特許第6586008号(P6586008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586008
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/08 20060101AFI20190919BHJP
   B23D 57/00 20060101ALI20190919BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   B28D1/08
   B23D57/00
   E04G23/08 D
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-251431(P2015-251431)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-113977(P2017-113977A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
(72)【発明者】
【氏名】高治 一彦
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02946864(EP,A1)
【文献】 国際公開第2008/001816(WO,A1)
【文献】 特開平09−109138(JP,A)
【文献】 特開2002−036231(JP,A)
【文献】 特開2002−086441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/08
B23D 57/00
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーソーの切断用ワイヤーの切断部の両側に設けられ、前記切断部の切断方向と直交する方向に回転軸を向け、前記回転軸より前記切断方向の側に前記切断用ワイヤーが掛けられている一対の切断用プーリーと、
前記切断用プーリーを回転自在に支持する枠体に設けられ、前記枠体を回動させて、前記切断方向に応じて前記切断用プーリーの回転軸の方向を変更する切断角度変更手段と、
前記ワイヤーソーと前記切断角度変更手段を支持し、前記切断用ワイヤーの前記切断部を、前記切断方向へ移動させる移動手段と、を有し、
前記切断角度変更手段は、
前記枠体に回転自在に設けられ、前記切断用プーリーを挟んで、前記切断用ワイヤーの前記切断部の反対側に配置され、前記切断用ワイヤーが掛けられ、回転軸を、前記切断用プーリーの前記回転軸と直交させた一対の第一角度変更用プーリーと、
前記枠体に設けられ、前記枠体を前記第一角度変更用プーリーの前記回転軸を中心に回動させる第一回動部材と、
を有する切断装置。
【請求項2】
ワイヤーソーの切断用ワイヤーの切断部の両側に設けられ、前記切断部の切断方向と直交する方向に回転軸を向け、前記回転軸より前記切断方向の側に前記切断用ワイヤーが掛けられている一対の切断用プーリーと、
前記切断用プーリーを挟んで、前記切断用ワイヤーの前記切断部の反対側に設けられ、前記切断用ワイヤーの両側に一対配置され、前記切断用ワイヤーを案内し、回転軸を、前記切断部の前記切断用ワイヤーから離れた位置に設けると共に、前記切断用ワイヤーの走行方向と並行とした一対の第二角度変更用プーリーと、
前記切断用プーリーを回転自在に支持する第一枠体と、
前記第二角度変更用プーリーを回転自在に支持し、前記第二角度変更用プーリーの支持部よりも前記切断用プーリーの側に設けた連結部で、前記第一枠体を回動自在に連結した第二枠体と、
前記第二枠体に設けられ、前記第一枠体を、前記連結部を中心に回動させる第二回動部材と、
前記ワイヤーソーと、前記第二角度変更用プーリー及び前記第二回動部材を備えた切断角度変更手段と、を支持し、前記切断用ワイヤーの前記切断部を、前記切断方向へ移動させる移動手段と、
を有する切断装置。
【請求項3】
前記移動手段は、
前記ワイヤーソー及び前記切断角度変更手段を支持し、鉛直方向へ移動可能とされた第一基台と、
前記第一基台を支持し、水平方向へ移動可能とされた第二基台と、
を有している
請求項1又は請求項2に記載の切断装置。
【請求項4】
前記第二基台は、水平方向へ移動可能とされた第三基台に支持され、
前記第二基台と前記第三基台との間には、前記第一基台を支持した状態で、前記第二基台を水平方向に回転させる、水平方向回転手段が設けられている
