(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非イオン性界面活性剤が、(i)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はブチレンオキシドのうちの少なくとも1つに由来するポリマー、(ii)アルキルグルコシド、(iii)脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル、並びに(iv)アンモニウムオキシド、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1に記載の酵素溶液。
前記常温酵素安定剤が、グリセロール、プロピレングリコール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びホウ酸、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1に記載の酵素溶液。
前記イソチアゾリノンが、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、請求項1に記載の酵素溶液。
【発明を実施するための形態】
【0005】
様々な他の実施形態は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本明細書の教示に照らして当業者により想到され得、その修正がなされ得ることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で理解されるべきではない。
【0006】
別段の説明のない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いる、特徴、大きさ、量、及び物理的化学的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものと理解すべきである。それ故、反対の説明がない限り、先行する明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは近似的なものであり、本明細書に開示された教示を利用し、当業者が求める、所望の特性に応じて好適に変更し得る。終点による数の範囲の詳細説明は、その範囲内に、及びその範囲内の任意の範囲に包含される全ての数を含む。例えば、1〜5は、1、1.1、1.3、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5などを含む。
【0007】
酵素溶液
いくつかの態様において、本開示は、酵素溶液の総重量に基づき、0.1〜10重量%の非イオン性界面活性剤と、0.01〜1.2重量%の酵素と、0.03〜15重量%の常温酵素安定剤と、0.75〜6重量%のイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウムと、6.9〜10重量%の可溶化剤と、0.15〜0.5重量%のpH調整剤と、60〜85重量%の水と、を含み、pH値が6〜10の酵素溶液、を提供する。本開示のいくつかの態様において、酵素溶液は、0.1〜0.7重量%の安息香酸ナトリウムを含む。本開示のいくつかの態様において、酵素溶液は、0.1〜0.5重量%の安息香酸ナトリウムを含む。本開示のいくつかの態様において、酵素溶液は、約5〜13重量%の常温酵素安定剤を含む。本開示のいくつかの態様において、酵素溶液は、約10〜11重量%の常温酵素安定剤を含む。
【0008】
非イオン性界面活性剤
本開示による酵素溶液中、非イオン性界面活性剤は、酵素溶液の表面張力を低下させるための、及び酵素溶液の湿潤能力及び洗浄能力を高めるための一助となる。
【0009】
数多くの好適な非イオン性界面活性剤を、本開示の酵素溶液中、用いることができる。特定の実施形態によると、非イオン性界面活性剤は、(i)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドのうちの少なくとも1つの成分に由来するポリマー、(ii)アルキルグルコシド、(iii)脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル、並びに(iv)アンモニウムオキシド、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0010】
特定の実施形態によると、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドのうちの少なくとも1つの成分に由来するポリマーは、エチレンオキシド/ブチレンオキシドコポリマー、及びエチレンオキシド/プロピレンオキシド/ブチレンオキシドコポリマー、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。特定の実施形態によると、The Dow Chemical Companyから市販のEH−6を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドのうちの少なくとも1つに由来するポリマーとして選択することができる。
【0011】
特定の実施形態によると、アルキルグルコシドは、320〜350の分子量を有する。特定の実施形態によると、アルキルグルコシドは、デシルグルコシド、オクチルグルコシド、及びドデシルグルコシド、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。特定の実施形態によると、BASF Corporationから市販のGlucopon425N/HHを、アルキルグルコシドとして選択することができる。
【0012】
特定の実施形態によると、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテルは、RO(CH
2CH
2O)
nH(式中、n=8〜16)の一般式を有する。特定の実施形態によると、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテルは、C7〜C9の脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル、C12〜C16の脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル、及びC9〜C11の脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。特定の実施形態によると、Harcros Corporationから市販のA1058を、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテルとして選択することができる。
