特許第6585861号(P6585861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585861
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ヒンジ装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 3/14 20060101AFI20190919BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   E05D3/14 Z
   F16C11/04 F
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-559396(P2018-559396)
(86)(22)【出願日】2018年8月17日
(86)【国際出願番号】JP2018030512
(87)【国際公開番号】WO2019049631
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2018年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2017-171727(P2017-171727)
(32)【優先日】2017年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107572
【氏名又は名称】スガツネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】柏熊 一彰
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 学
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−31327(JP,A)
【文献】 特開2000−291313(JP,A)
【文献】 特許第4263577(JP,B2)
【文献】 特開2004−108098(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0115826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 3/06−3/18
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒンジ本体(10)と、第2ヒンジ本体(20)と、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体を、第1方向に延びる回動軸線を中心に相対回動可能に連結する連結機構(30)とを備え、
上記第1ヒンジ本体(10)は、ベース部(10a)と、上記ベース部から上記第1方向と直交する第2方向に突出するとともに互いに上記第1方向に離間対向する一対の第1支持板部(17)と、を有しており、
上記第2ヒンジ本体(20)は、ソケット部(21)と、上記ソケット部に配置され互いに上記第1方向に離間対向する一対の第2支持板部(22)と、を有しており、
上記連結機構(30)が第1、第2のリンク(31,32)を有するヒンジ装置において、
上記第1、第2のリンク(31,32)の一方の端部が、上記一対の第1支持板部(17)間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第1軸部材(35,37)を介して上記一対の第1支持板部に回動可能に連結されており、
上記第1、第2のリンク(31,32)の他方の端部が、上記一対の第2支持板部(22)間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第2軸部材(36,38)を介して上記一対の第2支持板部に回動可能に連結されており、
上記連結機構(30)により、上記第1ヒンジ本体(10)のベース部(10a)と上記第2ヒンジ本体(20)のソケット部(21)が近づいた閉じ位置と、上記ベース部と上記ソケット部が離れた開き位置との間で、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体が相対回動可能であり、