請求項に記載の切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉建屋の解体においては、放射化部等の人が近づき難い部位にある壁体の切断が必要となる場合がある。従来、壁体等の、断面積が大きな部位を切断する切断装置には、ワイヤーソーが広く使用されている。しかし、人が近づき難い部位にある壁体の切断においては、人手をかけずに壁体を切断できる切断技術の開発が求められている。
人が近づき難い場所で壁体を切断する、ワイヤーソーによる切断技術には、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1の切断技術は、放射化された、鉄筋コンクリート製の中空円柱状の壁体の解体において、周方向の切断は、コアボーリング装置で縦孔を連続して穿設することで行なう。一方、鉛直方向の切断は、コアボーリング装置で、鉛直方向に距離を開けて2つの横孔(ワイヤー誘導孔)を穿設し、2つの横孔を通したダイヤモンドワイヤー(切断用ワイヤー)を、ループ状にして2つの横孔の間に巻き付け、ダイヤモンドワイヤーに張力を加えながら走行させて、2つの横孔の間を鉛直方向に切断する。同様に、水平方向の切断は、コアボーリング装置で、水平方向に距離を開けて2つの横孔を穿設し、2つの横孔を通したダイヤモンドワイヤーを、ループ状にして2つの横孔の間に巻き付け、ダイヤモンドワイヤーに張力を加えながら走行させて、2つの横孔の間を水平方向に切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−83923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、ワイヤーソーによる切断の前に、予めコアボーリング装置で、縦孔や横孔を穿設し、更に横孔にダイヤモンドワイヤーを通してループ状にする等、多くの人手を必要とする。また、穿設された縦孔や横孔の間を結ぶ直線状にしか、壁体を切断することはできない。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑み、被切断部材に縦孔及び横孔を穿設せずに、任意の方向に切断できる切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る切断装置は、ワイヤーソーの切断用ワイヤーの切断部の両側に設けられ、前記切断部の切断方向と直交する方向に回転軸を向け、前記回転軸より前記切断方向の側に前記切断用ワイヤーが掛けられている一対の切断用プーリーと、前記切断用プーリーを回転自在に支持する枠体に設けられ、前記枠体を回動させて、前記切断方向に応じて前記切断用プーリーの回転軸の方向を変更する切断角度変更手段と、前記ワイヤーソーと前記切断角度変更手段を支持し、前記切断用ワイヤーの前記切断部を、前記切断方向へ移動させる移動手段と、を有し、前記切断角度変更手段は、前記枠体に回転自在に設けられ、前記切断用プーリーを挟んで、前記切断用ワイヤーの前記切断部の反対側に配置され、前記切断用ワイヤーが掛けられ、回転軸を、前記切断用プーリーの前記回転軸と直交させた一対の第一角度変更用プーリーと、前記枠体に設けられ、前記枠体を前記第一角度変更用プーリーの前記回転軸を中心に回動させる第一回動部材と、を有している。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、一対の切断用プーリーが、ワイヤーソーの切断用ワイヤーの切断部の両側に設けられている。このとき、切断用プーリーは、切断部の切断方向と直交する方向に回転軸を向け、回転軸より切断方向側に切断用ワイヤーが掛けられている。これにより、切断用プーリーが、切断用ワイヤーを切断方向へ押す構成となり、無端の切断用ワイヤーを走行させても、切断時に切断用プーリーからの、切断用ワイヤーの脱落を抑制できる。
また、切断用プーリーが枠体に回転自在に支持されているため、切断角度変更手段により、枠体を回動させることで、切断方向に応じて、切断用プーリーの回転軸の方向を変更することができる。また、移動手段が、ワイヤーソーと切断角度変更手段を支持しているので、移動手段により、切断部を切断方向へ移動させることができる。
これにより、被切断部材に、縦孔及び横孔の穿設を必要とせず、人手をかけずに被切断部材を切断できる切断装置を提供できる。
【0010】
