(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585875
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の運転制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/13 20160101AFI20190919BHJP
B60W 20/12 20160101ALI20190919BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20190919BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20190919BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20190919BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20190919BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20190919BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20190919BHJP
【FI】
B60W20/13
B60W20/12
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/02 900
B60W10/26 900
B60K6/48ZHV
B60L50/16
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-178942(P2013-178942)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-9803(P2015-9803A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0076960
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA MOTORS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】崔 榕 ガック
(72)【発明者】
【氏名】申 東 準
(72)【発明者】
【氏名】韓 勳
(72)【発明者】
【氏名】朴 逸 權
【審査官】
神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0024413(KR,A)
【文献】
特開2002−138876(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/069637(WO,A1)
【文献】
特開2010−163040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00〜20/50
B60K 6/20〜 6/547
B60L 50/00〜50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電状態(SOC)が高領域、中領域及び低領域で区分されるSOC領域と各SOC領域別に事前設定されたエンジン目標トルクを備えたハイブリッド車両の運転制御方法であって、
現在の充電状態(SOC)が属するSOC領域からエンジン目標トルクを算出し、現在のSOCが一定範囲の最大値よりも大きいとき、算出されたエンジン目標トルクの大きさを減少させた修正エンジン目標トルクにエンジンを制御し、SOCが一定範囲の最小値よりも小さいとき、算出されたエンジン目標トルクの大きさを増加させた修正エンジン目標トルクに前記エンジンを制御し、現在のSOCが一定範囲内であれば算出された前記エンジン目標トルクに前記エンジンを制御し、アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行のとき、一定のSOC以上で前記エンジンとモーターの間のクラッチをオフにし、車速が増すほどクラッチオフの基準となる前記SOCを徐々に下げることを特徴とするハイブリッド車両の運転制御方法。
【請求項2】
走行路が上り坂で前記SOCが一定値以上のとき、前記算出されたエンジン目標トルクの大きさを減少させた前記修正エンジン目標トルクに前記エンジンを制御し、傾斜が大きくなるほど前記算出されたエンジン目標トルクの大きさの減少度を大きくすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の運転制御方法。
【請求項3】
走行路が下り坂のとき、傾斜が大きくなるほど前記エンジンの停止時点が早くなるようにすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の運転制御方法。
【請求項4】
前記アクセルペダルと前記制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行のとき、車速が増すほど前記モーターのクリープトルクを負の方向に大きくすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の運転制御方法。
【請求項5】
前記アクセルペダルと前記制動ペダルのいずれも踏まない前記慣性走行のとき、車速が 増すほど前記モーターのクリープトルクを負の方向に大きくし、走行路が上り坂のとき、平地の場合より緩やかに大きくし、前記走行路が下り坂のとき、平地の場合より急に 大きくするようにすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の運転制御方法。
