特許第6585787号(P6585787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6585787大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6585787
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/14 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   E04H9/14 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-156479(P2018-156479)
(22)【出願日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518302139
【氏名又は名称】株式会社九建総合開発
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】新永 隆一
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6356939(JP,B1)
【文献】 特公昭54−019682(JP,B2)
【文献】 特公昭62−015687(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/14
E02D 29/045− 29/055
E02D 23/00 − 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型の管本体の内側の土を排出しながら該管本体を地中に鉛直方向に圧入する工程と、
管本体を計画深さまで圧入後に管本体の下端から下方に凹んで形成された凹部内に生コンクリートを投入する工程と、
管本体の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって底蓋の下面外部下方にモルタルを充填する際の充填孔付きの底蓋であり、管本体の下方凹部に生コンクリートを充填後に、管本体内で該底蓋を吊下ろして管本体の下端近傍に配置する工程と、
底蓋を管本体の下端近傍に配置した状態で生コンクリート充填後の底蓋下面と生コンクリート打設部との空隙に充填孔を介してモルタルを充填する工程と、
底蓋の外縁と管本体の内壁面とを溶接して管本体と底蓋とを接合する工程と、を含むことを特徴とする大型有底管体の建込み方法。
【請求項2】
管本体内で吊下ろして管本体の下端近傍に配置する底蓋には、吊り降ろし下降する際に管本体内の水を吸水して管外に排出するポンプが取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の大型有底管体の建込み方法。
【請求項3】
底蓋には、その外縁全周であって管本体の長手方向に立ち上がり管本体の内壁に近接する縁壁を有することを特徴とする請求項1又は2記載の大型有底管体の建込み方法。
【請求項4】
内部の中空部を縦方向に形成しつつ所要深さで地中に埋設された大型の管本体と、
管本体の底部を閉鎖する底蓋と、
底蓋の外縁全周であって管本体の長手方向に立ち上がり管本体の内壁に近接する縁壁と、
縁壁の上端部分と管本体の内壁面とを溶接接合する接合部と、を含むことを特徴とする大型有底管体。
【請求項5】
底蓋には底蓋の下方外部へのモルタルの充填孔の閉鎖部が設けられていることを特徴とする請求項4記載の大型有底管体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、津波、台風等天然の災害や戦争等の人災時に人や物の一時避難、物や食物保管用のシェルターとして利用可能なシェルター空間を有する大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は陸側と海側のプレートの重畳部分に位置すると見られていることもあり、日常的に地震発生を実感するばかりでなく、近い将来に大規模なトラフ間の移動による大地震発生が報じられている。