(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のものでは、重ね部分と非重ね部分とによって一定面積の濃淡のある1枚の布の画像を用い、同じ画像を基材に表裏面でずらして印刷しているので、例えば1枚の大型パネルを小割り(分割)し、その一部を取り出して使用する場合、その小割りされた模様が小割り前の大型パネルのどの位置にあったかが容易に識別されてしまうことになる。そのため、その小割り模様の位置を明確に把握してレイアウトする必要があり、位置を誤ると違和感が生じることになり、その分、レイアウトやデザインの設計、施工性に難がある。
【0005】
また、布の重ね部分と非重ね部分とによって濃淡が生じる画像の模様とはいえ、元々1枚の布を出所としているので、模様には布特有の折り皺や重ね状態等を含む素材感が残存し、施工箇所や用途が限定されるという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、上記のように基材の表裏両面に模様が形成される意匠パネルの構成に技術的な特徴を加えることにより、そのパネルに奥行き感や立体感が得られるようにしつつ、模様の規則性を不明確にして小割りの使用でも違和感をなくし、レイアウトやデザインの設計、施工を容易化するとともに、模様の素材感も不明瞭にして施工箇所や用途の限定をなくすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、基材の表裏面に形成される模様として波線等の複数の曲線を用い、表裏面の模様の曲線が重なる部分の太さを互いに異ならせるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、
小割りされて建物の開口部に施工される建築用意匠パネルであって、透明ないし半透明の板材からなる基材の表面に表面模様が、また裏面に裏面模様がそれぞれ設けられており、表面及び裏面模様は、基材の対向する1対の側部間に亘って該側部の対向方向に沿って延びかつ曲率の異なる複数の湾曲部が不規則に連続した太さの異なる複数の
波形線からなっていて曲線パターンがデータ上で人工的に作成される曲線部を有し、基材を表裏方向から見たときに上記表面及び裏面模様の曲線部同士が重なる重なり部が設けられ、少なくとも一部の上記重なり部における表面及び裏面模様の曲線部の太さは互いに異なって
おり、上記表面及び裏面模様の各々は、上記側部の対向方向と直交する方向に分割された複数の分割模様からなり、上記複数の分割模様は、1種類の基本模様が上記側部の対向方向に反転して交互に並べられたものであることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明では、基材の表裏面に表面及び裏面模様が形成され、これら表面及び裏面模様は、いずれも基材の対向する側部間に亘ってそれら対向方向に沿って延びかつ曲率の異なる複数の湾曲部が不規則に連続した複数の曲線部を有し、
複数の曲線部は波形線からなっていて曲線パターンがデータ上で人工的に作成され、複数の曲線部の太さは異なっている。そのため、パネルを例えば表方向から見たときに表面模様の曲線部が見えるだけでなく裏面模様の曲線部も基材を通して表面模様の曲線部と重なって見え、逆に裏方向から見たときにも裏面模様の曲線部だけでなく表面模様の曲線部も裏面模様の曲線部と重なって見えるようになり、表裏どちら側からでも反対側の曲線部を視認することができ、その見え方のずれによってパネルに奥行き感や立体感が得られる。
【0010】
しかも、基材を表裏方向から見たときに表面及び裏面模様の曲線部同士が重なる少なくとも一部の重なり部の曲線部の太さが互いに異なっていることから、表面及び裏面模様で同じ太さの曲線部が重ならないことになり、パネルの奥行き感や立体感がより効果的に得られる。
【0011】
