(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585918
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】自動車用低重量吸音型ダッシュパッド
(51)【国際特許分類】
B60R 13/08 20060101AFI20190919BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
B60R13/08
G10K11/16 120
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-88589(P2015-88589)
(22)【出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-209206(P2015-209206A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2018年4月17日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0048459
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0180236
(32)【優先日】2014年12月15日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 ミン 洙
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−344486(JP,A)
【文献】
特開2006−292946(JP,A)
【文献】
特表2013−522094(JP,A)
【文献】
特開平07−160269(JP,A)
【文献】
特開2010−260490(JP,A)
【文献】
特開2014−006297(JP,A)
【文献】
特開平10−340087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極細糸からなる第1吸音層と、
熱可塑性樹脂からなる遮音層と、
熱可塑性繊維(Thermoplastic Fiber)または熱可塑性異形断面糸(Multi−lobal Fiber)からなる第2吸音層と、を相互接合してなり、
前記極細糸は、メルトブローポリプロピレン繊維とポリプロピレンステープル繊維を100〜1,000g/m2に合糸させることを特徴とする自動車用低重量吸音型ダッシュパッド。
【請求項2】
前記遮音層は、オレフィン(Olefin)系樹脂とオレフィン系エラストマー(Elastomer)のうち1つまたは2つからなり、単位重量は100〜5,000g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用低重量吸音型ダッシュパッド。
【請求項3】
前記第2吸音層は、10重量%〜50重量%の低融点(LM、Low Melting)繊維を含むポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethyleneterephthalate)不織布であり、
前記低融点繊維は、ポリエチレン(Polyethylene)/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン(polypropylene)の複合繊維、またはポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維からなり、単位重量は100〜2,000g/m2であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用低重量吸音型ダッシュパッド。
【請求項4】
前記第1吸音層は、騒音が入ってくる側となるエンジンルーム側に配置されるようにして車両のダッシュパネルに設置されることを特徴とする請求項1に記載の自動車用低重量吸音型ダッシュパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用低重量吸音型ダッシュパッドに係り、より詳しくは、極細糸からなる吸音層と遮音層を相互接合して構成される自動車用低重量吸音型ダッシュパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エンジンルームと車両室内との境界部にダッシュパネル(Dash Panel)が装着される。このダッシュパネルにはエンジンの騒音などを吸収、遮断して、騒音などが車両室内に伝わることを防ぐ一種の吸遮音材のダッシュパッドが装着される。
ダッシュパッドは、エンジンの騒音を遮断、除塵、吸音する機能と、走行中に発生する低周波、高周波の複合エネルギが車両の室内空間に伝わらないようにする機能を有する。
従来の車両用ダッシュパッドは、表1に記載するように車種ごとに材質が異なり、その厚さ及び重さを変化させて積層される構造である。
【0003】
【表1】
表1に記載した各ダッシュパッドは、
図1に示すように、吸音層(エンジンルーム側)から遮音層(室内側)に向かって2層から4層に積層された構造を有する。
【0004】
このように従来のダッシュパッドは、吸遮音性能を向上させるために車種ごとに異なる材質が2層から4層積層されるが、吸音層にPU(Polyurethane)基材を適用し、遮音層にHard PET(Polyethyleneterephthalate)を適用するため、全般的に車種ごとの吸遮音性能を向上させるために重量及び原価が上昇するという問題があった。
