(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(一実施形態)
図1〜
図3を参照して、本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池について説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるリチウムイオン電池が適用された眼鏡の一例の部分を示す斜視図、
図2は
図1のA−A矢視断面図、
図3は一実施形態のリチウムイオン電池が使用された眼鏡の一例を示す斜視図である。
【0014】
本実施形態のリチウムイオン電池Lは、
図1及び
図3に示すように、装着型光学機器である眼鏡Gを構成する筐体の一部を構成する構造体1として、支持部の一例であるつる(テンプル)の内部に収納されている。
図2に詳細を示すように、構造体1であるつるの内部には断面略樽状の空洞が形成されており、この空洞が内部空間1aとされる。
【0015】
より詳細には、構造体1は、
図2において左右に2分割されて分割筐体1d、1eとされ、一方の分割筐体1dには、内部空間1aの内方に突出する係止部1fが形成されている。そして、平板状のセパレータ4が、一対の分割筐体1d、1eが対向されて固定されることで構造体1を構成した際、係止部1fに当接する状態で内部空間1a内に固定され、これにより、この内部空間1aが正極室2及び負極室3に区分されている。
【0016】
正極室2及び負極室3には、内部空間1aの内面である曲面に沿うような、断面楕円弧形状の正極集電体7及び負極集電体8が配置され、さらに、これら正極集電体7及び負極集電体8が内部空間1a内に配置された状態で、正極活物質5及び負極活物質6が正極室2及び負極室3に充填されることで、本実施形態のリチウムイオン電池Lが形成されている。
【0017】
ここで、本明細書において、「充填された」とは、正極活物質粒子及び負極活物質粒子が正極室2及び負極室3にそれぞれ収納されている状態を意味し、好ましくは、この正極活物質粒子及び負極活物質粒子と電解質とが正極室2及び負極室3にそれぞれ収納されている状態を意味する。さらに好ましくは、正極活物質粒子及び負極活物質粒子と電解質とが混合された状態を意味する。
【0018】
本発明において正極室2及び負極室3に正極活物質と電解液とを含む正極電極組成物及び負極活物質と電解液とを含む負極電極組成物が充填された状態にするには、粉体状の正極活物質粒子及び負極活物質粒子を直接正極室2及び負極室3にそれぞれに入れてもよく、正極活物質又は負極活物質粒子と非水溶媒とを含むスラリーを正極室2及び負極室3にそれぞれ入れてもよく、正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含む正極電極組成物のスラリー及び負極電極組成物のスラリーを正極室2及び負極室3にそれぞれ入れることで行ってもよい。粉体状の正極活物質及び負極活物質粒子を直接正極室2及び負極室3に入れた場合、その後電解液を入れることで正極室2及び負極室3のそれぞれに正極電極組成物及び負極電極組成物が充填される。
【0019】
正極活物質又は負極活物質粒子と非水溶媒とを含むスラリー状物質を正極室2及び負極室3にそれぞれ入れた場合、その後加圧又は減圧して活物質粒子と非水溶媒とを分離可能な膜を透過させて非水溶媒を除去し、さらに電解液を入れることで正極室2及び負極室3のそれぞれに正極電極組成物及び負極電極組成物が充填される。正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含むスラリー状の正極電極組成物及び負極電極組成物を正極室2及び負極室3にそれぞれ入れた場合、さらに加圧又は減圧して活物質粒子と電解液とを分離可能な膜を透過させて電解液の一部を除去して正極電極組成物及び負極電極組成物にそれぞれ含まれる正極活物質及び負極活物質の含有量を高める工程を行っても良い。
【0020】
活物質粒子と非水溶媒又は電解液とを分離可能な膜としては、活物質粒子と非水溶媒又は電解液とを分離可能な膜であれば制限はないが、集電体及び/又はセパレータとして設けられた膜であることが好ましい。
【0021】
正極、負極活物質粒子を正極室2及び負極室3に充填する際には、構造体1に振動、衝撃を与えることで、正極、負極活物質粒子を正極室2及び負極室3に均一に充填することが好ましい。
【0022】
また、正極、負極活物質粒子と電解液又は非水溶媒とを混合した物質は、通常スラリー状であるが、正極、負極活物質粒子と電解液との重量比によってはゲル状物質や粉体に近い物質になることもある。
【0023】
構造体1には、正極集電体7及び負極集電体8を貫き、正極室2及び負極室3にまで至る貫通孔13がそれぞれ形成されている。正極活物質5及び負極活物質6は、それぞれ貫通孔13から正極室2及び負極室3に充填され、これら正極室2及び負極室3が減圧脱気された後、貫通孔13を電極端子11、12により封止することで、本実施形態のリチウムイオン電池Lを製造することができる。加えて、この電極端子11、12を通じて本実施形態のリチウムイオン電池Lからの電源を構造体1外部に取り出すことができる。
【0024】
正極活物質5を構成する正極活物質粒子としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2及びLiMn
2O
4)、遷移金属酸化物(例えばMnO
2及びV
2O
5)、遷移金属硫化物(例えばMoS
2及びTiS
2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられる。
