(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記多孔質材が、気孔径10μm〜100μm及び気孔率80%以上の連続気孔構造である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
前記表面処理工程後のガラス基板の第1面の表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.40nm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のディスプレイ用ガラス基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態のガラス基板の製造方法及びガラス基板表面処理装置について説明する。
図1は、ガラス基板100の製造過程の概要を示すフローチャートである。
図1では、ガラス基板が、原料を熔融する状態から客先等に出荷される状態になるまでの工程の概略を示している。
【0024】
(1)ガラス基板の製造方法
以下、本発明のガラス基板の製造装置およびガラス基板の製造方法について説明する。
本実施形態において製造されるガラス基板は、特に制限されないが、例えば縦寸法及び横寸法のそれぞれが、500mm〜3500mm、1500mm〜3500mm、1800〜3500mm、2000mm〜3500mmなどが挙げられ、2000mm〜3500mmであることが好ましい。
ガラス基板の厚さは、例えば、0.1〜1.1(mm)が挙げられ、より好ましくは0.75mm以下の極めて薄い矩形形状の板で、例えば、0.55mm以下、さらには0.45mm以下の厚さがより好ましい。ガラス基板の厚さの下限値としては、0.15mm以上が好ましく、0.25mm以上がより好ましい。
【0025】
まず、熔融されたガラスが、例えばフュージョン法あるいはフロート法等の公知の方法により、所定の厚さの帯状ガラスであるシートガラスが成形される(ステップS1)。
次に、成形されたシートガラスが所定の長さの素板であるガラス基板に採板される(ステップS2)。ステップ2の後、採板により得られたガラス基板は、搬送機構により、ピンチング保持されつつ、熱処理工程に誘導され搬送され、次に、この搬送されたガラス基板に対し熱処理ステップを行ってもよい。
【0026】
熱処理後のガラス基板は切断工程に搬送され、製品のサイズに切断され、ガラス基板が得られる(ステップS3)。得られたガラス基板には、端面の研削、研磨およびコーナカットを含む端面加工が行われる(ステップS4)。端面加工後のガラス基板のガラス表面の微細な異物や汚れを取り除くために、ガラス基板を洗浄する第1洗浄(ステップS5)。
【0027】
本実施形態の表面化処理S6(粗面化工程Pr1及びすすぎ工程Pr2)は、端面加工直後の洗浄工程S5の後に行う。本実施形態の表面処理工程の詳細は後述する。
【0028】
表面処理工程S7の後に、第2洗浄後S8を行い、この後、洗浄されたガラス基板はキズ、塵、汚れあるいは光学欠陥を含む傷が無いか、光学的検査が行われる(ステップS8)。検査により品質の適合したガラス基板は、ガラス基板を保護する紙と交互に積層された積層体としてパレットに積載されて梱包される(ステップS9)。梱包されたガラス基板は納入先業者に出荷される。
【0029】
このようなガラス基板として、以下のガラス組成のガラス基板が例示される。つまり、以下のガラス組成のガラス基板が製造されるように、熔融ガラスの原料が調合される。
SiO
2 55〜80モル%、
Al
2O
3 8〜20モル%、
B
2O
3 0〜12モル%、
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)。
【0030】
SiO
2は60〜75モル%、さらには、63〜72モル%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
ROのうち、MgOが0〜10モル%、CaOが0〜15モル%、SrOが0〜10%、BaOが0〜10%であることが好ましい。
【0031】
また、SiO
2、Al
2O
3、B
2O
3、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO
2)+Al
2O
3)/((2×B
2O
3)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
【0032】
また、モル%表示のB
2O
3の含有率の2倍とモル%表示のROの含有率の合計は、30モル%以下、好ましくは10〜30モル%であることが好ましい。
また、上記ガラス組成のガラス基板におけるアルカリ金属酸化物の含有率は、0モル%以上0.4モル%以下であってもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5モル%含み、As
2O
3、Sb
2O
3及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
【0033】
