特許第6586002号(P6586002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6586002-オフセット印刷用途のための画像化部材 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586002
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】オフセット印刷用途のための画像化部材
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/14 20060101AFI20190919BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B41N1/14
   C08L27/12
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-235934(P2015-235934)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2016-112885(P2016-112885A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年11月16日
(31)【優先権主張番号】14/574,037
(32)【優先日】2014年12月17日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マンダキニ・カナンゴ
(72)【発明者】
【氏名】アントン・グリゴリエフ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジェイ・ワンタック
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ジェイ・ジェルヴァシ
(72)【発明者】
【氏名】サントク・エス・バデシャ
【審査官】 村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0236705(US,A1)
【文献】 特開2014−046689(JP,A)
【文献】 特開平10−230692(JP,A)
【文献】 特開2014−046692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/14
C08L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層フルオロエラストマーであって、
前記表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として55重量%〜83.85重量%のフルオロシリコーンと、
前記表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として5重量%〜20重量%の赤外線吸収材料と、
前記表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として1重量%〜5重量%のシリカと、
前記表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として0.15重量%〜0.35重量%の触媒と、
前記表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として10重量%〜18重量%の架橋剤とを含む、表面層フルオロエラストマー。
【請求項2】
73重量%〜79.8重量%の前記フルオロシリコーンと、
7重量%〜15重量%の前記赤外線吸収材料と、
1重量%〜4重量%の前記シリカと、
0.2重量%〜0.3重量%のPt触媒である前記触媒と、
12重量%〜16重量%の前記架橋剤とを含む、請求項1に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項3】
前記赤外線吸収材料は、カーボンブラック、金属酸化物、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトおよび炭素繊維の少なくとも1つを含む、請求項2に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項4】
20重量%のカーボンブラックと、
1.15重量%のシリカと、
0.25重量%のTFT中の14.3重量%Pt触媒と、
15重量%の架橋剤とを含む、請求項1に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項5】
前記カーボンブラックは、硫黄含有量が0.3%以下である、請求項3に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項6】
前記シリカは、疎水性シリカを含む、請求項5に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項7】
前記表面層フルオロエラストマーは、1.15重量%の疎水性シリカを含む、請求項6に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項8】
前記カーボンブラックは、平均粒径が2ナノメートル〜10ミクロンであり、前記シリカは、平均粒径が10ナノメートル〜0.2ミクロンである、請求項7に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項9】
前記フルオロシリコーン中のシロキサン単位の少なくとも75%は、フッ素化されている、請求項8に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項10】
前記カーボンブラックは、前記フルオロシリコーン中で凝集しない、請求項9に記載の表面層フルオロエラストマー。
【請求項11】
表面層を備える画像化部材であって、前記表面層が、
前記表面層の合計重量を基準として55重量%〜83.85重量%のフルオロシリコーンと、
前記表面層の合計重量を基準として5重量%〜20重量%の赤外線吸収材料と、
前記表面層の合計重量を基準として1重量%〜5重量%のシリカと、
前記表面層の合計重量を基準として0.15重量%〜0.35重量%の触媒と、
