(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
図1及び
図2を参照すると、実施形態に係るゴム製のスノータイヤである空気入りタイヤ1(以下、タイヤという。)のトレッド部2には、タイヤ周方向(
図1及び
図2において符号Yで示す。)に延びるように形成された4本の主溝3A〜3Dが設けられている。また、トレッド部2には、タイヤ幅方向(
図1及び
図2において符号Xで示す。)に延びるように形成された複数の横溝(ラグ溝)4A〜4Fが設けられている。
【0019】
タイヤ1は、車両(図示せず)に対するタイヤ幅方向の取り付け姿勢が指定されている。また、車両が前進するときのタイヤ1の回転方向は、
図1において矢印Aで示す方向に指定されている。以下の説明において、タイヤ幅方向についての「内側」及び「外側」という用語は、タイヤ1が正規の姿勢で車両に装着された場合を基準としている。
図1及び
図2において、トレッド部2のタイヤ幅方向の中心線(赤道線)を符号CLで示す。また、トレッド部2のタイヤ幅方向内側及び外側の接地端を、それぞれ符号GEiと符号GEoで示す。
【0020】
図3を併せて参照すると、タイヤ幅方向の最も内側に位置する内側主溝3Aは、溝深さGD0を有し、溝幅GWaが概ね一定の直線状の溝である。タイヤ幅方向の最も外側に位置する外側主溝3Dは、溝深さGD0を有し、わずかに蛇行したジグザグ状の溝幅GWdを有する溝である。内側主溝3Aのタイヤ幅方向外側に隣接する第1中央主溝3Bは、溝深さGD0を有し、溝幅GWbが概ね一定の直線状の溝である。外側主溝3Dのタイヤ幅方向内側に隣接し、かつ第1中央主溝3Bのタイヤ幅方向外側に隣接する第2中央主溝3Cは、溝深さGD0を有し、溝幅GWcが概ね一定の直線状の溝である。
【0021】
4本の主溝3A〜3Dと横溝4A〜4Eとによって、タイヤ周方向に延びる5本のブロック列、すなわち内側ショルダー列5A、内側中間列5B、中央列5C、外側中間列5D、及び外側ショルダー列5Eが形成されている。
【0022】
ブロック列のうちタイヤ幅方向の最も内側に位置する内側ショルダー列5Aは、内側主溝3Aのタイヤ幅方向内側に位置する。内側ショルダー列5Aは、内側の接地端GEiを超えてタイヤ幅方向内側(タイヤ1の図示しないサイド部側)へ拡がっている。内側ショルダー列5Aは、内側主溝3Aと、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の横溝4A(第1横溝)とによって画定された複数の内側ショルダーブロック6を有する。言い換えれば、内側ショルダー列5Aは、タイヤ周方向に並べられた複数の内側ショルダーブロック6によって構成されている。個々の内側ショルダーブロック6には、タイヤ幅方向に延びる2本のサイプ6aが形成されている。また、個々の内側ショルダーブロック6Aのタイヤ幅方向の最も外側の部分には、タイヤ周方向に延びるジグザグ状のスリット6bが設けられている。さらに、個々の内側ショルダーブロック6Aには、後に詳述するように、3本の内側縦スリット(第1スリット)6c,6d,6eが設けられている。
【0023】
ブロック列のうちタイヤ幅方向の最も外側に位置する外側ショルダー列5Eは、外側主溝3Dのタイヤ幅方向外側に位置する。外側ショルダー列5Eは、外側の接地端GEoを超えてタイヤ幅方向外側(タイヤ1の図示しないサイド部側)へ拡がっている。外側ショルダー列5Eは、外側主溝3Dと、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の横溝4F(第2横溝)とによって画定された複数の外側ショルダーブロック10を有する。言い換えれば、外側ショルダー列5Eは、タイヤ周方向に並べられた複数の外側ショルダーブロック10によって構成されている。個々の外側ショルダーブロック10には、タイヤ幅方向に延びる3本のサイプ10aが形成されている。また、個々の外側ショルダーブロック10には、後に詳述するように、1本の外側縦スリット(第2スリット)10bが設けられている。タイヤ周方向に隣接する一対の横溝4は、外側の接地端GEoよりもさらに外側の領域で、短い縦溝11によって接続されている。
