(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような検査では、検査対象物の撮像時における照明の強さおよび向き等によって、画像データの明るさにばらつきが生じる。それにより、検出されるべきエッジが検出されなかったり、外乱による明るさの変化に起因して本来のエッジでない部分が誤ってエッジとして検出されることがある。その場合、検査対象物の良否判定を適切に行うことができない。画像データからエッジを正確に検出するためには、撮像の条件を適切に調整する必要があり、ユーザの熟練が求められるとともに、煩雑な作業が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、ユーザの熟練および煩雑な作業を必要とせずに、検査対象物の良否判定を適切に行うことが可能な画像検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像検査装置は、検査対象物を表す検査画像からエッジを検出し、検出されたエッジに基づいて検査対象物の検査を行う画像検査装置であって、検査対象物を撮像することにより検査画像データを取得する画像データ取得手段と、取得された検査画像データに基づいて検査画像を表示する表示手段と、表示された検査画像においてウインドウを設定するための操作を受け付けるウインドウ設定手段と、設定されたウインドウ内の1または複数のエッジを検出するエッジ検出手段と、検出された1または複数のエッジのうち検査対象とするエッジを対象エッジとして決定するエッジ決定手段と、決定された対象エッジに対応する特徴量を算出する特徴量算出手段と、算出された特徴量に基づいて、検査対象物の良否を判定する良否判定手段とを備え、エッジ検出手段は、設定されたウインドウ内の一方向における明るさの変化の度合をエッジ強度として算出し、算出されたエッジ強度の複数のピークを検出し、検出された複数のピークの値が互いに近づくように、算出されたエッジ強度を補正し、補正後のエッジ強度に基づいて、設定されたしきい値よりも大きい値を有するピークに対応する検査画像の部分をエッジとして検出する。
【0007】
この画像検査装置においては、設定されたウインドウ内の明るさの変化の度合いがエッジ強度として算出され、そのエッジ強度の複数のピークの値が互いに近づくように、エッジ強度が補正される。補正後のエッジ強度に基づいて、設定されたしきい値よりも大きい値を有するピークに対応する検査画像の部分がエッジとして検出される。
【0008】
この場合、撮像の条件の違いによって検査画像データの明るさにばらつきがあっても、エッジ強度が補正されることにより、ウインドウ内の1または複数のエッジを適切に検出することができる。それにより、ユーザの熟練および煩雑な作業を必要とせずに、検査対象物の良否判定を適切に行うことができる。
【0009】
エッジ検出手段は複数のエッジを検出し、表示手段は、検出された複数のエッジを検査画像とともに表示し、エッジ決定手段は、表示された複数のエッジのうち2以上のエッジを対象エッジとして決定し、特徴量算出手段は、決定された2以上の対象エッジ間の距離を特徴量として算出してもよい。
【0010】
この場合、対象エッジ間の距離に基づいて、検査対象物の良否を判定することができる。また、検出された複数のエッジが検査画像とともに表示されるので、ユーザは、検出されたエッジを直感的に認識することができる。それにより、対象エッジの決定が容易になる。
【0011】
画像検査装置は、検査画像においてマスク領域を設定するマスク領域設定手段をさらに備え、エッジ決定手段は、設定されたマスク領域を除いた位置において検出されるエッジから対象エッジを決定してもよい。
【0012】
この場合、マスク領域内のエッジが対象エッジに決定されることがないので、検査対象から除外すべき領域にマスク領域が設定されることにより、対象エッジを容易にかつ効率良く決定することができる。
【0013】
特徴量算出手段は、決定された対象エッジの数を特徴量として算出してもよい。この場合、不適切なエッジの存在、または必要なエッジの欠落等を検出することができる。
【0014】
エッジ決定手段は、2つのエッジをそれぞれ含む複数のエッジペアを対象エッジとして決定し、特徴量算出手段は、各エッジペアの2つのエッジ間の距離、または隣り合う一方のエッジペアの中心と他方のエッジペアの中心との間の距離を特徴量として算出してもよい。
【0015】
