(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2の動物忌避装置の場合、例えば長期間使用してエアゾール容器が空になるとエアゾール容器の交換のために人間が動物忌避装置に接近する。このとき、特許文献1、2では、動物が所定距離まで接近したか否かを赤外線センサーによって検知するようにしているので、人間が動物忌避装置に接近した瞬間にエアゾール容器内の薬剤が噴射されてしまう。また、例えば人間が動物忌避装置の前を横切ったり、周囲を通らなければならない場合にも、人間が動物忌避装置に接近すればエアゾール容器内の薬剤が噴射されてしまう。このような無用な噴射は、エアゾール容器内の薬剤を無駄に消費することになるとともに、人間を驚かせてしまうというという問題がある。
【0006】
そこで、人間が動物忌避装置に接近した時のように薬剤の噴射が不要な場合には、例えば人間が手を叩く等の噴射禁止動作を行い、この噴射禁止動作が行われたことを音として動物忌避装置が検知して以後の薬剤の噴射を禁止することが考えられる。
【0007】
しかしながら、動物忌避装置は一般的に屋外で使用されるものなので、例えば雨が降った場合にはその雨音を、人間による噴射禁止動作による音であると誤検知してしまう恐れがある。誤検知してしまうと、以後、動物が接近しても薬剤が噴射されないので、忌避効果が得られなくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、人間が動物忌避装置に故意に接近するような場合に容器内の噴射物を無駄に消費しないようにするとともに人間を驚かせてしまうのを防止しながら、忌避効果が必要なときには得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、人間の噴射禁止動作によって発生する音に基づいて噴射禁止動作を検知することを前提とし、噴射禁止動作を検知したときには、人間が接近しても噴射を禁止する一方、音が所定時間内に複数回検知されたときには噴射禁止制御をキャンセルするようにした。
【0010】
第1の発明は、
噴射物を収容した容器と、
上記容器から噴射物を噴射させる噴射状態と、噴射物を噴射させない非噴射状態とに切り替えるための切替装置と、
動物が所定距離内に存在するか否かを検知するセンサーと、
上記センサーにより動物が所定距離内に存在することが検知された場合には上記切替装置を噴射状態にする一方、動物が所定距離内に存在しない場合には上記切替装置を非噴射状態にする制御装置とを備えた動物忌避装置において、
環境音と、人間によってなされる噴射禁止動作
によって発生する音である人間が手を叩く音、人間が発する声及び口笛とを検知する動作検知手段と
、
上記動作検知手段が音を検知したことを使用者に報知するための報知手段とを備え、
上記制御装置は、
上記動作検知手段が音を検知したときに、該動作検知手段が音を検知したことを上記報知手段によって報知させるように構成されるとともに、上記動作検知手段によって
検知された音が所定時間内に繰り返し発生しているか否か判定し、所定時間内に繰り返し発生していないと判定したときには、動物が所定距離内に存在しても上記切替装置を非噴射状態にして噴射を禁止する噴射禁止制御を行
うように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、例えば容器の交換等のために人間が動物忌避装置に近づこうとする前に、人間が噴射禁止動作をして何らかの音が発生すると、その音に基づいて動作検知手段によって噴射禁止動作が検知される。これにより、噴射禁止制御が行われるので、切替装置が非噴射状態にされて噴射物の噴射が禁止される。従って、容器内の噴射物が無駄に消費されなくなるとともに、人間を驚かせてしまうのが防止される。
【0012】
一方、例えば屋外の雨音のように音が連続的に繰り返し発生している状況では、動作検知手段が所定時間内に複数回の音を検知することになる。この場合には、噴射禁止制御がキャンセルされるので、動物が動物忌避装置に接近すると切替装置が噴射状態になり、容器の噴射物が噴射され、忌避効果が得られる。
【0013】
また、人間が手を叩くことによって噴射物の噴射が禁止されるので動物忌避装置を簡単に使用することが可能になり、この場合に、噴射禁止動作の誤検知が有効に防止される。
【0014】
また、例えば使用者が噴射禁止動作を行った場合に、その音が小さくて動作検知手段が音を検知しなかったときには、報知手段が使用者に対して報知しないので、噴射禁止制御が行われないことを使用者が把握することが可能になる。