【0024】
内側中間列5Bは、内側ショルダー列5Aに対してタイヤ幅方向外側に隣接しており、内側主溝3Aと第1中央主溝3Bとの間に位置している。内側中間列5Bは、内側主溝3Aと、第1中央主溝3Bと、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の横溝4Bとで画定された複数の内側中間ブロック7を有する。言い換えれば、内側中間列5Bは、タイヤ周方向に並べられた複数の内側中間ブロック7によって構成されている。個々の内側中間ブロック7には、タイヤ周方向の中央付近にタイヤ幅方向に貫通する横スリット7aが設けられている。また、内側中間ブロック7には、この横スリット7aの両側にタイヤ幅方向に延びる2本のサイプ7bがそれぞれ形成されている。
【0025】
外側中間列5Dは、外側ショルダー列5Eに対してタイヤ幅方向内側に隣接しており、外側主溝3Dと第2中央主溝3Cとの間に位置している。外側中間列5は、外側主溝3Dと、第2中央主溝3Cと、タイヤ周方向に間隔をあけて交互に設けられた複数の横溝(第3横溝)4D,4Eとで画定された複数の外側中間ブロック9を有する。言い換えれば、外側中間列5Dは、タイヤ周方向に並べられた複数の外側中間ブロック9によって構成されている。個々の外側中間ブロック9には、タイヤ幅方向に延びる3本のサイプ9aが形成されている。
【0026】
中央列5Cは、中心線CL上に設けられている。中央列5Cは、内側中間列5Bと外側中間列5Dとに隣接しており、第1中央主溝3Bと第2中央主溝3Cとの間に位置している。中央列5Cは、第1中央主溝3Bと、第2中央主溝3Cと、タイヤ周方向に間隔をあけて設けられた複数の横溝4Cとで画定された複数の中央ブロック8を有する。言い換えれば、中央列は、タイヤ周方向に並べられた複数の中央ブロック8によって構成されている。個々の中央ブロック8には、タイヤ幅方向に延びる複数のサイプ8aが形成されている。
【0027】
図3を参照して、横溝4A〜4Fについて説明する。内側ショルダー列5Aの横溝4A、外側中間列5Dの横溝4D、及び外側ショルダー列5Eの横溝4Fは、「深横溝」である。一方、内側中間列5Bの横溝4B、中央列5Cの横溝4C、及び外側中間列5Dの横溝4Eは、「サイプ付き浅溝」である。
【0028】
「深横溝」である横溝4A,4D,4Fは、概ね矩形状の断面形状を有する。これらの横溝4A,4D,4Fの溝深さGD1は、主溝3A〜3Dの溝深さD0の0.85倍以上1.0倍以下に設定されている(0.85GD0≦GD1≦1.0GD0)。また、これらの横溝4A,4D,4Fの溝幅GW1は、2.5mm以上8mm以下が好ましい。
【0029】
「サイプ付き浅溝」である横溝4B,4C,4Eは、浅溝13の溝底にサイプ14を設けた形状である。本明細書では、主溝3A〜3Dの溝深さGD0の0.4倍以上0.6倍以下の溝深さGD2を有する溝を「浅溝」と言う(0.4GD0≦GD2≦0.6GD0)。「浅溝」の溝幅GW2は、「深横溝」の溝幅GW1以下が好ましい(GW2≦GW1)。また、本明細書では、「サイプ」とは、「主溝」、「深横溝」、及び「浅溝」よりも細い切込みを言い、一般的には、幅GW3は0.8mm以上1.5mm以下である。「サイプ付き浅溝」の溝深さGD3は、主溝3A〜3Dの溝深さGD0の0.6倍以上1.0倍以下が好ましい(0.6GD
0≦GD
3≦GD0)。「サイプ」の概念は、内側ショルダーブロック6のサイプ6a、外側ショルダーブロック10のサイプ10a、内側中間ブロック7のサイプ7b、外側中間ブロック9のサイプ9a、及び中央ブロック8のサイプ8aも包含している。
【0030】
一般に、「サイプ付き浅溝」は、全深さが同じ溝に比べて、地面からの反力に起因する倒れに強い。従って、雪柱せん断力の低下を防ぎつつ、剛性の低下も防ぐことができる。浅溝13の溝底にサイプ14を追加することによるスノー性能向上の効果を得るには、サイプ14自体の深さは最低でも0.2mm以上であることが好ましい。また、「サイプ」の幅GW3が0.8mmよりも小さいと、スノー性能を高める効果が小さく、反対に幅GW3が1.5mmを超えると、トレッド部の剛性低下が大きくなるので、いずれも好ましくない。
