(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定子と、前記固定子に空隙を介して配置されている回転子を備え、前記回転子は、軸方向に直角な断面で見て、主磁極部と補助磁極部が周方向に沿って交互に配置され、前記主磁極部には磁石挿入部が設けられ、前記磁石挿入部には永久磁石が挿入されている永久磁石電動機であって、
前記磁石挿入部は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った中央部が両端部より前記回転子の外周側に飛び出ているV字形状に形成されている磁石挿入孔により構成され、
前記磁石挿入孔は、平行に延在する直線状の第1の内壁と第1の外壁、平行に延在する直線状の第2の内壁と第2の外壁、直線状の第1の外周壁と第2の外周壁、直線状の第1の端壁と第2の端壁を有し、
前記第1の内壁、前記第1の外壁、前記第1の外周壁および前記第1の端壁によって前記V字形状の一方側の辺が形成され、
前記第2の内壁、前記第2の外壁、前記第2の外周壁および前記第2の端壁によって前記V字形状の他方側の辺が形成され、
前記第1の端壁は、隣接する主磁極部の前記第2の端壁と平行に延在し、
前記永久磁石は、第1の永久磁石片と第2の永久磁石片により構成され、
前記第1の永久磁石片は、平行に延在する直線状の内壁と外壁、直線状の一方側の端壁および他方側の端壁を有し、前記磁石挿入孔の前記V字形状の一方側の辺に、前記第1の永久磁石片の前記一方側の端壁と前記磁石挿入孔の前記第1の端壁との間に第1の空間部が形成されるように挿入され、
前記第2の永久磁石片は、平行に延在する直線状の内壁と外壁、直線状の一方側の端壁および他方側の端壁を有し、前記磁石挿入孔の前記V字形状の他方側の辺に、前記第2の永久磁石片の前記他方側の端壁と前記磁石挿入孔の前記第2の端壁との間に第2の空間部が形成されるように挿入され、
前記回転子の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、前記補助磁極部のq軸に沿った空隙の間隔が前記主磁極部のd軸に沿った空隙の間隔より長くなるように形成されていることを特徴とする永久磁石電動機。
機器と、前記機器を駆動する電動機を備える機器駆動装置であって、前記電動機として請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の永久磁石電動機が用いられていることを特徴とする機器駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の永久磁石電動機の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、回転子(回転軸)の回転中心を通る回転中心線の方向を示す。「周方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心を中心とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面でみて、回転中心を通る方向を示す。「d軸」は、回転中心と主磁極部の周方向中心点を結ぶ線を表し、「q軸」は、回転中心と補助磁極部の周方向中心点を結ぶ線を表す。
また、磁石挿入部(磁石挿入孔)の「内壁」および「外壁」は、永久磁石(永久磁石片)を挿入する部分を形成するための、径方向に対向する壁のうち回転中心側に配置されている壁および回転子の外周側に配置されている壁を表し、「外周壁」は、磁石挿入部の周方向に沿った両端部(永久磁石の両端癖と磁石挿入部の両端壁との間)に空間部を形成するために回転子の外周面に平行(「略平行」を含む)に形成される壁を表し、「端壁」は、隣接する磁石挿入部(磁石挿入孔)と対向する側の壁を表している。永久磁石(永久磁石片)の「内壁」および「外壁」は、永久磁石が磁石挿入部に挿入された状態において、径方向に対向する壁のうち回転中心側に配置されている壁および回転子の外周側に配置されている壁を表し、「端壁」は、隣接する永久磁石(永久磁石片)と対向する側の壁を表している。
また、「平行」という記載は、「略平行」を含むものとして用いられている。
【0009】
なお、以下で説明する本発明の永久磁石電動機の各実施形態は、例えば、空調装置、冷却装置や冷凍装置等に設けられている圧縮機の圧縮機構部、車両、車両に搭載されている車載機器等の公知の種々の機器を駆動する電動機として用いることができる。すなわち、本発明は、機器と、機器を駆動する永久磁石電動機を備える機器駆動装置として構成することもできる。各機器の構成は公知であるので、本明細書では説明を省略する。
【0010】
本発明の永久磁石電動機の第1の実施形態を、
図1、
図2に示す。