地震に起因する津波発生、毎年の台風被害に加え、近時テロ行為等による被害への備えも留意すべきところ、それらの天災、人災からの避難用シェルター等について例えば特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−193957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は避難用管構造物に関し、津波や竜巻災害等の大規模自然災害時に避難し得るシステムを提案している。この特許文献1のシステムでは出入口を有し内部に空間部を有する管体を複数備え、各々の管内が他の管体の管内と連通するように連結して避難通路を形成し、さらに各々の管体と連通するように排水用の避難通路を連結したものであり、管体自体を熱可塑性樹脂で軽量に構成することにより管体全体をメガフロートとして機能させて水難事故等に備えようとするものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1の避難用管構造物は熱可塑性樹脂で大型管体を構成し、これらを地上あるいは地表面近くに埋設して設置するものであり、地上側の既設置家屋、ビル、固定設備等の関係で設置場所に相当の制約を受ける。また、人の居住あるいは通行可能な空間を有する大型の管体を熱可塑性樹脂で構成するについては大型特殊品としてコスト高となる。また、設置工事にも時間がかかり比較的に短期で簡易に設置する構造物としては採用するのに難点がある。一方、水難等災害以外にも地震等に対応した耐震性の構造物やテロ、戦争発生時等の避難施設として機能でき、短期で完成可能でしかも低コストで構築し得る大型の筐体があれば、内部に人の生活、移動通路、保管設備等を形成するだけでそのような災害等から避難することができる。従来、そのような即効性の大型の緊急避難用等の筐体がなく、その出現が望まれている。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、比較的短期で地下設置可能であり、低コストで簡易に施工でき、しかも占有平面スペースが小さくて地上構築物や設備に左右されにくい筐体を提供し得る大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、大型の管本体1の内側の土を排出しながら該管本体1を地中に鉛直方向に圧入する工程と、管本体1を計画深さまで圧入後に管本体1の下端から下方に凹んで形成された凹部7内に生コンクリート40を投入する工程と、管本体1の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋10であって底蓋の下面外部下方にモルタル42を充填する際の充填孔8付きの底蓋10であり、管本体1の下方凹部7に生コンクリート40を充填後に、管本体1内で該底蓋10を吊下ろして管本体1の下端近傍に配置する工程と、底蓋10を管本体1の下端近傍に配置した状態で生コンクリート40充填後の底蓋下面と生コンクリート打設部との空隙Pに充填孔8を介してモルタル42を充填する工程と、底蓋10の外縁と管本体の内壁面1kとを溶接して管本体1と底蓋10とを接合する工程と、を含む大型有底管体の建込み方法から構成される。
【0008】
その際、管本体1内で吊下ろして管本体の下端近傍に配置する底蓋10には、吊り降ろし下降する際に管本体内の水を吸水して管外に排出するポンプ12が取り付けられているとよい。
【0009】
底蓋10には、その外縁全周であって管本体1の長手方向に立ち上がり管本体の内壁1kに近接する縁壁18を有するよい。
【0010】
また、本発明は、内部の中空部1jを縦方向に形成しつつ所要深さで地中に埋設された大型の管本体1と、管本体1の底部を閉鎖する底蓋10と、底蓋10の外縁全周であって管本体10の長手方向に立ち上がり管本体の内壁1kに近接する縁壁18と、縁壁18の上端部分と管本体の内壁面1kとを溶接接合する接合部(34)と、を含む大型有底管体から構成される。
【0011】
その際、底蓋10には底蓋の下方外部へのモルタルの充填孔9の閉鎖部(26)が設けられているとよい。

【発明の効果】
【0012】