【0015】
第
2の発明は、第
1の発明において、
上記制御装置は、上記動作検知手段によって噴射禁止動作を検知した後、所定時間が経過すると上記噴射禁止制御を終了するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、例えば動物忌避装置の近くで何らかの作業を行うために動物忌避装置に接近する際に、事前に噴射禁止動作を行っておけばその作業中は噴射を禁止することが可能になるので、利便性が高まる。また、所定時間が経過すれば噴射禁止制御が終了するので、噴射禁止制御のまま長時間経過してしまうことはなく、動物忌避効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、人間の噴射禁止動作によって発生する音に基づいて噴射禁止動作を検知し、その噴射禁止動作を検知したときには、動物が接近しても噴射を禁止する一方、音が所定時間内に2以上の所定回数検知されたときには、噴射禁止制御をキャンセルするようにした。これにより、人間が動物忌避装置に故意に接近するような場合に容器内の噴射物を無駄に消費しないようにするとともに人間を驚かせてしまうのを防止しながら、忌避効果が必要なときには得ることができる。
【0018】
また、人間が手を叩くことによって発生する音に基づいて噴射禁止動作を検知するようにしたので、簡単に使用できるようにしながら、噴射禁止動作の誤検知を有効に防止できる。
【0019】
また、動作検知手段が音を検知したことを報知手段によって報知させるようにしたので、使用者の噴射禁止動作による音が小さくて検知できなかった場合に、噴射禁止制御が行われないことを使用者が把握できる。
【0020】
第
2の発明によれば、動作検知手段によって噴射禁止動作を検知した後、所定時間が経過すると噴射禁止制御を終了するので、利便性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る動物忌避装置1を示すものである。この動物忌避装置1は、屋外の地面に置いて使用されるものであり、例えば猫や犬等の動物が一定の範囲に近づかないようにするためのものである。
【0024】
図2及び
図3にも示すように、動物忌避装置1は、エアゾール容器10と、容器カバー15と、脚部材20と、噴射部30とを備えている。エアゾール容器10は、例えばアルミニウム合金製の耐圧容器からなるものを用いることができる。アルミニウム合金製とすることで、屋外でエアゾール容器10を露出状態で使用する際に雨等による錆の発生はなく、耐候性が良好になる。尚、エアゾール容器10としては、アルミニウム合金製以外にも、ブリキ缶を使用してもよいが、その場合には防錆処理を施すのが好ましい。
【0025】
エアゾール容器10は、上下方向に延びる円筒形状とされており、例えば高さは10cm以上に設定されている。
図5に示すように、エアゾール容器10の上部には、弁機構11が設けられている。弁機構11は、従来周知のものなので詳細な説明は省略するが、上下方向に進退動するステム11aとステム11aを進出方向(上方)に付勢するバネ(図示せず)とを有しており、ステム11aが進出位置にあるときには、弁機構11が閉状態となる一方、ステム11aがバネの付勢力に抗して後退位置にあるときには、弁機構11が開状態となる。
【0026】
また、エアゾール容器10は金属材をかしめて接合することによって形成されており、上部に形成されるかしめ部は、エアゾール容器10の径方向に突出して周方向に環状に延びる突条部12となっている。
【0027】
上記エアゾール容器10には、動物忌避剤として、例えば噴射剤が収容されている。その他、芳香剤、エタノール等のうち、少なくとも1種以上が収容されていてもよい。噴射剤は、例えばジメチルエーテルやLPガス等を使用することができ、噴射することで動物に聞こえる音が発生するとともに、動物が感じることのできる風や雰囲気圧力の変化を生じさせることができ、これによって動物が驚いたり、嫌がったりして忌避効果が得られる。芳香剤の場合は、動物が嫌いな香りを放つものが好ましい。また、エタノールを噴射することで、動物に付着した際に気化熱による冷却効果で動物に違和感を与えることができ、このことで忌避効果が得られる場合がある。
【0028】
容器カバー15は、エアゾール容器10の外周面を覆う筒状に形成されている。エアゾール容器10の下部は脚部材20の上部に収容され、また、
