受信し、この信号はHDR18を通って導波管12の第1端部に伝搬する。信号は、とりわけ、電磁波又は音響波であってもよい。いくつかの例では、信号は60GHzのミリ波信号である。信号はポート14を通って導波管12を出て行く。
【0018】
導波管12は、波を誘導する構造である。導波管12は、一般に、信号を一次元で伝搬するように制限する。開いた空間では、通常、波は全ての方向に球状波として伝搬する。これが起こると、波は伝搬距離の2乗に比例してその電力を失う。理想的な条件下では、導波管が波を単一の方向にしか伝搬しないように制限する場合、伝搬中に波はほとんど電力を失わない。
【0019】
導波管12は、長さの各端部に2つの開口部、即ちポート(ポート14など)を有する構造であり、この開口部は、導波管12の内部の長さに沿った中空部分によって接続されている。導波管12は、例えば、銅、黄銅、銀、アルミニウム、又は低バルク抵抗率を有する他の金属で作られていてもよい。いくつかの例では、導波管12の内壁が低バルク抵抗率の金属でメッキされている場合、導波管12は、導電性の悪い金属、プラスチック、又は他の非導電性材料で作られていてもよい。一例では、導波管12は2.5mm×1.25mmのサイズを有し、比誘電率ε
r=2.1及び損失正接=0.0002を有するテフロン(登録商標)製であり、導波管12の内壁に厚さ1mmのアルミニウムクラッドを有する。
【0020】
レンズ16は、例えば、Teflon(登録商標)などの低比誘電率材料の基材で作られた構造体である。他の例では、レンズ16の基材部分は、例えば、石英ガラス、コージエライト、ホウケイ酸ガラス、ペルフルオロアルコキシ、ポリエチレン、又はフッ素化エチレンプロピレンなどの材料で作られていてもよい。いくつかの例では、レンズ16は、導波管12の一端に近接して配置された先細端部を持つ台形形状を有する。他の例では、レンズ16は矩形形状を有する。他の例は、他の様々な形状のレンズを特徴とすることができる。一例では、レンズ16は、2mmの長さのテフロン(登録商標)基材で形成され、半径0.35mmのHDR球体を有し、アンテナ20とレンズ16との間の間隔は1.35mmである。
【0021】
いくつかの実施形態では、レンズ16は、幾何学的パターンで基材内に配置された複数のHDR18を含む。一般に、結合効率を向上させるために、幾何学的パターンは、導波管サイズに適合するように設計することができる。いくつかの例では、このパターンは、導波管12から最も離れた垂直平面内の等間隔のHDR18の3×3グリッド、及び、3×3グリッドと導波管12の間の中央に一直線に位置する3つの等間隔のHDR18の垂直な一列であり、この垂直な一列は、導波管12及びポート14のサイズに適合するものである。この幾何学的パターンは、集束の利点を有し得る。上面図から、HDRの配置は三角形の形をとる。EM波、具体的にはHDRの共振周波数又はその近傍の周波数は、アンテナに近接したレンズ16の前部の9つのHDRのうちのいずれかに捕捉される。いくつかの例では、共振周波数は、電磁波の周波数に一致するように選択される。いくつかの例では、複数の共振器の共振周波数はミリ波帯域内にある。一例では、複数の共振器の共振周波数は60GHzである。次に、これらのHDRの各々は、等間隔の3つのHDRの当該単一垂直線内で同じ垂直配置を有する各HDRに向けて波を屈折させることができる。大きな振幅で振動する定在波がレンズ16に形成される。これは、EM波の強度を更に拡大し、最終的にポート14を経由して導波管12に波を集束させる。
【0022】
HDR18は、特定の間隔を有する他の幾何学的パターンで配置することもできる。例えば、いくつかの例では、導波管12のサイズに適合するように、必要ならば、2つの球の垂直列を使用することができる。HDR18は、1つのHDRの共振が周囲の任意のHDRにエネルギーを伝達するように間隔を空けてもよい。この間隔は、HDR18のミー共鳴及びシステム効率に関連する。この間隔は、システム内の任意の電磁波の波長を考慮することによって、システム効率を改善するように選択することができる。各HDR18は、直径及び格子定数を有する。いくつかの例では、格子定数及び共振周波数は、レンズが使用される導波管に少なくとも部分的に基づいて選択される。格子定数は、1つのHDRの中心から隣接するHDRの中心までの距離である。いくつかの例では、HDR18は、1mmの格子定数を有することができる。いくつかの例では、格子定数は電磁波の波長未満である。