【0013】
非イオン性界面活性剤の量は、酵素溶液の総重量に基づき、0.1〜10重量%である。非イオン性界面活性剤の量が0.1重量%未満である場合、酵素溶液の洗浄能力が低下する恐れがあり、非イオン性界面活性剤の量が10重量%超である場合、酵素溶液が過剰な発泡の悪影響を受け、酵素溶液の洗浄能力低下をもたらす恐れがある。
【0014】
酵素
本開示による酵素溶液中、酵素は、医療用機器に付着した汚染物質中の、タンパク質、糖質、脂肪、及びセルロースを分解するための一助となる。
【0015】
特定の実施形態によると、酵素は、プロテイナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、及びセルラーゼ、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0016】
特定の実施形態によると、Alcalase、Esperase、Everlase、Savinase16XL、Liquanase、又はNovozymes Corporationから市販のPolarzymeを、プロテイナーゼとして選択することができる。特定の実施形態によると、Genencor Corporationから市販のProperaseもまた、プロテイナーゼとして選択することができる。
【0017】
特定の実施形態によると、Novozymes Corporationから市販の、Stainzyme、Termamyl300L、BAN480L、又はDuramylを、アミラーゼとして選択することができる。
【0018】
特定の実施形態によると、Novozymes Corporationから市販のLipolase、又はGenencor Corporationから市販のPurafectを、リパーゼとして選択することができる。
【0019】
特定の実施形態によると、Novozymes Corporationから市販のCarezyme4500、又はEndolaseを、セルラーゼとして選択することができる。
【0020】
酵素の量は、酵素溶液の総重量に基づき、0.01〜1.2重量%である。特定の実施形態によると、酵素溶液中の酵素は、酵素溶液の総重量に基づき、0.05〜0.6重量%のプロテイナーゼと、0.01〜0.2重量%のアミラーゼと、0.01〜0.2重量%のリパーゼと、0.01〜0.2重量%のセルラーゼと、を含む。酵素の量が0.01重量%未満である場合、酵素溶液の洗浄能力が低下する恐れがあり、酵素の量が1.2重量%超である場合、酵素溶液の安定性が低下する恐れがある。
【0021】
常温酵素安定剤
本開示による酵素溶液中、常温酵素安定剤は、常温(10〜25℃)条件下で、酵素の活性を維持するための一助となる。
【0022】
数多くの常温酵素安定剤を、本開示による酵素溶液中、好適に用いることができる。いくつかの実施形態において、常温酵素安定剤は、グリセロール、プロピレングリコール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びホウ酸、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0023】
特定の実施形態によると、グリセロールは、The Dow Chemical Companyから市販のものである。
【0024】
特定の実施形態によると、プロピレングリコール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びホウ酸は、全て、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.,Chinaから市販のものである。
【0025】
常温酵素安定剤の存在量は、酵素溶液の総重量に基づき、0.03〜15重量%である。特定の実施形態によると、酵素溶液中の常温酵素安定剤は、酵素溶液の総重量に基づき、5〜10重量%のグリセロール及び/又はプロピレングリコール、並びに0.03〜0.7重量%の塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムを含む。常温酵素安定剤の量が0.03重量%未満である場合、酵素溶液中の酵素の安定性が常温(10〜25℃)条件下で低下する恐れがあり、常温酵素安定剤の量が15重量%超である場合、酵素溶液の洗浄能力が低下する恐れがある。
【0026】
イソチアゾリノン、ベンゾイソチアゾリノン、及び安息香酸ナトリウム
本開示による酵素溶液中、イソチアゾリノン、ベンゾイソチアゾリノン、及び安息香酸ナトリウムを組み合わせて用いる。イソチアゾリノン、ベンゾイソチアゾリノン、及び安息香酸ナトリウムを酵素溶液中一緒に含むことは、比較的高温(25℃超)条件下で酵素溶液中の酵素の良好な安定性を維持するための一助となるのみならず、酵素溶液の良好な防黴性及び抗菌性、並びに酵素溶液の不織布との良好な適合性にも寄与する。
【0027】
特定の実施形態によると、イソチアゾリノンは、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMI)、及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MI)、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。特定の実施形態によると、Clariant Corporationから市販のNipagurad CGを、イソチアゾリノンとして選択することができる。
【0028】
特定の実施形態によると、ベンゾイソチアゾリノンは、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを含む。特定の実施形態によると、Lonza Corporationから市販のBIT(Prexel GXL)を、ベンゾイソチアゾリノンとして選択することができる。
【0029】
特定の実施形態によると、安息香酸ナトリウムは、C
6H
5CO
2Naの分子式を有する。特定の実施形態によると、安息香酸ナトリウムは、Shanghai Shantou Guanghua Chemical Reagents Co,Ltd.から市販のものである。
【0030】