また、枠体には、切断用プーリーと、切断用ワイヤーが掛けられた第一角度変更用プーリーが回転自在に支持され、枠体は、第一角度変更用プーリーの回転軸を中心にして、第一回動部材で回動可能とされている。
これにより、第一回動部材を制御することで、枠体を、第一角度変更用プーリーの回転軸を中心に回動できる。この結果、切断用プーリーの回転軸の方向を、切断方向と直交する方向に維持した状態で、切断方向を変更することができる。
【0011】
請求項に記載の発明に係る切断装置は、ワイヤーソーの切断用ワイヤーの切断部の両側に設けられ、前記切断部の切断方向と直交する方向に回転軸を向け、前記回転軸より前記切断方向の側に前記切断用ワイヤーが掛けられている一対の切断用プーリーと、前記切断用プーリーを挟んで、前記切断用ワイヤーの前記切断部の反対側に設けられ、前記切断用ワイヤーの両側に一対配置され、前記切断用ワイヤーを案内し、回転軸を、前記切断部の前記切断用ワイヤーから離れた位置に設けると共に、前記切断用ワイヤーの走行方向と並行とした一対の第二角度変更用プーリーと、前記切断用プーリーを回転自在に支持する第一枠体と、前記第二角度変更用プーリーを回転自在に支持し、前記第二角度変更用プーリーの支持部よりも前記切断用プーリーの側に設けた連結部で、前記第一枠体を回動自在に連結した第二枠体と、前記第二枠体に設けられ、前記第一枠体を、前記連結部を中心に回動させる第二回動部材と、前記ワイヤーソーと、前記第二角度変更用プーリー及び前記第二回動部材を備えた切断角度変更手段と、を支持し、前記切断用ワイヤーの前記切断部を、前記切断方向へ移動させる移動手段と、を有している。
【0012】
請求項に記載の発明によれば、一対の切断用プーリーが、ワイヤーソーの切断用ワイヤーの切断部の両側に設けられている。このとき、切断用プーリーは、切断部の切断方向と直交する方向に回転軸を向け、回転軸より切断方向側に切断用ワイヤーが掛けられている。これにより、切断用プーリーが、切断用ワイヤーを切断方向へ押す構成となり、無端の切断用ワイヤーを走行させても、切断時に切断用プーリーからの、切断用ワイヤーの脱落を抑制できる。
また、切断用プーリーが、第一枠体に回転自在に支持された状態において、第一枠体が、第二枠体に、連結部の周りに回動自在に連結されている。第二枠体には、切断用ワイヤーを案内する第二角度変更用プーリーが、切断部の切断用ワイヤーから離れた位置に設けられた回転軸に回転自在に支持され、連結部が、第二角度変更用プーリーの支持部よりも切断用プーリーの側に設けられているので、第一枠体を連結部の周りに回動させることで、切断用プーリーの回転軸の方向を、切断方向と直交する方向に維持した状態で変更することができる。
また、第二枠体には、第一枠体を回動させる第二回動部材が設けられているので、第二回動部材を制御することで、連結部の周りに第一枠体を回動させることができる。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の切断装置において、前記移動手段は、前記ワイヤーソー及び前記切断角度変更手段を支持し、鉛直方向へ移動可能とされた第一基台と、前記第一基台を支持し、水平方向へ移動可能とされた第二基台と、を有している。
【0014】
これにより、切断角度変更手段、第一基台及び第二基台の移動方向を制御することで、切断用ワイヤーの切断部を、任意の切断方向へ移動させることができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の切断装置において、前記第二基台は、水平方向へ移動可能とされた第三基台に支持され、前記第二基台と前記第三基台との間には、前記第一基台を支持した状態で、前記第二基台を水平方向に回転させる、水平方向回転手段が設けられている。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、第二基台と第三基台の間に水平方向回転手段が設けられているので、切断用ワイヤーの切断部の走行方向を、第三基台の移動方向と独立して傾斜させることが可能となる。これにより、被切断部材を傾斜面として切断することができる。また、切断用ワイヤーの切断部を傾斜させたまま、第一基台を、鉛直方向及び水平方向へ移動させることできる。