【0031】
前述のように、内側ショルダーブロック6には、ジグザグ状のスリット6bが設けられている。また、内側ショルダーブロック6には、内側縦スリット6c,6d,6eが設けられている。さらに、外側ショルダーブロック10には、外側縦スリット10bが設けられている。さらにまた、内側中間ブロック7には、横スリット7aが設けられている。本明細書では、これらの「スリット」は、「サイプ」よりも深さ及び幅が大きいが、「主溝」、「深横溝」、及び「浅溝」よりも深さ及び
幅が小さい切込みを言う。
【0032】
図2を参照すると、内側中間列5Bを構成する内側中間ブロック7は、タイヤ周方向長さIHcがタイヤ幅方向長さIHwよりも長い。つまり、内側中間ブロック7は、タイヤ周方向に細長い形状を有する。例えば、タイヤ周方向長さIHcは、タイヤ幅方向長さIHwの1.3倍以上1.9倍以下(1.3≦IHc/IHw≦1.9)に設定することが好ましい。車両に装着されたタイヤ1にはキャンバー角が付与されている。路面への接地領域の形状は、トレッド部2のタイヤ幅方向内側部分でタイヤ周方向に延びる傾向がある(特に制動時)。従って、内側中間ブロック7がタイヤ周方向に細長い形状を有することで、ドライ路面での駆動性能と制動性能が向上する。また、内側中間ブロック7がタイヤ周方向に細長い形状を有することで、走行中に操舵した場合の舵角に対する応答性が向上する。
【0033】
図2を参照すると、外側中間列5Dを構成する外側中間ブロック9は、タイヤ幅方向長さOHwがタイヤ周方向長さOHcよりも長い。つまり、外側中間ブロック9は、タイヤ幅方向に細長い形状を有する。例えば、タイヤ幅方向長さOHwは、タイヤ周方向長さOHcの1.1倍以上1.5倍以下に設定することが好ましい(1.1≦OHw/OHc≦1.5)。外側中間ブロック9の横方向(タイヤ幅方向)の荷重に対する剛性が増し、ドライ路面での旋回性能が向上する。また、外側中間ブロック9がタイヤ幅方向に細長い形状を有することで、トレッド部2のタイヤ幅方向外側の領域でタイヤ幅方向のエッジ成分が増加する。その結果、スノー路面での駆動性能と制動性能も向上する。
【0034】
本実施形態では、内側ショルダーブロック6の総数Naは、外側ショルダーブロック10の総数Neより多く設定される(Na>Ne)。また、内側中間ブロック7の総数Nbは、外側中間ブロック9の総数Ndよりも少なく設定されている(Nb<Nd)。また、本実施形態では、外側中間ブロック9の総数Ndと外側ショルダーブロック10の総数Neは等しく設定されている(Nd=Ne)。要するに、本実施形態では、ブロックの総数Na,Nb,Nd,Neは、以下に示す関係を満たす。
【0036】
さらに、中央ブロック8の総数Ncは、中央列C以外のブロック列のブロックの総数Na,Nb,Nd,Neよりも少なく設定されている。
【0037】
内側ショルダーブロック6の総数Naは、内側中間ブロック7の総数Nbの1.8倍以上2.5倍以下に設定できる。また、中央ブロック8の総数Ncは、内側中間ブロック7の総数Nbの1.0倍以上1.4倍以下に設定できる。さらに、外側中間ブロック9の総数Ndは、内側中間ブロック7の総数Nbの1.3倍以上1.7倍以下に設定できる。さらにまた、外側ショルダーブロック10の総数Neは、内側中間ブロック7の総数Nbの1.3倍以上1.7倍以下に設定できる。
【0038】
内側ショルダーブロック6の総数Naを、外側ショルダーブロック10の総数Neよりも多く設定することで、特にトレッド部2のタイヤ幅方向内側の部分で雪柱せん断力によるトラクションが増し、スノー性能が向上する。また、内側ショルダーブロック6の総数Naを、外側ショルダーブロック10の総数Neよりも多く設定することは、外側ショルダーブロック10が内側ショルダーブロック6よりも相対的に大きいことを意味する。従って、外側ショルダーブロック10の横方向の荷重に対する剛性は、内側ショルダーブロック6に対して相対的に高くなり、ドライ路面での旋回性能が向上する。
