特許第6585752号(P6585752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6585752気相流を制御して作製された光電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585752
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】気相流を制御して作製された光電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20190919BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190919BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20190919BHJP
   C23C 14/12 20060101ALI20190919BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20190919BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20190919BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/12 B
   C23C14/12
   C23C14/24 M
   B05D1/26
   B05D7/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-34270(P2018-34270)
(22)【出願日】2018年2月28日
(62)【分割の表示】特願2013-232880(P2013-232880)の分割
【原出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-139211(P2018-139211A)
(43)【公開日】2018年9月6日
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】61/728,358
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/774,225
(32)【優先日】2013年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513283512
【氏名又は名称】ザ レジェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・アール・フォレスト
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・マグロウ
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2003/026359(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0144276(US,A1)
【文献】 特開2002−164181(JP,A)
【文献】 特開平08−315981(JP,A)
【文献】 特表2010−513719(JP,A)
【文献】 特開2005−109081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00−28
B05D 1/26
B05D 7/00
C23C 14/12
C23C 14/24
H01L 51/50−56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光デバイス(OLED)の作製方法であって、下記の工程:
(a)支持表面を有する基板、及び前記支持表面から離れる方向に延在する複数の気相流障壁を提供する工程であって、前記複数の気相流障壁が前記基板の前記支持表面に沿って位置する複数の前記有機発光デバイス(OLED)のセルを提供し、前記セルが3つの連続する赤−緑−青(RGB)セルのセットである工程と、
(b)気化した有機電界発光材料を、前記気相流障壁の一方の側に沿って前記支持表面に向けて送り、前記気化した材料の少なくとも一部が前記気相流障壁の他方の側に流れるのを防ぐ工程であって、前記赤−緑−青(RGB)セルの各々が、第1の電極と第2の電極との間に配置された堆積した有機発光材料の層を含むものである工程と、
(c)有機気相ジェット(OVJ)プリントヘッドに形成されたノズルに隣接するベントを介して浮遊有機材料を捕捉する工程とを含む、有機発光デバイス(OED)の作製方法。
【請求項2】
気化された材料が、前記有機気相ジェット(OVJ)プリントヘッドのノズルから支持表面に向けて送られる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベントが、ノズルに隣接するOVJプリントヘッドに形成された凹部を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ノズルが、プリントヘッドの面に位置するスロートを有する収束部を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ノズルが、分岐部と、プリントヘッドの面から離れて位置するスロートとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の気相流障壁の高さが、1.5μm〜2.5μmの範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有機発光デバイス(OLED)であって、
