特許第6585881号(P6585881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585881
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】観覧席
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/12 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   E04H3/12 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-75666(P2014-75666)
(22)【出願日】2014年4月1日
(65)【公開番号】特開2015-196993(P2015-196993A)
(43)【公開日】2015年11月9日
【審査請求日】2017年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英二
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 信哉
(72)【発明者】
【氏名】津山 皓司
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−177554(JP,U)
【文献】 特開平08−151814(JP,A)
【文献】 特開平07−247707(JP,A)
【文献】 実開平04−004152(JP,U)
【文献】 特開平11−125019(JP,A)
【文献】 米国特許第05379556(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/12−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールドの外周に設けられる固定レールと、
前記フィールドの外周に設けられ、前記固定レールに対して前記フィールド上へ引き出し可能な可動レールと、
前記固定レール及び前記フィールド上へ引き出された前記可動レール上を走行し、前記固定レール及び前記可動レールによってガイドされながら前記フィールド上へ引き出される可動席と、
を備え、
前記可動レールは、前記可動席の下から前記フィールド側へ引き出される、
観覧席。
【請求項2】
前記可動レールの引き出し方向の前側及び後側をそれぞれ支持する支持部材を備える、
請求項1に記載の観覧席。
【請求項3】
前記フィールドは、内側競技フィールドと、該内側競技フィールドの外側に設けられた外側競技フィールドとを有し、
前記可動レールは、前記外側競技フィールドを跨いで前記内側競技フィールド側へ引き出される、
請求項1または請求項2に記載の観覧席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観覧席に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、競技やイベントを行うフィールドの外周に設けられると共に、フィールド側へ引き出し可能な可動席が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−151814号公報
【特許文献2】特開平10−252299号公報
【特許文献3】特開平3−21775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可動席をフィールド側へ引き出す方法として、可動席にキャスター等の車輪を取り付けてフィールド面上を走行させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、可動席をフィールド面上で走行させると、可動席の重量によってフィールド面が傷む可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、フィールド面の傷みを低減しつつ、可動席をフィールド側へ引き出すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る観覧席は、フィールドの外周に設けられ、前記フィールド側へ引き出し可能な可動レールと、引き出された前記可動レール上を走行し、前記フィールド側へ引き出される可動席と、を備える。
【0008】
第1態様に係る観覧席によれば、可動席をフィールド側へ引き出す場合には、先ず、可動レールをフィールド側へ引き出す。次に、引き出された可動レール上で可動席を走行させる。これにより、可動席がフィールド側へ引き出される。
【0009】
このように可動席を可動レール上で走行させることにより、可動席をフィールド面上で走行させる場合と比較して、フィールド面の傷みを低減することができる。
【0010】
また、可動レールは、可動席よりも軽くすることができる。したがって、可動レールをフィールド側へ引き出すときに、例えば、可動レールにキャスター等の車輪を取り付けてフィールド面上を走行させても、可動席のようにフィールド面が傷むことはない。
【0011】
さらに、可動レールをフィールド側へ引き出し可能にしたことにより、可動席の可動範囲を広げることができる。
【0012】
第2態様に係る観覧席は、第1態様に係る観覧席において、前記可動レールの引き出し方向の前側及び後側をそれぞれ支持する支持部材を備える。
【0013】
第2態様に係る観覧席によれば、可動レールをフィールド側へ引き出した状態で、その引き出し方向の前側及び後側を支持部材によってそれぞれ支持する。これにより、例えば、可動レールの引き出し方向の中間部をフィールド面から浮き上らすことができる。したがって、可動席を可動レール上で走行させるときに、可動レールの中間部を介してフィールド面が傷むことを抑制することができる。