前記表面層の合計重量を基準として10重量%〜18重量%の架橋剤とを含み、
前記表面層は、厚みが10ミクロン〜1ミリメートルであり、表面引張エネルギーが22ダイン/cm以下であり、極性要素が5ダイン以下である、画像化部材。
【請求項12】
前記表面層が、
73重量%〜79.8重量%の前記フルオロシリコーンと、
7重量%〜15重量%の前記赤外線吸収材料と、
1重量%〜4重量%の前記シリカと、
0.2重量%〜0.3重量%のPt触媒である前記触媒と、
12重量%〜16重量%の前記架橋剤とを含む、請求項11に記載の画像化部材。
【請求項13】
前記赤外線吸収材料は、カーボンブラック、金属酸化物、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトおよび炭素繊維の少なくとも1つを含む、請求項12に記載の画像化部材。
【請求項14】
前記表面層は、疎水性シリカを含み、前記カーボンブラックは、硫黄含有量が0.3%未満である、請求項13に記載の画像化部材。
【請求項15】
画像化部材を作製する方法であって、
基材の上に表面層をフローコーティングすることと、
コーティングされた前記表面層を高温で硬化させることとを含み、
前記表面層が、
前記表面層の合計重量を基準として55重量%〜83.85重量%のフルオロシリコーンと、
前記表面層の合計重量を基準として5重量%〜20重量%の赤外線吸収材料と、
前記表面層の合計重量を基準として1重量%〜5重量%のシリカと、
前記表面層の合計重量を基準として0.15重量%〜0.35重量%の触媒と、
前記表面層の合計重量を基準として10重量%〜18重量%の架橋剤とを含み、
前記表面層は、厚みが10ミクロン〜1ミリメートルであり、表面引張エネルギーが22ダイン/cm以下であり、極性要素が5ダイン以下である、方法。
【請求項16】
前記表面層が、
73重量%〜79.8重量%の前記フルオロシリコーンと、
7重量%〜15重量%の前記赤外線吸収材料と、
1重量%〜4重量%の前記シリカと、
0.2重量%〜0.3重量%のPt触媒である前記触媒と、
12重量%〜16重量%の前記架橋剤とを含み、
前記赤外線吸収材料は、カーボンブラック、金属酸化物、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトおよび炭素繊維の少なくとも1つを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記表面層は、疎水性シリカを含み、前記カーボンブラックは、硫黄含有量が0.30%以下である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カーボンブラックは、平均粒径が2ナノメートル〜10ミクロンであり、前記シリカは、平均粒径が10ナノメートル〜0.2ミクロンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フルオロシリコーン中のシロキサン単位の少なくとも75%は、フッ素化されている、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記カーボンブラックは、前記フルオロシリコーン中で凝集しない、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、本明細書に記載されるような表面層を備える画像化部材に関し、さらに特定的には、画像化部材のための表面層を作成することができる、フルオロシリコーン、赤外線吸収材料およびシリカを含むフルオロエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセットリソグラフィーは、一般的な種類の印刷方法である。典型的なリソグラフィー印刷プロセスでは、印刷プレートは、平板、円柱形の表面またはドラム、ベルトの表面などであってもよく、疎水性/親油性の材料から作られる「画像領域」と、親水性/疎油性材料から作られる「非画像領域」を有するように作られる。画像領域は、印刷材料またはマーキング材料(例えば、インク)によって占められる、最終的な印刷物(すなわち、標的基材)の領域に対応する。一方、非画像領域は、このマーキング材料によって占められない最終的な印刷物の領域に対応する。親水性領域は、水系流体を簡単に受け入れ、この流体に簡単に濡れ、一般的に湿し液または濡らし液と呼ばれる(典型的には、水および少量のアルコール、および流体の表面張力を下げるために含まれる他の添加剤および/または界面活性剤からなる)。疎水性領域は、湿し液をはじき、インクを受け入れ、一方、親水性領域の上に作られる湿し液は、インクを拒絶する流体「剥離層」を形成する。従って、印刷プレートの親水性領域は、最終印刷物の印刷されていない領域、つまり「非画像領域」に対応する。
【0003】
インクを、標的基材(例えば、紙)に直接転写してもよく、または、中間体表面、例えば、オフセット印刷システムのオフセット(またはブランケット)シリンダに塗布してもよい。オフセットシリンダは、標的基材のテクスチャに適合させることができる表面を有する適合させることが可能なコーティングまたはスリーブで覆われており、表面の山から谷までの深さは、画像形成プレート表面の山から谷までの深さよりもいくらか大きくてもよい。また、オフセットブランケットシリンダの表面粗さは、欠陥(例えば、斑点)のない標的基材に対し、もっと均一な印刷材料の層を運ぶのに役立つ。十分な圧力を使用し、オフセットシリンダから、標的基材へと画像を転写させる。オフセットシリンダとインプレッションシリンダとの間に標的基材を挟み、この圧力を与える。
【0004】
典型的なリソグラフィー印刷技術およびオフセット印刷技術は、永久的にパターン形成されたプレートを使用し、従って、同じ画像の大量な複写物を印刷する場合(すなわち、長時間の印刷操作)、例えば、雑誌、新聞紙などの場合にのみ有用である。しかし、これらの技術は、一般的に、印刷シリンダおよび/または画像形成プレートを除去し、交換することなく、1ページごとに異なる新しいパターンを印刷する書面を作成し、印刷することができない(すなわち、この技術は、例えば、デジタル印刷システムのように、一刷りごとに画像が変わる真の高速バリアブル印刷に合わせることができない)。さらに、永久的にパターン形成された画像形成プレートまたはシリンダの費用は、複写物の数が増えれば償却される。従って、印刷した複写物あたりの費用は、デジタル印刷システムからの印刷とは対象的に、同じ画像を長い間何度も印刷するよりも、同じ画像を短い間印刷する方が高くなる。