この結果、障害物を効率的に避ける等、高い自由度で切断することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成としてあるので、被切断部材に縦孔及び横孔を予め穿設せずに、任意の方向に切断できる切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る切断装置の基本構成を示す斜視図である。
図2】(A)は、本発明の第1実施形態に係る切断装置に使用されるワイヤーソーの基本構成を示す斜視図であり、(B)は、そのX1−X1線視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る切断装置に使用される切断角度調整手段の基本構成を示す斜視図である。
図4】(A)、(B)はいずれも、本発明の第1実施形態に係る切断装置における切断手順を示す斜視図である。
図5】(A)、(B)はいずれも、本発明の第1実施形態に係る切断装置における切断手順を示す斜視図である。
図6】(A)、(B)はいずれも、本発明の第1実施形態に係る切断装置における切断手順を示す斜視図である。
図7】(A)、(B)はいずれも、本発明の第1実施形態に係る切断装置における切断手順を示す斜視図である。
図8】(A)、(B)はいずれも、本発明の第1実施形態に係る切断装置における切断手順を示す斜視図である。
図9】(A)は、本発明の第2実施形態に係る切断装置に使用されるワイヤーソーの基本構成を示す斜視図であり、(B)は、切断方向をαとしたときの構成図である。
図10】(A)は、本発明の第2実施形態に係る切断装置で切断方向を90°としたときの構成図であり、(B)は、切断方向を−90°としたときの構成図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る切断装置に使用される切断角度調整手段の基本構成を示す斜視図である。
図12】(A)は、本発明の第4実施形態に係る切断装置の基本構成を示す斜視図であり、(B)は、その水平方向回転手段を示す部分断面図である。
図13】本発明の第4実施形態に係る切断装置で、被切断部材を切断した切断結果を示す斜視図である。
図14】(A)は、本発明の第5実施形態に係る切断装置の基本構成を示す斜視図であり、(B)は、切断状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図1図8を用いて、本発明の第1実施形態に係る切断装置10について説明する。
図1は、切断装置10の全体構成を示す斜視図であり、図2(A)は、ワイヤーソー12の基本構成を示す斜視図であり、(B)はそのX1−X1線視図である。図3は、切断角度変更手段の斜視図であり、図4(A)〜図8(B)は、いずれも、切断手順を示す斜視図である。なお、各図は、切断装置10の上下方向をZ軸方向、切断部16におけるダイヤモンドワイヤー14の走行方向をX軸方向としている。
【0020】
図1に示すように、切断装置10は、コンクリート壁等の被切断部材(切断対象物)28の下端面の下方に配置され、被切断部材28を下面から上方へ向けて切断する。
被切断部材28は、下方に切断装置10が入る空間を有し、X軸方向の幅(壁厚)がW1の壁体である。被切断部材28は、Z軸正方向及びY軸方向へ連続する構造物の一部であり、切断装置10には支持されていない。
なお、被切断部材28は、便宜上、直方体の形状で図示されているが、これに限定されることはなく、三次元的に変化する形状であってもよい。
【0021】
切断装置10は、被切断部材28を切断するワイヤーソー12を有している。
ワイヤーソー12は、被切断部材28のX軸方向の幅W1よりに広くされた、幅W2の切断部16を有し、切断部16を切断方向へ移動させて、被切断部材28を切断する。
【0022】
図2(A)、(B)に示すように、ワイヤーソー12は、無端のダイヤモンドワイヤー(切断用ワイヤー)14を有し、ダイヤモンドワイヤー14を走行させながら、切断部16を切断方向へ移動させ、被切断部材28を切断する。
ここに、ダイヤモンドワイヤー14は、ワイヤーロープに、切削用ダイヤモンド砥粒とブロンズやタングステンとを混合して焼結したビーズ(切削材料)を、一定間隔で数珠状にワイヤーに通して固定し、ビーズとワイヤーを結合した構成である。
【0023】
ダイヤモンドワイヤー14は、切断用プーリー20や切断用補助プーリー21等の複数のプーリーで方向を変えて折り畳まれ、周回可能にフレーム24、30等に収められている。また、ワイヤーソー12の一部には、ダイヤモンドワイヤー14を直線状に走行させた切断部16が形成されている。切断部16においては、ダイヤモンドワイヤー14はX軸方向に走行する構成とされ、切断方向は、矢印42で示す方向(図2(A)ではZ軸方向)とされている。
