(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<<印画物の形成方法>>
以下、本発明の一実施形態の印画物の形成方法(以下、一実施形態の形成方法と言う)について説明する。一実施形態の形成方法は、基材上に印刷層を形成する工程を含む印画物の形成方法であって、印刷層を形成する工程は、インクジェット方式によりインクジェット印刷層を形成する工程と、インクジェット印刷層を形成する工程に前後して、熱溶融インキ層を備えた熱転写シートを用いた熱溶融転写方式により熱溶融印刷層を形成する工程を含んでいる。また、一実施形態の形成方法では、インクジェット印刷層と熱溶融印刷層とが、少なくとも一部において接するようにして印刷層の形成が行われる。そして、一実施形態の形成方法は、インクジェット方式によりインクジェット印刷層を形成するときに用いられるインクジェット用インキ、及び熱溶融転写方式により熱溶融印刷層を形成するときに用いられる熱転写シートの熱溶融インキ層が、ともに疎水性樹脂を含有していることを特徴としている。
【0016】
上記特徴を有する一実施形態の印画物の形成方法によれば、インクジェット方式によりインクジェット印刷層を形成するときの印刷適性や、熱転写シートを用いた熱溶融転写方式により熱溶融印刷層を形成するときの印刷適性を良好なものとすることができる。具体的には、
図1(a)に示すように、基材1上に、インクジェット方式によりインクジェット印刷層3Aを形成し、
図1(b)に示すように、このインクジェット印刷層3Aの表面の一部と接するように熱溶融転写方式により熱溶融印刷層3Bを形成するときの印刷適性、或いは、
図2(a)に示すように、基材1上に、熱溶融転写方式により熱溶融印刷層3Bを形成し、
図2(b)に示すように、この熱溶融印刷層3Bの表面の一部と接するようにインクジェット方式によりインクジェット印刷層3Aを形成するときの印刷適性を良好なものとすることができる。また、インクジェット印刷層3Aと熱溶融印刷層3Bとの密着性も良好なものとすることができる。なお、
図1、
図2は、一実施形態の形成方法を説明するための概略断面図である。
【0017】
なお、インクジェット用インキ、及び熱転写シートの熱溶融インキ層の何れか一方が疎水性樹脂を含有し、他方が疎水性樹脂を含有していない場合には、先に形成された印刷層と接するようにして、次の印刷層を形成するときにおける印刷適性を満足させることができない。例えば、熱溶融インキ層のみが疎水性樹脂を含有しており、インクジェット用インキが疎水性樹脂を含有していない場合には、熱溶融転写方式により熱溶融印刷層を形成し、この熱溶融印刷層の表面の一部と接するようにインクジェット方式によりインクジェット印刷層を形成するときに、当該接する位置において、インクジェット印刷層を形成するためのインクジェット用インキが弾かれてしまい、インクジェット印刷層の面質が低くなる、或いは当該接する位置においてインクジェット印刷層が斑に形成されてしまう等の問題が生ずることなる。また、インクジェット印刷層と熱溶融印刷層との密着性も低いものとなる。インクジェット用インキのみが疎水性樹脂を含有しており、熱溶融印刷層が疎水性樹脂を含有していない場合についても同様のことがいえる。
【0018】
以下、印刷層を形成する工程について一例を挙げて、さらに具体的に説明する。
【0019】
<印刷層を形成する工程>
本工程は、
図1〜
図4に示すように、基材1上に、印刷層3を形成する工程である。なお、本願明細書で言う印刷層3には、インクジェット印刷層3A、及び熱溶融印刷層3Bが含まれる。つまり、一実施形態の形成方法は、インクジェット印刷層3Aを形成する工程、及び熱溶融印刷層3Bを形成する工程を含む。
【0020】
インクジェット印刷層3A、及び熱溶融印刷層3Bの形成順序について限定はなく、熱溶融印刷層3Bを形成する前に、インクジェット印刷層3Aを形成してもよく(
図1参照)、インクジェット印刷層3Aを形成する前に、熱溶融印刷層3Bを形成してもよい(
図2参照)。また、