また、表面及び裏面模様は、いずれも基材側部の対向方向に沿って延びる複数の曲線部を有し、この曲線部は複数の湾曲部が不規則に連続するだけで目立つ特異部分がなく、表面及び裏面模様は同様な調子の模様となる。従って、パネルを小割りによりその一部を取り出して使用する場合、小割りされた模様が小割り前のパネルのどの位置にあったかが不明確になり、その小割りされた模様の位置を把握してレイアウトする必要がなくなり、位置を誤っても違和感が生じることはない。このことで、レイアウトやデザインの設計、施工が容易になる。
【0012】
さらに、表面及び裏面模様は、いずれも複数の曲線部を有するものであるので、布を用いるような素材感等が出ることはなく、パネルの施工箇所や用途が限定されない
。
【0013】
そして、表面及び裏面模様の各々における複数の分割模様は、1種類の基本模様が側部の対向方向に反転して交互に並べられたものであるので、表面及び裏面模様の調子はより一層同様なものとなり、
小割りによりパネルの一部を取り出して使用する場合の違和感の発生を
さらに抑制でき、レイアウトやデザインの設計、施工もより一層容易になる。
【0014】
また、表面及び裏面模様の各々における複数の分割模様は、1種類の基本模様を、隣接する位置の模様に対し側部の対向方向に反転させるだけで形成される。このことで、表面及び裏面模様の各々につき1種類の基本模様を形成して、その基本模様を隣の位置で反転させれば済み、模様の創作が容易となる。
【0015】
第
2の発明は、第
1の発明において、表面及び裏面模様の各々の曲線部の太さ(幅)及び濃度は、太さが細くなるほど濃くなるように関連付けられていることを特徴とする。
【0016】
この第
2の発明では、曲線部の太さが細くなるほど濃度が濃くなっているので、細い曲線部でも濃くなることによって明確に現出する。そのため、パネルを表裏両側の一方から見たときに反対側にある模様の曲線部が細くても、それは確実に視認できるようになり、表面及び裏面模様による透かし模様の陰影を鮮明にすることができる。
【0017】
第
3の発明は、第1
又は第2の発明において、表面及び裏面模様の各々の複数の曲線部が交差していることを特徴とする。こうすると、表面及び裏面模様が交差した複数の曲線部によって複雑になり、パネルの奥行き感や立体感がさらに増大する。
【0018】
第
4の発明は、第1〜第
3の発明のいずれか1つにおいて、表面及び裏面模様はインクジェット印刷により印刷されていることを特徴とする。このことで、基材に上記表面及び裏面模様を容易に形成することができる。
【0019】
第
5の発明はドアに係り、このドアは第1〜第
4の発明のいずれか1つの建築用意匠パネルが
小割りされて採光開口部に取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
この第
5の発明では、ドアの採光開口部に取り付けられたパネルが奥行き感や立体感を有し、違和感のないデザインとなるので、デザイン性の高いドアが得られる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した如く、本発明によると、
小割りされて建物の開口部に施工される建築用意匠パネルとして、透明ないし半透明の基材の表裏面に、
基材の対向側部間に亘って該側部の対向方向に沿って延びかつ太さの異なる複数の
波形線からなっていて曲線パターンがデータ上で人工的に作成される曲線部を有する模様を形成し、基材を表裏方向から見たときに表裏模様の曲線部同士の重なり部を設けて、その重なり部での表裏模様の曲線部の太さを互いに異ならせ
、表面及び裏面模様を基材側部の対向方向と直交する方向に分割された複数の分割模様からなし、それら複数の分割模様は1種類の基本模様が側部の対向方向に反転して交互に並べられたものとした。このことにより、パネルの表裏どちら側からでも反対側の曲線部を視認できるとともに、表裏の模様における同じ太さの曲線部が重ならないことになり、パネルの奥行き感や立体感が得られる。また、
