特許第6585879号(P6585879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585879
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/48 20060101AFI20190919BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   E04B5/48 B
   E04B5/43 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-9552(P2014-9552)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-137487(P2015-137487A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月21日
【審判番号】不服2018-10344(P2018-10344/J1)
【審判請求日】2018年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋介
(72)【発明者】
【氏名】有竹 剛
(72)【発明者】
【氏名】岩間 和博
(72)【発明者】
【氏名】若林 博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由紀子
【合議体】
【審判長】 森次 顕
【審判官】 秋田 将行
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−183424(JP,A)
【文献】 特開2005−213940(JP,A)
【文献】 特開2005−220703(JP,A)
【文献】 特開平10−96329(JP,A)
【文献】 特開平9−203220(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0102369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B5/43
E04B5/48
E04B5/32
E04H1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平二方向に配列された複数の柱と、
前記複数の柱に支持されたコンクリートスラブと、
前記複数の柱の外側に設けられた耐震架構と、
を備え、
前記コンクリートスラブには、互いに隣接する4本の前記柱で囲まれる床領域が隣接して連続して形成され、
前記床領域の中央部には、少なくとも一つの開口部がそれぞれ形成され
前記複数の柱の配列方向が、前記耐震架構に対して傾斜している、
構造物。
【請求項2】
前記コンクリートスラブが複数階に設けられ、
前記複数階のコンクリートスラブの前記床領域にそれぞれ形成された前記開口部が、平面視にて重なっている、
請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記水平二方向のうち、水平一方向に配列された前記柱の間隔をLaとし、水平他方向に配列された前記柱の間隔をLbとしたときに、
前記開口部は、前記床領域の中央部に設定された仮想矩形領域に形成され、
前記仮想矩形領域は、一辺が前記水平一方向に沿うと共に該一辺の長さがLa/2とされ、他辺が前記水平他方向に沿うと共に該他辺の長さがLb/2とされている、
請求項1又は請求項2に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートスラブには、例えば、洗面台等の水廻り設備用の縦配管が挿入される開口部(例えば、特許文献1,2参照)や、照明機器等が設置される開口部(例えば、特許文献3参照)が形成される。
特許文献1では、洗面台等の水廻り設備の近傍に縦配管が挿入される開口部を水廻り設備毎に複数に設けている。或いは、開口部を複数設けない場合には、水廻り設備から縦配管までの横引き配管の距離を長くして配管している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−162952号公報
【特許文献2】特開平11−200434号公報
【特許文献3】特開2006−077421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンクリートスラブに開口部を形成すると、耐力及び剛性が低下し、開口部に対する補強が増加する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、耐力及び剛性の低下を低減しつつ、コンクリートスラブに開口部を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る構造物は、水平二方向に配列された複数の柱と、前記複数の柱に支持されたコンクリートスラブと、を備え、前記コンクリートスラブが、互いに隣接する4本の前記柱で囲まれると共に中央部に少なくとも一つの開口部が形成された床領域を有する。