図1は、第1の実施形態の永久磁石電動機100を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、
図2は、
図1の部分拡大図である。なお、本明細書では、
図1および
図2において、時計回り方向を「周方向に沿った一方方向」といい、反時計回り方向を「周方向に沿った他方方向」という。以下で説明する各実施形態においても同様である。勿論、反時計回り方向を「一方方向」、時計回り方向を「他方方向」ということもできる。
また、各実施形態では、6スロット、4極の永久磁石電動機について説明するが、本発明の永久磁石電動機のスロット数、極数は適宜変更可能である。
【0011】
本実施形態の永久磁石電動機100は、固定子110と回転子120を備えている。
固定子110は、複数の電磁鋼板を積層した固定子コアにより構成される。固定子110は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って延在するヨーク部111と、ヨーク部111から径方向に沿って回転中心O方向に延在するティース部112を有している。ティース部112は、ヨーク部111から径方向に沿って延在するティース基部112aと、ティース基部112aの先端側(回転中心O側)に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部112bを有している。ティース先端部112bの回転中心O側には、ティース先端面113が形成されている。ティース先端面113は、「固定子110の内周面」を形成する。
周方向に沿って隣接するティース部112により形成されるスロット114には、固定子巻線(図示省略)が挿入される。本実施形態では、固定子巻線は、集中巻き方式を用いてスロット114に挿入されている。勿論、分布巻き方式を用いることもできる。
【0012】
回転子120は、複数の電磁鋼板を積層した回転子コアにより構成される。回転子120は、軸方向に直角な断面で見て、主磁極部[A]〜[D]と補助磁極部[AB]〜[DA]が周方向に沿って交互に配置されている。主磁極部[A]〜[D]には、周方向に沿って延在する磁石挿入部130が形成され、磁石挿入部130には永久磁石140が挿入されている。
主磁極部[A]〜[D]の磁石挿入部130に挿入される永久磁石140は、N極の主磁極部とS極の主磁極部が周方向に沿って交互に配置されるように着磁される。永久磁石140の着磁方法としては、永久磁石140を磁石挿入部130に挿入した状態で、固定子巻線に着磁電流を流す組込み着磁方法が用いられる。勿論、永久磁石140を磁石挿入部130に挿入する前に着磁する方法を用いることもできる。
永久磁石としては、種々の永久磁石を用いることができる。例えば、フェライト磁石、希土類磁石、テルビウムやディスプロシウムを含有するネオジウム磁石等を用いることができる。
回転子120は、回転軸(図示省略)が挿入される回転軸挿入孔122を有している。
また、回転子120は、
図2には図示を省略しているが、カシメピン挿入孔123と通路孔124を有している。カシメピン挿入孔123は、q軸と交差する位置に形成され、積層された複数の電磁鋼板を一体化するカシメピンが挿入される。通路孔124は、d軸を挟んで周方向両側に形成され、圧縮機で用いられる冷媒、固定子110や回転子120を冷却する冷却媒体(例えば、空気)等が軸方向に沿って流れる。カシメピン挿入口123および通路孔124の形状、数、配設位置等は適宜変更可能である。
【0013】
本実施形態では、磁石挿入部130は、平行に延在する直線状の第1の内壁130aおよび第2の内壁130bと第1の外壁130cおよび第2の外壁130d、第1の外周壁130eおよび第2の外周壁130g、第1の端壁130fおよび第2の端壁130hにより形成される1つの磁石挿入孔により構成されている。以下「磁石挿入孔130」という。
磁石挿入孔130は、外周側に飛び出ているV字形状に形成されている。すなわち、平行に延在する直線状の第1の内壁
130aと第1の外壁
130c、第1の外周壁130eおよび第1の端壁130fによりV字形状の一方側の辺が形成され、平行に延在する第2の内壁130bと第2の外壁130d、第2の外周壁130gおよび第2の端壁130hによりV字形状の他方側の辺が形成されている。
磁石挿入孔130の、周方向に沿った一方側の第1の端壁130fは、隣接する主磁極部の磁石挿入孔130の第2の端壁130hと平行に延在する。
【0014】
永久磁石140は、磁石挿入孔130に挿入される第1の永久磁石片141と第2の永久磁石片142により構成されている。第1の永久磁石片141および第2の永久磁石片142は、平行に延在する内壁141aおよび142aと外壁141bおよび142b、平行に延在する第1の端壁141cおよび142cと第2の端壁141dおよび142dにより形成される四角形状の断面を有している。