本実施形態で製造されるガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板、またはカーブドパネルディスプレイ用ガラス基板で、例えば、液晶ディスプレイ用ガラス基板あるいは、有機ELディスプレイ用のガラス基板として好適である。さらに、本実施形態で製造されるガラス基板は、高精細ディスプレイに用いるLTPS(Low−temperature poly silicon)・IGZO(Indium−Gallium−Zinc−Oxide)・TFTディスプレイ用ガラス基板として特に好適である。
【0034】
本実施形態における熔融ガラスからシートガラスを成形する方法として、フロート法やフュージョン法等が用いられるが、本実施形態のガラス基板のオフラインにおける熱処理を含むガラス基板の製造方法は、フュージョン法(オーバーダウンドロー法)において製造ライン上の徐冷装置を長くすることが困難である点から、フュージョン法に適している。本実施形態のガラス基板の熱収縮率は、50ppm以下であり、好ましくは40ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更により好ましくは20ppm以下である。熱収縮率を低減する前のガラス基板の熱収縮率の範囲としては、10ppm〜40ppmが好ましい。
【0035】
(2)表面処理工程S6
(2−1)表面処理方法および表面処理装置
本実施形態の表面処理工程について詳細に説明する。本実施形態の表面処理工程は、ガラス基板の主表面のうち一方の面(第1面)をエッチング液で表面処理する粗面化工程(Pr1)と、粗面化された第1面のエッチング液を洗浄水で洗浄した後にもう一度再洗浄するとともに、粗面化を施していない第2面を純水で洗浄する、すすぎ工程(Pr2)とを含む。表面化処理S5の詳細は後述する。
【0036】
表面処理工程S7では、ガラス基板の主表面の一方の面のみが粗面化処理される。粗面化処理の対象となる主表面はTFT及び配線パターンを形成する形成面と反対側の主表面であり、もう一方の主表面に表面処理(粗面化)は行わない。
【0037】
粗面化処理をすることで、次に挙げる様な帯電による種々の問題を防ぐことができる。例えば、ガラス基板上にTFT(Thin Film Transistor)及び配線パターンを形成するとき、帯電によって塵や埃などの異物がガラス基板や配線パターンに付着し、配線パターンの欠損や剥離が生じる、あるいは蓄積された電荷の放電によってTFTの破壊等が生じる、等の問題がある。また、帯電によりガラス基板が載置テーブルに張り付き、載置テーブルからははがす時にガラス基板が割れる場合もある。これら帯電により引き起こされる問題を防ぐには、可能な限り、ガラス基板の主表面の一方の面について帯電を防ぐための粗面化されているのが好ましく、特に、フュージョン法やオーバーフローダウンドロー法で成形されたガラスシートについては、粗面化処理を行うのが好ましい。
【0038】
図2は、表面処理工程S7を行うガラス基板表面処理装置1の一例を説明する模式図である。本実施形態(
図2)の装置では、ガラス基板を水平状態で粗面化ローラーの上を搬送させて粗面化する方式を採用する。
【0039】
図3は、ガラス基板表面処理装置1で用いる粗面化ローラーの概略上面図である。
図4は、粗面化ローラーによるガラス基板の粗面化を説明する図である。
【0040】
図2を参照しながら、本実施形態の表面処理工程を説明するが、ガラス基板表面処理装置1(
図2〜
図4)は一例であって、表面処理工程S6は、ガラス基板表面処理装置1以外の構成の装置を用いて行うことができる。
ガラス基板表面処理装置1は、ガラス基板を搬送方向(具体的には、
図2〜
図4の矢印A1に示す方向)に搬送させながら一方の主表面を粗面化する。ここでは、ガラス基板表面処理装置1は、ガラス基板100の一方の主表面である第1面100a(
図2を参照)を粗面化することによって、第1面100aを所定の表面粗さにしている。ここで、第1面100aとは、表示装置の製造過程において、薄膜であるTFT素子や配線パターンが形成されない面である。
【0041】
<粗面化工程Pr1の装置構成>
ガラス基板表面処理装置1は、
図2〜
図4に示すように、主として、表面処理する粗面化工程(Pr1)では、エッチング液を保持した多孔質材を周表面を含む外周部に有する粗面化ローラーとガラス基板との間に、エッチング液の接液膜層を形成するようにガラス基板の第1面にエッチング液を塗布するエッチング装置と、
予め定められる基準接液膜層と比較できるように、前記接液膜層の形態を映し出すモニタリング手段と、
前記基準接液膜層と前記接液膜層との形態がほぼ同等となるように、エッチング液の塗布量を調整する調整手段と、を備える。
さらに、前記調整手段が、絞りローラーである、ことが好ましい。
さらに、前記多孔質材が、気孔径10μm〜100μm及び気孔率80%以上の連続気孔構造である、ことが好ましい。
【0042】
また、粗面化工程(Pr1)は、ハウジング2に囲まれており、ハウジング内の空間の温度管理を行う温度制御手段をさらに備えてもよい。粗面化工程では、エッチング槽11のエッチング液が気化し、ハウジング内の空気中に滞留するので、適宜、ハウジング内の空気は換気され、排出されたハウジング内の空気中に含まれるエッチング液由来の化学物質を回収する回収機構を備えるのが好ましい。
【0043】
A.実施形態1.エッチング液の塗布量を一定にする装置を含む表面処理装置