例えば検査対象物が複数の端子を有する電子部品である場合、各端子の一対の辺がエッジペアに相当する。このような検査対象物に対して、各エッジペアの2つのエッジ間の距離、または一のエッジペアの中心と他のエッジペアの中心との距離が特徴として算出されることにより、検査対象物の良否を適切に判定することができる。
【0016】
特徴量算出手段は、エッジ決定手段により決定された対象エッジの位置を特徴量として算出してもよい。この場合、エッジの位置ずれを検出することができる。
【0017】
画像検査装置は、特徴量算出手段により算出されたエッジの位置に基づいて、検査対象物の位置ずれを検出する位置ずれ検出手段をさらに備え、エッジ決定手段は、検出された位置ずれに基づいて対象エッジを再決定してもよい。この場合、検査対象物の位置ずれが生じても、対象エッジを適切に決定することができる。
【0018】
エッジ検出手段は、算出されたエッジ強度を表す波形を検出された複数のピークにそれぞれ対応するように複数の区間に分割し、算出されたエッジ強度を分割された区間毎に異なる補正係数で補正してもよい。この場合、複数のピークが互いに近づくようにエッジ強度を適切に補正することができる。
【0019】
エッジ検出手段は、算出されたエッジ強度の波形の属性が維持されるようにエッジ強度を補正してもよい。この場合、補正後のエッジ強度の波形に対して、ユーザが違和感を抱きにくい。
【0020】
表示手段は、検査画像と重なるように、設定されたウインドウ、検出された1または複数のエッジ、および補正後のエッジ強度を表す波形をそれぞれ表示してもよい。この場合、ユーザは、ウインドウ、検出されたエッジおよび補正後のエッジ強度の関係を直感的に認識することができる。
【0021】
表示手段は、補正後のエッジ強度を表す波形と重なるように、設定されたしきい値を表す検出ラインを表示してもよい。この場合、検出ラインを超える波形のピークに対応する部分がエッジとして検出される。それにより、ユーザは、検出されたエッジと補正後のエッジ強度との関係をより明確に認識することができる。
【0022】
表示手段は、設定されたしきい値を変更するための操作子を表示してもよい。この場合、ユーザがしきい値を容易に変更することができる。それにより、エッジの検出条件を容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ユーザの熟練および煩雑な作業を必要とせずに、検査対象物の良否判定を適切に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態に係る画像検査装置について図面を参照しながら説明する。
【0026】
(1)画像検査装置の構成
図1は、本発明の実施の形態に係る画像検査装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
図1に示すように、画像検査装置100は、コネクタ部11、電源基板12、撮像部13、メイン制御部14および表示操作部15を含む。
【0027】
外部電源からの電力は、コネクタ部11を通して電源基板12に供給される。電源基板12は、供給される電力を撮像部13、メイン制御部14および表示操作部15に与える。
【0028】
撮像部13は、撮像素子131および照明部132を含み、検査対象物Sを撮像する。撮像素子131は、例えばCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサまたはCCD(電荷結合素子)イメージセンサである。照明部132は、例えばLED(発光ダイオード)を含む。照明部132の代わりに、外部照明が用いられてもよい。撮像時には、照明部132により検査対象物Sに光が照射され、その反射光が撮像素子131に入射する。これにより、検査対象物Sの画像データ(以下、検査画像データと呼ぶ。)が取得される。
【0029】
メイン制御部14は、FPGA(field programmable gate array)141、DSP(digital signal processor)142およびメモリ143を含む。FPGA141は、撮像素子131および照明部132の制御および検査画像データに対する種々の処理を行う。DSP142は、検査画像データに対して後述のエッジ検出処理等を行う。FPGA141およびDSP142の代わりに、CPU(中央演算処理装置)が用いられてもよい。メモリ143には、各種の設定値等が記憶されるとともに制御プログラムが記憶される。
【0030】