図5に示すようにエアゾール容器10の上部は、後述する接続部材25に収容されている。容器カバー15は、エアゾール容器10の外周面において脚部材20に収容された部位及び接続部材25に収容された部位以外の部位を覆うことができる長さとされている。容器カバー15の色は、太陽光の吸収率が低い白色や薄い色が好ましい。これにより、晴天下でのエアゾール容器10の温度上昇を抑制することが可能になる。
【0029】
また、
図5に示すように、エアゾール容器10における噴出物の噴出側(上側)には、噴射部(本体部)30の一部を構成している本体ケース50に対して着脱可能に接続するための接続部材(着脱部材)25が固定されている。本体ケース50は、エアゾール容器10のステム11aを覆うキャップとなるものである。接続部材25は、エアゾール容器10から取り外す際にはドライバー等の工具が必要で簡単には取り外せないようになっている一方、噴射部30に対しては使用者が工具を使用することなく手で簡単に取り外すことができるようになっている。つまり、エアゾール容器10から接続部材25を取り外す際に要する取り外し力は、接続部材25を本体ケース50から取り外す際に要する取り外し力よりも大きく設定されている。取り外し力は、接続部材25や本体ケース50の形状等によって任意に設定できる。
【0030】
そして、エアゾール容器10に接続部材25を取り付けた状態で、この形状の接続部材25のみが噴射部30の本体ケース50に着脱できるようにしている。このため、例えば接続部材25が取り付けられていないエアゾール容器10や、別構造、別形状の接続部材が取り付けられているエアゾール容器10を噴射部30の本体ケース50に取り付けることはできないので、使用目的の異なるエアゾール容器や異なる忌避剤が収容されたエアゾール容器が誤って噴射部30の本体ケース50に取り付けられることはなく、使用時の安全性を高めることができる。
【0031】
図1等に示す脚部材20は、例えば樹脂成形品とすることができる。脚部材20は、エアゾール容器10の下部を挿入することができる有底円筒状の挿入部22と、径方向外方へ突出する4つの脚23,23,…とを備えている。尚、脚23の数は4つに限られるものではなく、任意の数に設定できる。挿入部22の周壁部は中心線が上下に延びるように形成されており、下端部には図示しない底壁部が設けられている。また、4つの脚23,23,…は、挿入部22の周方向に略等間隔に配置されている。各脚23は、平面視でエアゾール容器10から外方へ突出するように形成されており、これにより、地面等に置いた状態で動物忌避装置1が転倒しにくくなっている。また、各脚23は、挿入部22の底壁部よりも下方へ延びており、地面等に置いた状態でエアゾール容器10を地面から上方へ離間させることができるようになっている。
【0032】
図5に示すように、噴射部30は、ソレノイドバルブ(切替装置)31と、ノズル32と、焦電型赤外線センサー33と、制御装置34と、電池35と、これらを収容する本体ケース50とを有している。本体ケース50は、エアゾール容器10を収容するものではないので、従来例の本体ケースに比べて小型のケースとなっている。
【0033】
本体ケース50は、例えば樹脂材で構成された複数の部材を組み合わせて構成されている。
【0034】
ソレノイドバルブ31は、エアゾール容器10のステム11aに接続される通路部材40と、弁体41と、可動子42と、可動子42を動かすためのコイル43と、可動子42を付勢するバネ44と、可動子42、コイル43及びバネ44を収容するソレノイドケース45とを備えている。
【0035】
通路部材40は、本体ケース50の中央部近傍に固定されており、本体ケース50に対して動かないようになっている。通路部材40には、下面に開口して上方へ延びる上流側通路40aと、ノズル32に連通する下流側通路40bとが形成されている。上流側通路40a及び下流側通路40bは、動物忌避剤をエアゾール容器10から噴射させるための噴射通路である。
【0036】
通路部材40の上流側通路40aの上流端(下端部)には、エアゾール容器10を噴射部30に取り付けた状態でステム11aが挿入されるようになっている。この状態で、ステム11aは通路部材40の上流側通路40aの内面によって後退方向に押されてエアゾール容器10の弁機構11が開状態となるようになっている。また、ステム11aの内部と通路部材40の上流側通路40aとは気密に接続される。
【0037】