本実施形態の表示装置は、エッチング液を保持した多孔質材を周表面を含む外周部に有する粗面化ローラーとガラス基板との間に、エッチング液の接液膜層を形成するようにガラス基板の第1面にエッチング液を塗布するエッチング装置と、
エッチング液を塗布しないガラス基板の面方向から透けて見える、前記接液膜層の大きさが、予め定められる基準接液膜層と比較し、ほぼ一定となることを監視するモニタリング手段とを、少なくとも、備える。
さらに、前記エッチング装置は、前記モニタリング手段で監視される結果に基づいて、粗面化ローラーの塗布量を調整する絞りローラーを備える、のが好ましい。
さらに、前記エッチング装置において、前記粗面化ローラー及び前記絞りローラーは複数備えられ、前記モニタリング手段で測定される結果に基づいて、粗面化ローラー各々の塗布量がほぼ同量となるように、各々の絞りローラーを調整する制御機構を、さらに、備えるのが好ましい。
前記粗面化ローラーは、気孔径10μm〜100μm及び気孔率80%以上の連続気孔構造の多孔質材である、のが好ましい。
【0044】
本実施形態の表示装置1(
図2)におけるエッチング装置について説明する。
【0045】
粗面化工程(Pr1)は、エッチング液を調整し貯留するエッチング液タンク16を、さらに設けてもよい。エッチング液タンク16により、エッチング槽11にエッチング液を供給し循環させる。さらに、粗面化処理におけるエッチングレートを維持する様に、エッチング液タンク16にフッ酸を補充しながらエッチング液を調整して、調整されたエッチング液をエッチング槽11に循環させて使用することができる。エッチング槽11とエッチング液タンクとの間は、エッチング液MSが循環できるように配管15a及び15bが設けられる。
【0046】
エッチング液タンク16には、エッチング液を調整するための(エッチング液の酸成分)を供給する複数のタンクがさらに連結されている。例えば、フッ酸を供給するフッ酸タンクと、リン酸を供給するリン酸タンクとがエッチング液タンク16に連結され、これらのタンクからエッチング液の構成材料(酸成分)が供給されて、エッチング液タンク16にてエッチング液が調整される。エッチング成分を供給する複数のタンクの設置は、構成材料の種類に応じ決定する。例えば、エッチング液がさらに塩酸を含む場合には、エッチング液タンク16に塩酸タンクがさらに連結される。
【0047】
エッチング槽11は、ガラス基板100の表面を処理するための処理流体としてのエッチング液MSを貯留する。本実施形態では、エッチング液MSとしてフッ酸とリン酸を必須に含むもの、あるいは、エッチング液MSがフッ酸及びリン酸にさらに塩酸を含むもの、が使用される(この詳細について、後述する)。エッチング液MSによるエッチングにより、ガラス基板100の第1面100aは、所望の表面粗さ、例えば所望の算術平均粗さRaを有する形状を得ることができる。算術平均粗さRaは、0.3nm以上とすることが好ましく、より好ましくは、算術平均粗さRaは、0.45nm以上である。算術平均粗さRaの上限値は、ガラス基板の帯電を防止する程度の粗さという点から、0.6nm以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.5nm以下である。
【0048】
エッチング槽11は、上部が開口された略直方体形状の容器である。エッチング槽11には、エッチング液MSが略容器いっぱいになるように貯留されている。エッチング槽11は、ガラス基板100の搬送方向に沿って、所定の間隔をもって配置される。
図2の形態では、3つ配置されている。本実施形態の
図2では、エッチング槽11は3つ配置されているが、配置数は、1つでも2つでもよく、4つ以上であってもよい。配置数は、生産数、エッチング液及びエッチングレート、搬送速度、等を踏まえ、適宜設定される。
【0049】
各エッチング槽11では、1つのエッチングローラ12がエッチング液MSに浸漬して配置されている。エッチング液タンク16は、各エッチング槽11が、配管15a及び15bによりエッチング液タンク16に連通される。エッチング液タンク16のエッチング液は、エッチャントMSの必須成分であるフッ酸(HF)及びリン酸(H
3PO
4)、任意の塩酸(HCl)を供給する、フッ酸タンク11b、リン酸タンク11c、及び塩酸タンク11dと流量調整バルブ11e,11f,11gを介して接続される。
【0050】
粗面化ローラ12はエッチング液MSを吸収し(保持し)、図示しない駆動モータによって駆動回転される回転体として機能する。粗面化ローラ12が駆動モータによって回転することで、粗面化ローラ12に接触するガラス基板100は、複数の粗面化ローラ12が配置されている方向(すなわち、搬送方向)に搬送される。すなわち、粗面化ローラ12は、ガラス基板100を搬送する機能も有する。粗面化ローラ12は、ガラス基板100の搬送方向に沿って、所定の間隔をもって複数配置される。複数の粗面化ローラ12は、全て同方向に回転する。
【0051】
粗面化ローラ12は、1つのエッチング槽11に貯留されているエッチング液MSに、一部(具体的には、下部)が浸漬した状態で固定されている。粗面化ローラ12のエッチング液MSに浸漬している部分の垂直方向の長さは、適宜設定される。
【0052】
