【文献】
厚生労働省,2.歯の状況,平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要,日本,2017年 9月15日,pp. 13-15
【文献】
大川 由一、外5名,Logistic曲線を適用した喪失歯数と現在歯数の予測,厚生の指標,日本,1996年10月,第43巻、第11号,27-33
【文献】
井上 富夫, 外1名,成人における口腔保健状態評価指標としての口腔年齢の応用,歯科医学,日本,2000年,Vol. 63, No. 4,pp. 255-264
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記算出部は、前記実年齢が所定値以上である場合の前記喪失歯数に関連付けられた前記年齢の前記重みを、前記実年齢が所定値未満である場合の前記喪失歯数に関連付けられた前記年齢の前記重みよりも大きくするように決定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の歯状態判定装置。
前記算出部は、前記実年齢が所定値以上である場合の前記クラウン数に関連付けられた前記年齢の前記重みを、前記実年齢が所定値未満である場合の前記クラウン数に関連付けられた前記年齢の前記重みよりも小さくするように決定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の歯状態判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたシステムでは、実施者が患者の各歯を見て評価し、各歯に点数を付与する。したがって、実施者ごとに点数のばらつきが発生するため、算出される歯年齢の精度が低いという問題があった。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、ユーザの歯年齢を高い精度で出力できる歯状態判定装置及び歯状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の歯状態判定装置は、所定の集団における人間の歯の状態を表す状態値と前記人間の年齢との間の関係を取得する関係取得部と、ユーザの歯の前記状態値を取得する状態値取得部と、前記関係取得部が取得した前記関係に基づいて、前記状態値取得部が取得した前記状態値に対応する前記ユーザの歯年齢を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記歯年齢を出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記関係取得部は、前記集団における前記状態値及び前記年齢を用いて生成された近似式を、前記関係として取得してもよい。
【0008】
前記関係取得部は、未処置歯、喪失歯及び処置歯の総数を示すDMF歯数と、前記人間の年齢との間の前記関係を取得し、前記状態値取得部は、前記DMF歯数を、前記状態値として取得してもよい。
【0009】
前記関係取得部は、前記DMF歯数と前記人間の年齢との間の第1関係と、喪失歯数と前記人間の年齢との間の第2関係と、クラウン数と前記人間の年齢との間の第3関係とのうち少なくとも2つを取得し、前記状態値取得部は、前記DMF歯数、前記喪失歯数及び前記クラウン数のうち少なくとも2つを、前記状態値として取得し、前記算出部は、前記関係取得部が取得した前記第1関係、前記第2関係及び前記第3関係のうち少なくとも2つに基づいて、前記状態値取得部が取得した前記DMF歯数、前記喪失歯数及び前記クラウン数のうち少なくとも2つに対応する前記歯年齢を算出してもよい。
【0010】
前記算出部は、前記関係取得部が取得した前記第1関係、前記第2関係及び前記第3関係に基づいて、前記状態値取得部が取得した前記DMF歯数、前記喪失歯数及び前記クラウン数に対応する前記歯年齢を算出してもよい。
【0011】
前記算出部は、前記状態値取得部が取得した前記DMF歯数、前記喪失歯数及び前記クラウン数のうち少なくとも2つそれぞれに異なる重みを設定して、前記歯年齢を算出してもよい。
【0012】
前記算出部は、前記ユーザの年齢に基づいて、前記状態値取得部が取得した前記DMF歯数、前記喪失歯数及び前記クラウン数のうち少なくとも2つそれぞれの前記重みを決定してもよい。
【0013】
前記出力部は、前記ユーザの年齢よりも前記歯年齢が大きい場合に、前記ユーザに対して所定の通知を出力してもよい。