酵素溶液は、酵素溶液の総重量に基づき、0.75〜6重量%のイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウムと、を含む。イソチアゾリノン、ベンゾイソチアゾリノン、及び安息香酸ナトリウムのうちのいずれか1つの量が上記範囲と一致しない場合、酵素溶液中の酵素の安定性が比較的高温(25℃超)条件下で低下する恐れがあり、酵素溶液の防黴性及び抗菌性が低下する恐れがあり、並びに酵素溶液の不織布との適合性もまた低下する恐れがある。
【0031】
特定の実施形態によると、イソチアゾリノンとベンゾイソチアゾリノンとの重量比が、3:1〜30:1、及びイソチアゾリノンと安息香酸ナトリウムとの重量比が、1:1〜30:1である場合、酵素溶液中の酵素は、比較的高温(25℃超)条件下で特に良好な安定性を有し、酵素溶液は、特に良好な防黴性及び抗菌性を有する。
【0032】
可溶化剤
本開示による酵素溶液中、可溶化剤は酵素溶液中への成分の溶解を促進する一助となる。
【0033】
数多くの可溶化剤が、本開示の酵素溶液中、好適に用いられる。特定の実施形態によると、可溶化剤は、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸ナトリウム、キシレン硫酸、キシレン硫酸ナトリウム、及びアルキルアミンオキシド、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0034】
特定の実施形態によると、Kuantum Corporationから市販のSXS93を、キシレンスルホン酸ナトリウムとして選択することができる。
【0035】
可溶化剤の存在量は、酵素溶液の総重量に基づき、6.9〜10重量%である。可溶化剤の存在量が6.9重量%未満である場合、酵素溶液中のいくつかの成分が十分に溶解しない恐れがあり、可溶化剤の量が10重量%超である場合、酵素溶液中の酵素の活性が低下する恐れがある。
【0036】
pH調整剤
本開示による酵素溶液中、pH調整剤を、酵素溶液のpH値を調整するため用いる。
【0037】
数多くのpH調整剤を、本開示の酵素溶液中、好適に用いることができる。特定の実施形態によると、pH調整剤はクエン酸を含む。
【0038】
特定の実施形態によると、クエン酸は、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.,Chinaから市販のものである。
【0039】
pH調整剤の存在量は、酵素溶液の総重量に基づき、0.15〜0.5重量%である。pH調整剤の存在量が上記範囲外である場合、酵素溶液の酸性が強くなりすぎる(pH値6未満)恐れ、又はアルカリ性が強くなりすぎる(pH値10超)恐れがあり、酵素溶液中の酵素の活性低下をもたらす恐れがある。
【0040】
特定の実施形態によると、酵素溶液のpHは、6〜10である。特定の実施形態によると、酵素溶液のpHは、7〜9である。
【0041】
水
本開示による酵素溶液中、水を、溶媒として用いる。
【0042】
特定の実施形態によると、水の存在量は、酵素溶液の総重量に基づき、少なくとも60重量%である。特定の実施形態によると、水の存在量は、酵素溶液の総重量に基づき、85重量%以下である。水の存在量が60重量%未満である場合、酵素溶液中のいくつかの成分が十分に溶解しない恐れがあり、いくつかの成分の望ましくない沈殿をもたらす恐れがある。水の存在量が85重量%超である場合、酵素溶液中のいくつかの成分が過度に希釈される恐れがあり、そのため、酵素溶液の洗浄能力が低下する恐れがある。
【0043】
キレート剤
本開示による酵素溶液はまた、酵素溶液の総重量に基づき、0.2〜0.5重量%のキレート剤も含むことができる。
【0044】
本開示による酵素溶液中、キレート剤は、キレート金属イオンを含む場合があり、それは酵素溶液中、不純物として存在していてもよく、それにより酵素溶液の洗浄能力を向上することができる。
【0045】
数多くのキレート化剤を、本明細書に開示の酵素溶液中、キレート剤として用いることができる。特定の実施形態によると、キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びジエチレントリアミン五酢酸、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0046】
特定の実施形態によると、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.,Chinaから市販のEDTAを、エチレンジアミン四酢酸として選択することができる。
【0047】
特定の実施形態によると、AKZO−Nobel Corporationから市販のDissolvine D50を、ジエチレントリアミン五酢酸として選択することができる。
【0048】
腐食防止剤
本開示による酵素溶液はまた、酵素溶液の総重量に基づき、0.5〜10重量%の腐食防止剤も含むことができる。
【0049】
本開示による酵素溶液中、腐食防止剤は、金属又はゴムの酵素溶液との接触による腐食を、遅延又は防止する一助となる。
【0050】
数多くの腐食防止剤を、本開示の酵素溶液中、好適に用いることができる。特定の実施形態によると、腐食防止剤は、ホウ酸エステル、ポリエーテル、及び高級アルコール、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0051】
特定の実施形態によると、Croda Corporationから市販のCrodacor BE−LQ−(AP)を、ホウ酸エステルとして選択することができる。
【0052】
消泡剤
本開示による酵素溶液はまた、酵素溶液の総重量に基づき、0.1〜0.3重量%の消泡剤も含むことができる。
【0053】
本開示による酵素溶液中、消泡剤は酵素溶液の発泡を低減又は防止する一助となる。
【0054】
数多くの消泡剤を、本開示の酵素溶液中、好適に用いることができる。特定の実施形態によると、消泡剤は、シリコーン油、ポリエーテル、及び高級アルコール、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0055】
特定の実施形態によると、the Dow Corning Corporationから市販のDK1247を、消泡剤として選択することができる。
【0056】
酵素溶液の調製方法
いくつかの態様において、本開示は、本開示による酵素溶液の成分を混合する工程、を含む、酵素溶液の調製方法を提供する。
【0057】