粗面化ローラ12は、芯部材12aと、芯部材12aを覆うローラ部材12bとを有する。芯部材12aは、SUS等からなる軸芯と、塩化ビニル系の素材からなる円柱状の部材とからなる。芯部材12aは、カーボンシャフトでもよい。芯部材12aは、その直径は適宜設定される。芯部材12aは、粗面化ローラ12の回転軸である。
【0053】
ローラ部材12bは、外径が芯部材12aよりも大きく中心部が開口された円筒状の部材である。ローラ部材12bは、液体を吸収しやすい発泡樹脂、すなわちスポンジから構成される。ローラ部材12bのスポンジは、PO、PVAおよびPU等からなる。ローラ部材12bは、その内面が芯部材12aの外面に当接する。
【0054】
ここでは、エッチングローラ12(ローラ部材12b)は、エッチング液MSに浸漬することによってエッチング液MSを吸収する。そして、エッチング液MSを吸収して保持するエッチングローラ12(ローラ部材12b)に接触するガラス基板100の第1面100aに、ローラ部材12bが吸収したエッチング液MSの一部が供給され付着する。これにより、ガラス基板100と粗面化ローラ12との間に、エッチング液の接液膜層が形成される。
【0055】
ガラス基板100と粗面化ローラ12との間に形成される接液膜層は、ガラス基板の110b側(エッチング液が付着されない側)の面方向から透けて見え、接液膜層の大きさを観測することができる。第1面100aに付着したエッチング液の接液膜層SLの輪郭は、第2面100bの側においてガラス基板100越しに明りょうに特定することができる。
【0056】
モニタリング装置21(
図5を参照)は、エッチング液の接液膜層SLの形態を観測する装置である。エッチング液の接液膜層SLの形態は、例えば、ガラス基板100の第1面100aに付着したエッチング液の接液膜層SLのガラス基板100の搬送方向に沿ったエッチング液の接液膜層SLの長さ(搬送方向の液幅、面積、搬送方向に対し直角方向の長さ)等であり、モニタリング装置21は、これらの形態を映し出してモニタリングする手段であり、さらに計測機能を加えて、形態を観測しながら測定する様に設けてもよい。モニタリング装置21は、必要に応じ、接液膜層SLの画像を記憶させる記憶手段を備えてもよい。
【0057】
モニタリング装置21の設置場所は、モニタリングの画像を表面処理装置外へ出力できるように設置されればよく、設置の場所は特に制限されない。Pr1工程のいずれか適切な所に設置される。モニタリング装置21のカメラ部位が、複数の粗面化ローラ12のうち、搬送方向の中央に位置する粗面化ローラ12の上方に配置されており、エッチング液の接液膜層SLの形態を、ガラス基板100の第2面100bの側から撮影する。なお、このようなモニタリング装置21を特に設けない場合、ハウジング2に備えられる窓枠から、目視でエッチング液の接液膜層SLの形態を観察し、モニタリングしてもよい。
【0058】
このようにしてモニタリングにより得られる接液膜層SLの形態の観測に基づいて、連続処理の過程において、接液膜層SLの大きさが一定になる様に、絞りローラーなどエッチング液の塗布をコントロールする調整手段を用いて、ガラス基板100aに塗布するエッチング液の塗布量を調整することができる。これにより、塗布量を一定にすることができる。
【0059】
例えば、予め、多孔質材が保持するエッチング液の液量を適切に調整した条件下で、目的とする表面粗さRaを達成することができる基準となる接液膜層SLの大きさ範囲を求めておき(基準接液膜層A:大きさ、長さ、搬送方向の液幅など)、モニタリング装置21で処理中の接液膜層SLの形態と比較することができるように設定することができる。
この比較に基づいて、エッチング液の塗布量の調整の程度を決定することができる。基準接液膜層Aと比較して、より的確にエッチング液の塗布量を調整することで、表面粗さの品質も一定の範囲内に維持することができる。
【0060】
さらに、例えば、基準接液膜層Aの大きさを、エッチング液がガラス基板110bに回り込みが生じ難いレベルの塗布量に設定することで、ガラス基板110bへの回り込みの管理(エッチング液の110bへの回り込み抑制)に利用することができる。このような、回り込みを防ぐ塗布量を決定するためには、ガラス基板(板厚、組成)、スポンジの種類(材質、気孔径、弾力性)、搬送速度、およびエッチング液の種類(粘度)について、条件を設定し、基準接液膜層を特定することができる。
【0061】
エッチング液の接液膜層SLの大きさの判定は、適宜行う。例えば、エッチング液の接液膜層SLの液幅が、粗面化ローラ12の長手方向(軸方向)にわたってばらついている場合、エッチング液の接液膜層SLの液幅として、粗面化ローラ12の長手方向の複数箇所の液幅の平均値を用いることができる。エッチング液の接液膜層SLの面積を測定する場合には、モニタリング装置21が撮影した画像を解析して得られる面積を用いることができる。
【0062】
さらに、エッチング装置は、エッチング液の塗布量を制御する制御装置23(
図5を参照)を備えることができる。モニタリング装置21が、測定されたエッチング溶の接液膜層SL(
図5を参照)の形態に関する情報(面積、液幅等)を基に出力信号を生成し、制御装置23に向けて出力する。
【0063】