【0023】
HDRの直径とHDRの格子定数の比(直径D/格子定数a)を使用して、レンズ16内のHDR18の幾何学的配置を特徴付けることができる。この比は、レンズ構造の比誘電率の差異によって変化し得る。いくつかの例では、共振器の直径の格子定数に対する比は1未満である。一例では、Dは0.7mmであり、aは1mmであり、比は0.7とすることができる。この比が高いほど、レンズの結合効率は低くなる。一例では、
図1に示すようなHDR18の幾何学的配列の格子定数の最大限度は、放射された波の波長である。格子定数は波長より小さくしなければならないが、高い効率のためには、格子定数は波長よりもはるかに小さくなければならない。これらのパラメータの相対的なサイズは、レンズ構造の比誘電率の差異によって変化し得る。格子定数は、放射される波の波長内で所望の性能を達成するように選択することができる。一例では、格子定数は1mmであり、波長は5mm、即ち波長の1/5の格子定数である。一般に、波長(λ)は空気媒体中の波長である。媒体に別の誘電材料を使用する場合、この式の波長は、次のλ
effで置き換えなければならない。
【数1】
ここで、ε
rは媒体材料の比誘電率である。
【0024】
HDR18とレンズ16の基材との間の大きな比誘電率の差異により、HDR18の明確な共振モードが励起される。換言すれば、HDR18が形成される材料は、レンズ16の基材の材料の比誘電率に対して高い比誘電率を有する。大きな差異によって高い性能が得られるので、HDR18の比誘電率はHDR18の共振性を決定する重要なパラメータである。差異が小さいと、レンズ16の基材材料にエネルギーが漏れるため、HDR18の共振が弱くなる恐れがある。差異が大きければ、完全な境界条件にほぼ近い条件が得られ、レンズ16の基材材料にエネルギーがほとんど漏出しないことを意味する。この、ほぼ近い条件は、HDR18を形成する材料が、レンズ16の基材の比誘電率の5〜10倍を超える比誘電率を有する例について想定することができる。いくつかの例では、複数の共振器の各々は、基材の比誘電率よりも少なくとも2倍大きい比誘電率を有する。他の例では、複数の共振器の各々は、基材の比誘電率よりも少なくとも10倍大きい比誘電率を有する。所定の共振周波数に対して、比誘電率が高いほど、誘電性共振器は小さくなり、誘電性共振器内によりエネルギーが集中する。いくつかの例では、複数の共振器は、セラミック材料で作られる。HDR18は、例えば、とりわけ、BaZnTa酸化物、BaZnCoNb、Zrチタン系材料、チタン系材料、チタン酸バリウム系材料、酸化チタン系材料、Y5V及びX7Rを含む、例えば様々なセラミック材料のいずれかで作ることができる。一例では、HDR18は40の比誘電率を有することができる。
【0025】
球形である例として
図1に示されているが、他の例では、HDR18は様々な異なる形状で形成することができる。他の例では、HDR18の各々は、円筒形状を有することができる。更に他の例では、HDR18の各々は、立方体又は他の平行六面体の形状を有することができる。HDR18は他の幾何学的形状を取ることができる。HDR18の機能は、
図5に関して以下で更に詳細に説明するように、形状に応じて変化し得る。
【0026】
アンテナ20は、電磁波の信号を放射するデバイスとすることができる。アンテナ20は、ポート14及びレンズ16を経由して、導波管12から波を受信するデバイスであってもよい。波は、例えば60GHzのミリ波を含む無線周波数スペクトルの電磁波であってもよい。HDR直径及び格子定数が上述の制約に従う限り、システム10のレンズ16は、例えば、無線周波数スペクトルの帯域内の任意の波に使用することができる。いくつかの例では、レンズ16は、電磁スペクトルのミリ波帯において有用であり得る。いくつかの例では、レンズ16は、例えば、10GHzから120GHzの範囲の周波数の信号で使用することができる。他の例では、レンズ16は、例えば、10GHz〜300GHzの範囲の周波数の信号で使用することができる。
【0027】