【0039】
内側中間ブロック7の総数Nbを外側中間ブロック9の総数Ndよりも少なく設定することで、前述のように、内側中間ブロック7のタイヤ周方向長さIHcは、外側中間ブロックのタイヤ周方向長さOHcよりも相対的に長く設定されている。その結果、前述したように、ドライ路面での駆動性能と制動性能が向上し、舵角に対する応答性も向上する。
【0040】
図2を参照すると、中央ブロック8のタイヤ周方向長さCHcは、内側ショルダーブロック6、内側中間ブロック7、外側中間ブロック9、及び外側ショルダーブロック10のタイヤ周方向長さISHc,IHc,OHc,OSHcのいずれよりも長く設定されている。中央列5Cは路面への接地領域のタイヤ幅方向中央部分を含むので、中央ブロック8のタイヤ周方向長さIHcを長く設定することで、舵角に対する応答性がさらに向上する。
【0041】
以上の特徴より、本実施形態のタイヤでは、駆動性能と制動性能を向上し、併せて旋回性能を向上できる。
【0042】
内側中間列5Bを構成する内側中間ブロック7は、「サイプ付き浅溝」である横溝4により画定されている。この点で、内側中間列5Bは、ブロック列ではなく、実質的にリブ列であるとも言える。前述のように、キャンバー角の影響により、路面への接地領域の形状は、トレッド部2のタイヤ幅方向内側部分で、タイヤ周方向に延びる傾向がある(特に制動時)。そのため、内側中間列5Bを実質的にリブ列とすることで、ドライ路面での制動性能が向上し、舵角に対する応答性が向上する。
【0043】
外側中間列5Dを構成する外側中間ブロック9は、「深横溝」である横溝4Dと「サイプ付き浅溝」である横溝4Eを交互に設けることで画定されている。前述のように、外側中間ブロック9は、タイヤ幅方向長さOHwがタイヤ周方向長さOHcよりも長い。言い換えれば、外側中間列5Dはタイヤ幅方向の寸法が大きい。タイヤ幅方向の寸法が大きい外側中間列5Dに「深横溝」である横溝4Dを設けることで、スノー路面でのトラクションを増加させ、スノー路面での駆動性能と制動性能を向上できる。「サイプ付き浅溝」である横溝4Eのタイヤ周方向両側に配置された一対の外側中間ブロック9は、1個の大型のブロックであるとみなすことができる。そのため、外側中間列5Dの前後方向(タイヤ周方向)の剛性を向上し、操安性が向上する。
【0044】
以下、本実施形態のタイヤ1の種々の別の特徴を説明する。
【0045】
図1及び
図2を参照すると、第1中央主溝3Bの溝幅GWbと第2中央主溝3Cの溝幅GWcは、内側主溝3Aの溝幅GWa及び外側主溝3Dの溝幅GWdよりも広く設定している。
【0046】
第1中央主溝3Bと第2中央主溝3Cは、トレッド部2のタイヤ幅方向中央に位置している。トレッド部2のタイヤ幅方向中央では、路面への接地領域の境界部分は、踏み込み側と蹴り出し側のいずれでもタイヤ幅方向(横方向)に延びている。そのため、トレッド部2のタイヤ幅方向中央で接地領域に進入する水は、タイヤ周方向を向いた速度ベクトルを有する。従って、タイヤ幅方向中央にある第1中央主溝3Bと第2中央主溝3Cの溝幅GWb,GWcを広く設定することで、接地領域に進入する水を効率よく第1中央主溝3Bと第2中央主溝3Cに導き、効果的に排水できる。つまり、第1中央主溝3Bと第2中央主溝3Cの溝幅GWb,GWcを広く設定することで、排水性能を向上できる。
【0047】
図1及び
図2を参照すると、外側ショルダー列5EAに設けられた複数の横溝4Aには、1個おきに、第1嵩上げ部16が設けられている。第1嵩上げ部16は横溝4Aの内側主溝3A側に、横溝4Aのタイヤ周方向両側に隣接して位置する一対の外側ショルダーブロック10Aを連結するように設けられている。第1嵩上げ部16のタイヤ幅方向の長さは、横溝4Aのタイヤ幅方向の長さよりも十分短く設定されている。