特定の実施形態によると、酵素溶液の調製方法は、6.9〜10重量%の可溶化剤、0.1〜10重量%の非イオン性界面活性剤、0.75〜6重量%のイソチアゾリノン、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノン、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウム、及び0.03〜15重量%の常温酵素安定剤、を30〜60重量%の水中に逐次的に添加し、第1の溶液を得る工程と、0.15〜0.5重量%のpH調整剤を第1の溶液に添加し、pH値が6〜10の第2の溶液を得る工程と、0.01〜1.2重量%の酵素、及び3〜51重量%の水、を第2の溶液中に添加し、酵素溶液を得る工程と、を含む。
【0058】
特定の実施形態によると、酵素溶液の調製方法は、6.9〜10重量%の可溶化剤、0.1〜10重量%の非イオン性界面活性剤、0.75〜6重量%のイソチアゾリノン、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノン、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウム、0.03〜15重量%の常温酵素安定剤、0.2〜0.5重量%のキレート剤、0.5〜10重量%の腐食防止剤、及び0.1〜0.3重量%の消泡剤、を30〜60重量%の水中に逐次的に添加し、第1の溶液を得る工程と、0.15〜0.5重量%のpH調整剤を第1の溶液中に添加し、pH値が6〜10の第2の溶液、を得る工程と、0.01〜1.2重量%の酵素、及び3〜51重量%の水、を第2の溶液中に添加し、酵素溶液を得る工程と、を含む。
【0059】
酵素溶液の成分の詳細な考察については、本明細書の「酵素溶液」の節を参照されたい。
【0060】
酵素含有不織布
いくつかの態様において、本開示は、不織布と不織布中に分散した本開示による酵素溶液と、を含む酵素含有不織布であって、不織布が、不織布の総重量に基づき、20〜50重量%のビスコース繊維、及び50〜80重量%のテリレン繊維、を含み、並びに酵素溶液と不織布との重量比が、1.5:1〜7:1である、酵素含有不織布を提供する。
【0061】
酵素溶液の詳細な考察については、本明細書の「酵素溶液」の節を参照されたい。
【0062】
数多くのビスコース繊維を、本開示において好適に用いることができる。特定の実施形態によると、ビスコース繊維を、以下の方法、すなわち、天然セルロースのアルカリ化によりアルカリセルロースを得ること、アルカリセルロースの二硫化炭素との反応によりキサントゲン酸セルロースを得ること、キサントゲン酸セルロースの希アルカリ性溶液中への溶解によりビスコース溶液(ビスコース)を得ること、並びにビスコース溶液(ビスコース)を、公知の湿式紡糸及び後処理プロセスによりビスコース繊維に加工すること、により調製することができる。
【0063】
数多くのテリレン繊維を、本開示において好適に用いることができる。特定の実施形態によると、テリレン繊維を、以下の方法、すなわち、高純度テレフタル酸(PTA)若しくはテレフタル酸ジメチル(DMT)及びエチレングリコール(EG)を、エステル化又はエステル交換させ、次いで縮重合反応させてポリエチレンテレフタレート(PET)を得ること、並びにポリエチレンテレフタレートを、公知の紡糸及び後処理プロセスによりテリレン繊維に加工すること、により調製することができる。
【0064】
ビスコース繊維又はテリレン繊維の量が上記範囲と一致しない場合、酵素溶液中の酵素は不織布によって吸収される恐れがあり、酵素溶液の不織布との適合性が低下する恐れがある。
【0065】
酵素溶液と不織布との重量比が1.5:1未満である場合、酵素含有不織布中の酵素溶液の洗浄能力は低下する恐れがあり、酵素溶液と不織布との重量比が7:1超である場合、それは不織布中の酵素溶液の最大担持量を超えている恐れがある。
【0066】
酵素含有不織布の調製方法
いくつかの態様において、本開示は、本開示による酵素溶液を不織布中に分散させる工程、を含む、酵素含有不織布の調製方法であって、酵素溶液と不織布との重量比が、1.5:1〜7:1である、調製方法を提供する。
【0067】
酵素溶液の詳細な考察については、本明細書の「酵素溶液」の節を参照されたい。
【0068】
不織布の詳細な考察については、本明細書の「酵素含有不織布」の節を参照されたい。
【0069】
酵素含有不織布の使用
いくつかの態様において、本開示は、本開示による酵素含有不織布の、医療用機器の洗浄における使用を提供する。
【0070】
本開示による酵素含有不織布を用い、医療用機器の洗浄の目的のため、医療用機器と接触させることができる。
【0071】
以下の実施形態は、本開示を、限定的ではなく例示的に説明する意図のものである。
【0072】
実施形態1は、酵素溶液であって、酵素溶液の総重量に基づき、0.1〜10重量%の非イオン性界面活性剤と、0.01〜1.2重量%の酵素と、0.03〜15重量%の常温酵素安定剤と、0.75〜6重量%のイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウムと、6.9〜10重量%の可溶化剤と、0.15〜0.5重量%のpH調整剤と、60〜85重量%の水と、を含み、pH値が6〜10の酵素溶液である。
【0073】
実施形態2は、非イオン性界面活性剤が、(i)エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドのうちの少なくとも1つに由来するポリマー、(ii)アルキルグルコシド、(iii)脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル、並びに(iv)アンモニウムオキシド、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態1に記載の酵素溶液である。
【0074】
実施形態3は、酵素が、プロテイナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、及びセルラーゼ、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態1又は2に記載の酵素溶液である。
【0075】
実施形態4は、酵素溶液の総重量に基づき、プロテイナーゼの量が0.05〜0.3重量%、アミラーゼの量が0.01〜0.1重量%、及びセルラーゼの量が0.01〜0.1重量%である、実施形態3に記載の酵素溶液である。
【0076】