【請求項6】
充電状態(SOC)が高領域、中領域及び低領域で区分されるSOC領域と各SOC領域 別に事前設定されたエンジン目標トルクを備えたハイブリッド車両の運転制御方法であっ て、 現在の充電状態(SOC)が属するSOC領域からエンジン目標トルクを算出し、現在の SOCが一定範囲の最大値よりも大きいとき算出されたエンジン目標トルクの大きさを減少させた修正 エンジン目標トルクにエンジンを制御し、SOCが一定範囲の最小値よりも小さいとき算出されたエンジ ン目標トルクの大きさを増加させた修正エンジン目標トルクにエンジンを制御し、 現在 のSOCが一定範囲内であれば算出されたエンジン目標トルクにエンジンを制御し、 アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行のとき、一定のSOC以上でエンジンとモーターの間のクラッチをオフにし、クラッチオフの基準となるSOCは、走行 路の傾斜度によって、走行路が平地の場合と比較して、 走行路が上り坂の場合は最も高 く、下り坂の場合は最も低くすることを特徴とするハイブリッド車両の運転制御方法。
【請求項7】
前記一定範囲の最大値よりも大きいとき前記現在のSOCが高くなるほど前記エンジン目標トルクの大きさを より大きく下げ、前記一定範囲の最小値よりも小さいとき前記現在のSOCが低くなるほど前記エンジン目標 トルクの大きさをより大きく上げ、走行路が上り坂のときは、平地や下り坂の場合より前 記エンジン目標トルクを低くすることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の 運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両の運転制御方法に関し、さらに詳細には、車両のエネルギー活用能力を能動的に知能化して、効率的なエネルギーの使用によって車両の燃費を一層向上させるようにしたハイブリッド車両の運転制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
並列型ハイブリッドのコンセプトは、エンジンと駆動モーターの間にエンジンクラッチが位置していることにより、エンジンの動力伝達をホイールまで伝達する制御が容易であり、特に減速の際にエンジンを停止させてエンジンクラッチを解除することで、純粋に制動エネルギーをモーターで吸収する回生制動モードに入ることに大きな特徴がある。
【0003】
SOC(State Of Charge)は、高電圧バッテリー充電状態、つまり充電量を意味する。この際、高電圧バッテリーは、エンジンを最適運転効率にするために、モーターの充放電によるダンパーの役目をしている。
【0004】
しかし、エンジンの起動と停止を多数回繰り返すと、燃費の低下とシステムの負荷として作用するので、適切な制御入力と結果によって運転者の意志を最大限に反映して安定的にエンジンのオン/オフを達成する必要がある。
【0005】
近年には、自動車の燃費向上の持続的な要求と各国の排出規制の強化に従って環境に優しい自動車に対する要求が高まっている。これに対する現実的な代案としてハイブリッド車両が注目されている。
このようなハイブリッド車両は、内燃機関であるエンジン以外に電気エネルギーを使うモーターを一緒に動力源として使用する関係で、電気エネルギーの貯蔵装置であるバッテリーのSOC管理が重要な意味を持つことになる。
【0006】
したがって、ハイブリッド車両はSOCの高低状態を考慮しながら最適の燃費水準を達成することができる運転戦略を適用するように努力している。そこで、SOCを管理して効率的なエネルギー使用を行うハイブリッド車の運転制御方法が提案された〔特許文献1参照〕。この方法によれば、バッテリーの充電状態であるSOCを一連の複数領域に分割し、各SOC領域別に別個の動力配分戦略を適用し、各領域別に備えられた別個の運転マップなどの動力配分戦略によってエンジンから発生させなければならないトルクとモーターから発生させなければならないトルクなどを選定するように構成し、現在のSOCがどのSOC領域に属するかを判断し、それに対応する動力配分戦略によって車両の走行がなされるようにするものである。
【0007】
この動力配分戦略は、基本的に低SOC領域ではモーターから発生させるトルクを減らしてSOCの追加低下を抑制し、エンジンから発生する動力で車両の走行及びバッテリーの充電を行ってSOCの上昇を許容ないし誘発し、またSOCが低いときエンジンの動力を用いてアイドル充電を行い、SOCがさらに低い場合には、バッテリーを電子装備から遮断するようにする。また、高SOC領域では、SOCの低下を許容ないし誘発することによってモーターから発生するトルクの比重を高め、エンジンの使用をできるだけ抑制して車両の燃費を向上させるようにするものである。
【0008】
その他、バッテリの充電効率の低下を抑制しながらエンジンの運転効率を上昇させることができ、自動車全体のエネルギ効率の向上を図ることができるハイブリッド自動車の提案がある〔特許文献2参照〕。
【0009】
