(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内燃機関の排気中の粒子状物質を前記内燃機関の排気通路の途中で捕集するパティキュレートフィルタと、前記排気通路のうち前記パティキュレートフィルタの下流側に配置されるとともにヒータ加熱によって検出特性が調整される排気ガスセンサと、を備えた排気浄化システムに装備され、前記排気ガスセンサの被水による故障を防止する排気ガスセンサの故障防止装置であって、
前記排気通路を通る前記排気の温度を検出する排気温度検出手段と、
前記排気通路を通る前記排気の流量を検出する排気流量検出手段と、
前記排気の温度が前記内燃機関の始動後予め設定した閾値温度を超えたことを条件に、前記排気の流量の積算を開始する積算手段と、
前記積算手段による前記積算の積算値が予め設定した判定閾値を超えるまで、前記ヒータ加熱による前記排気ガスセンサの検出特性の調整を禁止する一方、前記積算の積算値が前記判定閾値を超えたとき、前記ヒータ加熱による前記排気ガスセンサの検出特性の調整を許可するヒータ加熱制御手段と、
外気温度に応じて前記閾値温度を可変設定する閾値温度設定手段と、を有し、
前記閾値温度設定手段は、前記外気温度が低いときの前記閾値温度に対して前記外気温度が高いときの前記閾値温度を低い温度に設定するとともに、前記外気温度が第1外気温度未満となる第1の温度範囲内での前記外気温度の変化に対する前記閾値温度の変化率を、前記外気温度が第1外気温度以上かつ第2外気温度未満となる第2の温度範囲内での前記外気温度の変化に対する前記閾値温度の変化率より小さく設定することを特徴とする排気ガスセンサの故障防止装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1ないし
図5は、本発明の一実施の形態に係る排気ガスセンサの故障防止装置を示しており、
図1にその装置を備えた内燃機関の排気浄化システムの概略構成を示している。
【0020】
まず、その排気浄化システムの概略構成について説明する。
【0021】
図1に示す本実施形態の内燃機関の排気浄化システムは、エンジン10から排気マニホールドおよび排気管11を通して排出される排気すなわち排出ガスを、排気管11の途中に配置された排気浄化装置12によって浄化するものである。
【0022】
エンジン10は、車両を走行駆動する内燃機関、例えば多気筒のディーゼルエンジンである。このエンジン10は、バイオ燃料等の他の燃料を併用するものであってもよいし、電動発電機と協働して車両を走行駆動するハイブリッド駆動式のパワーユニットを構成するものであってもよい。
【0023】
排気管11は、その上流端側で排気ターボ過給機13の排気タービン部13tの出口に接続されており、排気タービン部13tに接続する排気マニホールドを介してエンジン10に接続されている。そして、排気管11内に形成される排気通路11aが、エンジン10の複数の排気ポートに連通している。
【0024】
この排気管11の上流端側には、排気タービン部13tの出口の下流側に位置する排気ブレーキ14と、排気ブレーキ14より下流側に位置する第1の酸化触媒15と、が設けられている。排気ブレーキ14は、排気通路11a中を通る排気の流量を絞ることで排気温度を変化させることができ、第1の酸化触媒15は、排気タービン部13tの出口付近で排気中の未燃の燃料を酸化反応させ、その反応熱により排気を加熱することができる。
【0025】
排気浄化装置12は、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元)方式とDPF(Diesel Particulate Filter:ディーゼル微粒子捕集)方式と組み合わせた一体型の触媒装置であり、この排気浄化装置12は、第1の酸化触媒15より下流側の排気管11の途中に装着されている。排気浄化装置12よりさらに下流側の排気管11には、図外の排気消音装置が装着されている。
【0026】
また、第1の酸化触媒15と排気浄化装置12間の排気管11には、燃料添加弁16が装着されている。この燃料添加弁16は、エンジン10により駆動される燃料ポンプ17に対し、添加燃料配管L1を介して配管接続されている。そして、燃料添加弁16は、エンジン10の運転中に燃料ポンプ17により加圧されて吐出される燃料を、添加燃料配管L1上のカットオフバルブ18の開閉状態に応じて排気浄化装置12の上流側の排気中に噴射するようになっている。燃料ポンプ17から添加燃料の供給圧力は、添加燃料圧力センサ19により検出される。
【0027】