制御装置23は、モニタリング装置21からの出力信号を受け取って、エッチング液の接液膜層SLの形態に関する情報に基づいて、ガラス基板100に対するエッチング溶液MSの塗布量を調整するため各部の制御を行う。例えば、制御装置23を絞りローラー14と接続させ、エッチング液の接液膜層SLの形態に関する情報に基づいて、絞りローラー14の調節を同期化してもよい。あるいは、制御装置23を、エッチング槽11に対するエッチング液MSの供給、排出をコントロールする部材に接続させ、エッチング液の接液膜層SLの形態に関する情報に基づいて、エッチング槽11における液面高さを調節するなどの制御を行ってもよい。これらの各部の制御は、制御装置23以外の手段によって行われてもよい。
【0064】
絞りローラー14は、粗面化ローラ12に押し付けられてエッチングローラ12が保持するエッチング液MSの量を調整する機能を有する。絞りローラー14は、ローラ部材12bに比べて剛性の高い材料、例えば塩化ビニル系、カーボン等の材料から構成される。絞りローラー14は円柱状の形状を有する丸棒である。なお、絞りローラー14の形状は、丸棒に限られるものではない。
図3に示されるように、絞りローラー14は、粗面化ローラ12の回転軸である芯部材12aよりも、ガラス基板100の搬送方向の上流側に配置されている。
【0065】
絞りローラー14は、エッチングローラ12の回転に追従して回転する。よって、粗面化ローラ12とは逆方向に回転する。ここでは、絞りローラー14を回転させるモータ等を別途用いなくてもすむので、コストを抑制できる。
【0066】
絞りローラー14は、
図4に示されるように、粗面化ローラ12に対する上下位置や左右位置が調整可能なように、支持部材17によって支持されている。すなわち、絞りローラー14は、粗面化ローラ12への接触位置が調整可能である。これにより、絞りローラー14の粗面化ローラ12への接触圧力を調整できる。
【0067】
また、粗面化ローラ12は、ガラス基板100に対する相対位置を調整することができる機構を備えている。すなわち、粗面化ローラ12の回転軸をガラス基板100の側に近づけたり、遠ざけたりすることができる。また、エッチング槽11には、エッチング液MSの液面レベルを調整することができる機構を備えている。これにより、粗面化ローラ12がガラス基板100に付着させるエッチング液MSの量を調整することができる。
【0068】
また、上述のとおり、モニタリング装置21で得られる接液膜層SLの形態に基づいて、絞りローラーを用いてエッチング液の量を調整することができる。制御装置23に接続させて、絞りローラーを動作させてもよい。
【0069】
搬送ローラ18は、回転軸と複数のコロとからなる。コロは、回転軸に固定され、Oリングが取り付けられる円筒状の部材である。図示されない駆動モータによって搬送ローラ18が軸回転すると、搬送ローラ18の上部に接触して支持されているガラス基板100は、粗面化工程Pr1を行うハウジング2内に搬送される。搬送ローラ18は、ガラス基板100の搬送方向に沿って、所定の間隔をもって複数配置される。搬送ローラ18は、全て同方向に回転する。
【0070】
<粗面化プロセス>
ガラス基板の主表面のうち第1面を連続的に粗面化する表面処理工程を含むディスプレイ用ガラス基板の製造方法であって、
表面処理工程において、エッチング液を保持した多孔質材を外周部(周表部を含む)に有する粗面化ローラーの上をガラス基板が搬送して、前記粗面化ローラーと前記ガラス板との間にエッチング液の接液膜層を形成するようにガラス基板にエッチング液を塗布し、
エッチング液が塗布されないガラス基板の面方向から透けて見える前記接液膜層の大きさをモニタリングしながら、前記エッチング液の接液膜層の大きさがほぼ一定となる様に、エッチング液の塗布量を調整し、ガラス基板の主表面のうち第1面を粗面化する。
【0071】
前記複数の粗面化ローラーにおいて、各々の塗布量がほぼ同量となるように調整される、ことが好ましい。
【0072】
前記塗布量の調整が、絞りローラーにより行われる、ことが好ましい。
【0073】
粗面化ローラーが、気孔径10μm〜100μm及び気孔率80%以上の連続気孔構造である、ことが好ましい。
【0074】
表面処理工程後の前記第1面の算術平均粗さRaが0.40nm以上である、ことが好ましい。
【0075】
B.実施形態2.エッチング液の塗布量を一定にする機構を含む表面処理方法
【0076】
水平状態で所定の方向(搬送方向)に搬送されながら端面処理後の洗浄工程S6が行われたガラス基板100が、その状態を維持したまま、搬送ローラ18によって搬送されながら、ガラス基板表面処理装置1のハウジング2内に入る。
【0077】
ハウジング2内に入ったガラス基板100の先端部の下面は粗面化ローラ12に接触し、粗面化ローラ12によって支持される。粗面化ローラ12(ローラ部材12b)は、エッチング液MSに浸漬していることによって、エッチング液MSを吸収し、エッチング液MSを吸収している粗面化ローラ12(ローラ部材12b)の上部は、表面が粗面化される第1面100aが接触して、ガラス基板100は、粗面化ローラ12の回転駆動によって、搬送方向に沿って搬送される。このとき、粗面化ローラ12(ローラ部材12b)はエッチング液MSを吸収しているので、粗面化ローラ12(ローラ部材12b)に接触するガラス基板100の第1面100aには、粗面化ローラ12(ローラ部材12b)を介してエッチング液MSが付着する。こうして、ガラス基板100が粗面化ローラ12によって搬送されながら、第1面100aにエッチング液MSが付着することで、ガラス基板の第1面100aが粗面化処理される。こうして、ガラス基板100が粗面化ローラ12によって搬送されながら、第1面100aにエッチング液MSが付着し、ガラス基板100と粗面化ローラ12との間にエッチング液の接液膜層が形成され、この間に第1面100aが粗面化される。
