(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585732
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】高圧流体システム
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20190919BHJP
F04B 15/02 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
F04B49/06 321A
F04B15/02 Z
【請求項の数】18
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-551192(P2017-551192)
(86)(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公表番号】特表2018-510292(P2018-510292A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】GB2016050884
(87)【国際公開番号】WO2016156833
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年11月29日
(31)【優先権主張番号】1505551.0
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513269789
【氏名又は名称】フィニッシング ブランズ ユーケー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】アラン スミス
(72)【発明者】
【氏名】ナイジェル ウッド
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52−011227(JP,A)
【文献】
特開昭50−084901(JP,A)
【文献】
実開平03−026368(JP,U)
【文献】
特開昭63−72374(JP,A)
【文献】
実開平3−86059(JP,U)
【文献】
米国特許第5058805(US,A)
【文献】
米国特許第5040732(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度流体を配送するシステムであって、
可変速ポンプと、
該可変速ポンプによって前記流体を送り込む回路であって、複数の流体排出口を有すると共に、回路に沿って配置された少なくとも一つの弁を有するループを備える回路と、
前記少なくとも一つの弁の状態を制御すると共に、前記可変速ポンプの動作及び速度を制御するコントローラであって、
(i)高圧モードで前記回路内に前記流体を送り込み、前記流体が前記可変速ポンプから前記高圧モードで前記ループに沿って互いに逆方向で前記ループ及び前記複数の流体排出口へと流れ、前記コントローラが前記高圧モードで前記可変速ポンプの前記速度を制御し、前記回路内の前記流体の圧力を維持するように構成され、
(ii)前記複数の流体排出口のいずれも使われない期間中に低圧モードで、前記ループに沿って一つの方向に前記回路の周りへ前記流体を送り込む、コントローラと、
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記低圧モードで、流体が前記可変速ポンプから前記ループの第1端を通って流れ、前記ループの第2端を通って流出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムが製造施設内に設置され、製品製造場所内の複数の位置に前記複数の流体排出口が置かれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記可変速ポンプがブースターステーションに置かれ、前記可変速ポンプが中圧ポンピングステーションから前記流体を受けるための流入口を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記中圧ポンピングステーションが中圧ポンプとラムユニットを備え、該ラムユニットは、前記中圧ポンプの流入口へ前記流体が入るように、該流体へ圧力を加えるように構成され、前記中圧ポンプは前記可変速ポンプの前記流入口へ前記流体を送り込むように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記可変速ポンプの流出口の流体圧力を検出するように構成された流出口圧力センサを更に備え、前記流出口圧力センサは前記コントローラに前記流体圧力を表す信号を与えるように構成され、前記コントローラは前記可変速ポンプの前記流出口における前記流体圧力に基づいて前記可変速ポンプの前記速度を制御するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記可変速ポンプの動作により、前記可変速ポンプの最大作動圧力より低い前記可変速ポンプの前記