(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該第一温度が、該第一仮想温度より40℃低い温度から該第一仮想温度より20℃低い温度までの範囲にあり、該第二温度が、該第一温度より少なくとも50℃低い、請求項1記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、固定組成のガラスのゼロクロスオーバー温度(Tzc)および熱膨張係数(CTE勾配)の温度勾配に対する独立した制御を提供するガラスの処理方法を提供する。本開示はさらに、当該方法によって製造されたガラスを提供する。
【0029】
用語「物品」または「ガラス物品」は、ガラスで作製された物体または構成要素に言及するために本明細書において使用されるものとする。当該ガラス物品は、ブール、ブランク、シート、塊、または任意の物理的寸法の他のガラス構成物であり得る。当該ガラス物品は、チタニア−シリカガラスを含み得る。当該チタニア−シリカガラスは、5重量%から12重量%までの範囲、または6重量%から10重量%までの範囲、または7.5重量%から9重量%までの範囲のチタニア含有量を有し得る。当該ガラス物品は、当技術分野において公知の任意の方法によって直接形成してもよく、または当技術分野において公知の任意の方法によって作製されたガラスプレフォームを統合することによって形成してもよい。シリカ−チタニアガラス組成物は、EUVL系において最も一般的に使用されているため、例示目的のために本明細書において強調されるであろう。しかしながら、本開示の方法はより一般的であり、OH、フッ素、塩素、または他のドーパントを含有するシリカ−チタニアガラスを含む任意の組成のガラスに及ぶ。
【0030】
シリカ−チタニアガラスを作製するために使用されるシリカおよびチタニア前駆体は、任意のハロゲン化ケイ素およびハロゲン化チタン、またはそのようなガラスの作製にとって有用な当技術分野において公知の有機金属化合物、あるいはそれらの混合物であり得る。シリカ−チタニアガラスで作製されたガラス物品のCTE勾配およびTzcは、本明細書において説明される方法を用いて調整することができる。Corning Incorporated製の「ULE」ガラスが、非限定的に、例示的シリカ−チタニアガラスとして本明細書において使用され得、ならびに本明細書において、ULEガラスまたはシリカ−チタニアガラスと呼ばれ得る。
【0031】
シリカ−チタニアガラスの代表的な製造方法は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、ならびに特許文献7、特許文献8、および特許文献9に記載されており、当該文献全ての開示は、参照により本明細書に組み入れられる。例えば、特許文献2には、溶融シリカ−チタニアガラスを調製する方法および機器について記載されている。当該機器は、定置カップまたは容器を含む。特許文献1には、当該文献において説明されるような先行技術の回転カップを使用した、溶融シリカブールのオフアクシス均質性を改善するための揺動/回転パターンの使用について記載されている。特許文献6には、石英ロッドもしくはプレートなどの標的上へのシリカ−チタニア粒子の被着ならびにシリカ−チタニアガラス体をえるために当該被着粒子をガラス化温度に加熱することによるシリカ−チタニアガラスの調製について記載されている。特許文献7には、チタニア含有ガラス煤の被着とそれを固体化してシリカ−チタニアガラス体を形成することによる、低膨張のチタニア含有シリカガラス体の製造方法について記載されており、さらに、炉の通気口または排気口の数を増加させることによる脈理の低減について記載されている。
【0032】
半導体産業はシリコンチップを製造し、シリコンチップは過去数10年間にわたって生じた情報革命を促進してきた。半導体産業の成功は、半導体チップの性能の絶え間ない向上および製造コストの継続的な削減の結果と考えることができる。性能向上およびコスト削減は、主に、チップおよび装置の小型化によって達成されてきており、小型化は、リソグラフィスキャナの光学的分解能における増加によって可能となった。リソグラフィの加工寸法は、光源の波長と相関しており、リソグラフィシステムにおけるスキャナの作動波長を短くすることが強く求められている。従来の屈折光学を用いて達成可能な実用的解像度は、現在のリソグラフィ波長(ArFエキシマレーザー)の約193nmにおいて、その限界に達している。現在のArFスキャナは、現時点で、それらの最小の実用的加工寸法に達しつつある。
【0033】
加工サイズを減少させ、ならびにArFスキャナの限界を超えて装置密度を増加させるために、産業界は、新しい技術を見出す必要がある。最も有望な注目技術は、極端紫外線リソグラフィ(EUVL)である。いくつかのパイロットラインのEUVLツールが現在稼働中であり、EUVLを使用したチップ製造は、まもなく近い将来において始まると予想される。現在のパイロットラインのEUVLツールと生産規模のEUVLツールとの間の主要な差は、スループット要件を満たすために生産スケールに必要な非常に高い光源強度である。次世代EUVLツールは、高強度、すなわち、製造生産性および解像度を最大化する高エネルギーEUV光源に向かう傾向を激化させると思われる。
【0034】
EUVLは、マスターレチクル(マスクとしても知られる)の特徴を半導体ウェハの表面上に被着された薄い感光層(レジスト)上に再生するために光投影システムに依拠している点において、現在の光リソグラフィと同様である。EUVLは、約13.4nmの波長において作動するが、既知の材料で当該波長において透明なものはない。したがって、EUVL投影システムは、屈折素子(レンズ)よりむしろ反射部品(ミラー)を用いる。EUV放射線の非常に短い波長は、EUVLシステムにおける設計に対し、いくつかの課題をもたらす。例えば、ミラー上の反射コーティングは、基本的に、約70%の効率が限界であり、これは、EUV源の放射線の約30%がスキャナの各反射面において失われるということを意味する。失われた放射線は、ミラー基板によって熱として吸収される。ミラー基板による熱吸収は、当該基板の熱膨張もしくは収縮を生じ得るために望ましくなく、これらの膨張もしくは収縮は、反射コーティングを変形もしくは変更し得、反射されたEUV放射線の波面における歪みを引き起こし得る。次に、波面の歪みは、EUVL方式の解像度における劣化を引き起こし得る。その上、ガスが13.4nmの放射線を吸収するために、EUVLシステムは、内部真空下において作動させなければならない。真空条件は、ミラーから熱を取り除くことをより困難にし、ミラー加熱の問題を悪化させる。
【0035】
EUVLシステムに関連する熱効果に対する懸念は、ミラー基板を作製するために使用される材料に対して非常に厳しい要件を課す。例えば、「ULE」ガラスなどのシリカ−チタニアガラスは、現在、EUVL投影システムのミラー基板にとって最適な材料である。「ULE」ガラスは、室温で非常に低い熱膨張係数(CTE)を有し、これは、加熱の際にミラーの形状を実質的に一定のまま維持することを可能にする点において重要である。「ULE」ガラスは、低脈理(非常に正確な鏡面の製造を可能にする)、長期間の化学的安定性および寸法安定性、ならびに真空環境との適合性も特徴とする。
【0036】
EUVL投影システムのための仕様は、ミラー基板のTzcが非常に狭い範囲内にありかつ空間的に非常に均一であることを必要とする。狭い目的範囲内のTzc値を達成するためには、シリカ−チタニアミラー基板の組成に対する精密な制御が必要である。Tzcの空間的均一性を維持するために、ミラー基板の寸法全体での組成の均一性が必要である。半導体産業は、より小さい特徴サイズに向かう傾向を続けているため、組成における空間的均一性は、益々、難しい課題となるであろう。より小さい特徴サイズは、より大きい開口数のミラーを必要とし、これは、より大きいミラーの使用を必然的に伴う。EUVL投影システムにおけるより大きいミラーの必要性は、益々より大きなミラー基板に対する組成的均一性を必要とする。実際には、EUVLミラー基板に期待される仕様を満たすために必要な大面積において、正確で均一な組成のガラスブールを信頼性高く製造することは、より困難になってきている。
【0037】
さらに、EUVL投影システムでは様々なミラーが異なる熱環境に晒されるため、EUVLシステムを完全に備えるためには様々なTzc値を有するミラー基板が必要であることが認識される。原則として、様々なTzc値でのミラー基板の形成では、様々な組成の一連のブールを使用することができるであろう。例えば、