一方、近年には車両に係わる情報技術(IT;information technology)の急速な発展によって、車両は、走行する道路についての多様な情報を比較的容易に入手することができ、これを反映して車両の運転戦略を改善して燃費の追加的な向上などが可能である。例えば、道路状況、現在の車両状況および過去の操作状況に関する情報を取得し、これらの情報に基づいて車両の燃費の悪化を招くことになるか否かを予測し、燃費の悪化を招くことが予測された場合に、燃費を向上するための操作が車両の乗員に事前に報知する運転支援装置の提案がある〔例えば、特許文献3参照〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許公開10−2013−0024413号明細書
【特許文献2】特開2011−240757号公報
【特許文献3】特開2012−013021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、車両のエネルギー活用能力を能動的に知能化して効率的なエネルギー使用を行い、車両の燃費を向上させるようにしたハイブリッド車両の運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、充電状態(SOC)が高領域、中領域及び低領域で区分されるSOC領域と各SOC領域別に事前設定されたエンジン目標トルクを備えたハイブリッド車両の運転制御方法であって、
現在の充電状態(SOC)が属するSOC領域からエンジン目標トルクを算出し、現在のSOCが一定範囲
の最大値よりも大きいとき、算出されたエンジン目標トルクの大きさを減少させた修正エンジン目標トルクにエンジンを制御し、SOCが一定範囲
の最小値よりも小さいとき、算出されたエンジン目標トルクの大きさを増加させた修正エンジン目標トルクに前記エンジンを制御し、現在のSOCが一定範囲内であれば算出された前記エンジン目標トルクに前記エンジンを制御し、アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行のとき、一定のSOC以上で前記エンジンとモーターの間のクラッチをオフにし、車速が増すほどクラッチオフの基準となる前記SOCを徐々に下げることを特徴とする。
【0014】
走行路が上り坂で
前記SOCが一定値以上のとき、前記
算出されたエンジン目標トルク
の大きさを
減少させた前記修正エンジン目標トルクに前記エンジンを制御し、傾斜が大きくなるほど前記
算出されたエンジン目標トルク
の大きさの減少度を大きくすることを特徴とする。
【0015】
アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行のとき、車速が増すほどモーターのクリープトルクを負の方向に大きくし、このとき、走行路が上り坂のとき平地の場合より緩やかに大きくし、走行路が下り坂のとき平地の場合より急に大きくするようにする。
【0016】
充電状態(SOC)が高領域、中領域及び低領域で区分されるSOC領域と各SOC領域別に事前設定されたエンジン目標トルクを備えたハイブリッド車両の運転制御方法であって、
現在の充電状態(SOC)が属するSOC領域からエンジン目標トルクを算出し、現在のSOCが一定範囲以上のとき算出されたエンジン目標トルクの大きさを減少させた 修正エンジン目標トルクにエンジンを制御し、SOCが一定範囲以下のとき算出されたエンジン目標トルクの大きさを増加させた修正エンジン目標トルクにエンジンを制御し、 現在のSOCが一定範囲内であれば算出されたエンジン目標トルクにエンジンを制御し、
アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行のとき、一定のSOC以上でエンジンとモーターの間のクラッチをオフにし、クラッチオフの基準となるSOCは、
走行路の傾斜度によって、走行路が平地の場合と比較して、 走行路が上り坂の場合は最も高く、下り坂の場合は最も低くすることを特徴とする。
【0017】
前記一定範囲以上で前記現在のSOCが高くなるほど
前記エンジン目標トルク
の大きさを
より大きく下げ、
前記一定範囲以下で前記現在のSOCが低くなるほど
前記エンジン目標トルク
の大きさを
より大きく上げ、走行路が上り坂のときは、平地や下り坂の場合より
前記エンジン目標トルクを低くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のハイブリッド車両の走行モード制御方法によれば、エンジンの頻繁な起動/停止を防止して、それによる燃費節減の効果がある。
また、エンジンとクラッチを保護することができ、バッテリー充電量を有効に確保することができる。そして、車速や傾斜度によってそれぞれ異なるマップを持って動力制御を行うので、燃費の向上と運転質感の向上及び車両の耐久安定化を同時に成すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るハイブリッド車両の運転制御方法の一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】ハイブリッド車両の運転制御方法の走行モードを示す図である。
【
図3】ハイブリッド車両の運転制御方法の別のブロック図である。
【
図4】本発明によるハイブリッド車両の運転制御方法の効果を示すグラフである。
【
図5】本発明によるハイブリッド車両の運転制御方法の効果を示すグラフである。
【
図6】本発明によるハイブリッド車両の運転制御方法の効果を示すグラフである。
【
図7】本発明によるハイブリッド車両の運転制御方法の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るハイブリッド車両の運転制御方法について、好適な実施形態を挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、ハイブリッド車両の運転制御方法のブロック図、