1種類の基本模様を反転配置した分割模様により表面及び裏面模様の調子は同様なものとなり、表裏面模様の曲線部に特異部分がなく、表裏模様が同様な調子となり、パネルを小割りして使用する
に当たり、小割り模様の位置を明確に把握してレイアウトする必要がなく、位置が異なっても違和感が生じず、レイアウトやデザインの設計、施工の容易化を図ることができる。さらに、表裏模様に素材感等が出ることはなく、パネルの施工箇所や用途を拡げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
図1〜
図3は本発明の実施形態に係る建築用意匠パネルPを示し、このパネルPは製造時に形成される最大の大きさのフルサイズのもので、例えば必要に応じて小割り(分割)して用いられる。建築用意匠パネルPは、例えば樹脂パネル材やガラス板材等の透明ないし半透明の板材からなる基材1を備え、この基材1の長さ(高さ)は例えば最大で1600mm、幅(左右幅)は例えば最大で600mm、厚さは例えば2mm程度とされている。上記樹脂パネル材としては、例えばスチレン系樹脂やアクリル系樹脂、PET樹脂等が用いられる。
【0025】
上記板状の基材1の表面(
図1で下面)には表面模様3が、また裏面(同上面)には裏面模様4がそれぞれ設けられている。この表面及び裏面模様3,4は、基材1に対しインクジェット印刷、装飾模様を施した印刷フィルムの貼り付け、サンドブラストやエッチングによる彫り込み等によって形成されている。特に、インクジェット印刷により表面及び裏面模様3,4を形成するのが容易であり、生産性の点で好ましい。尚、
図1では、表面及び裏面模様3,4を厚さの厚い層状物として記載しているが、これは説明のために示しているだけで、当該構造を特定するものではない。
【0026】
図4は上記表面模様3を、また
図5は裏面模様4をそれぞれ示している。詳しくは
図4は表面模様3を基材1の表側から裏側に向かう方向に見た状態で示し、
図5は、裏面模様4を基材1の裏側から表側に向かう方向(表面模様3を見る方向とは逆の方向)に見た状態で示している。
【0027】
図2〜
図5の上側を上部とし、下側を下部として、
図4及び
図5に示すように、上記表面及び裏面模様3,4は、いずれも地色部Gと、基材11の例えば上下に対向する1対の側部間に亘って該側部の対向方向たる上下方向に沿って延びる太さの異なる複数の曲線部L,L,…,M,M,…とを有する。表面及び裏面模様3,4の地色部G,G同士は互いに同じ色か又は透明であり、この地色部Gの色(透明を含む)に対し各曲線部L,Mの色は異なっている。
【0028】
上記各曲線部L,Mは曲率の異なる複数の湾曲部が不規則に連続した例えば波形線からなっており、表面模様3において複数の曲線部L,L,…が、また裏面模様4において複数の曲線部M,M,…がそれぞれ途中で互いに交差している。この各曲線部L,Mは途中で太さ(幅)が大小に変化しており、一部の曲線部L,Mでは太い部分が複数の細い曲線部に並列に分岐している(
図4及び
図5のA部等)。さらに、一部の曲線部L,Mは途中で他の曲線部L,Mに集合し又は他の曲線部L,Mから分岐している(
図4及び
図5のB部等)。
【0029】
そして、表面模様3は、上下方向(側部の対向方向)と直交する左右幅方向に等分に分割された例えば3つの分割模様3a〜3cからなり、裏面模様4も同様に、上下方向(側部の対向方向)と直交する左右幅方向に等分に分割された例えば3つの分割模様4a〜4cからなっている。
図4及び
図5では、分割模様3a〜3c,4a〜4cの境界位置を仮想線にて示している。
【0030】
尚、
図4は、表面模様3を基材1の表側から裏側に向かう方向に見た状態で示しているので、分割模様3a〜3cは同方向に見て左側から右側に向かって順に並んでいる。一方、