図3に示すように、インクジェット印刷層3Aと、熱溶融印刷層3Bの形成を繰り返し行ってもよい。なお、繰り返し形成する形態において、インクジェット印刷層3Aと熱溶融印刷層3Bの形成順序は、
図3に示す順序に限定されるものではなく、任意に決定することができる。また、
図4に示すように、基材1の同一面上に、所定の間隔を配してインクジェット印刷層3A、或いは熱溶融印刷層3Bを形成し(
図4(a)では、熱溶融印刷層3Bを形成)、この印刷層の表面の少なくとも一部を覆うようにして(図示する形態では、印刷層、及び露出している基材1の表面の全部を覆うようにして)、熱溶融印刷層3B、或いはインクジェット印刷層3Aを形成(
図4(b)では、インクジェット印刷層3Aを形成)してもよい。
【0021】
図1〜
図4に示す形態では、インクジェット印刷層3Aと、熱溶融印刷層3Bとが厚み方向で接するように各印刷層の形成を行っているが、
図5に示すように、インクジェット印刷層3Aと、熱溶融印刷層3Bとが幅方向で接するように各印刷層の形成を行ってもよい。例えば、
図5(a)に示すように、基材1の同一面上に、所定の間隔を配して熱溶融印刷層3Bを形成し、
図5(b)に示すように、その後、隣り合う熱溶融印刷層3Bの間に、インクジェット印刷層3Aを形成することで印画物10を得てもよい。また、
図6(a)に示すように、その表面が凹部を有する熱溶融印刷層3Bを形成し、
図6(b)に示すように、熱溶融印刷層3Bの表面が有する凹部にインクジェット印刷層3Aを形成することで、換言すれば、凹部内にインクジェット用インキを充填してインクジェット印刷層3Aを形成して印画物10を得てもよい。
【0022】
(基材)
一実施形態の形成方法に用いられる基材について特に限定はなく、天然繊維紙、チタンコート紙等のコート紙、合成紙、トレーシングペーパー、ガラス、金属、セラミックス、樹脂フィルム等を適宜選択して用いることができる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート等から構成されるフィルムを挙げることができる。また、表面に受容層が設けられた基材を用いることもできる。
【0023】
基材の厚みについて特に限定はなく、1μm以上500μm以下の範囲が一般的である。
【0024】
「インクジェット方式」
インクジェット方式とは、ノズルからインクジェット用インキを吐出して、インクジェット印刷層3Aを形成する印刷方式であり、例えば、インクジェット用インキを、ピエゾ駆動で発生させた圧力波によってノズルから噴出し、被転写体(図示する形態では、基材1、或いは熱溶融印刷層3B)に付着させることにより、インクジェット印刷層3Aを形成することができる。
【0025】
(インクジェット用インキ)
上記インクジェット方式に用いられ、インクジェット印刷層3Aを形成するためのインクジェット用インキは、色材成分、樹脂成分、及び溶媒成分を含有している。そして、一実施形態の形成方法は、インクジェット用インキが、樹脂成分として疎水性樹脂を含有していることを特徴としている。
【0026】
疎水性樹脂としては、従来公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、これらの共重合体などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、および変性成分を共重合した共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、エチレンやプロピレンなどのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アイオノマー、セルロース誘導体等の有機溶媒に可溶する単体、または混合物のポリマーを挙げることができる。インクジェット用インキは、疎水性樹脂として1種を含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0027】