排気浄化装置12は、排気管11に接続されつつ第1の酸化触媒15より下流側の排気通路11aの一部を形成するケース21と、ケース21内に収納された第2の酸化触媒22、DPF23、SCR触媒24およびアンモニア低減触媒25と、を有している。
【0028】
ケース21は、また、第1の酸化触媒15より下流側の排気通路11aの一部を、略S字形の2回の折返し形状をなすように形成しており、下流側の排気通路11aの折返し前の上流側ケース部分21a内に、第2の酸化触媒22およびDPF23が収納されている。
【0029】
第2の酸化触媒22は、ケース21内に流入する排気中の未燃の燃料を酸化反応させ、その反応熱により排気をその排気中に浮遊する粒子状物質であるPMの自燃温度以上に加熱することができる。
【0030】
DPF23は、格子状に区画された多数のセルが交互に目封じされることで高PM捕集率を有するウォールフロータイプのパティキュレートフィルタである。このDPF23は、コージェライト(Cordierite)等のセラミックからなる多孔質のハニカム構造体で、排気通路11aの方向に延びつつ互いに並列するセル内の流路がDPF23の上流端側で交互に目封じされ、DPF23の上流端側が目封じされていない流路についてはDPF23の下流端側が目封じされている。そして、DPF23の複数の流路のうちDPF23の上流端側で開口する上流側の流路とDPF23の下流端側で目封じされた下流側の流路とを区画する多孔質のセル壁を透過した排気のみが、上流側の流路から隣接する下流側の流路に流れ、そのときDPF23の多孔質のセル壁にPMが捕集されるようになっている。
【0031】
下流側の排気通路11aの一部が2回の折返しをなすケース21内のうち、その2回の折返しをなした後の下流側ケース部分21b内には、SCR触媒24およびアンモニア低減触媒25が収納されている。
【0032】
さらに、上流側ケース部分21aと下流側ケース部分21bとの間には、DEFインジェクタ26が装着されたミキシングパイプ21cが介装されており、DPF23を通過し集合した排気中にDEFインジェクタ26から尿素水であるディーゼル排気液DEF(Diesel exhaust fluid)が噴射されるようになっている。
【0033】
このディーゼル排気液DEFは、DEF供給ポンプ27によってDEFタンク28から汲み上げられて加圧され、配管L2を介してDEFインジェクタ26に供給されるようになっている。DEFタンク28には、内部に貯留されたディーゼル排気液DEFの温度、液面レベルおよび化学的特性に係る品質をチェックするためのDEFセンサ29が設けられている。
【0034】
ミキシングパイプ21c内で排気に混合されるディーゼル排気液DEFは、高温の排気中でアンモニアと炭酸ガスに分解され、下流側ケース部分21bに入る際に排気通路11aが拡張および折返しされることで排気中に分散されるようになっている。
【0035】
SCR触媒24は、酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る性質を備えた選択還元型触媒であり、アンモニア(NH
3)と炭酸ガス(CO
2)が分散された排気がSCR触媒24内に流入すると、排気中のNOx(窒素酸化物)がアンモニアにより還元されて窒素(N
2)になるとともに水(H
2O)が生成され、排気が浄化されるようになっている。
【0036】
アンモニア低減触媒25は、余剰のアンモニアを酸化処理して窒素と水にして無害化させることができ、大気中へ排出される排気中にアンモニアが残留することを有効に防止できるものである。
【0037】
排気浄化装置12の上流側の排気中への燃料添加とそれによるDPF23の再生は、エンジン制御用の電子制御ユニットであるエンジンECU31によって、センサ情報を基に燃料ポンプ17およびカットオフバルブ18を制御することにより制御される。また、排気浄化装置12内へのディーゼル排気液DEFの供給制御は、脱NOx制御用の電子制御ユニットであるDeNOxECU41によって、センサ情報を基にDEFインジェクタ26の開閉およびDEF供給ポンプ27の作動を制御することにより制御されるようになっている。
【0038】
エンジンECU31は、
図3に典型例で例示するように、CPU、RAM、ROMおよび入出力インターフェース回路を含むコンピュータ構成のものであり、ROMに格納された制御プログラムに従って、入力インターフェース回路から各種センサ情報や通信情報を取り込み、設定情報や図示しないマップ等を参照しつつ、出力インターフェース回路からエンジン10の運転制御や排気浄化の制御に必要な指令信号を出力するようになっている。DeNOxECU41も、略同様なコンピュータ構成のもので、エンジンECU31と協働し、排気中の窒素酸化物を除去するための脱NOx制御を実行するようになっている。
