(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585908
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】粉末酒
(51)【国際特許分類】
C12G 3/08 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
C12G3/08 101
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-57483(P2015-57483)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-174573(P2016-174573A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100196368
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 京平
(72)【発明者】
【氏名】田中 善久
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】汲原 章民
【審査官】
田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−046594(JP,A)
【文献】
特表2014−518082(JP,A)
【文献】
特開2014−103872(JP,A)
【文献】
特表2008−506399(JP,A)
【文献】
特開2006−347961(JP,A)
【文献】
日本醸造協会雑誌,1982年,77巻8号,498−502頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/08
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポーションタイプのスティック状の容器に収容するために用いる粉末酒であって、
アルコール粉末と、
固結防止剤と、
植物油脂と、
を含み、
安息角が36.1°以上39.8°以下である粉末酒。
【請求項2】
前記固結防止剤が微粒二酸化ケイ素およびリン酸三カルシウムから選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の粉末酒。
【請求項3】
前記粉末酒中に含まれる前記固結防止剤の含有量が、前記粉末酒全体に対して0.05重量%以上20重量%以下である、請求項1または2に記載の粉末酒。
【請求項4】
前記植物油脂が大豆油、菜種油、ひまわり油、オリーブ油、脂肪酸、および脂肪酸トリグリセライドから選択される一種または二種以上を含む、請求項1に記載の粉末酒。
【請求項5】
前記粉末酒中に含まれる前記植物油脂の含有量が、前記粉末酒全体に対して0.05重量%以上1重量%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉末酒。
【請求項6】
粉乳およびクリーミングパウダーから選択される少なくとも一種を含む、請求項1〜5いずれか一項に記載の粉末酒。
【請求項7】
前記粉末酒中に含まれる、前記粉乳および前記クリーミングパウダーから選択される少なくとも一種の含有量が、前記粉末酒全体に対して10重量%以上50重量%以下である、請求項6に記載の粉末酒。
【請求項8】
甘味料を含む、請求項1〜7いずれか一項に記載の粉末酒。
【請求項9】
前記甘味料が非糖質系甘味料を含む、請求項8に記載の粉末酒。
【請求項10】
前記粉末酒中に含まれる前記甘味料の含有量が、前記粉末酒全体に対して0.05重量%以上40重量%以下である、請求項8または9に記載の粉末酒。
【請求項11】
前記粉末酒中に含まれる前記アルコール粉末の含有量が、前記粉末酒全体に対して10重量%以上90重量%以下である、請求項1〜10いずれか一項に記載の粉末酒。
【請求項12】
前記アルコール粉末中に含まれるアルコールの含有量が、前記アルコール粉末全体に対して1重量%以上60重量%以下である、請求項1〜11いずれか一項に記載の粉末酒。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか一項に記載の粉末酒において、
液体に溶解させて飲料を作製するために用いられる粉末酒。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか一項に記載の粉末酒において、
アルコール濃度が1%以上であるアルコール飲料を作製するために用いる粉末酒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末酒に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールを含有した粉末に関する技術については、これまで様々な検討がなされている。このような技術としては、たとえば特許文献1〜3が挙げられる。
【0003】