基板であって、前記基板の支持表面に沿って位置する複数の有機発光デバイス(OLED)のセルを有し、前記セルが、3つの連続する赤−緑−青(RGB)セルとして配列し、前記赤−緑−青(RGB)セルが第1の電極と第2の電極との間に配置された低分子有機材料の層を含む基板と、
各OLEDのRGBセル領域の各々と平行する前記支持表面から離れる方向に延在し、且つ各前記OLEDのRGBセル領域内の各々の前記低分子有機材料を含むように配置される気相流障壁とを含み、
前記気相流障壁が、ポリマー又はSi系材料の不活性材料を含み、導電性材料を含まず、且つ、種々組成の有機層を有する隣接する前記セルの間に延在するものである、
ことを特徴とする有機発光デバイス(OLED)。
【請求項8】
赤−緑−青(RGB)の3つのセルのセットが、複数の画素を含み、各画素が赤―緑―青のカラーOLEDを副画素として含み、前記気相流障壁が隣接する前記副画素の間及び隣接する前記画素の間に位置する請求項7に記載の有機発光デバイス(OLED)。
【請求項9】
前記複数の気相流障壁の高さが、1.5μm〜2.5μmの範囲である請求項7に記載の有機発光デバイス(OLED)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照によりその全内容を本明細書に引用する、2012年11月20日出願の米国仮出願第61/728,358号の利益を主張する。
【0002】
特許請求されている発明は、大学・企業の共同研究契約の下記の当事者:University of Michigan、Princeton University、University of Southern California、及びUniversal Display Corporationの理事らの1又は複数によって、その利益になるように、且つ/又は関連して為されたものである。該契約は、特許請求されている発明が為された日付以前に発効したものであり、特許請求されている発明は、該契約の範囲内で行われる活動の結果として為されたものである。
【0003】
本開示は、光電子デバイスに関し、特に、気相プリンティングを用いて作製された光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0004】
有機発光ダイオード(OLED)、有機フォトトランジスタ、有機光(PV)電池、及び有機光検出器などの有機光電子デバイスの作製に用いられる基板上に、有機材料を堆積及び/又はパターニングするための種々の技術が開発されている。これらの技術としては、インクジェットプリンティング、ノズルプリンティング、熱気相ジェットプリンティング、及び有機気相ジェットプリンティング(OVJP)などの印刷技術のほか、真空熱蒸着、溶液プロセス、及び有機気相堆積などが挙げられる。幾つかの応用例においては、堆積した材料の隣接する場所が異なる組成を有するように、2以上の種類又は組成の有機材料を堆積させることが望ましい場合もある。
【発明の概要】
【0005】
1つの実施形態において、光電子デバイス(OED)は、OEDセル支持表面を有する基板と、前記支持表面に沿ったOEDセル領域に位置するOEDセルとを含む。前記OEDセルは、第1の電極と第2の電極との間に配置された低分子有機材料の層を含む。前記OEDはまた、前記OEDセルと平行する前記支持表面から離れる方向に延在する気相流障壁を含む。前記障壁は、前記OEDセル領域内の前記低分子有機材料を含むように配置される。
【0006】
他の実施形態において、有機OEDの作製方法は、(a)支持表面を有する基板、及び前記支持表面から離れる方向に延在する気相流障壁を提供する工程と、(b)気化した有機電界発光材料を、気相流障壁の一方の側に沿って前記支持表面に向けて送り、前記気化した材料の少なくとも一部が前記気相流障壁の他方の側に流れるのを防ぐ工程とを含む。
【0007】
他の実施形態において、有機OEDの作製方法は、(a)気化した有機電界発光材料を、基板のOEDセル支持表面の所定のセル領域に向けて送る工程であって、前記有機材料の少なくとも一部が、前記表面からそれるようにする工程と、(b)前記表面からそれた有機材料の少なくとも一部を捕捉し、前記所定のセル領域の外部の基板上に堆積しないようにする工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下、好ましい例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明するが、図中、同一の参照番号は同一の要素を示す。
【0009】
図1図1は、気相流障壁が隣接するOEDセル間に配置された光電子デバイス(OED)の実施形態の斜視図である。
【0010】
図2図2は、気相プリンティングプロセスの断面図であり、気相流障壁を有する基板に有機気相含有ガスを送るノズルを有するOVJプリントヘッドの一部を示す。
【0011】
図3図3は、矩形の形状を有する気相流障壁の断面図である。
【0012】
図4図4は、湾曲した形状を有する気相流障壁の断面図である。
【0013】
図5図5は、アンダーカットを含む気相流障壁の断面図である。