【0005】
従って、湿し液の層で最初に均一にコーティングされた、パターン形成されず再画像形成可能な表面を使用するリソグラフィー技術(バリアブルデータリソグラフィーと呼ばれる)が開発された。湿し液の領域は、集束した照射源(例えば、レーザ光源)にさらされることによって除去され、ポケットを形成する。従って、湿し液中の一時的なパターンは、パターン形成されていない再画像形成可能な表面の上に作られる。その表面の上に塗布されたインクは、湿し液を除去することによって作られるポケットに保持される。次いで、インクが付いた表面を、基材と接触させ、インクは、湿し液中のポケットから基材に転写される。次いで、湿し液を除去し、湿し液の新しい均一な層を、再画像形成可能な表面の上に塗布し、この工程を繰り返してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
何年にもわたって、種々の印刷システムにフルオロエラストマーおよびフルオロポリマーが使用されてきた。例えば、バリアブルデータリソグラフィーシステムにおいて、再画像作成可能な表面を作成するために、フルオロエラストマーが使用されてきた。フルオロエラストマーは、特定のトナーおよび印刷インク材料と共に使用されるとき、その熱特性および化学特性と、剥離特性に魅力がある。従って、オフセット印刷および/またはバリアブルデータリソグラフィーのため、および他の印刷用途のための新しいシステムを開発することができる新規フルオロエラストマーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本教示の1つ以上の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を与えるために、単純化された概要を以下に提示する。この概要は、広範囲にわたる概観ではなく、本教示の鍵となる要素または必須要素を特定することを意図しておらず、本開示の範囲の輪郭を描くものでもない。むしろ、後に提示する詳細な記載の前置きとして、その主な目的は、単純化された形態で1つ以上の概念を単に提示することである。
【0008】
さらなる目標および利点は、図面、本開示の詳細な記載および特許請求の範囲からもっと明らかになるだろう。
【0009】
本開示で具現化される上の態様および有用性および/または他の態様および有用性は、表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として55重量%〜95重量%のフルオロシリコーンと、表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として5重量%〜20重量%の赤外線吸収材料と、表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として1重量%〜5重量%のシリカと、表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として0.15重量%〜0.35重量%の触媒と、表面層フルオロエラストマーの合計重量を基準として10重量%〜18重量%の架橋剤とを含む、表面層フルオロエラストマーを提供することによって達成されるだろう。
【0010】
別の実施形態では、表面層フルオロエラストマーは、83%〜93%のフルオロシリコーンと、7重量%〜15重量%の赤外線吸収材料と、1%〜4%のシリカと、0.2%〜0.3%のPt触媒である触媒と、12%〜16%の架橋剤とを含む。
【0011】
別の実施形態では、赤外線吸収材料は、カーボンブラック、金属酸化物、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトおよび炭素繊維のうち少なくとも1つを含む。
【0012】
別の実施形態では、表面層フルオロエラストマーは、約20%のカーボンブラックと、約1.15%のシリカと、約0.25%のTFT中の14.3%Pt触媒と、約15%の架橋剤とを含む。
【0013】
別の実施形態では、カーボンブラックは、硫黄含有量が0.3%以下である。
【0014】
別の実施形態では、シリカは、疎水性シリカを含む。
【0015】
別の実施形態では、表面層フルオロエラストマーは、約1.15%の疎水性シリカを含む。
【0016】
別の実施形態では、カーボンブラックは、平均粒径が2ナノメートル〜10ミクロンであり、シリカは、平均粒径が10ナノメートル〜0.2ミクロンである。
【0017】
別の実施形態では、フルオロシリコーン中のシロキサン単位の少なくとも75%は、フッ素化されている。
【0018】
別の実施形態では、カーボンブラックは、フルオロシリコーン中で凝集しない。
【0019】
本開示で具現化される上の態様および有用性および/または他の態様および有用性は、表面層を備える画像化部材であって、この表面層が、表面層の合計重量を基準として55重量%〜95重量%のフルオロシリコーンと、表面層の合計重量を基準として5重量%〜20重量%の赤外線吸収材料と、表面層の合計重量を基準として1重量%〜5重量%のシリカと、表面層の合計重量を基準として0.15重量%〜0.35重量%の触媒と、表面層の合計重量を基準として10重量%〜18重量%の架橋剤とを含み、表面層は、厚みが10ミクロン〜1ミリメートルであり、表面引張エネルギーが22ダイン/cm以下であり、極性要素が5ダイン以下である、画像化部材を提供することによって達成されてもよい。
【0020】
別の実施形態では、表面層は、83%〜93%のフルオロシリコーンと、7重量%〜15重量%の赤外線吸収材料と、1%〜4%のシリカと、0.2%〜0.3%のPt触媒である触媒と、12%〜16%の架橋剤とを含む。
【0021】
別の実施形態では、赤外線吸収材料は、カーボンブラック、金属酸化物、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトおよび炭素繊維のうち少なくとも1つを含む。
【0022】
別の実施形態では、表面層は、疎水性シリカを含み、カーボンブラックは、硫黄含有量が0.3%未満である。