永久磁石140は、外周側に飛び出ているV字形状に配置されている。すなわち、第1の永久磁石片141がV字形状の一方側の辺に沿って配置され、第2の永久磁石片142がV字形状の他方側の辺に沿って配置されている。
【0015】
本実施形態では、磁石挿入孔130の、周方向に沿った両端の外周壁(周方向に沿った一方側の第1の外周壁130eおよび他方側の第2の外周壁130g)と回転子120の外周面121との間、すなわち、永久磁石140の、周方向に沿った両端の端壁(周方向に沿って一方側に配置されている第1の永久磁石片141の、周方向に沿った一方側の第2の端壁141dおよび周方向に沿って他方側に配置されている第2の永久磁石片142の、周方向に沿った他方側の第2の端壁142d)と回転子120の外周面121との間には、第1のブリッジ部160aおよび第2のブリッジ部160bが形成されている。
第1のブリッジ部160aおよび第2のブリッジ部160bによって、回転子120の遠心力に対する強度が高められる。
また、磁石挿入孔130の、周方向に沿った両端部、すなわち、永久磁石140の、周方向に沿った両端の端壁(第1の永久磁石片141の、周方向に沿った一方側の第2の端壁141dおよび第2の永久磁石片142の、周方向に沿った他方側の第2の端壁142d)と磁石挿入部130の、周方向に沿った両端の端壁(第1の端壁
130fおよび第2の端壁130h)との間には、第1の空間部150aおよび第2の空間部150bが形成されている。
第1の空間部150aおよび第2の空間部150bによって、永久磁石140の、周方向に沿った両端部(以下、「永久磁石140の両端部」という)において、永久磁石140から発生する磁束が短絡されるのを防止することができる。
【0016】
また、回転子120の外周面121は、主磁極部[A]〜[D]のd軸と交差する第1の外周部分121aと、補助磁極部[AB]〜[DA]のq軸と交差する第2の外周部分121bが交互に接続されて構成されている。第1の外周部分121aと第2の外周部分121bは、接続部120Aおよび120Bで接続されている。
第1の外周部分121aは、d軸上の回転中心Oを中心点とする、半径R1の(外周側に突状の)円弧形状に形成されている。また、第2の外周部分121bは、q軸上であって、回転中心Oより第2の外周部分121bと反対側に離れた点Pを中心点とし、第1の曲線部分121aの円弧形状の半径R1より大きい半径R2の(外周側に突状)の円弧形状に形成されている。すなわち、固定子110の内周面(ティース先端面113)と回転子120の外周面121との間の空隙(エアギャップ)は、q軸に沿った間隔G2がd軸に沿った間隔G1より大きくなるように設定されている。
回転子120の外周面121を、半径R1の円弧形状に形成された第1の外周部分121aと半径R2(半径R2>半径R1)の円弧形状に形成された第2の外周部分121bを交互に接続して構成することにより、第1の外周部分121aと第2の外周部分121bとの接続部120Aおよび120Bにおける磁束量の変化を小さくすることができ、固定子巻線に誘起される誘起電圧の波形(起電力波形)に含まれる高調波成分を低減することができる。これにより、回転子位置検出センサを用いることなく、起電力波形に基づいて回転子の位置を検出するセンサレス制御方式の制御装置を用いた場合に、回転子の位置検出精度の低下による効率の低下を防止することができる。
【0017】
第1の実施形態では、磁石挿入部が突形状に形成(永久磁石が突形状に配置)されている。これにより、磁石表面積が増大し、磁束量(有効磁束量)が増大する。そして、磁束量が増大することにより、固定子巻線に流す電流を小さくすることができるため、銅損を低減することができる。
また、磁石挿入部が、外周側に飛び出ている突形状に形成(永久磁石が、外周側に飛び出ている突形状に配置)されている。これにより、永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間の間隔が小さくなり、当該永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間を通る磁束により発生するリラクタンストルクが小さくなる。リラクタンストルクが小さくなることにより、鉄損が低減される。一方、永久磁石と回転子の外周面との間の間隔が小さくなることにより、電機子反作用による磁束量の低下が大幅に抑制される。これにより、鉄損を低減することができるとともに、磁束量(有効磁束量)を増大させることができ、効率が向上する。