好ましい形態のインクジェット用インキは、疎水性樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びニトロセルロース樹脂の何れか一方、又は双方を含有している。好ましい形態のインクジェット用インキによれば、当該インキを用いてインクジェット印刷層3Aを形成するときの印刷適性や、熱溶融印刷層3Bとの密着性の更なる向上を図ることができる。
【0028】
また、インクジェット用インキは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、疎水性樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。例えば、疎水性樹脂を含む全バインダー樹脂成分の合計質量に対する疎水性樹脂の含有量は50質量%より多いことが好ましい。上限値について特に限定はなく100質量%である。
【0029】
インクジェット用インキが含有している色材成分についていかなる限定もされることはなく、従来公知の染料や、顔料を適宜選択して用いることができる。染料としては、例えば、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、メチン系染料、インドアニリン系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料等を挙げることができる。
【0030】
また、顔料としては、例えば、アゾ系顔料、キノフタロン系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料や、カーボンブラック等を挙げることができる。インクジェット用インキは、これらの色材成分の1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0031】
なお、インクジェット用インキは、色材成分としてパール顔料や、メタリック顔料等の高輝性顔料を含有していてもよいが、これらの高輝性顔料は、有機顔料や染料と比較して、粒径が大きく、ノズルへの目詰まりを起こしやすい。したがって、インクジェット用インキは、これら高輝性顔料以外の染料や、顔料を含有していることが好ましい。なお、後述するように、熱転写シート20の熱溶融インキ層22中に、高輝性顔料を含有せしめることで(
図8参照)、熱溶融印刷方式により形成される熱溶融印刷層3Bに意匠性を付与することができる。
【0032】
また、色材成分として、可視光下では発光せず、特定の不可視光下で発光する蛍光剤を用いることもできる。蛍光剤としては、例えば、レッド発色蛍光剤、グリーン発色蛍光剤、ブルー発色蛍光剤を挙げることができる。蛍光剤は、市販品をそのまま用いてもよく、例えば、レッド発色蛍光剤としては、日本化薬(株)製LC−0001、グリーン発色蛍光剤として三井化学(株)製EG−502、ブルー発色蛍光剤としてチバガイギー社製ユビテックスOB等を挙げることができる。
【0033】
なお、色材成分として蛍光剤を含有しているインクジェット用インキを用いてインクジェット印刷層3Aを形成する場合には、インクジェット印刷層3Aを厚膜化させ、光の吸収量を多くしなければ、その効果を十分に発揮することができない。なお、一般的に、インクジェット方式では、厚膜の印刷層を形成することが困難であるとされているが、一実施形態の形成方法では、インクジェット印刷層3Aを形成するためのインクジェット用インキ、及び熱溶融印刷層3Bを形成するための熱溶融インキ層の双方が、疎水性樹脂を含有していることから、インクジェット印刷層3Aを厚膜化させるための各種の手段を講ずることができる。例えば、
図5、
図8に示す形態とすることで、インクジェット印刷層3Aの厚膜化を図ることができる。なお、ここで言う厚膜化したインクジェット印刷層3Aの厚みとは、0.3μm以上の厚みを意味する。
【0034】
インクジェット用インキが含有している溶媒成分についても特に限定はなく、水やイソプロピルアルコール等の水系溶媒であってもよく、メチルエチルケトンやトルエン等の有機溶媒であってもよい。特には、「第4類第2石油類」と称される成分を好ましく用いることができる。
【0035】
また、インクジェット用インキ中において、上記染料や、顔料は、溶媒成分によって溶解された状態で存在していてもよく、分散した状態で存在していてもよい。