【0039】
前述の各種センサ情報を得るために、エンジンECU31には、添加燃料圧力センサ19と、排気浄化装置12の上流側ケース部分21aに配置された複数の排気温度センサ32、33、34と、DPF23の前後差圧を検出する差圧センサ35と、第1の酸化触媒15の上流側の排気温度を検出する排気温度センサ46とが接続されている。また、エンジンECU31は、CAN(Controller Area Network)通信等により、DeNOxECU41と通信可能になっており、燃料添加によるDPF23の再生制御等に必要な他のセンサ情報に加え、後述するフィルタ故障判定およびセンサ故障判定等に必要な他のセンサ情報を取得可能となっている。
【0040】
DeNOxECU41には、車両の周囲の外気温度、例えば排気浄化装置12の近傍の外気温度を検出する外気温度センサ42と、ミキシングパイプ21cの下流側に配置された排気温度センサ36とが接続されている。また、DeNOxECU41は、CAN通信等により、DEFセンサ29と、DPF23通過後の排気中のNOxガス濃度を検出する第1NOxセンサ37と、アンモニア低減触媒25通過後の排気中のNOxガス濃度を検出する第2NOxセンサ38と、排気浄化装置12の出口付近でアンモニア低減触媒25通過後の排気中のPMを検出するPMセンサ45(排気ガスセンサ)とから、それぞれの検出値を取り込み可能になっている。
【0041】
また、DEFインジェクタ26およびDEFタンク28には、エンジン10の冷却水が循環供給され、DEFインジェクタ26の適度の冷却とDEFタンク28内のディーゼル排気液DEFの適度の加熱がなされるようになっている。そして、その冷却液の循環量は、DeNOxECU41によりDEFヒータバルブ43の開度を変化させることで、制御されるようになっている。
【0042】
図2に示すように、PMセンサ45は、絶縁基板51の表面に例えばそれぞれ櫛歯状の一対の検出電極52、53を同図中の上下に交互に隣り合うように配置して検出部54を構成したものであり、一対の検出電極52、53は、両検出電極52、53の間に所定電圧を印加しつつ両検出電極52、53の間の電気抵抗を計測する抵抗計測部61に配線接続されている。
【0043】
絶縁基板51は、絶縁部材56を介して雄ねじ付きのハウジング57に支持されており、ハウジング57は、ケース21の一部にねじ締結により固定されている。また、ハウジング57には、絶縁基板51上の検出部54を取り囲むカバー58が装着されており、カバー58には排気を通す複数の通気穴58aが形成されている。
【0044】
また、
図3に示すように、絶縁基板51中には、検出部54に捕捉されたPMをその自燃温度以上に加熱することができるヒータ59が設けられており、ヒータ59はヒータ加熱制御部62に配線接続されている。このヒータ59は、検出部54に捕捉され所定量堆積したPMを燃焼させ、検出部54上に堆積したPMを除去するようになっている。
【0045】
抵抗計測部61は、エンジンECU31およびDeNOxECU41のうちいずれか一方、例えばエンジンECU31の入力インターフェース部に接続されており、PMセンサ45の一対の検出電極52、53の間の電気抵抗値の対応する検出情報が、エンジンECU31に抵抗計測値として取り込まれるようになっている。
【0046】
また、ヒータ加熱制御部62は、例えばエンジンECU31の出力インターフェース部に接続されており、エンジンECU31からのヒータ加熱指令に応じてヒータ59に通電し、検出部54上に堆積したPMを燃焼させるようになっている。
【0047】
さらに、エンジンECU31は、ヒータ59を作動させるたびにリセットされ、その後のPMセンサ45によるPM検出期間を計測する計測期間タイマを起動させるようになっており、一対の検出電極52、53の間の抵抗計測値が所定値を下回り、PMセンサ45の検出部54上に所定量、例えば満杯量(100%)のPMが堆積したと判定されたとき、計測期間タイマのカウント値を予め設定された故障判定閾値と比較することで、DPF23の故障判定を行うようになっている。
【0048】
すなわち、DPF23の複数の流路の目封じ部に亀裂や溶損等による欠損が比較的広範に生じ、DPF23のPM捕集率が所要値に達しなくなる程に低下した場合、計測期間タイマのカウント値が故障判定閾値に達しない短時間のうちに検出部54上に満杯量のPMが堆積する。一方、DPF23の複数の流路の目封じ部にさほど欠損が生じておらず、DPF23の正常な状態が保持されている場合、計測期間タイマのカウント値が故障判定閾値を大きく超えないと、検出部54上に満杯量のPMが堆積することはない。