表示操作部15は、例えばタッチパネルディスプレイからなる。メイン制御部14は、撮像部13により取得される検査画像データを表示操作部15に与える。表示操作部15は、メイン制御部14からの検査画像データに基づいて、検査対象物Sの画像(以下、検査画像と呼ぶ。)を表示する。また、ユーザは、表示操作部15を操作することにより、検査対象物Sの検査に関する各種設定を行うことができる。表示操作部15の代わりに、例えば液晶ディスプレイからなる表示部、ならびに例えばキーボードおよびマウスからなる操作部が別個に設けられてもよい。
【0031】
(2)エッジ検出処理の概要
図2は、検査画像データにより表される検査画像の一例を示す図である。
図3〜
図5は、エッジ検出処理の概要について説明するための図である。
【0032】
図2の検査画像IMは、暗領域R1および明領域R2を有する検査対象物Sを含む。明領域R2の輝度は暗領域R1の輝度よりも高い。また、
図2の例では、検査対象物Sの他に異物XOが検査画像IMに含まれる。異物XOは、例えば、埃等の汚れ、または画像データ上のノイズである。検査画像IMにおいて、互いに直交する2方向がX方向およびY方向と定義される。
図2および後述の
図3(a)等には、X方向を表す矢印XおよびY方向を表す矢印Yがそれぞれ付される。
【0033】
図3(a)に示すように、検査画像IM上において破線で示されるウインドウWDが設定される。本例において、ウインドウWDは、X方向に平行な2辺およびY方向に平行な2辺を有する矩形状である。ウインドウWDは、検査画像IMにおけるエッジを検出すべき領域を表す。
図3(a)の例では、ウインドウWD内に、検査対象物Sの暗領域R1および明領域R2ならびに異物XOが含まれる。
【0034】
次に、ウインドウWD内において一方向に並ぶ複数の画素の輝度の積算値(以下、輝度積算値と呼ぶ。)が算出される。本例では、Y方向に配列された複数の画素の輝度の積算値が輝度積算値であり、その輝度積算値が例えばX方向の1画素毎に算出される。
図3(b)には、輝度積算値の算出結果が示される。
図3(b)において、横軸は、ウインドウWD内でのX方向における位置を表し、縦軸は、輝度積算値を表す。
【0035】
次に、算出された輝度積算値が微分されることにより、X方向における明るさの変化の度合がエッジ強度として算出される。
図3(c)には、エッジ強度の算出結果が示される。
図3(c)において、横軸は、ウインドウWD内でのX方向における位置を表し、縦軸は、エッジ強度を表す。本例では、左から右への方向において、輝度積算値が増加するとエッジ強度が正の値となり、輝度積算値が減少するとエッジ強度が負の値となる。以下、このようなX方向におけるエッジ強度の変化を表す波形をエッジ強度波形と呼ぶ。
【0036】
次に、
図4(a)に示すように、エッジ強度波形のフィルタリング処理が行われる。例えば、ガウシアンフィルタが用いられ、エッジ強度波形が平滑化される。次に、
図4(b)に示すように、エッジ強度の正負の選択が行われる。例えば、検出すべきエッジの特徴等に応じて、正の値、負の値、またはその両方が選択される。正の値が選択された場合、エッジ強度波形の正の値のみが有効とされ、負の値が選択された場合、エッジ強度波形の負の値のみが有効とされる。また、正の値および負の値の両方が選択された場合、エッジ強度波形の正の値および負の値の両方が有効とされる。負の値が選択された場合、ならびに正の値および負の値の両方が選択された場合には、エッジ強度が絶対値化されてもよい。
図4(b)の例では、正の値および負の値の両方が選択され、かつエッジ強度が絶対値化される。
【0037】
次に、
図4(c)に示すように、エッジ強度波形から微小なエッジ強度の変化が除去される。具体的には、エッジ強度波形の全体から一定の値が減算され、負の値が0に変換される。これにより、異物XOによるエッジ強度の変化がエッジ強度波形から除去される。続いて、エッジ強度が正規化(相対値化)される。例えば、エッジ強度の最大値が100となるように、エッジ強度が相対値(百分率)に換算される。本実施の形態では、エッジ強度が補正された後に正規化される。エッジ強度の補正の詳細については後述する。
【0038】
図5には、正規化後のエッジ強度を表すエッジ強度波形が示される。正規化後のエッジ強度波形に対して、エッジ検出のためのしきい値(以下、検出しきい値と呼ぶ。)THが設定される。検出しきい値THよりも大きい値を有するピークに対応する検査画像の部分が、エッジとして検出される。
【0039】
(3)エッジ強度の補正
図6は、エッジ強度の補正例について説明するための図である。本例では、
図6(a)に示すように、エッジ強度波形が複数の区間に分割される。区間の境界は、例えば、エッジ強度の変化方向(上昇または下降)が切り替わる位置、またはゼロクロス位置である。