HDR18を有するレンズ16は、例えば、低コストケーブル市場、非接触測定アプリケーション、チップ間通信、及び、ファイバのデータ速度を提供して密集した配備アーキテクチャをサポートすることができる多数の無線ポイントツーポイントアプリケーション、を含む、様々なシステムで使用することができる。
【0028】
いくつかの例では、
図1のレンズ16などのレンズは、基材及び複数の高誘電性共振器を含むように形成することができ、基材内のHDRの配置は、この形成中に、選択された距離でHDRが互いに離間するように制御される。HDR間の距離、即ち格子定数は、レンズが使用される電磁波信号の波長に基づいて選択することができる。例えば、格子定数は、波長よりかなり小さくてもよい。いくつかの例では、レンズ16の形成中に、レンズ16の基材材料を複数の部分に分割することができる。HDRの平面の位置の決定がある場合、基材材料をセグメント化することができる。半球状の溝が、各HDRの位置にある基材材料の複数の部分に含まれてもよい。異なる形状のHDRを有する他の例では、半円筒形又は半矩形の溝を基材材料に含めることができる。続いて、HDRを基材材料の溝内に配置することができる。次に、基材材料の複数の部分を組み合わせて、全体に埋め込まれたHDRを有する単一レンズ構造を形成することができる。
【0029】
一例では、本開示の1つ以上の技術に従って、電磁波を伝搬するための基材と、基材全体に分散された複数の共振器(例えば、HDR18)とを含むレンズ(例えば、レンズ16)が開示される。複数の共振器の各々は、電磁波の波長に少なくとも部分的に基づいて選択された直径を有し、電磁波の周波数に少なくとも部分的に基づいて選択された共振周波数を有する誘電材料から形成される。複数の共振器の各々はまた、基材の比誘電率を超える比誘電率を有する。複数の共振器のうちの少なくとも2つは、共振器のうちの第1の共振器の中心と、共振器のうちの隣接する第2の共振器の中心との間の距離を画定する格子定数に従って、基材内に離間している。いくつかの例では、本開示の1つ以上の技術に従って、このレンズは、アンテナと導波管との間に配置されることによって、導波管をアンテナに連結するシステムの一部として使用することができる。
【0030】
このレンズは、本開示の1つ以上の技術に従って、レンズが使用される電磁波の周波数に少なくとも部分的に基づいて選択された共振周波数を有する誘電材料の複数の共振器を形成することによって形成される。共振器の各々は、電磁波の波長に少なくとも部分的に基づいて選択される直径を有する。複数の共振器の各々は、基材の比誘電率を超える比誘電率を有する。複数の共振器のうちの少なくとも2つは、共振器のうちの第1の共振器の中心と、共振器のうちの隣接する共振器の第2の共振器の中心との間の距離を画定する格子定数に従って、基材内に離間して配置される。
【0031】
図2A〜
図2Dは、本開示の1つ以上の技術に係る、導波管、レンズ、及びアンテナなどの構成要素の様々な構成例を示すブロック図である。
図2Aは、導波管32とアンテナ36との間にレンズを含まない導波管システムの例を示すブロック図である。このシステム例30Aでは、導波管32は、第1端部に中空の内部を露呈するポート34を有する。この中空内部は、導波管32の全長にわたって延び、導波管32の第2端部の別のポートに通じている。アンテナ36は、例えば、球面波として信号を放射することができる。これらの球面波の一部はポート34を通って導波管32に入り、エネルギーを節約するために、一方向に伝搬するように集束される。アンテナ36が信号を放射する態様により、多くの他の球面波が失われる可能性があり、波が集束されない場合には、伝搬距離の2乗に比例して球面波がエネルギーを失うことにより、波の振幅が著しく減少し得る。
【0032】
図2Bは、台形の低比誘電率材料基材のレンズ38Bを含む導波管システムの例を示すブロック図である。
図2の例では、レンズ38Bはレンズ内にいかなるHDR要素も含んでいない。システム30Bでは、レンズ38Bは三次元台形の形状に形成され、導波管32とアンテナ36との間に配置される。台形レンズ38Bの先細端部は、導波管32のポート34に近接し、台形レンズ38Bの大きな端部は、アンテナ36に近接している。アンテナ36は、例えば、球面波として信号を放射する。これらの球面波の一部は、球面波を導波管32のポート34又はその近傍に集束するレンズ38Bによって受信され、レンズ38Bが存在しない