【0014】
前記関係取得部は、第1集団における前記関係を取得し、前記算出部は、前記第1集団における前記関係に基づいて、前記第1集団とは異なる第2集団に属するユーザの前記状態値に対応する、前記第1集団における前記歯年齢を算出してもよい。
【0015】
前記関係取得部は、第1集団における歯年齢を前記第1集団とは異なる第2集団における歯年齢に換算するための補正値と、前記第2集団における前記関係とを取得し、前記算出部は、前記第2集団における前記関係に基づいて、前記第2集団に属するユーザの前記状態値に対応する前記第2集団における前記歯年齢を算出し、さらに前記第1集団における前記補正値を加算又は乗算することによって、前記第1集団における前記歯年齢を算出してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様の歯状態判定方法は、プロセッサが、所定の集団における人間の歯の状態を表す状態値と前記人間の年齢との間の関係を取得するステップと、ユーザの歯の前記状態値を取得するステップと、前記関係を取得するステップが取得した前記関係に基づいて、前記状態値を取得するステップが取得した前記状態値に対応する前記ユーザの歯年齢を算出するステップと、前記算出するステップが算出した前記歯年齢を出力するステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ユーザの歯年齢を高い精度で出力できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[歯状態判定システムSの概要]
図1は、本実施形態に係る歯状態判定システムSの模式図である。歯状態判定システムSは、歯状態判定装置1と、情報端末2とを含む。歯状態判定システムSは、その他のサーバ、端末等の機器を含んでもよい。
【0020】
情報端末2は、情報を表示するコンピュータである。情報端末2は、例えばパーソナルコンピュータや、スマートフォン、タブレット端末等の携帯端末である。情報端末2は、液晶ディスプレイ等、情報を表示可能な表示装置を含む。情報端末2は、ネットワークを介して歯状態判定装置1と通信可能である。
【0021】
歯状態判定装置1は、ユーザの歯の状態を判定して情報を出力するコンピュータである。ユーザは、歯の状態の判定を受ける人間である。歯状態判定装置1は、ネットワークを介して情報端末2と通信可能である。
【0022】
歯状態判定装置1は、撮像部11と、表示部12と、操作部13とを有する。歯状態判定装置1は、ユーザとは異なる操作者(例えば歯科医師等の医療従事者)によって操作されてもよく、あるいはユーザ自身によって操作されてもよい。
【0023】
撮像部11は、ユーザの歯(口腔)を撮像して画像を出力する撮像装置(カメラ)を備える。また、撮像部11は、ユーザの口腔内を撮像して三次元画像を生成する口腔内スキャナを備えてもよい。撮像部11は、歯状態判定装置1に直接接続されてもよく、ネットワークを介して接続されてもよい。
【0024】
表示部12は、液晶ディスプレイ等、情報を表示可能な表示装置を含む。操作部13は、キーボード、マウス等、人間の操作を受け付け可能な操作装置を含む。表示部12として人間による接触の位置を検出可能なタッチスクリーンを用いることによって、表示部12と操作部13とを一体に構成してもよい。表示部12及び操作部13も、撮像部11と同様に、歯状態判定装置1に直接接続されてもよく、ネットワークを介して接続されてもよい。
【0025】
歯状態判定装置1は、所定の集団(例えば日本)における人間の歯の状態を表す状態値と人間の年齢との間の関係を予め記憶している。状態値は、例えば後述するDMF(Decayed, Missing, Filled)歯数、喪失歯数及びクラウン数を含む。状態値と年齢との間の関係は、例えば状態値及び年齢の統計データから生成された近似式である。
【0026】
そして歯状態判定装置1は、判定対象のユーザの歯の状態値を取得し、予め記憶している統計データから生成された近似式に当てはめることによって、ユーザの歯年齢を算出する。
【0027】
このように歯状態判定システムSは、統計データを用いて生成された近似式と、ユーザの歯の状態を客観的に表す状態値とに基づいて、集団におけるユーザの歯年齢を数値化する。そのため、歯状態判定システムSは、算出されるユーザの歯年齢のばらつきを抑制し、高い精度で出力できる。
【0028】
[歯状態判定システムSの構成]