【0078】
ガラス基板100が搬送されるとき、周表面を含む外周部にエッチング液MSを吸収した多孔質材を有する粗面化ローラ12によって、前記ガラス基板の第1面100aにエッチング液が塗布される。ガラス基板100が搬送され塗布される間、ガラス基板110bの面方向から透けて見えるエッチング液の接液膜層の大きさをモニタリングしながら、接液膜層の大きさがほぼ一定となる様に、エッチング液の塗布量を調整し、ガラス基板の主表面のうち第1面を粗面化する。
【0079】
連続処理の間、エッチング液の接液膜層の大きさをほぼ一定となる様に、エッチング液の塗布量を調整することで、ガラス基板110aの連続的な粗面化処理において、エッチング液の塗布量を一定の範囲内に維持することが可能となる。
【0080】
エッチング液MSの塗布を複数の粗面化ローラー12で行い、各々の粗面化ローラー12の塗布量がほぼ同量となるように、エッチング液MSの塗布量を調整することができる。
【0081】
塗布量の調整は、絞りローラー14を用いてもよい。
【0082】
エッチング液MSが第1面100aに付着してからすすぎ工程Pr2に至るまでの期間における、粗面化ローラー12とガラス基板100との接触時間がエッチング期間となるので、このエッチング期間中に、所望のエッチング量が達成されるように、ガラス基板100を搬送しながら粗面化する粗面化ローラ12の回転速度(搬送速度)を調整することができる。例えば、粗面化ローラーの回転速度を遅くし、粗面化ローラー12の上を搬送するガラス基板100の搬送時間を長くすることで、粗面化ローラー12とガラス基板100との接触時間を長くし、これによりガラス基板100aのエッチングの程度や形状を調整することができる。
【0083】
<すすぎ工程Pr2の装置構成>
すすぎ工程(Pr2)では、複数の搬送ローラ18と、粗面化しないガラス基板の面に蒸留水をあてる蒸留水ノズル25と、粗面化されたガラス基板面を洗浄する洗浄ノズル24と、残存するエッチング液を充分に洗い流すノズル26と、ガラス基板の両面に付着する液体をハウジング内に留める様にガラス基板表面から取り除くアーナイフと、を備える。
【0084】
すすぎ工程(Pr2)は、ハウジング4に囲まれた空間であり、ハウジング内の空間の温度管理は、行ってもよく、行わなくてもよい。粗面化工程(Pr1)と、すすぎ工程(Pr2)とが接するハウウジングの壁の部分には、ガラス基板100が通過可能なスリットが設けられている。
【0085】
洗浄ノズル24は、ガラス基板100の第1面100aに付着したエッチング液MSを洗い流すように、ガラス基板100の搬送経路に沿って設けられ、洗浄水を第1面100aに向けて噴出する。洗浄ノズル24に用いる洗浄水は、かならずしも純水(蒸留水)でなくともよい。洗浄水タンク24aには、一度洗浄に使用した洗浄後の水を貯留し、ガラス基板100の第1面100aを洗浄するために循環させて再利用することができる。
【0086】
蒸留水ノズル25は、ガラス基板100の第1面100aと反対側の主表面を洗浄するために、第1面100aと反対側の主表面からガラス基板100の搬送経路に沿って設けられ、純水を第1面100aと反対側の主表面に向けて噴出する。
【0087】
ノズル26は、ガラス基板100の第1面100aに残存するエッチング液を充分に洗い流すために、洗浄水を第1面100aに向けて噴出する。ノズル26は、ガラス基板100の搬送経路に沿って、ガラス基板100の第1面100a側に設けられている。なお、ノズル26から噴出する洗浄水には、蒸留水ノズル25が噴出するのと同じ純水を用いてもよいし、洗浄ノズル24が噴出するのと同じ洗浄水を用いてもよい。
【0088】
ガラス基板100の第1面aとその反対側の面を洗浄した後、エアーナイフでガラス基板の表面から液体が飛ばされ、次工程の第2洗浄工程を行うために、搬送ローラ18によりハウジング4の外に搬出される。
【0089】
<すすぎ工程のプロセス>
粗面化処理工程(Pr1)の後、ガラス基板100は、粗面化処理中搬送方向に移動するので、第1面100aの一部にエッチング液MSが付着されるとき、ガラス基板100の先端部はハウジング4内の搬送ローラ18に接触する。この搬送ローラ18により、ガラス基板100は、すすぎ工程Pr2に進む。
【0090】
すすぎ工程Pr2では、まず、第1面100aが洗浄ノズル24から噴出する洗浄水で洗浄されエッチング液MSがほぼ洗い流され、その後、第1面100aを、さらにノズル26から噴出する水(再利用水など)で洗浄する。このとき、ガラス基板100の第1面100aと反対側の主表面は、蒸留水ノズル25から噴出する純水で洗浄される。さらにこの後、第1面100a、及び第1面100aと反対側の主表面に向けてエアーナイフでエアーを噴きつけて液体を飛ばす。こうして、すすぎ工程Pr2が終了し、第2洗浄工程S8を行うために、搬送ローラ18により搬出される。