弁体41は、通路部材40の内部に配設されており、上流側通路40aの下流端を閉じるためのものであり、例えばゴム等の弾性材で構成することができる。
【0038】
ソレノイドケース45は通路部材40の上部に気密状に固定されている。このソレノイドケース45に収容される可動子42は、磁性体からなるものであり、上下方向に延びる柱状をなしている。可動子42の下端部には上記弁体41が固定されている。可動子42は、ソレノイドケース45内において上下動可能に配設されている。
【0039】
コイル43は、可動子42の外周面を囲む筒状をなしている。このコイル43の内部において可動子42が上下動するようになっている。コイル43は、ソレノイドケース45の内面に固定されている。コイル43には、制御装置34から電圧が印加されるようになっている。
【0040】
バネ44は、コイル43の内部において可動子42の上方に配設されている。バネ44は、可動子42を下方へ付勢することにより、弁体41を通路部材40の上流側通路40aの下流端に押し付けて該下流端を閉状態にする荷重を加えるためのものである。
【0041】
コイル43に制御装置34から電圧が印加されない状態では、
図5に示すように、可動子42がバネ44の付勢力によって、弁体41を通路部材40の上流側通路40aの下流端に押し付けて該下流端を閉状態にする。これが非噴射状態である。このとき、エアゾール容器10の動物忌避剤が通路部材40の下流側通路40bに流入しないように、バネ44による付勢力が設定されている。
【0042】
一方、コイル43に制御装置34から電圧が印加されると、可動子42には上向きの磁力が働くようになっている。これにより、可動子42はバネ44の付勢力に抗して上昇して弁体41を通路部材40の上流側通路40aの下流端から離し、該下流端を開状態にする。これが噴射状態である。つまり、コイル43に印加する電圧は、バネ44による付勢力に抗して可動子42を上昇させることができるように設定されている。
【0043】
ノズル32は、略水平方向に延びている。ノズル32の上流端は通路部材40に固定されて下流側通路40bに連通している。ノズル32の下流端開口(噴射口)32aは本体ケース50の前面部の下部において外部に臨むように固定されている。本体ケース50の前面部とは、ノズル32の下流端開口32aが位置する部分である。ノズル32の形状としては、図示したものに限られず、短いものであってもよいし、長いものであってもよい。動物忌避剤の噴霧範囲は、ノズル32の構造によって設定することができ、上下方向よりも水平方向に広い方が好ましい。
【0044】
本体ケース50の内部における前面側には、ノズル32よりも上方に回路基板46が設けられている。回路基板46は上下方向に延びており、上部には電源のON(入)、OFF(切)を切り替えるための電源スイッチ46aが設けられている。回路基板46の電源スイッチ46aの下方には、LEDランプ46bが設けられている。さらに、回路基板46のLEDランプ46bの下方には、制御装置34が設けられ、この制御装置34の下方には、赤外線センサー33が設けられている。赤外線センサー33の地面からの高さは、平均的な猫の体高と同程度になるように設定されている。これにより、赤外線センサー33による猫の検知精度が向上する。
【0045】
本体ケース50の前面部の上部には、電源スイッチ46aを操作するためのメンブレンシートで構成された操作ボタン50aが設けられている。操作ボタン50aは、LEDランプ46bの光を透過するように構成されている。
【0046】
LEDランプ46bは、制御装置34の作動状態を表示する表示灯である。LEDランプ46bと、ノズル32の下流端開口32aとは、本体ケース50の前面部、即ち、エアゾール容器10の周方向について同一位置に配置されている。LEDランプ46bは、後述するが、音を検知したことを使用者に報知するための報知手段であるとともに、噴射禁止制御を行っていることを使用者に報知するためのものである。
【0047】
赤外線センサー33は、従来周知のものであるので、詳細な説明は省略するが、赤外線を発するもの(動物)が所定距離内に存在するか否かを検知することができるセンサーである。赤外線センサー33は、本体ケース50内においてエアゾール容器10の真上にくるように配置されている。赤外線センサー33による動物の検知範囲は、例えば赤外線センサー33から2m以上5m以下の範囲に設定することができるが、これに限られるものではない。赤外線センサー33の性能によって検知対象動物の大きさは異なるが、この実施形態では、例えば猫や小型の犬を検知できる性能を有している。