流出口における前記流体圧力が与えられていることを確認するために、前記可変速ポンプの前記流出口での前記流体圧力に反応する圧力スイッチを更に備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記可変速ポンプが交流モータ駆動の容積型ポンプである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記交流モータがインバータで駆動される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記インバータがベクトル駆動制御を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記インバータが閉ループベクトル駆動制御を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
高粘度流体配送システムを作動させる方法であって、
前記システムが可変速ポンプと前記流体を送り込む回路とを備え、該回路が複数の流体排出口を有すると共に、回路に沿って配置された少なくとも一つの弁を有するループを備え、前記方法が、
(i)前記少なくとも一つの弁の状態を制御すると共に、高圧モードで前記回路内に前記流体を送り込むために、前記可変速ポンプの動作及び速度を制御するステップであって、前記流体は、前記高圧モードで前記ループに沿って互いに逆方向で前記ループ及び前記複数の流体排出口へと流れ、前記高圧モードで前記回路内の前記流体の圧力を維持するために前記可変速ポンプの前記速度を制御する、ステップと、
(ii)前記少なくとも一つの弁の状態を制御すると共に、前記可変速ポンプの前記動作及び速度を制御するステップであって、前記複数の流体排出口のいずれも使われない期間中に低圧モードで、前記ループに沿って一つの方向に前記回路の周りへ前記流体を送り込む、ステップと、
を含む、ことを特徴とする前記方法。
【請求項13】
前記低圧モードで、前記流体が前記ループの第1端を通って送り込むと共に前記ループの第2端を通って送り込む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記システムが前記可変速ポンプの流出口での前記流体の圧力を監視するように構成された圧力センサを備え、
前記方法が更に、前記高圧モードで
前記圧力センサにより、前記可変速ポンプの前記流出口での流体圧力のプリセット流体圧力より下への降下を検出するステップと、
前記可変速ポンプを始動、又は前記可変速ポンプの前記速度を上昇させるステップと、
前記可変速ポンプの前記流出口での前記流体の前記圧力を前記プリセット流体圧力まで復帰させるステップと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記圧力センサにより、前記可変速ポンプの前記流出口での前記流体の前記圧力が前記プリセット流体圧力へと復帰したことを検出するステップと、
前記可変速ポンプの前記速度を零速まで下げるステップと、
前記可変速ポンプが零速である間に前記可変速ポンプを使って前記流体への力を所定の時間にわたって維持するステップと、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
高粘度流体を配送するシステムであって、
中圧ポンピングステーションと、
前記中圧ポンピングステーションから流体を受けるように構成された流入口を有する可変速ポンプを備えるブースターステーションと、
前記流体を送り込む回路と、
前記回路に沿って配置された弁と、
前記回路のループからの複数の流体排出口と、
前記弁の状態を制御すると共に、前記可変速ポンプの動作及び速度を制御するコントローラであって、
(i)高圧モードで前記回路内に前記流体を送り込み、前記高圧モードで前記ループに沿って互いに逆方向で該ループ及び前記複数の流体排出口へ加圧流体を与え、前記コントローラが前記高圧モードで前記可変速ポンプの前記速度を制御し、前記回路内の前記流体の圧力を維持するように構成され、
(ii)前記複数の流体排出口のいずれも使われない期間中に低圧モードで、前記ループの周りで一つの方向に前記流体を送り込む、コントローラと、
を備える、ことを特徴とするシステム。
【請求項17】
前記中圧ポンピングステーションが中圧ポンプとラムユニットを備え、該ラムユニットは、前記中圧ポンプの流入口へ前記流体が入るように、該流体へ圧力を加えるように構成され、前記中圧ポンプは前記可変速ポンプの前記流入口へ前記流体を送り込むように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
高粘度流体配送システムを作動させる方法であって、
前記システムが中圧ポンピングステーションと、可変速ポンプを備えるブースターステーションと、前記流体を送り込む回路と、該回路に沿って配置された弁と、前記回路のループからの複数の流体排出口と、を備え、
前記方法が、
(i)前記流体を前記中圧ポンピングステーションから前記ブースターステーションへ送り込むステップと、
