特許第6585894号(P6585894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6585894-リニアアクチュエータ 図000002
  • 6585894-リニアアクチュエータ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585894
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20190919BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20190919BHJP
【FI】
   H02K41/02 B
   H02K11/21
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-220156(P2014-220156)
(22)【出願日】2014年10月29日
(65)【公開番号】特開2016-86617(P2016-86617A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年3月8日
【審判番号】不服2018-11739(P2018-11739/J1)
【審判請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 堀川 一郎
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−27739(JP,A)
【文献】 特開2008−253009(JP,A)
【文献】 特開平8−266005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアアクチュエータにおいて、
内側に筒状のヨークによって保持される複数のコイルが設けられる本体部と、
前記ヨーク内を軸方向に移動自在なロッドと、
前記ロッドに軸方向に並んで保持され、前記複数のコイルと対向するように配設される複数の永久磁石と、
前記本体部の外周部に同軸に設けられた一対のトラニオン軸と、を備え、
前記一対のトラニオン軸の少なくとも一方には、前記複数のコイルに接続される配線を引き出す貫通孔が設けられることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記リニアアクチュエータの動作状態を検出するセンサをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記センサが、ストロークセンサであることを特徴とする請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記一対のトラニオン軸の一方に設けられた前記貫通孔から、前記複数のコイルに接続される配線が引き出され、
前記一対のトラニオン軸の他方に設けられた前記貫通孔から、前記センサに接続される配線が引き出されることを特徴とする請求項2または3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ヨークの外周部分には、軸線方向に溝部が設けられ、
前記溝部内に前記複数のコイルに接続される配線が収容されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力によって軸方向に伸縮するリニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、固定側本体の内部に鉄心および電機子コイルを備え、固定側本体に電機子コイルへの電源供給口が設けられた電動アクチュエータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−253009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のリニアアクチュエータは、電機子コイルからの引出線が電源供給口を通じて外部へ導かれている。このとき、引出線を保護するためだけに固定側本体の外周から突出するように保護部材を設ける必要があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コイルからの引出線を外部に導くためだけに外周に突出する保護部材を設ける必要のないリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リニアアクチュエータにおいて、内側に筒状のヨークによって保持される複数のコイルが設けられる本体部と、前記ヨーク内を軸方向に移動自在なロッドと、前記ロッドに軸方向に並んで保持され、前記複数のコイルと対向するように配設される複数の永久磁石と、前記本体部の外周部に同軸に設けられた一対のトラニオン軸と、を備え、前記一対のトラニオン軸の少なくとも一方には、前記複数のコイルに接続される配線を引き出す貫通孔が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、本体部の外周部に設けられたトラニオン軸に、コイルに接続される配線を引き出す貫通孔が設けられる。したがって、既存の部材を利用して引出線を保護することができるため、コイルからの引出線を外部に導くためだけに外周に突出する保護部材を設ける必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は、本発明の第1実施形態に係るリニアアクチュエータの収縮状態における軸方向断面図であり、(B)は、図1(A)におけるA−A断面図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るリニアアクチュエータの収縮状態における軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るリニアアクチュエータ100について説明する。図1(A)は、リニアアクチュエータ100の軸線方向における断面図であり、図1(B)は、図1(A)におけるA−A断面図である。