【0049】
そこで、エンジンECU31は、計測期間タイマのカウント値が故障判定閾値に達しないうちに検出部54上に満杯量のPMが堆積するか否かによって、DPF23が複数の流路の目封じ部に欠損が比較的広域に生じた故障状態にあるか正常であるかを判定するようになっている。
【0050】
本実施形態においては、このように、DPF23とその下流側に配置されるとともにヒータ加熱によって検出特性が調整されるPMセンサ45とを備えた排気浄化システムが構成されている。
【0051】
そして、本実施形態においては、エンジン10の排気通路11aのうちDPF23より下流側に配置されるPMセンサ45の被水時期とヒータ加熱により高温になる期間とが重なることで、PMセンサ45の被水割れ等の故障が生じることを未然に防止する排気ガスセンサの故障防止装置が、以下のように構成されている。
【0052】
排気ターボ過給機13のコンプレッサ部13cより上流側の吸気管71には、エンジン10に吸入される空気の流量を検出するエアフローメータ72が装着されている。
【0053】
エンジンECU31は、このエアフローメータ72により検出されるエンジン10の吸入空気流量と、エンジンECU31により生成されてエンジン10の内部での燃料噴射量を規定する指示燃料噴射量に燃料密度を掛けた値とに基づいて、排気通路11aを通る排気の質量流量を算出するようになっており、エアフローメータ72と共に排気流量検出手段を構成している。
【0054】
排気温度センサ32、33、34、36、46のいずれか、例えばDPF23より下流側の排気温度センサ36は、排気通路11aを通る排気の温度を検出する排気温度検出手段となっている。
【0055】
エンジンECU31は、また、DPF23より下流側の排気通路11aを通る排気の温度がエンジン10の始動後予め設定した閾値温度Tvを超えたことを条件に、排気流量検出手段としての機能によりエアフローメータ72の検出流量を基に算出した排気の流量の積算を開始するようになっており、本発明にいう積算手段を構成している。
【0056】
ここにいう閾値温度Tvは、エンジン10の始動時等に、PMセンサ45が配置されるDPF23より下流側の排気通路11a内に凝縮水が溜まっていたとしても、排気の温度上昇により、その凝縮水が蒸発する状態となる温度である。
【0057】
また、閾値温度Tvは、エンジン10の一定時間以上の燃料カットや惰性運転状態等によって排気温度が大きく低下する場合の排気温度より高い温度として予め設定された処理開始条件の排気温度を超え、かつ、その処理開始条件の排気温度に対して凝縮水の蒸発に要する一定時間(例えば10分程度)内の通常の運転状態における排気温度変化では、処理開始条件の排気温度を下回らない程度に温度変動幅分の温度の余裕をもって設定されている。
【0058】
具体的には、閾値温度Tvは、既知の凝縮水量に対し、一定時間内に一定排気温度の排気を所定排気流量だけ流した場合に、その凝縮水が蒸発し切るのに足りる熱量供給が可能な排気温度として、予めの実験により外気温度に応じて設定されている。
【0059】
より具体的には、PMセンサ45の設置位置近傍である排気浄化装置12の出口近傍部またはその近傍に位置する排気管11に、外部から凝縮水の発生および蒸発を外部からカメラにより監視可能な透明窓部を設けておき、外気温度センサ42で検出される車両の周囲の環境温度を変化させながら、その予めの実験を行う。
【0060】
また、長時間(例えば一晩)停止した後にPMセンサ45の設置位置近傍に溜まり得る凝縮水量を別の実験により求めておき、その最大に近い凝縮水量を既知の凝縮水量として、一定時間内に一定排気温度の排気を所定排気流量だけ流した場合に、その凝縮水が蒸発し切るのに足りる排気温度として、外気温度センサ42で検出される各外気温度に対して閾値温度Tvを設定している。
【0061】
この閾値温度Tvは、
図4に示すように、外気温度が高い場合と低い場合とでは相違する値となり、エンジンECU31のROMもしくは不揮発性のメモリ内に閾値温度設定マップとして、記憶格納されている。
【0062】
この
図4中に二点鎖線Tiで示す温度は、前述の処理開始条件の排気温度である。
【0063】
このような閾値温度設定マップを有することで、エンジンECU31は、外気温度に応じて閾値温度Tvを可変設定する閾値温度設定手段としても機能するようになっている。
【0064】