(ii)前記弁の状態を制御すると共に、前記可変速ポンプの前記動作及び速度を制御するステップであって、高圧モードで前記回路内に前記流体を送り込み、前記ループに沿って互いに逆方向で前記ループ及び前記複数の流体排出口へ加圧流体を与え、前記高圧モードで前記回路内の前記流体の圧力を維持する、ステップと、
(iii)前記可変速ポンプの前記動作及び速度を制御するステップであって、前記複数の流体排出口のいずれも使われない期間中に低圧モードで前記ループの周りで一つの方向へ前記流体を送り込む、ステップと、
を含む、ことを特徴とする前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧流体システムに関する。より詳細には、本発明はマスチック(mastic)のような濃く高粘度の材料を配送するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
マスチック材料は製品製造施設において、特に自動車製造においてシール材としてますます使われている。典型的には、製品が製造プロセスの様々な段階を通じて、例えば生産ラインの異なるステーションで移動されるため、マスチック材料は製品(例えば車両の部品)へ塗布される。
【0003】
マスチックを塗布する必要がある場合、オペレータはマスチックが高圧で供給されるマスチック回路上の排出口(off-take)に接続されたマスチック塗布ガンに手を伸ばすだけでよい。高圧はポンプにより与えられる。
【0004】
従来は、使用されるポンプは油圧式又は空気圧式の容積型ポンプであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マスチックはとても濃く粘性が高いため、従来のポンプで得られる容積及び圧力では回路が短い必要があり、これまではマスチックポンプ及び送られるマスチック材料のリザーバを排出口の置かれるステーションの近くに置く必要があった。更に、流体が濃くなりやすく、工場設備が使用されていない夜間又は週末など、長すぎる時間にわたって動かされずに放置されると、凝固することさえあるという問題がある。大規模な生産ラインでは、これらの問題のために、多数のマスチックポンピング回路がそれに応じた多数のポンプ及び格納容器(リザーバ)とともに、マスチックが使われる場所の近くに設置されてきた。
【0006】
エポキシ材料又は他の種類の接着剤のような他の高粘度流体でも、同様の問題は発生しうる。
【0007】
したがって本発明は、前述の問題を克服又は軽減する、改良された高圧流体配送システムを提供するよう考え出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によれば、高粘度流体の配送システムが提供される。システムは可変速ポンプを備える。流体が送られる回路は、回路からの複数の流体排出口を有するループを備える。コントローラは、(i)流体がポンプからループの両端を通って流体排出口へと流れる高圧モードでポンプが回路内に流体を送り込むポンプの動作及び速度を制御する。高圧モードである間、コントローラはポンプの速度を制御して回路内の流体の圧力を維持する。コントローラはまた、(ii)流体排出口のいずれも使われない期間中に低圧モードでポンプが流体を回路の周りに送り込むポンプの動作及び速度を制御する。
【0009】
システムを高圧モードで作動させることには、製造場所の排出口のすべてで高圧流体が使用可能であるという利点がある。システムを低圧モードで作動させることには、例えば製造場所の工場設備が稼働していない期間に流体がシステム中を動き続けるという利点がある。
【0010】
第1態様の一実施形態において、低圧モードでは流体はポンプからループの第1端を通って流れ、ループの第2端を通って流出する。
【0011】
第1態様の一実施形態において、システムは製造施設内に設置され、製品製造場所の複数の位置に流体排出口が置かれる。
【0012】
第1態様の一実施形態において、可変速ポンプはブースターステーションに置かれ、ポンプは中圧ポンピングステーションから流体を受ける流入口を有する。
【0013】
第1態様の一実施形態において、中圧ポンピングステーションはラムユニットを備える。ラムユニットは、ポンプに適切に呼び水が入るように、流体が確実にポンプの流入口に入るようにする。
【0014】
第1態様の一実施形態において、システムはポンプの流出口に流体圧力検出のための流出口圧力センサを更に備える。流出口圧力センサは検出された圧力を表す信号をコントローラに与え、コントローラは検出された流出口流体圧力に基づいてポンプの速度を制御する。
【0015】
第1態様の一実施形態において、ポンプの動作によってポンプの最大作動圧力より低い流体圧力が与えられていることを確認するために、システムはポンプの流出口での流体圧力に反応する圧力スイッチを更に備える。
【0016】
第1態様の一実施形態において、可変速ポンプは交流モータ駆動の容積型ポンプである。
【0017】
第1態様の一実施形態において、交流モータはインバータで駆動される。好ましくは、インバータは閉ループベクトル駆動制御であり得るベクトル駆動制御を有する。