図2は、走行モードを示す図、
図3は、ハイブリッド車両の運転制御方法の別の実施形態でのブロック図である。
【0021】
本発明のハイブリッド車両の運転制御方法は、高領域/中領域/低領域のSOC領域、及びそれぞれのSOC領域に相応するエンジン目標トルクを備えたハイブリッド車両の運転制御方法であって、現在のSOCからエンジン目標トルクを算出し、現在のSOCが一定範囲以上のときエンジン目標トルクを下げ、SOCが一定範囲以下のときエンジン目標トルクを上げる。
【0022】
本発明のハイブリッド車両の運転制御方法は、SOC領域を高領域/中領域/低領域に分け、高領域/中領域/低領域のSOC領域は、さらに車速によって細分化した細部領域に区分し、各細部領域毎にエンジン目標トルクが設定できる。
図1は、ハイブリッド車両の運転制御方法のブロック図で、エンジン目標トルクマップが高領域/中領域/低領域のSOC領域に分けられ、これらはさらに高高領域(VERY HIGH)/高領域(HIGH)/中高領域(NORMAL HIGH)/中低領域(NORMAL LOW)/低領域(LOW)/低低領域(VERY LOW)に区分される。そして、各領域では、車速によってさらに細分化(一般、高速、都心など)する。
【0023】
すなわち、エンジン目標トルクは、現在のSOCと車速を共に考慮して算出するもので、SOCと車速を入力とし、各細部領域にあたるエンジン目標トルクを出力とするデータマップによって現状況での最適のエンジントルクを出力していく。
【0024】
このように、現在のSOCと車速を考慮し、エンジン目標トルクマップを用いてエンジンの目標トルクを算出しても精細に調整する必要がある。現在のSOCが一定範囲以上のときエンジン目標トルクを下げ、SOCが一定範囲以下のときエンジン目標トルクを上げる。
【0025】
すなわち、エンジン目標トルクをSOCの変動に拘わらず一様にするときには、SOCが高い場合には予め最適化した目標エンジントルクで出力されるが、車両の耐久性、運転者の偏差、運転者搭乗人員によって走行負荷が変わって、より高いSOC領域に進む可能性があり、SOCが低い場合は高負荷の条件で車両の耐久性、運転者の偏差、運転者搭乗人員によって走行負荷が過多になると、目標エンジントルクに比べて過度な使用によってSOCが大きく落ちる可能性がある。
【0026】
したがって、平均車速と傾斜角による走行負荷条件を確認し、SOC状態によってエンジントルクを補償する可変制御を行うことで、現在のSOCが一定範囲以上の高SOCのときには、走行負荷によってエンジントルクを下向きに可変制御してSOCが充電されないように調節し、燃費を向上させる。一方、現在のSOCが一定範囲以下の低SOCのときには、走行負荷によってSOCが低いSOC領域に進入すると、まずエンジントルクを補償する制御を実施してSOCの急激な下落を防止するようにする。
図4はこのようなエンジン目標トルクの制御を示すもので、SOCが一定範囲以下である45〜70%以上のときはエンジン目標トルクを徐々に下げ、以下のときはエンジン目標トルクを徐々に上げる。
【0027】
走行路が上り坂でSOCが一定値以上のときは、エンジン目標トルクを下げるが、傾斜が大きくなるほどエンジン目標トルクの減少度を大きくする。走行路が下り坂の場合、傾斜が大きくなるほどエンジンの停止時点が早くなるようにする。
【0028】
このような上り坂や下り坂の状況は、予め備えられた走行負荷別走行モードを参照して反映することができる。具体的に、
図2は本発明によるハイブリッド車両の運転制御方法の走行モードを示す図であり、車速と走行路の傾斜を考慮して複数の精細な走行モードを設け、それぞれの優先順位を決めておくことが可能である。
【0029】
すなわち、走行モードは、車速によって区分されるモードと走行路の傾斜によって区分されるモードとからなっている。車速と走行路の傾斜を入力し、走行モードを出力とするデータマップが備えられ、データマップには車速と傾斜にマッチする各場合毎に車速によって区分されるモードまたは傾斜によって区分されるモードのいずれか一方を優先して結果として保存することができる。
【0030】
図示している例は、車速が非常に遅い極渋滞の場合と傾斜が一般平地の場合では、車速によって区分される走行モードを選択して制御し、その他の場合は傾斜によって区分される走行モードを選択して運用するようにするものである。
【0031】
走行モードを参照することで傾斜度が分かり、これを考慮して、走行路が上り坂でSOCが一定値以上の場合は、エンジン目標トルクを下げるが、傾斜が大きくなるほどエンジン目標トルクの減少度を大きくする。
図5はこのような制御状況を示すもので、SOCが55%以上の状況では、上り坂ではエンジン目標トルクを徐々に下げ、傾斜が大きくなったとき、つまり上り坂の勾配が大きくなるほどエンジン目標トルクをより下げるようにする。
【0032】
これは上り坂走行中に車両負荷が小さい場合にSOC充電することがあり、上り坂の後の下り坂走行の際にSOC充電を行って燃費の悪化が発生するが、平均車速と傾斜角による走行負荷条件を確認し、SOC状態によってエンジントルクを可変制御することで、上り坂走行時のSOC状態によってエンジントルクを可変制御して、その後の下り坂走行時に発生する充電状況に備えてSOCを適正水準(55%)に維持するように制御することができる。
【0033】
下り坂の場合は、傾斜が大きくなるほどエンジンの停止時点が早くなるようにすることで電気自動車モード(EVモード)がより早く開始するようにする。従来では、下り坂走行の際には、EVで走行することができる状況でもEVに進入しないと、エンジン最適運転点を目標としてエンジントルクを制御するときに燃費の悪化が発生(エンジンでは最適運転点であるが、目標トルクが高くて燃料消耗量が多い)したが、このような可変制御によってEVへの進入を早く進めて無駄な燃費悪化を防止することができる。