上記閉じ位置では、上記第1ヒンジ本体(10)の上記一対の第1支持板部(17)の少なくとも一部が、上記ソケット部(21)内において上記第2ヒンジ本体(20)の上記一対の第2支持板部(22)間に入り込んでおり、上記一対の第1支持板部と上記一対の第2支持板部の間に、樹脂製のスペーサ(41)がそれぞれ介在されていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
上記ソケット部(21)において上記第1方向に対向する一対の壁部が、上記一対の第2支持板部(22)として提供されることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
上記スペーサ(41)が、上記第1軸部材(35,37)を介して上記第1ヒンジ本体(10)の上記第1支持板部(17)に取り付けられており、
上記閉じ位置では、上記一対の第1支持板部(17)において上記第1軸部材(35,37)が連結されている部分が、上記一対の第2支持板部(22)間に入り込んでおり、
上記第1軸部材(35,37)の両端が上記一対のスペーサ(41)の外側面から突出しないことを特徴とする請求項2に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
さらに樹脂成形品(40)を備え、この樹脂成形品は、上記一対のスペーサ(41)と、上記第1方向に延びて上記連結機構(30)を覆い上記一対のスペーサに連なるカバー(43)と、を一体に有することを特徴とする請求項3に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
上記樹脂成形品(40)がさらに一対の補助板部(42)を有し、これら一対の補助板部は、上記一対のスペーサ(41)の上記第1方向の内側に形成され、上記一対のスペーサと平行をなして離間対向し上記カバー(43)に連なっており、
上記スペーサ(41)と上記補助板部(42)との間に挿入空間(46)が形成されており、上記挿入空間に上記第1支持板部(17)が挿入されていることを特徴とする請求項4に記載のヒンジ装置。
【請求項6】
上記樹脂成形品(40)がさらに補強リブ(44,45)を有し、この補強リブは、上記第1方向に延び、上記一対の補助板部(42)に連なるとともに上記カバー(43)に連なっていることを特徴とする請求項5に記載のヒンジ装置。
【請求項7】
第1ヒンジ本体(110)と、第2ヒンジ本体(20)と、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体を、第1方向に延びる回動軸線を中心に相対回動可能に連結する連結機構(30)とを備え、
上記第1ヒンジ本体(110)は、ベース部(111)と、上記ベース部から上記第1方向と直交する第2方向に突出するとともに互いに上記第1方向に離間対向する一対の第1支持板部(117)と、を有しており、
上記第2ヒンジ本体(20)は、ソケット部(21)と、上記ソケット部に配置され互いに上記第1方向に離間対向する一対の第2支持板部(22)と、を有しており、
上記連結機構(30)が第1、第2のリンク(31,32)を有するヒンジ装置において、
上記第1、第2のリンク(31,32)の一方の端部が、上記一対の第1支持板部(117)間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第1軸部材(35,37)を介して上記一対の第1支持板部に回動可能に連結されており、
上記第1、第2のリンク(31,32)の他方の端部が、上記一対の第2支持板部(22)間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第2軸部材(36,38)を介して上記一対の第2支持板部に回動可能に連結されており、
上記連結機構(30)により、上記第1ヒンジ本体(110)のベース部(111)と上記第2ヒンジ本体(20)のソケット部(21)が近づいた閉じ位置と、上記ベース部と上記ソケット部が離れた開き位置との間で、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体が相対回動可能であり、
上記第1ヒンジ本体(110)の上記第1支持板部(117)と上記第2ヒンジ本体(20)の上記第2支持板部(22)のうち、少なくとも一方が樹脂により形成されており、
上記閉じ位置では、上記一対の第1支持板部(117)において上記第1軸部材(35,37)が連結されている部分が、上記一対の第2支持板部間(22)に入り込んで、上記一対の第2支持板部の内面に直接接するようになっており、