図2Aのシステム30Aと比較して、導波管32を通過するエネルギーの大きさが増加する。
【0033】
図2Cは、本開示の1つ以上の技術に従って、レンズ38C内に配置された複数のHDRを含む台形状低比誘電率材料基材のレンズ38Cを含む導波管システムの例を示すブロック図である。システム30Cでは、レンズ38Cは三次元台形の形状に形成され、導波管32とアンテナ36との間に配置される。台形レンズ38Cの先細端部は、導波管32のポート34に近接し、台形レンズ38Cの大きな端部は、アンテナ36に近接している。HDR40はレンズ38C内に配置され、HDR40はアンテナ36によって放射される波と同じ周波数で共振するように構成されている。HDR40は、レンズ38Cの基材材料の比誘電率に対して高い比誘電率を有する材料で形成される。HDR40の共振周波数又はその近傍の周波数を有する入射波に起因して、HDR40が共振を開始し、大きな振動振幅を有する定在波を形成するときに、エネルギーが、導波管32に向かって、個々のHDR40間で伝達されるように、HDR40はレンズ38C内で均等に配置される。いくつかの例では、レンズ38C内のHDR40の存在は、レンズ38Cが存在しない
図2Aのシステム30Aと比較して、導波管32を通過する波の振幅をほぼ3.5倍に増加させる。
【0034】
いくつかの例では、アンテナ36は、球面波として信号を放射する。これらの球面波の一部はレンズ38Cによって受信され、レンズ38Cは導波管32に球面波を集束させることにより、導波管32を通過する波の密度を増加させる。これらの球面波はまた、HDR40を通過する。球面波はHDR40の共振周波数又はその近傍の周波数を有するので、HDR40は共振し始め、大きな振動振幅を有する定在波を形成する。これらの共振により、HDR40間でエネルギーが伝達され、波に更にエネルギーが加わり、波の振幅が増幅されることによって、アンテナ36による放射の後に失われたエネルギーが補充され得る。球面波はレンズ38Cを出て行き、ポート34を経由して導波管32に受信され、そこで波が集束される。
【0035】
図2Dは、本開示の1つ以上の技術に従って、レンズ38D内に配置された複数のHDR40を含む矩形の低比誘電率材料基材のレンズ38Dを含む導波管システムの例を示すブロック図である。システム30Dにおいて、レンズ38Dは、三次元矩形の形状に形成され、導波管32とアンテナ36との間に配置される。矩形レンズ38Dの第1端部は導波管32のポート34に近接し、矩形レンズ38Dの第2端部はアンテナ36に面している。HDR40はレンズ38D内に配置され、アンテナ36によって放射される電磁波と同じ周波数又はその近傍で共振するように構成されている。HDR40は、レンズ38Dの基材材料の誘電率に対して高い誘電率を有する材料で形成される。HDR40の共振周波数又はその近傍の周波数を有する入射波に起因して、HDR40が共振を開始するときに、エネルギーが、導波管32に向かって、個々のHDR40間で伝達されるように、HDR40はレンズ38D内で均等に配置される。いくつかの例では、これによって、レンズ38Dを有さない
図2Aのシステム30Aと比較して、導波管32を通過する波の振幅を3倍より大きくすることができる。
【0036】
アンテナ36は、球面波として信号を放射することができる。これらの球面波の一部はレンズ38Dによって受信され、レンズ38Dは導波管32に球面波を集束させることにより、導波管32を通過する波の密度を増加させる。これらの球面波はまた、HDR40を通過する。球面波はHDR40の共振周波数又はその近傍の周波数を有するので、HDR40は共振し始め、大きな振動振幅を有する定在波を形成する。これらの共振により、HDR40間でエネルギーが伝達され、波にエネルギーが加わり、波の振幅が増幅されることによって、アンテナ36による放射の後に失われたエネルギーが補充され得る。球面波はレンズ38Dを出て行き、ポート34を経由して導波管32に受信され、そこで波が集束される。
【0037】
図3A〜