【0007】
第1態様に係る構造物によれば、複数の柱が水平二方向に配列されている。これらの柱には、コンクリートスラブが支持されている。
【0008】
ここで、地震時には、主として柱の配列方向に沿ってコンクリートスラブに地震力が流れる。そのため、隣接する柱間に開口部を形成すると、コンクリートスラブの耐力及び剛性の低下が課題となる。
【0009】
これに対して本発明では、互いに隣接する4本の柱で囲まれたコンクリートスラブの床領域の中央部に、少なくとも一つの開口部が形成されている。つまり、地震力が流れる柱間(柱列帯)を避けた床領域の中央部に、少なくとも一つの開口部が形成されている。したがって、コンクリートスラブの耐力及び剛性を確保できる。
【0010】
また、本発明では、コンクリートスラブの床領域の中央部に、少なくとも一つの開口部が設けられている。これにより、縦配管から水廻り設備(トイレ、洗面台等)までの横引き配管の距離を短くすることができる。
【0011】
第2態様に係る構造物は、第1態様に係る構造物において、前記コンクリートスラブが複数階に設けられ、前記複数階のコンクリートスラブの前記床領域にそれぞれ形成された前記開口部が、平面視にて重なっている。
【0012】
第2態様に係る構造物によれば、コンクリートスラブが複数階に設けられている。そして、複数階のコンクリートスラブの床領域にそれぞれ形成された開口部が平面視にて重なっている。これにより、各コンクリートスラブに形成された開口部を介して、例えば設備用の縦配管を複数階に亘って直線的に敷設することができる。また、例えば、開口部を採光窓(例えば、天窓など)として使用する場合には、各コンクリートスラブの開口部を介して複数階に亘って光を取り入れ易くなる。
【0013】
第3態様に係る構造物は、水平二方向に配列された複数の柱と、前記複数の柱に支持されたコンクリートスラブと、を備え、前記コンクリートスラブが、互いに隣接する4本の前記柱で囲まれ、かつ中央部に少なくとも一つの開口部がそれぞれに形成された床領域を複数有する。
【0014】
第3態様に係る構造物によれば、水平二方向に複数の柱が配列されている。これらの柱には、コンクリートスラブが支持されている。
【0015】
ここで、地震時には、主として柱の配列方向に沿ってコンクリートスラブに地震力が流れる。そのため、隣接する柱間に開口部を形成すると、コンクリートスラブの耐力及び剛性の低下が課題となる。
【0016】
これに対して本発明では、互いに隣接する4本の柱で囲まれたコンクリートスラブの床領域の中央部に、少なくとも一つの開口部が形成されている。つまり、地震力が流れる柱間(柱列帯)を避けた床領域の中央部に、少なくとも一つの開口部が形成されている。したがって、コンクリートスラブの耐力及び剛性を確保できる。
【0017】
また、本発明のコンクリートスラブは、開口部がそれぞれに形成された床領域を複数有している。これらの開口部に設備用の縦配管を必要に応じて、かつ適宜な近傍に位置する開口部を選択して敷設することにより、縦配管から水廻り設備(トイレ、洗面台等)までの横引き配管の距離を短くすることができる。
【0018】
第4態様に係る構造物は、第1態様第3態様の何れか1つに係る構造物において、前記複数の柱の外側に設けられた耐震架構を備え、前記複数の柱の配列方向が、前記耐震架構に対して傾斜している。
【0019】
第4態様に係る構造物によれば、複数の柱の外側に耐震架構が設けられている。この場合、構造物全体としては、主として耐震架構に沿って地震力が流れる。そのため、一般的には、耐震架構に対して平行及び直交する水平二方向に複数の柱が配列される。
【0020】
これに対して本発明では、複数の柱の配列方向が耐震架構に対して傾斜している。このような本発明の柱割は、例えば耐震架構に対して平行及び直交する水平二方向に複数の柱を配列する一般的な柱割をベースとし、各方向について柱を1本おきに省略することにより形成される。この場合、省略した柱位置が、互いに隣接する4本の柱で囲まれた床領域の略中心(略図心)となる。つまり、省略した柱位置は、地震力を大きく負担しない領域となる。したがって、省略した各柱位置に開口部を形成することにより、コンクリートスラブの耐力及び剛性を確保しつつ、当該コンクリートスラブに複数の開口部を均等に形成することができる。
【0021】
