(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6585966
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】燻煙防カビ方法
(51)【国際特許分類】
A01N 47/34 20060101AFI20190919BHJP
A01N 51/00 20060101ALI20190919BHJP
A01N 25/20 20060101ALI20190919BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20190919BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20190919BHJP
A61L 9/02 20060101ALN20190919BHJP
【FI】
A01N47/34 G
A01N51/00
A01N25/20 101
A01P3/00
A61L2/20
!A61L9/02
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-165618(P2015-165618)
(22)【出願日】2015年8月25日
(65)【公開番号】特開2016-202868(P2016-202868A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-84740(P2015-84740)
(32)【優先日】2015年4月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕之
(72)【発明者】
【氏名】菅本 和志
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】
高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−008201(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/159816(WO,A1)
【文献】
特開2011−012051(JP,A)
【文献】
特公昭38−016495(JP,B1)
【文献】
国際公開第2012/147421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 47/34
A01N 25/20
A01N 51/00
A01P 3/00
A61L 2/20
A61L 9/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾジカルボンアミド、p,p′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミドから選ばれた1種以上からなる有機系発泡剤を含有し、前記有機系発泡剤以外の防カビ成分、およびプロピレングリコールを含有しない燻煙剤組成物を用いる燻煙防カビ方法であって、
前記有機系発泡剤を加熱反応させたときに発生する煙を防カビ成分としてカビの発生を抑制させる燻煙防カビ方法。
【請求項2】
前記有機発泡剤の施用空間当たりの使用量が200mg/m3以上である請求項1に記載の燻煙防カビ法方法。
【請求項3】
前記燻煙剤組成物に発泡助剤を配合したことを特徴とする請求項1又は2に記載の燻煙防カビ方法。
【請求項4】
前記発泡助剤の配合量が前記燻煙剤組成物の全質量に対し0.1〜60質量%である請求項3に記載の燻煙防カビ方法。
【請求項5】
前記燻煙剤組成物を線香形状になしたる請求項1〜4のいずれか1項に記載の燻煙防カビ方法。
【請求項6】
前記燻煙剤組成物にセルロース系水溶性高分子を配合したことを特徴とする請求項5に記載の燻煙防カビ方法。
【請求項7】
前記セルロース系水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース及び、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項6に記載の燻煙防カビ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カビの発生を抑制する燻煙防カビ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
元来、高温多湿の我が国では、カビの被害が多い。近年更に、密閉性の高い住居が多くなり、その被害は増大している。カビの繁殖は、美観を損ねるのみならず、感染症リスクにもなるため、衛生的に大きな問題となる。特に、湿気の多い浴室ではカビが繁殖しやすく、感染症リスクが高まりやすいので、カビの発生を抑制する必要がある。これまで浴室でのカビへの対処としては、主に、既に発生したカビに対して次亜塩素酸製剤等でカビを取り除く処置がなされてきたが、近年ではカビが発生する前にその発生を予防する処置も行われるようになってきている。後者を達成するものとして、有機系発泡剤と防カビ剤として、銀の無機系薬剤乃至2−メトキシカルボニル−4−クロロトリフルオロメタンスルホンアニリドを含有する燻煙剤組成物を加熱により煙化させ、屋内を燻煙する方法が知られている(特許文献1〜3)。このような燻煙剤物品は、簡便に浴室全体のカビの発生を予防できるため、その需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5647815号公報
【特許文献2】特開2013−249264号公報