【0014】
第3態様に係る観覧席は、第1態様または第2態様に係る観覧席において、前記フィールドは、内側競技フィールドと、該内側競技フィールドの外側に設けられた外側競技フィールドとを有し、前記可動レールは、前記外側競技フィールドを跨いで前記内側競技フィールド側へ引き出される。
【0015】
第3態様に係る観覧席によれば、外側競技フィールドを跨いで可動レールを内側競技フィールド側へ引き出し、この可動レール上で可動席を走行させる。これにより、外側競技フィールド面の傷みを低減しつつ、可動席を内側競技フィールド側へ引き出して接近させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る観覧席によれば、フィールド面の傷みを低減しつつ、可動席をフィールド側へ引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)〜(C)は、本発明の一実施形態に係る観覧席を示す模式図である。
図2図1に示される観覧席を示す斜視図である。
図3】(A)及び(B)は、図1に示される可動レール、固定レール、及び可動席を可動レールの引き出し方向後側から見た後面図である。
図4】(A)及び(B)は、図1に示される可動レール、固定レール、及び可動席を示す側面図である。
図5】(A)及び(B)は、図1に示される可動レール、固定レール、及び可動席を示す側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る観覧席の変形例を示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る観覧席の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る観覧席について説明する。
【0019】
図1(A)〜図1(C)には、本実施形態に係る観覧席20が設けられた競技場(スタジアム)10が示されている。この競技場10では、中央部に設けられたフィールド12の外周に、複数の観覧席20が設けられている。このフィールド12は、内側競技フィールド12Aと、外側競技フィールド12Cとを有している。なお、外側競技フィールド12Cと内側競技フィールド12Aとの間には、予備フィールド12Bが設けられる。
【0020】
内側競技フィールド12Aは、例えば、競技場10の中央部に設けられ、サッカーや野球等の球技や各種のイベント等を行う領域(多目的スペース)である。この内側競技フィールド12Aには、例えば、人工芝や天然芝が敷設される。
【0021】
外側競技フィールド12Cは、内側競技フィールド12Aの外側(外周)に設けられている。この外側競技フィールド12Cは、例えば、内側競技フィールド12Aを囲む陸上競技用のトラックとされ、その表面が合成ゴム等で形成される。
【0022】
観覧席20は、外側競技フィールド12Cの外側(外周)に複数設けられる。これらの観覧席20は、外側競技フィールド12Cを囲むように設置される。各観覧席20は、固定レール60と、固定レール60に対して内側競技フィールド12A側へ引き出し可能な可動レール70と、1階席を構成すると共に可動レール70上を走行する可動席30と、可動席30の上方に設けられて2階席を構成する固定席22と、固定席22の上方へ張り出す屋根24とを備えている。
【0023】
この競技場10では、例えば、外側競技フィールド12Cで陸上競技が行われる場合は、図1(A)に示されるように、可動席30が固定席22の下の収納部26に収納される。一方、内側競技フィールド12Aで球技等が行われる場合には、図1(B)に示されるように、先ず、固定レール60に対して可動レール70を内側競技フィールド12A側へ引き出す。次に、図1(C)に示されるように、引き出された可動レール70上で可動席30を走行させ、内側競技フィールド12A側へ引き出す。これにより、可動席30の観客は、内側競技フィールド12Aで行われる球技等をより近くで観覧することができる。
【0024】
このように本実施形態では、フィールド12で行われる競技等に応じて、可動レール70及び可動席30が、固定席22の下側の収納位置(図1(A)の位置)と内側競技フィールド12A側の展開位置(図1(C)の位置)との間を移動するようになっている。
【0025】
以下、可動席30及び可動レール70の移動機構について具体的に説明する。
【0026】
<可動席>
図2に示されるように、可動席30は、可動席本体32と、可動席本体32の傾斜面上に設けられる複数の座席34とを備えている。可動席本体32の底部には、一対の外側フレーム36と、一対の内側フレーム38と、前側フレーム40と、後側フレーム42とが設けられている。
【0027】
一対の外側フレーム36は、後述する一対の固定レール60上に配置されており、その下面には一対の固定レール60の上に載置される複数の外側車輪44が設けられている。この一対の外側フレーム36の間に、一対の内側フレーム38が設けられている。
【0028】
一対の内側フレーム38は、後述する可動レール70の上に配置されており、その下面には可動レール70の上に載置される複数の内側車輪46(図3(A)参照)が設けられている。
【0029】
図3(A)に示されるように、後側フレーム42には、固定レール用連結装置48A及び可動レール用連結装置48Bが設けられている。各固定レール用連結装置48A及び可動レール用連結装置48Bは、後側フレーム42に固定される連結装置本体50と、連結装置本体50に上下方向に移動可能(スライド可能)に支持された連結ピン52とを有している。
【0030】