上記第1軸部材(35,37)の両端が上記一対の第1支持板部(117)の外側面から突出しないことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項8】
上記第1ヒンジ本体(110)が樹脂成形品からなり、上記ベース部(111)と、上記一対の第1支持板部(117)とを一体に有することを特徴とする請求項7に記載のヒンジ装置。
【請求項9】
上記ベース部(111)が上記第1方向に直線的に延びる板形状をなし、上記一対の支持板部(117)が上記ベース部(111)の中間部から上記第2方向に突出することを特徴とする請求項8に記載のヒンジ装置。
【請求項10】
上記第1ヒンジ本体(110)が、さらにカバー(118)を一体に有し、このカバーは、上記第1方向に延びて上記連結機構(30)を覆い上記一対の第1支持板部(117)に連なることを特徴とする請求項8または9に記載のヒンジ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体等の静止対象に、扉等の回動対象を回動可能に取り付けるためのヒンジ装置に関し、特に上記回動対象の荷重を受け止めることができるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2015−31327号公報)に開示されたヒンジ装置は、枠体に固定された第1ヒンジ本体と、扉に固定された第2ヒンジ本体と、これら第1、第2ヒンジ本体を回動可能に連結する連結機構とを備えている。
【0003】
上記第1ヒンジ本体は、枠体に固定されるベース部と、ベース部から突出する第1凸部と、この第1凸部からさらに突出する第2凸部とを有している。
上記第2ヒンジ本体は、ソケット部と、このソケット部内に固定された支持構造とを備えている。この支持構造は、上下一対の第1板部と、上下一対の第2板部を有している。
【0004】
上記連結機構は、上下一対の第1リンクと、上下一対の第2リンクとを有している。一対の第1リンクは、一端部が第1ヒンジ本体の第1凸部の上下面に回動可能に連結され、他端部が第2ヒンジ本体の第1板部に回動可能に連結されている。一対の第2リンクは、一端部が第2凸部の上下面に回動可能に連結され、他端部が一対の第2板部に回動可能に連結されている。
【0005】
扉が閉じ位置にある時、ヒンジ装置は第1ヒンジ本体のベース部と第2ヒンジ本体のソケット部が近づいた閉じ位置にあり、扉が開き位置にある時、ヒンジ装置はベース部とソケット部が離れた開き位置にある。
上記ヒンジ装置が閉じ位置にある時、第1ヒンジ本体の第1、第2凸部が連結機構とともに第2ヒンジ本体のソケット部内に入り込むようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒンジ装置は通常、扉の側縁部において上下に一対配置されているが、扉の自重により、上側のヒンジ装置には扉を枠体から離す方向の荷重がかかり、下側のヒンジ装置には扉を枠体に近づける方向の荷重がかかる。
特許文献1のヒンジ装置では、扉からの荷重は、第2ヒンジ本体の第1、第2の板部、第1、第2リンク、第1ヒンジ本体の第1、第2の凸部を介して枠体に伝達される。このように、第1、第2リンクおよびその両端部の回動連結部を介して荷重が伝達されるため、扉が重い場合には、第1、第2リンクおよびその両端部の回動連結部の荷重負担が大きく、長期使用によりガタが生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明は、第1ヒンジ本体と、第2ヒンジ本体と、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体を、第1方向に延びる回動軸線を中心に相対回動可能に連結する連結機構とを備え、上記第1ヒンジ本体は、ベース部と、上記ベース部から上記第1方向と直交する第2方向に突出するとともに互いに上記第1方向に離間対向する一対の第1支持板部と、を有しており、上記第2ヒンジ本体は、ソケット部と、上記ソケット部に配置され互いに上記第1方向に離間対向する一対の第2支持板部と、を有しており、上記連結機構が第1、第2のリンクを有するヒンジ装置において、