図3Dは、本開示の1つ以上の技術に係る、異なるシステム例における電磁場の例を示す概念図である。例えば、試験に従って電磁波が導波管を通過する際に、導波管、レンズ、及びアンテナの様々な配置の異なる位置に、電磁波の強度が示されている。これらの試験例では、2.5mm×1.25mmの導波管が使用されている。導波管は、厚さ1mmのアルミニウムクラッドも有している。レンズを使用する例では、レンズは、2mmの長さのテフロン(登録商標)製である。レンズはアンテナから1.35mm離れて位置している。この例では、HDRは球形であり、60GHzの波に対して0.35mmの半径と40の比誘電率を有する。格子定数は、1つのHDRの中心から隣接するHDRの中心までの距離を意味し、1mmである。アンテナは、初期電磁界強度が5.13e+03V/mの60GHz電磁波を放射している。
【0038】
図3Aは、本開示の1つ以上の技術に従って、電磁波が導波管を通過する際に、
図2Aのシステム30Aなどのレンズを有さない導波管システムの電磁界の例を示す概念図である。このシステム50Aの例では、導波管52は、第1端部に中空の内部を露呈するポート54を有する。この中空内部は、導波管52の全長にわたって延び、導波管52の第2端部の別のポートに通じている。アンテナ60は、例えば、球面波として信号を放射することができる。アンテナ60は、例えば、球面波として信号を放射することができる。これらの球面波の一部はポート54を通って導波管52に入り、エネルギーを節約するために、一方向に伝搬するように集束される。アンテナ60が信号を放射する態様により、多くの他の球面波が失われる可能性があり、波が集束されない場合には、伝搬距離の2乗に比例して球面波がエネルギーを失うことにより、波の振幅が著しく減少し得る。
【0039】
システム50Aの例では、電磁波がアンテナ60から放射され、ポート54を経由して導波管52に入る。導波管52の内部に入ると、電磁波が集束され、波の電磁場56Aの強度は一定のままである。電磁場56Aは、最大5.13e+03V/mに近い測定値の小さな中心を有するが、中心からの距離が増加するにつれて急速に消散する。
【0040】
図3Bは、台形低比誘電率材料基材のレンズを有するが、
図2Bのシステム30Bなどの、レンズの内部に複数のHDRを有さない導波管システムの電磁界の一例を示す概念図である。このシステム50Bでは、三次元台形形状の低比誘電率材料基材のレンズ58Bが、導波管52をアンテナ56に連結するシステムに含まれている。台形レンズ58Bの先細端部は、導波管52のポート54に近接し、台形レンズ58Bの大きな端部は、アンテナ56に近接している。アンテナ56は球面波として信号を放射する。これらの球面波の一部は、球面波を導波管52のポート54又はその近傍に集束するレンズ58Bによって受信され、レンズ58Bが存在しない
図3Aのシステム50Aと比較して、導波管52を通過するエネルギーの大きさが増加する。
【0041】
このエネルギーの増加は、電磁場56Bによって知ることができる。システム50Bの例では、電磁波がアンテナ60から放射され、ポート54を経由して導波管52に入る。導波管52の内部に入ると、電磁波が集束され、波の電磁場56Bの強度は一定のままである。
【0042】
図3Cは、この開示の1つ以上の技術に従って、台形低比誘電率材料基材レンズと、
図2Cのシステム30Cなどのレンズの内部に複数のHDRと、を有する導波管システムの電磁界の一例を示す概念図である。システム50Cは、
図2Cのシステム30Cと同様に構成された、導波管52、ポート54、レンズ58C、及びアンテナ60を備える。エネルギーの増加は、電磁場56Cにおいて、
図3A及び
図3Bの電磁場と比較して示されている。システム50Cの例では、5.13e+03V/mである電磁場56Cの部分は電磁場56Cのほぼ全体である。電磁場56Cにわたるこの増加した電位差によって、レンズ58Cが存在しない
図3Aのシステム50Aと比較して、導波管52を通過する波の振幅はほぼ3.5倍に増加する。
【0043】
図3Dは、この開示の1つ以上の技術に従って、矩形の低比誘電率材料基材のレンズと、
図2Dのシステム30Dなどのレンズ内に分散された複数のHDRとを有する導波管システムの電磁界の一例を示す概念図である。システム50Dは、
図2Dのシステム30Dと同様に構成された、導波管52、ポート54、レンズ58D、及びアンテナ60を備える。
【0044】