さらに、第1の実施形態では、磁石挿入部がV字形状に形成(永久磁石がV字形状に配置)されている。これにより、永久磁石の、周方向に沿った中央部(d軸の両側に永久磁石片が配置されている場合には、各磁石片の、d軸側の端壁)と回転子の外周面との間の間隔を小さくすることができる。したがって、電機子反作用による有効磁束量の低下をより抑制することができる。
また、回転子の外周面が、d軸と交差する円弧形状(半径R1)の第1の外周部分と、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)の第2の外周部分を交互に接続して構成されている。すなわち、q軸に沿った空隙(エアギャップ)の間隔G2がd軸に沿った空隙の間隔G1より大きくなるように回転子の外周面が形成されている。これにより、永久磁石の両端部から発生する磁束が、空隙の間隔が小さい第1の外周部分側に流れ易くなり(空隙の間隔が大きい第2の外周部分側に流れ難くなり)、主磁極部の磁束量が増大する。さらに、固定子巻線に電流を流すことによって発生する磁束が、空隙の間隔が小さい第1の外周部分に流れ易くなり(空隙の間隔が大きい第2の外周部分に流れ難くなり)、永久磁石の両端部における、磁束集中による減磁を防止することができる。なお、起電力波形に含まれる高調波成分を低減することができるため、センサレス制御方式の(固定子巻線の起電力波形を用いて検出した回転子の位置に基づいて制御する)制御装置を用いる場合には、回転子の位置検出精度の低下による効率の低下を防止することができる。
したがって、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
【0018】
本発明の永久磁石電動機の第2の実施形態を、
図3、
図4に示す。
図3は、第2の実施形態の永久磁石電動機200を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、
図4は、
図3の部分拡大図である。
第2の実施形態の永久磁石電動機200は、磁石挿入部230と永久磁石240の構成が第1の実施形態の永久磁石電動機100と異なっている。したがって、以下では、第2の実施形態の永久磁石電動機200の磁石挿入部230と永久磁石240の構成を説明する。なお、
図3、
図4において、磁石挿入部230と永久磁石240以外の構成要素に関しては、
図1、
図2に示されている符号と百番台の数字以外が同じである符号が付されている構成要素は同じ構成要素である。
【0019】
磁石挿入部230は、周方向に沿って配置されている第1および第2の磁石挿入孔231および232により構成されている。第1および第2の磁石挿入孔231および232は、平行に延在する直線状の内壁231aおよび232aと外壁231bおよび232b、直線状の外周壁231dおよび232d、直線状の第1の端壁231cおよび232c、直線状の第2の端壁231eおよび232eにより形成される直線状の断面を有している。
磁石挿入部230は、外周側に飛び出ているV字形状に形成されている。すなわち、第1の磁石挿入孔231によりV字形状の一方側の辺が形成され、第2の磁石挿入孔232によりV次形状の他方側の辺が形成されている。
第1の磁石挿入孔231の第1の端壁231cと第2の磁石挿入孔232の第1の端壁232cは、平行に延在している。また、第1の磁石挿入孔231の第2の端壁231eは、隣接する主磁極部の第2の磁石挿入孔232の第2の端壁232eと平行に延在している。
【0020】
永久磁石240は、第1および第2の磁石挿入孔231および232に挿入される第1および第2の永久磁石片241および242により構成されている。第1および第2の永久磁石片241および242は、平行に延在する直線状の内壁241aおよび242aと外壁241bおよび242b、平行に延在する直線状の第1の端壁241cおよび242cと第2の端壁241dおよび242dにより形成される四角形状の断面を有している。
永久磁石240は、外周側に飛び出ているV字形状に配置されている。すなわち、第1の永久磁石片241がV字形状の一方側の辺に沿って配置され、第2の永久磁石片242がV字形状の他方側の辺に沿って配置されている。
【0021】
本実施形態では、磁石挿入孔230の、周方向に沿った両端の外周壁(第1の磁石挿入孔231の外周壁231dおよび第2の磁石挿入孔232の外周壁232d)と回転子220の外周面221との間、すなわち、永久磁石240の、周方向に沿った両端の端壁(第1の永久磁石片241の、周方向に沿った一方側の第2の端壁241dおよび第2の永久磁石片242の、周方向に沿った他方側の第2の端壁242d)と回転子220の外周面221との間に、第1のブリッジ部260aおよび第2のブリッジ部260bが形成されている。
また、第1の磁石挿入孔231と第2の磁石挿入孔232の間(第1の永久磁石片241と第2の永久磁石片242の間)に、第3のブリッジ部260cが形成されている。第3のブリッジ部260cによって、回転子220の遠心力に対する強度がより高められている。
