(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機械、機器、装置のいずれかの対象物に装備され、この対象物の操作入力手段と人との間における当該人を介在させる操作関係の繋がり領域で、前記対象物が前記人に求める所要の姿勢または行為を前記人がとっているか否かを前記対象物の側が検知し得るための人体検知手段を備え、
前記人体検知手段は前記対象物の制御処理手段に接続された少なくとも第1および第2の電界通信機の組により構成され、
少なくとも2組の前記人体検知手段の各々の前記第1および第2の電界通信機は、前記対象物において前記人の身体に繋がる異なる箇所に配置される、
ことを特徴とする電界通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電界通信システムでは、通常的には、固定器は機械等の側に、移動器は人の側に備えられるように構成されていた。そのため、人が固定器の電極に接触等すると、通信経路が成立し、通信が行われるようになっていた。このため、人の側では、移動器を取得して携帯することが必須の条件になっていた。当該移動器は電界通信機であり、その役割としては、個人のIDを機械等の側に通知するのみであり、認証行為、例えば非接触ICカードの操作性(ICカードを入力受信部にタッチする行為)を改善した単機能端末として利用しているにすぎない。
【0006】
また特許文献1に開示された車載機器制御システムによれば、ナビゲーション機器に電界通信システムを適用し、ナビゲーション機器の側に人体通信送信器と人体通信受信器を備えた構成になっている。人体通信送信機と人体通信受信機は共に固定器として用いられており、運転者や乗員等の人の側において特別な移動器を携帯する必要はなく、人は人体のみで足りている。しかし、この車載機器制御システムで利用された電界通信システムの構成によれば、単に、車載機器の操作入力部に操作入力を行った者がいかなる人(運転者または他の乗員)であるかを判別するための構成として利用されているにすぎない。
【0007】
電界通信システムは、本来、人体を介在させて通信経路を成立させることから人の存在を検知することが可能であり、さらに、成立した当該通信経路を利用してデータ送信を行うことが可能であるという独特の特性を有している。電界通信システムの当該特性をさらに積極的にかつ有効に利用すれば、将来的に、機械等と人との繋がり領域(インターフェースの部分)で、人の取る姿勢または行為等が、機械等の側から人に対して求められる姿勢または行為等の条件が合致するか否かを判別し、当該機械等の自動的な動作等の制御機能を高めるということが期待されている。
【0008】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、機械等とこれに関係する人との間において、機械等に関係して繋がる人の姿勢または行為等が機械等が求める条件を満たすか否かを検知することができるようにした電界通信システ
ムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電界通信システ
ムは、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0010】
第1の電界通信システム(請求項1に対応)は、機械、機器、装置のいずれかの対象物に装備され、この対象物の操作入力手段と人との間における当該人を介在させる操作関係の繋がり領域で、対象物が人に求める所要の姿勢または行為を人がとっているか否かを対象物の側が検知し得るための人体検知手段を備え、
人体検知手段は対象物の制御処理手段に接続された少なくとも第1および第2の電界通信機の組により構成され、少なくとも2組の人体検知手段
の各々の第1および第2の電界通信機は
、対象物において人の身体に繋がる異なる
箇所に配置されることを特徴とする。
【0011】
上記の電界通信システムでは、人を介在させて通信経路を生成する電界通信を利用することにより、機械等と人との
少なくとも2箇所の繋がり領域において当該人に機械等が求める所要の姿勢または行為を当該人がとっているか否かを確実に知ることが可能となる。
【0013】
第
2の電界通信システム(請求項
2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、少なくとも2組の人体検知手段の各々は対象物の制御処理手段に接続された少なくとも3以上の電界通信機により構成され、さらに、少なくとも3以上の電界通信機の間の少なくとも2つの対の電界通信機による複数の通信経路が成立したとき、対象物の側の動作目的に応じた優先基準に基づいていずれかの通信経路を選択する選択手段を備えることを特徴とする。
【0016】
第
3の電界通信システム(請求項