【0091】
(2−2)エッチング液
本発明におけるエッチング液MSは、純水に少なくともフッ酸HF及びリン酸H
3PO
4を含む水溶液である(以降で説明する濃度も、いずれも質量%を表す。)。
エッチング液MSにおけるリン酸H
3PO
4の濃度は、0.3%(質量%)〜10%である。リン酸H
3PO
4の濃度が10%を超えると排液回収の点から好ましくない。エッチング液MSにおけるリン酸H
3PO
4の濃度は、エッチングレート低下抑制効果の観点から、好ましくは0.3%〜8%、より好ましくは0.5%〜8%、更により好ましくは1%〜6%である。エッチング液MSがフッ酸及びリン酸H
3PO
41%以上含有した場合、フッ酸を同じ濃度とした条件下、フッ酸、フッ酸と塩酸(リン酸と同じ濃度)の混酸、フッ酸と硫酸(リン酸と同じ濃度)に比べて、同じ温度条件下で、エッチングレートの低下を大きく抑制することができ、すなわち、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4の混酸は、エッチングレート低下の抑制効果が高い。また、エッチング液MSにおいて、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4を含む混酸におけるフッ酸の濃度は、好ましくは0.3%〜10%であり、0.3%〜8%が好ましく、0.3%〜6%がより好ましく、0.3%〜5%が更により好ましい。フッ酸の濃度が5%を超えると、排液回収の問題など、環境負荷が大きくなるため、5%以下が好ましい。本実施形態においては、エッチング液MSのフッ酸濃度を低く抑えることができるので、環境負荷は小さく、また、フッ酸の廃液処理コストも抑制することができる。
【0092】
フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4を含むエッチング液MSが、エッチングレート低下抑制効果に優れていることとして、例えば、5%のフッ酸HFからなるエッチング液MSを14時間繰り返し使用した後のエッチングレートの低下は45%であり、5%のフッ酸HF及び5%の塩酸HClの混酸のエッチング液MSを14時間繰り返し使用した後のエッチングレートの低下は44%であるのに対して、5%のフッ酸HF及び5%のリン酸H
3PO
4の混酸のエッチング液MSを14時間繰り返し使用後のエッチングレートの低下は15%である。このように、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4を含むエッチング液MSにおけるガラス基板100のエッチングレートの低下は著しく小さい。なお、これらのエッチングレートはすべて同じ温度条件下で測定している。
【0093】
また、エッチング液MSがフッ酸及びリン酸H
3PO
41%以上を含有した場合、フッ酸を同じ濃度とした条件下、フッ酸、フッ酸と硫酸(リン酸と同じ濃度)に比べて、スラッジの発生量を低く抑えることができ、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4の混酸は、スラッジ発生量の抑制効果をも備える。
フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4を含むエッチング液MSが、スラッジ発生量の抑制効果に優れていることとして、例えば、スラッジ発生量が、5%のフッ酸HFからなるエッチング液MSの場合に比べて、5%のフッ酸HF及び5%のリン酸H
3PO
4の混酸のエッチング液MSは、20〜30%少ない。このように、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4の混酸は、スラッジ量の抑制効果においても優れる。
【0094】
フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4を含むエッチング液MSについて、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4の濃度比率(フッ酸:リン酸)としては、およそ1:1〜30:1であり、好ましくは1:1〜10:1である。本実施形態のエッチング液MSは、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4を必須成分として含む混酸であり、フッ酸及びリン酸を必須成分とすることでエッチングレートの低下抑制の効果とともに、粗面化のエッチング処理で発生するスラッジ量の抑制効果という二つ同時の効果を兼ね備える。
【0095】
従来よりエッチング液として知られているフッ化ナトリウムとリン酸を含んだ溶液の場合、エッチングレートそのものが低いため、連続的な粗面化処理におけるエッチング液としては適さない。
【0096】
エッチング液MSは、上記の組合せ(フッ酸及びリン酸による2種混酸、あるいはフッ酸及、リン酸及び塩酸による3種の混酸)に、必要に応じ、硫酸H
2SO
4、硝酸HNO
3などを組み合わせてもよい。
【0097】