【0022】
また、磁石挿入部230の両端部、すなわち、永久磁石240の、周方向に沿った両端壁(第1の永久磁石片241の第2の端壁241dおよび第2の永久磁石片242の第2の端壁242d)と磁石挿入部230の、周方向に沿った両端壁(第1の磁石挿入孔231の第2の端壁231eおよび第2の磁石挿入孔232の第2の端壁232e)との間に、永久磁石240の両端部における磁束の短絡を防止するための第1の空間部250aおよび第2の空間部250bが形成されている。
【0023】
また、回転子220の外周面221は、第1の実施形態と同様に、d軸と交差する円弧形状(半径R1)に形成された第1の外周部分221aと、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分221bを交互に接続して構成されている。
【0024】
第2の実施形態では、磁石挿入部が、外周側に飛び出ている突形状に形成(永久磁石が突形状に配置)されている。これにより、磁石表面積が増大して磁束量(有効磁束量)が増大する。また、永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間の間隔が小さくなり、当該永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間を通る磁束により発生するリラクタンストルクが小さくなり、リラクタンストルクに起因して発生する鉄損を低減することができる。一方、永久磁石と回転子の外周面との間の間隔が小さくなることにより、電機子反作用による磁束量の低下が大幅に抑制される。これにより、鉄損を低減することができるとともに、磁束量(有効磁束量)を増大させることができ、効率が向上する。
さらに、第2の実施形態では、磁石挿入部がV字形状に形成(永久磁石がV字形状に配置)されているため、永久磁石の、周方向に沿った中央部(d軸の両側に永久磁石片が配置されている場合には、各永久磁石片の、d軸側の端壁)と回転子の外周面との間の間隔を小さくすることができる。したがって、電機子反作用による有効磁束量の低下をより抑制することができる。
また、磁石挿入部が、ブリッジ部を介して周方向に沿って配置されている複数の磁石挿入孔によって構成されている(永久磁石が、ブリッジ部を介して周方向に沿って配置されている複数の永久磁石片によって構成されている)ことにより、回転子の、遠心力に対する強度が高められる。
また、回転子の外周面が、d軸と交差する円弧形状(半径R1)に形成された第1の外周部分と、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分を交互に接続して構成されている。
したがって、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
【0025】
本発明の永久磁石電動機の第3の実施形態を、
図5、
図6に示す。
図5は、第3の実施形態の永久磁石電動機300を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、
図6は、
図5の部分拡大図である。
第3の実施形態の永久磁石電動機300は、磁石挿入部330と永久磁石340の構成が第1の実施形態の永久磁石電動機100と異なっている。したがって、以下では、第3の実施形態の意永久磁石電動機300の磁石挿入部330と永久磁石340の構成を説明する。なお、
図5、
図6において、磁石挿入部330と永久磁石340以外の構成要素に関しては、
図1、
図2に示されている符号と百番台の数字以外が同じである符号が付されている構成要素は同じ構成要素である。
【0026】
磁石挿入部330は、平行に延在する直線状の第1の内壁330aおよび第2の内壁330bと第1の外壁330cおよび第2の外壁330d、直線状の第1の外周壁330eおよび第2の外周壁330g、直線状の第1の端壁330fおよび第2の端壁330h、第1の突部330xおよび第2の突部330yにより形成される1つの磁石挿入孔により構成されている。以下、「磁石挿入孔330」という。
磁石挿入孔330は、外周側に飛び出ているV字形状に形成されている。
第1の突部330xおよび第2の突部330yは、第1の内壁330aおよび第2の内壁330bから磁石挿入孔内に飛び出ている。第1の突部330xおよび第2の突部330yは、第1の外壁330cおよび第2の外壁330dから磁石挿入孔内に飛び出るように形成してもよい。
【0027】