本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体によれば、比較的短期で地下設置可能であり、低コストで簡易に施工でき、しかも占有平面スペースが小さくて地上構築物や設備に左右されにくい筐体を提供し得る。特に、地中に水分を含む地盤などで短時間で効率よく、かつ、確実に底蓋で閉鎖された円筒空間の筐体を構築することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の実施形態にかかる大型有底管体の建込み方法の管本体の圧入用チュービング装置による圧入状態を示す説明図である。(b)は、管本体の斜視説明図である。
図2】実施形態に係る管本体の地中圧入を実施するチュービング装置の斜視説明図である。
図3】単位の管本体を接続しながら圧入する際の連結用カップリング部分を示す説明図である。
図4図1(a)の状態からチュービング装置により管本体を目的深さまで埋め込んだ状態を示す説明図である。
図5図4で計画深さまで管本体の圧入後にチュービング装置を撤去した状態の説明図である。
図6】管本体内にトレミー管を挿入して管本体の下端部分から生コンクリートを凹部に充填する状態を示す説明図である。
図7】管本体内の水を排水しながらポンプ、排水ホースを組み込んだ底蓋ユニットを管本体内に下降させる状態を説明する説明図である。
図8】(a)は、管本体の下端部分に底蓋ユニットを配置し充填孔からセメントモルタルを生コンと底蓋下面との隙間に充填する状態の拡大説明図である。(b)は、蓋本体の拡大斜視説明図、(c)は、底蓋の縁壁と管本体下端側の内壁との円筒状空隙を説明する一部縦断面図である。
図9図8のポンプを組み込んだ、充填孔付きの底蓋を示す拡大説明図である。
図10】底部下面側の安定化後、排水した管本体内で底蓋外縁の立上り部と管本体内壁を溶接接合した状態を示す説明図である。
図11】底蓋外縁と管本体内壁を溶接接合した後、ポンプユニットを取り外して充填孔を閉鎖した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体の一実施形態について説明する。
【0015】
本発明の大型有底管体はその建込み工程によって部材の構成が異なるので、各工程とともに大型有底管体について説明する。本発明に係る大型有底管体は、基本的には地震その他の自然災害、戦争その他の人的災害からの避難用シェルターとして使用され、また食品、書類等の保管庫等としても用可能な大型の有底管体である。本発明の大型有底管体は内部に空間を有し底部が底蓋で閉鎖された中空の有底管体であり、例えば直径が2メートル以上〜5メートル程度で、地中深さが例えば5メートル〜20メートル程度で埋設される管体であり、特に地中に水を含む地域において有効に用いられる。
【0016】
[第1工程]
図は、本発明の一実施形態の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体の構成を示しており、この方法では、建て込み位置が設定された地盤G中に管本体1を鉛直方向に圧入して埋設される。管本体1は、図1(b)に示すように、上下(図中では左右)端部を開口した鋼製の円筒管からなる、いわゆるケーシングチューブと称される鋼管である。単一鋼管で目的の地中深さに到達できる場合には1本の鋼管で構成されるが、複数鋼管を連結して使用することもできる。管本体1は公道運搬の点から例えば軸方向最長は11メートル程度に設定されるが、設置現場の状況に応じて任意の長さの鋼管を複数連結して用いてよい。管本体は、地中埋設時の防錆、防蝕のために例えば、亜鉛メッキ、樹脂ライニング、複数層コーティング、アスファルトシート等の防水、防錆処理を行ったものが好ましい。鋼管の水中に没した部分は錆びにくいので地面に近い部分の鋼管に十分な防錆、防蝕処理を施すとよい。図1(a)において、地面上にチュービング装置2が設置されており、このチュービング装置2の中央に軸心を縦方向に配置した管本体1をチャックで掴み、管本体1を回転させながら地中に押し込みさせる。チュービング装置2は、図2に示すように、機体枠3に支持された図示しない管本体回転用の回転体、回転体を回転可能に支持する昇降フレーム、昇降装置、チャック部材、チャックシリンダ等を有する公知の全回転チュービング装置である。
【0017】
チュービング装置2の下面で地面上には受板4が予め載置されている。また、チュービング装置2を両側から挟みつけるようにカウンタウエイト5が配置されている。カウンタウエイト5は、大型の管体の圧入操作に際してチュービング装置2が反動で移動しないようにチュービング装置2全体を安定化させる。