3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、人が所要の姿勢または行為をとっているとき、人体検知手段および人の身体を通して通信経路が形成され、この通信経路を介して人に係るデータを対象物の側に送信するように構成されることを特徴とする。
【0017】
第
4の電界通信システム(請求項
4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、対象物は、自動車、自動二輪車、自転車、飛行体、軌道車両、水上車両を含む移動機械であることを特徴とする。
【0018】
第
5の電界通信システム(請求項
5に対応)は、上記の構成において、好ましくは、対象物は、工場内の生産ラインに設置された機械、機器、装置のいずれかであることを特徴とする。
【0019】
第
6の電界通信システム(請求項
6に対応)は、上記の構成において、好ましくは、対象物は、公共施設に設置された機械、機器、装置のいずれかであることを特徴とする。
【0020】
第
7の電界通信システム(請求項
7に対応)は、上記の構成において、好ましくは、公共施設が交通系施設でありかつ対象物が自動改札機であるとき、自動改札機の側は人認証手段によって人を認証すると共に、人体検知手段が、人が自動改札機を通行する意思を示す所要の姿勢または行為を行ったことを検知したとき、制御処理手段は自動改札機を所要の通行許可動作状態に制御することを特徴とする。
【0021】
第
8の電界通信システム(請求項
8に対応)は、上記の構成において、好ましくは、人は、特別な通信手段を用いることなく、所要の姿勢または行為を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る電界通信システ
ムによれば、次の効果を奏する。
機械等と人とが係わって機械等の側に必要な動作をさせる構成であって、電界通信を利用して機械等と人との係わり関係を形成する構成において、本来的に人の側で携帯すべき電界通信機を機械等の側に第2の固定器(固定側電界通信機)として取り付けたため、人の側では特別な電界通信機を携帯する必要がなくなり、さらに、機械側が人に求める所要の姿勢または行為を当該人がとっている否かを確実に知ることができ、機械等の側の制御処理や動作維持の技術的効果、または公共施設等では人へのサービス提供等の効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0027】
図1を参照して、本発明に係る電界通信システムの基本的な構成を概念的に説明する。
図1において、10は本発明に係る電界通信システム、11は電界通信システム10が適用される対象物である。当該対象物11は、代表的に機械であり、その他、機器、装置、あるいはその類似物である。機械としては自動車等の移動機械が代表的である。移動機械には、例えば、その他に、自動二輪車、自転車、飛行体、軌道車両、水上車両を含む。また機械、機器、装置等の対象物11は、医療系施設、交通系施設等の公共施設において設置または装備された機械、機器、装置等であることも可能である。
【0028】
対象物11は、人12によって運転または入力等の操作が行われる対象である。人12としては、運転者、乗員、操作員(作業者)、通行者、利用者等である。対象物11は、人12によって操作される操作入力部11Aを備えている。対象物11は、人12が操作入力部11Aを操作等することにより、当該操作関係の形成に基づいて、制御指令や各種のデータを受け取る。操作入力部11Aの操作等(または「操作関係」)は、具体的には、例えば、人12の手や足等の身体を用いた行為に基づく入力、または、操作入力部11Aに対する人12の操作入力等の姿勢、または、単にセンサ手段として構成された操作入力部11Aと人12の間の距離関係もしくは当該操作入力部11Aに対する人12の移動関係などである。操作入力部11Aの操作等は、人12との関係において、「操作関係」として成立するものである。このように、対象物11の操作入力部11Aと人12との間においては、当該人12を介在させて成る操作関係が形成され、当該操作関係に基づいて、物理的な繋がり領域13が作られる。当該繋がり領域13は、対象物11である機械、機器、装置等と人12との間の「操作する(「情報・指令等を提供する」を含む)」および「操作される(「情報・指令等を提供される」ことを含む)」という機械等と人間との間の物理的な繋がり領域であり、接触および非接触の関係を含むものである。
図1に示した繋がり領域(操作関係)13は、例えば、操作入力部11Aと、これを操作する人12の手との間に作られている。
また「操作関係の繋がり領域」については、医療系施設等において設置された電動ベッドのごとき機器等の場合、その概念はさらに拡張され、例えば電動ベッド等に対して人(患者等)が特定の姿勢(状態を含む)をとっている場合にも電動ベッド等と人とは操作関係の繋がり領域が作られるものとする。
【0029】