上記第1、第2のリンクの一方の端部が、上記一対の第1支持板部間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第1軸部材を介して上記一対の第1支持板部に回動可能に連結されており、上記第1、第2のリンクの他方の端部が、上記一対の第2支持板部間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第2軸部材を介して上記一対の第2支持板部に回動可能に連結されており、上記連結機構により、上記第1ヒンジ本体のベース部と上記第2ヒンジ本体のソケット部が近づいた閉じ位置と、上記ベース部と上記ソケット部が離れた開き位置との間で、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体が相対回動可能であり、上記閉じ位置では、上記第1ヒンジ本体の上記一対の第1支持板部の少なくとも一部が、上記ソケット部内において上記第2ヒンジ本体の上記一対の第2支持板部間に入り込んでおり、上記一対の第1支持板部と上記一対の第2支持板部の間に、樹脂製のスペーサがそれぞれ介在されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、ヒンジ装置が閉じ位置にある時、第1ヒンジ本体の第1支持板部と第2ヒンジ本体の第2支持板部との間の荷重伝達が樹脂製スペーサを介して行われるので、第1、第2リンクおよびその両端部の回動連結部での荷重負担を無くすか軽減することができ、ガタの発生を防止できる。また、樹脂製スペーサの介在により第1支持板部と第2支持板部が金属で形成されていてもその摩耗を回避することができる。
【0009】
好ましくは、上記ソケット部において上記第1方向に対向する一対の壁部が、上記一対の第2支持板部として提供される。
上記構成によれば、第2ヒンジ本体の構成を簡略化できるとともに、ヒンジ装置が閉じ位置にある時に第2ヒンジ本体のソケット部で第1ヒンジ本体の一対の第1支持板部を抱えるので、荷重負担能力をさらに向上させることができる。
【0010】
好ましくは、上記スペーサが、上記第1軸部材を介して上記第1ヒンジ本体の上記第1支持板部に取り付けられており、上記閉じ位置では、上記一対の第1支持板部において上記第1軸部材が連結されている部分が、上記一対の第2支持板部間に入り込んでおり、上記第1軸部材の両端が上記一対のスペーサの外側面から突出しない。
上記構成によれば、スペーサの取り付け構造を簡略化できるとともにスペーサを安定して保持できる。
【0011】
好ましくは、さらに樹脂成形品を備え、この樹脂成形品は、上記一対のスペーサと、上記第1方向に延びて上記連結機構を覆い上記一対のスペーサに連なるカバーと、を一体に有する。
上記構成によれば、ヒンジ装置が開き位置にある時に、連結機構がカバーで覆われているので外部から見えず、外観を向上させることができる。また、連結機構内に異物が入り込むのを防止できる。
【0012】
好ましくは、上記樹脂成形品がさらに一対の補助板部を有し、これら一対の補助板部は、上記一対のスペーサの上記第1方向の内側に形成され、上記一対のスペーサと平行をなして離間対向し上記カバーに連なっており、上記スペーサと上記補助板部との間に挿入空間が形成されており、上記挿入空間に上記第1支持板部が挿入されている
上記構成によれば、樹脂成形品と第1ヒンジ本体を簡単に組み立てることができる。
【0013】
好ましくは、上記樹脂成形品がさらに補強リブを有し、この補強リブは、上記第1方向に延び、上記一対の補助板部に連なるとともに上記カバーに連なっている。
上記構成によれば、樹脂成形品の強度を高めることができる。
【0014】
本発明の他の態様では、第1ヒンジ本体と、第2ヒンジ本体と、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体を、第1方向に延びる回動軸線を中心に相対回動可能に連結する連結機構とを備え、上記第1ヒンジ本体は、ベース部と、上記ベース部から上記第1方向と直交する第2方向に突出するとともに互いに上記第1方向に離間対向する一対の第1支持板部と、を有しており、上記第2ヒンジ本体は、ソケット部と、上記ソケット部に配置され互いに上記第1方向に離間対向する一対の第2支持板部と、を有しており、上記連結機構が第1、第2のリンクを有するヒンジ装置において、