【0023】
本開示で具現化される上の態様および有用性および/または他の態様および有用性は、画像化部材を作成する方法であって、基材の上に表面層をフローコーティングすることと、コーティングされた表面層を高温で硬化させることとを含み、この表面層が、表面層の合計重量を基準として55重量%〜95重量%のフルオロシリコーンと、表面層の合計重量を基準として5重量%〜20重量%の赤外線吸収材料と、表面層の合計重量を基準として1重量%〜5重量%のシリカと、表面層の合計重量を基準として0.15重量%〜0.35重量%の触媒と、表面層の合計重量を基準として10重量%〜18重量%の架橋剤とを含み、表面層は、厚みが10ミクロン〜1ミリメートルであり、表面引張エネルギーが22ダイン/cm以下であり、極性要素が5ダイン以下である、方法を提供することによって達成されてもよい。
【0024】
別の実施形態では、表面層は、83%〜93%のフルオロシリコーンと、7重量%〜15重量%の赤外線吸収材料と、1%〜4%のシリカと、0.2%〜0.3%のPt触媒である触媒と、12%〜16%の架橋剤とを含み、赤外線吸収材料は、カーボンブラック、金属酸化物、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイトおよび炭素繊維の少なくとも1つを含む。
【0025】
別の実施形態では、表面層は、疎水性シリカを含み、カーボンブラックは、硫黄含有量が0.30%以下である。
【0026】
別の実施形態では、カーボンブラックは、平均粒径が2ナノメートル〜10ミクロンであり、シリカは、平均粒径が10ナノメートル〜0.2ミクロンである。
【0027】
別の実施形態では、フルオロシリコーン中のシロキサン単位の少なくとも75%は、フッ素化されている。
【0028】
別の実施形態では、カーボンブラックは、フルオロシリコーン中で凝集しない。
【0029】
本開示の実施形態のこれらの態様および利点および/または他の態様および利点は、添付の図面と組み合わせて、種々の実施形態の以下の記載から明らかになり、もっと簡単に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、オフセット印刷システムを示す。
図2図2は、フルオロエラストマー組成物の走査型電子顕微鏡である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面のいくつかの詳細は単純化されており、厳格な構造的な正確性、詳細および縮尺を維持するのではなく、本教示の理解を促進するために描かれていることを注記すべきである。
【0032】
上の図面は、必ずしも縮尺通りではなく、本開示の原理を示すとき、代わりに一般的に強調がなされる。さらに、特定の要素の詳細を示すために、ある特徴が強調されていてもよい。これらの図面/図は、例示的であり、限定的ではないことを意図している。
【0033】
本開示の種々の実施形態について、詳細に参照がなされるだろう。本明細書に開示される要素、プロセスおよび装置をもっと完全に理解するために、以下に実施形態が記載される。与えられる任意の例は、例示的であり、限定的ではないことを意図している。明細書および特許請求の範囲全体で、以下の用語は、明確に他の意味であると示されていない限り、本明細書に明確に示されている意味を有する。「ある実施形態では」および「一実施形態では」という句は、本明細書で使用される場合、必ずしも同じ実施形態を指すわけではないが、同じ実施形態を指してもよい。さらに、「別の実施形態では」および「ある他の実施形態では」の句は、本明細書で使用される場合、必ずしも異なる実施形態を指すわけではないが、異なる実施形態を指してもよい。以下に記載するように、種々の実施形態を、本開示の範囲または精神から逸脱することなく、簡単に合わせてもよい。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「または」は、包括的な記号であり、内容が明確に矛盾しない限り、用語「および/または」と等価である。「〜を基準として」という用語は、排他的ではなく、内容が明確に矛盾しない限り、記載されていないさらなる因子に基づくことを可能とする。本明細書では、「A、BおよびCの少なくとも1つ」という引用は、A、BまたはCを含む実施形態を含み、A、BまたはC、またはA/B、A/C、B/Cの組み合わせなどの複数の例を含む。これに加え、本明細書全体で、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」の意味は、複数の言及物を含む。「in」の意味は、「in」と「on」を含む。
【0035】
本明細書で以下に定義されるあらゆる物理的特性は、特に明記されない限り、20℃〜25℃で測定される。「室温」という用語は、特に明記されない限り、25℃を指す。
【0036】
本明細書の値の任意の数値範囲に言及する場合、このような範囲は、述べられている最小と最大の範囲のそれぞれおよびすべての数および/または部分を含むと理解される。例えば、0.5%〜6%の範囲は、0.6%、0.7%および0.9%から、5.95%、5.97%および5.99%といったすべての中間的な値を明確に含む。他の意味であると明確に記載されていない限り、本明細書に記載される数値特性および/または要素範囲のセットを互いに適用する。
【0037】
フルオロエラストマー組成物が、インク系デジタルオフセット印刷またはバリアブルデータリソグラフィー印刷システムに関連して本明細書に記載されるが、フルオロエラストマー組成物の実施形態、またはこれを用いて画像化部材を製造する方法を、インク系デジタルオフセット印刷またはバリアブルデータリソグラフィー印刷システム以外の印刷用途を含め、他の用途で使用してもよい。
【0038】
図1は、オフセット印刷システムを示す。図1に示されるように、オフセット印刷システムは、画像化部材12を備えていてもよい。一実施形態では、画像化部材は、基材22と、再画像作成可能な表面層20とを備える。表面層は、画像化部材の最外層であり、すなわち、基材22から最も遠い画像化部材の層である。一実施形態では、表面層20は、フルオロエラストマー組成物を含む。本明細書で示すように、基材22は、円筒形の形状であり、しかし、基材は、ベルト形態などであってもよい。ある実施形態では、表面層は、異なる機能を発揮し得るため、基材と比較して異なる材料であることを注記すべきである。