【0018】
例えば20m以上程度の長さの管本体は、作業上、運搬上などの点から1本の管体を圧入するものではなく、1から数メートル程度の長さの複数の管体を接続しながらチュービンス装置2で地中に打ち込まれる。その際、例えば図3に示すように、カップリング部材6を用いて対向させた管体1−1、1−2の端部どうしをねじ締結しながら複数の管体を連結して例えば20m程度の長さの一体の管本体1を形成する。
【0019】
チュービング装置2で管本体1を回転させながら地中に圧入する際、同時に管本体1の内側の土を図示しない排土機で地上側に排出させる。排土機は、クローラクレーン等重機により吊支され、落下力によって地盤に打ち込み、土砂をつかみ取る方式のグラブハンマー等の公知の大口径掘削機械でよい。
【0020】
そして、深度を徐々に大きくするに従い通常は、管本体の下端側の地中から水が管の内側に浸出してくる場合が多い。水の浸出は数メートルの深度でも数十メートルの深度でもあり得る。このように、グラブハンマー等で排土しながら管本体1を圧入して図4に示すように、例えば計画深さの地下20m程度に管本体1の底部が到達するまで管本体1を圧入すると、排土機により管本体の下端からさらに地中側に向けて凹設されるように掘られた状態となる。すなわち、管本体1の下端から断面が円弧状に凹設された凹部7が形成される。実際には、水Wが出ている場合には、この凹部7は水で充満される。
【0021】
[第2工程]
図4において、管本体1を計画深さまで圧入すると、地上側のチュービング装置2を撤去する(図5参照)。そして、この状態でトレミー管等の鋼管等からなる配送管36を管本体1内に挿入し先端を管本体1の下端付近まで降下させ配置させる。配送管36は、例えば直径30cm程度の円筒管であり、地上側から生コンクリート40を供給し管本体1の下端部分から円弧状の凹部7内に生コンクリート40を投入し、管本体1の下端の開口面との間で隙間Pを形成する位置まで充填する。生コンクリート40は、砂、砂利、セメント、水を所要の割合で混錬したものであり、特に、水中不分離性混和剤を用いて粘性を高くし、水中でも材料が分離しにくく硬化する水中コンクリートが用いられる。
【0022】
[第3工程]
生コンクリート40を凹部7内に打設後、充填孔8付きの底蓋10を重機などで吊支して管本体1の下端近傍に配置させる。底蓋10は、管本体1の底部を閉鎖しうる程度の大きさの底蓋であって厳密には、管本体1の内側の円形内に挿入される管本体1の内周より小さなサイズの円形状の金属製板状部材である底板11を含む。そして、底板11の任意の位置、例えば中央位置に充填孔8が設けられて底蓋10で管本体1の下端を閉鎖した状態で充填孔8を介して底蓋10の外面側の隙間Pにモルタルを充填する。モルタルはセメントと砂を混合したものである。実施形態において、図7,8に示すように底蓋10にはポンプ12が取り付けられて底蓋ユニット10Uを形成しており、ポンプ12に排水ホース14を接続した底蓋ユニット10Uの状態で管本体内を吸水並びに地上側に排水しつつ管本体内を下降させる。なお、底蓋10には必ずしもポンプ12を組み付けて一体化した状態で管本体内を下降させることなく、ポンプ12は別体で管本体内を排水するようにしてもよい。なお、図6図11において管径とポンプ12や縁壁18との寸法比が実際のものと異なるが、説明のための便宜上の図示である。
【0023】
実施形態において、図8に示すように底蓋10は円形板状の底板11と、その外周縁全周に連結されて上方に断面直角状に立ち上がる縁壁18を備えている。つまり、底蓋10は短尺円筒管の一端を閉鎖したシャーレ状の有底筒体形状を呈している。縁壁18は、管本体1の略下端に底板11を位置合わせて底蓋10を配置する際に管本体内に管外の水が浸入しにくくするものである。すなわち、底蓋10の縁壁18と管本体1の下端側内壁面1kとの間には縁壁18の高さに対応する薄板円筒状の狭い空隙19を形成し(図8(a)、(c)参照)、これによって、管外から管本体1の内部へ水が上がりにくくさせる。そして、後述するように、この状態で縁壁18の上端部と管本体1の内壁面1kとを溶接接合させる。縁壁18の底板11外周縁からの立上り高さは、高いほど水が浸入しにくくなるが、管本体1内を地上側から下降させる際の取り扱い性の点から比較的に低い高さとしてもよい。例えば、2.5メートルの直径の管本体に対して1センチメートルでもよいが、5センチメートル以上程度の高さであるのが好ましい。なお、底蓋10の外縁全周に立設した縁壁18は必ずしも設けなくとも大きな吸水と揚水機能を有するポンプを用いて底蓋外周縁と管本体内壁1kとを溶接し水密接合するようにしてもよい。