図1は、3種のシリカ−チタニアガラスでの、温度による熱膨張係数CTE(本明細書において、「膨張率」とも呼ばれ得る)の変動を示している。トレース10は、標準的なガラス組成(7.5重量%のチタニアおよび92.5重量%のシリカ)を有するガラス物品における変動を示している。トレース12は、組成B(>7.5重量%のチタニアおよび<92.5重量%のシリカ)を有するガラス物品における変動を示している。トレース14は、組成A(<7.5重量%のチタニアおよび>92.5重量%のシリカ)を有するガラス物品における変動を示している。Tzcは、膨張率がゼロに等しい温度に対応する(組成Aの場合は約14℃、標準的な組成の場合は約20℃、ならびに組成Bの場合は約26℃)。当該データは、ガラスのチタニア含有量を変えることによってTzcを制御することができるということを示しているが、実際には、異なるTzc値を有するミラー基板を実現するためにチタニア含有量の異なる複数のブールを調製することは、高価であり不便である。
【0038】
プロセス効率の観点から、同じ組成のブールからEUVLシステムに必要なミラー基板の完全なセットを製作することが好ましい。様々な組成のブールを製造するための複数のプロセスを開発するより、大量に単一の組成のブールを製造するための標準化された製造プロセスを開発することは、より簡便である。高容積法において製造された固定組成のブールは、EUVLシステム内の特定の熱環境に対する安定性について生産後にスクリーニングすることができ、ならびに、生産後アニール処理を施すことにより、特定の用途に対する好適性を最適化するために特性を調節することができる。一度ブールが最適化されれば、それを切断することにより、特定の用途のためにカスタマイズされた均一な特性を有する複数のブランクを製造することができる。異なるブールに異なる生産後処理を施すことによって、EUVLシステム内の異なる熱環境または異なる用途に対して最適化されたブランクを得ることができる。あるいは、特定のブールから切断されたブランクに異なるアニール処理を施すことによって、同じブールから、それぞれが異なる用途に対して最適化された一連のミラー基板を製造することができる。単一の組成に基づいた大量製造プロセスを成功させるためには、広い範囲でブールの特性を調整することができる生産後アニール処理プロセスが利用可能でなければならない。本明細書の以下においてより完全に説明されるように、従来のアニール処理プロセスから入手可能なチューナビリティは限定的であり、実際的応用にとって十分な範囲に対してブールの特性を調節するには不十分である。本開示は、ブール特性のチューナビリティの程度をかなり拡大するアニール処理プロセスを提供することによって、この欠陥を改善する。
【0039】
ミラー基板の仕様は、Tzcに加えて、CTE勾配の目標値およびガラス物品全体に対するCTE勾配の空間的均一性を必要とする。CTE勾配は、温度に対するCTEの感応性の指標であり、
図1に示されるトレースなどのデータ曲線の標的勾配によって得られる。CTE勾配は、より一般的には、温度に対するCTEの変化の割合として定義され得る。一般的に、小さいCTE勾配を有することが望ましい。
【0040】
本明細書において説明される方法は、指定された速度においてある温度から異なる温度へとガラス物品を冷却する工程を含み得る。本明細書において使用される場合、「冷却速度」、「冷却する速度」、「...の速度において冷却する」などの用語は、平均冷却速度を意味する。平均冷却速度は、指定された2つの温度の間に対して、または単一の指定された温度より低い温度に対して適用され得る。本明細書において使用される場合、用語「CTE勾配」は、20℃の温度でのCTE勾配を意味する。
【0041】
「ULE」ガラスの製作において、当該ガラスは、高温炉において形成され、ブールまたは他のガラス物品を形成するために機械加工される。次いで、当該ガラス物品は、残留内部応力を緩和してガラス特性の空間的均一性を促進するために、標準的な初期アニール処理プロセスを施される。標準的な「ULE」アニール処理プロセスの条件は、以下の通りである。
【0042】
50℃/時の速度において25℃から990℃まで昇温し、
990℃の温度を10時間維持し、
10時間維持した後、3℃/時の速度において990℃から850℃まで降温し、ならびに
25℃/時の速度において850℃から25℃まで降温する。
【0043】
標準的初期アニールは、初期仮想温度Tf、0と、狭い範囲内に収まるシリカ−チタニアガラスの初期CTE勾配とを確立する。しかしながら、当該ガラスにおけるチタニアの空間的濃度の不均一性に起因して、当該シリカ−チタニアガラスの初期ゼロクロスオーバー温度Tzc、0の著しい変動が観察される。標準的初期アニール後のシリカ−チタニアガラスのCTE勾配は、EUVLミラー基板のための望ましい目標値よりも大きい。CTE勾配を目標範囲まで下げるために、先行技術は、従来の製作に付随する標準的初期アニールの完了後に、シリカ−チタニアガラスに二次アニールを施すことを開示している。二次アニールの目的は、目標範囲のCTE勾配を得るのに十分低い温度へと、シリカ−チタニアガラスの仮想温度をシフトさせることである。
【0044】
二次アニールのために先行技術において開示されている典型的な温度スケジュールを
図2に示す。ガラス物品は、高温に加熱され、その温度で数時間維持され、より遅い速度で中間温度まで冷却され、より速い速度において当該中間温度から最終温度(通常、室温)まで冷却される。当該高温は、標準的初期アニールにおいて得られる初期仮想温度Tf、0より高い温度である。
図2において、当該高温は950℃である。中間温度は、数週間までの期間のアニール処理スケジュールによってガラスに対して達成可能な最低仮想温度より低い温度である。先行技術における予想は、予想される最低仮想温度よりはるかに低い温度により遅い速度で冷却することは、ガラスの特性に対して最小の効果しか持たず、急速な冷却工程の開始を遅らせることにより当該プロセスを過度に長期化することにしか貢献しない、ということである。
図2の中間温度は800℃である。当該高温から中間温度までの冷却速度が初期仮想温度Tf、0からの仮想温度の低下を決定することが、当技術分野において知られている。より速い冷却速度は、より遅い冷却速度よりもより高い仮想温度を提供する。当該高温から中間温度までの冷却速度は、
図2のアニール処理スケジュール1が最も速く、アニール処理スケジュール2から6にわたって継続的に遅くなっている。アニールスケジュール1を施したガラス物品は、アニール処理スケジュール2を施された同じ組成のガラス物品より高い仮想温度を有し、アニール処理スケジュール2を施されたガラス物品は、アニール処理スケジュール3を施されたガラス物品等より高い仮想温度を有する。中間温度まで冷却した後、当該ガラス物品は急速な冷却工程を施される。従来技術のアニール処理スケジュールにおける急速な冷却工程は、標準的な速度において行われ、先行技術のアニールスケジュールにおける多様性は、当該高温と当該中間温度との間の冷却速度においてのみ生じている。先行技術において、室温への最終的な急冷工程の冷却速度に対する唯一の問題は、Tfのさらなる進展を止めるのに十分に速く、ならびにガラス体および設備の無欠陥性を保つことと相性が良いということである。
【0045】
先行技術の二次アニール処理プロセスにおける高温と中間温度との間の冷却速度の変量の結果として生じる仮想温度の変動は、CTE勾配およびTzcにおける変動を生じる。
図3は、重量ベースの近似組成、7.9%のTiO
2、約92.0%のSiO
2、および850ppmのOH、を有するシリカ−チタニアガラスにおける、TzcとCTE勾配との間の算出された関係を示している。特に明記されない限り、以下において説明される実施例においては、約850ppmのOH含有量が想定される。
図3に示された各データ点は、
図2に示されたタイプの先行技術の二次アニールを施された後のシリカ−チタニアガラスに対応している。異なるデータ点は、高温(950℃)から中間温度(800℃)までの異なる冷却速度に対応している。各データ点に対して、二次アニールの他の工程は同じであった。TzcおよびCTE勾配は、ガラス組成に対して各データ点に対応するアニール処理について計算した。高温(950℃)から中間温度(800℃)までの冷却速度が増加するに従って、CTE勾配およびTzcの両方が増加することが観察された。
図3の左から右へと一直線に並んだデータ点は、徐々に増加する速度において高温(950℃)から中間温度(800℃)まで冷却した固定組成のシリカ−チタニアガラスの試料に対応している。
【0046】