【0018】
本発明の第2態様によれば、高粘度流体配送システムを作動させる方法が提供される。システムは流体が送られる回路、可変速ポンプ及び回路からの複数の流体排出口を備える。方法は、(i)高圧モードでポンプが回路内に流体を送り込む加圧流体を排出口へ与えるようにポンプの動作及び速度を制御する第1ステップを含む。高圧モードの間、ポンプの速度は回路内の流体の圧力を維持するように制御される。方法は、流体排出口のいずれも使われない期間中に低圧モードでポンプが流体を回路の周りに送り込むポンプの動作及び速度を制御する第2ステップを含む。
【0019】
第2態様の一実施形態において、流体排出口は回路内のループからの排出口であり、高圧モードでは流体はループの両端を通ってループへ送り込まれる。
【0020】
第2態様の一実施形態において、低圧モードでは流体はループの第1端を通って送り込まれ、ループの第2端を通って汲み出される。
【0021】
第2態様の一実施形態において、システムはポンプの流出口での流体の圧力を監視する圧力センサを備える。方法は、高圧モードでポンプ流出口での流体圧力がプリセット流体圧力より下へ降下したことを圧力センサにより検出するステップを更に含む。方法は、高圧モードでポンプを始動、又はポンプの速度を上昇させてポンプ流出口での流体の圧力をプリセット値へと回復させることをさらに含む。
【0022】
第2態様の一実施形態において、方法は、ポンプ流出口での流体がプリセット値へと復帰したことを圧力センサを使って検出するステップを更に含む。方法は、ポンプの速度を零速まで下げて、ポンプが零速である間にポンプを使って流体への力を所定の時間にわたって維持するステップをさらに含む。
【0023】
本発明の第3態様によれば、高粘度流体を配送するシステムが提供される。システムは中圧ポンピングステーション、中圧ポンピングステーションから流体を受ける流入口を有する可変速ポンプを備えるブースターステーション、流体が送られる回路、回路からの複数の流体排出口及びコントローラを備える。コントローラはポンプの動作及び速度を制御し、(i)高圧モードで回路内へ流体を送り込む加圧流体を排出口へ与え、コントローラがポンプの速度を制御して回路内の流体の圧力を維持し、(ii)流体排出口のいずれも使われない期間中に低圧モードで流体を回路の周りに送り込む。
【0024】
中圧ポンピングステーションはラムユニットを備えることができる。
【0025】
本発明の第4態様によれば、高粘度流体配送システムを作動させる方法が提供される。システムは中圧ポンピングステーション、可変速ポンプを備えるブースターステーション、流体が送られる回路及び回路からの複数の流体排出口を備える。方法は、(i)中圧ポンピングステーションからブースターステーションへ流体を送ること、(ii)可変速ポンプの動作及び速度を制御して、高圧モードで回路内へ流体を送り込み、加圧流体を排出口へ与え、可変速ポンプの速度を制御して回路内の流体の圧力を維持すること、及び(iii)流体排出口のいずれも使われない期間中に、低圧モードで可変速ポンプの動作及び速度を制御して流体を回路の周りに送り込むこと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】製造施設における本発明の態様に係る高圧流体配送システムの概略配置図である。
【
図2a】高圧動作モードの流路がハイライトされた
図1の配置図を示す。
【
図2b】低圧再循環動作モードの流路がハイライトされた
図1の配置図を示す。
【
図3】高圧ポンプ及び関連制御を含む
図1のシステムのブースターステーションの更なる詳細を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照すると、マスチックのような流体の配送に適した高圧システムの好ましい実施形態の概略図が示されている。システムは流体が循環する回路20を含む。多数のポンプ24、26が流体を送り込むのに使われる。示されるように、ポンプは2つのポンピング段に配置される。第1ポンピング段は、2つの中圧ポンプ24a、24bを含む作業用中圧ポンピングステーション23を含む。
【0028】
図1に示されるように、中圧ポンピングステーション23はラムユニットの形態であり、その中にはマスチック流体を含む容器22(通常円筒形)が取り付けられている。ポンプ24a、24bは、初期には満たされた容器22の上部にある定位置に取り付けられる。流体が汲み上げられると、ラム27は流体がポンプ24a、24bの流入口へ入るように容器22内の流体へ圧力を加え、ポンプに適切に呼び水が入ることを確実にする。典型的には、一対のそのような中圧ポンピングステーション23は連動して動作し、いつでも一方のステーションがポンピングし、他方は待機している。概して、作業用中圧ポンピングステーション23はラムユニットがその運動距離の上端に達して容器22がほぼ空になるまで動作する。その時点では、(それまで)作業中のステーション23内の容器22が補充されるか、又は満たされた容器と交換されている間、待機中の中圧ポンピングステーションが引き継ぐ。第2ポンピング段は高圧ポンプ26を含むブースターステーション25として作動する。第2ポンピング段の例は以下でより詳細に説明される。第2ポンピング段は、流体が回路20へ、及び/又は回路中へと送られる流出口29を有する。