【0048】
赤外線センサー33は、本体ケース50に設けられた赤外線透過性を有するカバー50bにより覆われている。赤外線センサー33の検知範囲は、赤外線センサー33の中心から上下方向、左右方向に広がっている。この実施形態では、地面を歩行する動物を忌避対象動物としているので、赤外線センサー33の検知範囲のうち、上方へ広がる部分をカットしている。すなわち、本体ケース50における赤外線センサー33の配設部位には、正面視で、赤外線センサー33の上側を覆うように下方へ延びる検知範囲設定部としての遮断部50cが設けられている。これにより、例えば鳥等が動物忌避装置1の近傍を飛んでいても、それを忌避対象動物として検知することはない。また、例えば熱を持った物(日光下の洗濯物等)が赤外線センサー33の上方で動いた場合にも、それを忌避対象動物として検知することはないので、誤検知を防止できる。
【0049】
また、電源スイッチ46aを赤外線センサー33の上方に設けているので、電源スイッチ46aを操作する際に赤外線センサー33が人間の手を忌避対象動物として検知してしまうのを抑制することができる。
【0050】
電池35は、本体ケース50の内部において背面側に収容されている。この電池35は、エアゾール容器10の真上に配置されている。電池35は、回路基板46に接続されている。電池35は、本体ケース50に設けられた蓋50eを開閉することによって交換できるようになっている。
【0051】
また、本体ケース50には、ブザー46e(
図6にのみ示す)が配設されている。ブザー46eは、従来が周知の電子音を発する電子ブザーを使用することができるが、これ以外にもスピーカーを使用してもよい。ブザー46eは、後述する噴射禁止制御を行っていることを報知するためのものである。
【0052】
さらに、本体ケース50には、音センサー46f(
図6にのみ示す)が配設されている。音センサー46fは、音圧を検知するセンサーで構成することができ、少なくとも、例えば人間が動物忌避装置1から5m程度離れたところで手を叩いた音(噴射禁止動作によって発生する音)を検知することができる程度の感度を有している。このときの人間と動物忌避装置1との離間距離は、赤外線センサー33の検知範囲外となるように長い距離に設定されている。音センサー46fが検知する所定音は、人間が手を叩く音以外にも、例えば人間が発する声や、口笛等を検知することもでき、人間が故意に発する音を検知することができるように構成されている。また、音センサー46fは、上記所定音以外にも、雨音、雷の音、自動車及び二輪車のエンジン音等の様々な環境音も検知するものである。
【0053】
音センサー46fが所定以上の音圧を検知した場合には、信号が制御装置34へ出力される。上記した手を叩くこと、声を発すること、口笛を吹くことは、詳細は後述するが、人間によってなされる噴射禁止動作の一例である。音センサー46fは人間によってなされる噴射禁止動作を音に基づいて検知する動作検知手段であり、例えばマイク等であってもよい。
【0054】
制御装置34は、周知のマイクロコンピュータ等で構成されており、赤外線センサー33及び音センサー46fからの入力信号及び電源スイッチ46aの操作状態を検出して、ソレノイドバルブ31、LEDランプ46b及びブザー46eを制御するように構成されている。制御装置34は、電源スイッチ46aの操作状態に基づいて電源がONにされたと判定すると、赤外線センサー33に電力供給を開始する。
【0055】
制御装置34による制御内容について
図7に示すフローチャートに従って説明する。この制御は、電源スイッチ46aがONにされるとスタートする。電源スイッチ46aがONにされた後、ステップS1に進み、対象動物が検出されたか否かを判定する。電源がONの状態で、赤外線センサー33の検知範囲に動物が入ってくると、制御装置34は、赤外線センサー33により動物が所定距離内に存在することが検知されたと判定してステップS2に進む。ステップS2では、ソレノイドバルブ31のコイル43に電圧を印加してソレノイドバルブ31を所定時間(T1)だけ開放して噴射状態にする。所定時間(T1)は、例えば0.5秒以上2秒以下に設定することができ、この実施形態では0.8秒に設定されている。所定時間(T1)は、上記範囲に限られるものではない。また、ソレノイドバルブ31を複数回開閉してもよい。
【0056】