【0039】
図1に示されるように、一実施形態では、画像化部材12は、反時計回りに回転し、きれいな表面で開始する。第1の位置に湿し液サブシステム30が配置され、湿し液32で表面を均一に濡らし、均一な制御された厚みを有する層を作成する。ある実施形態では、湿し液の層は、厚みが約0.15マイクロメートル〜約1.0マイクロメートルであり、均一であり、ピンホールがない。以下にさらに説明されるように、湿し液の組成物は、平坦化および層の厚みの均一化を補助する。センサ34(例えば、系中の非接触型レーザ光沢センサまたはレーザコントラストセンサ)を使用し、層の均一性を確認してもよい。このようなセンサを使用し、湿し液サブシステム30を自動化してもよい。
【0040】
光学パターン形成サブシステム36で、湿し液の層をエネルギー源(例えば、レーザ)にさらし、層の一部にエネルギーを選択的に加え、湿し液を画像状になるように蒸発させ、受け入れ基材に印刷されることが望ましいインク画像の「ネガティブ」潜像を作成してもよい。インクが望ましい場所にインク画像を作成し、湿し液が残っている場所に非画像領域が作られる。ある実施形態では、任意要素のエアナイフ44は、きれいな乾燥空気の供給を維持し、空気の温度を制御し、インク付与前の塵の汚染を減らすために、表面層20の上の空気の流れを制御する。次に、ある実施形態では、インク組成物は、インク付与サブシステム46を用い、画像化部材に塗布される。インク付与サブシステム46は、1つ以上の成形ローラー46A、46Bの上でオフセットインク組成物を秤量するためのアニロックスローラーを用いた「キーレス」システムからなっていてもよい。インク組成物を画像領域に塗布し、インク画像を作成する。
【0041】
ある実施形態では、レオロジーを制御するサブシステム50を使用し、インク画像を部分的に硬化させるか、または粘着性にする。この硬化源は、例えば、紫外光発光ダイオード(UV−LED)52であってもよく、所望な場合、光学レンズ54を用いて集束させてもよい。凝集および粘度を上げる別の様式は、インク組成物の冷却を使用する。この冷却は、例えば、インク組成物を塗布した後、インク組成物を最終基材に転写する前に、吐出部58から再画像作成可能な表面に冷たい空気を流すことによって行うことができた。または、加熱要素59は、第1の温度を維持するためにインク付与サブシステム46付近で使用されてもよく、冷却要素57は、爪16付近のもっと冷たい第2の温度を維持するために使用されてもよい。
【0042】
ある実施形態によれば、次いで、転写サブシステム70で、インク画像を標的または受け入れ基材14に転写する。この転写は、記録媒体または受け入れ基材14(例えば、紙)を、インプレッションローラー18と画像化部材12との間の爪16を介して通過させることによって達成する。
【0043】
最後に、ある実施形態では、画像化部材から残留インクまたは湿し液を除去しなければならない。この残渣のほとんどは、十分に空気を流しつつ、エアナイフ77を用いて迅速に簡単に除去することができる。残ったインクの除去は、洗浄サブシステム72で達成することができる。
【0044】
ある実施形態では、湿し液は、疎水性(すなわち、非水性)であり、インクは、ある程度親水性である(小さな極性成分を含む)。この組み合わせを、種々の実施形態のフルオロエラストマー組成物を用い、表面層20と共に使用することができる。一般的に言えば、ある実施形態では、バリアブルリソグラフィー印刷システムは、インク組成物、湿し液および画像化部材表面層を含むものとして記述されてもよく、湿し液は、インクの表面エネルギーおよび画像化部材表面層の表面エネルギーのためのα−β座標を接続する円の中の表面エネルギーα−β座標を有する。他の実施形態では、湿し液は、全表面張力が10ダイン/cmより大きく、75ダイン/cmより小さく、極性要素は、50ダイン/cm未満である。ある実施形態では、湿し液は、全表面張力が15ダイン/cmより大きく、30ダイン/cmより小さく、極性要素は、5ダイン/cmより小さい。
【0045】
ある実施形態によれば、適切な化学を選択することによって、インクと湿し液の両方が画像化部材表面層20を濡らすが、インクと湿し液は、互いに濡れないシステムを工夫することが可能である。システムは、インク存在下、表面を濡らす高いアフィニティを有することによって画像化部材表面層20からインク残渣を実際に持ち上げるようなインク残渣存在下、湿し液がエネルギー的に望ましいように設計することもできる。言い換えると、湿し液は、その後の印刷を進めることから微細なバックグラウンド欠陥(例えば、1μm未満の半径)を除去することができる。
【0046】
一実施形態では、湿し液は、湿し液が画像化部材表面を濡らすようなわずかに正の広がり係数を有するべきである。湿し液は、インク存在下、広がり係数も維持すべきであり、または言い換えると、湿し液は、インクが付いている表面よりも画像化部材表面に対して近い表面エネルギー値を有する。これにより、画像化部材表面がが、インクと比較して、湿し液によって濡れ、湿し液がインク残渣から剥がれることができ、レーザが湿し液を除去しない表面にインクが付着するのを拒絶する。一実施形態では、インクは、粗さ向上因子を用い(すなわち、表面に湿し液が存在しない場合)、空気中で画像化部材表面を濡らさなければならない。ある実施形態では、インクが厚み1〜2μmで塗布された場合、表面は、粗さが1μm未満であることを注記しておくべきである。一実施形態では、湿し液は、空気存在下、インクを塗らさない。言い換えると、出口のインク付与爪での割れ目がインクと湿し液の界面で起こり、湿し液自体では起こらない。このように、インクが受け入れ基材に転写された後に、湿し液は、画像化部材表面に留まらない傾向がある。最終的に、ある実施形態では、乳化した混合物のみが存在し得るように、インクと湿し液が化学的に不混和性であることも望ましい。インクと湿し液が、近いα−β座標を有していてもよいが、多くは異なるレベルの水素結合を有する化学成分を選択し、Hanson溶解度パラメータの差を大きくすることによって混和性を下げることができる。
【0047】