本実施形態では、エッチング液MSに、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4に加え、塩酸HClをさらに含んでよい。フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4に塩酸HClを組み合わせた3種の混酸の場合、スラッジの発生をさらに抑えることができる。したがって、本実施形態のエッチング液MSでは、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4とともに、塩酸HClをさらに含むことが好ましく、この場合、スラッジ量の抑制効果をさらに高めることができる。
エッチング液MSにおいて、フッ酸HF及びリン酸H
3PO
4に塩酸HClを組み合わせる場合、塩酸HClの濃度は0.3質量%〜15質量%、好ましくは塩酸HCl0.3質量%〜10質量%である。この場合、エッチング液MSにおいて、フッ酸HFは0.3質量%〜10質量%、リン酸H
3PO
4は0.3%〜10質量%、塩酸HClは0.3質量%〜15質量%である。エッチング液MSに塩酸を使用する場合のフッ酸HFと塩酸HClの濃度比率(フッ酸:塩酸)としては、およそ1:10〜5:1である。
【0098】
(粗面化処理の温度)
エッチングレートはエッチング液MSの温度により異なる。エッチング液MSの温度は、所定のエッチングレートを得る様に適宜決定される。粗面化処理を行っている間は、エッチングレートが一定になる様にエッチング液MSの温度を一定に保つのが好ましい。本実施形態では、エッチングMSの温度は20℃〜30℃の間でコントロールされる。エッチング液が気化すると処理環境が悪化するため、エッチング液MSの温度は40℃を超えないのが好ましい。また、エッチングMSの温度が20℃を下回ると所定のエッチングレートが得られ難くなる。
【0099】
(粗面化の処理時間)
粗面化の処理時間は、粗面化で得る表面粗さ(算術平均粗さRa)を決定し、前工程のタクトタイムを踏まえて、粗面化処理の搬送速度、粗面化処理で使用するエッチングローラー本数、粗面化処理に使用するエッチング液MSの組成、エッチングレートととともに、設定される。
粗面化で得る表面粗さは、0.3nm以上とすることが好ましく、より好ましくは、算術平均粗さRaは、0.40nm以上である。算術平均粗さRaの上限値は、0.60nm以下とすることが好ましく、より好ましくは、0.50nm以下である。
【0100】
(2−3)ガラス基板の特徴
<ガラス組成>
本実施形態が適用するガラス組成として、例えば、次が挙げられる(質量%表示)。
SiO
2:50〜70%(好ましくは、57〜64%)、Al
2O
3:5〜25%(好ましくは、12〜18%)、B
2O
3:0〜15%(好ましくは、6〜13%)を含み、さらに、次に示す組成を任意に含んでもよい。任意で含む成分として、MgO:0〜10%(好ましくは、0.5〜4%)、CaO:0〜20%(好ましくは、3〜7%)、SrO:0〜20%(好ましくは、0.5〜8%、より好ましくは3〜7%)、BaO:0〜10%(好ましくは、0〜3%、より好ましくは0〜1%)、ZrO
2:0〜10%(好ましくは、0〜4%,より好ましくは0〜1%)が挙げられる。さらに、R’
2O:0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
或いは、SiO
2:50〜70%(好ましくは、55〜65%)、B
2O
3:0〜10%(好ましくは、0〜5%、1.3〜5%)、Al
2O
3:10〜25%(好ましくは、16〜22%)、MgO:0〜10%(好ましくは、0.5〜4%)、CaO:0〜20%(好ましくは、2〜10%、2〜6%)、SrO:0〜20%(好ましくは、0〜4%、0.4〜3%)、BaO:0〜15%(好ましくは、4〜11%)、RO:5〜20%(好ましくは、8〜20%、14〜19%),を含有することが好ましい(ただし、RはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種である)。さらに、R’
2Oが0.10%を超え2.0%以下(ただし、R’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種である)を含むことがより好ましい。
<ヤング率>
本実施形態が適用されるガラス板のヤング率として、例えば、72(Gpa)以上が好ましく、75(Gpa)以上がより好ましく、77(Gpa)以上がより更に好ましい。
<歪点>
本実施形態が適用されるガラス基板の歪率として、例えば、650℃以上が好ましく、680℃以上がより好ましく、700℃以上、720℃以上が更により好ましい。
【0101】
以上のように、本発明の表面処理方法および表面処理装置によれば、1700〜1900枚(24時間連続処理)レベルのガラス基板を連続して表面処理を実施した場合においても、ガラス基板の第1面におけるエッチングの塗布量をほぼ一定に制御し、同時に、ガラス基板の第2面へのエッチング液の回り込みを防ぐことのできる塗布量に管理することで、品質の優れたガラス基板を、高効率レベルで生産することが達成できる。これにより、高精細ディスプレイに有用なガラス基板を、経済的に優れた方法で提供することができる。
【0102】
以上、本発明のガラス基板製造装置、およびガラス基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。