このエネルギーの増加は、電磁場56Dによって知ることができる。システム50Cの例では、5.13e+03V/mである電磁場56Dの部分は、電磁場56Dのほぼ全体である。電磁場56Dにわたるこの増加した電位差によって、レンズ58Cが存在しない
図3Aのシステム50Aと比較して、導波管52を通過する波の振幅はほぼ3.5倍に増加する。
【0045】
図4は、本開示の1つ以上の技術に係る、
図3A〜
図3Dのブロック図における電磁場強度の凡例を示すブロック図である。凡例66は、
図3A〜
図3Dのブロック図のいずれかに存在し得る電磁場強度(例えば電磁場56A〜56D)の変化を示す。この例では、電磁界の強さはV/m、即ち、メートル当たりのボルトで測定される。アンテナ60(
図3A〜
図3D)は、最初に、凡例66に可能な最大値として示される、5.13e+03V/mの電磁場強度を有する球面波を放射する。凡例66の階調度は、凡例66が更に下の位置に下がるにつれて減少する電磁場の強度を示す。
【0046】
図5は、本開示の1つ以上の技術に従って、異なるシステムにおける異なる周波数での信号の振幅を示すグラフである。
図5は、周波数(GHz単位)の関数としての、デシベルによる振幅(dB単位)を示している。HDRを有する矩形レンズ(例えば、
図2Dのシステム30D)を備えた導波管システムと、HDR(例えば、
図2Cのシステム30C)を有する台形レンズを備えた導波管システムと、の双方について、システムを通過する電磁波の振幅は、台形レンズのみ(例えば、
図2Bのシステム30B)又は導波管のみ(例えば、
図2Aのシステム30A)を有する導波管システムのいずれよりも、一貫して大きい。最大の振幅及び対応する出力比は、以下のように測定された。
【表1】
【0047】
表1で分かるように、HDRを有する台形テフロン(登録商標)レンズ(例えば、
図2CのHDR40を有する台形レンズ38C)を付け足すと、導波管単独と比較して、関連する導波管システムを伝搬する電磁波に5デシベルを超える値が加わる。これは、電磁波の出力比にほぼ3.5を乗じることに等しい。HDRを有する矩形レンズ(例えば、
図2DのHDR40を有する矩形レンズ38D)を付け足すと、導波管単独と比較して、関連する導波管システムを伝搬する電磁波に5デシベルが加わり、電磁波の出力比が3倍を超えることになる。
【0048】
図6A〜
図6Cは、本開示の1つ以上の技術に係る、HDRの構造に使用され得る様々な形状を示すブロック図である。
図6Aは、本開示の1つ以上の技術に係る、球形のHDRの例を示す。球形のHDR80は、例えば、とりわけ、BaZnTa酸化物、BaZnCoNb、Zrチタン系材料、チタン系材料、チタン酸バリウム系材料、酸化チタン系材料、Y5V及びX7Rを含む、例えば様々なセラミック材料で作ることができる。
図6B及び
図6CのHDR82及び84は、類似の材料で作ることができる。球形のHDR80は対称なので、アンテナの入射角と放射された波は本システム全体に影響を及ぼさない。HDR球80の比誘電率は、共振周波数に直接関係している。例えば、同じ共振周波数で、より高い比誘電率材料を使用することによって、HDR球80のサイズを縮小することができる。HDR球80のTM共振周波数は、モードS及び極nについて、以下の式を使用して計算することができる。
【数2】
【0049】
HDR球80のTE共振周波数は、モードS及び極nについて、以下の式を使用して計算することができる。
【数3】
ここで、aは球形共振器の半径である。
【0050】
図6Bは、本開示の1つ以上の技術に係る円筒形HDRの例を示すブロック図である。円筒形HDR82は、全ての軸について対称である、とはいえない。したがって、円筒形HDR82に対するアンテナと放射された波の入射角は、波が円筒形HDR82を通過する際に、
図5Aの対称的な球状のHDR80とは違って、入射角に依存して波に偏波の影響を及ぼし得る。孤立した円筒形HDR82のTE01nモードのおおよその共振周波数は、以下の式を使用して計算することができる。
【数4】
ここで、aは円筒形共振器の半径であり、Lはその長さである。aとLは共にミリメートル単位である。共振周波数f
GHzはギガヘルツの単位である。この式は、0.5<a/L<2及び30<ε
r<50の範囲で約2%の精度がある。
【0051】