第5態様に係る構造物は、第1態様第4態様の何れか1つに係る構造物において、前記水平二方向のうち、水平一方向に配列された前記柱の間隔をLaとし、水平他方向に配列された前記柱の間隔をLbとしたときに、前記開口部は、前記床領域の中央部に設定された仮想矩形領域に形成され、前記仮想矩形領域は、一辺が前記水平一方向に沿うと共に該一辺の長さがLa/2とされ、他辺が前記水平他方向に沿うと共に該他辺の長さがLb/2とされている。
【0022】
第5態様に係る構造物によれば、仮想矩形領域は、床領域の中央部に設定されている。この仮想矩形領域は、水平二方向のうち、水平一方向に配列された柱の間隔をLaとし、水平他方向に配列された柱の間隔をLbとしたときに、上記水平一方向に沿った一辺の長さがLa/2とされ、上記水平他方向に沿った他辺の長さがLb/2とされている。この仮想矩形領域に開口部を形成することにより、床領域の耐力及び剛性を確保できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る構造物によれば、耐力及び剛性の低下を低減しつつ、コンクリートスラブに開口部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る構造物の所定階を示す平面図である。
図2図1の一部拡大平面図である。
図3図1に示される構造物の縦断面図である。
図4図1に示されるコンクリートスラブの縦断面図である。
図5図1に示される所定階の柱割の変形例を示す図2に相当する拡大平面図である。
図6図1に示されるコンクリートスラブのスラブ筋の配筋例を示す平断面図である。
図7図1に示されるコンクリートスラブのスラブ筋の他の配筋例を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る構造物について説明する。なお、各図において適宜示される矢印X及び矢印Yは、互いに直交する水平二方向を示している。
【0026】
図1には、本実施形態に係る構造物10の所定階が示されている。構造物10は、例えば、設備配管が多く、且つ間取り変更や用途変更等の更新性が求められる病院や研究施設、工場、集合住宅等として使用される。この構造物10は複数階からなり、その外周部に耐震要素が集約されている。これにより、間取り変更や用途変更等の自由度が高められている。
【0027】
具体的には、構造物10の外周部は、複数の耐震架構12X,12Yが設けられている。耐震架構12Xは矢印X方向に沿って配置され、耐震架構12Yは矢印Y方向に沿って配置されている。各耐震架構12X,12Yは、柱(外周柱)14及び梁(外周梁)16を有している。
【0028】
各耐震架構12X,12Yには、図示しない耐震壁やブレース等が適宜設けられており、大きな地震力を負担可能になっている。そのため、地震時には、主として耐震架構12X,12Y(矢印X方向及び矢印Y方向)に沿って地震力が流れる。なお、耐震架構12X,12Yは、壁柱や壁梁等で形成することも可能である。また、耐震架構12X,12Yは、構造物10の四周に設けても良い。
【0029】
構造物10の内部には、一例として、一対の廊下18と、図示しない間仕切壁等によって複数の部屋に区画される部屋領域20とが設けられている。一対の廊下18は、耐震架構12Xに沿って矢印X方向にそれぞれ延びている。この一対の廊下18の間に、部屋領域20が設けられている。なお、一対の廊下18と部屋領域20とは、矢印X方向に沿って配置された複数の架構22によって区画されている。各架構22は、柱24及び梁26を有している。また、対向する柱14と柱24とには、梁17がそれぞれ架設されているが、これらの梁17は省略可能である。
【0030】
部屋領域20には、複数の柱30及び複数のパイプシャフト(ライフシャフト)32が設けられている。これらの柱30及びパイプシャフト32は、千鳥状に配列されている。複数の柱30は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で形成されており、複数階のコンクリートスラブ40を支持している。
【0031】
ここで、部屋領域20の柱割は、例えば、耐震架構12Xに対して平行及び直交する水平二方向(矢印X方向及び矢印Y方向)に複数の柱30を略等間隔で配列する一般的な柱割をベースとし、各方向について柱30を1本おきに省略することにより形成されている。そして、柱30を省略した位置に、パイプシャフト32が設置されている。
【0032】
このように1本おきに柱30を省略した場合、耐震架構12X,12Yに対して所定の傾斜角度θ(本実施形態では略45度)で傾斜する水平二方向(本実施形態では互い直交する矢印S方向及び矢印T方向)に複数の柱30が配列されることになる。より具体的には、上記のように1本おきに柱30を省略すると、図2に示されるように、中央のパイプシャフト32を挟んで矢印X方向、矢印Y方向に隣接する柱30の間隔よりも、矢印S方向、矢印T方向に隣接する柱30の間隔La,Lbが狭くなる。そのため、柱30の配列方向が、矢印X方向及び矢印Y方向から矢印S方向及び矢印T方向に変更される。