特許文献1は、粉末カクテルに関する技術である。具体的には、酒類と有機酸とデキストリンの混合溶液を噴霧乾燥して有機酸含有粉末酒類となし、該有機酸含有粉末酒類と糖類その他の粉末カクテル添加物を混合し、該混合物を密封包装することにより粉末カクテルを製造することが記載されている。特許文献2には、アルコールを含有する液体に粉末化基材を混合して粉末化する方法が記載されている。特許文献3には、コーヒー成分、アルコール含有顆粒、クリーマ、および甘味剤を含有することを特徴とする水溶性粉末飲料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−91187号公報
【特許文献2】特開2009−247350号公報
【特許文献3】特表2007−530062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルコールを含有する粉末により構成される粉末酒については、その固結を抑えることが求められる。一方で、粉末酒については、たとえば容器に充填させて販売に供される場合が考えられるため、容器への充填性を向上させることも重要である。これまでは、固結の抑制と、容器への充填性と、のバランスに優れた粉末酒を実現することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
ポーションタイプのスティック状の容器に収容するために用いる粉末酒であって、
アルコール粉末と、
固結防止剤と、
植物油脂と、
を含み、
安息角が
36.1°以上39.8°以下である粉末酒が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固結の抑制と、容器への充填性と、のバランスに優れた粉末酒を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る粉末酒の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る粉末酒の一例を示す図である。
本実施形態に係る粉末酒は、アルコール粉末を含んでおり、かつ安息角が20°以上40°以下である。
【0011】
上述のように、粉末酒については、固結の抑制と、容器への充填性と、のバランスを向上させることが求められている。鋭意検討の結果、本発明者は、アルコール粉末を含む粉末酒の安息角を制御することによって、固結の抑制と、容器への充填性と、のバランスを向上させることが可能であることを新たに見出し、本実施形態に係る粉末酒を実現するに至った。このように、本実施形態によれば、固結の抑制と、容器への充填性と、のバランスに優れた粉末酒を実現することが可能となる。
【0012】
以下、本実施形態に係る粉末酒について詳細に説明する。
【0013】
粉末酒は、たとえば液体に投入し、溶解させて飲料を作製するために用いられる。粉末酒を用いて作製される飲料は、アルコール濃度が1%以上である酒税法上のアルコール飲料であってもよく、アルコール濃度が1%未満のノンアルコール飲料であってもよい。また、粉末酒を溶解させる液体は、飲用として用いることができるものであればとくに限定されないが、たとえば水、炭酸水、緑茶、ウーロン茶、ほうじ茶、および麦茶等に例示される茶類、オレンジ果汁やグレープフルーツ果汁に例示される果汁類や果実成分を含有する飲料、牛乳等の乳類等から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0014】
粉末酒の用途は、上述したものに限定されない。本実施形態に係る粉末酒は、たとえばチョコレートやケーキ、飴、錠菓等に例示される製菓類、調味料、および薬品等に添加されてもよい。また、粉末酒は、そのまま食されるものであってもよい。
【0015】
本実施形態において、粉末酒は、たとえば包装容器等に記載された規定量を液体に溶解することによりアルコール濃度が所定値である飲料を作製するものとすることができる。飲料のアルコールの風味を向上させる観点からは、上記所定値が、たとえば3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがより好ましい。一方で、上記所定値は、たとえば3体積%未満であってもよい。なお、上記所定値は、たとえば粉末酒を構成する各成分の配合割合を適切に調製することにより制御することが可能である。
【0016】
図1に示すように、粉末酒は、たとえば容器に収容されていてもよい。これにより、粉末酒の保存性や利便性を向上させることができる。本実施形態においては、たとえば一回使用分〜数回使用分に小分けされたポーションタイプの容器に、粉末酒を収容することができる。なお、粉末酒が収容された容器は、保存性を向上させる観点から、容器口がシールされて内部が密閉された状態となっていることがより好ましい。
【0017】
図1においては、ポーションタイプのスティック状の容器に粉末酒が収容される場合が例示されている。なお、粉末酒を収容する容器は、
図1に例示したものに限定されず、粉末を収容するために一般的に採用され得る形態のものを採用することができる。
【0018】