また、大量生産する場合、性能を検証確認するための試作金型及び量産金型を始めとし、実際の製品生産のために成型、トリミング金型、及びPU発泡金型などが必要であるため、投資コスト及び製造原価が上昇し、吸音層と遮音層を貼り合わせるためのフィルム(PA6)などを必要とするため、原価上昇及び工数増加という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−221979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、吸遮音性能を極大化し、車両の室内快適性を改善できる自動車用低重量吸音型ダッシュパッドを提供することにその目的がある。
また、本発明は、軽量化及びそれによる車両の燃費改善、原価低減、工数低減及びインライン作業性が向上できる自動車用低重量吸音型ダッシュパッドを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、極細糸からなる第1吸音層と、
熱可塑性樹脂からなる遮音層と、
熱可塑性繊維(Thermoplastic Fiber)または熱可塑性異形断面糸(Multi−lobal Fiber)からなる第2吸音層と、
を相互接合してなることを特徴とする。
【0008】
前記極細糸は、メルトブローポリプロピレン繊維とポリプロピレンステープル繊維を100〜1,000g/m
2に合糸させることを特徴とする。
【0009】
前記遮音層は、オレフィン(Olefin)系樹脂とオレフィン系エラストマー(Elastomer)のうち1つまたは2つからなり、単位重量は100〜5,000g/m
2であることを特徴とする。
【0010】
前記第2吸音層は、10重量%〜50重量%の低融点(LM、Low Melting)繊維を含むポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethyleneterephthalate)不織布であり、
前記低融点繊維は、
ポリエチレン(Polyethylene)/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン(polypropylene)の複合繊維、またはポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維からなり、単位重量は100〜2,000g/m
2であることを特徴とする。
【0011】
前記第1吸音層は、騒音が入ってくる側となるエンジンルーム側に配置されるようにして車両のダッシュパネルに設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、
第1に、単位面積(m
2)当たり100〜1,000gに過ぎない極細糸を吸音層に適用して遮音層と接合することで、極細糸の優れた吸音性により吸遮音性能を極大化させ、軽量化を実現することができる。
第2に、従来、吸音層として用いられるポリウレタンの代わりに極細糸を適用することで、ポリウレタン発泡金型の使用を排除でき、それによって生産性の向上及び原価低減を図ることができる。
第3に、従来、吸音層と遮音層を貼り合わせるためのPA6フィルム及び付着工程などが不要となるため、原価及び工数の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)〜(d)は、従来技術によるダッシュパッドの構成図である。
【
図2】本発明による自動車用低重量吸音型ダッシュパッドの構成図である。
【
図3】本発明による自動車用低重量吸音型ダッシュパッドの吸音試験結果を示すグラフである。
【
図4】本発明による自動車用低重量吸音型ダッシュパッドの遮音試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して本発明について詳細に説明する。
図2に示す通り、本発明のダッシュパッドは、車両用ダッシュパネルに装着され、エンジンの騒音などを吸収及び遮断してエンジンの騒音などの車両室内への伝達を防止する一種の吸遮音材のダッシュパッドを提供するもので、極細糸からなる第1吸音層と、熱可塑性樹脂からなる遮音層と、熱可塑性繊維(Thermoplastic Fiber)または熱可塑性異形断面糸(Multi−lobal Fiber)からなる第2吸音層と、が相互接合された構造である。
ここで、第1吸音層に用いられる極細糸は、メルトブローポリプロピレン繊維(Melt−blown Polypropylene Fiber)とポリプロピレンステープル繊維(Polypropylene Staple Fiber)を100〜1,000g/m
2に合糸させたものである。
【0015】
より詳しくは、メルトブローポリプロピレン繊維を巻き取るダイ(Die)で、メルトブローポリプロピレン繊維を上方から下方に撒き散らすように紡糸する時、一側では空気パルス(Air Pulsing)がメルトブローポリプロピレン繊維に提供され、それと共に他側ではポリプロピレンステープル繊維をメルトブローポリプロピレン繊維に加えることによって、メルトブローポリプロピレン繊維とポリプロピレンステープル繊維が合糸されて100〜1,000g/m
2の極細糸が製造される。
また、遮音層は第1吸音層と第2吸音層との間に挿入され、遮音層は熱可塑性樹脂からなり、第2吸音層は熱可塑性繊維または熱可塑性異形断面糸からなる。
遮音層は、遮音の役割と共に第1吸音層と第2吸音層を接着させる役割を担う。
【0016】