次に、電界通信システム10において、対象物11の側には、少なくとも2つの電界通信機14,15が備えられている。電界通信機14,15は電界通信を可能にするための通信手段である。電界通信機14,15は、一方が機械側に装備される固定器、他方が人側に装備される移動器として構成されるのではなく、両方共に対象物11の側に装備される固定器(固定側電界通信機)として構成される。従って、人12の側においては、電界通信のための特別な移動器すなわち移動側電界通信機を所持し携帯するという必要性はなくなる。つまり、人の側では電界通信のための手段を用意し持つ必要はない。
【0030】
また電界通信機14,15の個数は任意であり、3つでも4つでもよい。
【0031】
電界通信機14,15は、電界通信を行うための送受信部、または、電界送信のみを行うための送信部、または、電界受信のみを行うための受信部を含むように構成することができる。電界通信機14,15の構成は、その用途または目的に応じて、任意に選択することができる。
図1に示した例では、電界通信機14,15のうち、例えば電界通信機14は対象物11の操作入力部11Aに関係付けて設置され、他方、電界通信機15は対象物11の一部を成す他の箇所に関係付けて設置されている。電界通信機14,15のより詳しい内部構成は、後述する第1の実施形態等を参照して説明される。
【0032】
2つの電界通信機14,15のそれぞれは、人12との間において、異なる箇所に配置され、人12を介在させて通信経路(接続状態または繋がり状態)を形成することに貢献する。人12は、他の場所から対象物11の操作入力部11Aに近づくように移動し、予め定められた位置(電界通信機15の設置位置)にその身体をセットし、当該位置で、その手で操作入力部11Aに対して必要な姿勢をとる、または、必要な行為を行う。前述した通り、対象物11の操作入力部11Aとこれを操作する人12の手との間では繋がり領域13が作られる。また人12がその手で操作入力部11Aを操作すると、人12の身体と、電界通信機14,15のそれぞれとが電界通信的に接続される。結果として、人12の身体を介在させて、2つの電界通信機14,15の間に通信経路16が形成されることになる。こうして電界通信システム10が構築されることになり、そして2つの電界通信機14,15は、人12についての人体検知手段として機能する。
【0033】
2つの電界通信機14,15は、それぞれ、対象物11に内蔵された制御処理部17に接続されている。電界通信システム10において、上記の通信経路16が形成されると、対象物11の制御処理部17は、対象物11の操作入力部11Aとの位置関係において人12の身体が所定の位置に存在することを検知することができる。さらに、必要に応じて、対象物11の制御処理部17に対して、電界通信機14,15の側から人12に関する情報(データ)等が送信される。すなわち、対象物11の制御処理部17は、人12に関する情報(データ)を受け取ることができる。対象物11の制御処理部17は、以上のプロセスを経て、人12に関する人体検知を行い、さらに必要に応じて人12に関する情報(データ)を入手し、その後制御指令を生成・出力し、対象物11に内蔵される例えば駆動装置18の動作を制御する。
【0034】
上記において、人体検知手段として構成される2つの電界通信機14,15に関して電界通信機14を操作入力部11Aに関係付けるように構成したため、人12は、対象物11である機械等の側から、人12が対象物11の操作入力部11Aとの間において所要の姿勢を成すまたは所要の行為を行うことを求められていることになる。換言すれば、対象物11の側に設けられた2つの電界通信機14,15で構成される人体検知手段は、操作関係の繋がり領域13に存在する人12が、その身体を、操作入力部11Aとの操作関係において、対象物11の側から求められる所要の姿勢または行為をとっているか否かを検知するための手段としての独特の機能・構成を有している。
【0035】
対象物11に適用された本発明に係る電界通信システム10の構成によれば、少なくとも2つの電界通信機14,15のいずれも、固定器として、対象物11の側の異なる所要の箇所に設置することによって、人12の側は特別な電界通信用移動器を携帯することなく、通信経路を形成することができる。そして、さらに、操作関係の繋がり領域13に存在する人12について、操作入力部11Aとの操作関係に関して、対象物11の側が人に求める所要の姿勢または行為を人12がとっているか否かを検知することができる。
【0036】
上記のシステム構成について、他の観点から述べると、本来的には移動器として人12の側に携帯されるべき電界通信機(移動側電界通信機)を、第2の固定器(固定側電界通信機)として、機械等である対象物11の側に設置するものである。なお対象物11の側では、元々、1つの電界通信機を固定器(第1の固定側電界通信機)として備えている。このシステム構成によれば、人12の身体を電界通信の通信経路として利用するにあたり、人12の側では特別に電界通信機を携帯する必要はなく、身体のみで対処することができるという利点を有している。