図3に示されたデータ点を判定するために使用した計算の正確さは、曲線に沿って選択した点の測定によって確認した。異なる組成のガラスについて実施した測定によって、さらに確認した。異なる組成のガラスは、標準的な初期アニール後に異なる初期Tzc値を有するが、CTE勾配の関数として、異なる冷却速度を用いる先行技術の二次アニールによって誘起されたTzcにおける変化をプロットすることにより、比較することができる。そのような測定の結果から、
図3に示された傾向と一致するプロットが得られる。
【0047】
図3のデータは、先行技術の二次アニール処理プロセスを使用することによってTzcおよびCTE勾配の両方を変えることができるということを示しているが、先行技術の方法を用いてTzcおよびCTE勾配を独立して変えることは不可能である。代わりに、TzcとCTE勾配とは相関関係にあるので、先行技術において高温と中間温度との間の冷却から結果として生じる仮想温度における任意の調節が、TzcおよびCTE勾配の両方を予め決定する。例えば、CTE勾配における特定の変化は、必ずTzcにおける特定の変化を伴うので、CTE勾配とTzcとの間の1:1対応が先行技術の二次アニールから生じる。
図3に示されたデータは、CTE勾配とTzcとの間の相関関係を例証している。
【0048】
所与の組成のガラスにおける相関するCTE勾配およびTzc値の代わりに、CTE勾配およびTzcの独立した変量を可能にするアニール処理プロセスを開発することは望ましいであろう。例えば、
図3に示されたデータにおいて、Tzc=50℃を必要とする用途に好適なシリカ(92.0重量%)−チタニア(7.9重量%)ガラスは、必ず、20℃において約1.57ppb/K
2のCTE勾配を有する。CTE勾配のこの値は、意図される用途にとっては高すぎ得るため、このことから当該ガラスは不適格と見なされ得る。低いCTE勾配を達成するために、
図3の相関は、先行技術の二次アニールを施されたガラスが必ず低いTzcを有することを示している。先行技術の二次アニールにより、高いTzcおよび低いCTE勾配の両方を有する所与の組成のガラスは不可能である。
【0049】
本開示は、TzcおよびCTE勾配に対する独立した制御を可能にするガラスをアニール処理する方法を提供する。本開示は、先行技術の二次アニール処理プロセスにおける欠陥を認識する。具体的には、本開示は、先行技術の二次アニールの中間温度未満での制御された冷却がガラスの特性に影響を及ぼすことを認識する。一貫した中間温度および先行技術の二次アニールにおける中間温度未満において実施される一貫した急速な冷却(
図2に示されるような)が、
図3に表されるTzcおよびCTE勾配の相関の原因であると考えられる。中間温度を変更し、当該中間温度未満での急速な冷却を、中間温度未満から先行技術の二次アニールに関連する、中間温度より十分に低いアニール処理終点温度までのより遅い制御された冷却に換えることによって、本開示は、TzcおよびCTE勾配の独立した制御を可能にする。
【0050】
本開示の方法は、2つの異なる温度間隔に対する制御されたアニールを含むアニール処理プロトコルをガラス物品に施す工程を含む。当該ガラス物品は、初期製作の間に前もって初期アニール、例えば、上記において説明した標準的な初期アニールなどを施されているガラスであり得るかまたはそのようなガラスを含み得る。製作および初期アニールの完了後の当該ガラスのTzcおよびCTE勾配は、本明細書において、それぞれ、初期Tzc(またはTzc、0)および初期CTE勾配(またはα’、0)と呼ばれ得る。当該ガラスは、シリカ−チタニアガラスであり得る。本方法において、第一の制御されたアニールは、第二の制御されたアニールより高い温度間隔において行われる。本明細書の下記においてより完全に説明されるように、当該ガラス物品のCTE勾配は、主に、より高い温度での制御されたアニールによって決定される。当該ガラス物品のTzcは、主に、より高い温度での制御されたアニールによって影響されるが、より低い温度での制御されたアニールによって、CTE勾配から独立して変えることができる。温度窓、冷却速度、ならびにより高い温度およびより低い温度の制御されたアニールのアニール処理時間を制御することにより、本方法は、CTE勾配およびTzcに対する独立した制御によって、先行技術のアニール処理プロトコルから入手可能な範囲より広い範囲の値でのCTE勾配およびTzcの精密制御を可能にできるようにする。
【0051】
第一の制御されたアニールは、高温から中間温度までにおいて行われる。高温および中間温度は、先行技術の二次アニールに関して上記において説明した高温および中間温度と同じであってもまたは異なっていてもよい。当該高温は、制御されたアニールを受けるガラス物品の仮想温度付近の温度かまたはより高い温度である。第一の制御されたアニールは、仮想温度をより高い温度またはより低い温度に調節することができる。シリカ−チタニアガラス物品の場合、当該高温は、少なくとも850℃、または少なくとも875℃、または少なくとも900℃、または少なくとも925℃、または少なくとも950℃、または少なくとも975℃の温度、あるいは875℃と975℃との間、または900℃と950℃との間の温度であり得る。
【0052】
中間温度は、当該高温より低い温度である。当該中間温度は、本開示のアニールの完了後のガラス物品の最終仮想温度以下であり得る。シリカ−チタニアガラス物品の場合、当該中間温度は、少なくとも750℃、または少なくとも775℃、または少なくとも800℃、または少なくとも825℃、または少なくとも850℃、または少なくとも875℃の温度、あるいは750℃と875℃との間、または775℃と875℃との間、または800℃と850℃との間の温度であり得る。
【0053】
高温から中間温度までの冷却速度は、10.0℃/時未満、または7.5℃/時未満、または5.0℃/時未満、または2.5℃/時未満、または1.0℃/時未満、または0.75℃/時未満、または0.5℃/時未満、または0.25℃/時未満、または0.10℃/時未満、あるいは0.01℃/時と10.0℃/時との間、または0.01℃/時と5.0℃/時との間、または0.10℃/時と7.5℃/時との間、または0.10℃/時と5.0℃/時との間、または0.25℃/時と5.0℃/時との間、または0.50℃/時と5.0℃/時との間であり得る。
【0054】
第二の制御されたアニールは、中間温度からアニール処理終点温度までにおいて行われる。当該アニール処理終点温度は、中間温度より低く、かつ室温より高い。当該アニール処理の終点温度は、少なくとも650℃、または少なくとも675℃、または少なくとも700℃、または少なくとも725℃、または少なくとも750℃、または少なくとも775℃の温度、あるいは650℃と775℃との間の温度、または675℃と775℃との間の温度、または675℃と750℃との間の温度、または700℃と750℃との間の温度、または675℃と725℃との間の温度であり得る。
【0055】
中間温度からアニール処理の終点温度までの冷却速度は、300℃/時未満、または200℃/時未満、または100℃/時未満、または50℃/時未満、または25℃/時未満、または10℃/時未満、または5℃/時未満、または1℃/時未満、または0.5℃/時未満、あるいは0.1℃/時と300℃/時との間、または0.5℃/時と100℃/時との間、または1.0℃/時と50℃/時との間、または2.0℃/時と25℃/時との間、または2.0℃/時と20℃/時との間、または2.0℃/時と15℃/時との間、または2.0℃/時と10℃/時との間であり得る。
【0056】
アニール処理終点温度まで冷却した後、当該ガラス物品は、完成したガラス物品を製造するために、さらに、当該アニール処理終点温度よりも低い最終温度まで冷却され得る。当該最終温度は、室温であり得る。アニール処理終点温度から最終温度までの冷却速度は任意であり、第一の制御されたアニールの間の冷却速度および第二の制御されたアニールの間の冷却速度より速くあり得る。
【0057】
下記において提示される実施例は、本方法のより高い温度窓およびより低い温度窓に対する制御されたアニールが、TzcおよびCTE勾配に対する独立した制御を可能にすることを実証している。より高い温度のアニール処理プロセスの条件(例えば、高温、中間温度、および冷却速度)は、CTE勾配に対して主要な影響を有することが示され、その一方で、より低い温度のアニール処理プロセスの条件(例えば、中間温度、アニール処理終点温度、および冷却速度)は、CTE勾配に対してあまり影響を有さないことが示される。より高い温度のアニール処理プロセスの条件は、Tzcにも影響を及ぼすが、上記において説明されるように、CTE勾配への影響と相関関係があるような形においてのみである。対照的に、より低い温度のアニール処理プロセスの条件は、CTE勾配から独立した、Tzcに対する制御を可能にする。