より具体的には、閾値温度設定手段としてのエンジンECU31は、
図4に示すように、外気温度が低いときの閾値温度Tvaに対して、外気温度が高いときの閾値温度Tvbを低い温度に設定するようになっている。
【0065】
また、エンジンECU31は、外気温度が第1外気温度T1未満となる第1の温度範囲Z1内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvaの変化率を、外気温度が第1外気温度T1以上かつ第2外気温度T2未満となる第2の温度範囲Z2内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvcの変化率より小さく設定するようになっている。
【0066】
ここにいう外気温度は、外気温度センサ42で検出される車両の周囲の外気温度、例えば車両走行時に排気浄化装置12の近傍を通過し得る外気の温度であり、第1外気温度T1は、例えば摂氏零度前後の数度程度の温度範囲内の温度である。また、第2の温度範囲Z2は、外気温度の変化により凝縮水の発生量が大きく変化し易い温度域で、エンジン10の使用燃料や排気管11の構造によって変化し得る。
【0067】
エンジンECU31は、さらに、外気温度が第2外気温度T2以上となる第3の温度範囲Z3内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvbの変化率を、第2の温度範囲Z2内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvcの変化率よりも小さく設定するようになっている。
【0068】
前述の通り、エンジンECU31の出力インターフェース部に接続されたヒータ加熱制御部62は、エンジンECU31からのヒータ加熱指令に応じてヒータ59に通電し、検出部54上に堆積したPMを燃焼させてPMセンサ45の検出特性を調整する。
【0069】
このヒータ加熱制御部62に対して、エンジンECU31は、エンジン10の始動後、積算手段の機能により実行した排気流量積算の積算値が予め設定した蒸発完了判定可能な閾値Qthを超えるまでは、ヒータ加熱によるPMセンサ45の検出特性の調整を禁止するようになっている。
【0070】
一方、エンジンECU31は、積算手段の機能により実行した排気流量積算の積算値が蒸発完了判定可能な閾値Qthを超えたとき、ヒータ加熱制御部62に対して、ヒータ59での加熱によるPMセンサ45の検出特性の調整、すなわち、検出部54上に所定量堆積したPMの燃焼除去を許可するようになっている。
【0071】
このような制御機能により、エンジンECU31は、ヒータ加熱制御部62と共に、少なくともヒータ59によるPMセンサ45の検出部54の加熱の有無を制御する加熱ヒータ加熱制御手段を構成している。
【0072】
ここにいう蒸発完了判定可能な閾値Qthは、閾値温度Tv以上の排気がPMセンサ45付近の排気通路11a内に溜まった凝縮水を蒸発させるに足りる積算流量である。閾値温度Tvが外気温度に応じて可変設定されるので、この閾値Qthは、固定値として設定され、エンジンECU31のROMまたは不揮発性のメモリに記憶格納されている。
【0073】
さらに、エンジンECU31は、エンジン10の始動後、排気温度が処理開始条件の排気温度Tiを超えると、排気温度が閾値温度Tvを超えたか否か、さらに、排気温度が閾値温度Tvを超えた後の排気の積算流量が蒸発完了判定可能な閾値Qthを超えたか否かを判定するようになっている。
【0074】
すなわち、閾値温度設定手段としてのエンジンECU31は、排気の温度が閾値温度Tvより低温の処理開始条件の排気温度Ti以上に昇温したことを条件に、外気温度に応じた閾値温度Tvの可変設定を開始し、積算手段としてのエンジンECU31は、排気の温度が処理開始条件の排気温度Ti以上に昇温したことを条件に、排気温度が閾値温度Tvを超えたか否かの判定を開始する。
【0075】
そして、エンジンECU31は、排気温度が閾値温度Tvを超えた後の排気の積算流量が閾値Qthを超えると、PMセンサ45のヒータ59を作動させてPMセンサ45の検出部54に堆積したPMを燃焼させるようになっている。
【0076】
エンジンECU31は、このように、エンジン10の始動後であって今回の車両の運転期間における早い段階で、少なくともPMセンサ45への被水が懸念される排気通路11aの特定領域内に溜まった凝縮水が蒸発しきるのを待ってヒータ59を作動させる。これにより、車両の運転期間における早い段階でPMセンサ45の検出特性が初期状態にリセットされ、その後のPMセンサ45によるPM検出期間を計測する計測期間タイマが起動される。