【0024】
ダイヤモンドワイヤー14の切断部16の両側には、一対の切断用プーリー20が設けられている。ワイヤーソー12は押し切り及び引き切り方式であり、一対の切断用プーリー20は、矢印42で示す切断方向と直交する方向(Y軸方向)に回転軸26を向けている。切断用プーリー20には、ダイヤモンドワイヤー14が、回転軸26より切断方向側(押し切り方向側)に掛けられている。
【0025】
ダイヤモンドワイヤー14を挟んで、切断用プーリー20の切断方向側には、一対の切断用補助プーリー21が設けられている。切断用補助プーリー21は、切断用プーリー20よりも切断部16の内側に設けられ、切断用補助プーリー21の回転軸27の方向は、切断用プーリー20の回転軸26の方向と同じ、Y軸方向とされている。
これにより、押し切り時には、切断用プーリー20が、ダイヤモンドワイヤー14を切断方向(押し切り方向側)へ押し、切断用補助プーリー21が、ダイヤモンドワイヤー14を切断用プーリー20に押し付ける構成とされ、切断時におけるダイヤモンドワイヤー14の、切断用プーリー20からの外れを抑制している。また、引き切り時には、切断用補助プーリー21が、ダイヤモンドワイヤー14を切断方向(引き切り方向側)へ押し、切断用プーリー20が、ダイヤモンドワイヤー14を切断用補助プーリー21に押し付けることで、切断時におけるダイヤモンドワイヤー14の、切断用補助プーリー21からの外れを抑制している。
【0026】
切断用プーリー20を挟んで、切断部16の反対側には、一対の角度変更用プーリー(第一角度変更用プーリー)22が設けられている。角度変更用プーリー22は、回転軸32の方向を、切断部16のダイヤモンドワイヤー14の走行方向と一致させている。即ち、角度変更用プーリー22の回転軸32の方向(図2(A)ではX軸方向)は、切断用プーリー20の回転軸26の方向、及び切断用補助プーリー21の回転軸27の方向と直交している。
【0027】
また、角度変更用プーリー22の回転軸32は、切断部16の切断方向を変更する際の回動中心と一致させている。これにより、ワイヤーソー12を、角度変更用プーリー22の回転軸32を中心に回転させることで、矢印42で示す切断方向と、切断用プーリー20の回転軸26の方向と、切断用補助プーリー21の回転軸27の方向との関係を一定に維持して、切断部16の切断方向を変更することができる。
【0028】
ワイヤーソー12は、駆動用プーリー19を有し、同一平面上を、ほぼ矩形状にダイヤモンドワイヤー14を走行させ、切断部16の直線部を確保している。矩形状に走行するダイヤモンドワイヤー14の4つの角部には、いずれも、方向を変更するためのプーリーが用いられている。切断部16の両端部は、上記の構成であり、切断部16とほぼ平行に走行する対向辺17の両端部には、補助プーリー23が、それぞれ設けられている。
【0029】
また、矩形状に走行するダイヤモンドワイヤー14の外側には、駆動用プーリー19や張力調整プーリー25等の複数のプーリーが配置されている。
また、図2(B)に示すように、ワイヤーソー12は、角度変更用プーリー22の位置で、切断部16が、45°の角度で折り曲げられている。これにより、切断方向は、矢印42で示すZ軸方向となる。
【0030】
図3に示すように、ワイヤーソー12には、ダイヤモンドワイヤー14を囲むフレーム(枠体)24、30等が設けられている。
切断用プーリー20と補助プーリー23の間には、一対のフレーム30が設けられている。また、補助プーリー23の間には、フレーム46が設けられている。フレーム46の両端部は、フレーム30の、補助プーリー23側(切断部16と反対側)の端部と接合されている。
【0031】
フレーム30の補助プーリー23の側には、切断角度変更手段18が設けられている。切断角度変更手段18は、正逆転が可能なモータ(第一回動部材)48を有し、モータ48の回転軸には、ピニオン歯車(第一回動部材)66が取付けられている。
ピニオン歯車66は、円弧状のラック歯車54と咬合している。ラック歯車54は、後述する円弧部材50の上面に設けられている。円弧部材50は、回転軸32を中心とした円の一部とされている。
【0032】