ソレノイドバルブ31を噴射状態にすると、エアゾール容器10内の動物忌避剤がステム11aから噴射部30の通路部材40の上流側通路40aを経て下流側通路40bに流入する。下流側通路40bに流入した動物忌避剤は、ノズル32に流入し、下流端開口32aから噴射される。このときの音や風等によって動物が忌避行動を示すので、忌避効果が得られる。
【0057】
動物忌避剤の噴射範囲は、ノズル32の構造やエアゾール容器10に収容する噴射剤等の成分によって変更することができる。この実施形態では、赤外線センサー33による動物の検知範囲と略等しい範囲に動物忌避剤を噴射するようにしている。ステップS2を経るとリターンしてステップS1の判定が行われる。
【0058】
一方、ステップS1において、赤外線センサー33によって動物が検知されない場合はNOと判定、即ち、制御装置34は所定距離内に動物が存在しないと判定し、この場合にはソレノイドバルブ31のコイル43に電圧を印加せずに、ソレノイドバルブ31を非噴射状態のままにしてステップS3に進む。
【0059】
ステップS3では、人間が噴射禁止動作によって発生した音(所定音)が音センサー46fによって検知されたか否かを判定する。ステップS3においてNOと判定されて音が検知されない場合には、ステップS1に進む。
【0060】
一方、ステップS3においてYESと判定されて音が音センサー46fによって検知された場合には、ステップS4に進む。ステップS4では、LEDランプ46bを点灯させる。LEDランプ46bの光は操作ボタン50aを透過するので、動物忌避装置1に電源が入っているか否かを離れた所から把握できる。また、LEDランプ46bと噴射口32aとが本体ケース50の前面部に位置しているので、LEDランプ46bの光によって噴射口32aのおおよその位置を把握することもできる。同様に赤外線センサー33の位置も把握できる。また、音センサー46fによって音を検知したことを使用者に報知することができる。言い換えると、例えば使用者が噴射禁止動作を行った場合に、その音が小さくて音センサー46fが検知しなかったときには、LEDランプ46bが使用者に対して何も報知しないので、後述する噴射禁止制御が行われないことを使用者が事前に把握することが可能になる。
【0061】
ステップS4に続くステップS5では、上記ステップS3で音センサー46fが音を検知した時から1秒間以内に再度音を検知した否かを判定する。この1秒間という時間は、例えば0.5秒間〜3秒間の間の任意の時間にすることもできる。
【0062】
ステップS5でNOと判定されて再度音を検知しなかった場合には、使用者による噴射禁止動作であると判断することができるので、ステップS6に進み、LEDランプ46bをONのまま、ブザー46eもONにする。ブザー46eから発せられる音は、例えば間欠的に鳴る音が好ましい。これと同時にステップS6では赤外線センサー33をOFFにする。これにより、人間が動物忌避装置1に接近してもソレノイドバルブ31が噴射状態にはならないのでエアゾール容器10内の噴射物が噴射されることはない。
【0063】
つまり、電源をONにしている状態で動物忌避装置1に接近しなければならなくなった場合に、接近しようとする人間が事前に手を叩く等によって所定音を発すれば、それを音センサー46fが検知し、制御装置34は、動物が所定距離内に存在しても切替装置31を非噴射状態にして噴射を禁止する噴射禁止制御を行う。そして、噴射禁止制御を行っていることが、LEDランプ46b及びブザー46eによって周囲に報知される。
【0064】
したがって、人間に対して噴射物が噴射されてしまうのを抑制することが可能になり、噴射物が無駄に消費されなくなるとともに、人間を驚かせてしまうことがなくなる。この噴射禁止制御は、特に電源をOFFにしようとして動物忌避装置1に接近する際や、エアゾール容器10を交換する際、動物忌避装置1の周囲を通る際にも有効である。
【0065】
ステップS6に続くステップS8では、所定時間(T2)が経過したか否かを判定する。所定時間(T2)は、この実施形態では3分間としているが、これに限らず、例えば30秒以上5分以下の時間に設定することができる。ステップS8では、所定時間(T2)が経過するまで待ち、その間は、赤外線センサー33がOFFのままである。また、ブザー46eから音が発せられているとともに、LEDランプ46bが点灯しているので、噴射禁止制御中であることが周囲の人に分かる。
【0066】