図2は、本実施形態に係る歯状態判定システムSのブロック図である。
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図2に示していないデータの流れがあってよい。
図2において、各ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図2に示すブロックは単一の装置内に実装されてよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてよい。ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてよい。
【0029】
歯状態判定装置1は、上述の撮像部11、表示部12及び操作部13に加えて、記憶部14と、制御部15とを有する。記憶部14は、状態値記憶部141と、関係記憶部142とを有する。制御部15は、画像取得部151と、状態値受付部152と、状態値取得部153と、関係取得部154と、算出部155と、出力部156とを有する。
【0030】
記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む記憶媒体である。記憶部14は、制御部15が実行するプログラムを予め記憶している。記憶部14は、歯状態判定装置1の外部に設けられてもよく、その場合にネットワークを介して制御部15との間でデータの授受を行ってもよい。
【0031】
状態値記憶部141は、判定対象のユーザの歯の状態値を記憶する。関係記憶部142は、所定の集団における人間の歯の状態を表す状態値と人間の年齢との間の関係を記憶する。状態値記憶部141及び関係記憶部142は、それぞれ記憶部14上の記憶領域であってもよく、あるいは記憶部14上で構成されたデータベースであってもよい。
【0032】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、画像取得部151、状態値受付部152、状態値取得部153、関係取得部154、算出部155及び出力部156として機能する。制御部15の機能の少なくとも一部は、電気回路によって実行されてもよい。また、制御部15の機能の少なくとも一部は、ネットワーク経由で実行されるプログラムによって実行されてもよい。
【0033】
本実施形態に係る歯状態判定システムSは、
図2に示す具体的な構成に限定されない。歯状態判定装置1及び情報端末2は、それぞれ1つの装置に限られず、2つ以上の物理的に分離した装置が有線又は無線で接続されることにより構成されてもよい。
【0034】
[歯状態判定方法の説明]
本実施形態に係る歯状態判定システムSが実行する歯状態判定方法を以下に説明する。関係記憶部142には、予め所定の集団における人間の歯の状態を表す状態値と人間の年齢との間の関係が記憶されている。状態値は、例えばDMF歯数、喪失歯数及びクラウン数を含む。
【0035】
DMF歯数は、人間が有する歯のうち、未処置歯(decayed teeth:すなわち、未処置のう蝕歯)、喪失歯(missing teeth:すなわち、抜去された歯)及び処置歯(filled teeth:すなわち、処置されたう蝕歯)のいずれかに該当する歯の総数である。喪失歯数は、喪失歯の数である。クラウン数は、処置歯のうち、クラウン(冠)が施された歯の数である。
【0036】
状態値と年齢との間の関係は、例えば状態値及び年齢の統計データから生成された近似式である。統計データは、例えば所定の集団において集計された、年齢(又は年齢層)と、該年齢の人間のDMF歯数、喪失歯数及びクラウン数それぞれの平均値との対応関係を表すデータである。近似式は、既知の分析方法を用いて生成された、統計データに近似している直線又は曲線を表す数式である。
【0037】
図3(a)〜
図3(c)は、状態値と年齢との間の関係の近似式の模式図である。
図3(a)は、DMF歯数と年齢との間の関係の近似式A(第1関係)を表している。
図3(a)の例では、近似式Aは以下の式(1)によって表されている。
【0038】
【数1】
式(1)において、y1は歯年齢であり、xはDMF歯数である。
【0039】
図3(b)は、喪失歯数と年齢との間の関係の近似式B(第2関係)を表している。
図3(b)の例では、近似式Bは以下の式(2)によって表されている。
【0040】
【数2】
式(2)において、y2は歯年齢であり、xは喪失歯数である。
【0041】