固定レール用連結装置48Aの連結ピン52は、固定レール60に形成された図示しない連結孔に挿入される。これにより、可動席30が固定レール60に連結(固定)されるようになっている。一方、可動レール用連結装置48Bの連結ピン52は、可動レール70に形成された図示しない連結孔に挿入される。これにより、可動席30が可動レール70に連結(固定)されるようになっている。
【0031】
なお、図示を省略するが、固定レール用連結装置48A及び可動レール用連結装置48Bは、可動席30の前側フレーム40等にも設けても良い。また、固定レール用連結装置48A及び可動レール用連結装置48Bは、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0032】
<固定レール>
図2に示されるように、可動席30の下には、一対の固定レール60が敷設されている。一対の固定レール60は、可動席30の移動方向(可動レール70の引き出し方向、矢印S方向)に沿って略平行に配置されており、収納部26の床26Aに固定されている。この一対の固定レール60の上には、可動席30の外側車輪44が載せられている。これにより、可動席30が一対の固定レール60に沿って移動可能になっている。なお、図3(A)に示されるように、固定レール60の上面には、可動席30の外側車輪44の脱落を抑制する一対のガイド部材62が設けられている。
【0033】
<可動レール>
図2に示されるように、一対の固定レール60の間には、可動レール70が配置されている。可動レール70は、平面視にて略矩形の枠状に形成されている。この可動レール70は、可動席30の移動方向に延びる一対のサイドフレーム72と、一対のサイドフレーム72の前端部同士を連結する図示しないフロントフレームと、一対のサイドフレーム72の後端部同士を連結するリヤフレーム74とを有している。
【0034】
図3(A)及び図3(B)に示されるように、一対のサイドフレーム72の下面には、収納部26の床26A面及び外側競技フィールド12C面に接地される複数の車輪76が設けられている。これにより、可動レール70が、収納部26の床26A面及び外側競技フィールド12C面上を走行可能になっている。なお、一対の固定レール60や収納部26の床26A等には、可動レール70を内側競技フィールド12A側へ案内するガイド等を適宜設けても良い。
【0035】
図4(A)に示されるように、可動レール70の引き出し方向(矢印S方向)の前側及び後側には、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rが設けられている。各前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rは、可動レール70に固定された昇降装置本体82と、昇降装置本体82に上下方向に移動可能に支持される支持部材84とを有している。
【0036】
昇降装置本体82は、例えば、モータ等の駆動源を有し、この駆動源が作動されることにより支持部材84が上下方向に移動(スライド)するようになっている。支持部材84は、柱状に形成されており、その下端部にベースプレート等が設けられている。
【0037】
ここで、図4(A)に示されるように、可動レール70を収納位置に位置させた状態で、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84をそれぞれ降ろすと、各支持部材84が収納部26の床26Aに形成された収納用固定孔86にそれぞれ挿入される。これにより、可動レール70が収納位置で固定される。
【0038】
一方、図4(B)に示されるように、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84をそれぞれ上昇させると、各支持部材84が収納用固定孔86からそれぞれ抜け出すと共に、可動レール70の車輪76が収納部26の床26Aに接地する。これにより、可動レール70の固定が解除され、図5(A)に示されるように、可動レール70が内側競技フィールド12A側の展開位置へ引き出し可能になる。
【0039】
また、図5(B)に示されるように、可動レール70を展開位置に位置させた状態で、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84をそれぞれ降ろすと、前側昇降装置80Fの支持部材84が予備フィールド12Bに形成された展開用固定孔88に挿入されると共に、後側昇降装置80Rの支持部材84がフィールド12側の収納用固定孔86に挿入される。これにより、可動レール70が展開位置で固定される。
【0040】
また、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84を展開用固定孔88及び収納用固定孔86の底壁にそれぞれ当接させた状態で支持部材84をさらに降ろすと、支持部材84に対して昇降装置本体82が上昇し、可動レール70(車輪76)が外側競技フィールド12C等から浮き上る。そして、図3(A)に示されるように、可動レール70のサイドフレーム72が可動席30の内側車輪46の接地位置まで上昇すると、可動席30が可動レール70及び固定レール60上を走行可能なる。
【0041】
なお、一対のサイドフレーム72の上面には、可動席30の内側車輪46の脱落を抑制する一対のガイド部材78が設けられている。また、収納用固定孔86及び展開用固定孔88には、支持部材84を固定する固定ピン等を適宜設けても良い。また、収納用固定孔86及び展開用固定孔88には、カバー(蓋)等を適宜設けても良い。
【0042】
次に、可動席30の引き出し方法の一例について説明する。
【0043】