【0078】
上述のように構成された本実施形態においては、車両のスタートスイッチやイングニッションスイッチが操作され、エンジンECU31およびDeNOxECU41等に電源が供給されると、排気温度センサ32、33、34、36、46によって排気温度が検出される。そして、いずれかの検出温度、例えばDPF23より下流側の排気温度センサ36により検出される排気温度が処理開始条件の排気温度Tiに達すると、エンジンECU31により、
図5に示すように、エンジンECU31により、PMセンサ45のヒータ加熱に先立つ凝縮水の蒸発完了判定処理が実行される。
【0079】
この処理の開始時には、排気の温度が処理開始条件の排気温度Ti以上に昇温しているので、エンジンECU31の閾値温度設定手段としての機能により、外気温度に応じた閾値温度Tvの可変設定の処理が開始される。すなわち、外気温度センサ42により検出される外気温度を基に、
図4に示したような閾値温度設定マップが参照され、外気温度に応じた閾値温度Tvが設定される。また、排気の温度が処理開始条件の排気温度Ti以上に昇温したことを条件に、エンジンECU31の積算手段としての機能により、排気温度が閾値温度Tvを超えたか否かの判定が開始される。
【0080】
したがって、
図5に示す蒸発完了判定処理においては、まず、排気温度センサ36により検出される排気温度が閾値温度Tvを超えたか否かが判定され(ステップS11)、排気温度が閾値温度Tvを超えるまで、この処理が繰り返される(ステップS11でNOの場合)。
【0081】
そして、排気温度が閾値温度Tvを超えると(ステップS11でYESの場合)、エンジンECU31の積算手段としての機能により、排気通路11aを通る閾値温度Tvを超える排気の質量流量[kg/s]の積算が開始される。すなわち、エンジンECU31の排気流量検出手段としての機能により、エンジン10の吸入空気流量と指示燃料噴射量に燃料密度を掛けた値とに基づいて、閾値温度Tvを超える排気の質量流量[kg/s]が算出され、その算出結果が出る度に、エンジンECU31の積算排気流量検出手段としての機能により、その質量流量の算出値が順次積算される(ステップS12)。
【0082】
なお、この積算手段による質量流量の積算処理を実行する間に、何らかの理由で排気温度が処理開始条件の排気温度Ti以下に達した場合には、今回の処理を終了してもよい。質量流量の積算処理を実行する間にエンジン10が停止した場合、再始動後に最初から凝縮水の蒸発完了判定処理が実行されることはいうまでもない。
【0083】
上述のような積算手段による質量流量の積算処理が実行されるとき、これと併せて、エンジンECU31のヒータ加熱制御手段の機能により、最新の排気の質量流量の算出値が前回の排気流量の算出値までの積算値に加えられる度に、積算手段の機能により算出した排気流量の積算値が予め設定した蒸発完了判定可能な閾値Qthを超えたか否かが判定される(ステップS13)。
【0084】
そして、排気流量の積算値が蒸発完了判定可能な閾値Qthを超えるまで、この積算値の判定処理が繰り返される(ステップS13でNOの場合)。したがって、エンジン10の始動後、排気流量の積算値が閾値Qthを超えるまでは、排気流量の積算処理が繰り返されることで、PMセンサ45のヒータ59の加熱が禁止される。
【0085】
この積算値の判定処理は、排気通路11aの少なくともの特定領域内に所定量の凝縮水が溜まった状態でエンジン10が始動された場合に、閾値温度Tvを超える排気温度の排気が所定排気流量だけ流され、その排気の熱により凝縮水が蒸発し切るのに足りる熱量供給がされたか否かを判定できるものである。
【0086】
したがって、排気流量の積算値が蒸発完了判定可能な閾値Qthを超えると(ステップS13でYESの場合)、PMセンサ45が凝縮水の被水によって故障するおそれがなくなり、PMセンサ45のヒータ59での加熱が可能となる(ステップS14)。
【0087】
このとき、エンジンECU31からヒータ加熱制御部62に対してヒータ加熱指令が出され、ヒータ加熱制御部62によってヒータ59に通電され、ヒータ59の発熱により検出部54上に堆積したPMが燃焼除去される。
【0088】
本実施形態では、このように、エンジンECU31が、エンジン10の始動後であって今回の車両の運転期間における早い段階で、少なくともPMセンサ45への被水が懸念される排気通路11aの特定領域内に溜まった凝縮水が蒸発しきるのを待って、PMセンサ45のヒータ59を作動させ、PMセンサ45の検出特性を初期状態にリセットする。
【0089】