【0024】
実施形態において、図8、9に示すように、底板11に穿孔された充填孔8に連通して開閉バルブ装置20が固定されている。開閉バルブ装置20は、充填孔8に直状に連通する直管22と、内部に開閉弁を有し外部に操作ハンドル24を連結した開閉器26とを備えている。操作ハンドル24を回動操作することにより直管22内のバタフライ弁が流路を開閉する。開閉器26はポンプ12から充填孔8を介したモルタル42の充填を行う。また、必要に応じてバタフライ弁で直管の流路を閉鎖する開閉器26は閉鎖部とされる。
【0025】
図9において、直管22の上端側にはカップリング部材などを介して着脱連結部28が形成されている。着脱連結部28において直管22とポンプ12とは着脱自在に連結され、これによって、直管22の他端開口とポンプ12の吐出口とが着脱自在に連結される。この着脱連結部28は、必要に応じて直管22の流路を閉栓部材により閉鎖可能とされている。
【0026】
[第4工程]
図8(a)において、底蓋10を管本体1の下端側に位置合わせして配置させた状態で、ポンプ12の上方開口接続口には連結部材を介してトレミー管等の鋼管からなる配送管44が接続される。そして、地上側から配送管44内にモルタルが供給され、ポンプ12側に配送される。そして、開閉バルブ装置20の直管22を通じて充填孔8から底板11の外部の空隙Pに向けてモルタルが充填される。このとき、底蓋10を管本体1の下端近傍に配置した状態で生コンクリート40を充填した後の底蓋10の下面の空隙Pに充填孔8を介してモルタルを充填する。生コンクリート40の打設部と底蓋10の下面との空隙Pにモルタルを充填すると管外から管本体1内への水の浸入は相当程度抑制される。ポンプ12は、容積式ポンプ、非容積式ポンプのいずれでもよいが、押し上げ揚程がある程度高いものが好ましい。例えばターボ型の非容積式ポンプであれば、遠心ポンプ、斜流ポンプなどが好ましいが、これらに限定されるものではない。実施形態のポンプ12は、図示しないモータと吸込み口と吐出口を備えており、吸込み口は直管22に連通し、吐出口は排水ホース14に接続されている。
【0027】
[第5工程]
生コンクリート40の打設部と底蓋10の下面との空隙Pにモルタルを充填した後に、底蓋10の外縁と管本体の内壁面とを溶接して(図10)管本体と底蓋とを水密接合する。詳しくは、配送管44の接続後、開閉器26を開弁し、地上側から配送管44を介してモルタル42を供給する。そして、ポンプ12を底蓋の下方に圧送するように設定駆動して底蓋10の下方の底蓋下面と既に打設された生コンクリート40との隙間Pに向けて充填孔8を介してモルタルを圧入する(図8)。実施形態では、図9に示すように、底蓋10の外縁全周について管本体1の長手方向に立ち上がる縁壁18を立設しているので、縁壁18の上端部分と管本体1の下端部分内壁面1k(図8(c)参照)とを溶接接合する。溶接部を符号34で示しこれが接合部とされる。管本体1と底蓋10との水密接合後、開閉器26を閉弁して直管22内の流通を遮断する(図11)。
【0028】
なお、ポンプ12と配送管44との接続の問題やポンプ12自体がモルタル圧送に適さない場合には、ポンプを交換して使用するとよい。凹部7の隙間Pにモルタルを圧入し十分に充填し、さらに縁壁18の上端部分と管本体1の下端部分内壁面1kとを溶接接合後は、例えばポンプ12を取り外し、開閉器26を閉弁し直管内の流通を閉鎖させる(図11)。開閉器26は、底蓋10のモルタル充填孔8の閉鎖部として機能するが、開閉器26によらずとも、直管の開口または直管を取り外して直接に充填孔8を閉鎖プレート等で閉鎖するようにしてもよい。また、ポンプ12はモルタルの圧入固化後も取り外さなくともよい。
【0029】