図4(A)には、可動席30及び可動レール70が収納位置に位置する状態が示されている。この収納位置では、可動レール70に設けられた前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84が収納用固定孔86にそれぞれ挿入されており、可動レール70(車輪76)が宙に浮いた状態で支持されている。これにより、可動レール70が収納位置に固定されている。
【0044】
また、収納位置では、図3(A)に示されるように、可動席30の固定レール用連結装置48A及び可動レール用連結装置48Bの連結ピン52が、固定レール60及び可動レール70に形成された図示しない連結孔に挿入されている。これにより、固定レール60及び可動レール70に可動席30が連結され、固定レール60及び可動レール70に対して可動席30が移動しないようになっている。
【0045】
この状態から可動席30を内側競技フィールド12A側の展開位置へ移動させる場合は、先ず、可動席30の可動レール用連結装置48Bを作動し、可動レール70に形成された図示しない連結孔から連結ピン52を引き抜く。これにより、可動席30と可動レール70との連結状態が解除される。
【0046】
次に、図4(B)に示されるように、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84をそれぞれ上昇させ、収納用固定孔86から支持部材84をそれぞれ抜き出す。これにより、収納部26の床26Aに対する可動レール70の固定が解除される。また、可動レール70の車輪76が収納部26の床26Aに接地し、可動レール70が収納部26の床26A面上を走行可能になる。なお、この状態では、可動席30は、一対の固定レール60に支持されている。
【0047】
次に、図5(A)に示されるように、図示しないウィンチ等の駆動装置や人力等によって可動レール70を固定レール30に対して内側競技フィールド12A側へ引き出し、外側競技フィールド12Cを跨いで可動レール70を展開位置へ引き出す。この際、可動レール70は、車輪76によって外側競技フィールド12C面上を走行する。なお、展開位置では、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84が展開用固定孔88及び収納用固定孔86の上方にそれぞれ配置される。
【0048】
次に、図5(B)に示されるように、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84を降ろし、展開用固定孔88及び収納用固定孔86にそれぞれ挿入する。これにより、可動レール70が展開位置で固定される。また、支持部材84をさらに降ろすと、可動レール70(車輪76)が外側競技フィールド12C面上から浮き上がり、可動レール70が可動席30の内側車輪46の接地位置まで上昇する。
【0049】
次に、固定レール用連結装置48A(図3(A)参照)を作動し、固定レール60に形成された図示しない連結孔から連結ピン52を引き抜く。これにより、固定レール60と可動席30との連結状態が解除され、可動席30が固定レール60及び可動レール70上を走行可能になる。
【0050】
この状態で、図示しないウィンチ等の駆動装置や人力等によって可動席30を固定レール60及び可動レール70に沿って内側競技フィールド12A側へ引き出し、展開位置へ移動させる。この際、可動席30は、外側車輪44及び内側車輪46によって固定レール60及び可動レール70上を走行する。
【0051】
次に、固定レール用連結装置48A及び可動レール用連結装置48Bを作動して連結ピン52を下方へ移動させ、固定レール60及び可動レール70に形成された図示しない連結孔に挿入する。これにより、可動席30が固定レール60及び可動レール70に固定される。
【0052】
なお、説明を省略するが、可動席30を展開位置から収納位置へ収納する場合は、上記と逆の手順により行われる。
【0053】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0054】
前述したように、可動席30を収納位置から内側競技フィールド12A側の展開位置へ引き出す場合には、先ず、外側競技フィールド12Cを跨いで可動レール70を内側競技フィールド12A側へ引き出す。次に、引き出された可動レール70上で可動席30を走行させる。これにより、可動席30が内側競技フィールド12A側へ引き出される。
【0055】
このように外側競技フィールド12Cを跨ぐ可動レール70上で可動席30を走行させることにより、外側競技フィールド12C面上で可動席30を走行させる場合と比較して、外側競技フィールド12C面の傷みを低減することができる。
【0056】
また、可動レール70は、可動席30よりも軽くすることができる。したがって、可動レール70を内側競技フィールド12A側へ引き出すときに、外側競技フィールド12C面上で可動レール70を走行させても、可動席30のように外側競技フィールド12C面が傷むことはない。
【0057】
さらに、可動レール70は、展開位置に引き出された状態で、前側昇降装置80F及び後側昇降装置80Rの支持部材84によって外側競技フィールド12C面から浮いた状態で支持される。したがって、可動席30を可動レール70上で走行させるときに、可動レール70の車輪76を介して外側競技フィールド12C面が傷むことを抑制することができる。
【0058】
しかも、前側昇降装置80Fの支持部材84は、外側競技フィールド12Cと内側競技フィールド12Aとの間の予備フィールド12Bで可動レール70の前側を支持する。したがって、前側昇降装置80Fの支持部材84によって外側競技フィールド12C及び内側競技フィールド12Aが傷むことはない。
【0059】