【0037】
次に、
図2と
図3を参照して、本発明に係る電界通信システムの第1の実施形態を説明する。この第1の実施形態は、自動車のエンジンの制御に電界通信システムを適用した例である。このエンジン制御の内容は、運転者が運転席に座って運転姿勢でハンドルに触れていない場合には、安全性の観点で、エンジンを動作させないという内容である。
【0038】
図1を参照して第1の実施形態の構成を説明する。前述した対象物11は自動車であり、さらに詳しくは自動車に搭載されたエンジンシステム21である。エンジンシステム21は、自動車の駆動装置であるエンジン22、エンジン22の電子回路部の各構成要素に対して制御指令を与える処理部23、エンジン22の動作に係る制御信号を出力する制御部24を内蔵している。制御部24は、電界通信システム10の人検知手段から与えられる人検知に係る情報に基づいて、エンジン11の駆動制御に要する制御信号を生成し出力する。処理部23は、制御部24から与えられた制御信号に基づき、制御指令を生成し、エンジン22に対して与える。
【0039】
電界通信システム10は2つの電界通信機25,26を備えている。一方の電界通信機25は自動車のハンドル27の箇所に内蔵等により取り付けられている。ハンドル27は、自動車の進行方向を決める操作入力装置(操舵装置)である。他方の電界通信機26は、自動車の運転席の座席シート28に内蔵等により取り付けられている。座席シート28は、運転者が座る箇所である。第1の実施形態の構成において、電界通信機25は電界通信受信機としての機能(受信機能)を有するように構成され、電界通信機26は電界通信送信機としての機能(送信機能)を有するように構成されている。
【0040】
電界通信機25は、電極25aと電界通信受信部25bとCPU25cとI/F(インターフェース部)25dを内蔵している。電界通信機26は、電極26aと電界通信送信部26bとCPU26cとI/F(インターフェース部)26dを内蔵している。電界通信機25はそのI/F25dを介してエンジンシステム21の制御部24に電気的に接続されている。電界通信部26はそのI/F26dを介してエンジンシステム21の制御部24に電気的に接続されている。
【0041】
上記の構成を有する電界通信システム10は、自動車の電源スイッチがオフされているときであっても、車載バッテリ(図示せず)から電力が供給されており、能動状態に保持されている。
【0042】
上記の電界通信システム10では、運転者29が自動車に乗り込み、座席シート28に座り、さらにその手でハンドル27を握ると、前述した通り、運転者29の手とハンドル27との間で操作関係の繋がり領域13が作られる。さらに、ハンドル27を操作すべく当該ハンドル27を握った時点において、座席シート28に設けた電界通信機26とハンドル27に設けた電界通信機25との間で、運転者29の身体を介在させて、電界通信システム10における通信経路16が生成されることになる。この通信経路16が生成されると、運転者29の身体を介して電界通信が可能になる。この実施形態の場合には、矢印30に示されるように、電界通信機26から電界通信機25に対して情報(データ)等の伝送を行うことが可能となる。
【0043】
上記の電界通信システム10によれば、自動車の座席シート28に運転者29が座って運転を行うためハンドル27を握ると、電界通信の通信経路16が形成され、2つの電界通信機25,26によって形成された人検知手段に基づいて、操作関係の繋がり領域13において人が存在することを検知することができる。さらに、当該通信経路16が生成されたことにより、自動車のエンジンシステム21の側では、運転席の座席シート28に座った運転者29はハンドル27を握った状態(運転姿勢)にあることが分かり、かつ、運転者に対して求める運転姿勢(または運転行為)を当該運転者29がとっているか否かということを検知することができる。換言すれば、運転者29が検知されるときには運転者29がハンドル27を握っていることが検知でき、運転者29が検知されないときには運転者29がハンドル27を握っていないかまたは座席シート28の場所にいないということが判明する。
【0044】
次に、
図3のフローチャートを参照して、自動車のエンジン22の動作制御について説明する。
図3において、破線のブロック31はエンジンシステム21が停止状態にある場合のプロセスを示し、破線のブロック32はエンジンシステム21が動作状態にある場合のプロセスを示している。
【0045】