実施形態5は、イソチアゾリノンが、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0077】
実施形態6は、ベンゾイソチアゾリノンが、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを含む、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0078】
実施形態7は、イソチアゾリノンとベンゾイソチアゾリノンとの重量比が3:1〜30:1であり、イソチアゾリノンと安息香酸ナトリウムとの重量比が1:1〜30:1である、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0079】
実施形態8は、常温酵素安定剤が、グリセロール、プロピレングリコール、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びホウ酸、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0080】
実施形態9は、酵素溶液の総重量に基づき、グリセロール及び/又はプロピレングリコールの量が5〜10重量%、並びに塩化カルシウム及び/又は塩化マグネシウムの量が0.03〜0.7重量%である、実施形態8に記載の酵素溶液である。
【0081】
実施形態10は、可溶化剤が、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸ナトリウム、キシレン硫酸、キシレン硫酸ナトリウム、及びアルキルアミンオキシド、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0082】
実施形態11は、pH調整剤がクエン酸を含む、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0083】
実施形態12は、酵素溶液の総重量に基づき、0.2〜0.5重量%のキレート剤を更に含む、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0084】
実施形態13は、キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸及びジエチレントリアミン五酢酸、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態12に記載の酵素溶液である。
【0085】
実施形態14は、酵素溶液の総重量に基づき、0.5〜10重量%の腐食防止剤を更に含む、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0086】
実施形態15は、腐食防止剤が、ホウ酸エステル、シリケート、及びポリアスパラギン酸、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態14に記載の酵素溶液である。
【0087】
実施形態16は、酵素溶液の総重量に基づき、0.1〜0.3重量%の消泡剤を更に含む、実施形態1〜15のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0088】
実施形態17は、消泡剤が、シリコーン油、ポリエーテル、及び高級アルコール、からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、実施形態16に記載の酵素溶液である。
【0089】
実施形態18は、pH値が7〜9の、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の酵素溶液である。
【0090】
実施形態19は、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の酵素溶液の成分を混合する工程、を含む、酵素溶液の調製方法である。
【0091】
実施形態20は、6.9〜10重量%の可溶化剤、0.1〜10重量%の非イオン性界面活性剤、0.75〜6重量%のイソチアゾリノン、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノン、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウム、及び0.03〜15重量%の常温酵素安定剤、を30〜60重量%の水中に逐次的に添加し、第1の溶液を得る工程と、0.15〜0.5重量%のpH調整剤を第1の溶液に添加し、pH値が6〜10の第2の溶液を得る工程と、0.01〜1.2重量%の酵素、及び3〜51重量%の水、を第2の溶液中に添加し、酵素溶液を得る工程と、を含む、実施形態19に記載の方法である。
【0092】
実施形態21は、6.9〜10重量%の可溶化剤、0.1〜10重量%の非イオン性界面活性剤、0.75〜6重量%のイソチアゾリノン、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノン、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウム、0.03〜15重量%の常温酵素安定剤、0.2〜0.5重量%のキレート剤、0.5〜10重量%の腐食防止剤、及び0.1〜0.3重量%の消泡剤、を30〜60重量%の水中に逐次的に添加し、第1の溶液を得る工程と、0.15〜0.5重量%のpH調整剤を第1の溶液中に添加し、pH値が6〜10の第2の溶液、を得る工程と、0.01〜1.2重量%の酵素、及び3〜51重量%の水、を第2の溶液中に添加し、酵素溶液を得る工程と、を含む、実施形態19に記載の方法である。
【0093】
実施形態22は、不織布と不織布中に分散した実施形態1〜18のいずれか1つに記載の酵素溶液と、を含む酵素含有不織布であって、不織布が、不織布の総重量に基づき、20〜50重量%のビスコース繊維、及び50〜80重量%のテリレン繊維、を含み、並びに酵素溶液と不織布との重量比が、1.5:1〜7:1である、酵素含有不織布である。
【0094】
実施形態23は、実施形態1〜18のいずれか1つに記載の酵素溶液を不織布中に分散させる工程、を含む、酵素含有不織布の調製方法であって、不織布が、不織布の総重量に基づき、20〜50重量%のビスコース繊維、及び50〜80重量%のテリレン繊維、を含み、並びに酵素溶液と不織布との重量比が、1.5:1〜7:1である、調製方法である。
【0095】