図5は、裏面模様4を基材1の裏側から表側に向かう方向に見た状態で示しているので、分割模様4a〜4cは同方向に見て右側から左側に向かって順に並んでいる。
【0031】
表面模様3については、3つの分割模様3a〜3cはいずれも
図6に拡大して示す同じ1種類の基本模様からなり、この1種類の基本模様が上下方向(側部の対向方向)に反転して交互に
図4左側から右側に向かって並べられたものとされている。ここでいう上下方向に反転するとは、上下方向に延びる曲線部L,L,…を含む分割模様3a〜3cの領域の面を左右側部で折り返して裏返すのではなく、上端部又は下端部で折り返すようにして裏返すことを示す。そのため、3つの分割模様3a〜3cのうち、左右両側の分割模様3a,3cは互いに同じとなり、中央の分割模様3bのみが左右の分割模様3a,3cと上下反転し、このことで表面模様3は繰り返し状の模様に形成されている。
【0032】
一方、裏面模様4についても同様であり、3つの分割模様4a〜4cは
図7に拡大して示す互いに同じ1種類の基本模様からなり、この1種類の基本模様が上下方向(側部の対向方向)に反転して交互に
図4右側から左側に向かって並べられたものとされている。そのため、3つの分割模様4a〜4cのうち、左右両側の分割模様4a,4cは互いに同じであり、中央の分割模様4bのみが左右の分割模様4a,4cと上下反転し、裏面模様4は繰り返し状の模様に形成されている。
【0033】
表面及び裏面模様3,4の各々の曲線部L,Mの太さ(幅)及び色の濃度(濃さ)は関連付けられ、太さが細くなるほど色が濃くなっている。図では、記載の都合上、曲線部L,Mの濃度をグレイの濃淡で現しており、灰色の濃い(黒に近い)曲線部は薄い(白に近いい)曲線部よりも色が濃くなっている。
【0034】
上記表面及び裏面模様3,4の曲線部L,Mは、そのパターンをデータ上で作成するようになっており、そのデータに基づいてインクジェット印刷や彫り込み加工等を行う。
【0035】
そして、
図2は上記建築用意匠パネルPを表側から見た状態を、また
図3は同パネルPを裏側から見た状態をそれぞれ示し(このとき、表面模様3の分割模様3a,3b,3cがそれぞれ裏面模様4の分割模様4a,4b,4cに重なる)、基材1を表裏方向から見たときに表面及び裏面模様3,4の曲線部L,M同士が重なる多数の重なり部10,10,…が設けられている。そして、
図8に例示するように、その一部又は全ての重なり部10,10,…の各々における表面模様3の曲線部Lの太さd1と裏面模様4の曲線部Mの太さd2とは互いに異なっている。
図8に示す例では、表面模様3の曲線部Lの太さd1が裏面模様4の曲線部Mの太さd2よりも細くなっている(d1<d2)。
【0036】
図9〜
図13は本発明の実施形態に係るドアD1〜D5の例を示し、これらのドアD1〜D5はいずれも採光のための採光開口部15が形成され、その開口部15に、上記フルサイズの建築用意匠パネルPを小割り(分割)した小割りパネルP1〜P5が取り付けられて、その採光開口部15が閉鎖されている。
【0037】
図9は例1のドアD1を示し、ドアD1の左右中央部に全高さに亘って縦長の採光開口部15が開口され、その開口部15に建築用意匠パネルPを左右幅方向に分割した縦長の小割りパネルP1が取り付けられている。
図9(a)及び(b)に示すドアD1は互いに同じであるが、同じ縦長の小割りパネルP1が上下逆にして取り付けられている。尚、19はドアレバーハンドルである。
【0038】
図10は例2のドアD2を示し、ドアD2の左右中央部の上側に採光開口部15が、また下側に鏡板開口部16がそれぞれ開口され、その採光開口部15に建築用意匠パネルPを分割した矩形状の小割りパネルP2が取り付けられ、閉鎖開口部16に鏡板17が取り付けられている。
図10(a)及び(b)に示すドアD2は互いに同じで、採光開口部15に同じ小割りパネルP2が上下逆にして取り付けられている。
【0039】