図6Cは、本開示の1つ以上の技術に係る立方体HDRの例を示すブロック図である。立方体HDR84は、全ての軸について対称である、とはいえない。したがって、円筒形HDR82に対するアンテナと放射された波の入射角は、波が立方体HDR84を通過する際に、
図5Aの対称的な球形のHDR80とは違って、波に偏波の影響を及ぼし得る。おおよそ、立方体HDR84の最小共振周波数は、次のようになる。
【数5】
ここで、aは立方体の辺の長さであり、cは空気中の光の速度である。
【0052】
図7は、本開示の1つ以上の技術に従って、複数の高誘電性共振器を有するレンズを形成する方法のステップを例示するフロー図である。この方法800では、複数の共振器(例えば、HDR18)を形成することができ、複数の共振器の各共振器は、基材の比誘電率を超える比誘電率を有する(802)。例えば、複数の共振器は、使用される電磁波の周波数に少なくとも部分的に基づいて選択された共振周波数を有する誘電材料から形成してもよい。共振器の各々は、電磁波の波長に少なくとも部分的に基づいて選択される直径を有するように形成してもよい。複数の共振器を格子定数に従ってレンズの基材材料内に配置することによって、レンズ(例えば、レンズ16)を形成することができる(804)。格子定数は、共振器のうちの第1の共振器の中心と、共振器のうちの隣接する第2の共振器の中心との間の距離を画定する。
【0053】
本発明の様々な実施形態について、これまで記載してきた。これらの実施形態及び他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれるものである。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[27]に記載する。
[項目1]
レンズであって、
電磁波を伝搬させる基材と、
前記基材全体に分散された複数の共振器と、を備え、
前記複数の共振器の各々は、前記電磁波の波長に少なくとも部分的に基づいて選択された直径を有し、前記電磁波の周波数に少なくとも部分的に基づいて選択された共振周波数を有する誘電材料から形成され、
前記複数の共振器の各々は、前記基材の比誘電率を超える比誘電率を有し、
前記複数の共振器のうちの少なくとも2つは、前記共振器のうちの第1の共振器の中心と、前記共振器のうちの隣接する第2の共振器の中心との間の距離を画定する格子定数に従って、前記基材内に離間している、レンズ。
[項目2]
前記格子定数は、前記電磁波の前記波長未満である、項目1に記載のレンズ。
[項目3]
前記共振周波数は、前記電磁波の前記周波数と一致するように選択される、項目1又は2に記載のレンズ。
[項目4]
前記格子定数及び前記共振周波数は、前記レンズが使用される前記導波管に少なくとも部分的に基づいて選択される、項目1から3のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目5]
前記共振器の前記直径の前記格子定数に対する比が1未満である、項目1から4のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目6]
前記複数の共振器の各々は、前記基材の比誘電率より少なくとも2倍大きい比誘電率を有する、項目1から5のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目7]
前記複数の共振器の各々は、前記基材の比誘電率より少なくとも10倍大きい比誘電率を有する、項目1から6のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目8]
前記複数の共振器の前記共振周波数は、ミリ波帯域内である、項目1から7のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目9]
前記複数の共振器の前記共振周波数は、60GHzである、項目1から8のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目10]
前記複数の共振器はセラミック材料製である、項目1から9のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目11]