【0058】
所与のCTE勾配に対して、本開示の制御されたアニールを利用することで、固定組成のシリカ−チタニアガラスのTzcを、先行技術の二次アニールによって可能な範囲よりはるかに広い範囲において調整することが可能となる。同様に、所与のTzcに対して、本方法は、先行技術の二次アニールによって可能な範囲よりはるかに広い範囲での、固定組成のシリカ−チタニアガラスのCTE勾配の調整を可能にする。本方法によって達成可能な、TzcおよびCTE勾配におけるチューナビリティは、これまで、ガラス組成の変量によってのみ可能であった。本方法により、目標のTzcおよびCTE勾配値を達成するために様々な組成の別々のブールを調製する必要が避けられ、その代わりに、固定組成の単一のブールを用いることができる。固定組成のブールは、標準化されたプロセスによって調製することができ、ならびに本開示の制御されたアニールを施すことによって、広い範囲に及ぶTzcおよびCTE勾配値のブールを提供することができる。個々のブールは、目標とするTzcおよびCTE勾配値を必要とする用途に対してカスタマイズすることができ、この場合、潜在的TzcおよびCTE値の範囲は広く、潜在的用途の範囲は、それに対応して多様である。あるいは、均一な組成の単一のブールから抜き出されたブランクは、本開示の制御されたアニールを施すことにより、様々なTzcおよびCTE勾配値を有するガラス物品を提供することができる。
【0059】
本開示の方法は、初期ゼロクロスオーバー温度(Tzc、0)および初期CTE勾配(α’、0)を有するガラス物品を、最終ゼロクロスオーバー温度(Tzc、f)および最終CTE勾配(α’、f)を有する完成したガラス物品へと変えることができる。当該完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期クロスオーバー温度とは異なり得、その一方で、当該完成したガラス物品のCTE勾配は、初期CTE勾配と異なる可能性もあれば異ならない可能性もある。あるいは、当該完成したガラス物品のCTE勾配は初期CTE勾配とは異なり得るが、その一方で、当該完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と異なる可能性もあれば異ならない可能性もある。
【0060】
完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、少なくとも2℃、または少なくとも5℃、または少なくとも8℃、または少なくとも12℃、または少なくとも16℃、または少なくとも20℃異なり得る。
【0061】
完成したガラス物品のCTE勾配は、初期CTE勾配と、少なくとも0.05ppb/K
2、または少なくとも0.10ppb/K
2、または少なくとも0.15ppb/K
2、または少なくとも0.20ppb/K
2、または少なくとも0.25ppb/K
2異なり得る。
【0062】
完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、少なくとも2℃異なり得、ならびに当該完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、0.10ppb/K
2未満、または0.07ppb/K
2未満、または0.05ppb/K
2未満、または0.03ppb/K
2未満の差で異なり得る。完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、少なくとも5℃異なり得、ならびに当該完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、0.10ppb/K
2未満、または0.07ppb/K
2未満、または0.05ppb/K
2未満、または0.03ppb/K
2未満の差で異なり得る。完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、少なくとも8℃異なり得、ならびに当該完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、0.10ppb/K
2未満、または0.07ppb/K
2未満、または0.05ppb/K
2未満、または0.03ppb/K
2未満の差で異なり得る。完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、少なくとも12℃異なり得、ならびに当該完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、0.10ppb/K
2未満、または0.07ppb/K
2未満、または0.05ppb/K
2未満、または0.03ppb/K
2未満の差で異なり得る。
【0063】
完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、少なくとも16℃異なり得、ならびに当該完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、0.10ppb/K
2未満、または0.07ppb/K
2未満、または0.05ppb/K
2未満、または0.03ppb/K
2未満の差で異なり得る。完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、少なくとも20℃異なり得、ならびに当該完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、0.10ppb/K
2未満、または0.07ppb/K
2未満、または0.05ppb/K
2未満、または0.03ppb/K
2未満の差で異なり得る。
【0064】
完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、少なくとも0.05ppb/K
2異なり得、ならびに当該完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、5℃未満、または3℃未満、または1℃未満の差で異なり得る。完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、少なくとも0.10ppb/K
2異なり得、ならびに当該完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、10℃未満、または5℃未満、または3℃未満の差で異なり得る。完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、少なくとも0.15ppb/K
2異なり得、ならびに当該完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、15℃未満、または10℃未満、または5℃未満の差で異なり得る。完成したガラス物品の20℃でのCTE勾配は、20℃での初期CTE勾配と、少なくとも0.20ppb/K
2異なり得、ならびに当該完成したガラス物品のゼロクロスオーバー温度は、初期ゼロクロスオーバー温度と、20℃未満、または15℃未満、または10℃未満の差で異なり得る。
【0065】
CTE勾配およびTzcを独立して制御する能力は、本アニール処理方法が、相関関係にない方式においてCTE勾配およびTzcを変えることができるということを意味している。固定ガラス組成でのCTE勾配およびTzcの変動の範囲は、
図3に示されるような相関関係によって束縛されない。その代わりに、初期値から任意の値までのCTE勾配およびTzcの変動が可能である。先行技術のアニール処理スケジュールは、
図3に示されるような相関関係に沿った異なる点の間でのCTE勾配およびTzcの変換を可能にするが、その一方で、本開示のアニール処理スケジュールは、
図3に示されるような先行技術の相関関係の点から、先行技術の相関関係にない点への、または先行技術の相関関係にない点から先行技術の相関関係の点への、または先行技術の相関関係にない点から先行技術の相関関係にない異なる点へのCTE勾配およびTzcの変換を可能にする。
【0066】
図4は、