そして、このエンジンECU31が、その後のDPF23の故障診断のために、PMセンサ45によるPM検出期間を計測する計測期間タイマを起動させる。
【0090】
PMセンサ45によるPM検出期間においては、通常、DPF23によって排気中のPMが高捕集率で捕集されるので、DPF23が正常であれば、一対の検出電極52、53の間にエンジン10の始動後の短期間のうちに、一対の検出電極52、53の間の抵抗計測値が所定値を下回ることはない。
【0091】
しかし、DPF23の複数の流路の目封じ部に亀裂等が生じることがあり、差圧センサ35の検出差圧が正常レベルである場合でも、PMセンサ45の検出部54に徐々にPMが付着し、計測期間タイマのカウント値がDPF23の故障判定閾値を大きく超える頃には、DPF23が正常に機能し得る状態でも、一対の検出電極52、53の間の抵抗計測値が所定値を下回ることがあり得る。
【0092】
一方、DPF23の複数の流路の目封じ部に亀裂や溶損等による欠損が比較的広範に生じ、DPF23のPM捕集率が所要値に達しなくなる程に低下するよう異常が発生した場合には、計測期間タイマのカウント値が故障判定閾値に達しない短時間のうちに検出部54上に満杯量のPMが堆積することで、DPF23の故障判定がなされる。
【0093】
この故障判定がなされると、DPF23の異常が図外の警告ランプ等の報知手段によってドライバに報知されるとともに、PMセンサ45がヒータ加熱される。
【0094】
このとき、エンジン10の始動後早い段階に実行したのと同様に、エンジンECU31により、排気温度が処理開始条件の排気温度Tiに達することを条件に、PMセンサ45のヒータ加熱に先立つ凝縮水の蒸発完了判定処理が実行される。
【0095】
すなわち、前述のように、まず、排気温度が閾値温度Tvを超えたか否かが判定され(ステップS11)、排気温度が閾値温度Tvを超えると(ステップS11でYESの場合)、排気通路11aを通る閾値温度Tvを超える排気の質量流量[kg/s]が順次積算される(ステップS12)。そして、排気流量の積算値が蒸発完了判定可能な閾値Qthを超えると(ステップS13でYESの場合)、PMセンサ45のヒータ59での加熱が可能となり(ステップS14)、ヒータ59により検出部54上に堆積したPMが燃焼除去される。なお、質量流量の積算処理中に、燃料カット状態の継続等によって排気温度が処理開始条件の排気温度Tiを下回った場合には、ステップS12の途中で今回の処理を終了してもよい。その場合、排気温度が処理開始条件の排気温度Tiに再度達したときに、再度、蒸発完了判定処理を最初から実行する。
【0096】
このように、本実施形態では、DPF23の下流側で排気中のPMを捕捉するPMセンサ45の出力やその満杯出力に達するまでの計測時間を基に、DPF23において一定量以上の目封じ部の損傷が生じているか否かの故障診断を行う。したがって、PMセンサ45のヒータ59は、DPF23が所要のPM捕集能力を発揮できない故障状態となり、PMセンサ45の検出部54に所定量のPMがエンジン10の始動後の短時間内に堆積した場合に、そのPMを燃料除去すべく作動する。
【0097】
よって、ヒータ59の作動頻度は高くない。それにもかかわらず、PMセンサ45の故障防止のために凝縮水の発生量を監視し続けるのでは、正常時の計算処理負担が大きくなってしまう。
【0098】
本実施形態では、エンジン10の始動後であって今回の車両の運転期間における早い段階で、少なくともPMセンサ45への被水が懸念される排気通路11aの特定領域内に溜まった凝縮水が蒸発しきるのを待って、PMセンサ45のヒータ59を作動させ、PMセンサ45の検出特性を初期状態にリセットしている。そして、DPF23の故障診断のために、PMセンサ45によるPM検出期間を計測する計測期間タイマを起動させ、エンジン10の始動後の短期間のうちにPMセンサ45に所定量のPMが堆積するか否かで、DPF23が正常レベルなPM捕集率を維持し得るか否かの故障判定を実行し、故障時にも、凝縮水が蒸発しきるのを待って、PMセンサ45のヒータ59を作動させている。
【0099】
したがって、DPF23の被水による故障防止のためにエンジンECU31の通常の計算処理負担が大きくなることがない。
【0100】
また、本実施形態では、エンジン10の始動後にPMセンサ45のヒータ作動の可否を判定するに際して、閾値温度Tvを超える排気の流量の積算値が予め蒸発判定可能な閾値Qthを超えるまで、PMセンサ45のヒータ加熱を禁止する一方、その積算値が閾値Qthを超えたとき、PMセンサ45のヒータ加熱を許可する。
【0101】