粉末酒は、上述のとおり、安息角が20°以上40°以下である。これにより、固結抑制と、容器への充填性と、のバランスを向上させることができる。とくに容器への充填性をより効果的に向上させる観点からは、安息角が25°以上であることがより好ましく、30°以上であることがさらに好ましく、35°以上であることがとくに好ましい。また、固結をより確実に抑制する観点からは、安息角が38°以下であることがとくに好ましい。なお、粉末酒の安息角は、たとえば粉体特性評価装置(パウダテスタ(登録商標)PT−X、ホソカワミクロン(株)製)や安息角測定器(IMC−1526、(株)井元製作所製)などを用いて測定することが可能である。
【0019】
粉末酒の安息角は、たとえば粉末酒を構成する各成分の種類や配合割合をそれぞれ適切に調製することによって制御することが可能である。本実施形態においては、たとえばアルコール粉末とともに粉末酒を構成し得る、甘味料、酸味料、粉乳、クリーミングパウダー、植物油脂、粉末香料、および固結防止剤等に例示されるような各種添加物について、その種類や配合割合を総合的に調製することが、粉末酒の安息角を所望の範囲内とするために重要な要素であると考えられている。例えば、粉乳、クリーミングパウダー、植物油脂の配合割合を増やすと粉末酒の安息角を大きくすることができ、固結防止剤の配合割合を増やすと粉末酒の安息角を小さくすることができる。また、これらは、粉末酒の規定使用量等を考慮したうえで検討することが、安息角を制御しつつ粉末酒を用いて得られる飲料の風味向上の観点から重要となり得る。
【0020】
次に、粉末酒を構成する各成分について詳述する。
【0021】
(アルコール粉末)
粉末酒は、上述のとおり、アルコール粉末を含んでいる。
アルコール粉末とは、食用のエチルアルコールを含む粉末である。アルコール粉末中に含まれるアルコールの含有量は、とくに限定されないが、たとえばアルコール粉末全体に対して1重量%以上とすることができ、3重量%以上とすることがより好ましく、10重量%以上とすることがとくに好ましい。一方で、アルコール粉末中に含まれるアルコールの含有量は、とくに限定されないが、たとえばアルコール粉末全体に対して60重量%以下とすることがより好ましい。これにより、粉末酒に対してアルコールを十分に含ませつつ、固結の抑制に寄与することが可能となる。
【0022】
アルコール粉末は、とくに限定されないが、たとえばアルコールの水溶液と粉末化基材を混合溶解させて得られる溶液を、可及的速やかに低温化で乾燥することによって作製することができる。上記溶液中には、粉末化基材のほかに、たとえば液体香料、油脂、疎水性化合物等のアルコールに溶解し得る成分が含まれていてもよい。
粉末化基材は、たとえばデキストリン、デンプン、プルラン、難消化デキストリン、ポリデキストロース、還元澱粉分解物、還元難消化デキストリン、および加工澱粉から選択される一種または二種以上を含むことができる。
また、乾燥法の種類は問わないが、一般的には噴霧乾燥法が好んで用いられる。
【0023】
粉末酒中に含まれるアルコール粉末の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して10重量%以上とすることができ、30重量%以上とすることがより好ましく、50重量%以上とすることがとくに好ましい。これにより、粉末酒を用いて得られる飲料または食品に対してアルコールの風味をより効果的に付与することが可能となる。また、粉末酒を液体に溶解させて飲料とする場合には、その風味を向上させる観点から、60重量%以上とすることがさらに好ましい。一方で、粉末酒中に含まれるアルコール粉末の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して90重量%以下とすることができ、85重量%以下とすることがより好ましく、80重量%以下とすることがとくに好ましい。これにより、粉末酒の容器への充填性をより効果的に向上させることが可能となる。
【0024】
(甘味料)
粉末酒は、たとえば甘味料を含むことができる。甘味料は、飲食料品において通常用いられるものであればとくに限定されないが、たとえばショ糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖等に例示される糖質系甘味料、およびアセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、甘草(グリチルリチン)等に例示される非糖質系甘味料から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、固結抑制と、容器に対する充填性と、のバランスをより効果的に向上させる観点からは、非糖質系甘味料を少なくとも含むことがより好ましく、アセスルファムカリウムおよびスクラロースのうちの一方または双方を含むことがとくに好ましい。
【0025】