【0014】
図6図6は、気相流障壁及びプリントヘッド凹部部分がある場合とない場合の、OVJ堆積フィルムの厚みのシミュレーションプロファイルのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
有機光電子デバイス(OED)は、隣接するOEDセルの有機層を比較的高い面密度で気相プリンティングすることにより作製できる。高密度プリンティングは、有機材料が堆積される基板の表面に衝突した後の有機気相含有ガスの流れを制御することにより行うことができる。この流れの制御は、基板表面に沿って気相流障壁を設けて、各個別のセルの領域を少なくとも一部画定する、及び/又は基板表面からそれた浮遊有機材料の少なくとも一部を捕捉することにより達成できる。これにより、密閉されたOEDセルを、鋭いエッジをも有するように製造することができる。高精細度フラットパネルディスプレイなどのOLEDデバイスにおける潜在的な商業的適用性と共に、OLEDアレイの記載において以下に示すが、以下に記載の方法及び構造は、如何なる気相プリンティングプロセスにおける使用にも適しており、特に、隣接するOEDセルが互いに異なる組成を有する光電子層であることが望ましい場合に適している。
【0016】
図1には、1つの実施形態に係る光電子デバイス10が示される。このデバイスは、OED支持表面14を有する基板12と、前記支持表面14に沿って配置された複数のOEDセル16とを含む。この特定の例においては、各OEDセル16は、第1又は下部電極20と第2又は上部電極(図1では省略)との間に挟まれ位置する有機材料の層18を含む有機発光ダイオードである。各OLEDの有機層18は、電極を介して層の厚み方向に電圧が印加されると発光する公知の電界発光有機材料から選択される材料から形成される。各セル16の前記電極又は電極層の少なくとも1つは、有機層18からの光を透過するために透明としてもよい。図示する例において、隣接するOLED16は、互いに異なる組成を有する有機層18を有する。例えば、図1中Bで特定されるOLEDは、R又はGで特定される隣接するOLEDの有機層と異なる組成の有機層を有する。図1に示されるRGBは、3色フラットパネルディスプレイ(赤−緑−青)に関する。3つの連続するRGBセル16の各セットは、デバイス10の単一画素22を表し、各個別のセル16は、副画素を表す。デバイス10は、x方向及び/又はy方向に沿って配置される更なる画素22を含んでいてもよく、各画素は、任意の数の副画素を含んでいてもよい。1つの例においては、ディスプレイの全体的なサイズと解像度に応じて、OLEDディスプレイデバイスの個別の副画素のサイズは、30μm〜100μmであることができる。
【0017】
デバイス10はまた、1つ以上の気相流障壁24も含む。気相流障壁24のそれぞれは、支持表面14から離れる方向、即ち、図1中のz方向に延在する。各障壁24はまた、隣接するセル16間にも延在し、各セルの各有機層18を互いに分離する。完成したデバイス10において隣接するセル16の有機層18を分離することに加えて、障壁24はまた、個別の層の異なる有機材料が、堆積時に互いに混合する又は交差汚染することを防ぐのを助けることができる。気相流障壁24は、フォトリソグラフィーなどの従来のパターニング技術を用いてポリマー又はSi系材料(例えば、SiO)などの不活性材料から基板支持表面14上に形成することができる。障壁24は、既製品としての基板12上に形成することもできるし、一体型構造体として基板と共に形成することもできる。これらは、図示されるように基板表面14の上部に直接形成してもよいし、図示される隣接する画素22においてx方向で連続層になり得る下部電極層20の上部に形成してもよい。
【0018】
各障壁24は、各セル16の基板支持表面14に沿ったセル領域26を部分的に画定し、前記OEDセル領域内の有機層18の形成に用いられる有機材料を含むように配置される。したがって、所定の障壁24は、堆積中及び堆積後に異なる有機材料を分離するように機能することができる、及び/又は障壁の他の側に他のOEDセルが存在しない場合でも明確なエッジ又は境界を特定のOEDセルに与えるように機能することができる。気相プリンティングにおいて、このように気相流障壁24は、隣接するプリント領域を分離することができる、又はプリント領域を非プリント領域から分離することができる。デバイス10はまた、図示された障壁と直交するように(例えば、x方向における長さ方向)配置された更なる障壁を含んで、各セル領域26を更に画定してもよい。各気相流障壁24は、特徴的な高さh、幅w、及び隣接する障壁又はセル16間の距離dを有する。これらの特徴的な寸法のそれぞれは、デバイスの障壁24の全てにおいて同じであってもよいが、どの場合にもこれが必要とされる訳ではない。各障壁24の高さhは、0.5μm〜4.0μmの範囲とすることができ、1.0μm〜3.0μmの範囲であることが好ましい。1つの実施形態においては、各障壁24の高さは、1.5μm〜2.5μmの範囲であり、デバイスの障壁は、約2.0μmの平均高さを有する。高さhは、具体的な適用に応じて変更してもよく、例えば、OEDセルの層の厚み、材料堆積時における堆積装置の基板表面からの距離、蒸着速度及び圧力などのプロセス条件、及び障壁の形成に用いるパターニング技術の制約などの他の要素を考慮に入れてもよい。高さhは、浮遊有機材料の意図しないセル領域上への堆積を低減又は防止できるように十分に大きくしてもよい。一般に、幅wと離間距離dは、最小限にすることが望ましい。幅がより小さいと、隣接するセル16が互いにより近接して位置することができ、距離d、即ち、副画素間の距離が小さいと、全体的により高い解像度のデバイスを作製することができる。これらの寸法の最小値は、障壁の形成に用いる方法の制約によって変わる。距離dの典型的な値は、今日の高精細ディスプレイへの適用において約50μmであり、後に実施例で説明するように、約10μmの幅wが好適である。しかしながら、これらの値は、限定的なものではない。