永久磁石340は、第1の磁石挿入孔330に挿入される第1の永久磁石片341および第2の永久磁石片342により構成されている。第1および第2の永久磁石片341および342は、第1の実施形態と同様に、内壁341aおよび342a、外壁341bおよび342b、第1の端壁341cおよび342c、第2の端壁341dおよび341dにより形成される四角形状の断面を有している。
永久磁石340は、外周側に飛び出ているV字形状に配置されている。
【0028】
本実施形態では、第1の突部330xおよび第2の突部330yによって、永久磁石340の位置(第1の永久磁石片341および第2の永久磁石片342の位置)を設定することができる。これにより、磁石挿入孔330の形状を大きく変更することなく、磁石挿入孔330の両端部(第1の永久磁石片341の第2の端壁341dおよび第2の永久磁石片342の第2の端壁342dと磁石挿入孔330の第1の端壁330fおよび第2の端壁330hとの間)に形成される第1の空間部350aおよび第2の空間部350bの周方向に沿った長さを容易に変更することができる。したがって、永久磁石340の両端部における磁束の短絡を確実に防止することができる。
【0029】
また、第1の実施形態と同様に、第1および第2のブリッジ部360aおよび360bが形成されている。
また、回転子320の外周面321は、d軸と交差する円弧形状(半径R1)に形成された第1の外周部分321aと、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分321bを交互に接続して構成されている。
【0030】
第3の実施形態では、磁石挿入部が、外周側に飛び出ている突形状に形成(永久磁石が突形状に配置)されている。これにより、磁石表面積が増大して磁束量(有効磁束量)が増大する。また、永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間の間隔が小さくなり、当該永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間を通る磁束により発生するリラクタンストルクが小さくなり、リラクタンストルクに起因して発生する鉄損を低減することができる。一方、永久磁石と回転子の外周面との間の間隔が小さくなることにより、電機子反作用による磁束量の低下が大幅に抑制される。これにより、鉄損を低減することができるとともに、磁束量(有効磁束量)を増大させることができ、効率が向上する。
さらに、第3の実施形態では、磁石挿入部がV字形状に形成(永久磁石がV字形状に配置)されているため、永久磁石の、周方向に沿った中央部(d軸の両側に永久磁石片が配置されている場合には、各永久磁石片の、d軸側の端壁)と回転子の外周面との間の間隔を小さくすることができる。したがって、電機子反作用による有効磁束量の低下をより抑制することができる。
また、磁石挿入部に、永久磁石を位置決めする位置決め部が設けられているため、永久磁石の両端部における磁束短絡を防止するための第1の空間部および第2の空間部を容易に変更することができる。
また、回転子の外周面が、d軸と交差する円弧形状(半径R1)に形成された第1の外周部分と、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分を交互に接続して構成されている。
したがって、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
【0031】
本発明の永久磁石電動機の第4の実施形態を、
図7、
図8に示す。
図7は、第4の実施形態の永久磁石電動機400を軸方向に直角な方向から見た断面図であり、
図8は、
図7の部分拡大図である。
第4の実施形態の永久磁石電動機400は、磁石挿入部430と永久磁石440の構成が第1の実施形態の永久磁石電動機100と異なっている。したがって、以下では、第4の実施形態の永久磁石電動機400の磁石挿入部430と永久磁石440の構成を説明する。なお、
図7、
図8において、磁石挿入部430と永久磁石440以外の構成要素に関しては、
図1、
図2に示されている符号と百番台の数字以外が同じである符号が付されている構成要素は同じ構成要素である。
【0032】
磁石挿入部430は、周方向に沿って配置されている第1の磁石挿入孔431および第2の磁石挿入孔432により構成されている。第1の磁石挿入孔431および第2の磁石挿入孔432は、平行に延在する直線状の内壁431aおよび432aと外壁431bおよび432b、直線状の外周壁431dおよび432d、直線状の第1の端壁431cおよび432c、直線状の第2の端壁431eおよび432e、第1の突部431xおよび第2の突部432yにより形成される直線状の断面を有している。
磁石挿入部430は、外周側に飛び出ているV字形状に形成されている。
【0033】