粉末酒中に含まれる甘味料の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して0.05重量%以上とすることが好ましく、0.15重量%以上とすることがとくに好ましい。一方で、粉末酒中に含まれる甘味料の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して40重量%以下とすることが好ましく、20重量%以下とすることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、粉末酒を用いて作製される飲料の風味向上に寄与することができる。また、固結抑制と、容器に対する充填性と、のバランスをより効果的に向上させることも可能となる。なお、粉末酒中に含まれる甘味料の含有量は0.05重量%未満であってもよい。
【0026】
(固結防止剤)
粉末酒は、たとえば固結防止剤を含むことができる。これにより、粉末酒について、固結抑制と、容器への充填性と、のバランスを制御することがより容易となる。固結防止剤は、飲食品用の固結防止剤であればとくに限定されないが、たとえば微粒二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、ケイ酸カルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウムなどから選択される一種または二種以上を含むことができる。これにより、粉末酒の固結をより効果的に抑制することが可能となる。また、固結抑制と、充填性と、のバランスを向上させる観点からは、微粒二酸化ケイ素、およびリン酸三カルシウムのうちの一方または双方を含むことがより好ましい。
ここで、微粒二酸化ケイ素とは食品添加物として使用される二酸化ケイ素の粉体であり、平均粒子径15μm以下のものをいう。
【0027】
粉末酒中に含まれる固結防止剤の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して0.05重量%以上とすることが好ましく、0.1重量%以上とすることがより好ましく、0.15重量%以上とすることがとくに好ましい。また、固結防止剤としてリン酸三カルシウムを含む場合には、リン酸三カルシウムの含有量が粉末酒全体に対して0.5重量%以上であることが好ましく、0.8重量%以上であることがより好ましく、1.2重量%以上とすることがとくに好ましい。一方で、粉末酒中に含まれる固結防止剤の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下とすることがさらに好ましく、5.0重量%以下とすることがさらに好ましく、3.0重量%以下とすることがとくに好ましい。ただし、二酸化ケイ素およびケイ酸カルシウムの食品添加物使用基準は、それぞれの使用量の和が食品中2.0重量%以下でなければならないとされている。これにより、粉末酒について、固結抑制と、容器に対する充填性と、のバランスをより効果的に向上させることが可能となる。なお、粉末酒中に含まれる固結防止剤の含有量は0.05重量%未満であってもよい。
【0028】
(粉乳・クリーミングパウダー)
粉末酒は、たとえば粉乳およびクリーミングパウダーから選択される少なくとも一種を含むことができる。これにより、乳入りアルコール飲料を容易に作製することが可能な粉末酒を実現することができる。また、粉乳やクリーミングパウダーを添加することにより、粉末酒の容器に対する充填性を効果的に向上させることが可能となる。粉乳は、乳から水分を除去して粉末状にしたものである。本実施形態において、粉乳は、たとえば全粉乳、脱脂粉乳、および調製粉乳から選択される一種または二種以上を含むことができる。クリーミングパウダーは、油脂を乳化剤、安定剤と共に水中油型の乳化物とし、粉末化基材と共に乾燥、粉末化したものである。油脂は一般に常温で固体の物が使用されることが多く、油脂の使用例としては動物性脂肪としては乳脂肪、ラード等が、植物性脂肪としてはヤシ油、パーム油、パーム核油等が挙げられる。乳化剤としては水中油型乳化に適したものであればよく、一般的にはグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル等が使用される。安定剤としてはカゼイン、全粉乳、脱脂粉乳などの乳蛋白質が使用されることが一般的である。また粉末化の基材としてデキストリン、乳糖、水溶性食物繊維などが使用される。また必要に応じて、pH調整剤、香料、色素などが添加されることがある。
【0029】
粉末酒中に含まれる粉乳およびクリーミングパウダーから選択される少なくとも一種の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して10重量%以上とすることが好ましく、20重量%以上とすることがとくに好ましい。一方で、粉末酒中に含まれる粉乳またはクリーミングパウダーの含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して50重量%以下とすることが好ましく、40重量%以下とすることがとくに好ましい。これにより、粉末酒について、固結抑制と、容器に対する充填性と、のバランスをより効果的に向上させることが可能となる。また、粉末酒を用いて作製される飲料の風味向上に寄与することもできる。なお、粉末酒中に含まれる粉乳およびクリーミングパウダーから選択される少なくとも一種の含有量は10重量%未満であってもよい。
【0030】
(植物油脂)