【0025】
また、負極活物質6を構成する負極活物質粒子としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリキノリン等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金及びリチウム−アルミニウム−マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLi
4Ti
5O
12等)等が挙げられる。
【0026】
本発明の電池においては、正極、負極活物質粒子が、表面の少なくとも一部が被覆用樹脂及び導電助剤を含む被覆剤で被覆されてなる被覆活物質粒子であることが好ましい。
【0027】
被覆剤は被覆用樹脂を含んでおり、正極活物質粒子の周囲が被覆剤で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨脹を抑制することができる。被覆用樹脂の例としては、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの中ではビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂が好ましい。
【0028】
導電助剤としては、導電性を有する材料から選択される。
【0029】
具体的には、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブ等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電助剤とは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたものでもよい。
【0031】
導電助剤として導電性繊維を用いることも可能である。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
【0032】
被覆活物質粒子は、例えば、活物質粒子を万能混合機に入れて30〜500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂を含む樹脂溶液を1〜90分かけて滴下混合し、さらに導電助剤を混合し、撹拌したまま50〜200℃に昇温し、0.007〜0.04MPaまで減圧した後に10〜150分保持することにより得ることができる。
【0033】
正極室2及び負極室3に正極電極組成物及び負極電極組成物が充填された状態する工程において、正極活物質及び負極活物質粒子をそれぞれ含むスラリー状物質は、電解液を含む電解液スラリーであるか、非水溶媒を含む溶媒スラリーであることが好ましい。
【0034】
電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
【0035】
電解質としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6及びLiClO
4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2及びLiC(CF
3SO
2)
3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPF
6である。
【0036】
非水溶媒としては、通常の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0037】
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、さらに好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、またはエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液である。
【0039】
スラリーは、活物質粒子並びに導電助剤を電解液又は非水溶媒の重量に基づいて10〜60重量%の濃度で分散してスラリー化することにより調製することが好ましい。
【0040】
セパレータ4としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等、ポリオレフィン製の微多孔膜フィルム、多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンとの多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0041】
集電体7、8としては、金属集電体や樹脂集電体を用いることができる。金属集電体としては、公知の金属集電体を用いることができる。たとえば、金属集電体は、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、およびこれらの一種以上を含む合金、ならびにステンレス合金からなる群から選択される一種以上からなると好ましい。金属集電体は薄板または金属箔から形成されてもよいし、基材の表面にスパッタリング、電着、塗布等の手法により金属層を形成してもよい。
【0042】
樹脂集電体を構成する高分子材料は、導電性高分子であってもよいし、導電性を有さない高分子であってもよい。
【0043】
高分子材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0044】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0045】