上記第1、第2のリンクの一方の端部が、上記一対の第1支持板部間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第1軸部材を介して上記一対の第1支持板部に回動可能に連結されており、上記第1、第2のリンクの他方の端部が、上記一対の第2支持板部間に配置されるとともに、それぞれ上記第1方向に延びる第2軸部材を介して上記一対の第2支持板部に回動可能に連結されており、上記連結機構により、上記第1ヒンジ本体のベース部と上記第2ヒンジ本体のソケット部が近づいた閉じ位置と、上記ベース部と上記ソケット部が離れた開き位置との間で、上記第1ヒンジ本体と上記第2ヒンジ本体が相対回動可能であり、上記第1ヒンジ本体の上記第1支持板部と上記第2ヒンジ本体の上記第2支持板部のうち、少なくとも一方が樹脂により形成されており、上記閉じ位置では、上記一対の第1支持板部において上記第1軸部材が連結されている部分が、上記一対の第2支持板部間に入り込んで、上記一対の第2支持板部の内面に直接接するようになっており、上記第1軸部材の両端が上記一対の第1支持板部の外側面から突出しない。
上記構成によれば、スペーサを介在させずに第1、第2支持板部が直接荷重伝達を行うので、部品点数を減じることができる。また、第1、第2支持板部の少なくとも一方が樹脂で形成されているので、両者の擦れ合いによる摩耗を抑制することができる。
【0015】
上記他の態様において好ましくは、上記第1ヒンジ本体が樹脂成形品からなり、上記ベース部と、上記一対の第1支持板部とを一体に有する。
上記構成によれば、第1ヒンジ本体の構成を簡略化することができる。
さらに好ましくは、上記ベース部が上記第1方向に直線的に延びる板形状をなし、上記一対の支持板部が上記ベース部の中間部から上記第2方向に突出する。
【0016】
さらに好ましくは、上記第1ヒンジ本体が、さらにカバーを一体に有し、このカバーは、上記第1方向に延びて上記連結機構を覆い上記一対の第1支持板部に連なる。
上記構成によれば、ヒンジ装置が開き位置にある時に、連結機構がカバーで覆われているので外部から見えず、外観を向上させることができる。また、連結機構内に異物が入り込むのを防止できる。このカバーは第1支持板部と一体であるので部品点数を増やさずに済む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヒンジ装置の荷重負担能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るヒンジ装置により枠体に取り付けられた扉を、閉じ状態で示す正面図である。
図2】上記ヒンジ装置の分解斜視図である。
図3】閉じ状態における上記ヒンジ装置の横断面図である。
図4】閉じ状態における上記ヒンジ装置の縦断面図である。
図5図4と異なる高さで切断した、開き状態における上記ヒンジ装置の横断面図である。
図6】上記ヒンジ装置で用いられる樹脂成形品と、第1ヒンジ本体の構成要素の一部を分解して示す斜視図である。
図7】上記樹脂成形品を図6とは反対側から見た斜視図である。
図8】2つのリンクが連結された上記第1ヒンジ本体を、上記枠体の外側から見た斜視図である。
図9】上記2つのリンクが連結された上記第2ヒンジ本体を、上記枠体の外側から見た斜視図である。
図10】組み立てられた状態の上記ヒンジ装置を、上記枠体の内側から見た斜視図である。
図11】本発明の第2実施形態に係るヒンジ装置を、閉じ状態で示す縦断面図である。
図12】第2実施形態の第1ヒンジ本体を示す斜視図である。
図13】第2実施形態の第1ヒンジ本体に2つのリンクが連結された状態を示す斜視図である。
図14】第2実施形態の第1ヒンジ本体を、図12とは反対側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態を、図1図10を参照しながら説明する。
図1に示すように、家屋の壁に形成された開口には枠体1(静止対象;第1対象)が固定されており、この枠体1には扉2(回動対象;第2対象)の左右いずれかの側縁が、上下一対のヒンジ装置3により垂直方向(第1方向)に延びる回動軸線を中心に回動可能に連結されている。
【0020】
本実施形態のヒンジ装置3は隠し蝶番と称されるものであり、図2に示すように基本構成要素として、枠体1に取り付けられる第1ヒンジ本体10と、扉2に取り付けられる第2ヒンジ本体20と、第1ヒンジ本体10と第2ヒンジ本体20とを上記回動軸線を中心に回動可能に連結する連結機構30と、を備えている。
【0021】
図2に示すように、第1ヒンジ本体10は、垂直方向に延びる樹脂製の長板11と、上下一対のU字形の樹脂製の間隔調整板12と、上下一対のL字形のアングル材15とを有している。アングル材15は金属製であり、垂直の固定板部16と、水平の支持板部17(第1支持板部)とを有している。