湿し液の役割は、画像形成の選択性および受け入れ基材へのインクの転写を与えることである。一実施形態では、図1のインク源のインクドナーロールが湿し液の層と接触すると、インクは、画像化部材の領域(すなわち、湿し液に覆われていない)にのみ塗布され、これを乾燥させる。
【0048】
ある実施形態では、湿し液が、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)とデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)の混合物を含むことが想定される。ほとんどのシリコーンは、D4およびD5から誘導され、Rochowプロセスで作られるクロロシランの加水分解によって作られる。加水分解反応から蒸留したD4とD5の比率は、一般的に、重量でD4 約85% 対 D5 15%であり、この組み合わせは、共沸混合物である。ある実施形態では、湿し液は、D4のみを含んでいてもよく、または実質的にD4のみを含んでいてもよい。
【0049】
特定の実施形態では、湿し液が、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)とヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)の混合物を含むことが想定され、D3は、D3およびD4の合計重量の30%までの量で存在する。この混合物の影響は、湿し液の薄層の有効沸点を下げることである。
【0050】
これらの揮発性ヒドロフルオロエーテル液および揮発性シリコーン液は、低い蒸発熱、低い表面張力および良好な動的粘度を有する。特に、ある実施形態によれば、D4を湿し液として使用し、D4との優れた濡れ性を示すとき、本開示の画像化部材表面層のフルオロシリコーンが膨潤しないことを注記すべきである。
【0051】
本開示と共に使用するために想定されたインク組成物は、一般的に、着色剤と、複数の選択された化合物とを含む。硬化可能な化合物を、紫外(UV)線で硬化させ、最終的な受け入れ基材の所定の位置にインクを固定することができる。本明細書で使用される場合、用語「着色剤」は、顔料、染料、量子ドット、これらの混合物などを含む。染料および顔料が特に利点がある。染料は、インク媒剤への良好な溶解性および分散性を有する。顔料は、優れた熱的性能および耐光性能を有する。着色剤は、インク組成物中、任意の望ましい量で存在し、典型的には、インク組成物の合計重量を基準として、約10〜約40重量%(wt%)、または約20〜約30wt%の量で存在する。種々の顔料および染料は、当該技術分野で公知であり、名前をいくつか挙げると、Clariant、BASFおよびCibaのような供給業者から市販されている。
【0052】
インク組成物は、25℃、剪断速度5sec−1での粘度が約5,000〜約300,000センチポイズであってもよく、約15,000〜約250,000cpの粘度を含む。インク組成物は、25℃、剪断速度50sec−1での粘度が約2,000〜約90,000センチポイズであってもよく、約5,000〜約65,000cpの粘度を含む。ずり薄化指数(すなわち、SHI)は、本開示において、2つの異なる剪断速度(ここでは、50sec−1と5sec−1)でのインク組成物の粘度比であると定義される。これは、SHI(50/5)と省略してもよい。SHI(50/5)は、本開示のインク組成物について、約0.10〜約0.60であってもよく、約0.35〜約0.55を含む。これらのインク組成物は、25℃での表面張力が少なくとも約25ダイン/cmであってもよく、約25ダイン/cm〜約40ダイン/cmを含む。これらのインク組成物は、多くの望ましい物理特性および化学特性を有する。これらは、接触し得る材料(例えば、湿し液、画像化部材の表面層および最終的な受け入れ基材)と適合性である。これらは、必要な濡れ特性および転写特性も有する。これらは、所定の位置でUV硬化し、固定させることができる。これらは、良好な粘度も有し、従来のオフセットインクは、通常は、粘度が50,000cpより高く、ノズル系インクジェット技術と共に用いるには高すぎる。それに加え、克服する最も困難な課題の1つは、以前の画像のゴースト現象を起こすことなく、デジタル印刷を可能にする首尾良いデジタル画像の洗浄および廃棄物の取り扱いの必要性である。これらのインクは、インクが分離せず、非常に高い転写効率を可能にするように設計され、従って、洗浄および廃棄物の取り扱いに関連する多くの問題を克服する。本開示のインク組成物は、ゲル化せず、一方、単純なブレンドによって作られる通常のオフセットインクは、ゲル化し、相分離に起因して使用することができない。
【0053】
画像化部材12は、バリアブルデータリソグラフィー印刷プロセスで複数の役割を果たし、(1)湿し液を用いて濡れる、(2)潜像の作成、(3)オフセットインクのインク付与、および(4)インクを剥がし、受け入れ基材に転写することができる。画像化部材(特に、その表面)の望ましいいくつかの品質は、画像化部材の有用な耐用寿命を延ばすための高い引張強度を含む。ある実施形態では、表面層20は、インクに対して弱く接着すべきであり、インクと濡れることができる場合でも、画像領域の均一なインク付与を促進し、その後の表面から受け入れ基材へのインクの転写を促進するべきである。最後に、いくつかの溶媒は、画像化部材の表面層を不可避的にある程度膨潤させるような低分子量を有する。これらの膨潤条件では、画像化部材表面で近赤外エネルギーを吸収する粒子が剥離することによって、画像化表面で間接的に摩耗が進むことがあり、次いで、これが摩耗粒子として作用する。従って、ある実施形態では、画像化部材表面層は、溶媒が浸透する傾向は低い。
【0054】
ある実施形態では、表面層20は、全体的な印刷システムの要求に依存して、厚みが約10ミクロン(μm)〜約1ミリメートル(mm)であってもよい。他の実施形態では、表面層20は、厚みが約20ミクロン(μm)〜約100ミクロン(μm)である。一実施形態では、表面層20の厚みは、約40ミクロン(μm)〜約60ミクロン(μm)である。
【0055】
ある実施形態では、表面層20は、表面エネルギーが22ダイン/cm以下であり、極性要素が5ダイン/cm以下であってもよい。他の実施形態では、表面層20は、表面張力が21ダイン/cm以下、極性要素が2ダイン/cm以下、または表面張力が19ダイン/cm以下、極性要素が1ダイン/cm以下であってもよい。