また、樹脂集電体は、導電性の高分子材料を含む樹脂集電体の導電性を向上させる目的、あるいは、導電性を有さない高分子材料を含む樹脂集電体に導電性を付与する目的から、導電性フィラーを含んでいると好ましい。導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、ステンレス(SUS)等のこれらの合金材が用いられてもよい。耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料、ニッケル、より好ましくはカーボン材料である。また、これらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
【0046】
樹脂集電体の具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5〜20部分散させた後、熱プレス機で圧延したものが挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0047】
シール部材を構成する材料としては、集電体7、8との接着性を有し、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料、特に熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0048】
また、眼鏡Gを構成する構造体1は、金属、プラスチック等で形成され、少なくとも支持部の一例であるつるの部分は、長手方向に沿った撓みを許容する可撓性を有している。
【0049】
本実施形態のリチウムイオン電池Lは、一例として、
図3に示すように、支持部材14を介して眼鏡Gの筐体の一部を構成する構造体1であるつるに支持されたヘッドマウントディスプレイHを駆動するための電源電池として用いられる。この際、支持部材14には、電極端子11、12及びヘッドマウントディスプレイHに電気的に接続可能な図略の給電部材が設けられ、この給電部材を介してリチウムイオン電池Lからの電源電圧がヘッドマウントディスプレイHに供給される。これにより、本実施形態の装着型光学機器である眼鏡Gが構成される。
【0050】
従って、本実施形態のリチウムイオン電池Lによれば、装着型光学機器である眼鏡Gに設けられた内部空間を有効利用することの可能なリチウムイオン電池Lを実現することができる。
【0051】
また、本実施形態のリチウムイオン電池Lでは、仮に眼鏡Gの筐体の支持部である構造体(つる)1が、眼鏡Gの装着時に撓んだとしても、リチウムイオン電池Lとしての特性に問題を生じる可能性が極めて小さい、という利点がある。すなわち、本実施形態のリチウムイオン電池Lは、従来のリチウムイオン電池のように正極活物質及び負極活物質に熱処理してこれら正極活物質及び負極活物質を乾燥させていないので、電池全体が撓んだ際に正極または負極活物質が集電体から剥離してリチウムイオン電池Lとしての特性に問題を生じる事態を招く可能性が極めて小さい。加えて、眼鏡Gを装着することにより構造体1であるつるの部分が長手方向に撓んだとしても、リチウムイオン電池Lは電源電圧を供給し続けることができる。
【0052】
さらに、構造体1に貫通孔13を形成してこの貫通孔13から構造体1の空洞部に正極活物質5及び負極活物質6を注入して充填し、電極端子11、12を挿入してリチウムイオン電池Lを形成することが可能であり、リチウムイオン電池Lの製造工程の簡略化を図ることができる。加えて、この電極端子11、12は、ヘッドマウントディスプレイHへの電源電圧供給のための電極端子としての機能と、構造体1内の空洞である内部空間1aの蓋との両方の機能を有している。
【0053】
さらに、本実施形態のリチウムイオン電池Lにおいては、眼鏡Gの筐体の一部を構成する構造体1であるつる等のフレームに電池を設けたため、いままでフレームとしての機能しか有していなかったものが、電池としての機能を有するようになる、という優れた効果を有する。そのため、
図3に示すように、眼鏡GとヘッドマウントディスプレイHとを組み合わせ、一体化してウェアラブルグラスとして用いた場合には、構造体1であるつるの部分から電源が供給されるので、より長時間の使用が可能になり、又はヘッドマウントディスプレイHから電池収納スペースを省いて小型化が可能となる。
【0054】
(変形例)
なお、本発明のリチウムイオン電池及び装着型光学機器は、その細部が上述の一実施形態に限定されず、種々の変形例が可能である。一例として、上述の一実施形態では、眼鏡Gの筐体の一部を構成する構造体1であるつるの部分にリチウムイオン電池Lを設けたが、眼鏡Gのレンズの周りの枠の部分のフレーム等の構造体に、本実施形態のリチウムイオン電池Lを設けても良い。本発明によるリチウムイオン電池の外形形状は任意の形状から適宜選択されればよく、特段の限定はない。
【0055】
また、本発明のリチウムイオン電池Lが設けられる装着型光学機器は、上述の一実施形態のような、ヘッドマウントディスプレイHを別体に設けた眼鏡Gに限定されず、種々の変形例が可能である。一例として、ヘッドマウントディスプレイHを一体化した眼鏡(ウェアラブルグラス)にも本発明は好適に適用可能である。また、本発明のリチウムイオン電池Lが設けられる装着型光学機器は、ヘッドマウントディスプレイH、ウェアラブルグラスに限定されず、液晶シャッター式3Dグラス等にも適用可能である。
【0056】