【特許文献3】特許第4110618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記燻煙剤物品においては、有機系発泡剤の他に防カビ剤を必須とする。有機系発泡剤に防カビ剤を配合する際には、防カビ剤の物性などに注意するとともに、配合による安定性の相性を確認する必要があり、このような配合の検討を必要とすることなく、より簡便に防カビが可能となる方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を達成するにあたり、その使用場所において、通常使用される有機系発泡剤を用い、有機系発泡剤を燻煙させることでその使用場所において優れたカビ発生抑制効果が得られることを見出した。先に示した特許文献1〜3では、銀や2−メトキシカルボニル−4−クロロトリフルオロメタンスルホンアニリド等の防カビ成分を揮散させることを目的として有機系発泡剤であるアゾジカルボンアミド(以下、ADCAとする)が用いることが示されている。しかしながら、これらの特許文献ではADCAは、防カビ成分を揮散させるために使用されているもので、ADCAのカビ発生抑制効果については一切開示されていない。
我々は、鋭意、防カビ効果を有する燻煙製剤の開発を行なっていたところ、驚くべきことに、燻煙基剤となるこれらの有機系発泡剤そのものを燻煙した際に、その使用場所において防カビ効果が得られることを見出した。更に、前記のADCA以外の一般に広く使用されている発泡基剤であるADCA以外の発泡基剤にも、防カビ効果のあることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0006】
即ち、本発明者らは、防カビ燻煙剤として、以下の構成が優れた効果を奏することを見出した。
(1)
アゾジカルボンアミド、p,p′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラゾジカルボンアミドから選ばれた1種以上からなる有機系発泡剤を含有し、前記有機系発泡剤以外の防カビ成分、およびプロピレングリコールを含有しない燻煙剤組成物を
用いる燻煙防カビ方法であって、前記有機系発泡剤を加熱反応させ、発生する煙
を防カビ成分としてカビの発生を抑制させることとした燻煙防カビ方法。
(2)前記有機系発泡剤の施用空間当たりの使用量が200mg/m
3以上である(1)に記載の燻煙防カビ方法。
(3)
前記燻煙剤組成物に、さらに発泡助剤を含有する(1)又は(2)に記載の燻煙防カビ方法。
(4)
前記発泡助剤の配合量が前記燻煙剤組成物の全質量に対し0.1〜60質量%である(3)に記載の燻煙防カビ方法。
(5)
前記燻煙剤組成物を線香形状になしたる(1)〜(4)のいずれか1に記載の燻煙防カビ方法。
(6)前記燻煙剤組成物
にセルロース系水溶性高分子を配合した(5)に記載の燻煙防カビ方法。
(7)
前記セルロース系水溶性高分子が、カルボキシメチルセルロース及び、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種以上である(6)に記載の燻煙防カビ方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明防カビ燻煙方法では有機系発泡剤のみでカビの発生抑制効果を有し、防カビ成分の配合を必要としない。そのため、防カビ成分との配合における安定性等の確認の必要がない。また、防カビ成分を使用した場合には、有機系発泡剤とともに防カビ成分を揮散させることとなるため、これらを吸入するリスクがあった。本発明防カビ燻煙方法ではこのような吸入リスクを低減させることができため、副作用のリスクを低減できる。また燻煙剤を生産する際には、防カビ剤を混合する製造過程が不要となるため、製造が簡便になり、廉価に生産できる。
また、本燻煙防カビ方法に用いる燻煙剤組成物を線香形態とすることで、燻煙時間を調節することが出来る。また、燻煙時における煙が拡がった後の場所での着色度合をより少なくすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】試験を行った体積100Lのグローブボックスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の燻煙防カビ方法に用いられる燻煙剤組成物では少なくとも有機系発泡剤を用いることを必須とする。有機系発泡剤としては、炭酸ガスや窒素ガス等を発生するものであればいずれのものでも使用できる。例えば、ADCA、OBSH、HDCA、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でも、反応生成物の安全性が高いADCA、OBSH、HDCAが好ましい。また使用のしやすさの点で発熱分解型であるADCAとOBSHがより好ましく、反応時の匂いがほとんどないADCAが最も好ましい。
【0010】
本発明の燻煙防カビ方法に用いられる燻煙剤組成物で使用される有機系発泡剤は、特定の空間を使用するのに用いられる。
特定の空間としては、部屋や玄関などで使用することも想定されるが、湿度が高くカビが発生し易い空間として、風呂場やトイレなどの場所が挙げられる。通常このような空間は、その体積が、3〜15m
3程度と想定される。そのような場所に対し、燻煙防カビ方法で用いられる燻煙剤組成物中の有機系発泡剤成分としては、その空間当たり、100mg/m
3以上であることが好ましく、更に200 mg/m
3以上であることがより好ましい。なお、その使用量が示したよりも少ない場合には、防カビ効果が十分得られない可能性がある。また、使用量において特に上限はないが、多く使用した場合には、使用場所からの漏れ出し等も懸念されることから、10000mg/m
3以下が上限として示される。
【0011】
本発明の燻煙防カビ方法に用いられる燻煙剤組成物では有機系発泡剤以外に、発泡助剤を含有してもよい。
