特許第6585909号(P6585909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585909
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】簡易水力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 11/02 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   F03B11/02
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-57575(P2015-57575)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-176415(P2016-176415A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政彦
【審査官】 田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−253577(JP,A)
【文献】 特開2009−114937(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0099977(US,A1)
【文献】 特開昭60−240878(JP,A)
【文献】 特開2011−074921(JP,A)
【文献】 特開2005−351201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 7/00
F03B 11/02
F03B 13/10
F03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視方形箱形の水車函体における前後に貫通する導水路内に、垂直な軸支持体を介して設けた前後の軸受間に支持したロータ軸の先端に翼端部を上流方向へ傾斜する傾斜部とした揚力型ブレードを有する横軸ロータを配設し、かつ水車函体の上面に設けた発電機と、横軸ロータの主軸とを伝動手段で連結し、更に水車函体の前部左右に、開閉導水板を、自由端部上面の高さを基部の高さより低く傾斜させて枢着し、該開閉導水板を開いて水流を留めた時に、その側端部分の上面から水流とともに塵挨が流出するようにしたことを特徴とする簡易水力発電装置。
【請求項2】
前記水車函体において、前記導水路内に、導入口から内部へかけて次第に狭くなる隘路を形成し、前記揚力型ブレードの傾斜部の先端が、前記隘路部分に位置するように、かつ該傾斜部の回転時に最高となる先端が、前方の開閉導水板の自由端部上面の高さより低くなるようにして横軸ロータを配設し、導水路の左右側板及び上板と底板の各内側面は、隘路から横軸ロータの後部軸受部分の直後にかけて次第に外側方向へ広幅とし、その後部は、後端を導入口よりも側方へ開く後広部とし、その長さを長くしたことを特徴とする請求項1に記載の簡易水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易水力発電装置に係り、特に狭幅の水路に設置して、水流を集めて効率の良い発電をする簡易水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用水路等に没設して発電させる水力発電装置の代表的なものが、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−177797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている水力発電装置は、左右1対の縦軸の回転翼をケーシング部材内に設け、ケーシング部材の上部に浮き部を形成したものである。
これを水路に浮かせると、回転翼は水流によって回転させられるが、水流によりケーシング部材は大きく揺動される。
また、ケーシング部材の前部に、水流増速部が形成されているが、ケーシング部材内には、その前面に当った水流しか入ることができず、また、縦軸の回転翼は、回転に伴い、水流を遠心方向へ移動させるため、左右1対の回転翼において水流の干渉が生じ、回転効率が上がりにくい。
本発明は、ケーシングの前面に、左右に観音開きに開閉する導水板を設けることにより、水位が低くても開閉導水板によって堰止め、その水を有効利用して、効率のよい発電をすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の具体的な内容は、次の通りである。
【0006】
(1) 正面視方形箱形の水車函体における前後に貫通する導水路内に、垂直な軸支持体を介して設けた前後の軸受間に支持したロータ軸の先端に翼端部を上流方向へ傾斜する傾斜部とした揚力型ブレードを有する横軸ロータを配設し、かつ水車函体の上面に設けた発電機と、横軸ロータの主軸とを伝動手段で連結し、更に水車函体の前部左右に、開閉導水板を、自由端部上面の高さを基部の高さより低く傾斜させて枢着し、該開閉導水板を開いて水流を留めた時に、その側端部分の上面から水流とともに塵挨が流出するようにした簡易水力発電装置。
【0007】
(2) 前記水車函体において、前記導水路内に、導入口から内部へかけて次第に狭くなる隘路を形成し、前記揚力型ブレードの傾斜部の先端が、前記隘路部分に位置するように、かつ該傾斜部の回転時に最高となる先端が、前方の開閉導水板の自由端部上面の高さより低くなるようにして横軸ロータを配設し、導水路の左右側板及び上板と底板の各内側面は、隘路から横軸ロータの後部軸受部分の直後にかけて次第に外側方向へ広幅とし、その後部は、後端を導入口よりも側方へ開く後広部とし、その長さを長くした前記(1)に記載の簡易水力発電装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、次のような効果が奏せられる。
【0009】
前記(1)に記載の簡易水力発電装置は、横軸ロータを水車函体の導水路に配設し、その水車函体の前部に、観音開きに開閉導水板を設けてあるので、水車函体内に、開閉導水板で大量の水流を案内して、効率良く発電をすることができる。
また水深が浅いときには、開閉導水板が水流を堰止める作用をし、また、水路の幅に合わせて、開閉導水板を開閉することができ、更に開閉導水板により水車函体の導入口を閉塞させることもできる。