エンジンシステム21が停止している状態のブロック31において、電界通信システム10の側には車載バッテリから電力が供給され、電界通信システム10は能動状態にある。電界通信システム10では、エンジン22が停止した待機状態において、送信機能を有する電界通信機26がポーリングを実行している(ステップS11)。そして、次の段階で、人体の進入があり、かつ自動車の側から求められる運転に係る所定の姿勢(所要の運転姿勢)に従って通信経路16が形成されているか否かを判断する(判断ステップS12)。つまり、運転者29が座席シート28に座り、その状態で自動車の側から求められる所要の運転姿勢をとっているか否かを判断する。判断ステップS12でNOである場合にはステップS11に戻り、YESの場合には次のステップS13に移行する。ステップS13では、エンジンシステム21を動作させるための動作条件を成立させる。当該動作条件としては、例えば、電源スイッチの自動的にONすることであり、エンジン22の動作を可能にしかつ自動車の運転を可能にするための条件である。ステップS13が実行された後、ブロック32に移行する。
【0046】
ブロック32において、先ず、エンジンシステム21が動作を開始する(ステップS14)。その後、電界通信機26がエンジン22の動作中におけるポーリングを実行する(ステップS15)。そして、次の段階では、人体が検出されかつ通信経路16が形成されているか否かを判断する(判断ステップS16)。つまり、運転者29が継続して座席シート28に座って、自動車の側から求められる所要の運転姿勢をとっているか否かが判断される。判断ステップS16でYESである場合にはステップS15に戻り、NOの場合には次のステップS17に移行する。判断ステップS16でYESであることは、運転者29が座席シート28に座って継続して運転姿勢を維持し、自動車の運転を行っていることを意味する。判断ステップS16でYESである場合には、ステップS15と判断ステップS16を繰り返す。判断ステップS16でNOであることは、運転者29が自動車の側から求められている運転姿勢をとっていないことを意味する。そこで、次のステップS17では、運転者29に対して、エンジンシステム21を停止することの警告を発する。
警告の例として、表示パネルでの緊急警告表や、発音器による警告音の発生である。その後、判断ステップS18で、再度、人体が検出されかつ通信経路16が形成されているか否かを判断する。警告によって運転者29が運転姿勢をとる可能性があるからである。2回目の判断ステップS18でYESの場合にはステップS15に戻り、NOの場合にはステップS19に移行する。ステップS15に戻ることにより、運転者29の運転姿勢に関する問題は解消されたものとして、エンジンシステム21の動作を継続することになる。ステップS19に移行した場合には、運転者29が所要の運転姿勢を維持していないとして、エンジンシステム21の停止条件を成立させる。停止条件とは、例えば、電源スイッチを自動的にOFFにすることである。その結果、次のステップS20で、エンジンシステム21は停止する。
【0047】
上記の第1の実施形態によれば、自動車のエンジンシステム21の動作制御に本発明に係る電界通信システム10を適用した。これにより、自動車の側から見ると、エンジンシステム21に接続された電界通信機25,26から成る人体検知手段を用いることにより、運転席(座席シート28)に居る運転者29が自動車の側が求める所要の姿勢をとっているか否かを正確に判断することができ、エンジンシステム21の自動的な動作等に有効に役立てることができる。この例では、自動車のエンジンシステム21に適用されたが、自動車に搭載された他のシステムに適用することができるのは勿論である。
【0048】
次に、
図4を参照して上記の第1の実施形態の第1の変形例を説明する。
図4は
図2に示した構成に変更を加えている。この変形実施形態では、電界通信システム10において3つの電界通信機が装備されている。
図4では、前述した電界通信機25,26に対してさらに電界通信機41を備えている。その他の構成は、
図2で説明した構成と同じである。電界通信機41は、ブレーキペダル42に関連して取り付けられている。ブレーキペダル42と運転者29の足との間には、運転者29がその足でブレーキペダルを踏んだとき、操作関係の繋がり領域14が作られる。また電界通信機41はエンジンシステム21の制御部24に電気的に接続されている。電界通信機41は電界通信受信部を内蔵しており、電界通信機25と同じ内部構成を有している。従って、座席シート28に座って運転姿勢の状態にある運転者29がブレーキペダル42を踏むと、通信経路16に関して、電界通信機25への通路経路の部分に加えて、ブレーキペダル42と運転者29の足との間における操作関係の繋がり領域13で、さらに電界通信機41への通信経路の部分が生成される。通信経路16における電界通信機41への通信経路の部分によって、矢印43に示すようにデータを伝送することが可能となる。
【0049】