【0029】
回路20はまた、典型的には製造場所31を巡るループ30を含み、排出口32を有する。排出口32のそれぞれは配管34に通じており、この配管からの流体をオペレータ又はロボットなどの制御された機械が必要な時にマスチックガンのような塗布器(図示せず)を操作して製造場所31にある製品の部品に塗布する。回路20はループ30から戻って中圧ポンピングステーション23へ通じる戻り配管40を含む。リンク弁36は(ポンプ26の流出口29の後の地点にある)ループ30の開始点と戻り配管40の前のループの終点の間の短い接続配管内に備えられている。戻り配管40の停止弁38は、ループ30と戻り配管40の間の流れを防ぐために閉じることができる。
【0030】
システムは高圧モード又は低圧再循環モードのいずれかで動作するよう構成されている。高圧モードではリンク弁36は開けられ、停止弁38は閉じられる。
図2aは高圧動作モードの流路がハイライトされた
図1の配置図を示す。このモードでは、ポンプは流体をループ30の中へ、その両端から送り込む。これにより、高圧流体が製造場所31の排出口32のすべてで利用可能になる。
【0031】
低圧再循環モードではリンク弁36は閉じられ、停止弁38が開けられる。このモードでは、ポンプは流体を低圧でループ30の周りに送り込む、開けられた停止弁38と戻り配管40を通して中圧ポンピングステーション23へと戻す。
図2bは低圧再循環動作モードの流路がハイライトされた
図1の配置図を示す。これにより、流体が、例えば製造場所31の工場設備が稼働していない期間中にシステム中を動き続けることが確実になる。
【0032】
代替の配置では、高圧モードで、流体はループの中へ、及びループ中を一方向に、すなわち一端からのみ送り込む。この場合、停止弁38は閉じたままで、リンク弁36もまた閉じられている(又は完全になくすこともできる)。
【0033】
システムの動作はコントローラ28により制御される。コントローラ28はポンプ26の速度を制御し、1つ又は複数の排出口32が使用されている期間中に高圧モードで流体/マスチックを回路20の周りへ送る。このモードでは、コントローラはポンプ26の速度を制御してループ30内の流体/マスチックの圧力を維持する。コントローラはまたポンプ26を制御して、排出口32のいずれも使われない期間中に低圧モードで流体マスチックを回路20の周りへ送り込む。
【0034】
図3は高圧ポンプ26を備えるブースターステーション25をより詳細に示す。高圧ポンプ26は典型的には流体をポンピングするためにシリンダ内部で往復運動するピストンを備える容積型ポンプであり得る。ピストンは駆動部42(その例が
図3に示されるポンプと関連して以下で説明される)により駆動される。駆動部は、以下で説明される
図4の例では交流モータである可変速モータ43に結合される。モータの動作及び速度は、(プログラマブルコントローラ、コンピュータなどの)コントローラ及びインバータを収容する制御盤28から制御される。
図3に示されるように、ポンプ26、駆動部42及びモータ43は床に取り付けられたフレーム41で支えられている。
【0035】
ポンプ26は、中圧ステーション23(
図1参照)から流体を受ける際に通る流入口44と、
図1を参照して上で説明された流出口29を有する。流入口圧力センサ45はポンプ流入口44での流体圧力を監視する。流出口圧力センサ46はポンプ流出口29での流体圧力を監視する。流入口圧力センサ45により、ポンプ26がポンピングを開始する前に流入口44で流体に充分な圧力がかかっている(すなわちポンプ26に呼び水が入れられている)ことが確実になる。また、ポンプが所定の最大圧力となった場合に、高圧モードでポンプがポンピングを続けないことを保証する安全機能を提供する圧力スイッチ47がポンプ流出口にある。圧力センサ45、46及び圧力スイッチ47からの信号が制御盤28内のコントローラへ与えられる。ポンプ流入口44の前の弁48及びポンプ流出口29の別の弁49を使って、(例えば保守や修理目的で)ブースターステーションを孤立させることができる。
【0036】
なお、高圧モードで動作する場合、製造場所での生産が流体/マスチックをまったく使用しない、又は非常に少量使用する短い期間がありうる。そのような期間にポンプ、特に高圧ポンプ26は流体/マスチックへなおも圧力を加えつつ、極端な低速で動作、又は更に静止している必要がありうる。以下で説明されるポンプは、このような種類の動作に特に適するよう開発された。しかし、代替のポンプ又はポンプ配列を
図1に示されるものと類似のシステムで使うこともできる。
【0037】