一方、セパレータ4の形状にも特段の限定はないが、上述の一実施形態のように平板状に形成することでセパレータ4の製造工程等の簡略化を図ることができる。また、正極集電体7及び負極集電体8の形状にも特段の限定はないが、上述の一実施形態のように、リチウムイオン電池を構成する構造体1の内部空間1aの内面に沿って正極及び負極集電体7、8を設けることで、正極室2及び負極室3に充填される正極電極組成物及び負極電極組成物の容量を高めることができて好ましい。さらに言えば、少なくとも正極及び負極集電体7、8とセパレータ4との間が等間隔でない部分を有することで、構造体1内部の収納空間をより有効利用することが可能となる。
【実施例】
【0057】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0058】
(被覆用樹脂溶液の作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口フラスコに、酢酸エチル83部とメタノール17部とを仕込み68℃に昇温した。次いで、メタクリル酸242.8部、メチルメタクリレート97.1部、2−エチルヘキシルメタクリレート242.8部、酢酸エチル52.1部及びメタノール10.7部を配合したモノマー配合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.263部を酢酸エチル34.2部に溶解した開始剤溶液とを4つ口フラスコ内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで4時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.583部を酢酸エチル26部に溶解した開始剤溶液を滴下ロートを用いて2時間かけて連続的に追加した。さらに、沸点で重合を4時間継続した。溶媒を除去し、樹脂582部を得た後、イソプロパノールを1,360部加えて、樹脂濃度30重量%のビニル樹脂からなる被覆用樹脂溶液を得た。
【0059】
(被覆正極活物質粒子の作製)
LiCoO
2粉末[日本化学工業(株)製 セルシードC−8G]96重量部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)を樹脂固形分として2重量部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
【0060】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]2重量部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、100mmHgまで減圧し30分保持した。上記操作により被覆正極活物質粒子を得た。
【0061】
(被覆負極活物質粒子の作製)
難黒鉛化性炭素[(株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F)]90重量部を万能混合機に入れ、室温、150rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂溶液(樹脂固形分濃度30重量%)を樹脂固形分として5重量部になるように60分かけて滴下混合し、さらに30分撹拌した。
【0062】
次いで、撹拌した状態でアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック(登録商標)]5重量部を3回に分けて混合し、30分撹拌したままで70℃に昇温し、0.01MPaまで減圧し30分保持した。上記操作により被覆負極活物質粒子を得た。
【0063】
(電解液の作製)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(体積比率1:1)に、LiPF
6を1mol/Lの割合で溶解させてリチウムイオン電池用電解液を作製した。
【0064】
(正極被覆活物質スラリーの製造)
被覆正極活物質67重量部、炭素繊維[大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S−243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm]1重量部、上記電解液32重量部を混合して、正極被覆活物質スラリーを作製した。
【0065】
(負極被覆活物質スラリーの製造)
被覆負極活物質粒子52重量部、正極被覆活物質スラリーの製造で使用したものと同じ炭素繊維1重量部、上記電解液47重量部を混合して、負極被覆活物質スラリーを作製した。
【0066】
(リチウムイオン電池の製造その1)
正極用集電体を敷いて正極活物質スラリーを注入して正極活物質層を形成した。続いて、セパレータを敷いて負極活物質スラリーを注入して負極活物質層を形成した。続いて負極用集電体をかぶせた後、構造体(ケース)とともに接着剤で封止した。
【0067】
電池としての動作を確認するため、集電体からのリード部分に充放電試験機を接続し、充放電試験を実施した。充放電が可能であり、リチウムイオン二次電池として機能することを確認した。
【0068】
(リチウムイオン電池の製造その2)
下部が封止された略円錐台形の構造体(ケース)の内部をセパレータで区切り正極室と負極室を形成し、それぞれの内壁に正極用集電体と負極用集電体を設けた。続いて、正極室と負極室に、粉末状の正極活物質及び負極活物質と電解質とからなる正極活物質スラリー及び負極活物質スラリーをそれぞれ入れて充填した後、構造体の上部を封止した。
【0069】
電池としての動作を確認するため、集電体からのリード部分に充放電試験機を接続し、充放電試験を実施した。この場合も、充放電が可能であり、リチウムイオン二次電池として機能することを確認した。