【0036】
また、インクジェット用インキは、上記色材成分、疎水性樹脂、溶媒とともに、これ以外の任意の成分、例えば、分散剤等を含有していてもよい。
【0037】
「熱溶融転写方式」
熱溶融転写方式は、色材成分、バインダー樹脂を含有している熱溶融インキ層を備えた熱転写シートを、被転写体と重ね合わせ、熱転写シートの背面側からサーマルヘッド等の加熱手段により画像情報に応じたエネルギーを印加して、被転写体上に、色材成分をバインダーと共に転写する印刷方式である。
【0038】
(熱転写シート)
熱溶融転写方式に用いられる熱転写シート20は、
図8に示すように、熱転写シート用基材21と、当該熱転写シート用基材上に設けられる熱溶融インキ層22とを備える。
【0039】
(熱転写シート用基材)
熱転写シート用基材21について特に限定はなく、熱転写シートの分野で従来公知の基材を適宜選択して用いることができる。熱転写シート用基材21としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルム;コンデンサー紙、パラフィン紙、合成紙等の紙類;不織布;紙や不織布と樹脂との複合体、等が挙げられる。これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、他の材料と組み合わせた積層体として使用してもよい。
【0040】
(熱溶融インキ層)
熱溶融転写方式に用いられ、熱溶融印刷層3Bを形成するための熱溶融インキ層22は、色材成分とバインダー樹脂とを含有している。そして、一実施形態の形成方法は、熱溶融インキ層22が、バインダー樹脂として疎水性樹脂を含有していることを特徴としている。
【0041】
熱溶融インキ層22が含有している色材成分について特に限定はなく、熱溶融転写方式に用いられる熱転写シートの熱溶融インキ層で公知の色材成分を適宜選択して用いることができる。例えば、上記インクジェット用インキの色材成分として説明したもの等を用いることができる。
【0042】
熱溶融インキ層22が含有している疎水性樹脂としては、上記インクジェット用インキにおいて説明した疎水性樹脂をそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。なお、印刷適性の観点から、熱溶融インキ層22も、疎水性樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、及びニトロセルロース樹脂の何れか一方、又は双方を含有していることが好ましい。また、熱溶融インキ層22は、疎水性樹脂として1種を含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0043】
熱溶融インキ層22の形成方法について特に限定はなく、色材成分、疎水性樹脂、及び必要に応じて添加される任意の成分を、適当な溶媒に溶解、或いは分散してなる熱溶融インキ層用塗工液を調製し、これを、熱転写シート用基材21上に、塗布・乾燥することで形成することができる。熱溶融インキ層22の厚みについて特に限定はないが、0.1μm以上10μm以下の範囲が一般的である。
【0044】
(任意の工程)
一実施形態の形成方法では、基材1上に印刷層3を形成する工程に前後して、任意の印刷層を形成する工程を行ってもよい。任意の印刷層を形成する工程における印刷方法は、インクジェット方式や、熱溶融転写方式に限定されるものではない。例えば、一実施形態の形成方法は、
図1〜
図6等に示す形態において、インクジェット印刷層3A、或いは熱溶融印刷層3B上に、各種の機能性層を形成する工程を有していてもよい。機能性層としては、一般的に、受容層、ハードコート層、接着層等と称される層を挙げることができる。
【0045】
また、基材1の印刷層3を形成する側の面とは反対側の面上に、各種の機能性層を形成してもよい。
【0046】
<<印画物>>
次に、本発明の一実施形態の印画物(以下、一実施形態の印画物と言う)について説明する。一実施形態の印画物10は、各図(
図1(b)、
図2(b)、
図3(c)、