【0012】
本発明でいう発泡助剤とは、有機系発泡剤の成分の発泡時の発熱温度を下げたりする作用のあるものを指す。具体的な発泡助剤として、従来から公知であるものをいずれも用いることが出来る。例示すると、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、尿素、メラミン、グアニジン、脂肪酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。配合量は、燻煙剤組成物の全体量に対して、0.1〜60質量%が挙げられ、更に好ましくは1〜30質量%の範囲で選択される。また、発泡助剤は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用することも可能である。上記範囲内であれば、発泡剤の反応が速やかに進行し、効率的な燻煙が可能となる。
【0013】
本発明の燻煙防カビ方法に用いられる燻煙剤組成物に配合される有機系発泡剤の他に、適宜、本発明に効果を及ぼさない程度に防カビ成分を配合することも可能である。本発明に効果を及ぼさない程度とは、例えば、燻煙剤組成物自身の保管時における防腐効果を付与するような程度であって、燻煙剤組成物の燻煙の際における防カビ効果が、防カビ成分を加えた燻煙組成物と比較しても、有意に増進しないような場合を示す。
配合した防カビ成分がどの程度の効力を発揮しているかについては、防カビ成分を入れた燻煙組成物と、そこから防カビ成分を除いた燻煙組成物とを用いた試験を行うことで防カビ効力の比較試験を実施し、その効果を対比することで、確認することが可能である。また、その他に防カビ効力の増強成分、抗菌剤、殺菌剤、ウイルス不活化剤等を配合しても良く、また殺虫剤・共力剤や殺ダニ剤、防虫剤、虫よけ剤、防汚剤、洗浄剤、撥水剤、親水化剤、香料、安定剤、賦形剤等を配合してもよい。
さらに、殺虫剤としては、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、レスメトリン等のピレスロイド系殺虫剤、メトキサジアゾン等のカーバメート系殺虫剤、フェニトロチオン等の有機リン系殺虫剤、あるいはシラフルオフェン、ハイドロプレン、エトフェンプロックス等の化合物を例示できるが、これらに限定されるものではない。
また線香の形状とした場合には、通常の線香に用いる支燃剤である木粉、除虫菊抽出粕粉、柑橘類表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、木炭粉、素灰、タルク等が挙げられる。これらの支燃剤は、単独又は二種以上の混合物として使用することができる。
好適な粘結剤を例示すると、タブ粉、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの支燃剤や粘結剤は本燻煙剤組成物の燃焼性に影響を与えることがない場合にはいずれも用いることが出来得る。線香形態とした場合には、セルロース系水溶性高分子を含有することが好ましく、更には、セルロース系水溶性高分子の中でもカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
【0014】
燻煙剤組成物の剤型や用量は使用目的や使用場所に応じて適宜選定することができ、例えば剤型は顆粒状、粒状、粉末状等が挙げられる。これらは公知の製造方法を用いて調製することができる。
また、燻煙剤組成物を燻煙させる方式としては、一定の熱源を燻煙剤組成物に与えて発泡させて蒸散させる方法(直接加熱方式)と容器内に入れた燻煙剤組成物に周囲から酸化カルシウム等で熱を与えてその熱で加熱させる加熱方式(間接加熱方式)のいずれも用いることが出来る。これらの方式のうち、直接加熱方式は装置なども簡便で、使用に際して手間が掛からないため便利である。
また、燻煙剤組成物の形状として、蚊取線香に代表される線香のように一定時間燻煙する形態とすれば、より使用し易く有用である。線香の形態は、通常の渦巻きのような形態であってもよいが、棒状や板状、円柱状など一定の燃焼をするように断面積を一定にしたものや、アロマ線香のように円錐の形状であってもよく、特に限定されるものではない。
【0015】
燻煙は使用目的や使用場所に応じて適宜選定できる。使用場所としては、カビが発生しやすい浴室やトイレや、通常の居室で使用したり、倉庫などの場所でも使用できる。
これらの場所に対する燻煙剤組成物としての使用量は、燻煙する空間の大きさに合せて適宜使用量を変更して使用すればよい。
【0016】
つぎに具体的実施例ならびに試験例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
以下に、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(使用原料)
有機系発泡剤
A−1:ADCA(商品名:ビニホールAC#R−3K.永和化成工業株式会社製)
A−2:OBSH(商品名:ネオセルボンN#1000S.永和化成工業株式会社製)
A−3:HDCA(商品名:セルマイク142.三協化成株式会社製)
発泡助剤
B−1:酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製)
B−2:オレイン酸ソルビタン(商品名:ブラウノンP−80.青木油脂工業株式会社製)
その他成分
C−1:ケーキング防止剤:含水二酸化ケイ素(商品名:カープレックス,GSL.ジャパン株式会社製)
D−1:香料
E−1:タブ粉
E−2:α-デンプン
E−3:カルボキシメチルセルロース
【0018】
(評価方法)
<<カビの発生抑制効果>>