また、円弧部材50の上面には、ラック歯車54と平行に、スライドレール53が設けられている。スライドレール53は、フレーム30の補助プーリー23側の端部に設けられたスライド部61と、摺動可能に接合されている。これにより、モータ48を回転させても、ピニオン歯車66とラック歯車54の咬合が確保され、フレーム30を安定して移動させることができる。
【0033】
これにより、モータ48を回転させることで、フレーム30の下端部を、円弧状のラック歯車54に沿って移動させることができる。フレーム30の上端部は、回転軸32を中心に回動する構成とされており、モータ48を回転させることで、切断部16の切断方向を、回転軸32を中心に変更することができる。
【0034】
ワイヤーソー12と切断角度変更手段18は、鉛直移動台座(第一基台、移動手段)34に支持された状態で、上下方向(矢印42で示すZ軸方向)に移動可能とされ、鉛直移動台座34は、水平移動台座(第二基台、移動手段)36で、水平方向(矢印44で示すY軸方向)に移動可能に支持されている。
【0035】
鉛直移動台座34は、上方に開いた一対の円弧状の円弧部材50を備えている。
円弧部材50は、X軸方向に、所定の幅W2をあけて設けられている。鉛直移動台座34の幅W2は、一対のフレーム30の幅W2と等しく、被切断部材28の幅W1より大きい(幅W2>幅W1)。
一対の円弧部材50同士は、円弧部材50の円弧部に沿って配置された、複数の連結部材52で、幅W2を維持して連結されている。
【0036】
円弧部材50は、角度変更用プーリー22の回転軸32を中心とした円の一部を形成している。円弧部材50の上面には、円弧部材50に沿って円弧状に、ラック歯車54とスライドレール53が、それぞれ平行に取り付けられている。なお、ラック歯車の歯の形状や本数は、被切断部材28やワイヤーソー12の構成等から決定すれば良い。
【0037】
鉛直移動台座34は、四隅に設けられたシリンダー38で、矢印42で示す上下方向(Z軸方向)に移動可能とされている。
また、鉛直移動台座34は、シリンダー38で支持された状態で、水平移動台座36に支持されている。水平移動台座36は、台座(支持部材)40の上面に載置され、矢印44で示すY軸方向に、摺動可能とされている(図1参照)。
【0038】
これにより、縦孔及び横孔の穿設を必要とせずに、切断角度変更手段18、鉛直移動台座34及び水平移動台座36の移動方向を制御することで、切断部16を任意の切断方向へ移動させることができる。
これらを、図示しない制御部で制御することにより、人手をかけずに少ない工程で、被切断部材28を切断でき、切断装置10の切断工程の自動化を図ることができる。
【0039】
上記したように、切断装置10は、ワイヤーソー12のダイヤモンドワイヤー14の切断部16の両側に、一対の切断用プーリー20が設けられている。切断用プーリー20は、切断部16の矢印42で示す切断方向と直交する方向に回転軸26を向け、回転軸26より切断方向の側にダイヤモンドワイヤー14が掛けられている。
【0040】
また、切断用プーリー20を回転自在に支持するフレーム30を有し、フレーム30を回転軸32の回りに回動させて、矢印42で示す切断方向に応じて切断用プーリー20の回転軸26の方向を変更する。
また、鉛直移動台座34と水平移動台座36を有し、ワイヤーソー12と切断角度変更手段18を支持し、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16を、切断方向へ移動させる。
【0041】
本構成とすることにより、一対の切断用プーリー20が、ダイヤモンドワイヤー14を切断方向へ押す構成(押し切り方式)となり、無端のダイヤモンドワイヤー14を走行させても、切断時に切断用プーリー20からの、ダイヤモンドワイヤー14の脱落が抑制できる。また、一対の切断用補助プーリー21が、ダイヤモンドワイヤー14を切断方向へ押す構成(引き切り方式)においても、切断時に切断用補助プーリー21からの、ダイヤモンドワイヤー14の脱落が抑制できる。
【0042】
また、切断用プーリー20がフレーム30に回転自在に支持されているため、モータ48、ピニオン歯車66等の切断角度変更手段18により、フレーム30を回動させることで、矢印42で示す切断方向に応じて、切断用プーリー20の回転軸26の方向を変更することができる。
【0043】
また、鉛直移動台座34、水平移動台座36等の移動手段が、ワイヤーソー12や切断角度変更手段18を支持しているので、移動手段を移動させることにより、切断部16を切断方向へ移動させることができる。