【0019】
図2は、電界発光有機材料などの光電子有機材料を基板表面上に堆積させるのに用いられる気相プリンティングプロセスを示す。気相プリンティング技術は、一般に、加熱された不活性キャリアガスを用いて、所望の有機材料を気相の形で基板上に送り届ける。有機材料は、典型的な室温及びOLED作動温度で固体であり、気相状態まで加熱して、基板に向かうキャリアガスと共に流す。また、ドーパントを有機気相含有ガス混合物に添加してもよい。気化した有機材料は、より低温の基板と接触して固化することにより、基板上に堆積する。したがって、気相プリンティングは、インクジェットプリンティングなどの液相プリンティング法により一般的に用いられるポリマー又は他の高分子有機物には、通常適していない。このような材料は、その気化温度未満の温度で劣化し始める場合が多い。気相プリンティング技術で用いられる有機材料は、低分子有機物ともいうことができ、これらは通常、約1,000g/モル未満の分子量を有する。
【0020】
図示されるプロセスにおいて、有機気相ジェットプリントヘッド100は、有機材料を基板上に堆積させるために有機気相含有ガスの噴流102を基板12(例えば、図1の基板)の一部に向けて送る断面図で示される。プリントヘッド100は、基板表面14と対向し且つ距離Dだけ離間している面104を有し、噴流102が通り放出されるノズル106を含む。図示されたノズル106は、プリントヘッド100の面104にスロート108を有する収束ノズルである。他の実施形態としては、ノズルのスロートが面104よりも基板表面14から離れて位置する(即ち、ノズルのスロートまでの距離がDより大きい)、分岐部を有するノズルが挙げられる。図2は、ガスの噴流102を基板12に向けて送る1つのノズル106しか示していないが、プリントヘッド100は、隣り合って及び/又はノズルのアレイとして配置された複数のノズルを含んでもよく、各個別のノズルは、任意の他のノズルと同一又は異なる有機気相含有ガスを基板に向けて送ることができる。例えば、図1のデバイス10を製造するために、プリントヘッド100は、隣り合って配置された3個又は6個のノズルを含んでもよく、3個の連続するノズルの各セットは、3種の異なる有機気相含有ガス組成物(即ち、赤色、緑色、及び青色の電界発光有機材料に対応する)を、隣接且つ連続するOLED又はOEDセル領域に向けて送る。
【0021】
プリントヘッド100内部、及びプリントヘッドと基板との間の気流を表す矢印で模式的に示されるように、ガスの噴流102は、基板12の支持表面14に衝突して強制的に方向を変化させられる。したがって、表面14又はその近傍の気流は、x方向とy方向の成分を有する(図2では、x方向のみ示す)。気相流障壁24は、OEDセル領域26のエッジ又は境界における気流場の水平成分を遮断し、ガスが垂直成分を有するようにその向きを変える。ガスは、所定領域26の基板に堆積するのに十分冷却されなかった有機材料を含んでいてもよい。気相流障壁24は、気相含有ガスが隣接するセル領域上に向かうのをブロックする又は防止することにより、有機材料をセル領域26上に維持するのを助ける。このように、気相流障壁24は、プリントヘッド100からの気相含有ガスの流れを有利に変更及び/又は制御することができる1つの方法を提供する。
【0022】
図示されるOVJプリントヘッド100はまた、堆積していない又は浮遊している有機材料の少なくとも一部を捕捉するように構成された部分110を含む。この例において、部分110は、プリントヘッド100の面104にノズル106に沿って形成された凹部又は溝である。この特定の例においては、ノズル106の角度がついた内表面が、凹部110の表面と平行である。これらの部分110は、浮遊有機材料が堆積することができる更なる表面領域を提供することができ、これにより望ましくないセル領域上に堆積しなくなる。これに代えて又はこれに加えて、部分110は、堆積していない有機材料とキャリアガスが流通できる流体流路となるベントを含んでいてもよいし、このようなベントの形態であってもよい。例えば、プリントヘッド100又は他のOVJプリンターコンポーネントに取り付けて、プリントヘッドの面104と基板12との間のギャップから浮遊有機物を真空又は他の手段を介して積極的に吸引してもよい。このように、これらのプリントヘッド部分110は、プリントヘッド100からの気相含有ガスの流れを有利に変更及び/又は制御することができる他の方法を提供する。
【0023】