上記のごとく、エンジンシステム21に対して設けた電界通信システム10において3つの電界通信機25,26,41を備えると、座席シート28に座った運転者29の身体を介在させて、電界通信機25,26の間、および電界通信機25,41の間、の2つの対の電界通信機による2つの通信経路(接続状態または繋がり状態)が成立することが可能となる。このような構成の場合にも、エンジンシステム21の側の動作目的に応じた優先基準に基づいていずれか一方または両方の通信経路を選択することができる。当該選択を行う選択手段は、例えば送信側の電界通信機26に持たせることができる。すなわち、第1の実施形態において
図3を参照して説明したフローチャートのプロセスを前提として、例えば、待機中での送信機能を有する電界通信機26のポーリングの実行においては、電界通信システム10内で各機器のIDが予め分かっているので、受信側の2つの電界通信機25,41に対して交互にポーリングを行うことができる。そして、受信側の2つの電界通信機25,41に対して交互にポーリングを行うことにより、例えば両方を検知した場合にはエンジン22の始動を行う、または、優先基準に基づき優先度の高い電界通信機25を検知した場合にはその後に電界通信機41に対してポーリングを行い、それを検知した後にエンジン22の始動を行うようにする。またエンジン動作中の電界通信機26のポーリングの実行においては、ブレーキペダル42側の電界通信機41に対してのみ定期的にポーリングを行い、電界通信機41との間で通信経路16が形成されると、前述した警告のステップ(S17)およびその後の条件に応じた停止のステップ(S19)が実行される。
【0050】
また、送信側の電界通信機26と、受信側の電界通信機25および電界通信機41のいずれか一方または両方との間で、通信経路16が形成された場合には、当該通信経路16を経由し、通信先ID指定に基づいて、送信側の電界通信機26からデータ伝送を行うことができる。
【0051】
上記の実施形態の説明では、電界通信システム10は3つの電界通信機25,26,41を備えるように構成されたが、3つよりも多い数の電界通信機を備えるように構成することもできる。
【0052】
次に、
図5を参照して上記の第1の実施形態の第2の変形例を説明する。
図5は電界通信システム10の中に4つの電界通信機を備える構成である。一対の電界通信機25,26の組は、前述したごとく、自動車のエンジンシステム21の動作制御のため運転席の座席シート28に装備された人検知手段であり、人(運転者19)が介在すると、ハンドル27と運転者29の手との間で前述した操作関係の繋がり領域13が作られ、さらに電界通信機25,26の間で運転者29の身体を介して通信経路16が生成される。他方、一対の電界通信機51,52の組は、例えば自動車の自動運転システム53の動作制御のための他の場所に配置されることによって装備された人検知手段であり、人が介在すると、入力操作手段とこれを操作する運転手29の手との間で他の操作関係の繋がり領域13Aが作られ、さらに電界通信機51,52の間で運転者29の身体を介して他の通信経路が生成される。このように、4つの電界通信機により2つの対の電界通信機による人検知手段によって、2つの自動車用のシステムの動作制御を行うように構成することができる。
【0053】
次に、
図6を参照して、本発明に係る電界通信システムの第2の実施形態を説明する。この第2の実施形態は、例えば航空機の操縦席等のシートベルトに電界通信システムを適用した例である。
【0054】
電界通信機については、第1の実施形態で説明した2つの電界通信機25,26を用いる。この構成では、操縦席等の座席シート60に装備されたシートベルト61に対して送信機能を有した電界通信機26を取り付け、また例えば床面の足元部分に設けられたマット62に受信機能を有した電界通信機25を設置している。人(操縦士等)63が座席シート28に座り、シートベルト61を身体に装着したときのみに、電界通信機25,26の間で通信経路16が形成され、データ伝送が可能となる。
【0055】
上記の電界通信システムの構成によれば、人63が座席シート60に座っている姿勢をとることで、前述した操作関係の繋がり関係が作られる。そして、電界通信によって操縦士等の乗員の有無やシートベルトの装着の有無を検知し確認することができ、これにより安全性を高めることができる。人63が操縦士である場合には、どの程度の時間の間、操縦士が操縦姿勢の状態にあるかを確認することができる。そのため、その時間を計測して基準時間を超えた場合には警告を発するように構成することもでき、長時間運転の影響による交通事故を低減することができる。さらに、シートベルト61に取り付けた電界通信機26がリーダを備えたカードホルダ状の構造物であれば、パスポートや操縦士証明などの人63に係る個人を特定するICカードを挿入するように構成することもできる。これによって、人認証を行うことが可能になり、搭乗証明や機内行動(在席)監視等を行うことができる。