図3(c)は、クラウン数と年齢との間の関係の近似式C(第3関係)を表している。
図3(c)の例では、近似式Cは以下の式(3)によって表されている。
【0042】
【数3】
式(3)において、y3は歯年齢であり、xはクラウン数である。
【0043】
式(1)〜式(3)に示した近似式A、近似式B及び近似式Cは一例であり、所定の集団において集計された統計データに基づいて生成される。関係記憶部142は、状態値と年齢との間の関係として、近似式A、近似式B及び近似式Cを予め記憶している。あるいは関係記憶部142は、状態値と年齢との間の関係として、状態値及び年齢の統計データを予め記憶しておき、制御部15は、該統計データに基づいて近似式A、近似式B及び近似式Cを生成してもよい。
【0044】
ユーザが歯状態判定システムSによる歯の状態の判定を受ける際に、歯状態判定装置1は、撮像部11を用いて、ユーザの歯(口腔)を撮像する。ユーザとは異なる操作者が撮像部11を操作してユーザの歯を撮像してもよく、ユーザ自身が撮像部11を操作してユーザの歯を撮像してもよい。撮像部11は、撮像した画像を、歯状態判定装置1に入力する。また、ユーザが有する情報端末2は、情報端末2が備える撮像部によってユーザの歯を撮像し、撮像した画像を歯状態判定装置1へ送信してもよい。
【0045】
画像取得部151は、撮像部11が撮像したユーザの歯の画像を、ユーザを識別するための識別情報(ユーザID)と関連付けて取得し、表示部12上の状態値の入力を受け付ける画面に表示させる。このとき、画像取得部151は、歯科医師等によるユーザの歯に対する視診の結果を取得し、画像とともに表示してもよい。この場合に、視診の結果は、画像とともに歯状態判定装置1に入力される。
【0046】
図4は、状態値の入力を受け付ける画面を表示している表示部12の正面図である。状態値の入力を受け付ける画面は、ユーザの歯の画像121と、入力欄122と、送信ボタン123とを含む。
図4の画面において、ユーザIDは省略されているが、表示されてもよい。入力欄122は、状態値として、DMF歯数、喪失歯数及びクラウン数を入力可能な欄を含む。さらに入力欄122は、状態値として、歯並び(例えば八重歯、反対咬合、前歯部開咬等の有無)を入力可能な欄を含んでもよい。入力欄122は、自由記入欄及び選択欄のどちらであってもよい。送信ボタン123は、人間が押下可能な仮想的なボタン(アイコン)である。
【0047】
操作者(例えば歯科医師等の医療従事者)は、表示部12に表示されたユーザの歯の画像121を参照してDMF歯数、喪失歯数、クラウン数及び歯並びを含む状態値を決定し、操作部13を用いて入力欄122に入力する。その後、操作者は、送信ボタン123を押下する。操作者が送信ボタン123を押下すると、状態値受付部152は、状態値の入力を受け付ける画面(
図4)において入力欄122に入力された状態値を受け付け、画像取得部151が取得した画像とともに、ユーザIDと関連付けて状態値記憶部141に記憶させる。
【0048】
図4の例では操作者が画像を参照して状態値を決定しているが、歯状態判定装置1が画像に基づいて自動的に状態値を決定してもよい。この場合には、記憶部14は、例えば歯の画像に基づいて状態値を決定するための機械学習モデルを記憶している。機械学習モデルは、歯の画像を入力することにより、画像に基づいて決定された状態値を出力する。機械学習モデルは、複数の画像を用いて既知の機械学習方法を実行することによって予め生成され、記憶部14に記憶される。
【0049】
状態値受付部152は、画像取得部151が取得した画像を、記憶部14に記憶されている機械学習モデルに入力することによって、機械学習モデルが出力した状態値を受け付け、画像取得部151が取得した画像とともに、ユーザIDと関連付けて状態値記憶部141に記憶させる。
【0050】
歯状態判定装置1がユーザの歯の状態の判定を開始する条件が満たされた場合に、状態値取得部153は、状態値記憶部141に記憶されている状態値を取得し、関係取得部154は、関係記憶部142に記憶されている、状態値と年齢との間の関係(近似式)を取得する。歯状態判定装置1がユーザの歯の状態の判定を開始する条件は、例えば状態値受付部152が操作部13からの状態値の入力を受け付けたことであってもよく、ユーザ又は操作者が歯状態判定装置1又は情報端末2において(上記の状態値の入力とは別の)所定の操作を行ったことであってもよい。
【0051】