図1に示すような、体積約100 Lのグローブボックス内で試験を行った。滅菌シャーレ(Ф5.5 cm)に5 mLのポテトデキオロース寒天培地を分注して固化させたのち、Cladosporium cladosporioidesのカビ分散液を20 μL塗布し、よくコンラージ棒で延ばしたものをグローブボックス上部に設置した。この時、シャーレのふたは開け、シャーレの底が天井と接するように設置した。また、グローブボックスの床中央部に、ホットプレートを設置した。ホットプレート上にアルミニウム箔を敷き、その上に試験薬剤を載せ、グローブボックスのフタを閉めた。その状態でホットプレートの電源を入れ試験薬剤を加熱した。薬剤の反応後、すぐにホットプレートの電源を切り、20分間静置した。その後グローブボックスのフタを開け、5分間換気し、シャーレを回収し、シャーレのフタを閉めた。シャーレは25℃で7日間静置し、カビの生育を観察した。試験薬剤を加熱しないものを同様に操作して、25℃で7日間培養したカビの発生量をネガティブコントロールとした。
<<薬剤効果の評価基準>>
◎:カビが全く発生しない。
○:カビ発生量がネガティブコントロールの2割未満。
△:カビ発生量がネガティブコントロールの2割以上9割未満。
×:カビ発生量がネガティブコントロールと同等。
【0019】
(実施例1〜15)
表1に示す組成に従い、各成分を乳鉢で混合し、実施例2〜9の燻煙薬剤とした。実施例1および10〜13に関しては記載した有機系発泡剤をそのまま燻煙薬剤とした。それぞれ合計質量分を量り取って試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
結果に示す通り、実施例1〜15においてカビ発生量はいずれもネガティブコントロールの2割未満であった。
【0022】
(比較例1)
比較例1に関しては無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウム(和光純薬製)をそのまま燻煙薬剤とし、記載した質量分を量り取って使用した。結果を表2に示す。
結果は、比較例1において、カビ発生量はネガティブコントロールと同等だった。
【0023】
【表2】
【0024】
<<準実地試験におけるカビの発生抑制効果>>
試験は
図2に示すような、体積約3.6 m
3のユニットバスで試験を行った。滅菌シャーレ(Ф5.5 cm)に5 mLのポテトデキオロース寒天培地を分注して固化させたのち、Cladosporium cladosporioidesのカビ分散液を20 μL塗布し、よくコンラージ棒で延ばしたものをユニットバスの天井中央部に設置した。この時、シャーレのふたは開け、シャーレの底が天井と接するように設置した。
本発明の燻煙剤組成物として、実施例14に記載の通り、ADCA95%、酸化亜鉛3%及びカ−プレックス2%を乳鉢で混合して得られたもの5.0gを取り、ポリエチレンラミネートフィルム中に封入したものを試験薬剤とした。
この試験薬剤をユニットバス床中央部に設置し、着火具にて試験薬剤の燻煙を開始させた。燻煙開始後、すぐにユニットバスの外に出て、扉を閉めきり、60分間この状態を維持した。その後ユニットバスの換気扇を作動させ、20分間換気し、ユニットバス内に設置したシャーレを回収しフタを閉じた。シャーレは25℃で7日間静置し、カビの生育を観察した。燻煙をせずに25℃で7日間培養した場合のカビの発生量をネガティブコントロールとした。
【0025】
(実施例14〜16)
実施例14と同様に、表3に示す組成に従い、各成分を混合し、実施例15及び16の燻煙薬剤を作製し、試験を行った。結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
結果に示す通り、実施例14〜16においてカビは全く発生しなかった。
【0028】
<<準実地試験におけるカビの発生抑制効果>>
試験は
図2に示すような、体積約3.6m
3のユニットバスで試験を行った。滅菌シャーレ(Ф5.5cm)に5mLのポテトデキオロース寒天培地を分注して固化させたのち、Cladosporium cladosporioidesのカビ分散液を20μL塗布し、よくコンラージ棒で延ばしたものをユニットバスの天井中央部に設置した。この時、シャーレのふたは開け、シャーレの底が天井と接するように設置した。
本発明の線香形状の燻煙剤組成物として、実施例17に記載の通り、ADCA84%、酸化亜鉛12%及びカルボキシメチルセルロース4%を乳鉢で混合して得られたものに対して、水を加えて練り、直径1cm程度の棒状にした。これを150℃下で2時間乾燥し、10 g分切り出したものを試験薬剤とした。
この試験薬剤をライターで着火し、ユニットバス床中央部に設置し、燻煙を開始させた。燻煙開始後、すぐにユニットバスの外に出て、扉を閉めきり、60分間この状態を維持した。その後ユニットバスの換気扇を作動させ、20分間換気し、ユニットバス内に設置したシャーレを回収しフタを閉じた。シャーレは25℃で7日間静置し、カビの生育を観察した。燻煙をせずに25℃で7日間培養した場合のカビの発生量をネガティブコントロールとした。
【0029】
(実施例17〜18)
実施例17と同様に、表4に示す組成に従い、各成分を混合し、実施例18の燻煙薬剤を作製し、試験を行った。結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
実施例17及び18のいずれも高い効果を示した。特にカルボシキメチルセルロースを含む実施例17はより高い効果であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明防カビ燻煙剤は浴室での利用に限らず、カビ等の発生しやすい場所、感染症が起きやすい場所でも有効に利用できる可能性がある。