前記複数の共振器は、BaZnTa酸化物、BaZnCoNb、Zrチタン系材料、チタン系材料、チタン酸バリウム系材料、酸化チタン系材料、Y5V、及びX7Rのうちの1つから製造される、項目1から10のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目12]
前記基材は、テフロン(登録商標)、石英ガラス、コージェライト、ホウケイ酸ガラス、ペルフルオロアルコキシ、ポリエチレン、及びフッ素化エチレンプロピレンのうちの1つから製造される、項目1から11のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目13]
前記複数の共振器は、球形、円筒形、又は立方形のうちの1つを有して形成される、項目1から12のいずれか一項に記載のレンズ。
[項目14]
レンズを形成する方法であって、
前記レンズが使用される電磁波の周波数に少なくとも部分的に基づいて選択された共振周波数を有する誘電材料の複数の共振器を形成することであって、前記共振器の各々は、前記電磁波の波長に少なくとも部分的に基づいて選択される直径を有し、
前記複数の共振器の各々は、前記基材の比誘電率を超える比誘電率を有する、複数の共振器を形成することと、
前記共振器のうちの第1の共振器の中心と、前記共振器のうちの隣接する第2の共振器の中心との間の距離を画定する格子定数に従って、前記複数の共振器のうちの少なくとも2つを前記基材内に離間するように配置することと、を含む、方法。
[項目15]
前記格子定数を前記電磁波の前記波長未満となるように選択することを更に含む、項目14に記載の方法。
[項目16]
前記電磁波の前記周波数に一致するように前記共振周波数を選択することを更に含む、項目14又は15に記載の方法。
[項目17]
前記レンズが使用される前記導波管に少なくとも部分的に基づいて前記格子定数及び前記共振周波数を選択することを更に含む、項目14から16のいずれか一項に記載の方法。
[項目18]
前記共振器の前記直径の前記格子定数に対する比が1未満である、項目14から17のいずれか一項に記載の方法。
[項目19]
前記複数の共振器の各々は、前記基材の比誘電率よりも少なくとも2倍大きい比誘電率を有する、項目14から18のいずれか一項に記載の方法。
[項目20]
前記複数の共振器の各々は、前記基材の比誘電率より少なくとも10倍大きい比誘電率を有する、項目14から19のいずれか一項に記載の方法。
[項目21]
前記共振器の前記共振周波数は、ミリ波帯域内である、項目14から20のいずれか一項に記載の方法。
[項目22]
前記共振器の前記共振周波数は60GHzである、項目14から21のいずれか一項に記載の方法。
[項目23]
前記共振器はセラミック材料製である、項目14から22のいずれか一項に記載の方法。
[項目24]
前記共振器は、BaZnTa酸化物、BaZnCoNb、Zrチタン系材料、チタン系材料、チタン酸バリウム系材料、酸化チタン系材料、Y5V、及びX7Rのうちの1つから製造される、項目14から23のいずれか一項に記載の方法。
[項目25]
前記基材は、テフロン(登録商標)、石英ガラス、コージェライト、ホウケイ酸ガラス、ペルフルオロアルコキシ、ポリエチレン、及びフッ素化エチレンプロピレンのうちの1つから製造される、項目14から24のいずれか一項に記載の方法。
[項目26]
前記複数の共振器は、球形、円筒形、又は立方形のうちの1つを有して形成される、項目14から25のいずれか一項に記載の方法。
[項目27]
システムであって、
導波管と、
アンテナと、
前記アンテナと前記導波管との間に配置されたレンズと、を備え、前記レンズは、
前記アンテナによって送信又は受信される電磁波を伝搬するための基材と、
前記基材全体に分散された複数の共振器と、を含み、前記複数の共振器の各々は、前記電磁波の波長に少なくとも部分的に基づいて選択された直径を有し、前記電磁波の周波数に少なくとも部分的に基づいて選択された共振周波数を有する誘電材料から形成され、
前記複数の共振器の各々は、前記基材の比誘電率を超える比誘電率を有し、
前記複数の共振器のうちの少なくとも2つは、前記共振器のうちの第1の共振器の中心と、前記共振器のうちの隣接する第2の共振器の中心との間の距離を画定する格子定数に従って、前記基材内に離間している、システム。