図3に示された相関関係にあるTzcおよびCTE勾配値を再び表しており、同じ組成を有するガラスにおける相関関係にないさらなるTzcおよびCTE勾配値も含んでいる。上記において説明されるように、相関関係にあるTzcおよびCTE勾配値は、先行技術によるアニール処理スケジュールを用いたものである。相関関係にないTzcおよびCTE勾配値は、実線で示された相関関係上にない点によって表される状態を指している。相関関係にないTzcおよびCTE勾配値は、本開示のアニール処理スケジュールから入手可能である。
図4に示される点Aは、相関関係にあるTzcおよびCTE勾配値のガラスを表している。点Aによって表されるガラスは、1.57ppb/K
2のCTE勾配および50℃のTzcを有する。当該ガラスを必要とする用途が、およそ1.30ppb/K
2のCTE勾配を必要とする場合、先行技術のスケジュールによるアニール処理は、
図4の点Bによって表されるガラスを提供するであろう。TzcはCTE勾配と相関関係にあるため、当該ガラスは、必ず、20℃のTzcを有するであろう。当該用途が20℃以外のTzcを必要とする場合、当該ガラスは、不適当であろう。
【0067】
本方法によるアニール処理は、点Aで表されるガラスを、CTE勾配の目標値に対して広範なTzc値の複数の状態へと変えることを可能にする。1.30ppb/K
2のCTE勾配を有するガラスを所望の場合、本アニール処理方法は、先行技術のアニール処理方法から入手可能な点Bによって表されるようなTzc=20℃を有するガラスを提供できるだけでなく、20℃を超えるTzcまたは20℃未満のTzcを有するガラスも提供することができる。
図4に示される点C、D、およびEによって概略的に表されるガラスは、本開示の方法から入手可能なTzcのチューナビリティを表している。点線は、点Aによって表されるガラスの、点C、D、E、およびFへの変換を例示しており、本開示の方法の使用による、CTE勾配とTzcとの間の相関関係の欠如を例証している。類似のチューナビリティは、1.70ppb/K
2未満の、または1.60ppb/K
2未満の、または1.50ppb/K
2未満の、または1.40ppb/K
2未満の、または1.30ppb/K
2未満のCTE勾配、あるいは1.25ppb/K
2と1.65ppb/K
2との間のCTE勾配を有するガラスを含む、任意のCTE勾配値を有するガラスに対して入手可能である。
【0068】
図5は、本開示の方法から入手可能なCTE勾配における同様のチューナビリティを概略的に示している。点Aによって表されるガラスに対して20℃のTzcが所望される場合、本開示の方法は、点Bによって表された、相関関係にあるCTE勾配を有するガラスを提供することに制限されない。その代わりに、本開示の方法は、例えば、
図5の点F、G、およびHによって例示される幅広い範囲に及ぶCTE勾配値の、Tzc=20℃を有するガラスを提供することができる。10℃を超える、または20℃を超える、または30℃を超える、または40℃を超える、または50℃を超えるTzc、あるいは10℃と50℃との間のTzcを有するガラスを含む、任意のTzc値を有するガラスに対して類似のチューナビリティが入手可能である。
【0069】
当該ガラスは、7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2の組成を有し得、
図3に示される相関関係に一致し得る。当該ガラスの初期状態は、1.60ppb/K
2のCTE勾配と、
図3に示された相関関係によるTzc(約52℃)とを有し得、当該ガラスの最終状態は、1.30ppb/K
2以下のCTE勾配と、少なくとも22℃、または少なくとも24℃、または少なくとも26℃、または少なくとも28℃、または少なくとも30℃のTzcとを有し得る。
【0070】
当該ガラスは、7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2の組成を有し得、
図3に示される相関関係に一致し得る。当該ガラスの初期状態は、1.60ppb/K
2のCTE勾配と、
図3に示された相関関係によるTzc(約52℃)とを有し得、当該ガラスの最終状態は、1.40ppb/K
2以下のCTE勾配と、少なくとも32℃、または少なくとも34℃、または少なくとも36℃、または少なくとも38℃、または少なくとも40℃のTzcとを有し得る。
【0071】
当該ガラスは、7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2の組成を有し得、
図3に示される相関関係に一致し得る。当該ガラスの初期状態は、1.60ppb/K
2のCTE勾配と、
図3に示された相関関係によるTzc(約52℃)とを有し得、当該ガラスの最終状態は、1.50ppb/K
2以下のCTE勾配と、少なくとも42℃、または少なくとも44℃、または少なくとも46℃、または少なくとも48℃、または少なくとも50℃のTzcとを有し得る。
【0072】
当該ガラスは、7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2の組成を有し得、
図3に示される相関関係に一致し得る。当該ガラスの初期状態は、1.60ppb/K
2のCTE勾配と、
図3に示された相関関係によるTzc(約52℃)とを有し得、当該ガラスの最終状態は、1.25ppb/K
2以上のCTE勾配と、14℃未満の、または12℃未満の、または10℃未満の、または8℃未満のTzcとを有し得る。
【0073】
当該ガラスは、7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2の組成を有し得、
図3に示される相関関係に一致し得る。当該ガラスの初期状態は、1.60ppb/K
2のCTE勾配と、
図3に示された相関関係によるTzc(約52℃)とを有し得、当該ガラスの最終状態は、1.35ppb/K
2以上のCTE勾配と、24℃未満の、または22℃未満の、または20℃未満の、または18℃未満のTzcとを有し得る。
【0074】
当該ガラスは、7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2の組成を有し得、
図3に示される相関関係に一致し得る。当該ガラスの初期状態は、1.60ppb/K
2のCTE勾配と、
図3に示された相関関係によるTzc(約52℃)とを有し得、当該ガラスの最終状態は、1.45ppb/K
2以上のCTE勾配と、36℃未満の、または34℃未満の、または32℃未満の、または30℃未満のTzcとを有し得る。
【0075】
当該ガラスは、7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2の組成を有し得、
図3に示される相関関係に一致し得る。当該ガラスの初期状態は、1.60ppb/K
2のCTE勾配と、
図3に示された相関関係によるTzc(約52℃)とを有し得、当該ガラスの最終状態は、1.55ppb/K
2以上のCTE勾配と、46℃未満の、または44℃未満の、または42℃未満の、または40℃未満のTzcとを有し得る。
【0076】
上記において述べられているように、
図3に示される相関関係は、約850ppmのOHを含む、特定のチタニア−シリカガラス組成に対応している。他のチタニア−シリカガラス組成に対して、対応する相関関係が存在し、当該相関関係は、概して、
図3に示される相関関係に平行である。
図3に示される相関関係について本明細書において説明されるものに類似するそのような相関関係からの逸脱も、本方法の範囲内である。
【0077】
図4および
図5は、先行技術の相関関係にある点(点A)によって表される初期状態を有するガラスの本開示の態様を例示しているが、本方法はそれに限定されない。本方法は、先行技術の相関関係にない初期状態を有するガラスを、先行技術の相関関係にある点または相関関係にない点で表される最終状態を有するガラスに変換することができる。例えば、
図5の点Hで表される初期状態を有するガラスは、
図4の点Eで表される最終状態へと変換することができる(その逆もまた同様に)。したがって、本アニール処理方法から入手可能な変換は、当該ガラスのTzcおよびCTE勾配の両方において変化を誘発し得るので、ガラスの最終状態のTzcおよびCTE勾配の両方が、当該ガラスの初期状態のTzcおよびCTE勾配とはかなり異なる。最終Tzcと初期のTzcとの間の差および最終CTE勾配と初期のCTE勾配との間の差の一方または両方は、先行技術のアニール処理方法から得られる相関関係によって表される対応する差とは異なり得る。
【0078】
図3に示される先行技術の相関関係は、107℃/(ppb/K
2)の傾きの実質的に直線状であり、この場合、傾きは、相関関係にある2つの点におけるTzcの間の差とCTE勾配の間の差との比率として定義される。本開示の方法は、初期状態および最終状態におけるTzcの間の差とCTE勾配の間の差との比率が、107℃/(ppb/K