図4(b)、
図5(b)、
図6(b)参照)に示すように、基材1上に印刷層3が設けられ、基材1上に設けられる印刷層3には、インクジェット方式により形成されたインクジェット印刷層3Aと、熱溶融転写方式により形成された熱溶融印刷層3Bが含まれ、当該インクジェット印刷層3Aは当該熱溶融印刷層3Bと少なくとも一部において接しており、インクジェット印刷層3A、及び熱溶融印刷層3Bが、ともに疎水性樹脂を含有していることを特徴としている。
【0047】
一実施形態の印画物によれば、インクジェット方式によるインクジェット印刷層3Aと、熱溶融転写方式による熱溶融印刷層3Bとの相乗効果によって、意匠性や、機能性を向上させることができる。例えば、インクジェット方式には適さない、パール顔料や、金属粉等を色材成分とする画像を、熱溶融転写方式により形成し、フルカラー画像等をインクジェット方式により形成し、これを組合せることで、高い意匠性を有する印画物とすることができる。また、意匠性の向上にかえて、例えば、インクジェット方式により、インクジェット印刷層3Aとしての可変情報画像を形成し、一方で、熱溶融転写方式により、熱溶融印刷層3Bとしてのセキュリティー画像を形成することで、印画物の機能性を高めることもできる。また、一実施形態の印画物においては、インクジェット印刷層3Aと熱溶融印刷層3Bとの密着性を高くすることができる。
【0048】
一実施形態の印画物10は、上記で説明した一実施形態の形成方法により形成された印画物に対応しており、ここでの詳細な説明は省略する。例えば、好ましい形態の印画物は、インクジェット印刷層3A、及び熱溶融印刷層3Bの双方が、ともに疎水性樹脂としてニトロセルロース樹脂、及び塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂の何れか一方又は双方を含有している。
【0049】
また、一例としての印画物10は、
図5、
図6に示すように、熱溶融印刷層3Bが、基材1の同一面上に所定の間隔を配して設けられているか、又はその表面に凹部を有しており、前者の場合には、インクジェット印刷層3Aは、隣り合う前記熱溶融印刷層3Bの間に設けられており、後者の場合には、凹部内に設けられている。この形態の印画物によれば、従来では困難とされていたインクジェット印刷層3Aを厚膜化させることができる。凹部を形作る熱溶融印刷層3Bの厚みについて特に限定はなく、任意の厚みに設定することができる。また、熱溶融印刷層3Bを重ね印刷することで、
図7(a)〜(c)に示すように、熱溶融印刷層3Bの厚みを、熱転写シートの熱溶融インキ層22(
図8参照)の厚みよりも厚くすることもできる。
【0050】
図7は、熱溶融印刷層を重ね印刷して、熱溶融印刷層3Bの厚みを厚膜化させた状態を示す印画物の一例を示す概略断面図であり、
図7(a)では、熱溶融印刷層3B'の幅方向の端面と、当該熱溶融印刷層3B'上に重ね印画される熱溶融印刷層3B''、熱溶融印刷層3B'''の幅方向の端面との面位置が一致するように熱溶融印刷層3B'上に熱溶融印刷層3B''、熱溶融印刷層3B'''がこの順で重ね印画されている。また、
図7(b)では、熱溶融印刷層3B'の幅方向の端面よりも、熱溶融印刷層3B''の幅方向の端面が内周側に位置するように熱溶融印刷層3B'上に熱溶融印刷層3B''が重ね印画され、また、熱溶融印刷層3B''の幅方向の端面よりも、熱溶融印刷層3B'''の幅方向の端面が内周側に位置するように熱溶融印刷層3B''上に熱溶融印刷層3B'''が重ね印画されている。また、
図7(c)では、熱溶融印刷層3B'の幅方向端面、及び上面を覆うようにして、熱溶融印刷層3B''が重ね印画され、また、熱溶融印刷層3B''の幅方向端面、及び上面を覆うようにして、熱溶融印刷層3B'''が重ね印画されている。
【0051】
上記のように、インクジェット印刷層3Aを厚膜化させることで、インクジェット印刷層3Aの耐候性や濃度を向上させることができる。また、蛍光インキ等を用いてインクジェット印刷層3Aを形成する場合においても、インクジェット印刷層3Aを厚膜化させることで、その効果を十分に発揮させることができる。また、高アスペクト比を達成することができる。