したがって、エンジン10が冷間始動される車両の運転期間の初期のように、前日の運転停止後に発生した凝縮水が溜まっている場合や、凝縮水を精度良く推定計算できない運転状態にある場合でも、PMセンサ45のPM堆積量が短時間のうちに満杯となってDPF23の故障判定がなされると、PMセンサ45の故障防止のための的確な凝縮水の蒸発判定が可能であり、PMセンサ45の被水による故障を未然に確実に防止することができる。
【0102】
さらに、本実施形態では、外気温度に応じて閾値温度Tvを可変設定し、外気温度が低いときの閾値温度Tvaに対して外気温度が高いときの閾値温度Tvbを低い温度に設定しているので、PMセンサ45の故障防止のための凝縮水の蒸発判定をより的確に行うことができる。
【0103】
加えて、本実施形態では、外気温度が第1外気温度T1未満となる第1の温度範囲Z1内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvaの変化率を、外気温度が第1外気温度T1以上かつ第2外気温度T2未満となる第2の温度範囲Z2内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvcの変化率より小さく設定しているので、凝縮水の蒸発判定に対して外気温度の変化の影響が少ない
温度範囲については閾値温度Tvを変更するための処理負担を軽減できる。
【0104】
また、同様に、本実施形態では、外気温度が第2外気温度T2以上となる第3の温度範囲Z3内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvbの変化率を、第2の温度範囲Z2内での外気温度の変化に対する閾値温度Tvcの変化率より小さく設定しているので、凝縮水の蒸発判定に対して外気温度の変化の影響が少ない高温の外気
温度範囲については、閾値温度Tvを変更するための処理負担を軽減できる。
【0105】
さらに、本実施形態では、排気の温度が閾値温度Tvより低温の処理開始条件温度Ti以上に昇温したことを条件に、外気温度に応じた閾値温度Tvの可変設定を開始し、排気の温度が処理開始条件温度Ti以上に昇温したことを条件に、排気の温度が閾値温度Tvを超えたか否かの判定を開始する。したがって、凝縮水を蒸発させ難い運転状態下でPMセンサ45のヒータ加熱がなされることがなく、しかも、その間のエンジンECU31の計算処理の負担も軽減できる。
【0106】
なお、上述の一実施形態においては、PMセンサ45を本発明にいう排気ガスセンサとしたが、ヒータ内蔵式の排気ガスセンサであれば、PMセンサに限らず、本発明は適用可能である。
【0107】
また、上述の一実施形態においては、エンジンECU31の計算処理負荷を軽減すべく、外気温度に応じて閾値温度Tvを可変設定するために予めの実験結果に基づく閾値温度設定マップを用いるものとした。しかし、ECUの計算処理負担が上述の場合より増すものの、外気温度のみならずエンジン10の運転状態を考慮した閾値温度Tvの最適値を予めの実験により求めておき、外気温度のみならずエンジン10の運転状態に応じた閾値温度Tvの可変設定を行うことも考えられる。
【0108】
また、上述の実施形態では、排気温度が処理開始条件の排気温度Tiを超えると、蒸発完了判定の処理を開始するものとしていたが、外気温度を考慮した上で凝縮水が生じないと判定できるエンジン10の運転条件を予め計算により求めておき、その運転状態にあるか否かをマップで判定するといったことも考えられる。
【0109】
その場合、例えば、外気(吸気)の温度および大気圧を基に、吸入空気中の水分量および露点温度を算出し、その吸入空気の組成(各気体分子および水のモル比)を求めるとともに、そのときの吸入空気量および燃料噴射量から求まる空燃比と既知の燃料および吸入空気の組成成分の分子量とを基に、燃焼前後のガスの組成と既燃ガスの分子量とを算出し、排ガス中の水分量(既燃ガスの絶対湿度)を算出することで、あるいは、さらに、以上の算出結果と排気再循環経路中で検出されるEGRガスの温度および圧力とから求まるそのガスの蒸気圧、分子量および密度等を考慮して、PMセンサ付近を通過する排ガス中の水分量(既燃ガスの絶対湿度)を算出するといったことが考えられる。
【0110】
以上説明したように、本発明は、運転中の計算処理負担を大きくすることなく、PMセンサ等の排気ガスセンサの故障防止のための的確な凝縮水の有無判定が可能な排気ガスセンサの故障防止装置を提供できるものである。かかる本発明は、車両等に搭載される内燃機関の排気通路上に配置されるヒータ付きの排気ガスセンサの故障防止装置全般に有用である。