2)を超えるか(例えば、
図4の点Cと点Aの間の変換)、または107℃/(ppb/K
2)を下回る(例えば、
図4の点Dと点Aの間の変換)ようなチューナビリティを提供する。
【0079】
本開示の方法はさらに、本明細書において開示されるより高い温度のアニールから独立した、本明細書において開示されるより低い温度のアニールの実践にまで及ぶ。ガラス物品は、製作され、ならびに本明細書において説明されるより高い温度のアニールを施されずに、本明細書において説明されるより低い温度のアニールを施され得る。ガラス物品は、製作され、標準的な初期アニールを施され、次いで本明細書において説明されるより高い温度のアニールを施されずに、本明細書において説明されるより低い温度のアニールを施され得る。より低い温度のアニールの実践は、中間温度に加熱する工程、上記において開示されるような速度においてアニール処理終点温度まで冷却する工程、および本明細書において開示されるような速度でアニール処理終点より低い温度に冷却する工程を含み得る。当該中間温度は、上記において開示される通りであり得る。当該中間温度は、当該ガラス物品の仮想温度を下回る温度となるように選択され得る。当該中間温度は、仮想温度から60℃低い温度から仮想温度から10℃低い温度までの範囲、または仮想温度から50℃低い温度から仮想温度から20℃低い温度までの範囲、または仮想温度から40℃低い温度から仮想温度から20℃低い温度までの範囲であり得る。中間温度への加熱は、ガラス物品をガラス物品の仮想温度を超える温度に晒すことを除外し得る。ガラス物品の仮想温度より低いように中間温度を選択し、当該ガラス物品をその仮想温度を超える温度に晒すことを避けることによって、本明細書において開示されるより高い温度のアニールを行わず、本明細書において開示されるより低い温度のアニールを実践することは、CTE勾配または仮想温度に影響を及ぼすことなく、Tzcの改良を可能にし得る。
【0080】
アニール処理終点温度は、中間温度より少なくとも25℃低く、または中間温度より少なくとも50℃低く、または中間温度より少なくとも100℃低くあり得る。
【0081】
中間温度からアニール処理の終点温度までの冷却速度は、300℃/時未満、または200℃/時未満、または100℃/時未満、または50℃/時未満、または25℃/時未満、または10℃/時未満、または5℃/時未満、または1℃/時未満、または0.5℃/時未満、あるいは0.1℃/時と300℃/時との間、または0.5℃/時と100℃/時との間、または1.0℃/時と50℃/時との間、または2.0℃/時と25℃/時との間、または2.0℃/時と20℃/時との間、または2.0℃/時と15℃/時との間、または2.0℃/時と10℃/時との間であり得る。アニール処理終点温度未満での冷却工程は、アニール処理終点温度より少なくとも50℃低くまで、またはアニール処理終点温度より少なくとも100℃低くまで、またはアニール処理終点温度より少なくとも200℃低くまで冷却する工程を含み得る。
【0082】
より高い温度のアニールを行わずにより低い温度のアニールを実践する場合、ガラスは、初期仮想温度および初期Tzcを有する初期状態から、最終仮想温度および最終Tzcを有する最終状態を有する完成されたガラス物品へと変換され得る。当該最終仮想温度は、初期仮想温度と、10℃未満、または5℃未満、または2℃未満、または1℃未満、または0.5℃未満、または0.25℃未満の差で異なり得る。初期状態から最終状態へとガラスを変換するプロセスを通しての仮想温度の変化は、2℃未満、または1℃未満、または0.5℃未満、または0.25℃未満であり得る。最終Tzcは、初期Tzcと、少なくとも0.25℃、または少なくとも0.5℃、または少なくとも1.0℃、または少なくとも2.0℃、または少なくとも4.0℃、または少なくとも6.0℃、または少なくとも8.0℃、または少なくとも10.0℃異なり得る。最終仮想温度は、初期仮想温度と、10℃未満、または5℃未満、または2℃未満、または1℃未満、または0.5℃未満、または0.25℃未満の差で異なり得、ならびに初期状態から最終状態へとガラスを変換するプロセスを通しての仮想温度の変化は、2℃未満、または1℃未満、または0.5℃未満、または0.25℃未満であり得、ならびに最終Tzcは、初期Tzcと、少なくとも0.25℃、または少なくとも0.5℃、または少なくとも1.0℃、または少なくとも2.0℃、または少なくとも4.0℃、または少なくとも6.0℃、または少なくとも8.0℃、または少なくとも10.0℃異なり得る。
【0083】
本開示の範囲内の制御されたアニールは、先行技術のアニール処理方法によって決まる相関関係にない、対を成すCTE勾配およびTzc値を有するシリカ−チタニアガラスを提供する。所与の組成に対して本方法から入手可能なCTE勾配およびTzcにおけるチューナビリティは、先行技術の方法では利用できない。先行技術の方法からCTE勾配およびTzc値の範囲を達成するためには、ガラスの組成を変える必要がある。上記に示されるように、シリカ−チタニアガラスのチタニア含有量における変量は、CTE勾配−Tzcの相関関係をシフトさせ、
図3に示される7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2を有するガラスでの相関関係に対して概して平行な、組成特異的な相関関係を生じる。組成の変量は、CTE勾配およびTzcに対する制御を提供するが、本開示のアニール処理スケジュールと比べて実践するにはあまりに実用的ではない。本アニール処理スケジュールで入手可能なCTE勾配およびTzcにおけるチューナビリティは、かなりの範囲においてチタニア含有量を変えることと同等である。
【0084】
EUVLリソグラフィ用途における関心対象の代表的Tzc値を達成するためにチタニア−シリカガラスにおいて必要なチタニア含有量の計算は、上記において説明される標準的な初期アニールを施して、続いて先行技術による二次アニール処理または本開示のアニール処理方法を施したガラスにおいて実施した。例えば、Tzc=25℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配を有するガラスを有することは望ましくあり得る。これらの仕様を満たすシリカ−チタニアガラスは、先行技術のアニール処理方法を用いて調製する場合、7.95重量%以上のチタニア含有量を必要とする。本開示によるアニールによって、7.45重量%から8.03重量%までの範囲のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスを、Tzc=25℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと変換することができる。したがって、本方法によって、7.45重量%と7.95重量%未満の間のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスをTzc=25℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと調整することができるが、先行技術の方法ではできない。
【0085】
Tzc=35℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配を有するシリカ−チタニアガラスは、先行技術のアニール処理方法を用いて調製される場合、8.13重量%以上のチタニア含有量を必要とする。本開示によるアニールによって、7.62重量%から8.20重量%までの範囲のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスを、Tzc=35℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと変換することができる。したがって、本方法によって、7.62重量%と8.13重量%未満の間のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスをTzc=35℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと調整することができるが、先行技術の方法ではできない。
【0086】