【0052】
以下、本発明の印画物の優位性について検証を行うべく、以下の方法により、印画物の形成を行った。
【0053】
(実施例1A)
疎水性樹脂(ニトロセルロース樹脂)、顔料、及び溶剤を含有するインクジェット用インキ(1)を用い、インクジェット方式により、基材上にインクジェット印刷層を形成した。次いで、熱転写シート用基材上に、疎水性樹脂(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂)、及びカーボンブラックを含有する熱溶融性インキ層が設けられた熱転写シート(1)を用い、熱溶融転写方式により、インクジェット印刷層上に、熱溶融印刷層を形成し、基材、インクジェット印刷層、熱溶融印刷層がこの順で積層されてなる実施例1Aの印画物を得た。
【0054】
(実施例1B)
上記熱転写シート(1)を用い、熱溶融転写方式により、基材上に熱溶融印刷層を形成し、この熱溶融印刷層上に、上記インクジェット用インキ(1)を用い、インクジェット方式により、インクジェット印刷層を形成し、基材、熱溶融印刷層、インクジェット印刷層がこの順で積層されてなる実施例1Bの印画物を得た。
【0055】
(比較例1A)
インクジェット用インキ(1)にかえて、親水性樹脂を含有するインクジェット用インキ(2)(セイコーエプソン(株)製ICBKシリーズ)を用いてインクジェット印刷層を形成した以外は全て実施例1Aと同様にして、基材、インクジェット印刷層、熱溶融印刷層がこの順で積層されてなる比較例1Aの印画物を得た。
【0056】
(比較例1B)
インクジェット用インキ(1)にかえて、親水性樹脂を含有するインクジェット用インキ(2)(セイコーエプソン(株)製ICBKシリーズ)を用いてインクジェット印刷層を形成した以外は全て実施例1Bと同様にして、基材、熱溶融印刷層、インクジェット印刷層がこの順で積層されてなる比較例1Bの印画物を得た。
【0057】
(比較例2A)
熱転写シート(1)にかえて、熱転写シート用基材上に、親水性樹脂(水性アクリル樹脂)、及びカーボンブラックを含有する熱溶融印刷層が設けられた熱転写シート(2)を用いて、熱溶融印刷層を形成した以外は、全て実施例1Aと同様にして、基材、インクジェット印刷層、熱溶融印刷層がこの順で積層されてなる比較例2Aの印画物を得た。
【0058】
(比較例2B)
熱転写シート(1)にかえて、熱転写シート用基材上に、親水性樹脂(水性アクリル樹脂)、及びカーボンブラックを含有する熱溶融印刷層が設けられた熱転写シート(2)を用いて、熱溶融印刷層を形成した以外は、全て実施例1Bと同様にして、基材、熱溶融印刷層、インクジェット印刷層がこの順で積層されてなる比較例2Bの印画物を得た。
【0059】
形成された各実施例、及び比較例の印画物について評価したところ、以下の評価となった。
実施例1A:インクジェット印刷層上に、熱溶融印刷層を問題なく転写することができ、インクジェット印刷層と熱溶融印刷層との密着性も良好であった。
実施例1B:熱溶融印刷層上に、インクジェット印刷層を問題なく定着させることができた。
比較例1A:インクジェット印刷層上に、熱溶融印刷層を転写することはできたものの、密着性が不十分であり、手で擦ることで熱溶融印刷層が剥がれてしまった。
比較例1B:熱溶融印刷層上に、インクジェット印刷層を定着させることができず、インクジェット印刷層を手で触れたときに、インクジェット印刷層のインクが手に付着した。
比較例2A:インクジェット印刷層上に、熱溶融印刷層を転写することはできたものの、転写性が低く、実施例1Aの印画物と比較して、その濃度は低いものとなった。
比較例2B:熱溶融印刷層上に、インクジェット印刷層を定着させることができたが、実施例1Bの印画物と比較して、密着性が低く、テープにより、インクジェット印刷層が簡単に剥がれた。
【0060】
以上の結果より、インクジェット印刷層と、熱溶融印刷層とが重ね印刷されてなる印画物において、インクジェット印刷層と、熱溶融印刷層が、ともに疎水性樹脂を含有する本発明の優位性は明らかとなった。