粉末酒は、たとえば植物油脂を含むことができる。これにより、粉末酒を用いて作製される飲料をよりまろやかにすることが可能となる。植物油脂は、たとえば大豆油、菜種油、ひまわり油、オリーブ油、脂肪酸、脂肪酸トリグリセライドなどから選択される一種または二種以上を含むことができる。本実施形態においては、25℃で液体である植物油脂を粉末酒中に含む場合を好ましい態様の一例として挙げることができる。これにより、固結抑制と、容器に対する充填性と、のバランスの向上に寄与することが可能となる。一方で、植物油脂は、たとえば25℃で固体のものであってもよい。
【0031】
粉末酒中に含まれる植物油脂の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して0.05重量%以上とすることが好ましく、0.1重量%以上とすることがとくに好ましい。一方で、粉末酒中に含まれる植物油脂の含有量は、とくに限定されないが、たとえば粉末酒全体に対して1重量%以下とすることが好ましく、0.5重量%以下とすることがとくに好ましい。これにより、粉末酒について、固結抑制と、容器に対する充填性と、のバランスをより効果的に向上させることが可能となる。また、粉末酒を用いて作製される飲料の風味向上に寄与することもできる。なお、粉末酒中に含まれる植物油脂の含有量は0.05重量%未満であってもよい。
【0032】
粉末酒は、上述の各成分以外に、他の添加物を含んでいてもよい。上記他の添加物は、とくに限定されないが、たとえば粉末状、粒状、および繊維状等の固形状のものや、液状のものが挙げられる。上記他の添加物としては、たとえばインスタントコーヒー、食塩、香料、塩化カリウム等の無機塩を含む調味料、果肉、果汁、酸味料、酸化防止剤、保存料、pH調整剤、および色素等から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0033】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0035】
(粉末酒の作製)
各実施例および各比較例について、表1および表2に示す配合に従い各原料を混合し、撹拌することにより粉末酒を製造した。なお、表1および表2においては、粉末酒全体に対する各原料の配合割合(重量%)が示されている。
各原料の詳細は、以下のとおりである。
【0036】
ウォッカ粉末:粉末酒ウォッカタイプ(佐藤食品工業(株)製、アルコール含有量30.5重量%)
インスタントコーヒー:インスタントコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ(株)製、コーヒー抽出物含量100%)
クリーミングパウダー:ND−106M(和光堂(株)製、脂肪含量33%、原材料:デキストリン、植物油脂、乳糖、脱脂粉乳等)
植物油脂:MT−N(花王(株)製、中鎖脂肪酸トリグリセライド)
【0037】
実施例A1〜A7および比較例A1、A2は、それぞれ表1に示す規定量(g)を140mlの水に溶解してアルコール度数3%のアルコール飲料を作製する粉末酒である。実施例A1〜A7のいずれにおいても、表1に示す規定量(g)を140mlの水に溶解することにより、良好な風味のアルコール飲料が得られることを確認した。
【0038】
また、実施例B1〜B8および比較例B1は、それぞれ表2に示す規定量(g)を140mlの水に溶解してアルコール度数5%のアルコール飲料を作製する粉末酒である。実施例B1〜B8のいずれにおいても、表2に示す規定量(g)を140mlの水に溶解することにより、良好な風味のアルコール飲料が得られることを確認した。
【0039】
(安息角)
各実施例および各比較例について、得られた粉末酒の安息角を測定した。安息角の測定は、安息角測定器(IMC−1526、底部開口径:1cm、(株)井元製作所製)を用いて行った。ロート底部を地上4cmの位置に固定し、粉体100g程度をロートの上から少量ずつ注入した。粉体が積もることによって形成された円錐の半径および高さ(4cm)から安息角を計算した。なお計算値の正確性を担保するために、円錐の形成操作を3回行い、1回ごとに形成される円錐の4箇所から直径を測定し、計12点の直径の平均値の2分の1の値を半径として安息角の計算に採用した。結果を表1および表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
実施例A1〜A7および実施例B1〜B8で得られた粉末酒は、いずれも安息角が20°以上40°以下の範囲内であった。このような粉末酒は流動性に優れ、
図1に示すようなポーションタイプのスティック状の容器への充填性に優れていた。また、粉末の固結も見られず、固結の抑制と、容器への充填性と、のバランスに優れていた。
一方、比較例A1〜A2および比較例B1で得られた粉末酒は、いずれも安息角が40°を超えていた。このような粉末酒は流動性が悪く、容器への充填性に劣っていた。また、粉末の固結も一部に見られ、固結の抑制と、容器への充填性と、のバランスに劣っていた。なお、安息角が20°未満である粉末酒を用意してスティック状の容器への充填を行ったところ、連続充填性に劣っていたことを確認した。