特許第6585946号(P6585946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585946
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   F15B15/10 H
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-143028(P2015-143028)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-25970(P2017-25970A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】桜井 良
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−223253(JP,A)
【文献】 特開平8−170603(JP,A)
【文献】 特開昭61−127905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブとによって構成されるアクチュエータ本体部を備える流体圧アクチュエータであって、
前記コードは、有機繊維で構成され、
前記コードの表面を被覆した被覆層を有し、
前記被覆層は、熱硬化性樹脂と、ラテックスとの混合物によって形成されることを特徴とする流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記被覆層は、前記熱硬化性樹脂及び前記ラテックスの固形分率(wt%)が15%以上、50%以下である混合物水溶液を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、及びウレタン樹脂の何れか、または複数が配合されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記ラテックスは、VPラテックス、SBRラテックス、及びNBRラテックスの何れか、または複数が配合されたものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記流体圧アクチュエータは、前記アクチュエータ本体部の軸方向における端部を封止する封止部材を有し、
前記封止部材は、前記スリーブと当接するゴムシートを含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体または液体を用いてチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータに関し、具体的には、いわゆるマッキベン型の流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したようなチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータとしては、空気圧によって膨張、収縮するゴム製のチューブ(管状体)と、チューブの外周面を覆うスリーブ(網組補強構造)とを有する構造(いわゆるマッキベン型)が広く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
チューブ及びスリーブによって構成されるアクチュエータ本体部の両端は、金属で形成された封止部材を用いてかしめられる。
【0004】
スリーブは、ポリアミド繊維などの高張力繊維または金属のコードを編み込んだ筒状の構造体であり、チューブの膨張運動を所定範囲に規制する。
【0005】
このような流体圧アクチュエータは、様々な分野で用いられているが、特に、介護・福祉用機器の人工筋肉として好適に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-236905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような流体圧アクチュエータにおいて、より高い収縮力が求められている。例えば、介護・福祉用機器の人工筋肉以外でも、ロボットに用いられる流体圧アクチュエータでは、より高い収縮力が求められる。
【0008】
このような高い収縮力を実現するためには、流体に鉱物油などを用いた油圧駆動とすることが考えられる。しかしながら、油圧駆動の場合、チューブ及びスリーブには、大幅に高い圧力が掛かるため、高い耐久性が求められる。
【0009】
このような高い圧力が流体圧アクチュエータの内部に掛かると、アクチュエータ本体部が破損する可能性が高まる。特に、チューブの膨張範囲を規制するスリーブが損傷したり、チューブの特定箇所への応力集中によってチューブが損傷してしたりすることが懸念される。
【0010】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、油圧駆動とした場合など、高い圧力が掛かる場合でも充分な耐久性を有する流体圧アクチュエータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る流体圧アクチュエータ(流体圧アクチュエータ10)は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブ(チューブ110)と、所定方向に配向されたコード(コード121)を編み込んだ構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブ(スリーブ120)とによって構成されるアクチュエータ本体部(アクチュエータ本体部100)を備える。前記コードは、有機繊維で構成される。流体圧アクチュエータは、前記コードの表面を被覆した被覆層(被覆層122)を有する。前記被覆層は、熱硬化性樹脂と、ラテックスとの混合物によって形成されている。