【0033】
なお、ここでいう「柱30の配列方向」とは、所定の柱30と直近の柱30とを結ぶ直線の方向を意味し、本実施形態では矢印S方向及び矢印T方向がこれに相当する。そして、柱30の配列方向に沿ったコンクリートスラブ40の部位(以下、この部位を「柱列帯40S,40T」という)に地震力が流れる。
【0034】
図3に示されるように、各階のコンクリートスラブ40の上には、部屋領域20の床を形成するパネル状の床材42が敷設されている。床材42は、図示しない支柱を介してコンクリートスラブ40に支持されている。つまり、部屋領域20には、二重床構造が適用されている。これにより、床材42とコンクリートスラブ40との間に、各種の配管や配線が敷設可能な床下スペース44が形成されている。なお、図1及び図2では、床材42の図示が省略されている。
【0035】
床材42の上には、上下方向に延びる縦配管34を収納するパイプシャフト32が立てられている。パイプシャフト32は、上下方向に延びると共に断面略矩形の筒状に形成されており、コンクリートスラブ40に形成された設備用の開口部46上に配置されている。
【0036】
また、パイプシャフト32は、その下端部が床下スペース44に接続されると共に、その上端部が上階のコンクリートスラブ40と天井材48との間に形成された天井内スペース50に接続されている。これにより、コンクリートスラブ40の開口部46、床下スペース44、パイプシャフト32、及び天井内スペース50を介して、縦配管34が複数階に亘って敷設可能になっている。また、隣接階のコンクリートスラブ40に形成された開口部46同士は、平面視にて少なくとも一部が重なっている。これにより、隣接階の開口部46を介して縦配管34が複数階に亘って直線的に敷設可能になっている。なお、開口部46が仮想矩形領域40Vの範囲内に設けられる限り、開口部46同士が平面視にて重ならなくとも好適に実施できる。
【0037】
縦配管34には、横引き配管54を介して床材42上に設置されたトイレや洗面台等の水廻り設備52が接続されている。横引き配管54は、床下スペース44に敷設されている。この横引き配管54には、水廻り設備52から縦配管34へ排水が流れ易いように排水勾配が付けられている。
【0038】
なお、本実施形態では、全てのパイプシャフト32及び開口部46に縦配管34が敷設されているわけではなく、縦配管34が敷設されていない予備のパイプシャフト32及び開口部46が設けられている。これらの予備のパイプシャフト32及び開口部46には、水廻り設備52の配置変更等に伴って縦配管34が適宜敷設される。
【0039】
また、コンクリートスラブ40は、梁に支持されないRC造のフラットスラブとされている。これにより、コンクリートスラブ40が順梁で支持された構成と比較して、天井内スペース50の必要高さHが低くなっている。なお、天井内スペース50には、各種の配線や配管が敷設可能になっている。
【0040】
さらに、コンクリートスラブ40は、図4に示されるように、内部に軽量化用の複数の中空材56が埋設されたボイドスラブとされている。これにより、コンクリートスラブ40のロングスパン化を可能しつつ、その撓み量が最小限に抑えられている。なお、中空材56には、発砲スチロールや鋼管などを用いることができる。また、中空材56の形状は、断面楕円形に限らず、例えば、円形断面であっても良い。
【0041】
また、柱30の柱頭部には、スラブ厚を一部大きくした変厚部(キャピタル)を設けても良い。また、コンクリートスラブ40は、フラットスラブに限らず、柱30間に架設された梁に支持されていても良い。さらに、コンクリートスラブ40は、ボイドスラブに限らず、例えば、中空材56がない無垢スラブとしても良いし、プレストレスが導入されたプレストレスコンクリートスラブとしても良い。
【0042】
ここで、コンクリートスラブ40の開口部46について説明する。
【0043】
図2に示されるように、各階のコンクリートスラブ40は、互いに隣接する4本の柱30で囲まれた複数の床領域Rを有している。なお、ここでいう床領域Rとは、互いに隣接する4本の柱30の材軸を結ぶ矩形の領域(点線内の領域)を意味する。この床領域Rの中央部には、前述した柱列帯40S,40Tによって囲まれた仮想矩形領域40Vが設定される。
【0044】
柱列帯40S,40Tは、矢印S方向及び矢印T方向にそれぞれ延びている。これらの柱列帯40S,40Tは、例えば、以下の領域として設定される。すなわち、矢印S方向に配列された柱30の間隔をLaとすると、柱列帯40Tは、柱30の材軸から両側へそれぞれLa/4の幅(=2×La/4)を有する帯状領域として設定される。これと同様に、矢印T方向に配列された柱30の間隔をLbとすると、柱列帯40Sは、柱30の材軸から両側へそれぞれLb/4の幅(=2×Lb/4)を有する帯状領域として設定される。