【0022】
上下のアングル材15の固定板部16と、長板11と、上下の間隔調整板12とが重ねられて第1ヒンジ本体10のベース部10a(図4図5参照)が構成されており、このベース部10aが枠体1の内側面1aにネジで固定されている。この固定状態で、一対の支持板部17がベース部10aから水平方向(第2方向)に突出し、図3に示すように互いに垂直方向に対向している。ベース部10aの上下端部は図2に示すベースカバー19により覆われている。
【0023】
図2に示すように、第2ヒンジ本体20は金属製であり、U字形状のソケット部21と、このソケット部21の上下縁からそれぞれ上下に張り出す一対の固定鍔部25とを有している。ソケット部21は、上下一対の壁部22(第2支持板部)を有している。一対の壁部22の内面間の間隔は、第1ヒンジ本体10における一対の支持板部17の外面間の間隔より大きい。
【0024】
図4図5に示すように、扉2の側縁部において、扉2の閉じ状態で枠体1の内側面1aを向く面には、収容凹部2aが形成されている。この収容凹部2aは中央部が深く、上下部が浅くなっている。
第2ヒンジ本体20のソケット部21を上記収容凹部2aの深い中央部に収容した状態で、一対の固定鍔部25を上記収容凹部2aの浅い上下部の底面にネジで固定することにより、第2ヒンジ本体20が扉2に取り付けられている。
【0025】
図3に示すように、ソケット部21の一対の壁部22は水平をなして垂直方向(回動軸線方向)に対向している。
扉2には、図2に示す長尺のカバー29が装着され、このカバー29により第2ヒンジ本体20の一対の固定鍔部25が覆われている。
【0026】
上記連結機構30は、上記第1ヒンジ本体10の一対の支持板部17と、上記第2ヒンジ本体20の一対の壁部22とを相対回動可能に連結するものであり、垂直方向に延びる第1リンク31,第2リンク32と垂直方向に延びる4本の軸部材35〜38とを有している。
【0027】
第1リンク31と第2リンク32の一端部は他端部に比べて垂直方向の寸法が小さい。第1リンク31と第2リンク32の上記一端部は、第1ヒンジ本体10の一対の支持板部17間に入り込んでおり、上記他端部は第2ヒンジ本体20のソケット部21の一対の壁部22間に入り込んでいる。
【0028】
第1リンク31の上記一端部は軸部材35(第1軸部材)により一対の支持板部17の基端側に回動可能に連結されており、上記他端部は軸部材36(第2軸部材)によりソケット部21の一対の壁部22におけるソケット部21の開口近くに回動可能に連結されている。
第2リンク32の上記一端部は軸部材37(第1軸部材)により一対の支持板部17の先端側に回動可能に連結されており、上記他端部は軸部材38(第2軸部材)によりソケット部21の一対の壁部22において軸部材36より奥側に回動可能に連結されている。
【0029】
図4に示すように、扉2が閉じられている時、第1ヒンジ本体10のベース部10aと第2ヒンジ本体20のソケット部21は接近した位置にある。以下、この位置をヒンジ装置3の閉じ位置と言う。この閉じ位置では、連結機構30の第1リンク31及び第2リンク32を含む略全てが収容凹部2a内に収容されており、第1ヒンジ本体10の一対の支持板部17の略全部(軸部材35,37が連結されている部位を含む)が、収容凹部2a内に収容されている。この状態で、枠体1の内側面1aと扉2の側縁部との間隔が狭く、ヒンジ装置3はほぼ隠れている。
【0030】
図5に示すように、扉2が開かれた時、第1ヒンジ本体10のベース部10aと第2ヒンジ本体20のソケット部21は離れた位置にある。以下、この位置をヒンジ装置3の開き位置と言う。この開き位置では、連結機構30の一部は収容凹部2aの外にあり、第1ヒンジ本体10の一対の支持板部17も先端部だけが収容凹部2a内にあり、他の部位は収容凹部2aの外にある。
【0031】
ヒンジ装置3はさらに、図6図7に示す射出成形された樹脂成形品40を備えている。樹脂成形品40は、一対の板状のスペーサ41と、一対の板状の補助板部42と、カバー43と、補強リブ44,45とを、一体に有している。
【0032】
一対のスペーサ41は垂直方向に離れており、水平をなし互いに対向している。一対の補助板部42の各々は対応するスペーサ41と平行をなしてその内側に配置されている。補助板部42とスペーサ41との間には狭い幅の挿入空間46が形成されている。スペーサ41と補助板部42は第1ヒンジ本体10の支持板部17と実質的に同形状をなしている。