算出部155は、関係取得部154が取得した状態値と年齢との間の関係に基づいて、状態値取得部153が取得した状態値(すなわち、DMF歯数、喪失歯数及びクラウン数)に対応する、ユーザの歯年齢を算出する。
【0052】
具体的には、算出部155は、上述の近似式A、近似式B及び近似式Cのうちいずれか1つを用いて、歯年齢を算出してもよい。この場合に、算出部155は、状態値取得部153が取得した状態値に基づいて、近似式AにDMF歯数を代入し、又は近似式Bに喪失歯数を代入し、又は近似式Cにクラウン数を代入することによって、歯年齢を算出する。
【0053】
算出部155は、近似式A、近似式B及び近似式Cのうち1つの近似式のみを用いる場合には、DMF歯数を用いる近似式Aによって歯年齢を算出することが望ましい。例えば喪失歯数を用いる近似式Bでは、40歳未満の若年者は喪失歯がゼロであることが多いため、特に若いユーザに対して歯年齢を算出することが難しい。また、60歳以上の高齢者では、クラウンが喪失歯に遷移することが多いため、クラウン数を用いる近似式Cが年齢に上手く対応しない場合がある。これに対して、DMF歯数を用いる近似式Aは、喪失歯の数だけでなく未処置歯の数及び処置歯の数を反映しているため、広範囲のユーザに対し比較的高い精度で歯年齢を算出できる。
【0054】
別の方法として、算出部155は、上述の近似式A、近似式B及び近似式Cのうち少なくとも2つを用いて歯年齢を算出し、それらの最大値又は平均値を歯年齢として特定してもよい。
【0055】
近似式A、近似式B及び近似式Cのうちいずれか1つのみを用いると、DMF歯数、喪失歯数及びクラウン数のいずれかが低い値を有する歯年齢を、実際よりも低く見積もってしまう場合がある。これに対して、算出部155は、近似式A、近似式B及び近似式Cのうち2つ以上によって算出した歯年齢の最大値又は平均値を特定することによって、歯年齢を実際よりも低く見積もってしまうことを抑制できる。
【0056】
この場合に、算出部155は、近似式Aに加えて、近似式B及び近似式Cのうち少なくとも一方を用いて歯年齢を算出することが望ましい。DMF歯数を用いる近似式Aは上述のように広範囲のユーザに対し比較的高い精度で歯年齢を算出でき、これに加えて喪失歯数又はクラウン数を用いる近似式B又は近似式Cを用いることによって精度をさらに向上できる。
【0057】
また、算出部155は、近似式A、近似式B及び近似式Cの全てを用いて歯年齢を算出することがさらに望ましい。これにより、若年者から高齢者までの幅広い年齢のユーザの様々な口腔内の状況に対し、より精度の高い歯年齢の算出が可能である。
【0058】
近似式A、近似式B及び近似式Cのうち少なくとも2つを用いて算出した歯年齢の平均値を用いる場合に、DMF歯数、喪失歯数及びクラウン数それぞれに異なる重みを設定した加重平均を用いてもよい。この場合に、歯年齢は以下の式(4)によって表される。
【数4】
【0059】
式(4)において、yは加重平均によって算出された歯年齢である。y1、y2及びy3は、それぞれDMF歯数、喪失歯数及びクラウン数を用いて算出された歯年齢である。α、β及びγは、それぞれDMF歯数、喪失歯数及びクラウン数に設定された重みである。
【0060】
DMF歯数は、未処置歯、喪失歯及び処置歯の総数であるため、各項の影響を調整することはできない。これに対して、算出部155は、DMF歯数に喪失歯数及びクラウン数を組み合わせて、それぞれの重みを調整することによって、算出される歯年齢に対する各項の影響を調整し、精度を向上できる。
【0061】
DMF歯数、喪失歯数及びクラウン数の重みは、ユーザの年齢に基づいて決定されてもよい。例えば、前述のように60歳以上の高齢者では、クラウンが喪失歯に遷移することが多いため、クラウン数が年齢に対応しない場合がある。そのため算出部155は、ユーザの年齢が所定値以上である場合に、所定値未満の場合よりも、喪失歯の重みを大きくし、クラウン数の重みを小さくするように決定してもよい。これにより、算出部155は、ユーザの実年齢に応じて、歯年齢に対するDMF歯数、喪失歯数及びクラウン数それぞれの影響を適切に調整できる。
【0062】
さらに、算出部155は、算出した歯年齢を、状態値取得部153が取得した状態値が示すユーザの歯並びに基づいて補正してもよい。具体的には、算出部155は、状態値取得部153が取得した状態値が示すユーザの歯並びが所定条件(例えば八重歯があること)を満たす場合に、DMF歯数、喪失歯数及びクラウン数に基づいて算出した歯年齢に所定の補正値を加算し(例えば10歳加算する)又は乗算してもよい(例えば1.2倍にする)。ユーザの歯並びが悪いと、ユーザの歯の状態の維持が難しい傾向がある。そこで算出部155は、歯並びに基づいて歯年齢を高めに補正することによって、より正確な歯年齢をユーザに提供できる。