所定時間(T2)が経過するとステップS8においてYESと判定されてステップS9に進む。ステップS9では、LEDランプ46bをOFFにするとともに、ブザー46eもOFFにする。そして、赤外線センサー33をONにする。したがって、噴射禁止動作を検知した後、所定時間(T2)が経過すると噴射禁止制御を終了することができる。その後、リターンしてステップS1に進む。
【0067】
一方、ステップS5において、上記ステップS3で音センサー46fが音を検知した時から1秒以内に再度音を検知した場合について説明する。上記ステップS3で音センサー46fが音を検知した時から1秒以内に再度音を検知したということは、例えば、雨音が発生している場合のように、音が連続的に繰り返し発生している状況である。この場合、使用者は噴射禁止動作を行っていないので噴射禁止制御を行う必要はなく、この実施形態ではステップS5でYESと判定されてステップS7に進み、LEDランプ46bをOFFにした後、ステップS1に戻るようにしている。そして、ステップS1では上述の判定を行う。
【0068】
雨音の場合は、ステップS5、ステップS7、ステップS1を経て戻ったステップS3においても音を検知するので、ステップS4、ステップS5、ステップS7に再び進むことになる。つまり、音が連続的に繰り返し発生している状況では、所定時間内に複数回の音を検知することになり、この場合には、ステップS6に進まないので上述した噴射禁止制御がキャンセルされることになり、動物が動物忌避装置1に接近すると噴射物が噴射され、忌避効果が得られる。
【0069】
尚、連続的に繰り返し発生する音としては、例えば雷の音、自動車や二輪車のエンジン音、犬の鳴き声等があり、このような音が発生した場合には、噴射禁止制御をキャンセルすることができる。
【0070】
以上説明したように、この実施形態に係る動物忌避装置1によれば、噴射状態を切り替えるソレノイドバルブ31、赤外線センサー33及び制御装置34を、所定高さを有するエアゾール容器10の上側に取り付けたので、従来例のようなエアゾール容器を収容する大型のケースは不要になって動物忌避装置1を小型化でき、設置場所の自由度を向上させることができる。また、赤外線センサー33をエアゾール容器10の上側に取り付けることで、ある程度の体高を持った猫や犬等の動物の検知精度を向上させることができ、忌避効果を十分に得ることができる。
【0071】
また、使用者の噴射禁止動作によって発生する音に基づいて噴射禁止動作を検知し、その噴射禁止動作を検知したときには、動物が接近しても噴射を禁止する一方、音が所定時間内に複数回検知されたときには、噴射禁止制御をキャンセルするようにした。これにより、使用者が動物忌避装置1に故意に接近するような場合にエアゾール容器10内の噴射物を無駄に消費しないようにするとともに人間を驚かせてしまうのを防止しながら、忌避効果が必要なときには得ることができる。
【0072】
また、使用者が手を叩くことによって発生する音に基づいて噴射禁止動作を検知するようにしたので、簡単に使用できるようにしながら、噴射禁止動作の誤検知を有効に防止できる。
【0073】
また、音センサー46fが音を検知したことをLEDランプ46bによって報知させるようにしたので、例えば使用者の噴射禁止動作による音が小さくて検知できなかった場合に、噴射禁止制御が行われないことを使用者が把握できる。
【0074】
また、使用者の噴射禁止動作を検知した後、所定時間が経過すると噴射禁止制御を終了するので、利便性を高めることができる。
【0075】
尚、上記実施形態では、動物が所定距離内に存在するか否かを検知するセンサーとして赤外線センサー33を使用しているが、これに限られるものではなく、各種センサーを使用することができる。
【0076】
また、上記実施形態では、エアゾール容器10から動物忌避剤を噴射させる噴射状態と、動物忌避剤を噴射させない非噴射状態とに切り替えるための切替装置としてソレノイドバルブ31を用いているが、これに限らず、例えばカム機構を利用してエアゾール容器10のステム11aを押し下げるように構成されたものであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、電源スイッチ46aを本体ケース50の前面部に設けているが、これに限らず、例えば、本体ケース50の上面部に設けてもよい。また、電源スイッチ46aを本体ケース50の側面部において赤外線センサー33よりも上方に設けてもよい。
【0078】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。