図4を併せて参照すると、第1嵩上げ部16の頂面は概ね平坦である。また、第1嵩上げ部16における横溝4Aの溝深さGD1’は、第1嵩上げ部16以外の部分における横溝4A(前述のように「深横溝」である)の溝深さGD1よりも浅く設定されている。
【0048】
キャンバー角の影響により、ドライ路面では、路面への接地領域の形状は、トレッド部2のタイヤ幅方向内側部分でタイヤ周方向に延びる傾向がある(特に制動時)。従って、内側ショルダー列5Aを構成する内側ショルダーブロック6を第1嵩上げ部16で連結して前後方向及び横方向の剛性を高めることで、ドライ路面での駆動性能と制動性能の向上をできる。
【0049】
第1嵩上げ部16は、複数の横溝4Aに1個おきに設けられている。従って、第1嵩上げ部16が設けられていない横溝4Aでは、第1嵩上げ部16によって水の流れは妨げられず、排水性能の確保が優先されている。つまり、複数の横溝4Aに1個おきに第1嵩上げ部16を設けることで、排水性能の確保と、ドライ路面での駆動性能と制動性能の向上とを両立できる。
【0050】
第1嵩上げ部16における横溝4Aの溝深さGD1’は、横溝4Aの他の部分の溝深さGD1の0.4倍以上0.6倍以下に設定することが好ましい。溝深さGD1’が溝深さGD1の0.6倍を上回ると、第1嵩上げ部16の高さが不足し、内側ショルダーブロック6を第1嵩上げ部16で連結することによる前後方向の剛性向上の効果が、十分に得られない。一方、溝深さGD1’が溝深さGD1の0.4倍を下回ると、横溝4Aの溝深さが不足し、横溝4Aの排水機能が著しく損なわれる。
【0051】
図1及び
図2を参照すると、外側主溝3Dには、外側中間列5Dを構成する外側中間ブロック9と、外側ショルダー列5Eを構成する外側ショルダーブロック10とをつなぐ仮想線により画定される領域に第2嵩上げ部17が設けられている。第2嵩上げ部17によって、外側中間ブロック9のタイヤ幅方向外側の側面と、外側ショルダーブロック10のタイヤ幅方向内側の側面とが連結されている。
図5を併せて参照すると、第2嵩上げ部17の端面は概ね平坦である。また、第2嵩上げ部17における外側主溝3Dの溝深さGW0’は、第2嵩上げ部17以外の部分における外側主溝3Dの溝深さGW0よりも浅く設定されている。
【0052】
外側中間列5Dを構成する外側中間ブロック9のタイヤ幅方向一方側は、外側主溝3Dによって画定されている。また、外側中間ブロック9のタイヤ周方向両側は、横溝4D,4Eによって画定されている。これら外側主溝3Dと横溝4D,4Eは、外側中間ブロック9のタイヤ幅方向の変形を許容し、横方向(タイヤ幅方向)の剛性を低下させる。しかし、第2嵩上げ部17によって、外側中間ブロック9と外側ショルダーブロック10とを連結することで、これらのブロック9,10を横方向の荷重に対して一体的に変形させることができる。つまり、第2嵩上げ部17を設けることで、外側中間ブロック9の横方向の剛性を高め、ドライ路面での操舵性能ないしは旋回性能を向上できる。
【0053】
第2嵩上げ部17は、外側主溝3Dの全体に設けられているのではなく、外側中間ブロック9と外側ショルダーブロック10とをつなぐ仮想線により画定される領域に、部分的に設けられている。そのため、第2嵩上げ部17が外側主溝3D内の水の流れに対して及ぼす影響は限定的であり、排水性能は確保されている。
【0054】
第2嵩上げ部17における外側主溝3Dの溝深さGD0’は、外側主溝3Dの他の部分の溝深さGD0の0.5倍以上0.7倍以下に設定することが好ましい。溝深さGD0’が溝深さGD0の0.7倍を上回ると、第2嵩上げ部17の高さが不足し、外側中間ブロック9を外側ショルダーブロック10に第2嵩上げ部17で連結することによる横方向の剛性向上の効果が、十分に得られない。一方、溝深さGD0’が溝深さGD0
の0.5倍を下回ると、外側主溝3Dの深さが不足し、外側主溝3Dの排水機能が著しく損なわれる。
【0055】
図1及び