Tzc=25℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配を有するシリカ−チタニアガラスは、先行技術のアニール処理方法を用いて調製される場合、8.07重量%以上のチタニア含有量を必要とする。本開示によるアニールにより、7.56重量%から8.14重量%までの範囲のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスを、Tzc=25℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと変換することができる。したがって、本方法によって、7.56重量%と8.07重量%未満の間のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスをTzc=25℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと調整することができるが、先行技術の方法ではできない。
【0087】
Tzc=35℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配を有するシリカ−チタニアガラスは、先行技術のアニール処理方法を用いて調製される場合、8.23重量%以上のチタニア含有量を必要とする。本開示によるアニールにより、7.72重量%から8.30重量%までの範囲のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスを、Tzc=35℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと変換することができる。したがって、本方法によって、7.72重量%と8.23重量%未満の間のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスをTzc=35℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配を有する最終状態へと調整することができるが、先行技術の方法ではできない。
【0088】
当該結果は、7.72重量%から8.03重量%未満までの範囲のチタニア含有量を有するシリカ−チタニアガラスは、本開示の方法によって、上記において詳述した4つの例示的状態(1.Tzc=25℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配;2.Tzc=35℃および1.30ppb/K
2未満のCTE勾配;3.Tzc=25℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配;4.Tzc=35℃および1.25ppb/K
2未満のCTE勾配)のいずれにも調整することができることも示している。4つの状態のいずれも、ガラス形成プロセスの条件を変更する必要なく、当該組成窓内において達成することができる。本開示による形成後アニール処理は、4つの例示的状態のいずれも満たす最終状態を達成するために当該組成窓内において必要なチューナビリティを提供する。当該チューナビリティは、明確には認識されていないがそれでも当業者によって容易に認められる、TzcおよびCTE勾配の組み合わせの多くの他の最終状態にまで及ぶ。ランレングスをほぼ一定に維持しつつ当該結果を達成することは、本明細書において開示されるアニール処理の特徴でもある。これは、ガラス製造プラントでの計画にとって有利である。
【0089】
実施例1
図6は、本開示による代表的なアニール処理スケジュールを例示している。6つのアニール処理スケジュールが表されている。各アニール処理スケジュールは、950℃の高温に加熱する工程と950℃に数時間維持する工程とを含む。アニール処理スケジュール1〜3は、950℃から825℃の中間温度までは共通の冷却速度を含むが、825℃から700℃のアニール処理終点温度までは冷却速度において異なる。アニール処理スケジュール4〜6は、950℃から825℃の中間温度までは共通の冷却速度を含むが、825℃から700℃のアニール処理終点温度までは冷却速度において異なる。950℃と825℃との間の冷却速度は、アニール処理スケジュール1〜3とアニール処理スケジュール4〜6とでは異なっている。700℃未満から室温までの冷却速度は、アニール処理スケジュール1〜6において同じである。
【0090】
明確には示されていないが、同じ初期加熱および維持条件、同じ高温(950℃)、同じ中間温度(825℃)、同じアニール処理終点温度(700℃)、およびアニール終点温度未満から室温までの同じ冷却速度において、
図6に示されるタイプのいくつかの追加のアニール処理スケジュールを考案した。追加のアニール処理スケジュールは、950℃と825℃との間および/または825℃と700℃との間の冷却速度が異なっていた。
【0091】
組成7.9重量%のTiO
2−92.0重量%のSiO
2を有するシリカ−チタニアガラスにおける20℃でのCTE勾配およびTzcの計算値を、
図7に示す。当該計算は、
図6に示されるタイプのアニールに基づいた。
図7も、
図3に示されるデータをトレース16として再度表わしている。計算したデータは、一連のおよそ直線状のトレースへと分離し、この場合、各トレースのデータ点は、図示されるように線分によって接続される。接続されたデータ点の各セットに対する温度スケジュールは、アニールの高温(950℃)と中間温度(825℃)との間での異なる冷却速度および中間温度(825℃)とアニール終点温度(700℃)との間での共通の冷却速度を含む。垂直方向に並んだ異なるトレースのデータ点は、アニールの高温(950℃)と中間温度(825℃)との間での共通の冷却速度および中間温度(825℃)とアニール処理終点温度(700℃)との間での異なる冷却速度を含む温度スケジュールを施したガラス試料から得た。
【0092】
図7に示されるデータは、固定組成のシリカ−チタニアガラスのTzcおよびCTE勾配を独立して制御する能力を実証している。特定のCTE勾配に対して、本方法によって、中間温度からアニール処理終点温度までの冷却速度を変えることにより広範なTzc値を得ることが可能になる。例えば、特定の用途が、所与の組成のシリカ−チタニアガラスに対して1.25ppb/K
2のCTE勾配を必要とする場合、中間温度からアニール処理終点温度までの冷却速度を制御することによって、約20℃(例えば、約12℃から約32℃まで)の温度範囲においてTzcを調整することが可能になる。対照的に、先行技術のアニール処理スケジュールを使用する場合、1.25ppb/K
2のCTE勾配が所望される場合、約15℃のTzcのガラスしか提供できない。同様に、特定のTzcに対して、本発明の方法によって、高温と中間温度との間の冷却速度および中間温度とアニール処理終点温度との間の冷却速度を変えることにより広範なCTE勾配値を得ることが可能になる。
【0093】
ガラス試料に対し、高温(950℃)と中間温度(825℃)との間での共通の冷却速度および中間温度(825℃)とアニール処理終点温度(700℃)との間での異なる冷却速度を有する
図6のアニール処理スケジュール1〜3を施した。したがって、
図6のアニール処理スケジュール1〜3を施されたガラス試料は、同じCTE勾配と異なるTzc値とを有する。これらの試料に対するデータ点は、
図7において垂直方向に並んでいる。
【0094】
理論に束縛されることを望むわけではないが、第一の制御されたアニールの温度窓(高温と中間温度との間)での冷却は、ガラス物品の仮想温度に影響を及ぼし、仮想温度におけるその変動が、ガラス物品のCTE勾配に対する制御を提供すると考えられる。Tzcも第一の制御されたアニールの温度窓において影響を受けるが、実質的に、CTE勾配における変動に相関するような形においてのみである(上記において説明した先行技術のアニールの期待される効果と一致する)。さらに、本明細書において、第二の制御されたアニールの温度窓(中間温度とアニール処理終点温度との間)での冷却も、ガラス物品の内部構造または物理状態にも影響を及ぼすと考えられる。先行技術の二次アニール処理プロセスに関連する基本的仮定は、CTE勾配およびTzcを含むシリカ−チタニアガラスの状態が、約800℃の温度に冷却される際に固定されるということである。先行技術の二次アニール処理プロセスの推定は、約800℃未満での温度状況における冷却はシリカ−チタニアガラスの構造または特性に対して実質的な効果を有さないということである。対照的に、本開示は、約800℃未満の温度状況における冷却がシリカ−チタニアガラスの特性に影響を及ぼし続けることを実証する。例えば、約800℃から約700℃までの温度状況における冷却は、本明細書において、CTE勾配に対してはほとんどまたは全く影響を及ぼさずにTzcに影響を及ぼすことが示された。Tzcにおける変動は先行技術のアニール処理プロセスにおいても生じているが、それらは、CTE勾配における変動に関連して生じているため、CTE勾配およびTzcの相関値を提供する。CTE勾配から独立したTzcの制御は、本開示の方法によって提供される特徴であり、先行技術の方法では利用できない特徴である。