また導水板の先端部の高さを、その基端部の高さよりも低くしてあるので、導水板を開いている時に、流れて来た塵は、高さの低い導水板の先端部分へ寄ってから、下流に流れる。
【0010】
前記(2)に記載の簡易水力発電装置は、水深が浅いときに開閉導水板を開いて水流を堰止めて発電をすることが出来る。
前記水車函における導水路内に、導入口から内部へかけて次第に狭くなる隘路が形成され、前記揚力型ブレードの傾斜部の先端が、前記隘路部分に位置するように横軸ロータを配設し、かつ、導水路の左右側板及び上板と底板の各内側面は、隘路から横軸ロータの後部軸受部分の直後にかけて次第に外側方向へ広幅とし、その後部は後端を導入口よりも側方へ開く後広部として、その長さを長くしたので、隘路部分の直後で水流を揚力型ブレードに受けて効率のよい回転をする。
また導水路に入った水流は、ロータ部分よりも長い後広部に入って水圧が低下し後方へ引かれ、高速で通過し横軸ロータの回転速度を高める。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の簡易水力発電装置の1例を示す縦断側面図である。
図2図1におけるII−II線横断平面図である。
図3図1における正面図である。
図4】水路に架設した状態の簡易水力発電装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1において、簡易水力発電装置1における水車函体2の、前後方向に貫通する導水路3内に、前後方向を向く横軸ロータ4のロータ軸6が、前後の軸受8、9で回転可能に支持されている。
【0014】
水車函体2は、方形の箱形で、導水路3は、導入口3Aから内部へかけて次第に左右側板2Cの幅が狭くなった後、その隘路3Bから排出口3Cへかけて、次第に側板2Cの幅が広くなるように形成され、後部は後端を側方へ開く後広部2Dとされ、その長さも長く形成されている。
これによって導水路3に入る流水は、後部が負圧となって、水圧の差によって流水は後方へ引かれ、高速で通過し横軸ロータ4の回転速度を高める。
【0015】
前記前部の軸受8は、水車函体2の上板2Aから垂直に配設された筒状の軸支持体10から凸設された支持腕7に、導水路3の上下の中央に位置するように固定されている。後部の軸受9は、軸支持体10の下端部に固定されている。
【0016】
後部の軸支持体10の内部には、伝動手段の伝動軸11が設けられ、伝動軸11とロータ軸6の後部には、それぞれ笠歯車からなる伝動手段11A、6Aが装着されて互いに噛合されている。
【0017】
上板2Aの上には発電機12が配設され、その後方へ突出する主軸13の後端部には、傘歯車からなる伝動手段13Aを介して、前記伝動軸11の上端に固定された傘歯車からなる伝動手段11Bが連結されている。発電機12及び軸支持体10は、水密保持可能な被蓋14で被覆されている。
【0018】
横軸ロータ4の揚力型ブレード5が、前記隘路3B部分に位置するように配置され、ロータ軸6の前部は、導水路3内に設けた前部の軸受8に支持され、ロータ軸6の後部は、後部の軸受9に、水平に支持されている。
【0019】
ロータ軸6には、横軸ロータ4が固定され、ハブ4Aの周面に固定された複数の揚力型ブレード5の先端部は、上流方向へ傾斜する傾斜部5Aとされている。
傾斜部5Aに当る水流は、後方へ向かって遠心方向へ移動しようとするように作用し、揚力型ブレード5を回転させる。
【0020】
図2に示すように、水車函体2の左右両側壁の前端には、上下方向のヒンジ15、15を介して、観音開き状に開閉可能な開閉導水板16、16が枢着されている。
開閉導水板16、16は、270度回転可能となっており、前面は、前方に凸出する湾曲面としてある。水車函体2の前口を左右から閉塞することもできる。
【0021】
図2において、水路17の幅が水車筐体2の幅よりも大であっても、図示のように、開閉導水板16、16の先端を水路17の壁面に当接するように拡げると、湾曲した前面により水路17の水を、水車筐体2の導水路3内に、効果的に導くことができる。
【0022】
この場合、水路17の水深が浅いときには、導水板16、16が堰板の役割を果たし、流水を堰止めて、水車筐体2内の水位を高くすることができる。
また、図1に示すように、開閉導水板16、16の先端部の高さは、基部の高さより低くなっており、図2のように開閉導水板16、16を拡げていると、流れて来る固形物等は、開閉導水板16、16の高さの低い先端部分へ移動して、下流方向に流れて行く。
【0023】
図4は、水路17の側壁頂部間に横架した支持板18に、螺合した吊支杆19を介して、水車函体2を吊設した状態を示す正面図である。吊支杆19は、水車函体2の前後2箇所を支持して安定を図っており、かつネジ切りして、上下動させるようになっている。
【0024】
上記のように構成された簡易水力発電装置1は、図2に示す開閉導水板16、16を観音開き状に拡げた状態では、湾曲した導水板16に添って流れる水流は、コアンダ効果により、流速を高めて水車函体2の導入口3Aに案内されて、効果的に導水路3内に入る。
【0025】
導水路3内の水流は、導入口3Aの縦断面積から見て、相当に大きな縦断面積を有しているので、隘路3Bへかけて強い水流が生じ、隘路3Bを通過すると同時に、高速となって、水車函体2の排出口3Cから後方へ通過する。
【0026】
従って、水路17の水流よりも速い水流が、水車函体2と開閉導水板16によって生起されることとなり、狭い水路や、流れの緩やかな水路などにおいて、効率の良い発電をすることが出来る。図2中の水車函体2の前部に、除塵具20を装着してある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
小型軽量であるので、小水路等に簡易に設置する事ができ、簡易に発電させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1.簡易水力発電装置
2.水車函体
2A.上板
2B.底板
2C.側板
2D.後開部
3.導水路
3A.導入口
3B.隘路
3C.排出口
4.横軸ロータ
4A.ハブ
5.揚力型ブレード
5A.傾斜部
6.ロータ軸
6A.伝動手段
7.支持腕
8.前部軸受
9.軸支持体
10.後部軸受
11.伝動軸
11A、11B.伝動手段
12.発電機
13.主軸
13A.伝動手段
14.被蓋
15.ヒンジ
16. 開閉導水板
17.用水路
18. 支持板
19.吊支杆
20.除塵具
図1
図2
図3
図4