図示される気相流障壁24は、僅かにテーパーした断面を有し、各障壁の基部又は基部端は、幅wを有しており(図1参照)、対応する先端部又は遠位端は、w未満の幅を有している。しかしながら、他の気相流障壁の形状を用いてもよい。例えば、気相流障壁24は、図3に示すように矩形の断面を有してもよい。矩形の断面は、作製上最も複雑ではなく、その容易さは有利になり得る。他の例においては、気相流障壁24’は、湾曲した形状を有してもよく、その1例が図4に示される。気相流障壁に用いられる湾曲した形状は、よりスムーズな流体流を提供し且つ渦流及び他の非常に乱れた流れ領域をも最小限にしつつ、浮遊有機材料をプリントヘッドの捕捉又はゲッター部(例えば、図2の部分110など)に向けて適度にそらすことができる。図5は、アンダーカット部30を有する形状を有する気相流障壁24”という更に他の例を示す。障壁24”の一部が、基板表面により近い障壁の他の部分よりも大きな幅を有する場合、又は障壁が基板表面に向かう垂直方向の成分に対する面法線を含む場合に、アンダーカット部30は存在する。アンダーカット部30は、浮遊有機材料を留めるのを助けることができる、基板表面上部の停滞気流のための領域を提供することができる。上記の及び他の障壁側面形状のいずれも、公知の技術で作製することができる。
【0024】
したがって、有機OEDの作製方法の1つの実施形態は、2つの異なるガス噴流をセル支持表面に向けて送ることを含み、一方のガス噴流は、気相流障壁の一方の側に沿って送られ、他方のガス噴流は、気相流障壁の他の側に沿って送られる。2つの異なるガス噴流は、それぞれ固体形態で光電子性(例えば、電界発光性)である気化した有機材料を含み、2つの異なるガス噴流のそれぞれにおける有機材料は、組成が異なっている。気相障壁は、2つの異なる有機材料を分離し、一方の組成の有機材料が障壁の一方の側となり、他方の組成の有機材料が障壁の他方の側となるようにする。いずれのガス噴流も基板に向かって且つ障壁に沿って同時又は順次送ってもよい。例えば、OVJプリントヘッドは、異なる有機材料を障壁の両側に同時に堆積することができる隣り合ったノズルを含んでいてもよい。プリントヘッドはまた、ノズルの複数のアレイを含むことができ、各アレイは、基板に沿って異なる有機材料を堆積させるように構成されている、及び/又は、各アレイは、一方の組成物の堆積が、他の異なる組成物の堆積の後に続くようにプリントヘッドに沿って交互に配列されている。
【0025】
前記方法は、プリントヘッドに形成された部分、例えば、凹部、ベント、流体流路、ゲッターコーティング、又は他の部分を介して浮遊有機物質を捕捉することを更に含んでもよい。複数のノズルが設けられる場合には、例えば、OVJプリントヘッドにおいては、このような捕捉部分は、隣接するノズルの間に位置してもよい。前記方法は、上述の気相流障壁の一方若しくは両方、又は捕捉部分のいずれかの使用を含んでもよい。これらの構造はそれぞれ、OVJプリントヘッドと基板との間の気流場を有利に遮断する、制御する、又は変更するように機能して、隣接するOEDセル(例えば、OLED)の有機材料の交差汚染の可能性を低減する、最小限にする、又は排除する。
【0026】
図6は、3つの場合の数学的に予測される堆積プロファイルを示す。ライン200は、気相流障壁がない場合の堆積プロファイルを示し、ライン210は、気相流障壁がある場合の堆積プロファイルを示し、ライン220は、気相流障壁、及び図2示すような凹部部分がある場合の堆積プロファイルを示す。使用時には、障壁間の間隙は40μmであり、各障壁は高さ2μmで幅10μmである。同図は、y軸に規格化された堆積膜厚みをプロットし、x軸にノズル中心からの距離をプロットしている。シミュレートしたノズル幅は、プリントヘッドの面で20μmであった。プリントヘッドの面と基板表面との間の距離は、10μmであった。図6中の矩形のブロックは、x方向に沿った障壁の位置を示す。
【0027】
障壁の位置間のプロファイルは、この比較の目的には重要ではなく、障壁の位置の外部に堆積した材料の量(及び隣接した画素の位置の上に存在すると考えられる異なる有機材料組成物)を比較する。ライン210から、障壁が、その遠位端から10μmの、材料が実質的に堆積しないシャドウ領域を作ること分かる。ノズル膜(即ち、プリントヘッド面)に掘られたレリーフ溝(例えば、図2の部分110など)は、障壁によってそらされたが障壁に吸着しなかった有機材料の排出経路を提供する。これは、ライン220に示されるように、障壁を越えて行われるほぼ全ての堆積を排除する。
【0028】
上述の記載は、本発明の1つ以上の実施形態に関する記載であることが理解されよう。本発明は、本明細書に開示した特定の実施例に限定されず、下記の特許請求の範囲によってのみ定義される。更に、上述の記載に含まれる記述は、用語又は表現が明確に上に定義されている場合は除いて、開示の実施形態に関するものであり、本発明の範囲又は特許請求の範囲に用いられる用語の定義を限定すると解釈されるものではない。様々な他の実施形態、及び開示の実施形態に対する様々な変更及び変形は、当業者に明らかであろう。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられる、用語「例えば」、「など」及び「等」、及び動詞「含む」、「有する」及び他の動詞形は、列挙される1つ以上の要素又はその他の事項と共に用いられるとき、オープンエンドであると解釈され、これは、列挙された要素又は事項が他の追加的な要素又は事項を排除すると解釈されないこと意味する。その他の用語は、それらが異なる解釈を必要とする文脈で用いられていなければ、その最も広い合理的な意味で解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6