【0045】
上記のように柱列帯40S,40Tを設定した場合、これらの柱列帯40S,40Tによって囲まれた仮想矩形領域40Vでは、矢印S方向(水平一方向)に沿った一辺40V1の長さがLa/2となり、矢印T方向(水平他方向)に沿った他辺40V2の長さがLb/2となる。この仮想矩形領域40V内に、開口部46が形成される。つまり、本実施形態では、柱列帯40S,40Tを避けた床領域Rの中央部に開口部46が形成される。
【0046】
なお、開口部46は、仮想矩形領域40Vの少なくとも一部に形成することができる。つまり、仮想矩形領域40Vには、その全域に亘る一つの大きな矩形の開口部を形成しても良い。また、開口部46の形状や数は適宜変更可能であり、例えば、矩形の開口部を仮想矩形領域40Vに形成しても良いし、複数の開口部を仮想矩形領域40V内に形成しても良い。さらに、ここでいう「開口部」とは、必ずしもコンクリートスラブ40の一部が開放された部分をいうものではなく、事前に開口部を設けた上で、コンクリート製等の蓋部材にて閉鎖された開口部、或いは、仮想矩形領域40Vの範囲内に設けられ、建造当初は開放されていない開口部(供用を開始した後に形成された開口部)も含むものとする。
【0047】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0048】
図1には、複数の部屋に区画される部屋領域20が示されている。この部屋領域20には、複数の柱30及びパイプシャフト32が千鳥状に配列されている。つまり、部屋領域20には、水平二方向(矢印S方向及び矢印T方向)にパイプシャフト32が略等間隔で配列されている。
【0049】
これにより、図3に示されるように、所定の水廻り設備52から直近のパイプシャフト32内の縦配管34までの距離Dが短くなるため、これらの水廻り設備52と縦配管34とを接続する横引き配管54の長さが短くなる。したがって、二点鎖線で示されるように横引き配管54の長さが長い場合と比較して、床下スペース44の必要高さHを低くすることができる。よって、構造物10の階高を低くすることができる。
【0050】
また、隣接階のコンクリートスラブ40に形成された開口部46同士は、平面視にて少なくとも一部が重なっている。これにより、隣接階のコンクリートスラブ40に形成された開口部46を介して、縦配管34を複数階に亘って直線的に敷設することができる。なお、開口部46が仮想矩形領域40Vの範囲内に設けられる限り、開口部46同士が平面視にて重ならなくとも好適に実施できる。
【0051】
さらに、本実施形態では、コンクリートスラブ40がフラットスラブとされている。これにより、コンクリートスラブ40の下面から天井内スペース50に梁型が突出しないため、天井内スペース50の必要高さHを低くすることができる。したがって、構造物10の階高をさらに低くすることができる。
【0052】
しかも、本実施形態では、部屋領域20に予備のパイプシャフト32が設けられると共に、コンクリートスラブ40に予備の開口部46が形成されている。そのため、例えば、部屋領域20の間取り変更や用途変更に伴って水廻り設備52が配置変更されたり、新設されたりした場合であっても、予備のパイプシャフト32及び開口部46に縦配管34を適宜敷設することにより、縦配管34から水廻り設備52までの距離Dを短くすることができる。したがって、部屋領域20の間取り変更や用途変更等の更新性を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態では、図2に示されるように、コンクリートスラブ40の床領域Rの中央部には、柱列帯40S,40Tによって囲まれた仮想矩形領域40Vが設定されており、この仮想矩形領域40V内に、縦配管34を通すための開口部46が形成されている。このように地震力が流れる柱列帯40S,40Tを避けた仮想矩形領域40Vに開口部46を形成することにより、コンクリートスラブ40の耐力及び剛性を確保することができる。
【0054】
また、部屋領域20の柱割は、耐震架構12Xに対して平行及び直交する水平二方向(矢印X方向及び矢印Y方向)に複数の柱30を配列する一般的な柱割をベースとし、各方向について柱30を1本おきに省略することにより形成される。この場合、省略した柱30の位置が、互いに隣接する4本の柱で囲まれた床領域Rの略中心(略図心)となる。つまり、省略した柱30の位置(パイプシャフト32に相当)は、地震力を大きく負担しない領域となる。したがって、省略した柱30の位置に開口部46を形成することにより、コンクリートスラブ40の耐力及び剛性を確保しつつ、複数の開口部46(縦配管34)を水平二方向(矢印S方向及び矢印T方向)に略等間隔で配列することができる。