図6(a)の例において、区間Z1〜Z4の境界は、エッジ強度が正の値から0となるゼロクロス位置である。本例では、区間Z1にピークP1が存在し、区間Z2にピークP2が存在し、区間Z3にピークP3が存在する。
【0040】
次に、
図6(b)に示すように、ピークP1〜P3のエッジ強度が互いに近づくように、分割された区間毎にエッジ強度が補正される。例えば、エッジ強度波形の最大のエッジ強度に基づいて、エッジ強度の目標最大値MVが設定される。エッジ強度波形に含まれる複数のピークP1〜P3のうち、目標最大値MVよりも大きい値のピークP1が検出される。検出されたピークP1の値が、目標最大値MV以下となるように、区間Z1のエッジ強度が補正される。その後、
図6(c)に示すように、エッジ強度が正規化される。例えば、ピークP1〜P3の値の比率が保持されつつ、最も大きいピークP1の値が100となるように、区間Z1〜Z3におけるエッジ強度が算出される。
【0041】
エッジ強度の補正の方法は、これに限らない。例えば、ピークP1〜P3の各々の値に基づいて、ピークP1に対応する補正係数G1、ピークP2に対応する補正係数G2、およびピークP3に対応する補正係数G3がそれぞれ算出される。補正係数G1を用いて区間Z1のエッジ強度が補正され、補正係数G2を用いて区間Z2のエッジ強度が補正され、補正係数G3を用いて区間Z3のエッジ強度が補正される。このようにして、ピークP1〜P3のエッジ強度が互いに近づくようにエッジ強度が補正されてもよい。
【0042】
また、各ピークの頂点に関する情報のみが用いられてもよい。
図7は、エッジ強度の他の補正例について説明するための図である。例えば、
図7(a)に示すように、ピーク強度波形からピークP1〜P3の頂点T1〜T3が抽出される。続いて、
図7(b)に示すように、それらの頂点の値が互いに近づくように、頂点T1〜T3の位置が補正される。次に、
図7(c)に示すように、頂点T1〜T3とその周囲のエッジ強度とが連続的につながるように、エッジ強度波形が生成される。その後、
図6(c)の例と同様に、エッジ強度が正規化される。
【0043】
エッジ強度の補正時には、エッジ強度波形の属性が維持されることが好ましい。具体的には、補正前と補正後とで各ピークの見た目の形状が略等しいことが好ましい。これにより、補正後のエッジ強度波形に対してユーザが違和感を抱きにくい。
【0044】
(4)補正の有無
図8〜
図10は、上記のエッジ強度の補正の有無について説明するための図である。
図8〜
図10において、横軸はX方向における位置を表し、縦軸はエッジ強度を表す。
図8〜
図10の例では、ピークP11,P12がそれぞれ実際のエッジに対応する。
【0045】
図8(a)の例では、正規化前にピークP11の値とピークP12の値との差が比較的小さい。そのため、補正が行われなくても、正規化後にピークP11,P12の値がそれぞれしきい値THより大きくなり、ピークP11,P12に対応するエッジがそれぞれ検出される。
【0046】
一方、
図8(b)の例では、正規化前にピークP11の値とピークP12の値との差が比較的大きい。そのため、補正が行われない場合、正規化後にピークP12の値がしきい値THより小さくなり、ピークP12が検出されない。
【0047】
図8(c)の例では、エッジ強度が補正された後に正規化される。それにより、正規化前にピークP11の値とピークP12の値との差が比較的大きくても、正規化後にピークP11,ピークP12の値がそれぞれしきい値THより大きくなり、ピークP11,P12に対応するエッジがそれぞれ検出される。
【0048】
また、外乱によるエッジ強度のピークが生じることにより、検出されるべきエッジが検出されないことがある。
図9(a)の例では、正規化前のピークP11,P12の値が
図8(a)の例と同じである。ただし、実際にはエッジが存在しない位置に外乱によるエッジ強度のピークPxが現れている。この場合、補正が行われないと、
図8(a)の例と比べて正規化後にピークP11,P12が相対的に小さくなる。それにより、ピークP11,ピークP12の値がそれぞれしきい値THより小さくなり、ピークP11,P12に対応するエッジが検出されない。
【0049】
それに対して、
図9(b)の例では、エッジ強度が補正された後に正規化されることにより、外乱によるエッジ強度のピークPxが現れていても、正規化後にピークP11,ピークP12の値がそれぞれしきい値THより大きくなる。それにより、ピークP11,P12に対応するエッジがそれぞれ検出される。
【0050】
なお、