【0063】
出力部156は、算出部155が算出したユーザの歯年齢を、情報端末2へ出力する。出力部156は、プリンタによる印刷、スピーカによる音声出力等、その他の方法によって、ユーザの歯年齢を出力してもよい。出力部156が出力する情報は、画像取得部151が取得した画像と、算出部155が算出したユーザの歯年齢と、ユーザの歯の状態に関連する推薦情報とを含む。
【0064】
例えば出力部156は、算出部155が算出したユーザの歯年齢が所定値以上である場合に、予防歯科が得意な医院名を推薦情報として出力してもよい。また、出力部156は、状態値取得部153が取得した状態値が示すユーザの歯並びが所定条件(例えば八重歯があること)を満たす場合に、歯の矯正が得意な医院名を推薦情報として出力してもよい。また、出力部156は、状態値取得部153が取得した状態値に関連する商品名を推薦情報として出力してもよい。ユーザの歯の状態と推薦情報との関係は、予め記憶部14に記憶されていてもよい。
【0065】
出力部156は、出力する情報を表示するための表示情報を、情報端末2へ送信する。情報端末2は、歯状態判定装置1から受信した表示情報に基づいて、ユーザの歯年齢を表す画面を表示部上に表示する。
図5は、ユーザの歯年齢を表す画面を表示している情報端末2の正面図である。
【0066】
ユーザの歯年齢を表す画面は、ユーザの歯の画像21と、ユーザの歯年齢22と、推薦情報23とを含む。ユーザの歯の画像21は、歯状態判定装置1が取得したユーザの歯の画像である。ユーザの歯年齢22は、歯状態判定装置1が算出したユーザの歯年齢である。ユーザの歯年齢22には、ユーザの実年齢が併記されてもよい。推薦情報23は、歯状態判定装置1が決定した推薦情報(医院名や商品名)である。これにより歯状態判定装置1は、歯の状態をユーザに知らせることができ、またユーザの歯の状態を改善するために推薦される手段をユーザに提供することができる。
【0067】
さらに出力部156は、算出部155が算出したユーザの歯年齢が実年齢よりも高い場合に、その旨を示す通知を情報端末2へ送信する。情報端末2は、歯状態判定装置1から受信した通知24を表示部上に表示する。これにより歯状態判定装置1は、ユーザの歯年齢が実年齢を上回っていることを、ユーザに積極的に知らせることができる。
【0068】
[歯状態判定方法のフローチャート]
図6は、本実施形態に係る歯状態判定システムSが実行する歯状態判定方法のフローチャートを示す図である。ユーザが歯状態判定システムSによる歯の状態の判定を受ける際に、歯状態判定装置1は、撮像部11を用いて、ユーザの歯(口腔)を撮像する。(S11)。画像取得部151は、撮像部11が撮像したユーザの歯の画像を、ユーザIDと関連付けて取得し、表示部12上の状態値の入力を受け付ける画面に表示させる。
【0069】
状態値受付部152は、状態値の入力を受け付ける画面において入力された状態値を受け付け、画像取得部151が取得した画像とともに、ユーザIDと関連付けて状態値記憶部141に記憶させる(S12)。
【0070】
ユーザの歯の状態の判定を開始する条件が満たされていない場合に(S13のNO)、歯状態判定装置1はユーザの歯の状態の判定を開始する条件が満たされるまで待つ。ユーザの歯の状態の判定を開始する条件が満たされた場合に(S13のYES)、状態値取得部153は、状態値記憶部141に記憶されている状態値を取得し(S14)、関係取得部154は、関係記憶部142に記憶されている、状態値と年齢との間の関係(近似式)を取得する(S15)。
【0071】
算出部155は、関係取得部154が取得した状態値と年齢との間の関係に基づいて、状態値取得部153が取得した状態値(すなわち、DMF歯数、喪失歯数及びクラウン数)に対応する、ユーザの歯年齢を算出する(S16)。出力部156は、算出部155が算出したユーザの歯年齢を、情報端末2へ出力する(S17)。