すなわち、航空機の操縦席および副操縦席等では、操縦席と副操縦席に確実に人が座っている状態で通信可能になり、航空機等の側は、当該人の姿勢または行為がとられているか否かを通信経路を経由して確認でき、安全な飛行を実現することができる。仮に、操縦者等が不用意に座席を離れてしまうことがあれば、管制塔に異常を知らせることにより、墜落等の事故を未然に防ぐことも可能となる。
航空機が旅客機であって旅客席に適用した場合には、旅客が所持する指定座席の情報をICカードに保存し、そのICカードをシートベルト等に取り付けたリーダ付きカードホルダ状構造を有する電界通信機にセットすることにより、指定された正規の人が座席に座っているか否かを一括して確認することができる。
【0056】
次に、
図7を参照して、本発明に係る電界通信システムの第3の実施形態を説明する。この第3の実施形態は、自転車のグリップに電界通信システムを適用した例である。自転車は、例えばレンタル自転車である。
【0057】
電界通信機については、第1の実施形態で説明した2つの電界通信機25,26を用いる。この構成では、例えば自転車71のグリップ72(サドル75等でも可)に対して送信機能を有した電界通信機26を取り付け、また例えばレンタルショップの特定場所等の床面に設けられたマット73に電界通信機25を設置する。人74が自転車71のサドル74に跨り、自転車71のグリップ72を握ると、電界通信機25,26の間で通信経路16が形成され、データ伝送が可能となる。この電界通信システムの構成によれば、人74がマット73上でグリップ72を握ることで、グリップ72と人74の手との間で前述した操作関係の繋がり関係が作られる。
【0058】
レンタル自転車等では、好ましくは、誰が自転車71に乗っているかの情報が求められる。従って、グリップ72に電界通信機26を取り付け、当該電界通信機26を、リーダを備えたカードホルダ状の構造物とすることにより、免許証などの人74に係る個人を特定するICカードを挿入するように構成にし、この仕組みにより借りた人74の確認を行うことができる。なおタッチ式のICカードを利用する構成に比較して、利便性があり、利用しやすいという特長を有している。
【0059】
本発明に係る電界通信システムは、さらに、その他の移動機械である、自動二輪車、電車または新幹線等(軌道車両)、水上車両、飛行体等に対して、前述した各実施形態と同様に適用することができる。
【0060】
自動二輪車の場合には、前述した自転車の実施形態の場合と同様な適用がなされる。
【0061】
電車や新幹線等の場合、水上車両の場合には、その運転席に電界通信システムを適用することにより、運転者が機械等から求められる所要の姿勢または行為をとっているか否かを検知することができ、これによりATSと連動させることにより電車、新幹線、水上車両等を停止させ、事故を未然に防ぐことができる。
さらに新幹線等の旅客用の各座席に、リーダ付きカードホルダ状構造を有する電界通信機を取り付け、さらに、旅客が所持する指定座席の情報をICカードに保存し、そのICカードを当該電界通信機にセットすることにより、指定された正規の人が座席に座っているか否かを一括して確認することができる。
飛行体の例としては、模型のヘリコプターやドローン等の操縦器等に適用することができる。
【0062】
図8を参照して、本発明に係る電界通信システムの第4の実施形態を説明する。この第4の実施形態は、工場の生産ラインに電界通信システムを適用した例である。
【0063】
当該生産ラインには、製造中の対象物を搬送するベルトコンベア等に沿って、工程に応じて、複数の機械等が設置されている。
図8では、ベルトコンベア81の付近の場所に設置された制御指令用の1台の機械82を示している。この機械82は、その場所で作業する作業者83によって操作される。作業者83は、機械82の操作入力部84を操作して必要な操作指令を機械82に与える。機械82の側は、当該操作のために作業者83に対して所要の姿勢または行為を求めている。電界通信システムにおける送信機能を有した電界通信機26は、機械82の操作入力部84に取り付けられている。この電界通信機26は、リーダ付きカードホルダ状構造を有する電界通信機である。また機械82の正面部側の床面において作業者83が立つ場所にはマット85が配置され、当該マット85には、他方の受信機能を有した電界通信機25を取り付けられている。
【0064】
上記の構成において、作業者83は機械82の正面でマット85の上に立って機械82の操作入力部84を操作して、作業を行う。このとき、作業者83は作業操作を開始する前の段階で、作業者83が所持するICカードを電界通信機26に挿入・セットし、操作入力部84を操作する。これにより、通信経路16が形成され、さらに通信経路16を経由して作業者83の情報が機械82の側に送られ、機械82の動作が開始される。この電界通信システムによれば、機械82の側において、通信経路16を経由した通信により、誰が何時間働いたか、機械82の動作において所要の姿勢をとってまたは所要の行為を行って確実に立ち会っているか否かを確認することができる。電界通信を利用した構成によれば、人が介在していることで通信が成立するため、緊急時、または体調不良などで作業者83が不用意にその作業の場から離れたとき、機械82の動作を自動的に停止することで、安全性を高めることができる。