【0011】
リニアアクチュエータ100は、本体部としての第1チューブ10と、第1チューブ10の外周に摺動自在に設けられる第2チューブ20と、第2チューブ20の端部に固定され、永久磁石31を保持するロッド30と、第1チューブ10内に嵌合するように設けられ、永久磁石31と対向するコイル41を保持するヨーク40と、を備える。
【0012】
リニアアクチュエータ100では、コイル41に流れる電流に応じてロッド30を軸方向に駆動する推力(電磁力)が発生し、この推力に基づいて第1チューブ10と第2チューブ20とが相対変位する。これにより、リニアアクチュエータ100は、図1に示す最収縮位置から、図示しない最伸長位置との間で伸縮する。
【0013】
第1チューブ10は、円筒状のベース部11と、ベース部11の一端側に固定されるインナーチューブ12と、ベース部11の他端側に固定されるガイドチューブ13と、を備える。
【0014】
ベース部11は、両端が開口する筒状部材である。ベース部11の外周には、径方向に突出する一対のトラニオン軸1が固定される。リニアアクチュエータ100は、一対のトラニオン軸1が図示しない外部部材に回動可能に軸支されることで、外部部材に対して回動可能に保持される。一対のトラニオン軸1には、貫通孔1Aがそれぞれ設けられる。貫通孔1Aを一対のトラニオン軸1のそれぞれに設けずに、いずれか一方のみに設けてもよい。このように、貫通孔1Aは、一対のトラニオン軸1の少なくともいずれか一方に設けられる。
【0015】
第2チューブ20は、両端が開口する円筒状のアウターチューブ21と、アウターチューブ21の一端に取り付けられるキャップ22と、を備える。第2チューブ20の一端は、キャップ22により閉塞される。第2チューブ20の他端は、第1チューブ10のインナーチューブ12が挿入される開口端である。キャップ22の外側面には、図示しない外部部材と連結される連結部材2が固定される。
【0016】
インナーチューブ12は、ベース部11に設置された状態で、アウターチューブ21の内側に摺動自在に挿入される。インナーチューブ12は、その一端がベース部11の内周面11Aに嵌合して固定され、ベース部11に片持ち支持される。
【0017】
リニアアクチュエータ100は、第1チューブ10と第2チューブ20とを軸方向に相対変位自在に支持する第1リニアガイド部15と第2リニアガイド部25とを備える。
【0018】
インナーチューブ12の自由端の外周には、環状の第1軸受14が設けられる。第1軸受14の軸受面(外周面)14Aは、アウターチューブ21の内周面21Aと摺接する。第1リニアガイド部15は、インナーチューブ12の外周面12Aと、第1軸受14の軸受面14Aとから構成される。
【0019】
アウターチューブ21の開口端側の内周には、環状の第2軸受23が設けられる。第2軸受23の軸受面(内周面)23Aは、インナーチューブ12の外周面12Aと摺接する。第2リニアガイド部25は、アウターチューブ21の内周面21Aと、第2軸受23の軸受面23Aとから構成される。
【0020】
リニアアクチュエータ100が伸縮する際には、第1リニアガイド部15では、第1軸受14の軸受面14Aがアウターチューブ21の内周面21Aに摺接する。また、第2リニアガイド部25では、第2軸受23の軸受面23Aがインナーチューブ12の外周面12Aに摺接する。これにより、インナーチューブ12とアウターチューブ21とは、滑らかに摺動する。インナーチューブ12の外周面12Aとアウターチューブ21の内周面21Aとは、第1軸受14及び第2軸受23を介して互いに隙間なく対峙する。
【0021】
ガイドチューブ13は、両端が開口する筒状部材である。ガイドチューブ13内には、ロッド30の端部に固定されるロッドガイド50が摺動自在に設けられる。
【0022】
ロッド30は、中空部30Aを有する棒状部材である。ロッド30の一端は、第2チューブ20の端部を構成するキャップ22の内側に固定される。また、ロッド30の他端は、前述したロッドガイド50に固定される。ロッド30の他端にロッドガイド50が設けられることで、ガイドチューブ13とロッド30との同軸度が確保される。よって、リニアアクチュエータ100の伸縮時にロッド30の端部が径方向に振れることが防止される。
【0023】
ロッド30の中空部30Aには、複数の永久磁石31が軸方向に並んで保持される。永久磁石31は、円柱状に形成されており、軸方向にN極とS極が位置するように着磁される。隣り合う永久磁石31は、同極同士が対向するように配置される。また、隣り合う永久磁石31の間には継鉄32が設けられる。なお、継鉄32を必ずしも設ける必要はなく、隣り合う永久磁石31が当接するようにしてもよい。
【0024】
インナーチューブ12の内周面12Bには、円筒状のヨーク40が設けられる。ヨーク40は、ロッド30が軸方向に挿通する挿通孔45を有する。ヨーク40には、複数のコイル41が内蔵される。なお、ヨーク40は、隣り合う環状部材の接触面に形成される空間内にコイル41を巻き付け、これらの環状部材を軸方向に積層し一体化したものである。複数のコイル41は、永久磁石31に対向するように軸方向に沿って並設される。なお、ヨーク40を構成する環状部材は、周方向に分割された複数の部材を接合することで形成されてもよい。
【0025】
ヨーク40の外周には、軸線方向に複数の溝部としての溝42が設けられる。溝42には、複数のコイル41からの配線44が収容される。なお、溝42は、三か所に設けられているが、これに限らず四か所など任意の数設けることができる。また、上記環状部材を構成する分割された複数の部材の接合面の角部に切り欠きを設けて、この切り欠きによって溝部を形成してもよい。さらに、溝42をヨーク40の外周面に設けるのに代えて、インナーチューブ12の内周面12Bに設けてもよい。また、溝42をヨーク40の外周面とインナーチューブ12の内周面12Bとの両方に設けてもよい。