【0033】
カバー43は横断面が湾曲形状をなすとともに垂直方向に延び、一対のスペーサ41と一対の補助板部42の一方の側縁(枠体1の内側の側縁)に連なっている。
補強リブ44は、垂直方向に延び一対の補助板部42の基端縁に連なるとともにカバー43に連なっている。補強リブ45は、補強リブ44から離れて垂直方向に延び一対の補助板部42の中間部に連なるとともにカバー43に連なっている。
【0034】
図2図6に示すように、樹脂成形品40の一対の挿入空間46には、第1ヒンジ本体10の一対の支持板部17が隙間なく挿入されている。支持板部17とスペーサ41と補助板部42は形状を一致させた状態で重ねられている。このようにして、樹脂成形品40と第1ヒンジ本体は簡単に組み立てることができる。
【0035】
前述した連結機構30の軸部材35,37が、リンク31,32の一端部および一対の支持板部17を貫通するとともに樹脂成形品40の一対のスペーサ41と一対の補助板部42を貫通することにより、樹脂成形品40が、第1ヒンジ本体10に装着されている。軸部材35,37の上下端は、一対のスペーサ41の垂直方向における外側面と面一をなすか僅かに後退しており、当該外側面から突出していない。
【0036】
上記第1ヒンジ本体10への樹脂成形品40の装着状態において、樹脂成形品40の一対のスペーサ41は第1ヒンジ本体10の一対の支持板部17の垂直方向外側に配置されている。一対のスペーサ41の外面間の間隔は、第2ヒンジ本体20のソケット部21における一対の壁部22の内面間の間隔と略等しい。連結機構30の第1リンク31と第2リンク32の一端部の垂直方向の寸法は、一対の補助板部42の内面間の間隔に等しく、これらリンク31,32が一対の補助板部42間に入り込んでいる。
【0037】
図2図4図5に示すように、補強ピン50が一対のアングル材15の支持板部17と樹脂成形品40の一対のスペーサ41と一対の補助板部42と基端側の補強リブ44を貫通しており、これにより、一対のアングル材15を連結するとともに、樹脂成形品40をより一層強固に第1ヒンジ本体10に取り付けることができる。
【0038】
図3図4に示すようにヒンジ装置3が閉じ位置にある時、第1ヒンジ本体10の一対の支持板部17は基端部を除いて大部分が第2ヒンジ本体20のソケット部21内に入り込んでおり、一対の支持板部17とソケット部21の一対の壁部22との間には、樹脂成形品40の一対のスペーサ41が介在されている。各スペーサ41の垂直方向外側の面は、ソケット21の壁部22の内面に接し、各スペーサ41の垂直方向内側の面は支持板部17に接している。
【0039】
扉2が閉じ位置にある時(ヒンジ装置3が閉じ位置にある時)、扉2の自重に起因する荷重は、ソケット部21、スペーサ41、支持板部17を介して枠体1で受け止める。このように板形状のスペーサ41を介して荷重が伝達されるので、リンク31,32およびその両端部の回動連結部での荷重負担を無くすか大きく軽減することができ、長期にわたって扉2をガタツキなく安定して支持することができる。
扉2の回動に伴い、支持板部17と壁部22は直接擦れ合わず、樹脂で形成されたスペーサ41とそれぞれ擦れ合うので、これら支持板部17と壁部22の摩耗を抑制することができる。
【0040】
特に本実施形態では、ソケット部21の一対の壁部22が樹脂成形品40と第1ヒンジ本体10の支持板部17を抱え込むので、荷重負担能力をより一層高めることができる。
【0041】
図5に示すようにヒンジ装置3が開き位置にある時、ヒンジ装置3は枠体1の内側が大きく露出するが、カバー43により連結機構30を覆うので、連結機構30が外部から見えず、良好な外観を維持できる。また、連結機構30内に異物が入り込むのを防止することができる。
【0042】
上記第1実施形態において、ヒンジ装置3が閉じ位置にある時に、スペーサ41は、支持板部17とソケット21の壁部22との間の間隙の全域に配置される代わりに、その一部に配置されるようにしてもよい。
樹脂製スペーサは、ソケット21の壁部22に取り付けてもよい。