【0072】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る歯状態判定システムSによれば、歯状態判定装置1は、統計データを用いて生成された所定の集団における人間の歯の状態を表す状態値と人間の年齢との間の関係(近似式)を取得し、取得した関係に基づいてユーザの歯の状態を客観的に表す状態値に対応する歯年齢を算出する。そのため、歯状態判定システムSは、算出されるユーザの歯年齢のばらつきを抑制し、高い精度で出力できる。
【0073】
[変形例]
上述の実施形態では、歯状態判定システムSは、1つの集団に属するユーザの歯年齢を、その集団における状態値と年齢との間の関係に基づいて算出する。これに対して、本変形例に係る歯状態判定システムSは、ある集団に属するユーザの歯年齢を、該集団とは異なる集団の統計データに基づいて算出する。
【0074】
図7は、本変形例に係る歯状態判定システムSが実行する歯状態判定方法の模式図である。
図7において、例えば第1集団Dは海外の特定の国であり、第2集団Eは日本である。関係記憶部142には、予め第1集団Dにおける人間の歯の状態を表す状態値と人間の年齢との間の関係が記憶されている。状態値と年齢との間の関係は、例えば上述の近似式A、近似式B及び近似式Cである。
【0075】
歯状態判定装置1が第2集団Eに属するユーザの歯の状態の判定を開始する際に、状態値取得部153は、状態値記憶部141に記憶されている第2集団Eに属するユーザの状態値を取得し、関係取得部154は、関係記憶部142に記憶されている、第1集団Dにおける状態値と年齢との間の関係を取得する。
【0076】
算出部155は、関係取得部154が取得した第1集団Dにおける状態値と年齢との間の関係に基づいて、状態値取得部153が取得した第2集団Eに属するユーザの状態値に対応する、ユーザの歯年齢を算出する。これにより、算出部155は、第2集団Eに属するユーザの、第1集団Dにおける歯年齢を算出できる。
【0077】
別の方法として、算出部155は、ユーザが属する第2集団Eにおいて算出した歯年齢を、第1集団Dにおける補正値を用いて補正することによって、第1集団Dにおける歯年齢を算出してもよい。具体的には、関係記憶部142には、第2集団Eの歯年齢を第1集団Dの年齢に換算するための補正値が予め記憶されている。
【0078】
歯状態判定装置1が第2集団Eに属するユーザの歯の状態の判定を開始する際に、状態値取得部153は、状態値記憶部141に記憶されている第2集団Eに属するユーザの状態値を取得し、関係取得部154は、関係記憶部142に記憶されている、第2集団Eにおける状態値と年齢との間の関係を取得する。
【0079】
算出部155は、関係取得部154が取得した第2集団Eにおける状態値と年齢との間の関係に基づいて、状態値取得部153が取得した第2集団Eに属するユーザの状態値に対応する、第2集団Eにおけるユーザの歯年齢を算出する。さらに算出部155は、第2集団Eにおける歯年齢に、関係記憶部142に記憶された補正値を加算し(例えば10歳加算する)又は乗算する(例えば1.2倍にする)。これにより、算出部155は、第2集団Eに属するユーザの、第1集団Dにおける歯年齢を算出できる。
【0080】
このように、本変形例に係る歯状態判定システムSは、例えば日本のユーザの状態値に基づいて、歯のケアが先進的な他国における歯年齢を算出する。これによりユーザは、他国の統計データと比較した自身の歯の状態を把握できる。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【0082】
歯状態判定装置1のプロセッサは、
図6に示す歯状態判定方法に含まれる各ステップ(工程)の主体となる。すなわち、歯状態判定装置1のプロセッサは、
図6に示す歯状態判定方法を実行するためのプログラムを記憶部から読み出し、該プログラムを実行して歯状態判定装置1の各部を制御することによって、
図6に示す歯状態判定方法を実行する。
図6に示す歯状態判定方法に含まれるステップは一部省略されてもよく、ステップ間の順番が変更されてもよく、複数のステップが並行して行われてもよい。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る歯状態判定装置1は、所定の集団における人間の歯の状態を表す状態値と人間の年齢との間の関係を取得する関係取得部154と、ユーザの歯の状態値を取得する状態値取得部153と、関係取得部154が取得した関係に基づいて、状態値取得部153が取得した状態値に対応するユーザの歯年齢を算出する算出部155と、算出部155が算出した歯年齢を出力する出力部156と、を有する。