【0026】
複数のコイル41からの配線44は、溝42と、トラニオン軸1に設けられた貫通孔1Aとを通って外部に引き出される。外部に引き出された配線44は、図示しないコントローラに接続される。コントローラはコイル41に供給される電流の大きさや位相を制御することにより、リニアアクチュエータ100が発生する推力と推力発生方向(伸縮方向)とを制御する。なお、配線44は、コネクタを介して引き出されてもよい。また、貫通孔1Aは、一つに限らず、引き出される配線44の数に応じた数設けてもよい。
【0027】
次に、リニアアクチュエータ100の動作について説明する。
【0028】
リニアアクチュエータ100では、コイル41に所定方向の電流が供給されると、ロッド30を一方向(図1において右方向)に駆動する推力が発生する。ロッド30が一方向に駆動されると、第2チューブ20のアウターチューブ21が第1チューブ10のインナーチューブ12に対して摺動しながら移動して、リニアアクチュエータ100が伸長する。
【0029】
ガイドチューブ13のベース部11への固定端には、内側に突出する環状の突出部13Aが形成される。リニアアクチュエータ100が最伸長位置まで伸長すると、ロッドガイド50が突出部13Aの側面に当接し、それ以上のロッド30の移動が規制される。このように、ロッドガイド50は、ストッパとして機能する。
【0030】
一方、コイル41に伸長時とは逆位相の電流が供給されると、ロッド30を他方向(図1において左方向)に駆動する推力が発生する。ロッド30が他方向に駆動されると、第2チューブ20のアウターチューブ21が第1チューブ10のインナーチューブ12に対して摺動しながら移動して、リニアアクチュエータ100が収縮する。
【0031】
リニアアクチュエータ100が最収縮位置まで収縮すると、アウターチューブ21の開口端がベース部11の端部に当接し、それ以上のロッド30の移動が規制される。このように、アウターチューブ21の開口端は、ストッパとして機能する。
【0032】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0033】
第1チューブ10の外周部に設けられたトラニオン軸1には、複数のコイル41に接続される配線44を引き出す貫通孔1Aが設けられる。これにより、既存の部材を利用して引き出される配線44を保護することができる。よって、複数のコイル41からの配線44を外部に導くためだけに外周に突出する保護部材を設ける必要はない。
【0034】
<第2実施形態>
図2を参照して、本発明の第2実施形態に係るリニアアクチュエータ200について説明する。以下では、上述した第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態のリニアアクチュエータ100と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
第2実施形態は、ストロークセンサ70が設けられる点で、第1実施形態と相違する。
【0036】
ストロークセンサ70は、磁界の強度に応じたホール電圧を発生するホール素子を用いたものである。ストロークセンサ70は、ホール素子のホール電圧に基づいて、コイル41と永久磁石31との相対位置を検出する。
【0037】
ストロークセンサ70によって検出された信号は、配線71を介して外部のコントローラに入力される。コントローラは、ストロークセンサ70により検出されたコイル41と永久磁石31との相対位置情報に基づいて、第1チューブ10に対する第2チューブ20のストロークを演算する。コントローラは、第1チューブ10に対する第2チューブ20のストロークをフィードバックしながらコイル41に通電する電流の大きさと位相を制御する。これにより、リニアアクチュエータ200をより正確に制御できる。
【0038】
なお、リニアアクチュエータ200に取付けられるセンサは、ストロークセンサ70に限らず、例えば、コイル41の温度状態を検出する温度センサなど、リニアアクチュエータの動作状態を検出するセンサなどであればどのようなものを設けてもよい。また、ストロークセンサ70と温度センサなどリニアアクチュエータ200の異なった動作状態を検出する複数のセンサを設けてもよい。
【0039】
リニアアクチュエータ200では、一対のトラニオン軸1のうち一方のトラニオン軸1の貫通孔1Aから複数のコイル41の配線44が引き出され、他方のトラニオン軸1の貫通孔1Aから、ストロークセンサ70の配線71が引き出される。
【0040】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0041】
リニアアクチュエータ200の動作状態を検出するストロークセンサ70をさらに備えることで、リニアアクチュエータ200の動作をより正確に制御できる。 また、一対のトラニオン軸1のうち一方のトラニオン軸1の貫通孔1Aから、複数のコイル41の配線44が引き出され、他方のトラニオン軸1の貫通孔1Aから、ストロークセンサ70の配線71が引き出される。これにより、ストロークセンサ70によって検出された信号が、コイル41の配線44を流れる大きな電流によって影響を受けることがない。したがって、ストロークセンサ70によって検出された信号が外乱の影響を受けることなく正確にコントローラに入力されるので、リニアアクチュエータ200の動作をより正確に制御できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0043】
100、200 リニアアクチュエータ
1 トラニオン軸
1A 貫通孔
2 連結部材
10 第1チューブ
11 ベース部
12 インナーチューブ
13 ガイドチューブ
20 第2チューブ
21 アウターチューブ
22 キャップ
30 ロッド
31 永久磁石
40 ヨーク
41 コイル
42 溝
44 配線
50 ロッドガイド
70 ストロークセンサ
71 配線
図1
図2