図9(b)の例では、外乱によるピークPxに対応するエッジが検出されるが、後述のように、検査の対象となるエッジを適宜選択する、または検査対象外の領域をマスク領域として予め設定することにより、検査対象物Sの良否判定を適切に行うことが可能である。
【0051】
また、外乱によるエッジの検出漏れを防止するため、エッジ強度が正規化される前に、許容値AVを超えるピークを予め除外することが考えられる。しかしながら、
図10(a)の例のように、外乱によるピークPxが実際のエッジに対応するピークP12と重なることがある。この場合、ピークPxとともにピークP12も除外される。そのため、ピークP11に対応するエッジが検出されるが、ピークP12に対応するエッジが検出されない。
【0052】
それに対して、
図10(b)の例では、エッジ強度が補正された後に正規化されることにより、外乱によるエッジ強度のピークPxがピークP12と重なる位置にあっても、正規化後にピークP11,Pxの値がそれぞれ検出しきい値THよりも大きくなる。それにより、結果的にピークP11,P12に対応するエッジを検出することができる。
【0053】
なお、本実施の形態では、エッジ強度の補正後にエッジ強度が正規化されるが、他のタイミングでエッジ強度が正規化されてもよい。例えば、エッジ強度の正規化後にエッジ強度が補正されてもよい。
【0054】
(5)表示
図11〜
図13は、
図1の表示操作部15による表示例について説明するための図である。検査画像データからのエッジの検出時には、
図11に示すように、検査画像IMが表示されるとともに、ウインドウWDが表示される。ユーザは、表示操作部15の画面上でタップ操作およびドラッグ操作等を行うことにより、ウインドウWDの位置および大きさを調整することができる。
【0055】
ウインドウWDが設定された後、上記のエッジ検出処理が行われる。エッジ検出処理後、
図12に示すように、検査画像IMと重なるように正規化後のエッジ強度波形EWが表示される。
図12のエッジ強度波形EWは、
図6(c)のエッジ強度波形に相当する。
図12の例では、Y方向においてウインドウWDと並ぶようにエッジ強度波形EWが表示される。エッジ強度波形EW上には、検出しきい値THを表す検出ラインTHLが表示される。ユーザは、検出ラインTHLを上下にドラッグすることにより、本来のエッジが適切に検出されるように、検出しきい値THを調整することができる。
【0056】
また、表示操作部15の画面の下部に、検出しきい値THを調整するための操作子TSが表示される。ユーザは、操作子TSを左右にドラッグすることにより、検出しきい値THを調整することができる。また、ユーザは、数値を直接的に入力することにより検出しきい値THを調整可能であってもよい。
【0057】
ウインドウWD内には、検出されたエッジが表示される。
図12の例では、エッジ強度波形EWのピークP1〜P3のうち、ピークP1,P3の値が検出しきい値THより大きい。そのため、ピークP1,P3に対応する検査画像IMの部分がエッジEL1,EL2として検出され、ウインドウWD内にエッジEL1,EL2を表す線分が表示される。この場合、検査画像IM上において、ピークP1,P2とエッジEL1,EL2とがそれぞれY方向に並ぶように表示される。それにより、ユーザは、算出されたエッジ強度と、検出されたエッジとの関係を直感的に認識することができる。
【0058】
また、検出されたエッジと重なるように、対象エッジを決定するためのカーソルCS1,CS2が表示される。
図12の例では、検出されたエッジの数と決定すべき対象エッジの数とが等しく、エッジEL1,EL2がそれぞれ対象エッジに決定される。
【0059】
続いて、
図13に示すように、選択された対象エッジEL1,EL2の特徴量が算出される。本例では、エッジEL1,EL2間の距離Lが特徴量として算出される。算出された特徴量が、良否判定のためのしきい値と比較される。例えば、設計値等の基準値に基づいて、下限しきい値および上限しきい値が定められる。本例では、基準値に対する下限しきい値の比率を調整するための操作子TSa、および基準値に対する上限しきい値の比率を調整するための操作子TSbが表示される。また、基準値に対する下限しきい値の比率および基準値に対する上限しきい値の比率をそれぞれ直接的に入力するための入力部INa,INbがそれぞれ表示される。ユーザは、操作子TSa,TSbを左右にドラッグする、または入力部INa,INbに数値を入力することにより、下限しきい値および上限しきい値を変更することができる。
【0060】