図11は例3のドアD3を示し、ドアD3の左右中央部に縦長の狭い採光開口部15が開口され、その開口部15に建築用意匠パネルPを分割した縦長の小割りパネルP3が取り付けられている。
図11(a)及び(b)に示すドアD3は互いに同じで、同じ小割りパネルP3が上下逆にして取り付けられている。
【0040】
図12は例4のドアD4を示し、ドアD4の左右中央部に縦長で広幅の採光開口部15が開口され、その開口部15に建築用意匠パネルPを分割した小割りパネルP4が取り付けられている。
図12(a)及び(b)に示すドアD4は互いに同じで、同じ小割りパネルP4が上下逆にして取り付けられている。
【0041】
図13は例5のドアD5を示し、ドアD5の左右中間部の左右両側に縦長の2つの狭い採光開口部15,15が間隔をあけて開口され、その各開口部15に建築用意匠パネルPを分割した縦長の小割りパネルP5が取り付けられている。
図13(a)及び(b)に示すドアD5は互いに同じで、同じ小割りパネルP5,P5が上下逆にして取り付けられている。
【0042】
したがって、上記実施形態においては、建築用意匠パネルPの基材1の表裏面にそれぞれ表面及び裏面模様3,4が形成され、これら表面及び裏面模様3,4は、いずれも地色部Gと、基材1の対向する上下側部間に亘って上下方向に沿って延びかつ曲率の異なる複数の湾曲部が不規則に連続した複数の曲線部L,L,…,M,M,…とを有し、それら複数の曲線部L,L,…,M,M,…の太さが異なっている。そのため、
図2に示すように、パネルPを表方向から見たときに表面模様3の各曲線部Lが見えるだけでなく裏面模様4の各曲線部Mも基材1を通して表面模様3の各曲線部Lと重なって見える。一方、
図3に示すように、裏方向から見たときには裏面模様4の各曲線部Mだけでなく表面模様3の各曲線部Lも裏面模様4の各曲線部Mと重なって見える。こうしてパネルPの表裏どちら側からでも反対側の曲線部L,Mを視認することができるので、その見え方のずれによってパネルPに奥行き感や立体感が得られる。
【0043】
また、
図8に例示するように、基材1を表裏方向から見たときに表面及び裏面模様3,4の曲線部L,M同士が重なる一部又は全部の重なり部10の曲線部L,Mの太さが互いに異なっていることから、表面及び裏面模様3,4で同じ太さの曲線部L,Mが重ならないことになり、このことによってもパネルPの奥行き感や立体感がより効果的に得られる。
【0044】
そして、建築用意匠パネルPの表面及び裏面模様3,4は、いずれも基材1の上下側部の対向方向である上下方向に沿って延びる複数の曲線部L,L,…,M,M,…を有し、このような曲線部L,Mは、複数の湾曲部が不規則に連続するだけで目立つ特異部分がなく、表面及び裏面模様3,4は同様な調子の模様となる。そのため、例えば
図9〜
図13に示すように、パネルPを小割りしてその一部を取り出し、小割りパネルP1〜P5として使用する場合、小割パネルP1〜P5の模様が小割り前のパネルPのどの位置にあったかを不明確にでき、その小割りパネルP1〜P5の模様の位置を明確に把握してレイアウトする必要がなくなり、位置を誤っても違和感が生じることはない。すなわち、
図9〜
図13に示すように、ドアD1〜D5の採光開口部15に小割りパネルP1〜P5を取り付ける場合に、
図9(a)〜
図13(a)に示すレイアウトと、
図9(b)〜
図13(b)に示すレイアウトとは、同じ小割りパネルP1〜P5を上下逆にしたものであるにも拘わらず、両レイアウトは互いに同様の模様が生じていて、両レイアウトの識別性が不明瞭となっており、両レイアウトを逆にしてもドアD1〜D5全体の外観はさほど変わらない。このことから、レイアウトやデザインの設計、施工が容易になる。
【0045】
また、上記表面及び裏面模様3,4の各々は、左右方向に複数の分割模様3a〜3c,4a〜4cに分割され、その複数の分割模様3a〜3c,4a〜4cは、1種類の基本模様が上下反転して交互に並べられたものであるので、表面及び裏面模様3,4の調子はより一層同様の調子となり、上記パネルPを小割りしてその一部を取り出して使用する場合の違和感の発生を抑制でき、レイアウトやデザインの設計、施工もより一層容易になる。