実施形態24は、医療用機器の洗浄における、実施形態22に記載の酵素含有不織布の使用である。
【実施例】
【0096】
下記に示す実施例及び比較例は、本発明の理解を助ける意図のものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。全ての部及び百分率は、特段の記載がない限り、重量に基づく。
【0097】
本発明の実施例及び比較例に用いた原料を、下記の表1に示す。
【表1】
【0098】
酵素溶液の調製
常温(10〜25℃)及び常圧(約1気圧)の条件下、酵素溶液の総重量に基づき、酵素溶液の成分を、ガラス又はステンレス鋼の容器内に添加し、以下の工程により成分を混合し、酵素溶液を得る。その工程は、6.9〜10重量%の可溶化剤、0.1〜10重量%の非イオン性界面活性剤、0.75〜6重量%のイソチアゾリノン、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノン、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウム、及び0.03〜15重量%の常温酵素安定剤、を30〜60重量%の水中に逐次的に添加し、第1の溶液を得る工程、0.15〜0.5重量%のpH調整剤を第1の溶液に添加し、pH値が6〜10の第2の溶液を得る工程、並びに0.01〜1.2重量%の酵素、及び3〜51重量%の水、を第2の溶液中に添加し、酵素溶液を得る工程である。
【0099】
更に、第1の溶液は、酵素溶液の総重量に基づき、0.2〜0.5重量%のキレート剤と、0.5〜10重量%の腐食防止剤と、0.1〜0.3重量%の消泡剤と、を必要に応じて更に含んでもよい。
【0100】
酵素含有不織布の調製
常温(10〜25℃)及び常圧(約1気圧)の条件下、酵素溶液を、不織布中に、酵素溶液の不織布に対する重量比が1.5:1〜7:1として分散し、酵素含有不織布を得る。
【0101】
特定の実施形態によると、酵素溶液を、散布及び浸漬などの適切な手段により不織布中に分散して、酵素含有不織布を得ることができる。
【0102】
本開示において、酵素溶液の洗浄能力を、「酵素溶液の洗浄能力試験」のとおりに評価する。
【0103】
本開示において、酵素含有不織布中の酵素の活性を、「酵素の活性試験」のとおりに評価する。
【0104】
本開示において、酵素含有不織布中の、不織布の酵素溶液との適合性を、「酵素溶液の不織布との適合性試験」のとおりに評価する。
【0105】
本開示において、酵素含有不織布中の酵素の安定性を、「酵素の安定性試験」のとおりに評価する。
【0106】
本開示において、酵素含有不織布の防黴性及び抗菌性の能力を、「微生物チャレンジ試験」のとおりに評価する。
【0107】
本開示において、酵素含有不織布による医療用機器への損傷の程度を、「内視鏡損傷試験」のとおりに評価する。
【0108】
本開示において、酵素含有不織布中の酵素溶液の腐食性を、「腐食性試験」のとおりに評価する。
【0109】
酵素溶液の洗浄能力試験
Kodak Corporationから市販のX−OMAT BT医療用X線フィルム(このX−OMAT BT医療用X線フィルムの型番はXBT−1であり、その表面上にゼラチンを設けている。)を、長さ8.0±1.0mm及び幅3.0±1.0mmの試験片に加工する。
【0110】
恒温水浴を特定の温度(37〜40℃)に調整し、その温度を維持する。
【0111】
80mLの酵素溶液を計量し、100mLのビーカーを用いて試験する。
【0112】
試験する酵素溶液が入っているビーカーを、恒温水浴に入れ、保温して系を安定した温度にする。
【0113】
試験片をビーカーの口に掛け、それを、恒温にした酵素溶液中に入れて試験し、計時を開始する。
【0114】
裸眼で観察し、試験片上のゼラチンコーティングが溶解し始める時間t
1、及びゼラチンコーティングが完全に溶解する時間t
2、を記録する。
すすぎ時間t(t=t
2−t
1)を計算する。
【0115】
すすぎ時間tが8分未満の場合、それは、試験した酵素溶液のすすぎ能力が許容可能なものであることを示す。
【0116】
酵素の活性試験
Thermo Fisher Corporationから市販のGallery装置を用い、Novozymes Corporationが定める標準的試験方法「混合試料中のプロテイナーゼの活性試験」により、試験を行う。
【0117】
酵素溶液の不織布との適合性試験
新たに調製した酵素溶液中の酵素の活性を試験し、活性を、a
1として記録する。
【0118】
酵素溶液を不織布と、重量比1.5:1〜7:1で混合し、酵素含有不織布を得て、その布を2週間静置した後、酵素溶液を布から絞り出し、搾り取った酵素溶液中の酵素の活性を試験し、活性を、a
2として記録する。
X
1=(a1−a2)/a1×100とする。
【0119】
X
1<5%の場合、それは、酵素含有不織布中の酵素溶液が不織布との良好な適合性を有することを示す。
【0120】
酵素の安定性試験
酵素の安定性試験は、「常温(10〜25℃)条件下の酵素の安定性試験」、及び「比較的高温(25℃超)条件下の酵素の安定性試験」を含む。
【0121】
常温(10〜25℃)条件下の酵素の安定性試験
新たに調製した酵素溶液中の酵素の活性を試験し、活性を、a
1として記録する。
【0122】
酵素溶液を不織布と、重量比1.5:1〜7:1で混合し、酵素含有不織布を得る。
【0123】
その布を、「25℃及び湿度30〜80%」の条件下、3ケ月間静置する。
【0124】
酵素溶液を布から絞り出し、搾り取った酵素溶液中の酵素の活性を試験し、活性を、a
3として記録する。
X
2=(a1−a3)/a1×100とする。
【0125】
X
2<15%の場合、それは、酵素含有不織布中の酵素溶液が、常温(20〜25℃)条件下、良好な酵素の安定性を有することを示す。
【0126】
比較的高温(25℃超)条件下の酵素の安定性試験
新たに調製した酵素溶液中の酵素の活性を試験し、活性を、a
1として記録する。
【0127】
酵素溶液を不織布と、重量比1.5:1〜7:1で混合し、酵素含有不織布を得る。
【0128】
その布を、「54℃及び湿度75%」の条件下、2ケ月間静置する。
【0129】
酵素溶液を布から絞り出し、搾り取った酵素溶液中の酵素の活性を試験し、活性を、a
4として記録する。
X
3=(a1−a4)/a1×100とする。
【0130】
X
2<25%の場合、それは、酵素含有不織布中の酵素溶液が、比較的高温(25℃超)条件下、良好な酵素の安定性を有することを示す。
【0131】
微生物チャレンジ試験