【0012】
本発明の一態様において、前記被覆層は、前記熱硬化性樹脂及び前記ラテックスの固形分率(wt%)が15%以上、50%以下である混合物水溶液を用いて形成されてもよい。
【0013】
本発明の一態様において、前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、及びウレタン樹脂の何れか、または複数が配合されたものでもよい。
【0014】
本発明の一態様において、前記ラテックスは、VPラテックス、SBRラテックス、及びNBRラテックスの何れか、または複数が配合されたものであってもよい。
【0015】
本発明の一態様において、前記流体圧アクチュエータは、前記アクチュエータ本体部の軸方向における端部を封止する封止部材(例えば、封止部材210)を有し、前記封止部材は、前記スリーブと当接するゴムシート(例えば、ゴムシート250)を含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様に係る流体圧アクチュエータによれば、油圧駆動とした場合など、高い圧力が掛かる場合でも充分な耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、流体圧アクチュエータ10の側面図である。
図2図2は、流体圧アクチュエータ10の一部分解斜視図である。
図3図3は、封止機構200を含む流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
図4図4は、アクチュエータ本体部100の一部展開斜視図である。
図5図5は、コード121の径方向に沿った断面図である。
図6図6は、変更例1に係る封止機構200を含む流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
図7図7は、変更例2に係る封止機構200Aを含む流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0019】
(1)流体圧アクチュエータの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ10の側面図である。図1に示すように、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100、封止機構200及び封止機構300を備える。また、流体圧アクチュエータ10の両端には、連結部20がそれぞれ設けられる。
【0020】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。アクチュエータ本体部100には、フィッティング400及び通過孔410を介して流体が流入する。
【0021】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110内への流体の流入によって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおいて収縮し、径方向DRにおいて膨張する。また、アクチュエータ本体部100は、チューブ110から流体の流出によって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおいて膨張し、径方向DRにおいて収縮する。このようなアクチュエータ本体部100の形状変化によって、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータとしての機能を発揮する。
【0022】
流体圧アクチュエータ10の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、または水、鉱物油などの液体のどちらでもよいが、特に、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100に高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有する。
【0023】
また、このような流体圧アクチュエータ10は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉用として適用できることは勿論のこと、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢(上肢や下肢など)用としても好適に用い得る。連結部20には、当該体肢を構成する部材などが連結される。
【0024】
封止機構200及び封止機構300は、軸方向DAXにおけるアクチュエータ本体部100の両端部を封止する。具体的には、封止機構200は、封止部材210及びかしめ部材230を含む。封止部材210は、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXの端部を封止する。また、かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる。かしめ部材230の外周面には、治具によってかしめ部材230がかしめられた痕である圧痕231が形成される。
【0025】
封止機構200と封止機構300との相違点は、フィッティング400(及び通過孔410)が設けられているか否かである。