上記のように、底部を閉鎖した大型有底管体(管本体)を地中に縦に埋め込む状態で建て込んで、この内部に例えば動力付きの昇降ラックや、換気装置、人の居住用の施設、設備、備品、食料、物品の保管設備等を設置し、通路等を設けることにより天然災害やテロ等凶悪犯罪、戦争等の際の避難用シェルターとし得る。具体的な管体内部の構造や構成は任意に設計することができる。
【0030】
上記第1〜第5工程により大型有底管体を建て込みするので直径2.5m、高さ(深さ)20m程度の縦長大型の円筒空間を短い工期で建て込み完成させることができる上、材料コスト、人件コストも低くできる。また、占有平面スペースが小さくて地上構築物や設備に左右されにくい筐体を構築できる。
【0031】
また、管本体1内で吊下ろして管本体1の下端近傍に配置する底蓋10には、ポンプ12を取り付けることにより充填孔8を介して底蓋下面側に充填物を充填して地盤を安定化させることができ、同時に底蓋の外部から管本体内への水の浸入を効果的に防止し、底蓋外周縁と管本体下端側内壁との溶接作業等を円滑、かつ短時間に遂行させることができる。
【0032】
また、底蓋10の外縁と管本体の内壁面1kとを溶接接合する前の底蓋10には、その外縁全周であって管本体1の長手方向に立ち上がる縁壁18を有することにより、底蓋10の外縁と管本体の内壁面1kとの隙間19から水が管本体内の空隙側に浸入しにくくさせることができ、安定して縁壁18の上端部と管本体の下端部内壁との溶接接合作業を行うことが可能となる。
【0033】
また、底蓋10の充填孔8を介してモルタルを地下側に注入し固化させた後に管本体1と底蓋10とを溶接接合させるので、管本体との隙間底蓋との溶接接合を簡単円滑にし、かつ短時間で完了することが可能となる。
【0034】
また、大型有底管体は、内部の中空部1jを縦方向として所要深さで地中に埋設された大型の管本体1と、管本体1の底部を閉鎖する底蓋10と、底蓋の外縁全周であって管体の長手方向に立ち上がる縁壁18と、縁壁18の上端部分と管本体の内壁面1kとを溶接接合する接合部34と、を含む。これにより、底蓋10の外縁と管本体の内壁面1kとの隙間19から水が管本体内の空隙側に浸入しにくくさせることができ、安定して縁壁18の上端部と管本体の下端部内壁との溶接接合作業を行うことができる。
【0035】
また、底蓋10には底蓋の下方外部の水の吸水孔8の閉鎖部26が設けられていることにより、施工後に吸水孔からの管内側への水の浸入を防止することができる。
【0036】
以上説明した本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体は、地震、津波、土砂災害、戦時危険状態等でシェルターとして利用できるうえ、通常には種々の物品の収納、保管倉庫などでも利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
P 空隙
W 水
1 管本体
1j 管本体の中空部
1k 管本体の下端側内壁面
2 チュービング装置
7 凹部
8 充填孔
10 底蓋
11 底板
12 ポンプ
18 縁壁
22 直管
34 溶接部
36 配送管
40 生コンクリート
42 モルタル
44 配送管
【要約】      (修正有)
【課題】比較的短期で地下設置可能であり、低コスト、占有平面スペースが小さく地上構築物や設備に左右されにくい筐体の大型有底管体の建込み方法及び大型有底管体を提供する。
【解決手段】大型の管本体1の内側の土を排出しながら該管本体を地中に鉛直方向に圧入する工程と、管本体の下端から下方に凹んで形成された凹部内に生コンクリート40を投入する工程と、底蓋の下面外部下方にモルタル42を充填する際の充填孔付きの底蓋10であり、管本体の下方凹部に生コンクリートを充填後に、管本体の下端近傍に配置する工程と、底蓋10を管本体1の下端近傍に配置した状態で生コンクリート充填後の底蓋下面と生コンクリート打設部との空隙に充填孔を介してモルタル42を充填する工程と、底蓋の外縁と管本体の内壁面とを溶接して管本体と底蓋とを接合する工程とを含み、地中に水の浸入がある地域で大型筐体を短期に構築し得る。
【選択図】図10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11