図2を参照すると、外側ショルダー列5Eに設けられた横溝4Fは、タイヤ幅方向外側の接地端GEoを超えてタイヤ幅方向外側に延びている。外側中間列5から外側ショルダー列5Eにかけての領域、つまりトレッド部2のタイヤ幅方向で外側中間からさらに外側にかけての領域では、路面への接地領域に進入する水は、タイヤ周方向に対してタイヤ幅方向外側に傾いた速度ベクトルを有する。また、この傾きの角度は、トレッド部2のタイヤ幅方向外側に向けて大きくなる。従って、外側ショルダー列5Eのブロックを画定する横溝4Fをタイヤ幅方向外側の接地端GEoを超えて延びるように設けることで、効果的に排水できる。
【0056】
外側中間列5Dに設けられた横溝4D,4Eと、外側ショルダー列5Eに設けられた横溝4Fとは、タイヤ周方向に位置合わせされて配置している。この位置合わせにより、第2中央主溝3Cとタイヤ幅方向外側の接地端GEoが、横溝4D,4E,4Fを介して連通している。旋回時には、外側ショルダー列5Eを含む領域、つまりトレッド部2のタイヤ幅方向外側の領域での路面への接地領域の面積が増大する。そのため、旋回時の排水性能を高めるには、横溝4Fの水がタイヤ幅方向外側へ向かう流れを促進する必要がある。外側中間列5の横溝4D,4Eを、第2中央主溝3Cから接地端GEoまで連通するように横溝4Fに対して位置合わせすることで、旋回時における横溝4F内の水の流れを促進し、効果的に排水できる。
【0057】
図1及び
図2を参照すると、前述のように、内側ショルダー列5Aを構成する内側ショルダーブロック6Aには、3本の内側縦スリット6c〜6eが設けられている。これら内側縦スリット6c〜6eは、互い重なり合わないようにタイヤ周方向に並べられている。内側縦スリット6c,6eは、一端が内側ショルダーブロック6A内で終端し、他端が内側ショルダーブロック6Aのタイヤ周方向の側面を貫通している。内側縦スリット6dは、両端が内側ショルダーブロック6A内で終端している。内側縦スリット6c,6eは、タイヤ幅方向の位置が概ね同じに設定されている。タイヤ周方向で内側縦スリット6c,6eの間に配置された内側縦スリット6dは、内側縦スリット6c,6eに対してタイヤ幅方向内側にオフセットした位置に設けられている。言い換えれば、3本の内側縦スリット6c〜6eは周方向に千鳥状に配置されている。
【0058】
キャンバー角の影響により、路面への接地領域の形状は、トレッド部のタイヤ幅方向内側部分、つまり内側ショルダー列5Aが設けられている部分で、タイヤ周方向に延びる傾向がある(特に制動時)。内側ショルダーブロック6に千鳥状に配置された内側縦スリット6c〜6eを設けることで、制動時に、内側ショルダーブロック6における変形と接地圧とを分散させることができる。その結果、ドライ路面での制動性能を向上できる。
【0059】
図1及び
図2を参照すると、前述のように、外側ショルダー列5Eを構成する外側ショルダーブロック10には、1本の外側縦スリット10bが設けられている。外側縦スリット10bは、外側ショルダーブロック10をタイヤ周方向に横切るように設けられている。つまり、外側縦スリット10bの両端は、それぞれ外側ショルダーブロック10のタイヤ周方向の側面を貫通している。
【0060】
第2嵩上げ部17によって、外側中間ブロック9と、外側ショルダーブロック10とを連結している。そのため、旋回時に外側中間ブロック9が横方向の荷重に対して変形すると、外側ショルダーブロック10に対して、外側中間ブロック9から横方向の荷重(タイヤ幅方向の変形)が伝わる。外側縦スリット10bを設けることで、旋回時に外側中間ブロック9から外側ショルダーブロック10に伝わる横方向の荷重(タイヤ幅方向の変形)を緩和できる。その結果、ドライ路面での旋回性能を向上できる。
【0061】
以上の特徴より、本実施形態のタイヤ1では、排水性能を確保しつつ、駆動性能、制動性能、及び旋回性能を向上できる。
【0062】
前述のように、外側中間列5Dには、「深横溝」である横溝4Dと「サイプ付き浅溝」である横溝4Eが交互に設けられている。「サイプ付き浅溝」である横溝4E
のタイヤ周方向の両側に位置する一対の外側中間ブロック9は、「深横溝」である横溝4Dの両側に位置する一対の外側中間ブロック9と比較して、相対的に強固に連結されている。言い換えれば、横溝4E