【0026】
フィッティング400は、流体圧アクチュエータ10の駆動圧力源、具体的には、気体や液体のコンプレッサと接続されたホース(管路)を取り付けられるように突出している。フィッティング400を介して流入した流体は、通過孔410を通過してアクチュエータ本体部100の内部、具体的には、チューブ110の内部に流入する。
【0027】
図2は、流体圧アクチュエータ10の一部分解斜視図である。図2示すように、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100及び封止機構200を備える。
【0028】
アクチュエータ本体部100は、上述したように、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。
【0029】
チューブ110は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ110は、流体による収縮及び膨張を繰り返す。
【0030】
スリーブ120は、円筒状であり、チューブ110の外周面を覆う。スリーブ120は、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ120は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ110の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0031】
スリーブ120を構成するコードの材質などについては後述する。
【0032】
封止機構200は、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおける端部を封止する。封止機構200は、封止部材210、係止リング220及びかしめ部材230によって構成される。
【0033】
封止部材210は、胴体部211及び鍔部212を有する。封止部材210としては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0034】
胴体部211は、円管状であり、胴体部211には、流体が通過する通過孔215が形成される。通過孔215は、通過孔410(図1参照)に連通する。胴体部211には、チューブ110が挿通される。
【0035】
鍔部212は、胴体部211に連なっており、胴体部211よりも流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXにおける端部側に位置する。鍔部212は、胴体部211よりも外径が大きい。鍔部212は、胴体部211に挿通されたチューブ110及び係止リング220を係止する。
【0036】
胴体部211の外周面には、凹凸部213が形成される。凹凸部213は、胴体部211に挿通されたチューブ110の滑り抑制に寄与する。また、胴体部211の鍔部212寄りに位置には、胴体部211よりも外径が小さい小径部214が形成される。なお、小径部214の形状については、図3以降においてさらに説明する。
【0037】
係止リング220は、スリーブ120を係止する。具体的には、スリーブ120は、係止リング220を介して径方向DR外側に折り返される(図2において不図示、図3参照)。
【0038】
係止リング220の外径は、胴体部211の外径よりも大きい。係止リング220は、胴体部211の小径部214の位置においてスリーブ120を係止する。つまり、係止リング220は、胴体部211の径方向DR外側であって、鍔部212に隣接する位置において、スリーブ120を係止する。
【0039】
係止リング220は、胴体部211よりも小さい小径部214に係止させるため、本実施形態では、二分割の形状としている。なお、係止リング220は、二分割に限らず、より多くの部分に分割してもよいし、一部の分割部分が回動可能に連結されていてもよい。
【0040】
係止リング220としては、封止部材210と同様の金属や硬質プラスチック材料などを用いることができる。
【0041】
かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる。かしめ部材230としては、アルミニウム合金、真鍮、及び鉄などの金属を用いることができる。かしめ用の治具によってかしめ部材230がかしめられると、かしめ部材230には、図1に示したような圧痕231が形成される。
【0042】
(2)封止機構の構成
図3は、封止機構200を含む流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
【0043】
上述したように、封止部材210は、胴体部211の外径よりも小さい外径を有する小径部214を有する。
【0044】
係止リング220は、小径部214の径方向DR外側に配置される。係止リング220の内径R1は、胴体部211の外径R3よりも小さい。なお、係止リング220の外径R2も、胴体部211の外径R3よりも小さくてもよい。
【0045】
チューブ110は、鍔部212に当接するまで胴体部211に挿通される。一方、スリーブ120は、係止リング220を介して径方向DR外側に折り返されている。この結果、スリーブ120は、係止リング220を介して折り返された折り返し部120aを有する。
【0046】
折り返し部120aは、チューブ110の径方向DR外側に位置するスリーブ120、つまり、係止リング220で折り返される前のスリーブ120と接着されている。
【0047】