このように本実施形態では、外側競技フィールド12C面及び内側競技フィールド12A面の傷みを低減しつつ、可動席30を内側競技フィールド12A側へ引き出して接近させることができる。したがって、可動席30の観客に、内側競技フィールド12Aで行われる球技等をより近くで観覧させることができる。
【0060】
また、可動レール70を内側競技フィールド12A側へ引き出すことにより、可動席30の可動範囲を広げることができる。つまり、本実施形態では、従来技術(例えば、特許文献1)のように可動席を片持ち状態で引き出す構成と比較して、可動席30の引き出し長さを長くすることができる。
【0061】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0062】
可動レール70の移動機構は上記したものに限らない。例えば、空気圧浮上方式のように、可動レール70を空気圧により浮上させた状態で外側競技フィールド12C面上を走行させても良い。これにより、可動レール70の重量が、車輪76からだけでなく可動レール70の下面全域から外側競技フィールド12Cに分散して伝達される。したがって、外側競技フィールド12C面の傷みをさらに抑制することができる。
【0063】
また、例えば、図6に示されるように、可動レール90を宙に浮いた状態で、引き出し可能に固定レール60で支持(片持ち支持)しても良い。この場合、可動レール90が外側競技フィールド12C面に接触しないため、外側競技フィールド12C面の傷みを抑制することができる。なお、可動レール90を引き出す際には、前述した車輪76等を併用しても良い。
【0064】
また、図6に示される変形例では、可動レール90の引き出し方向の前側が、支持部材92によって予備フィールド12Bに支持される。これにより、可動レール90が安定するため、可動レール90上で後述する予備の可動席96を走行させ易くなる。
【0065】
なお、図6に示される変形例では、固定レール60が可動レール90の引き出し方向の後側を支持する支持部材に相当する。また、支持部材92は可動レール90と別体とし、可動レール90を引き出した状態で、可動レール90の前側に取り付けても良い。
【0066】
次に、上記実施形態では、観覧席20の1階席を可動席30とした例を示したが、これに限らない。例えば、図6に示されるように、1階席を構成する固定席94の下に、予備の可動席96を収納しても良い。この場合、予備の可動席96をフィールド12側へ引き出すことにより、座席数を増やすことができる。
【0067】
次に、上記実施形態では、可動席30全体を内側競技フィールド12A側へ引き出した例を示したが、これに限らない。例えば、図7に示されるように、固定席94の下に、畳まれた状態で収納された可動席140を内側競技フィールド12A側へ階段状に引き出しても良い。これにより、可動席140をよりコンパクトに収納することができる。また、可動席は、その一部を畳んで収納しても良い。
【0068】
次に、上記実施形態では、モータ等の駆動源を使用して支持部材84を昇降させた例を示したが、これに限らない。支持部材84は、例えば、手動で昇降させても良い。また、可動レール70と支持部材とを別体とし、必要に応じて可動レール70に支持部材を取り付けても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、可動レール70の引き出し方向の前側及び後側に支持部材84を設けた例を示したが、支持部材84は適宜省略可能である。なお、支持部材84を省略した場合は、可動レール70上で可動席30を走行させたときに車輪76を介して可動席30の荷重が外側競技フィールド12C面に伝達されることになるが、それでも本実施形態は、外側競技フィールド12C面上で可動席30を直接走行させる場合と比較して、外側競技フィールド12C面の傷みを抑制することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、展開用固定孔88を予備フィールド12Bに形成した例を示したが、これに限らない。展開用固定孔88は、内側競技フィールド12Aや外側競技フィールド12Cに設けても良い。また、収納用固定孔86及び展開用固定孔88は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
【0071】
また、上記実施形態では、フィールド12内で行われる競技等に応じて稼動席30をフィールド12側へ移動させる例を示したが、これに限らない。例えば、天候に応じて屋根24のないフィールド12側へ可動席30を引き出しても良いし、図6及び図7に示されるように、観覧者数に応じて予備の可動席96をフィールド12側へ引き出しても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、フィールド12内に2つの内側競技フィールド12A及び外側競技フィールド12Cを設けた例を示したが、これに限らない。フィールド12内の用途は、適宜変更可能であり、例えば、フィールド12内に球技等を行う競技フィールのみを設けても良いし、陸上競技用のトラックのみを設けても良い。さらに、フィールド12内には、各種のイベント等を行う多目的スペースのみを設けても良い。
【0073】
また、上記実施形態に係る可動席30の移動機構は、自転車競技等を行うバンク(傾斜面)の移動機構としても利用可能である。
【0074】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
14 フィールド
12A 内側競技フィールド
14C 外側競技フィールド
20 観覧席
30 可動席
70 可動レール
84 支持部材
92 支持部材
96 可動席
140 可動席
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7