【0056】
ある実施形態は、画像化部材表面層20を製造する方法を想定する。例えば、一実施形態では、この方法は、型に表面層フルオロエラストマー組成物を堆積させることと;表面層フルオロエラストマー組成物を高温で硬化させることとを含む。
【0057】
一実施形態によれば、基材22を表面層20としてフルオロエラストマー組成物でコーティングし、高温で硬化させることによって画像化部材12が作られる。一実施形態では、表面層フルオロエラストマー組成物は、フルオロシリコーン、赤外線を吸収するフィラーおよびシリカを含む。他の実施形態では、表面層フルオロエラストマー組成物は、さらに、触媒(例えば、白金触媒)および架橋剤を含んでいてもよい。一実施形態では、表面層フルオロエラストマー組成物を、スプレーノズルを介して基材22にフローコーティングし、高温で硬化させる。例えば、表面層フルオロエラストマー組成物を、スピンドル速度5〜300RPM、コーティングのヘッド横断速度2〜60mm/min、コーティング分散速度6〜40グラム/minおよび25℃での相対湿度40〜65%で回転する基材22に堆積させてもよい。
【0058】
硬化を約110℃〜約160℃の高温で行ってもよい。この高温は、室温と対照的である。硬化は、約15分〜約4時間の期間行われてもよい。ある実施形態では、硬化時間は、15分〜1時間である。一実施形態では、固化時間は、約30分である。
【0059】
上述のように、表面層20は、フルオロエラストマー組成物を含んでいてもよい。一実施形態では、フルオロエラストマー組成物の配合物は、フルオロシリコーン、赤外線を吸収するフィラーおよびシリカを含む。他の実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、さらに、触媒、例えば、白金触媒および架橋剤、例えば、NuSilから市販されているXL−150架橋剤を含んでいてもよい。
【0060】
「シリコーン」という用語は、関連分野の技術分野で十分に理解されており、ケイ素原子および酸素原子から作られる骨格と、炭素原子および水素原子を含む側鎖とを有するポリオルガノシロキサンを指す。本出願の目的のために、「シリコーン」という用語は、フッ素原子を含有するシロキサンを除外するものとも理解すべきであり、一方、「フルオロシリコーン」という用語は、フッ素原子を含有するシロキサン群を包含するために用いられる。シリコーンゴム中に、他の原子(例えば、架橋中にシロキサン鎖を結合するために用いられるアミン基中の窒素原子)が存在していてもよい。
【0061】
用語「フルオロシリコーン」は、本明細書で使用される場合、ケイ素および酸素原子から作られる骨格と、炭素、水素およびフッ素原子を含む側鎖とを含む、ポリオルガノシロキサンを指す。少なくとも1つのフッ素原子は、側鎖に存在する。側鎖は、直鎖、分枝鎖、環状または芳香族であってもよい。フルオロシリコーンは、架橋を可能にする官能基、例えば、アミノ基を含んでいてもよい。架橋が終了したら、このような基は、全体的なフルオロシリコーンの骨格の一部になる。ポリオルガノシロキサンの側鎖は、アルキルまたはアリールであってもよい。フルオロシリコーンは、例えば、NuSil製のCF1−3510またはWacker製のSLM(n−27)から市販される。
【0062】
ある実施形態では、少なくとも75%のシロキサン単位は、フルオロシリコーン中、フッ素化している。フッ素化シロキサン単位の割合は、それぞれのケイ素原子が2つの可能な側鎖を含むことを考慮することによって決定することができる。この割合は、少なくとも1つのフッ素原子を含む側鎖の数を、側鎖の合計数で割ることによって計算される。
【0063】
一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、55重量%〜95重量%のフルオロシリコーンを含む。別の実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、85重量%〜93重量%のフルオロシリコーンを含む。さらに別の実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として約73重量%のフルオロシリコーンを含む。
【0064】
赤外線を吸収するフィラーは、スペクトルの赤外部分からエネルギーを吸収することができる(約750nm〜約1000nmの波長を有する)。これにより、湿し液溶液の有効な蒸発を補助する。いくつかの実施形態では、赤外線を吸収するフィラーは、カーボンブラック、金属酸化物、例えば、酸化鉄(FeO)、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、または炭素繊維であってもよい。フィラーは、平均粒径が約2ナノメートル〜約10ミクロンであってもよい。一実施形態では、フィラーは、平均粒径が約20ナノメートル〜約5ミクロンであってもよい。別の実施形態では、フィラーは、平均粒径が約100ナノメートルである。
【0065】
一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、5重量%〜20重量%の赤外線を吸収するフィラーを含む。別の実施形態では、フルオロエラストマーは、7重量%〜15重量%の赤外線を吸収するフィラーを含む。さらに別の実施形態では、フルオロエラストマーは、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、約20重量%の赤外線を吸収するフィラーを含む。
【0066】
一実施形態では、赤外線を吸収するフィラーは、カーボンブラックである。別の実施形態では、赤外線を吸収するフィラーは、低硫黄カーボンブラック、例えば、Emperor 1600(Cabotから入手可能)である。一実施形態では、カーボンブラックの硫黄含有量は、0.3%以下である。別の実施形態では、カーボンブラックの硫黄含有量は、0.15%以下である。
【0067】
一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、シリカを含む。例えば、一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、1重量%〜5重量%のシリカを含む。別の実施形態では、フルオロエラストマーは、1重量%〜4重量%のシリカを含む。別の実施形態では、フルオロエラストマーは、2重量%〜4重量%のシリカを含む。さらに別の実施形態では、フルオロエラストマーは、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、約1.15重量%のシリカを含む。