具体的には、スリーブ120と折り返し部120aとの間には、接着層240が形成される。なお、接着層240は、スリーブ120を構成するコードの種類によって適切な接着剤が用いればよい。
【0048】
かしめ部材230は、封止部材210の胴体部211の外径よりも大きく、胴体部211に挿通された上で治具によってかしめられる。かしめ部材230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる。
【0049】
具体的は、かしめ部材230は、胴体部211に挿通されたチューブ110、チューブ110の径方向DR外側に位置するスリーブ120、及び折り返し部120aをかしめる。つまり、かしめ部材230は、チューブ110、スリーブ120及び折り返し部120aを封止部材210とともにかしめる。
【0050】
(3)アクチュエータ本体部100の構成
図4は、アクチュエータ本体部100の一部展開斜視図である。図4に示すように、アクチュエータ本体部100は、チューブ110とスリーブ120とによって構成されている。
【0051】
チューブ110は、ブチルゴムなど弾性材料によって構成された筒状体(管状体)である。また、流体圧アクチュエータ10を油圧駆動とする場合には、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)を用いてもよい。
【0052】
スリーブ120は、チューブ110の外周面を覆うように設けられる。スリーブ120は、互いに交差するように配向された複数のコード121を編み込んで形成される。
【0053】
図5は、コード121の径方向に沿った断面図である。図5に示すように、スリーブ120は、コード121の表面を被覆した被覆層122を有する。
【0054】
なお、図4及び図5では、2本のコード121をペアとして、互いに交差するようにコード121のペアが配向されているが、ペアとするコード121の本数は、2本以外(モノフィラメントまたはマルチフィラメント)でも構わない。また、2本以上の場合は、コード121を撚ったものでも構わない。
【0055】
コード121は、有機繊維のコードで形成される。具体的には、コード121としては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような繊維コード以外の有機繊維のコードでも構わない。なお、繊維コードの直径は、アクチュエータ本体部100の動作を妨げないものであればよく、特に限定されない。
【0056】
なお、コード121は、被覆層122を形成する混合物水溶液との接着性を高めるため、エポキシ樹脂などの反応性薬剤による前処理がなされていてもよい。
【0057】
被覆層122は、熱硬化性樹脂と、ラテックスとの混合物によって形成される。具体的には、被覆層122は、熱硬化性樹脂と、ラテックスとの混合物水溶液をコード121に塗布した後、乾燥させて熱硬化させることによって形成される。
【0058】
被覆層122は、熱硬化性樹脂とラテックスとの固形分率(wt%)が15%以上、50%以下である混合物水溶液を用いて形成されることが好ましい。当該固形分率は、20%以上、40%以下であることがより好ましい。
【0059】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、及びウレタン樹脂の何れかを用いることが好ましい。或いはこれらの樹脂が複数配合されたものでもよい。
【0060】
ラテックスとしては、VP(スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体)ラテックス、SBR(低スチレン・ブタジエン共重合体)ラテックス、及びNBR(ブタジエン・アクリロニトリル共重合体)ラテックスの何れか、または複数配合されたものを用いることが好ましい。
【0061】
(4)変更例
次に、上述した流体圧アクチュエータ10の変更例について説明する。具体的には、封止機構200の変更例について説明する。以下、上述した流体圧アクチュエータ10と異なる部分について主に説明する。
【0062】
(4.1)変更例1
図6は、変更例1に係る封止機構200を含む流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
【0063】
本変更例では、封止部材210は、ゴムシート250及びゴムシート260を含む。具体的には、図3に示した接着層240に代えてゴムシート260が用いられる。
【0064】
ゴムシート250及びゴムシート260は、シート状の弾性部材であり、スリーブ120と当接する。
【0065】
具体的には、ゴムシート250は、円筒状の折り返し部120aの外周面を覆うように設けられる。ゴムシート260は、スリーブ120と、折り返し部120aとの間に設けられる。
【0066】
ゴムシート250及びゴムシート260のゴムの種類は、特に限定されないが、被覆層122の形成に用いられるラテックスと同一の配合とした合成ゴムとすることが好ましい。
【0067】
(4.2)変更例2
図7は、変更例2に係る封止機構200Aを含む流体圧アクチュエータ10の軸方向DAXに沿った一部断面図である。図7に示すように、図3及び図6に示した封止機構200に代えて、封止機構200Aが用いられる。封止機構200と封止機構200Aとの相違点は、封止部材210のような小径部214が形成されていないことである。また、封止機構200Aでは、係止リング220が用いられていない。
【0068】