【0046】
さらに、表面及び裏面模様3,4の各々の複数の曲線部L,L,…,M,M,…が交差しているので、表面及び裏面模様3,4は交差した複数の曲線部L,L,…,M,M,…によって複雑になり、パネルPの奥行き感や立体感がさらに増大する。
【0047】
しかも、表面及び裏面模様3,4の各々において隣接する分割模様3a〜3c,4a〜4cは、同じ1種類の基本模様が上下方向に反転されたものであるので、その1種類の基本模様を、隣接する位置で上下方向に反転させるだけでよいこととなる。このことで、表面及び裏面模様3,4の各々につき1種類の基本模様を形成して、その基本模様を隣の位置で交互に反転させれば済み、模様の創作が容易となる。
【0048】
また、表面及び裏面模様3,4の各々の曲線部L,Mの太さ及び濃度は、太さが細くなるほど濃くなるように関連付けられているので、細い曲線部L,Mでも濃くなることによって明確に現出する。そのため、パネルPを表裏両側の一方から見たときに反対側にある模様3,4の曲線部L,Mが細くても、それは確実に視認できるようになり、表面及び裏面模様3,4による透かし模様の陰影を鮮明にすることができる。
【0049】
さらに、表面及び裏面模様3,4は、いずれも地色部Gと複数の曲線部L,Mとを有するものであるので、模様に布の折り皺や重ね状態等を含んだ素材感が出ることはなく、パネルPの施工箇所や用途が限定されることはない。
【0050】
そして、表面及び裏面模様3,4は基材1にインクジェット印刷により印刷されていることで、基材1に表面及び裏面模様3,4を容易に形成することができる。
【0051】
このような建築用意匠パネルPを小割りした小割りパネルP1〜P5が採光開口部15に取り付けられたドアD1〜D5は、その小割りパネルP〜P5によって違和感のないデザインとなり、よってデザイン性の高いドアが得られる。
【0052】
(その他の実施形態)
上記実施形態では
、表面及び裏面模様3,4における複数の曲線部L,L,…,M,M,…は交差している
が、その必要はなく、分離していてもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、表面及び裏面模様3,4の各々の曲線部L,Mの太さ及び濃度は、太さが細くなるほど濃くなるように関連付けられているが、逆に、太さが細くなるほど薄くなるように関連付けられていてもよく、或いは曲線部L,Mの太さ及び濃度の関連付けがなくてもよい。しかし、細い曲線部L,Mでも濃くなることによって反対側から確実に見えるようになる点で、太さが細くなるほど濃くなるように関連付けられていることが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、建築用意匠パネルPはドアD1〜D5の採光開口部15に取り付けられているが、建築物の他の開口部に取り付けられるようにしてもよい。
【課題】基材の表裏両面に模様が形成される意匠パネルに奥行き感や立体感が得られるようにしつつ、模様の規則性を不明確にして小割りの使用でも違和感をなくし、レイアウトやデザインの設計、施工を容易化するとともに、模様の素材感も不明瞭にして施工箇所や用途の限定をなくす。
【解決手段】透明ないし半透明の板材からなる基材1の表裏面にそれぞれ設けられる表面及び裏面模様3,4は、基材1の対向する上下側部間に亘って上下方向に沿って延びかつ曲率の異なる複数の湾曲部が不規則に連続した太さの異なる複数の曲線部L,Mを有するものとする。基材1を表裏方向から見たときに表面及び裏面模様3,4の曲線部L,M同士が重なる重なり部10が設けられ、少なくとも一部の重なり部10における表面及び裏面模様3,4の曲線部L,Mの太さd1,d2が互いに異なっている。