上記第1実施形態では、一対の第1支持板部を一対のアングル材にそれぞれ形成したが、1つの部材に一対の第1支持板部を形成してもよい。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態に係るヒンジ装置3Aを図11図14を参照しながら説明する。本実施形態において第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態のヒンジ装置3Aでは、第1ヒンジ本体110は、グラスファイバーやカーボンファイバー等で補強された樹脂の成形品からなり、垂直方向に延びるベース部111と、ベース部111から水平に突出して互いに垂直方向に対向する一対の支持板部117(第1支持板部)と、カバー118と、補強リブ119と、を一体に有している。
【0044】
上記一対の支持板部117の垂直方向における外面間の寸法は、ソケット21の一対の壁部22の内面間の寸法と等しい。
カバー118は横断面が湾曲形状をなすとともに垂直方向に延び、一対の支持板部117の一方の側縁(枠体1の内側の側縁)に連なっている。補強リブ119は、垂直方向に延び一対の支持板部117に連なるとともにカバー118に連なっている。
【0045】
図13に示すように、2つのリンク31,32の一端部は垂直方向の寸法が短く、第1ヒンジ本体110の一対の支持板部117に入り込んでおり、これら支持板部117に2本の第1軸部材35,37を介して回動可能に連結されている。第1軸部材35,37の両端は、一対の支持板部117の外側面と面一か僅かに後退しており、当該外側面から突出していない。
リンク31,32の他端部は、上記一端部に比べて垂直方向の寸法が長く、第2ヒンジ本体20のソケット21内に入り込んでおり、一対の壁部22(第2支持板部)に2本の第2軸部材36,38(図2参照)を介して連結されている。
【0046】
図11に示すように、ヒンジ装置3Aの閉じ位置において、第1ヒンジ本体110の一対の支持板部117は、上記2本の第1軸部材35,37が連結されている部分を含め略全ての部位が、リンク31,32とともにソケット21内に入り込んでいる。この状態で一対の支持板部117はソケット部21の壁部22と直接に面接触している。閉じ状態の扉2(図1参照)の自重に起因する荷重は、第2ヒンジ本体20の一対の壁部22から、直接に第1ヒンジ本体110の支持板部117に伝達され、第1ヒンジ本体110を介して枠体1で受け止めることができる。
扉2の回動に伴い、支持板部117と壁部22は擦れ合うが、支持板部117が樹脂で形成されているので、両者の摩耗を抑制することができる。
【0047】
ヒンジ装置3Aが開き位置にある時、ヒンジ装置3Aは枠体1の内側が大きく露出するが、第1ヒンジ本体110のカバー118により連結機構30を覆うので、連結機構30が外部から見えず、良好な外観を維持できる。また、連結機構30内に異物が入り込むのを防止することができる。
【0048】
上記第2実施形態において、ソケット20の一対の壁部22の内面間の寸法に比べて、第1ヒンジ本体110の一対の支持板部117の外面間の寸法が僅かに小さくてもよい。すなわち、一対の壁部22と一対の支持板部117との間に、僅かな隙間が形成されていてもよい。この場合、扉の自重により一対の壁部22と一対の支持板部117とが接することにより、荷重伝達を行なうことができる。
【0049】
第2実施形態では第1ヒンジ本体110を樹脂製にし、第2ヒンジ本体20を金属製にしたが、これとは逆に第1ヒンジ本体110を金属製にし、第2ヒンジ本体20を樹脂製にしてもよい。あるいは、第1ヒンジ本体110と第2ヒンジ本体20の両方とも樹脂製にしてもよい。
【0050】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
本発明は、家具用のヒンジ装置として用いてもよい。この場合、例えば家具の筺体に第1ヒンジ本体を固定し、扉に第2ヒンジ本体を固定する。
扉等の回動対象を第1対象とし、この回動対象に第1ヒンジ本体を固定し、枠体等の静止対象を第2対象とし、この静止対象に第2ヒンジ本体を固定してもよい。この場合、回動対象の自重に起因する荷重が、第1ヒンジ本体から第2ヒンジ本体へと伝達されることになる。
上記実施形態ではソケット部の一対の壁部が第2支持板部として提供されているが、ソケット部内に支持構造を固定し、この支持構造が一対の第2支持板部を有していてもよい。
ヒンジ装置の回転軸線が水平方向に延びていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、家具や建物の扉を連結するヒンジ装置等に適用可能である。
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