【0034】
車速によって極渋滞、都心、一般などのモードを判断するにあたり、車速だけでなく車両の停車回数も一緒に考慮すると、より正確なモードの判断が可能となる。すなわち、車速が非常に速いといっても停車回数が前もって備えた一定基準以上の場合には市内走行と見なして“都心”モードと判断し、車速が非常に遅くても停車しない場合には高速道路走行と見なして“高速”モードに判断する。このように、車速と停車回数を考慮してモードを判断することで、車速によって区分されるより正確なモードの判断が可能となる。
【0035】
図3は、本発明によるハイブリッド車両の運転制御方法の別のブロック図であり、アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行の場合、車速が増すほどモーターのクリープトルクを負の方向に大きくするようにする。すなわち、アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない場合は、車両が走行する車速による慣性走行を行う。この場合、車速が高い状態であればあるほどモーターのクリープトルクを負の方向に大きくする。モーターのクリープトルクを負の方向にするというのは、回生制動によって減速されることを意味し、車速が高くて慣性が高いほどそのクリープトルクを負の方向に増加させて回生制動と減速がより円滑に行われるようにする。
【0036】
図6のように車速がさらに高い状況で慣性走行を行う場合には、モーターのクリープトルクを負の方向に徐々に大きくする。特に走行路が上り坂のとき、平地の場合より緩やかに大きくし、走行路が下り坂のとき、平地の場合より急に大きくするようにする。これにより、上り坂ではモーターのクリープトルクが相対的に小さく、減速と回生が不十分になり、下り坂ではモーターのクリープトルクが相対的に大きくなって制動操作が減少して車両の耐久に有利であり、回生と減速をすることが可能となる。それにより、運転者がもつ、上り坂と下り坂で減速に対する違和感をなくす効果も得ることができる。
【0037】
アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行の場合、一定SOC以上でエンジンとモーターの間のクラッチをオフするとともに車速が高いほどクラッチオフの基準となる一定SOCが徐々に低くなるようにすることができる。すなわち、一般的なハイブリッド車両の場合、エンジンはクラッチを介してモーターに連結され、モーターは駆動軸に直結される。そして、エンジンにはクラッチとは反対側にスタートモーター/ジェネレーター(HSG)が備えられる。クラッチをオフせずに慣性走行を行う場合は、エンジンの最小駆動によってモーターとHSGは同時にバッテリーに回生による充電を行うようにする。
【0038】
したがって、アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行の場合、一定のSOC以上でエンジンとモーターの間のクラッチをオフさせ、頻繁なクラッチのオン/オフによる駆動損失を防止し、特に車速が高いほどクラッチオフの基準となるSOCが徐々に低くなるようにすることで、車速が高いときはクラッチが
オフされる時間を長くする。
【0039】
アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行の場合、一定のSOC以上でエンジンとモーターの間のクラッチをオフするとともに、クラッチオフの基準となるSOCは走行路が上り坂の場合が高く、下り坂の場合が低くなるようにすることができる。
【0040】
これは、
図7のグラフで示すように、アクセルペダルと制動ペダルのいずれも踏まない慣性走行において一定のSOC以上のとき、つまりグラフにおいてSOC境界線を超える場合にクラッチがオフすると言える。しかし、このような基準となるSOCラインは、上り坂のときは高く、下り坂のときは低くなるようにし、車速が高いほどSOCラインが低くなるようにする。
【0041】
これにより、クラッチのオン/オフとエンジンの頻繁なオン/オフを防止し、HSGによる充電をさらに行うことでSOCを上昇させるようにする。
【0042】
上述したような構造のハイブリッド車両の走行モード制御方法によれば、頻繁なエンジンの起動/停止を防止し、それによる燃費節減の効果がある。
また、エンジンとクラッチを保護することができ、バッテリーの充電量を有効に確保することができる。そして、車速や傾斜度によってそれぞれ異なるマップを持って動力制御を行い、燃費の向上と運転質感の向上及び車両耐久安定化を同時に達成することができる。
【0043】
以上、本発明のハイブリッド車両の運転制御方法について、特定の実施形態を挙げて図示し、説明したが、特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を外れない限度内において、本発明に多様な改良及び変化を加え得るのは、当業界における通常の知識を有する者には自明であろう。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、車速と傾斜度を用いてハイブリッド車両のSOC管理方法を可変的に具現することで、車両のエネルギー活用能力をより能動的で知能化して効率的なエネルギー使用で車両の燃費をもっと向上させるようにしたハイブリッド車両に適用可能である。