永久磁石440は、第1の磁石挿入孔431および第2の磁石挿入孔432に挿入される第1の永久磁石片441および第2の永久磁石片442により構成されている。第1の永久磁石片441および第2の永久磁石片442は、第1の実施形態と同様に、内壁441aおよび442a、外壁441bおよび442b、第1の端壁441cおよび442c、第2の端壁441dおよび442dにより形成される四角形状の断面を有している。
永久磁石440は、外周側に飛び出ているV字形状に配置される。
【0034】
本実施形態では、磁石挿入部430の、周方向に沿った両端の外周壁(第1の磁石挿入孔431の外周壁431dおよび第2の磁石挿入孔432の外周壁432d)と回転子420の外周面421との間、すなわち、永久磁石440の、周方向に沿った両端の端壁(第1の永久磁石片441の第2の端壁441dおよび第2の永久磁石片442の第2の端壁442d)と回転子420の外周面421との間に、第1のブリッジ部460aおよび第2のブリッジ部460bが形成されている。また、第1の磁石挿入孔431と第2の磁石挿入孔432の間(第1の永久磁石片441と第2の永久磁石片442の間)に、第3のブリッジ部460cが形成されている。第3のブリッジ部460cによって、回転子420の遠心力に対する強度がより高められている。
【0035】
また、磁石挿入部430の、周方向に沿った両端部、すなわち、永久磁石440の両端壁(第1の永久磁石片441の第2の端壁441dおよび第2の永久磁石片442の第2の端壁442d)と磁石挿入部430の両端壁(第1の磁石挿入孔431の第2の端壁431eおよび第2の磁石挿入孔432の第2の端壁432e)との間に、永久磁石440の両端部における磁束の短絡を防止するための1の空間部450aおよび第2の空間部450bが形成されている。
本実施形態では、第1の突部431xおよび第2の突部432yによって、永久磁石440の位置(第1の永久磁石片441および第2の永久磁石片442の位置)を設定することができる。これにより、磁石挿入孔430の両端部(永久磁石440の両端壁と磁石挿入部430の両端壁との間)に形成される第1の空間部450aおよび第2の空間部450bの周方向に沿った長さを容易に変更することができ、永久磁石440の両端部における磁束の短絡を確実に防止することができる。
【0036】
また、回転子420の外周面421は、d軸と交差する円弧形状(半径R1)に形成された第1の外周部分421aと、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分421bを交互に接続して構成されている。
【0037】
第4の実施形態では、磁石挿入部が、外周側に飛び出ている突形状に形成(永久磁石が突形状に配置)されている。これにより、磁石表面積が増大して磁束量(有効磁束量)が増大する。また、永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間の間隔が小さくなり、当該永久磁石の、周方向に沿った両端部分と回転子の外周面との間を通る磁束により発生するリラクタンストルクが小さくなり、リラクタンストルクに起因して発生する鉄損を低減することができる。一方、永久磁石と回転子の外周面との間の間隔が小さくなることにより、電機子反作用による磁束量の低下が大幅に抑制される。これにより、鉄損を低減することができるとともに、磁束量(有効磁束量)を増大させることができ、効率が向上する。
さらに、第4の実施形態では、磁石挿入部がV字形状に形成(永久磁石がV字形状に配置)されているため、永久磁石の、周方向に沿った中央部(d軸の両側に永久磁石片が配置されている場合には、各永久磁石片の、d軸側の端壁)と回転子の外周面との間の間隔を小さくすることができる。したがって、電機子反作用による有効磁束量の低下をより抑制することができる。
また、磁石挿入部が、ブリッジ部を介して周方向に沿って配置されている複数の磁石挿入孔によって構成されている(永久磁石が、ブリッジ部を介して周方向に沿って配置されている複数の永久磁石片によって構成されている)ことにより、回転子の、遠心力に対する強度が高められる。
また、磁石挿入部に、永久磁石を位置決めする位置決め部が設けられているため、永久磁石の両端部における磁束短絡を防止するための第1の空間部および第2の空間部を容易に変更することができる。
また、回転子の外周面は、d軸と交差する円弧形状(半径R1)に形成された第1の外周部分と、q軸と交差する円弧形状(半径R2>半径R1)に形成された第2の外周部分を交互に接続して構成されている。
したがって、永久磁石電動機の効率を向上させることができる。
【0038】
本発明は、以下のように構成することもできる。
(態様1)
固定子と、前記固定子に空隙を介して配置されている回転子を備え、前記回転子は、軸方向に直角な断面で見て、主磁極部と補助磁極部が周方向に沿って交互に配置され、前記主磁極部には永久磁石が配置されている永久磁石電動機であって、