【0068】
一実施形態では、シリカは、疎水性シリカである。ある実施形態では、疎水性シリカは、フルオロエラストマー組成物中で、親水性シリカより分散し、凝集しない。シリカは、平均粒径が約10ナノメートル〜約0.2ミクロンであってもよい。一実施形態では、シリカは、平均粒径が約50ナノメートル〜約0.1ミクロンであってもよい。別の実施形態では、シリカは、平均粒径が約20ナノメートルである。
【0069】
一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、触媒を含む。一実施形態では、触媒は、白金(Pt)触媒、例えば、トリフルオロトルエン中の14.3%Pt(TFT中の14.3%Pt触媒)である。一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、0.15重量%〜0.35重量%の触媒を含む。別の実施形態では、フルオロエラストマーは、0.2重量%〜0.30重量%の触媒を含む。さらに別の実施形態では、フルオロエラストマーは、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、約0.25重量%の触媒を含む。
【0070】
一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、架橋剤を含む。ある実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、フルオロシリコーン架橋剤を含む。一実施形態では、架橋剤は、NuSil Corporation製のXL 150架橋剤である。例えば、一実施形態では、フルオロエラストマー組成物は、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、10重量%〜18重量%の架橋剤を含む。別の実施形態では、フルオロエラストマーは、12重量%〜16重量%の架橋剤を含む。さらに別の実施形態では、フルオロエラストマーは、フルオロエラストマー組成物の合計重量を基準として、約15重量%の架橋剤を含む。
【0071】
本開示の態様は、以下の実施例を参照することによって、さらに理解されるだろう。実施例は、実例であり、その実施形態を限定することを意図していない。実施例1は、本開示の一実施形態のフルオロエラストマーを製造するプロセスを示す。
【実施例】
【0072】
実施例1
ステンレスビーズの入った塗料シェーカー中、100グラムのSML(n=27)フルオロシリコーン(Wackerから市販されるビニル末端のトリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマー)を、30.4グラムのカーボンブラック(Cabotから市販されるEmperor 1600)、1.75グラムのシリカおよび250グラムのトリフルオロトルエン(TFT)溶媒を3時間かけて混合した。SML(n=27)フルオロシリコーンは、以下の式1に示される。
【0073】
【化1】
【0074】
塗料シェーカー中の混合は、フルオロシリコーンに最終的にカーボンブラックを分散させるのに役立つ。混合した後、4200マイクロリットル(μL)のPt触媒(TFT中14.3%)を加え、次いで、さらに混合した。TFT中のPt触媒を以下の式2に示す。
【0075】
【化2】
【0076】
次いで、20グラムの架橋剤(NuSilから市販されるXL−150)を加え、混合した。次いで、混合物の粘度を、TFTを加えることによって280cpに調節した。XL−150は、以下の式3に示される。架橋機構は、以下の式4に示される。
【0077】
【化3】
【0078】
【化4】
【0079】
次いで、混合物を減圧下で脱気し、空気の泡を除去し、上述のようないくつかの実施形態に従って画像化部材の製造に使用されるフローコーティング可能なエラストマーを作成した。硬化後、架橋していない抽出可能なものは、ほぼ2〜3%であった。
【0080】
図2は、フルオロシリコーン組成物中のカーボンブラック分散物を示す。特に、図2は、フルオロエラストマー組成物の実施形態の9982 5.0kV 7.2mm × 50.0kの走査型電子顕微鏡写真を示す。図2に示されるように、実施例1のフルオロエラストマー組成物は、優れた分散品質を有する。フルオロシリコーンマトリックス中のカーボンブラックの均一な分散物は、フローコーティングを可能にする。
【0081】
本願発明者らは、本開示の実施形態のフルオロエラストマー組成物が、優れたフローコーティング特徴を有することを発見した。特定の理論によって限定されないが、本願発明者らは、驚くべきことに、フルオロエラストマー組成物に少量のシリカが含まれると、フルオロシリコーンマトリックス内の赤外線吸収材料の均一な分散が向上し、フルオロエラストマー組成物のフローコーティング特徴を向上することを発見した。一実施形態では、カーボンブラックは、フルオロシリコーンマトリックス中で凝集しない。図2に示されるように、カーボンブラックは、フルオロシリコーンマトリックス中に非常に均一に分散し、平均粒径が50nmである。ある実施形態では、カーボンブラック分散物は、滑らかなフルオロシリコーン表面薄膜をフローコーティングするのに非常に重要である。カーボンブラックの凝集によって、印刷プロセスの画質に望ましくない粗い表面コーティングが得られる。他の実施形態では、カーボンブラックの均一な分布は、高解像度画像生成に重要な均一なレーザ吸収および湿し液の均一な蒸発にも役立つ。
【0082】
バリアブルリソグラフィー印刷のためのプロセスがさらに開示される。一実施形態では、印刷プロセスは、湿し液/給湿液を、画像化部材表面層を備える画像化部材に塗布することと;画像化部材表面層の選択的な位置から湿し液を蒸発させることによって潜像を作成し、疎水性の非画像領域および親水性の画像領域を作成することと;親水性の画像領域にインク組成物を塗布することによって潜像を現像することと;現像された潜像を受け入れ基材に転写することとを含む。
図1
図2