算出された特徴量が、下限しきい値以上かつ上限しきい値以下の範囲にある場合、判定結果が「良(OK)」となる。一方、算出された特徴量が、下限しきい値より小さい、または上限しきい値より大きい場合、判定結果が「不良(NG)」となる。検査が実行されると、これらの判定結果が表示操作部15の画面上に表示される。また、算出された特徴量と基準値との比率が表示操作部15の画面上に表示されてもよい。
【0061】
上記の例では、検出されたエッジの数と決定すべき対象エッジの数とが等しいが、これらが異なる場合、ユーザは、表示操作部15を操作して対象エッジを選択する。
図14は、対象エッジの選択について説明するための図である。
図14(a)の例では、エッジ強度波形のピークP21〜P25の値が検出しきい値THよりも大きい。そのため、ピークP21〜P25に対応するエッジEL21〜EL25がそれぞれ検出され、ウインドウWD内に表示される。
【0062】
対象エッジの数は2つであり、カーソルCS1,CS2がそれぞれ表示される。ユーザは、例えばカーソルCS1,CS2をドラッグすることにより、
図14(b)に示すように、カーソルCS1,CS2をエッジEL21〜EL25上でそれぞれ移動させることができる。それにより、容易にかつ直感的に対象エッジを決定することができる。
【0063】
カーソルの移動方法はこれに限定されない。例えば、カーソルCS1,CS2のうち一方が選択された後に、エッジEL21〜EL25のいずれかがタップされることにより、そのエッジ上に選択されたカーソルが移動されてもよい。また、例えば「右」ボタンおよび「左」ボタンが表示され、それらのボタンが操作されることにより、カーソルCS1,CS2がエッジEL21〜EL25上で左右に移動されてもよい。また、エッジEL21〜EL25にそれぞれ異なる番号が付され、ユーザによって番号が入力されると、その番号に対応するエッジが対象エッジに決定されてもよい。
【0064】
(6)マスク領域
ユーザは、検査画像上において、検査対象から除外すべき領域をマスク領域として設定することができる。
図15は、マスク領域の設定例について説明するため図である。
図15(a)の例では、検査画像IM上において、ウインドウWD内の一部領域と重なるように、マスク領域MRが設定される。この場合、マスク領域MR内に位置するエッジが表示されない。例えば、ウインドウWD内のエッジ強度が
図14の例と同じである場合、
図15(b)に示すように、エッジEL21〜EL25のうち、マスク領域MR内に位置するエッジEL23,EL24が表示されない。そのため、ウインドウWD内であってかつマスク領域MRを除いた位置において検出されるエッジEL21,EL22,EL25から対象エッジが決定される。
【0065】
マスク領域MRではエッジ強度自体が算出されなくてもよく、またはウインドウWD全体のエッジ強度が算出された後にマスク領域MRを除く位置にあるエッジのみが表示されてもよい。ウインドウWD全体のエッジ強度が算出されている場合には、マスク領域MRが変更または除去された際に、マスク領域MRにおいて表示されていなかったエッジを即座に表示させることができる。
【0066】
(7)機能部の動作
図16は、画像検査装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
図16に示すように、画像検査装置100は、画像データ取得部101、表示部102、ウインドウ設定部103、マスク領域設定部104、エッジ検出部105、エッジ決定部106、特徴量算出部107および良否判定部108を含む。一部の機能部は、
図1のFPGA141により実現され、他の機能部は、DSP142がメモリ143に記憶された制御プログラムを実行することにより実現される。
【0067】
図17は、
図16の各機能部の動作を示すフローチャートである。
図17に示すように、まず、画像データ取得部101が、検査画像データを取得する(ステップS1)。表示部102は、取得された検査画像データに基づいて、表示操作部15の画面上に検査画像を表示する(ステップS2)。ウインドウ設定部103は、ユーザの操作に基づいて、表示された検査画像にウインドウWDを設定する(ステップS3)。マスク領域設定部104は、ユーザの操作に基づいて、表示された検査画像においてマスク領域MRを設定する(ステップS4)。
【0068】