【0095】
理論に束縛されることを望むわけではないが、本開示の第二の制御されたアニールに関連する低い温度範囲での冷却は、シリカ−チタニアガラスの二次仮想温度に影響を及ぼすと考えられる。仮想温度のように、二次仮想温度は、ガラスの内部構造、歪みの分布、または不均質性の標示であると考えられる。しかしながら、仮想温度および二次仮想温度に関連する現象の時間スケールまたは長さスケールは異なると考えられる。さらに、仮想温度および二次仮想温度に関連する構造的現象または緩和現象は、温度依存性であるが、仮想温度に関連する現象のクエンチ温度は、二次仮想温度に関連する現象のクエンチ温度より高いと考えられる。
【0096】
約800℃を超える温度窓での冷却速度の選択により、アニール処理プロセスの間に、シリカ−チタニアガラスにおける仮想温度を確立する構造的現象および緩和現象に影響を及ぼすことができることが、本明細書において提案される。約800℃未満では、仮想温度を確立する現象はクエンチしており、温度無依存となると考えられる。さらに、二次仮想温度に関連する構造的現象および緩和現象は、800℃を超えた温度での冷却速度によって影響され得るが、その一方で、それらは、800℃未満の温度での冷却速度によって影響され続けることが本明細書において提案される。二次仮想温度に関連する現象は、約650℃の低い温度に至るまで影響され得る。仮想温度を確立する現象は、CTE勾配に対して主要な制御を有するが、その一方で、二次仮想温度を確立する現象は、Tczに対して主要な制御を有すると考えられる。仮想温度および二次仮想温度を確立する異なる現象は、異なる温度においてクエンチするので、本明細書において実証されるように、CTE勾配およびTczに対する独立した制御を達成することが可能となる。
【0097】
実施例2
図8は、TzcおよびCTE勾配の独立した制御を可能にする、代替のアニール処理スケジュールを示している。6つの代表的なアニール処理スケジュールが示されている。各アニール処理スケジュールは、950℃の高温に加熱する工程と950℃に数時間維持する工程とを含む。アニール処理スケジュール1〜3は、950℃から異なる中間温度(約860℃、約825℃、および約780℃)までの共通の冷却速度と、その後の室温までの共通のより速い速度での冷却を含む。アニール処理スケジュール4〜6は、950℃から異なる中間温度(約855℃、約815℃、および約770℃)までの共通の冷却速度(アニール処理スケジュール1〜3に使用された冷却速度とは異なる)と、その後の室温までの共通のより速い速度(アニール処理スケジュール1〜3において使用されるのと同じより速い速度)での冷却を含む。
【0098】
図8に示されたアニール処理スケジュール1〜3における高温からの冷却速度は、共通の仮想温度および共通のCTE勾配を確立することが予想される。中間温度の違いは、Tzcと上記において説明した想定される二次仮想温度とにおいて違いを生じることが予想される。同様の結論は、
図8に示されるアニール処理スケジュール4〜6に対しても当てはまる。
図8のアニール処理スケジュール4〜6とアニール処理スケジュール1〜3とにおける950℃からの冷却速度の違いは、異なるCTE勾配を生じることが予想される。
【0099】
図8に示されるアニール処理スケジュールに対して予想される傾向を検証するために、「ULE」ガラスの共通のブールから抜き出した一連の12のガラス試料において試験を実施した。当該ブールは、組成上均一ではなく、組成において小さい変動を示す領域を含んでいた。組成のわずかに異なるブールの領域から抜き出した6つの試料の2つのセットとして、当該12の試料を選択した。「シリーズ1」と呼ばれる6つの試料のセットは、7.2重量%のTiO
2および92.7重量%のSiO
2の組成を有しており、「シリーズ2」と呼ばれる6つの試料のセットは、7.5重量%のTiO
2および92.4重量%のSiO
2の組成を有していた。全ての試料において、OH含有量は約850重量ppmであった。シリーズ1の6つのガラス試料のそれぞれは、13℃の初期Tzcおよび1.60ppb/K
2の初期CTE勾配を有しており、シリーズ2の6つのガラス試料のそれぞれは、24℃の初期Tzcおよび1.60ppb/K
2の初期CTE勾配を有していた。
【0100】
採用されたアニール処理スケジュールを
図9に示す。各アニール処理スケジュールは、950℃の高温に加熱する工程、950℃を数時間維持する工程、特定の中間温度まで共通の速度において冷却する工程、ならびに共通のより速い速度で室温まで冷却する工程を含んでいた。中間温度は、6つのアニール処理スケジュールで異なっていた。875℃から750℃までの範囲において、6つの中間温度を採用した。当該6つのアニール処理スケジュールは、
図9の識別番号1〜6で標識付けされている。各一連の6つの試料の各試料に、6つのアニール処理スケジュールの異なる1つを施した。アニール処理プロセスの終了後、各試料に対して、20℃でのCTE勾配およびTzcを測定した。各試料の仮想温度(Tf)も、十分に確立されたモデルを使用して計算した。
【0101】
図10は、12の試料のそれぞれのTzcおよびCTE勾配を示している。シリーズ1のデータ点は、13℃の初期Tzcおよび1.60ppb/K
2の初期CTE勾配を有する一連の6つの試料に対応しており、ならびにシリーズ2のデータ点は、24℃の初期Tzcおよび1.60ppb/K
2の初期CTE勾配を有する一連の6つの試料に対応している。各データ点に関連付けられたアニール処理スケジュールは、
図9に示された識別番号により標識付けされている。
図10のデータは、CTE勾配をおよそ一定に維持しつつ、約13℃の範囲において、試料の各セット内においてTzcを変えることができるということを実証している。
【0102】
CTE勾配における最も著しい変動は、アニール処理スケジュール1において観察された。当該変動の由来は、アニール処理スケジュール1に伴って生じる仮想温度(Tf)における小さな変動に起因すると考えられる。アニール処理スケジュール1は、最も高い中間温度(875℃)を有し、遅い冷却速度での短い冷却時間の後に速い冷却処理を受けていた。ガラス組成物の仮想温度は、875℃では完全には確立されず、したがって、アニール処理スケジュール1を施された試料は、より高い仮想温度を有していたと考えられる。アニール処理スケジュールの中間温度が下げられたため、仮想温度を確立する緩和プロセスが完全にクエンチし、したがって、仮想温度が安定化したと考えられる。CTE勾配と
図11に示される仮想温度との間の相関関係は、これらの予想と一致している。最も高い仮想温度および最も大きいCTE勾配が、アニール処理スケジュール1において観察された。アニール処理スケジュール3〜6では、仮想温度およびCTE勾配が安定化しているのが観察された。6つのアニール処理スケジュールのセットに対するCTE勾配の変動の範囲は、約0.05ppb/K
2であることが観察された。
図6に示されたタイプのアニール処理スケジュールでは、CTE勾配における実質的により小さい変動が予想される。比較目的のため、アニール処理スケジュール1〜6において観察されたTzcの約13℃の調整範囲を達成するためには、CTE勾配における変動は、
図2に示されたタイプの従来のアニール処理スケジュールでは約0.13ppb/K
2であろう。
【0103】
特に明記されない限り、本明細書において説明されるいずれの方法も、そのステップを特定の順序で実施することを必要とすると解釈されることは全く意図していない。したがって、方法のクレームが、そのステップが従うべき順序を実際には列挙していない場合、あるいは、ステップが特定の順序に限定されるべきであると請求項または説明において特に明記されていない場合、任意の特定の順序も推察されることは意図されていない。
【0104】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく様々な変更および変形を為すことができることは、当業者には明白であろう。本発明の精神および本質が組み込まれた、開示された実施形態の変更、組み合わせ、部分的組み合わせ、および変形は当業者が気付き得るものであるので、本発明は、添付の特許請求の範囲内の全てとその同等物を含むと解釈されるべきである。