のタイヤ周方向の両側に位置する一対の外側中間ブロック9は、前後方向及び横方向の荷重に対し一体的に変形する傾向がある。また、前述のように、外側中間ブロック9と外側ショルダーブロック10とを第2嵩上げ部17で連結することで、これらのブロック9,10を横方向の荷重に対して一体的に変形させるようにしている。以上の構造から、
図1おいて符号Uで示すように、「サイプ付き浅溝」である横溝4E
のタイヤ周方向の両側に位置する一対の外側中間ブロック9と、これら一対の外側中間ブロック9と第2嵩上げ部17で連結された一対の外側ショルダーブロック10とは、1個のユニットを構成するとみなすことできる。このユニットUは、「サイプ付き浅溝」である横溝4Eと第2嵩上げ部17とによって、前後方向及び横方向の荷重に対して一体的に変形する傾向がある。かかるユニットUがトレッド部2のタイヤ幅方向外側部分に存在することで、特に、ドライ路面での旋回性能が向上する。
【実施例】
【0063】
以下の表1に示す比較例1〜6、並びに以下の表2に示す実施例1〜4について、ドライ路面での駆動性能(ドライ駆動性能)、制動性能(ドライ制動性能)、及び旋回性能(ドライ旋回性能)の評価試験を行った。以下で特に言及しない諸元は、比較例1〜6並びに実施例1〜4について共通している。特に、比較例1〜6並び実施例1〜4のいずれも、タイヤサイズは、225/50R17であり、2000ccのFFセダンに装着した場合で評価した。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
駆動性能については、車両に各タイヤを装着させて、ドライ路面を静止から60km/hまでの加速所要時間を測定した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、駆動性能が優れていることを示す。
【0067】
制動性能については、車両に各タイヤを装着させて、ドライ路面を100km/hからABS制動を開始し停止するまでの制動距離を測定した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、制動性能が優れていることを示す。
【0068】
旋回性能については、車両に各タイヤを装着させて、1名乗車荷重条件でドライ路面を半径R20の定常円旋回にて走行。そのラップタイムを指数で評価した。比較例1の結果を100とする指数で評価し、指数が大きいほど、ドライ制動性能が優れていることを示す。
【0069】
実施例1〜4のいずれについても、駆動性能の指数は102以上であり、好適なドライ駆動性能が得られている。また、これらのいずれについても、制動性能の指数は102以上であり、好適なドライ制動性能が得られている。さらに、これらのいずれについても、旋回性能の指数は101以上であり、好適なドライ旋回性能が得られている。
【0070】
比率IHc/IHwが前述の好適な範囲(1.3≦IHc/IHw≦1.9)外にある比較例1,2では、駆動性能、制動性能、旋回性能のいずれについても指数は100である。つまり、比較例1,2では、評価したいずれの性能についても好適な性能が得られていない。次に、比率OHw/OHcが前述の好適な範囲(1.1≦OHw/OHc≦1.5)外にある比較例3,4では、旋回性能の指数が98である。つまり、比較例3,4では、特に旋回性能が劣る。外側ショルダーブロック10の総数Neが内側ショルダーブロック6の総数Naを上回っている比較例5では、制動性能の指数は101であるものの、旋回性能の指数が98であり、旋回性能について良好な性能が得られていない。内側中間ブロック7の総数Nbが外側中間ブロック9の総数Ndを上回っている比較例6では、旋回性能の指数は101であるものの、駆動性能と制動性能の指数はいずれも100である。つまり、比較例6では、駆動性能と制動性能について良好な性能が得られていない。
【0071】
以上のように、比較例1〜6と実施例1〜4との比較から、本発明の空気入りタイヤによれば、駆動性能と制動性能を向上し、併せて旋回性能を向上できることが理解できる。