エッジ検出部105は、設定されたウインドウWD内のエッジ強度を算出する(ステップS5)。ステップS4においてマスク領域MRが設定されている場合には、マスク領域MR内のエッジ強度が算出されなくてもよい。また、エッジ検出部105は、算出されたエッジ強度の複数のピークを検出し、検出された複数のピークの値が互いに近づくようにエッジ強度を補正し(ステップS6)、補正後のエッジ強度を正規化する。さらに、エッジ検出部105は、正規化後のエッジ強度に基づいて、ウインドウWD内の1または複数のエッジを検出する(ステップS7)。
【0069】
エッジ決定部106は、ユーザの操作に基づいて、マスク領域MRを除く位置において検出された1または複数のエッジのうち対象エッジを決定する(ステップS8)。特徴量算出部107は、決定された対象エッジに対応する特徴量を算出する(ステップS9)。良否判定部108は、検出された特徴量に基づいて、検査対象物の良否を判定する(ステップS10)。このようにして、画像検査装置100による検査対象物Sの検査が行われる。
【0070】
(8)効果
本実施の形態に係る画像検査装置100においては、取得された検査画像データに基づいてウインドウWD内のエッジ強度が算出され、算出されたエッジ強度の複数のピークの値が互いに近づくようにエッジ強度が補正される。それにより、撮像条件の違いによって検査画像データの明るさにばらつきがあっても、ウインドウWD内の1または複数のエッジを適切に検出することができる。それにより、ユーザの熟練および煩雑な作業を必要とせずに、検査対象物Sの良否判定を適切に行うことができる。
【0071】
(9)特徴量の他の例
上記実施の形態では、対象エッジの特徴量として複数の対象エッジ間の距離が算出されるが、他の特徴量が算出されてもよい。
【0072】
例えば、対象エッジの数が特徴量として算出されてもよい。この場合、ウインドウWD内であってマスク領域MRを除く位置で検出されたエッジが全て対象エッジに決定される。対象エッジの数に基づいて、検査対象物Sの良否が判定される。これにより、不適切なエッジの存在または必要なエッジの欠落等を検出することができる。
【0073】
また、対象エッジの位置(座標)が特徴量として算出され、算出された位置に基づいて検査対象物Sの良否が判定されてもよい。また、算出された位置に基づいて、検査対象物Sの位置ずれを検出する位置ずれ検出手段が設けられてもよい。この場合、検出された位置ずれに基づいて、検査条件を補正することができる。例えば、検査対象とすべきエッジの検出範囲が予め定められる。その場合、検査対象物の位置ずれが生じると、予め定められた範囲で検出されるエッジが、検査対象とすべきエッジと異なる可能性がある。そこで、検出された位置ずれに基づいてエッジの検出範囲が補正され、補正後の範囲で検出されたエッジが対象エッジに再決定される。それにより、検査対象物Sの位置ずれが生じても、対象エッジを適切に決定することができる。
【0074】
また、検査対象物Sが複数のエッジペア(エッジの対)を有する場合、それらのエッジペアに関する特徴量が算出されてもよい。
図18は、エッジペアの例について説明するための図である。
図18の例では、検査対象物Sが、複数の端子TEを有する電子部品である。各端子TEの一方の辺および他方の辺を含むようにウインドウWDが設定される。それにより、複数の端子TEの各々について、一方の辺に対応するエッジELaおよび他方の辺に対応するエッジELbが検出される。
【0075】
本例では、各端子TEに対応する2つのエッジELa,ELbがエッジペアとして対象エッジに決定される。この場合、各エッジペアのエッジELa,ELb間の距離Laが特徴量として算出されてもよく、または隣り合う一方のエッジペアの中心と他方のエッジペアの中心との間の距離Lbが特徴量として算出されてもよい。これにより、複数の端子TEが適切に配置されているか否かを判定することができる。
【0076】
(10)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0077】
上記実施の形態においては、画像検査装置100が画像検査装置の例であり、画像データ取得部101が画像データ取得手段の例であり、表示部102が表示手段の例であり、ウインドウ設定部103がウインドウ設定手段の例であり、エッジ検出部105がエッジ検出手段の例であり、エッジ決定部106がエッジ決定手段の例であり、特徴量算出部107が特徴量算出手段の例であり、良否判定部108が良否判定手段の例である。また、マスク領域設定部104がマスク領域設定手段の例であり、検出ラインTHLが検出ラインの例であり、検出ラインTHLおよび操作子TSが操作子の例である。
【0078】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。