以下のGB−15979−2002の方法により、微生物チャレンジ試験を行う。
【0132】
50gの酵素含有不織布を、電子天秤により秤量する。
【0133】
カビ(アスペルギルス ニゲル、ペニシリウム シトリナム、グリオクラジウム ビレンス、ケトミウム グロボスム、及びアウレオバシジウム プルランス)の懸濁液、又は菌(イーコリ、スタフィロコッカス アウレンス、バチルス メガトリウム、シュードモナス フルオレッセンス、及びバチルス サブチリス)の懸濁液を選択する。
【0134】
試験するカビ又は菌の懸濁液1mLを、酵素溶液中に注入し、消毒したガラス棒により均質に撹拌し、カビ又は菌の濃度が約10
5〜10
6/mLの微生物溶液試料を得る。
【0135】
上記の微生物溶液試料を、恒温保温器中、特定温度で28日間(カビについては保温温度28±1℃、菌については保温温度36±1℃である。)、静置する。
【0136】
7日毎に、カビ若しくは菌の、生菌数計測、又は培地での画線培養を行う。コロニー増殖がない場合、それは、酵素溶液がカビ又は菌についてのチャレンジ試験に合格であることを示し、並びにコロニー増殖がある場合、それは、酵素溶液がカビ又は菌についてのチャレンジ試験に不合格であり、その中でカビ又は菌の増殖の危険性があることを示す。
【0137】
内視鏡損傷試験
内視鏡の外部表面を、酵素含有不織布により、「100N、10cm/秒」で、前後に100回こする。内視鏡の外部表面が、こすった後の目視検査で明らかな掻き傷を有していない場合、それは、酵素含有不織布が医療用機器への損傷を引き起こしにくいことを示す。
【0138】
腐食性試験
中国衛生部が編纂した「消毒技術規範2002年版(Technical Standard For Disinfection−2002)」における要件に従い、腐食性試験を行う。
【0139】
1枚の金属シート(ステンレス鋼シート)又はゴムシート(スチレンブタジエンゴム)の表面を磨き、シートをきれいに洗い、そのシートを秤量し、重量をa
5として記録する。
【0140】
金属シート又はゴムシートを、200mLの試験する酵素溶液中に入れ、シートを72時間浸漬の後、シートを取り出す。
【0141】
金属シート又はゴムシートを、まず水で洗い流し、次にシートの表面を刷毛又は他の柔軟な用具で洗浄(シートの表面上に存在する腐食生成物は、少しでもある場合、シートから除く必要がある。)の後、シートを秤量し、重量をa
4として記録する。
X
4=(a5−a4)とする。
【0142】
X
4=0の場合、それは、酵素溶液が金属シート又はゴムシートを腐食しないことから、金属シート又はゴムシートについての腐食性試験に合格であることを示す。
【0143】
X
4>0の場合、それは、酵素溶液が金属シート又はゴムシートを腐食することから、金属シート又はゴムシートについての腐食性試験に不合格であることを示す。
【0144】
実施例1〜13及び比較例1〜7
酵素溶液及び酵素含有不織布を、それぞれ、表2a、表2b、及び表2cに列挙した成分及び量(表2a、表2b、及び表2cに列挙した量は、全て重量百分率による算出である。)によって、上記の方法により調製する。
【0145】
「酵素溶液の洗浄能力試験」、「酵素溶液の不織布との適合性試験」、「酵素の安定性試験」、「微生物チャレンジ試験」、「内視鏡損傷試験」、及び「腐食性試験」を、それぞれ上記の方法により行った。結果をそれぞれ、表3、表4、表5、表6、表7、及び表8に示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0146】
表2a、表2b、表2c、及び表3によると、実施例1〜13において提供された酵素含有不織布中の酵素溶液は、良好な洗浄能力を有する。
【表6】
【0147】
表2a、表2b、表2c、及び表4により、以下のことを知ることができる。
【0148】
実施例1〜13において提供された酵素含有不織布中、不織布は、適切な量のビスコース繊維及びテリレン繊維を含有し、並びに酵素溶液は、0.75〜6重量%のイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウムと、を含有し、そのため、不織布は、良好な酵素との適合性を有する。
【0149】
比較例1において提供された酵素含有不織布中、不織布は竹繊維のみを含有し、酵素溶液は、ベンゾイソチアゾリノン又は安息香酸ナトリウムのいずれも含有せず、そのため、不織布は、酵素との適合性が劣る。
【0150】
比較例2において提供された酵素含有不織布中、不織布はビスコース繊維のみを含有し、そのため、不織布は、酵素との適合性が劣る。
【0151】
比較例3において提供された酵素含有不織布中、不織布は、適切な量のビスコース繊維及びテリレン繊維を含有するが、酵素溶液は、適切な量のイソチアゾリノン、ベンゾイソチアゾリノン、及び安息香酸ナトリウムを含有せず、そのため、不織布は、酵素との適合性が劣る。
【表7】
【0152】
表2a、表2b、表2c、及び表4により、以下のことを知ることができる。
【0153】
実施例1〜13において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.03〜15重量%の常温酵素安定剤を含有し、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、常温(10〜25℃)条件下、良好な酵素の安定性を有する。
【0154】
実施例1〜13において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.75〜6重量%のイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウムと、を含有し、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、比較的高温(25℃超)条件下、良好な酵素の安定性を有する。
【0155】
比較例1において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.3重量%のイソチアゾリノンを含有し、ベンゾイソチアゾリノン又は安息香酸ナトリウムを含有せず、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、比較的高温(25℃超)条件下、不十分な酵素の安定性を有する。
【0156】