本発明の好ましい実施例で、遮音層は熱可塑性樹脂のオレフィン(Olefin)系樹脂と熱可塑性エラストマー(TPE、Thermoplastic Elastomer)のオレフィン系エラストマー(TPO、Thermoplastic Olefin)のうち1つまたは2つからなり、単位重量は100〜5,000m/m
2である。
また、第2吸音層は、ポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethyleneterephthalate)、さらに好ましくはHard PETの熱可塑性繊維または熱可塑性異形断面糸からなり、より詳しくは、10重量%〜50重量%の低融点(LM、Low Melting)繊維を含むポリエチレンテレフタレート(PET、Polyethyleneterephthalate)不織布である。
【0017】
ここで、低融点繊維は、ポリエチレン(Polyethylene)/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維、ポリエチレン/ポリプロピレン(polypropylene)の複合繊維、またはポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレートの複合繊維からなり、単位重量は100〜2,000g/m
2である。
このような本発明のダッシュパッドを車両のダッシュパネルに適用する場合、第1吸音層はダッシュパネルにおいて騒音が入ってくる側となるエンジンルーム側に、そして第2吸音層は騒音が入ってくる側の反対側の車両室内側に配置する。
【0018】
以下、本発明の実施例を比較例と共に詳細に説明するが、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例
第1吸音層としてD3の極細糸と、遮音層として熱可塑性エラストマー(TPE)と、第2吸音層としてポリエチレンテレフタレート(PET)が順に積層された840mm×840mmの大きさを有するダッシュパッドを製作した。
参考として、D3は極細糸のグレード(grade)を示すが、D1は単位面積(m
2)当たり180g、D2は単位面積(m
2)当たり230g、D3は単位面積(m
2)当たり330gである。
実施例では極細糸としてメルトブローポリプロピレン繊維とポリプロピレンステープル繊維を330g/m
2に合糸させたものを用いた。
また、下記の表2の実施例によるダッシュパッドの構成において、「D3(上)」は、極細糸(D3)が、騒音が入ってくる側(車両のエンジンルーム側)に配置されることを意味する。
【0020】
比較例1〜2
比較例1〜2では、ポリエチレンテレフタレート(PET)と熱可塑性エラストマー(TPE)とポリウレタン(PU)が順に積層された840mm×840mmの大きさを有するダッシュパッドを製作した。
参考として、表2に記載した「PU(上)」は、ポリウレタン(PU)が、騒音が入ってくる側に配置されることを意味し、「PU(下)」は、ポリウレタン(PU)が、騒音が入ってくる側の反対側に配置されることを意味する。
【0021】
比較例3
前記実施例のように第1吸音層としてD3の極細糸と、遮音層として熱可塑性エラストマー(TPE)と、第2吸音層としてポリエチレンテレフタレート(PET)が順に積層された840mm×840mmの大きさを有するダッシュパッドを製作したが、極細糸(D3)が、騒音が入ってくる反対側に配置されるように逆にした構造で製作した。
参考として、表2で比較例3に記載した「D3(下)」は、極細糸(D3)が、騒音が入ってくる側の反対側(車両の室内側)に配置されることを意味する。
【0022】
比較例4〜5
比較例4〜5では、吸音層としてD3の極細糸と、遮音層としてポリエチレンテレフタレート(PET)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)が順に積層された840mm×840mm大きさを有するダッシュパッドを製作した。
参考として、表2で比較例4に記載された「D3(上)」は、極細糸(D3)が、騒音が入ってくる側に配置されることを意味し、比較例5に記載された「D3(下)」は、極細糸が、騒音が入ってくる反対側に配置されることを意味する。
【0023】
試験例1
前記実施例及び比較例によるダッシュパッドの吸音性能を確認するために、通常の簡易残響室法(Alpha Cabin Measurement:Absorption)を用いて実施例及び比較例のダッシュパッドに対する吸音率を試験し、その結果は下記の表3及び
図3に示す。
【表3】
表3及び
図3に示すように、本発明の実施例によるダッシュパッド、すなわちPET+TPE+D3(上)が順に積層及び接合されたダッシュパッドの吸音率が比較例に比べて高いことが分かる。
【0024】
試験例2
前記実施例及び比較例によるダッシュパッドの遮音性能を確認するために、通常のスモールキャビン法[APA MAT TEST:STL(Sound trans loss)]を用いて音響伝達損失率を試験し、その結果は下記の表4及び
図4に示す。
【表4】
表4及び
図4に示すように、本発明の実施例によるダッシュパッド、すなわちPET+TPE+D3(上)が順に積層及び接合されたダッシュパッドの音響伝達損失率が比較例に比べて周波数区間別に偏差があるが、比較例と同等な水準を維持することが分かる。
【0025】
以上、本発明の好ましい実施例を図示して説明したが、本発明は前述した特定の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。