図1、2a、3を参照すると、高圧モードでポンプ26とそのコントローラが、真の圧力閉ループ制御システムと同様に、ポンプ26の流出口での圧力をポンプ26の流量とは関係なく、プリセット値に保っている。このように、流体(例えばマスチック)が使用される場合、又は製造場所31にて使用可能でなければならない場合、コントローラはポンプを制御してループ30内の流体圧力を維持する。流出口圧力センサ46が圧力の降下を検知すると、コントローラはポンプ26を始動させ、又は既に動作中であればポンプ26の速度を上昇させて、流出口圧力をプリセット値へと復帰させる。流体が製造場所31の排出口34で実際に使われている場合、モータ43が駆動部42を駆動し、ポンプ26のピストンを動かし、流体がループ30へと送り込まれる。排出口34の使用が終わった場合、コントローラはなおも短い時間の間、モータへ動力を与えて駆動部へトルクをかけ、このトルクはループ30内の流体への圧力を維持するためにポンプ26内のピストンに対する力へと変えられる。そして流出口圧力のさらなる降下がセンサ46で検知されなければ、コントローラはポンプ26の電源を切る。動作モードが高圧モードのままで、流出口圧力センサ46が、圧力がプリセット値より下へ降下したことを検知すると、コントローラはポンプ26を再始動させる。
【0038】
図1、2b、3を参照し、低圧モードではポンプ26は流体がループ30中を流れて、開いた弁38と戻り配管40を通って中圧ステーション23へと戻るのに充分な圧力を与えるだけでよい。これにより、流体が動き続け、パイプライン内で濃くなったり凝固したりすることなく、高圧が必要とされないためにポンプにより消費されるエネルギーがより少なくなることが確実になる。
【0039】
図4を参照すると、
図1に関連して上で説明したポンプ26に特に適した種類の好ましい容積型ポンプ50の等角図が示されている。ポンプ50は、出願人の同時係属中の特許出願、英国特許第1502686.7号明細書で記述される種類のポンプの例である。
図4に示されるように、容積型ポンプ50は3つのシリンダ52a、52b、52cを持ち、そのそれぞれが内部に双方向運動用に配置されたそれぞれのピストン(見えない)を持っている。シリンダ52a、52b、52cは、送られる流体の供給に接続する流入路58と流体が排出される流出路56が形成されているポンプ本体54に形成されている。また、ポンプ本体54内部には逆止弁配列が収容されており、各シリンダが関連する流入逆止弁と関連する流出逆止弁を有し、これらの弁によりピストンがシリンダ内部で動くのに伴って流体がポンプの中へ、及びポンプの外へと一方向に流れることを確実にする。
【0040】
容積型ポンプ50はフレーム59へ取り付けられた状態で示されており、フレームはまた変速機63を介してカム配列62を回転駆動する可変速交流モータ駆動装置60及び制御盤65も支える。カム配列62はシリンダ52a、52b、52c内のピストンへ往復駆動を与える。双方向サイクルの間、ピストンは引き込み行程とポンピング行程を経る。シリンダ(例えばシリンダ52a)の引き込み行程の間、シリンダ52a内のピストンは上方へ動く。ピストンの吸引により、シリンダ52aに関連する流入逆止弁が開き、流出逆止弁が閉じる。流体が流入路58に沿って、関連する流入逆止弁を通ってシリンダ52aへと引き込まれる。
【0041】
ポンピング行程の間、ピストンはシリンダ内で下方へ動く。シリンダ52aが引き込み行程にある間、シリンダ52b、52cのピストンがポンピング行程にある。シリンダ52b、52c内のピストンが流体の圧力を上昇させ、これにより関連する流入逆止弁が閉じ、関連する流出逆止弁が開く。流体が流出逆止弁を通って流出路56に沿ってシリンダ52b、52cから汲み出される。
【0042】
ピストンはカム配列62に結合された可変速交流モータ60で駆動される。カムは、引き込み行程がポンピング行程の期間の半分以下の期間にわたって現れるような形状になっている。カムは、回転サイクル中のどの位置においてもピストンの2つ以上がポンピングするように、互いに位相をずらしてピストンを駆動するように構成されている。これは、流体へ圧力を加えるのに2倍のピストン領域が使われることで1つのシリンダの場合よりもかなり高い圧力を流体内に発生させることを意味する。また、この配置により、同等の流体圧力を1つのピストンで作り出そうとした場合よりも、カムに対する機械的な力が低くなる。
【0043】
ピストンを往復駆動するため、上記のようなカム配列を駆動する交流モータ60は閉ループベクトル駆動制御を有するインバータを持つ。
図1に示されるもののようなシステムにおける上記のポンプでは、使用されるマスチックの量が非常に少ない(又はまったく使用されない)場合であっても流体/マスチックに対して高圧を与え、維持することが要求される。これは、回転していない場合でも交流モータ60がカムシャフトへのトルクを維持した状態で
図1のポンプ26が高圧を維持できないといけないということを意味し、交流モータが失速しない場合にのみこれは可能となる。交流モータ60はインバータで駆動される。インバータはベクトル制御を使用し、好ましくはモータのステータとロータの相対的な位置を示す信号がインバータへ与えられる閉ループベクトル制御を使用する。