封止部材210Aの胴体部211Aには、チューブ110が挿通される。封止機構200Aでは、係止リング220が用いられていないため、スリーブ120は折り返されていない。
【0069】
かしめ部材230Aは、チューブ110及びスリーブ120を、封止部材210Aとともにかしめる。
【0070】
なお、本変更例では、図3に示した封止機構200と同様に接着層240が形成されているが、接着層240に代えてゴムシート250と同様のゴムシートを設けるようにしてもよい。
【0071】
(5)作用・効果
以下、上述した本実施形態に係る流体圧アクチュエータ10の作用及び効果について説明する。
【0072】
表1は、比較例及び実施例に係る流体圧アクチュエータの構成及び評価試験結果を示す。
【0073】
【表1】
表1に示すように、被覆層の構成が異なる比較例1〜3及び実施例1〜3に係る流体圧アクチュエータを作成し、流体圧アクチュエータの耐久性について評価試験を実施した。
【0074】
比較例1及び比較例3は、被覆層の形成に用いる熱硬化性樹脂及びラテックスの混合水溶液の固形分率(wt%)が、15%以上、50%以下(好ましくは、20%以上、40%以下)の範囲外である。また、比較例2は、被覆層にラテックスが用いられていない。一方、実施例1〜3は、混合水溶液の固形分率(wt%)が、20%以上、40%以下の範囲内である。
【0075】
耐久性の評価試験では、各流体圧アクチュエータを油圧で駆動し、アクチュエータ本体部に何らかの損傷が生じるまでの作動回数(時間)を測定した。「耐久性」の欄の数値は、比較例1の測定結果を100とした場合における指数を示す。
【0076】
実施例1〜3では、被覆層に熱硬化性樹脂及びラテックスの混合物を用い、当該固形分率が20%以上、40%以下であるため、耐久性が大幅に向上していることが解る。
【0077】
このように、流体圧アクチュエータ10によれば、コード121は、有機繊維で構成され、コード121の表面を被覆する被覆層122は、熱硬化性樹脂とラテックスとの混合物によって形成される。
【0078】
流体圧アクチュエータ10のようなマッキベン型の流体圧アクチュエータでは、有機繊維のコード121とチューブ110との摩擦、或いはコード121自体の摩擦による損傷によって、アクチュエータ本体部100が収縮及び膨張を繰り返した場合の耐久性が問題となり得る。
【0079】
流体圧アクチュエータ10によれば、熱硬化性樹脂とラテックスとの混合物によって形成される被覆層122がコード121の表面を被覆するため、コード121の損傷を防止しつつ、コード121表面の摩擦係数を適度に低下させることができる。
【0080】
すなわち、流体圧アクチュエータ10によれば、油圧駆動とした場合など、高い圧力が掛かる場合でも充分な耐久性を有する。
【0081】
本実施形態では、被覆層122は、熱硬化性樹脂とラテックスとの固形分率(wt%)が15%以上、50%以下(好ましくは、20%以上、40%以下)である混合物水溶液を用いて形成することができる。また、熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、及びウレタン樹脂の何れか、または複数が配合されたものである。さらに、ラテックスは、VPラテックス、SBRラテックス、及びNBRラテックスの何れか、または複数が配合されたものである。
【0082】
これにより、有機繊維製のコード121の表面を容易かつ確実に被覆しつつ、コード121表面の摩擦係数を適度に低下させることができる。
【0083】
本実施形態では、封止部材210は、スリーブ120と当接するゴムシート250及びゴムシート260を含む。このように被覆層122によって被覆されたコード121によって構成されるスリーブ120をゴムシート250及びゴムシート260と当接させてかしめることによって、摩擦係数が低下したスリーブ120(コード121)の封止部材210からの引き抜き防止に効果がある。
【0084】
特に、コード121が、熱硬化性樹脂とラテックスとの混合物によって形成された被覆層122によって被覆されているため、被覆層122とゴムシート260とが接着するため、スリーブ120の引き抜き防止の効果が高い。
【0085】
(6)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0086】
例えば、上述した実施形態では、スリーブ120と折り返し部120aとの間、またはかしめ部材230Aとスリーブ120との間(変更例2)には、接着層240が形成されていたが、このような接着層240は、必ずしも形成されていなくても構わない。
【0087】
また、上述した実施形態では、ゴムシート250及びゴムシート260が設けられていた(変更例1)が、少なくとも何れかのゴムシートは、必ずしも設けられていなくても構わない。
【0088】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0089】
10 流体圧アクチュエータ
20 連結部
100 アクチュエータ本体部
110 チューブ
120 スリーブ
120a 折り返し部
121 コード
122 被覆層
200, 200A 封止機構
210, 210A 封止部材
211, 211A 胴体部
213 凹凸部
214 第1小径部
215 通過孔
220 係止リング
230, 230A かしめ部材
231 圧痕
240 接着層
250, 260 ゴムシート
300 封止機構
400 フィッティング
410 通過孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7