【0055】
なお、上記のように柱30を1本おきに省略した場合に、耐震架構12X,12Yに対して傾斜する方向に柱30が配列されるための条件は、次のとおりである。すなわち、図5に示されるように、矢印X方向及び矢印Y方向に隣接する柱30の間隔をそれぞれL,Lとすると、L,L>L,Lとなる。
【0056】
また、上記条件を別の式で表現すると、次のようになる。すなわち、ベースとなる柱30の矢印X方向及び矢印Y方向の間隔をmX,とすると、m≦m<(31/2)mとなる。また、図5から分かるように、耐震架構12X,12Yに対する柱30の配列方向の傾斜角度θ(図1も参照)は、30°<θ<60°となる。これらの条件を満たす範囲内で、耐震架構12X,12Yに対して柱30の配列方向を適宜傾斜させることができる。なお、mX,は、大小関係が逆となっても良い。
【0057】
また、コンクリートスラブ40のスラブ筋の配筋方法について補足すると、図6に示されるように、コンクリートスラブ40のスラブ筋60は、例えば、柱30の配列方向(矢印S方向及び矢印T方向)に沿って配筋される。この際、地震力が流れる柱列帯40S,40Tでは、他の部位よりもスラブ筋60のピッチを狭くしたり、鉄筋径を太くしたりしても良い。この図6に示される例では、スラブ筋60の配筋量が少ない位置に開口部46が形成されることになるため、コンクリートスラブ40の耐力及び剛性を合理的に確保することができる。なお、開口部46の周辺部は、適宜補強しても良い。また、符号62は、柱30の柱脚部や、柱頭部を補強する補強筋である。
【0058】
また別の例では、図7に示されるように、矢印X方向及び矢印Y方向に沿ってスラブ筋60が配筋される。この際、スラブ筋60の配筋量等は、例えば、柱列帯40Tに沿って流れる地震力Pを矢印X方向の分力Pと矢印Y方向の分力Pに分割し、これらの分力PX,に応じて適宜設定すれば良い。この図7に示される例では、スラブ筋60の配筋方向が耐震架構12X,12Yや架構22と同じ方向となり、容易に配筋することができるため、施工性が向上する。
【0059】
なお、柱列帯40S,40Tは、そのスラブ厚を部分的に厚くすることも可能である。
【0060】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0061】
上記実施形態では、部屋領域20に複数のパイプシャフト32を矢印S方向及び矢印T方向に略等間隔で配列した例を示したが、パイプシャフト32の配置や数は適宜変更可能である。また、上記実施形態では、部屋領域20に、縦配管34が敷設されていない予備のパイプシャフト32及び開口部46を設けた例を示したが、これらの予備のパイプシャフト32及び開口部46も適宜省略可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、コンクリートスラブ40の開口部46に縦配管34を通した例を示したが、これに限らない。設備用の開口部46には、配線や配管等の種々の設備材を通すことができる。さらに、開口部46は、天窓等の採光窓としても使用することができる。この場合、隣接階のコンクリートスラブ40に形成された開口部46同士を平面視にて重ねることにより、複数階に亘って光を取り入れることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、複数階のコンクリートスラブ40に(例えば、5階建ての構造物において、2階及び3階のコンクリートスラブ40に)開口部46をそれぞれ形成した例を示したが、これに限らない。例えば、所定階(例えば、3階)のコンクリートスラブ40にある複数の床領域40Rに、開口部46をそれぞれ形成しても良いし、所定階(例えば、3階)のコンクリートスラブ40にある一つの床領域40Rにのみ開口部46を形成しても良い。
【0064】
さらに、上記実施形態では、柱30の外側(柱30よりも構造物10の外周側)に設けられた耐震架構12X,12Yに対して、複数の柱30の配列方向を傾斜させた例を示したが、これに限らない。柱30の配列方向は、耐震架構12X,12Yに対して傾斜していなくても良い。
【0065】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
10 構造物
12X 耐震架構
12Y 耐震架構
30 柱
40 コンクリートスラブ
40V 仮想矩形領域
40V1 一辺
40V2 他辺
46 開口部
R 床領域
矢印S 柱の配列方向(水平二方向)
矢印T 柱の配列方向(水平二方向)
La 矢印S方向に配列された柱の間隔
Lb 矢印T方向に配列された柱の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7