比較例4において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.5重量%のイソチアゾリノンと、0.1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.5重量%の安息香酸ナトリウムと、を含有し、イソチアゾリノンの量が不足しており、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、比較的高温(25℃超)条件下、不十分な酵素の安定性を有する。
【0157】
比較例5において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.5重量%のイソチアゾリノンと、1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.5重量%の安息香酸ナトリウムと、を含有し、イソチアゾリノンの量が不足しており、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、比較的高温(25℃超)条件下、不十分な酵素の安定性を有する。
【0158】
比較例6において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、1.5重量%のイソチアゾリノン、及び0.1重量%のベンゾイソチアゾリノンを含有し、安息香酸ナトリウムを含有せず、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、比較的高温(25℃超)条件下、不十分な酵素の安定性を有する。
【0159】
比較例7において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、1.5重量%のイソチアゾリノン、及び0.5重量%の安息香酸ナトリウムを含有し、ベンゾイソチアゾリノンを含有せず、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、比較的高温(25℃超)条件下、不十分な酵素の安定性を有する。
【表8】
【0160】
表2a、表2b、表2c、及び表6により、以下のことを知ることができる。
【0161】
実施例1〜13において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.75〜6重量%のイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.1〜1重量%の安息香酸ナトリウムと、を含有し、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、良好な防黴性及び抗菌性を有する。
【0162】
比較例3において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.3重量%のイソチアゾリノンを含有し、ベンゾイソチアゾリノン又は安息香酸ナトリウムを含有せず、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、不十分な防黴性及び抗菌性を有する。
【0163】
比較例4において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.5重量%のイソチアゾリノンと、0.1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.5重量%の安息香酸ナトリウムと、を含有し、イソチアゾリノンの量が不足しており、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、不十分な防黴性及び抗菌性を有する。
【0164】
比較例5において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、0.5重量%のイソチアゾリノンと、1重量%のベンゾイソチアゾリノンと、0.5重量%の安息香酸ナトリウムと、を含有し、イソチアゾリノンの量が不足しており、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、不十分な防黴性及び抗菌性を有する。
【0165】
比較例6において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、1.5重量%のイソチアゾリノン、及び0.1重量%のベンゾイソチアゾリノンを含有し、安息香酸ナトリウムを含有せず、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、不十分な防黴性及び抗菌性を有する。
【0166】
比較例7において提供された酵素含有不織布中、酵素溶液は、1.5重量%のイソチアゾリノン、及び0.5重量%の安息香酸ナトリウムを含有し、ベンゾイソチアゾリノンを含有せず、そのため、不織布中に分散した酵素溶液は、不十分な防黴性及び抗菌性を有する。
【表9】
【0167】
表2a、表2b、及び表7により、実施例1〜9において提供された酵素含有不織布は、医療用機器への損傷を引き起こしにくい。
【表10】
【0168】
表2a、表2b、表2c、及び表8により、実施例1〜13において提供された酵素含有不織布は、医療用機器の金属又はゴム製部品への腐食を引き起こしにくい。
【0169】
上記をまとめると、本開示による酵素溶液は、良好な洗浄能力を有する。また、本開示による酵素溶液は、適切な量のイソチアゾリノン、ベンゾイソチアゾリノン、及び安息香酸ナトリウムを含み、そのため、酵素溶液は、ビスコース繊維及びテリレン繊維を含む不織布との、良好な適合性を有する。不織布中に分散した酵素溶液は、良好な酵素の安定性を有するのみならず、良好な防黴性及び抗菌性も有する。更にまた、本開示による酵素含有不織布は、医療用機器への損傷を引き起こしにくく、医療用機器の金属又はゴム製部品への腐食を引き起こしにくい。
【0170】
前述の発明を実施するための形態は例示の目的のため、多くの具体的な詳細を含むが、当業者は誰しも、その詳細に対し多くの変更、置換、及び代替が、特許請求した本発明の範囲内にあることを理解する。それ故、発明を実施するための形態に記載した本開示は、特許請求した発明に限定を課することなく記載されている。本発明の正式の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその適切な法的均等物によって決定されるべきものである。引用した参照文献は全て、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる。