特許第6585922号(P6585922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585922
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】電気接点組の改良
(51)【国際特許分類】
   H01H 51/20 20060101AFI20190919BHJP
   H01H 50/56 20060101ALI20190919BHJP
   H01H 50/64 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   H01H51/20 F
   H01H50/56 R
   H01H50/64 G
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-93969(P2015-93969)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-213069(P2015-213069A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】1407705.1
(32)【優先日】2014年5月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518263944
【氏名又は名称】ジョンソン エレクトリック インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】リチャード アンソニー コンネル
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−505345(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02418780(GB,A)
【文献】 実開昭54−146337(JP,U)
【文献】 実開昭62−157036(JP,U)
【文献】 特開2013−182890(JP,A)
【文献】 特開2013−143386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 51/20
H01H 50/56
H01H 50/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の固定電気接点を有する第1の端子と、
少なくとも1つの第2の固定電気接点を有する第2の端子と、
前記第1の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第1の可動電気接点を有する第1の導電性可動アームと、
前記第2の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第2の可動電気接点を有し、前記第1の導電性可動アームに対向する第2の導電性可動アームと、
前記第1及び第2の導電性可動アームに、互いに反対方向に、動力を与える作動手段と、を備え、
前記1つ又は各々の第1の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第2の固定電気接点は、一次接点組を形成し、前記1つ又は各々の第2の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第1の固定電気接点は、二次接点組を形成し、これによって、互いに対向する第1及び第2の可動アームは、第1及び第2の端子間に、電流共用アーム対を形成し、
前記一次接点組はリード接点であり、前記二次接点組はラグ接点であり、前記作動手段は、前記第2の可動電気接点を前記第1の固定電気接点に接触させる前に、前記第1の可動電気接点を前記第2の固定電気接点に接触させるようになっていることを特徴とする電気接触器。
【請求項2】
互いに対向する前記第1及び第2の可動アームを流れる電流が同じ方向に流れることによって、前記第1及び第2の可動アーム間に磁気吸引力が生じることを特徴とする、請求項1に記載の電気接触器。
【請求項3】
前記可動アームの少なくとも1つはシングルブレード構成を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の電気接触器。
【請求項4】
前記可動アームの少なくとも1つはスプリットブレード構成を有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気接触器。
【請求項5】
前記一次接点組の前記接点は、前記二次接点組の前記接点とは異なる寸法であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気接触器。
【請求項6】
前記一次接点組の前記接点は、前記二次接点組の前記接点よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載の電気接触器。
【請求項7】
更に、
少なくとも1つの第3の固定電気接点を有する第3の固定部材を有する第3の端子と、 少なくとも1つの第4の固定電気接点を有する第4の固定部材を有する第4の端子と、 前記第3の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第3の可動電気接点を有する第3の導電性可動アームと、
前記第4の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第4の可動電気接点を有し、前記第3の導電性可動アームに対向する第4の導電性可動アームと、を備え、
前記1つ又は各々の第3の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第4の固定電気接点は、三次接点組を形成し、前記1つ又は各々の第4の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第3の固定電気接点は、四次接点組を形成し、これによって、第3及び第4の可動アームは、第3及び第4の端子間に、別の電流共用アーム対を形成することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気接触器。
【請求項8】
前記三次接点組はリード接点であり、前記四次接点組はラグ接点であり、前記作動手段は、前記第4の可動電気接点を前記第3の固定電気接点に接触させる前に、前記第3の可動電気接点を前記第4の固定電気接点に接触させるようになっていることを特徴とする、請求項7に記載の電気接触器。
【請求項9】
前記第3の可動アーム、第3の端子、第3の固定接点、及び第3の可動接点は、前記第1の可動アーム、第1の端子、第1の固定接点、及び第1の可動接点と、形状及び/又は向きが同じであり、
前記第4の可動アーム、第4の端子、第4の固定接点、及び第4の可動接点は、前記第2の可動アーム、第2の端子、第2の固定接点、及び第2の可動接点と、形状が同じであることを特徴とする、請求項7又は8に記載の電気接触器。
【請求項10】
互いに対向する前記第3及び第4の可動アームを流れる電流が同じ方向に流れることによって、前記第3及び第4の可動アーム間に磁気吸引力が生じることを特徴とする、請求項7、8又は9に記載の電気接触器。
【請求項11】
互いに対向する前記第3及び第4の可動アームを流れる電流は、前記第1及び第2の可動アームを流れる電流に対して平行且つ反対に流れることを特徴とする、請求項10に記載の電気接触器。
【請求項12】
前記電流共用アーム対と前記別の電流共用アーム対との間の平行且つ反対方向の電流の流れの結果として、前記第2及び第4の可動アーム間に磁気反発力が生じることを特徴とする、請求項11に記載の電気接触器。
【請求項13】
前記作動手段は、中央に取り付けられた磁石と、前記磁石の両側に配置される第1及び第2の駆動可能コイルと、前記第1及び第2のコイル間の点で枢動可能である磁気吸引可能な揺動電機子と、各可動アームを作動させる前記揺動電機子の端部に接続される作動素子とを含み、
前記第1のコイルを駆動することによって、前記第1のコイルの磁束が減少し、これに応じて、前記第2のコイルの磁束が増加し、これにより、前記揺動電機子が前記第2のコイルに係着することによって、各可動アームを第1の方向に作動させ、
前記第2のコイルを駆動することによって、前記第2のコイルの磁束が減少し、これに応じて、前記第1のコイルの磁束が増加し、これにより、前記揺動電機子が前記第1のコイルに係着することによって、各可動アームを第2の方向に作動させることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電気接触器。
【請求項14】
前記第1及び第2のコイルは、共通の中央接続部に相互接続されることを特徴とする、請求項13に記載の電気接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、標準的家庭用電源幹線電圧、通常、交流100〜250Vで負荷切断機能を実施する近年の電気メータ、いわゆる「スマートメータ」に用いられる中レベルの交流(AC)切換接触器用(ではあるが、必ずしもこれに限られない)電気接触器に関する。
【0002】
更に、このような中電流スイッチの電気接点の開閉タイミングをより正確に制御して、アーク損傷を低減又は防止することによって、接点の動作寿命を延ばすことが望まれる。
【背景技術】
【0003】
多くの電気接触器は、多数の切換負荷サイクルの場合、公称電流を例えば100Aで切換可能であることが知られている。切換接点は、タック溶接を防止するのに適した銀合金を利用する。可動接点を有する切換アームは、当該公称電流での最小限の自己加熱によって、容易に作動して切断機能を果たすように構成されなければならない。
【0004】
たいていのメータの仕様は、接点の溶接がない場合の装置の動作寿命によって、良好な公称電流切換を規定している。しかしながら、中レベルの短絡故障時に、接点は溶接してはならず、次のアクチュエータ駆動パルス駆動時に開かなければならないことも必要である。ずっと高いレベルの関連する完全短絡故障時に、切換接点は安全に溶接できることが規定されている。換言すれば、保護ヒューズが破断したり、回路遮断器がドロップアウトして、負荷に対する通電幹線給電を切断するまで、完全短絡時の間、可動接点組は損傷を受けていない状態でなければならず、破裂したり、危険な溶融材料を発してはならない。この短絡時間の長さは、たいてい、幹線給電のわずか1/2サイクルに過ぎないが、ある領域では、この短絡時間は4サイクル全長と同じ長さであることが必要である。
【0005】
欧州やその他の大部分の国では、支配的なメータ切断電源は、IEC62055−31の仕様に従って、100A、より最近では120Aで、単相交流230Vである。また、技術的安全面は、UL508、ANSI C37.90.1、IEC68−2−6、IEC68−2−27、IEC801.3などの関連する他の仕様に含まれる。
【0006】
装置の動作寿命による耐電圧短絡故障や公称電流などのIECの仕様要件を満たすと称する中電流メータ切断接触器が多く知られている。また、限定パラメータは特定の国に関係する場合があり、ここで、交流電源は、下端で40〜60Aの範囲、最大100A、より最近では最大120Aまでの公称電流の単相である場合がある。これらのメータの用途の場合、基本的な切断要件として、関連するメータのハウジングに容易に組み込むことができるコンパクトで頑強な電気接触器が求められる。
【0007】
IEC62055−31の仕様に関連して、状況はより複雑化している。許容資格又は承認のために行われる特定の試験が定めるように、短絡故障レベルの耐電圧に関する頑強レベルを示すいくつかの利用カテゴリ(UC)に合わせて、メータは構成及び指定される。これらの故障レベルは、メータの公称電流定格に依存していない。
【0008】
アクチュエータ手段として働くものとして、通常、接点の開閉を制御するように駆動される電機子又はプランジャがある。しかしながら、一般的なアクチュエータは、一方向にしか作動できず、多極接触器において問題が生じる場合がある。
【0009】
平行又は実質的に平行な可動アームを利用する接触器もあり、これらのアームは、楔形状の部材によって、同時に作動され、この部材はアーム間に押し込まれて、アームを互いに分離し、2つの接点を同時に切断する。しかしながら、可動アームを開閉する単に物理的な手段は、アームに電流を流すことによって生じる可能性がある磁気力を無視するが、この磁気力を利用すれば、接点の開閉を円滑に行うことができるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題の解決法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの第1の固定電気接点を有する第1の端子と、少なくとも1つの第2の固定電気接点を有する第2の端子と、前記第1の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第1の可動電気接点を有する第1の導電性可動アームと、前記第2の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第2の可動電気接点を有し、前記第1の導電性可動アームに対向する第2の導電性可動アームと、前記第1及び第2の導電性可動アームに、互いに反対方向に、動力を与える作動手段と、を備える電気接触器を提供し、ここで、前記1つ又は各々の第1の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第2の固定電気接点は、一次接点組を形成し、前記1つ又は各々の第2の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第1の固定電気接点は、二次接点組を形成し、これによって、互いに対向する第1及び第2の可動アームは、第1及び第2の端子間に、電流共用アーム対を形成する。
【0012】
このような電気接触器の利点は、第1及び第2の可動アーム間で電流負荷を分担することである。接点が互いに閉じているが、完全には閉じられていないとき、接点間の電気アークが生じる。アーク時に存在する侵食エネルギは電流負荷に比例するので、アーム間で電流を共用すると、前記侵食エネルギは低減する。
【0013】
アークは、また、接点の加熱を引き起こし、接点が溶融する場合がある。侵食エネルギを低減することによって、都合よく、それぞれの接点組の接点を小型化することができる。アーク時、接点間に伝わるエネルギが小さくなると、加熱効果が減少するので、より小型の接点は、溶融及び/又はタック溶接しにくくなる。
【0014】
作動手段は可動アームを同時に付勢することができるが、好ましくは、前記一次接点組をリード接点にして、前記二次接点組をラグ接点にすることができる。この場合、前記作動手段は、前記第2の可動電気接点を前記第1の固定電気接点に接触させる前に、前記第1の可動電気接点を前記第2の固定電気接点に接触させるようになっている。
【0015】
リード/ラグ接点構成を用いる場合、リード接点は、まず、接点を閉じると、通電することができる。この接点は、タック溶接を回避するように、接点の侵食エネルギに伴う熱をより放散し易いような標準的な大きさにすることができる。
【0016】
しかしながら、ラグ接点が閉じるときまでに、接点は既に閉じているので、ラグ接点を閉じることに伴うアークの危険は最小限である。このことに留意して、ラグ接点をリード接点よりもかなり小さく形成することによって、接点の形成に用いる導電性材料の量を減らすことができる。導電性材料は、通常、銀などの貴金属なので、これにより、接触器の製造コストを大幅に削減することができる。
【0017】
互いに対向する前記第1及び第2の可動アームを流れる電流が同じ方向に流れることによって、前記第1及び第2の可動アーム間に磁気吸引力が生じることが好ましい。
【0018】
可動アーム間の磁気吸引力は、接点が一旦閉じると、接点跳動の抑制に役立つ。接点跳動は、衝撃力によって、接点に物理的な損傷を与える場合があるが、より有害なのは、接点の閉期間が制御されないことがある。接点の閉動作を、関連する負荷電流のゼロクロス点に一致させることが有利である。そうすると、有効な接点の侵食エネルギが最小になり、アークが生じる場合がある。接点跳動は、ゼロクロス点を閉時間に一致させ難くするので、接点跳動を最小限に抑える試みは非常に有利である。
【0019】
前記可動アームの少なくとも1つはシングルブレード構成を有することが好ましい。第1の可動アームは、シングルブレード構成を有し、上部に第1の可動接点を有し、第2の固定接点は、第1の可動接点に一致するような大きさ及び位置であることがより好ましい。更に、前記可動アームの少なくとも1つはスプリットブレード構成を有することができ、第2の可動アームは、2つのブレードを含むスプリットブレード構成を有し、第2の可動接点の2つは、各ブレードに1つずつ設けられ、2つの第1の固定接点は、2つの第2の可動接点に一致するような大きさ及び位置であることがより好ましい。
【0020】
前記一次接点組の前記接点は、前記二次接点組の前記接点とは異なる寸法であることが更に好ましい。
【0021】
更に、可動アームを個々のブレードに分割すると、電流共用効果が更に得られ、有益にも、二次接点組の接点を更に小型化できるので、この接点に用いる貴金属の量を更に減らすことができる。
【0022】
前記電気接触器は、更に、少なくとも1つの第3の固定電気接点を有する第3の固定部材を有する第3の端子と、少なくとも1つの第4の固定電気接点を有する第4の固定部材を有する第4の端子と、前記第3の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第3の可動電気接点を有する第3の導電性可動アームと、前記第4の端子と電気的に連通し、上部に少なくとも1つの第4の可動電気接点を有し、前記第3の導電性可動アームに対向する第4の導電性可動アームと、を備え、前記1つ又は各々の第3の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第4の固定電気接点は、三次接点組を形成し、前記1つ又は各々の第4の可動電気接点及び前記1つ又は各々の第3の固定電気接点は、四次接点組を形成し、これによって、第3及び第4の可動アームは、第3及び第4の端子間に、別の電流共用アーム対を形成する。
【0023】
通常、電気接触器は、安全仕様に合わせるように、2極装置として形成される。したがって、第2の電流共用アーム対を設けて、前記2極接触器を形成することは有利である。
【0024】
前記三次接点組はリード接点であり、前記四次接点組はラグ接点であり、前記作動手段は、前記第4の可動電気接点を前記第3の固定電気接点に接触させる前に、前記第3の可動電気接点を前記第4の固定電気接点に接触させるようになっていることが好ましい。
【0025】
前記第3の可動アーム、第3の端子、第3の固定接点、及び第3の可動接点は、前記第1の可動アーム、第1の端子、第1の固定接点、及び第1の可動接点と、形状及び/又は向きが同じ又は実質的に同じであることが好ましい。
【0026】
前記第3及び第4の可動アームを、前記第1及び第2の可動アームと実質的に同様に構成することによって、その有利な特徴の全てを維持する。
【0027】
前記1つ又は各々の可動アームは、少なくとも2つの導電性被膜層を含むことによって、曲げ力を小さくすることが好ましい。
【0028】
前記1つ又は各々の可動アームに複数の導電層を積層することによって、タック溶接の悪影響を減じることができる。なぜならば、可動アームを複数のブレードに分割したときに得られる電流共用と同様に、導電層を介して、電流が共用されるからである。
【0029】
互いに対向する前記第3及び第4の可動アームを流れる電流が同じ方向に流れることによって、前記第3及び第4の可動アーム間に磁気吸引力が生じることが好ましい。
【0030】
再び、第3及び第4のアームの電流の流れによって、磁気吸引力が生じて、接点組をより確実に閉じることによって、接点跳動の影響を抑制することができる。
【0031】
前記第3及び第4の可動アームを流れる電流は、前記第1及び第2の可動アームを流れる電流に対して平行且つ反対に流れることが好ましく、更に、前記電流共用アーム対と前記別の電流共用アーム対との間の平行且つ反対方向の電流の流れの結果として、前記第2及び第4の可動アーム間に磁気反発力が生じることが好ましい。
【0032】
別の電流共用アーム対に、第1の電流共用アーム対と逆方向に電流を流すことによって、各アーム対の最も近いアーム同士(この場合、第2及び第4の可動アーム)間に磁気反発力が生じる。このため、更に、接点を閉じる力が付与されることによって、接触器の耐接点跳動性が向上する。
【0033】
前記作動手段は、中央に取り付けられた磁石と、前記磁石の両側に配置される第1及び第2の駆動可能コイルと、前記第1及び第2のコイル間の点で枢動可能である磁気吸引可能な揺動電機子と、各可動アームを作動させる前記揺動電機子の端部に接続される作動素子とを含み、前記第1のコイルを駆動することによって、前記第1のコイルの磁束が減少し、これに応じて、前記第2のコイルの磁束が増加し、これにより、前記揺動電機子が前記第2のコイルに係着することによって、各可動アームを第1の方向に作動させ、前記第2のコイルを駆動することによって、前記第2のコイルの磁束が減少し、これに応じて、前記第1のコイルの磁束が増加し、これにより、前記揺動電機子が前記第1のコイルに係着することによって、各可動アームを第2の方向に作動させることが好ましい。
【0034】
枢動アクチュエータを有する電気接触器の利点は、作動素子が揺動電機子の両側に取り付けられても、2つの作動を同時に行うことができるコンパクトな装置を形成できることである。これによって、1回の係着動作で、同時又はリード/ラグ制御による接点の開閉を行うことができる、可動アームの対向片持ち支持構成が可能になる。したがって、第1及び第2の可動アーム、及び第3及び第4の可動アーム(これらを設けた場合)を、同時に開閉するように作動させることができる。
【0035】
前記第1及び第2のコイルは、共通の中央接続部に相互接続されることが好ましい。
【0036】
第1及び第2のコイルを相互接続することによって、有益なことに、第2のコイルを駆動すると、第1のコイルは正味の調節又はフィードバック効果を受けることができ、逆もまた同様である。コイルの特徴を綿密に最適化することによって、動的遅延を接点の閉動作に追加することができ、閉時間を関連する負荷電流の波形のゼロクロスに調整することによって、接点の侵食エネルギを最小にすることができる。
【0037】
揺動電機子は、互いに鈍角に配置される2つの小アームを含むことが好ましい。
【0038】
このような揺動電機子の構成によって、確実に、係着時に適度な作動が行われるとともに、また、確実に、係着していない電機子の小アームが、対向するコイルの発生磁界内に残る。
【0039】
電気接触器は、更に、第1及び/又は第2のコイルを付勢する直流(DC)電源を備え、この直流電源は、駆動回路を介して駆動パルスを出力することが好ましい。
【0040】
代替例として、電気接触器は、更に、第1及び/又は第2のコイルを付勢する交流(AC)電源を備え、この交流電源は、駆動回路を介して駆動パルスを出力することができる。
【0041】
直接的な直流駆動又は交流駆動の接触器を想到することができ、フィードバック安定化作動手段を関連する負荷の波形のゼロクロスに合わせて、アークによる接点の侵食の悪影響を減じることができる。
【0042】
交流駆動パルスは、接点間の侵食エネルギを小さくするように、1/2サイクルの波形分布を有することが好ましい。代替例として、且つ、最も好ましくは、交流駆動パルスは、ピーク負荷電流の前の接点分離を防ぐように、1/4サイクルの波形分布を有することができる。
【0043】
前記コイルのうちの一方の駆動は、他方のコイルに電磁界を誘起し、平均調節磁束及び減衰効果によって、接点の開閉を交流波形のゼロクロスと同期又は実質的に同期させることが好ましい。
【0044】
駆動パルスを1/2又は1/4サイクルに切り詰めることは、接点を閉じる際に有効な、損傷を与える接点の侵食エネルギを制限するのに役立つ。ピーク負荷電流点の前に接点の閉動作を行うことはできないので、1/4サイクルのパルスが最も有利である。この点の前に閉じると、通常、大きく有害な接点侵食エネルギが生じる。
【0045】
前記1つ又は各々の第2の可動接点は、接点の開動作時に進むようになっていて、前記1つ又は各々の第1の可動接点は、接点の開動作時に遅れるようになっていることが好ましい。
【0046】
リード/ラグ構成を設けることによって、第2の可動アームに関連する接点を小型化することができる。なぜならば、これらの接点は、リード接点の同様の加熱効果を受けないからである。これにより、都合よく、接点組の形成に用いる貴金属の量を減らすことができる。
【0047】
接点跳動は、電気接点に対する破壊力になることができるので、接点の閉じを向上させる方法を提供することは、上記の悪影響を回避するのに有利である。
【0048】
これは、互いに対向する可動アームを1つの接点組内に設けることによって、容易に行うことができる。電流はアームを一方向に流れるので、アーム同士は互いに吸引し合う。第2の逆向きのアームの組を設けることによって、反発効果により、更に、接点を閉構成に保持することができる。これらの効果を同時に提供することによって、その利益を組み合わせる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明の第1の態様による電気接触器の第1の実施形態の模式図を示す。
図2】接点が接点閉構成である、図1の電気接触器の平面図を示す。
図3図2の電気接触器のアクチュエータの拡大平面図を示す。
図4図2に示す線A−Aに沿った、図2の電気接触器の側断面図である。
図5図2に示す電気接触器と共に用いられる第1又は第3の可動アーム及び第2又は第4の可動アームの平面図を示す。
図6a図3のアクチュエータをその作動サイクルを通じて種々の位置で示す(明確にするため注釈を含む)。
図6b図3のアクチュエータをその作動サイクルを通じて種々の位置で示す(明確にするため注釈を含む)。
図6c図3のアクチュエータをその作動サイクルを通じて種々の位置で示す(明確にするため注釈を含む)。
図6d図3のアクチュエータをその作動サイクルを通じて種々の位置で示す(明確にするため注釈を含む)。
図6e図3のアクチュエータをその作動サイクルを通じて種々の位置で示す(明確にするため注釈を含む)。
図7】正の1/2サイクルの駆動パルスで駆動されるとき電気接触器が行う接点の閉動作に対する追加制御をグラフで示す。
図8図7と同様に、負の1/2サイクルの駆動パルスで駆動されるとき電気接触器が行う接点の開動作に対する追加制御をグラフで示す。
図9】正の1/4サイクルの駆動パルスで駆動されるとき電気接触器が行う接点の閉動作に対する追加制御をグラフで示す。
図10図9と同様に、負の1/4サイクルの駆動パルスで駆動されるとき電気接触器が行う接点の開動作に対する追加制御をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
ここで、添付図面の図を参照して、単なる例示として本発明の好ましい実施形態を説明する。図において、複数の図に現れる同一の構造体、要素又は部品は、一般に、それらが現れる全ての図において同じ符号で表記される。図内に示される構成部品及び構造部の寸法は、一般に、便宜のため及び提示の明確さのために選択されたものであり、必ずしも縮尺通りではない。
【0051】
まず、図面の図1図4を参照して、電気接触器(全体を符号10で示し、この場合、2極装置である)の第1の実施形態を示す。2極装置について説明するが、提案する改良は、単極装置又は3極以上を有する装置に適用可能である。
【0052】
接触器10は、第1、第2、第3及び第4の端子12,14,16,18を含み、各端子は、接触器ハウジング20から延びて、端子スタブ22で終端し、接触器ハウジング20のハウジングベース24及び/又は直立外周壁26に取り付けられる。ハウジングベースは破線で表し、ハウジングカバーは、明確にするため、図示していない。
【0053】
4つの端子12,14,16,18は、好ましくは、ハウジング20内の矩形の頂点を規定するように配置され、作動手段30のアクチュエータ28は中間空間に挿入される。したがって、接触器10は、これらの端子12,14,16,18の位置に応じて分割することができ、第1及び第2の端子12,14は、接触器ハウジング20の上部32にあり、第3及び第4の端子16,18は、接触器ハウジングの下部34に配置される。同様に、第2及び第3の端子14,16は、接触器ハウジング20の左側36に配置され、第1及び第4の端子12,18は、右側38に配置される。
【0054】
第1の端子12から第2の端子14に向かって、導電・可撓性ブレードとして形成されている第1の可動アーム40aが延びている。第1の可動アーム40aの末端42aから長爪44aが延び、基端46aに2つの開口48aがあり、これらの開口は、第1の可動アーム40aの横軸に沿って互いに離間している。図5参照。
【0055】
第1の可動アーム40aは、開口48aを介して第1の端子12に固定される2つの第1の固定接点50aを介して、第1の端子12に固着される。末端42aに、第1の可動接点52aが配置される。接点50a,52aは、導電性材料、通常、銀から形成され、第1の可動アーム40aの幅の少なくとも半分になるような大きさにすることができる。
【0056】
第2の端子14から第1の端子12に向かって第2の可動アーム54aが延び、このアームは、導電・可撓性ブレードとして形成され、ブレードは、末端58aから基端60aに向かってブレードの長さの大部分に延びている中心スプリット56aを有する。したがって、このアーム構成は、左右ブレード62a,64aを有する2ブレード構成として知られる。
【0057】
左右ブレード62a,64aの各々の末端58aから、第1の可動アーム40aのものと同様の長爪66aが延びている。基端60aには1つの開口68aがある。
【0058】
第2の可動アーム54aは、開口68aを介して第2の端子14に固定される1つの第2の固定接点70aを介して、第2の端子14に固着される。左右ブレード62a,64aの各々の末端58aに、第2の可動接点72aがある。再び、接点70a,72aは、導電性材料、通常、銀から形成される。
【0059】
第1の可動接点52a及び第2の固定接点70aは、好ましくは、相補的な大きさ及び形状であり、一緒に一次接点組74を形成する。第2の可動接点72a及び第1の固定接点50aも、好ましくは、相補的な大きさ及び形状であり、一緒に二次接点組76を形成する。
【0060】
組み合わせて、一次接点組74、二次接点組76、及び第1及び第2の可動アーム40a,54aは、電流共用アーム対78aを形成する。
【0061】
第1の端子12の斜向かいの第3の端子16から第4の端子18に向かって、導電・可撓性ブレードとして形成されている第3の可動アーム40bが延びている。第3の可動アーム40bの末端42bから長爪44bが延び、基端46bに2つの開口48bがあり、これらの開口は、第3の可動アーム40bの横軸に沿って互いに離間している。
【0062】
第3の可動アーム40bは、開口48bを介して第3の端子16に固定される2つの第3の固定接点50bを介して、第3の端子16に固着される。末端42bに、又はこれに隣接して、第3の可動接点52bが配置される。接点50b,52bは、導電性材料、通常、銀から形成される。
【0063】
第4の端子18から第3の端子16に向かって第4の可動アーム54bが延び、このアームは、導電・可撓性ブレードとして形成され、ブレードは、末端58bから基端60bに向かってブレードの長さの大部分に延びている中心スプリット56bを有する。このアーム構成も、左右ブレード62b,64bを有する2ブレード構成である。
【0064】
左右ブレード62b,64bの各々の末端58bから、第2の可動アーム54aのものと同様の長爪66bが延びている。基端60bには1つの開口68bがある。
【0065】
第4の可動アーム54bは、開口68bを介して第4の端子18に固定される1つの第4の固定接点70bを介して、第4の端子18に固着される。左右ブレード62b,64bの各々の末端58bに、第4の可動接点72bがある。再び、接点70b,72bは、導電性材料、通常、銀から形成される。
【0066】
第3の可動接点52b及び第4の固定接点70bは、好ましくは、相補的な大きさ及び形状であり、一緒に三次接点組80を形成する。第4の可動接点72b及び第3の固定接点50bも、好ましくは、相補的な大きさ及び形状であり、一緒に四次接点組82を形成する。
【0067】
組み合わせて、三次接点組80、四次接点組82、及び第3及び第4の可動アーム40b,54bは、別の電流共用アーム対78bを形成する。
【0068】
用いる接点は、これに伴う厳しい切換及び通電の負担に耐えることにより、接点の摩耗を減らすため、十分な上層銀合金の厚さを有することが重要である。従来の直径8mmのバイメタルの電気接点は、0.65〜1.0mmの範囲の銀合金上層の厚さを有する。このため、銀のコストがかなりかかる。
【0069】
高い短絡負荷状態での接点間のタック溶接の問題に対処するため、特定の化合物の上層を用いることができ、この場合、銀合金の母材を酸化タングステン添加物で濃縮する。上層の母材への酸化タングステン添加物の添加には、多くの重要な効果及び利点があり、この中には、より均一な上層構造を形成し、侵食面をより均一に混ぜるが、銀を多く含む領域は形成しないので、タック溶接を制限又は防止するということがある。酸化タングステン添加物は、切換点で全体の溶融/溜り温度を上昇させ、再びタック溶接を阻害し、酸化タングステン添加物は、所定の厚さに対して、上層の全質量の適度な割合なので、その使用はコストの節約になる。
【0070】
全米規格協会(ANSI)の要件は、特に、最大200Aまでの公称電流を要求している。短絡電流は12kA rmsであるが、4負荷サイクル全長に相当するより長い耐電圧時間で、「安全な」溶接が許容できる。更に、5kA rmsの要件の「中」短絡電流レベルが適用される場合があり、この場合、接点は、6負荷サイクル全長を超えて、タック溶接してはならない。
【0071】
したがって、各可動アーム40a,54a,40b,54bは、更に、少なくとも2つの導電性被膜層を含むことによって、効果的に積層可動アームを形成することができる。各層は、好ましくは、単層可動アームよりも薄く、したがって、より大きな加熱効果に対応することができる。これにより、有益なことに、タック溶接しにくくなる。
【0072】
作動手段30は、中央に配置されたアクチュエータ28と、2つの摺動可能な作動素子84a,84bとを含み、可動アーム40a,54a,40b,54bの各々を作動可能である。
【0073】
アクチュエータ28は、好ましくは、薄く実質的に矩形のベースプレート88を含む鉄ヨーク86を備える。上部矩形面90からアクチュエータ28の横中心線Lに沿って、永久磁石積層体92が延びることによって、アクチュエータ28の左側36’及び右側38’を規定する。磁石積層体92は、好ましくは、少なくとも1つの希土類磁石を備える。しかしながら、積層体の代わりに、単体の、好ましくは永久的な、磁気素子を用いることもできる。
【0074】
ベースプレート88の上部矩形面90の左側36’から第1の駆動可能コイル94が延び、上部矩形面90の右側38’から第2の駆動可能コイル96が延びている。各コイル94,96は、中心円筒鉄コア98a,98bを備え、これらのコアには、導電性巻線100a,100bが、きつく螺旋状に巻き付けられている。
【0075】
ヨーク86は、更に、ベースプレート88と実質的に同様の形状を有するキャッププレート102を備え、キャッププレート102は、上部及び下部矩形面104,106を含む。下部矩形面106は、永久磁石積層体92及びコイル94,96の上縁に当接する。
【0076】
キャッププレート102の上面104には、アクチュエータ28の横中心線Lに沿って配置された支軸108がある。支軸108は、2つの端部キャップ112によってキャッププレート102に固着される回動自在な枢軸ピン110を備える。
【0077】
更に、2つの細長い対向する小アーム116として一体形成される揺動電機子114が設けられ、各小アーム116は、その本体120が互いに鈍角に配置されるように、中心点118で接続される。揺動電機子114が回動自在な枢軸ピン110に接続されることによって、揺動電機子114は支軸108を中心として枢動することができる。したがって、各小アーム116は、アクチュエータ28の左側36’又は右側38’のいずれかに係わることによって、左側小アーム116a及び右側小アーム116bを規定する。
【0078】
作動素子は、左側及び右側の摺動作動素子84a,84bとして設けられ、これらの作動素子は、アクチュエータ28と可動アーム40a,54a,40b,54bとを相互接続する。各作動素子84a,84bは、第1及び第2の端部124a,124b,126a,126bを有する細長い本体122を備え、この場合、これらの端部は2つの突起128を有し、突起128は、中央に配置され、第1の端部124寄りに若干ずれて、揺動電機子114の小アーム116の自由端130に係合するようになっている。
【0079】
左側作動素子84aの第1の端部124aには、第1の可動アーム40aの爪44aに係合する第1の溝付きリフタ132aがある。上記作動素子84aの第2の端部126aには、第4の可動アーム54bの爪66bに係合する2つの第4の溝付きリフタ134aがある。
【0080】
同様に、右側作動素子84bの第1の端部124bには、第2の可動アーム54aの爪66aに係合する2つの第2の溝付きリフタ134bがある。上記作動素子84bの第2の端部126bには、第3の可動アーム40bの爪44bに係合する第3の溝付きリフタ132bがある。
【0081】
第1の可動アーム40aの爪44aは、右側作動素子84bの第1の端部124bからの第2の可動アーム54aの相当する爪66aよりも左側作動素子84aの第1の端部124aから若干離れて、第1の溝付きリフタ132aに係合される。
【0082】
同様に、第3の可動アーム40bの爪44bは、左側作動素子84aの第2の端部126aからの第4の可動アーム54bの相当する爪66bよりも右側作動素子84bの第2の端部126bから若干離れて、第3の溝付きリフタ132bに係合される。
【0083】
左側作動素子84aは、左側小アーム116aの自由端130aに係合し、右側作動素子84bは、右側小アーム116bの自由端130bに係合する。
【0084】
第1及び第2のコイル94,96は別々に駆動可能なので、順次駆動して、揺動電機子114を作動させることができる。コイル94,96を駆動しない場合、永久磁石積層体92によって生じる磁束が存在し、この磁束は、アクチュエータ28の左側36’及び右側38’に拡散する。このような状況では、揺動電機子114は、両側36’,38’に対する強い係着力を一切受けない。
【0085】
接触器10の接点が開いている状態及び接点が閉じている状態を、図6a〜図6eに、それぞれ示し、ここで、可動アーム40a,54a,40b,54bの爪44a,44b,66a,66bを移動させる左側及び右側の作動素子84a,84bの動きを示す。
【0086】
コイル94,96の駆動によって、関連するコイル94,96、及び、アクチュエータ28の、コイル94,96が配置される側36,38の鉄ヨーク86に、消磁効果が生じる。これに対応して、対向する側36,38に存在する磁束が増加する。したがって、増加した磁束によって、揺動電機子114が、対向するコイル94,96に引きつけられる。そのようなものとして、図6a〜図6eに示すように、作動シーケンスを発生させることができる。
【0087】
使用時、且つ、図6a〜図6eを参照すると、第2のコイル96を駆動することによって、右側38’の磁束が消磁又は減少し、これに応じて、左側36’の磁束が増加する。したがって、左側小アーム116aは、第1のコイル94側に引きつけられ、左側36’で係着する。したがって、左側作動素子84aは、その第1の端部124aに向かって上方に摺動し、同時に、第1及び第4の可動アーム40a,54bを押す。
【0088】
揺動電機子114が支軸108を中心として枢動するにつれて、右側小アーム116bは第2のコイル96から遠ざかり、右側作動素子84bをその第2の端部126bに向かって摺動させることによって、第2及び第3の可動アーム54a,40bを引っ張る。左側作動素子84aが係着した構成を、図6aに示す。
【0089】
その結果、第2の可動アーム54aが押されるとともに、第4の可動アーム54bが引っ張られ、二次及び四次接点組76,82を開き、第2及び第4の可動接点72a,72bが、第1及び第3の固定接点50a,50bとの接触から解除される。
【0090】
少し後に、第1の可動アーム40aの押し動作及び第3の可動アーム40bの引張動作が同時に行われることによって、一次及び三次接点組74,80が開き、第1及び第3の可動接点52a,52bが、それぞれの第2及び第4の固定接点70a,70bとの接触から解除される。
【0091】
逆に、第1のコイル94を駆動すると、左側36が消磁されるか、又は、磁束が減じられ、揺動電機子114の左側小アーム116aは、第1のコイル94との係着を解除する。アクチュエータ28の係着を解除した状態を、図6bに示す。
【0092】
第1のコイル94の駆動によって、右側38の磁束が増加する。右側小アーム116bは、第2のコイル96側に引きつけられ、右側38で係着する。したがって、右側作動素子84bは、その第1の端部124bに向かって上方に摺動することによって、第2及び第3の可動アーム54a,40bを押す。この状態を図6cに示す。
【0093】
同様に、左側小アーム116aは第1のコイル94から遠ざかり、左側作動素子84aをその第2の端部126aに向かって下方に摺動させることによって、第1及び第4の可動アーム40a,54bを引っ張る。
【0094】
第1の可動アーム40aの引張動作及び第3の可動アーム40bの押し動作が同時に行われることによって、一次及び三次接点組74,80が閉じられ、第1及び第3の可動接点52a,52bを、それぞれの第2及び第4の固定接点70a,70bに接触させる。この時点で、回路は完成し、第1の可動アーム40aを介して第1及び第2の端子12,14間、及び、第3の可動アーム40bを介して第3及び第4の端子16,18間が通電する。
【0095】
少し後に、第2の可動アーム54aが押されるとともに、第4の可動アーム54bが引っ張られ、二次及び四次接点組76,82を閉じ、第2及び第4の可動接点72a,72bを、第1及び第3の固定接点50a,50bに接触させる。
【0096】
一旦、二次及び四次接点組76,82が閉じられると、第1及び第3の可動アーム40a,40bと、第2及び第4の可動アーム54a,54bの左右ブレード62a,64a,62b,64bとの間で、電流が共用される。
【0097】
接触器10のための可動アーム対78a,78bを有することの第1の利点は、個々のアーム間で電流が共用され、上記のようなリード/ラグ構成が可能になるので、これに応じて、接点の形成に必要な貴金属の量が減る。可動アーム対78a,78bの利点を、第1及び第2の可動アーム40a,54aについて説明するが、この考えは、第3及び第4の可動アーム40b,54bにも等しく適用可能である。
【0098】
本実施形態では、第1の可動アーム40aは、リードアームであり、大きな第1の可動接点52aを有する単一ブレードである。第1の可動接点52aは、第2の固定接点70aに接触して、二次接点組76が閉じられる前に、一次接点組74を閉じる。第1の可動接点52aは、電流全体がこの点で一次接点組74を介して伝わるので、タック溶接を抑制するため、大きくなければならない。
【0099】
第2の可動アーム54aの左右ブレード62a,64aは、第1の可動接点52aの少し後に作動する。したがって、第2の可動接点72aが第1の固定接点50aに接触するときまでに、タック溶接が生じる危険性は低い。したがって、これらのラグ接点72a,50aは、一次接点組74の対応する接点70a,52aよりも小さくすることができる。回路は既に完成しているので、接点間のアークは生じにくく、したがって、アーク溶接が生じにくくなる。
【0100】
一次及び二次接点組74,76の両方を閉じると、電流は、第1及び第2の可動アーム40a,54aの両方を同じ方向に流れる。アンペアの法則によれば、可動アーム40a,54a内で生じる磁界によって、各可動アーム40a,54aは、互いに吸引力を受ける。
【0101】
可動アーム40a,54aが互いに引きつけられるにつれて、これに応じて、一次及び二次接点組74,76を所定の位置に保つ閉じ力は大きくなる。これにより、接点跳動の可能性が制限され、アーク及びこれに続く接点の損傷の危険が増す場合がある。
【0102】
第1及び第2の可動アーム40a,54aと第3及び第4の可動アーム40b,54bとの間に磁気相互作用があるだけでなく、第2及び第4の可動アーム54a,54b間にも弱い相互作用がある。電流は、第1の端子12から第2の端子14に、及び、第3の端子16から第4の端子18に流れるので、第2及び第4の可動アーム54a,54bを流れる電流は、互いに反対方向に流れる。
【0103】
第2及び第4の可動アーム54a,54bは、例えば、第1及び第2の可動アーム40a,54aよりも互いに離れているので、アンペアの法則によれば、磁気相互作用は弱い。しかしながら、相互作用は、逆方向に流れる電流のため、反発的なものであり、これにより、二次及び四次接点組76,82の接触圧は大きくなる。これにより、再び、都合よく、接点跳動が生じる可能性を抑制する。
【0104】
そして、接点を再び開くため、第2のコイル96を再び駆動することによって、右側38が消磁され、揺動電機子114の右側小アーム116bは、第2のコイル96との係着を解除することができる。このアクチュエータ28の係着を解除した状態を、図6dに示す。次に、第1のコイル94の磁束が増加することによって、左側小アーム116aが引きつけられ、第1のコイル94に係着し、図6eに示すように、作動サイクルが完了する。
【0105】
アクチュエータ28のコイル94,96の駆動は、様々な方法で行うことができる。
【0106】
まず、第1のコイル94のコイル巻線100aの終了部は、共通接続部136を介して、第2のコイル96のコイル巻線100bの開始部に接続することができる。2つの巻線100a,100bは、それぞれのコア98a,98bの周りに、同じ方向に向い合せに直列に巻き付けられている。そして、各コイル94,96を、適当な駆動回路を介して直流電源によって直流パルス駆動して、上記のように、別々に揺動作動を行うことができる。
【0107】
代替例として、アクチュエータ28は、強く駆動すると、高速で動作するので、直流パルスの代わりに、交流駆動パルスを用いてもよい。巻線100a,100bは直列に接続されているので、コイル94,96を、適当な駆動回路を介して交流電源からの1つの交流パルスによって駆動し、パルスの正のサイクルによって、第2のコイル96を付勢及び消磁して接点を閉じ、パルスの負のサイクルによって、第1のコイル94を付勢及び消磁して接点を開くようにすることができる。
【0108】
コイルを直列に接続することが好ましいが、コイルを他の構成に接続して、同様の結果を得ることもできる。
【0109】
交流駆動パルスの利点は、駆動コイル94,96を付勢することにより消磁するか又は磁束を減じると、他方のコイル96,94は電磁界が誘起され、揺動電機子114の枢動時、平均調節磁束及び減衰効果が生じる。この減衰効果によって、供給電圧振幅にほぼ比例して、接点閉時間を遅延及び安定化させる。
【0110】
更に、1/2サイクルの駆動パルス、1/4サイクルの駆動パルス、及び/又は、別の切り詰めたパルスなどの、波形分布の切り詰めた駆動パルスを供給することによって、接点を閉じるときに放出される可能性がある接点侵食エネルギを大幅に低減することができる。
【0111】
1/2サイクルの駆動パルスの場合について図7及び図8に示すように、又は、1/4サイクルの駆動パルスについて図9及び図10に示すように、コイル、フィードバック接続の強度、引いては、接点の開動作の制御遅延を綿密に一致させることによって、接点開時間を制御することにより、交流負荷波形のゼロクロス点Aに移動又は隣接させることができる。そのようなものとして、アーク及び接点の侵食エネルギX1を低減又は排除し、接点の寿命を延ばしたり、又は、耐久寿命を向上させる。また、生じ得る接点跳動Y1をゼロクロス点Aに移動又はずっと近づけて、再び、接点の寿命及び開動作時の頑強さを向上させる。
【0112】
一例として、標準又は従来の接点開・閉時間は、主に揺動電機子114の係着を解除する時間のため、5〜6msecの動的遅延DDを含む場合がある。本発明の制御を用いることによって、この動的遅延を7〜8msecに少し延ばして、交流負荷波形の次の又は後続のゼロクロス点により近く一致させるか又は同期させる。動的遅延DDをゼロクロス点Aと同期又は実質的に同期させることによって、アーク及び接点侵食エネルギを低減する。好ましくは、交流駆動パルスを、1/2サイクルのパルス分布を有するような形状にして、この遅延を達成することができる。
【0113】
接触器10を広範囲の供給電圧にわたって用いる場合、動的遅延DDは、異なる電圧間で大きく変動する場合がある。供給電圧が高くなるにつれて、揺動電機子の作動は速くなる。その結果、1/2サイクルの駆動パルスでは、動的遅延DDが非常に短くなる可能性があり、ピーク負荷電流時又はその前に、接点が閉じる場合がある。
【0114】
交流供給電圧が高いため、動的遅延DDが短い場合、この後に生じる接点侵食エネルギX1は非常に大きくなる場合がある。この大きな接点侵食エネルギX1は、接点に損傷を与え、その寿命を短くする場合がある。
【0115】
切り詰められた駆動パルス(この場合、1/2サイクルの駆動パルスの代わりに、1/4サイクルの駆動パルスが好ましい)で、コイル94,96を付勢する交流電源を用いることによって、接点侵食エネルギX1を更に低減することができる。この構成では、ピーク負荷電流に達するまで、1/4サイクルの駆動パルスは、第1又は第2の駆動コイル96,94を作動させず、引いては駆動しない。そのようなものとして、これは、「遅延」駆動手法として考えられる。
【0116】
切り詰められたサイクル(この場合、ピーク負荷電流時の1/4サイクルの駆動パルス)をトリガすることによって、接点の閉動作は、ピーク負荷電流の前に決して行われない。しかしながら、電気アクチュエータに出力する電源の一部として制御回路を用いることによって、時間軸において電流波形の切り詰めをどの程度にするかは、ピーク負荷電流、必要な接点開閉力及び遅延、及び接点開閉手順時に接点に与えられるアーク及び/又は侵食エネルギに基づいて、綿密に選択及び最適化することができる。そのようなものとして、1/4サイクルの駆動パルスは、ピーク負荷電流と一致するので、好ましいが、駆動パルスの波形がピーク負荷電流の前又は後になるように切り詰めるように、付勢電流をアクチュエータに出力するコントローラを設定することが有益である。
【0117】
動的遅延DDは、更に好ましくは、ゼロクロス点Aと同期又は実質的に同期することによって、接点侵食エネルギX1を更に最小化するように構成される。しかしながら、制御された、切り詰められた駆動パルスの波形と一緒に用いる場合、これは、1/2サイクルの駆動パルスの場合よりも制御された方法で行われる。
【0118】
交流駆動パルスを切り詰めることができるが、直流駆動パルスを切り詰めることもでき、これは、場合によっては、アーク及び/又は接点侵食の低減の点で有益である。
【0119】
上記の本発明は1つの実施形態に過ぎず、同様の結果を得る他の手段を想到できるものと理解される。例えば、揺動電機子の支軸は、アクチュエータのヨークのキャッププレートに取り付けられた枢軸ピンとして説明されている。しかしながら、結果として行われる作動が同様であれば、任意の適当な枢動手段を、接触器の一部として用いることができる。
【0120】
また、作動手段の摺動可能な作動素子は、可動アームをリード/ラグの方法で作動させるように構成されていると述べた。これは、摺動可能な作動素子の溝付きリフタの特定の構成、すなわち、リード用溝付きリフタをラグ用リフタよりもそれぞれの接点に近付けることによって、達成される。
【0121】
しかしながら、想到可能な代替の構成がある。例えば、ラグ用可動アームの爪を、それぞれの溝付きリフタ内でしっかりと保持しないことにより、結果的に、リード用可動アームよりも遅れて作動させることができる。
【0122】
接触器の固定接点は、複数の可動接点に接触することができる1つの一体型接点として説明されているが、対応する複数の固定接点を設けることによって、固定接点の形成に用いる材料の量を減らすことが好ましい。
【0123】
したがって、電流共用可動アーム対によって相互接続可能な少なくとも1対の端子を有する電気接触器を提供することができる。可動アームは電流負荷を分担するので、接点侵食エネルギが大きく低減され、接触器の寿命がより長くなる。
【0124】
更に、可動アーム対は、互いに磁気吸引するように構成することによって、接点を閉じたとき、接点の閉じ力を大きくすることができる。これは、都合よく、接点パッドに損傷を与えるおそれがある接点跳動を抑制する。
【0125】
本発明を参照してここで用いられる「備える(comprises/comprising)」という語及び「有する/含む(having/including)」という語は、説明する特徴、整数、工程又は部品の存在を規定するために使用され、他の1つ以上の特徴、整数、工程、部品又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。
【0126】
明確にするために別個の実施形態に関連して説明されている本発明の特定の特徴は、1つの実施形態において組み合わせて提供してもよいものと理解される。逆に、簡潔にするために1つの実施形態に関連して説明されている本発明の種々の特徴を、個別に又はそれらを適当に組み合わせて提供してもよい。
【0127】
上記の実施形態は単なる例示であり、ここに定義する本発明の範囲から逸脱することなく、他の様々な修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0128】
10 電気接触器
12,14,16,18 端子
20 ハウジング
22 端子スタブ
24 ハウジングベース
26 外周壁
28 アクチュエータ
30 作動手段
32 上部
34 下部
36,36’ 左側
38,38’ 右側
40a,40b 可動アーム
42a,42b 末端
44a,44b 爪
46a,46b 基端
48a,48b 開口
50a,50b 固定接点
52a,52b 可動接点
54a,54b 可動アーム
56a,56b スプリット
58a,58b 末端
60a,60b 基端
62a,64a;62b,64b 左右ブレード
66a,66b 爪
68a,68b 開口
70a,70b 固定接点
72a,72b 可動接点
74 一次接点組
76 二次接点組
78a,78b 電流共用アーム対
80 三次接点組
82 四次接点組
84a,84b 作動素子
86 ヨーク
88 ベースプレート
90 上部矩形面
92 磁石積層体
94,96 コイル
98a,98b コア
100a,100b 巻線
102 キャッププレート
104 上部矩形面
106 下部矩形面
108 支軸
110 枢軸ピン
112 端部キャップ
114 揺動電機子
116,116a,116b 小アーム
118 中心点
120,122 本体
124a,124b 第1の端部
126a,126b 第2の端部
128 突起
130,130a,130b 自由端
132a,132b,134a,134b 溝付きリフタ
136 共通接続部
A ゼロクロス点
DD 動的遅延
L 中心線
X1 接点侵食エネルギ
Y1 接点跳動
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7
図8
図9
図10