前記永久磁石は、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿った中央部が両端部より前記回転子の外周側に飛び出ているV字形状に配置され、
前記永久磁石の、周方向に沿った一方側の端壁および他方側の端壁と前記回転子の外周面との間に第1の空間部および第2の空間部が形成され、
前記回転子の外周面は、軸方向に直角な断面で見て、前記補助磁極部のq軸に沿った空隙の間隔が前記主磁極部のd軸に沿った空隙の間隔より長くなるように形成されていることを特徴とする永久磁石電動機。
(態様2)
態様1の永久磁石電動機であって、前記永久磁石は、ブリッジ部を挟んで周方向に沿った一方側および他方側に配置されている第1の永久磁石片および第2の永久磁石片により構成されており、前記第1の永久磁石片の、周方向に沿った前記一方側の端壁と前記回転子の外周面との間に前記第1の空間部が形成され、前記第2の永久磁石片の、周方向に沿った前記他方側の端壁と前記回転子の外周面との間に前記第2の空間部が形成されていることを特徴とする永久磁石電動機。
【0039】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
永久磁石をV字形状に配置する態様あるいは磁石挿入部をV字形状に形成する態様としては、概略、永久磁石がV字形状に配置されあるいは磁石挿入部がV字形状に形成されていればよい。
実施形態では、主磁極部に磁石挿入孔を形成し、磁石挿入孔に永久磁石を挿入したが、永久磁石を配置する態様はこれに限定されない。例えば、接着や一体成形等により永久磁石を回転子に配置する態様を用いることもできる。すなわち、本発明は、「永久磁石が、外周側に飛び出ているV字形状に配置されている」永久磁石電動機として構成することもできる。
主磁極部の磁石挿入部を構成する磁石挿入孔の数や形状は、適宜変更可能である。
主磁極部に配置される永久磁石を構成する永久磁石片の数や形状は、適宜変更可能である。
永久磁石を位置決めするための位置決め部の形状や数は、適宜変更可能である。また、位置決め部は省略することもできる。
回転子の外周面は、q軸に沿った空隙の間隔G2がd軸に沿った空隙の間隔G1より大きくなる種々の形状に形成することができる。
本発明の永久磁石電動機は、種々の機器を駆動する電動機として用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
100、200、300、400 永久磁石電動機
110、210、310、410 固定子
111、211、311、411 ヨーク部
112、212、312、412 ティース部
112a、212a、312a、412a ティース基部
112b、212b、312b、412b ティース先端部
113、213、313、413 ティース先端面
114、214、314、414 スロット
120、220、320、420 回転子
121、221、321、421 外周面
121a、221a、321a、421a 第1の外周部分
121b、221b、321b、421b 第2の外周部分
121A、121B、221A、221B、321A、321B、421A、421B 接続部
122、222、322、422 回転軸挿入孔
123、223、323、423 カシメピン挿入孔
124、224、324、424 通路孔
130、230、330、430 磁石挿入部
130a、130b、231a、232a、330a、330b、431a、432a 内壁
130c、130d、231b、232b、330c、330d、431b、432b 外壁
130e、130g、231d、232d、330e、330g、431d、432d 外周壁
130f、130h、231e、232e、330f、330h、431e、432e 端壁
140、240、340、440 永久磁石
141、142、241、242、341、342、441、442 永久磁石片
141a、142a、241a、242a、341a、342a、441a、442a 内壁
141b、142b、241b、242b、341b、342b、441b、442b 外壁
141c、141d、142c、142d、241c、241d、242c、242d、341c、341d、342c、342d、441c、441d、442c、442d 端壁
150a、150b、250a、250b、350a、350b、450a、450b 空間部
160a、160b、260a、260b、260c、360a、360b、460a、460b、460c ブリッジ部
231、232、431、432 磁石挿入孔
[A]〜[D] 主磁極部
[AB]〜[DA] 補助磁極部