【0065】
図9を参照して、本発明に係る電界通信システムの第5の実施形態を説明する。この第5の実施形態は、介護施設において被介護者ベッドに電界通信システムを適用した例である。
【0066】
91はベッドであり、92はベッド91に横たわる被介護者である。ベッド91には、介護担当者が待機する管理室の通信装置と接続された連絡用通信装置93が装備されている。さらにベッド91においては、被介護者92の頭部付近の箇所に送信機能を有した電界通信機26を取り付け、被介護者92の腰または足の付近の箇所に受信機能を有した電界通信機25を取り付けている。ベッド91に被介護者92が横たわると、当該横たわりの姿勢でベッド91と被介護者92の間において前述した操作関係の繋がり領域が作られる。そしてベッド91に被介護者92が横たわることにより、被介護者92の身体を介在させて通信経路16が形成される。この通信経路16に基づく電界通信により、ベッド91に装備された連絡用通信装置93に、管理室の通信装置に対して、被介護者92が、所要の姿勢でベッド91に横たわっていることの情報が送信される。このため、ベッド91の上の被介護者92が不用意に通信経路16が消失するように移動すると、連絡用通信装置93から管理室の通信装置に対して通信が行えないため、被介護者92の状態が異常であることを知らせることが可能となる。これにより、ベッド91から被介護者92が落下したり、または、被介護者92が徘徊することを防止することができる。
【0067】
上記の第5の実施形態に係る介護施設における被介護者用ベッド91の電界通信システムの適用例は、病院施設の医療用ベッドに応用することができる。この場合には、送信機能を有した電界通信機26をリーダ付きカードホルダ状構造を有する電界通信機とし、当該電界通信機26に、電子カルテ等の患者の情報が入ったICカードを挿入してセットし、個人認証が可能となり、医師や看護婦の利便性が向上し、薬剤の誤使用等による人為的ミスによる事故を防止することができる。
【0068】
次に
図10を参照して、本発明に係る電界通信システムの第6の実施形態を説明する。この第6の実施形態は、交通系公共施設(駅等)に設けた自動改札機等(一般的にはゲート)に電界通信システムを適用した例である。
【0069】
101は駅内に設置された自動改札機である。自動改札機101は従来装置と基本的に同じ構成を有している。従って、自動改札機101は、利用者がICカードを接触させるタッチ入力部102(受信センサ)、人検知センサ103、開閉ドア104等を備えている。またこの自動改札機101には例えば顔認証装置105が付加されている。さらに自動改札機101には、前述した送信機能を有する電界通信機26をタッチ入力部102に取り付け、かつ受信機能を有する電界通信機25を通路床面に取り付けている。
【0070】
なおこの自動改札機101の利用では、自動改札機101を管理する管理コンピュータ(サーバ)の側において、利用者について顔認証が行われると共に、利用者のそれぞれはマイナンバーを割り当てられて管理がなされることを仮定している。
【0071】
上記の構成を有する自動改札機101によれば、利用者106が自動改札機101を通行しようとするとき、自動改札機101の入口で顔認証装置105で利用者106の顔認証がなされる。さらに、その後、利用者106について、認証された顔とマイナンバーとが紐付けられる。自動改札機101においては、その後、利用者106が入場意思(通行意思)があるか否かを判定する。入場意思は、利用者106が、何も持つことなく、例えばタッチ入力部102に対してタッチを行うという所要の行為に基づいて判断される。自動改札機101において、利用者106がこのようなタッチ行為を行えば、電界通信機25,26の間において通信経路16が形成され、通信が成立する。この結果、自動改札機101の側においては、利用者106の入場意思または通行意思を確認することができる。従って、自動改札機101を利用する利用者106は、特別な機器を持つことなく、自動改札機101の側から求められる姿勢または行為をとるだけで、入場等を行うことができる。
【0072】
なお「入場意思」については、その他、任意の姿勢または行為(通行姿勢、単なる通行行為等)によっても確認することは可能である。このような場合には、人検知センサ103等を利用することも可能である。
【0073】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。