これにより、縦孔及び横孔の穿設を必要とせずに、被切断部材28を切断できる切断装置10を提供できる。
【0044】
次に、切断手順について、図4(A)〜8(B)を用いて説明する。
先ず、壁状の被切断部材28の底面から、直方体のブロックを、所定の大きさに切り出す場合について説明する。
【0045】
図4(A)に示すように、切断装置10を、先ず壁状の被切断部材28の底面の下に配置する。このとき、鉛直移動台座34を矢印42で示すように最下位置まで下げ、フレーム30の軸線Sを鉛直方向に向ける。また、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16を、矢印44で示すように調整して、切断開始位置P1にセットする。
なお、切断順序は、押し切りを前提とし、切断開始位置P1から目標点P2へ、続いて目標点P2から目標点P3へ切断した後、目標点P4から目標点P3へ切断する手順が望ましい。以下、この手順に沿って説明する。
【0046】
次に、図4(B)に示すように、切断開始位置P1から目標点P2の間を、鉛直方向(Z軸方向)上方へ切断する。この際、フレーム30の軸線Sを、鉛直軸Gに対し−45度傾斜させ、切断方向をZ軸方向上方へ向ける。
この状態で、ダイヤモンドワイヤー14を走行させて、シリンダー38を、矢印42に示すように高さZ1だけ伸張させる。これにより、被切断部材28の切断開始位置P1から目標点P2の間を、Z軸方向へ切断できる。
【0047】
次に、図5(A)に示すように、目標点P2まで切断した後は、切断方向を水平方向へ替えて、目標点P2から目標点P3まで切断する。このため、ダイヤモンドワイヤー14の走行を一旦停止する。
【0048】
次に、図5(B)に示すように、フレーム30の上部は回転軸32の位置に維持した状態で、切断角度変更手段18を作動させ、フレーム30の下端部を、円弧部材50に沿って回動させる。このとき、フレーム30は、鉛直軸Gとの角度を45°の位置まで移動させる。これにより、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16の切断方向を目標点P3へ向け、水平方向への切断準備をすることができる。
【0049】
次に、図6(A)に示すように、ダイヤモンドワイヤー14を走行させて、矢印44で示す方向(水平方向)へ距離y1だけ切断し、目標点P3に到達した後走行を停止する。
続いて、目標点P4へダイヤモンドワイヤー14の切断部16を移動させる。このため、目標点P3から目標点P2へ、目標点P2から切断開始位置P1へ、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16を、一旦、切断開始位置P1まで戻す。
【0050】
次に、図6(B)に示すように、水平移動台座36を、切断開始位置P1から目標点P4まで、矢印44で示す方向へ移動させ、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16を目標点P4にセットする。このとき、鉛直移動台座34を矢印43で示す方向に最下位置まで下げ、フレーム30の軸線Sは、鉛直軸Gと−45°傾斜させる。
【0051】
次に、図7(A)に示すように、ダイヤモンドワイヤー14を走行させて、矢印43で示す方向に鉛直移動台座34を距離z1だけ移動させ、目標点P3まで切断する。
このとき、鉛直移動台座34を上昇させ、水平移動台座36を一定位置に維持する。これにより、ワイヤーソー12で、被切断部材28の下面を除く3方向を切り取ることができる。
【0052】
この結果、図7(B)に示すように、被切断部材28から、ドットを付したブロック58を切り離すことができる。切り離されたブロック58は、鉛直移動台座34に設けられた受け部60で受け止められた後、搬出位置まで移動させる。
上記の手順を繰り返すことで、順次、被切断部材28からブロック58を切り離し、搬出することができる。
【0053】
なお、切断手順は、上記の切断手順に限定されることはなく、異なる手順でも良い。
例えば、切断開始位置P1から目標点P2へ向けて上方へ切断した後、切断開始位置P1まで戻し、切断部16を目標点P4へ移動させ、目標点P4から目標点P3まで、再び上方へ切断し、目標点P3から目標点P2へ、水平方向へ切断しても良い。
これにより、同様に、被切断部材28からブロック58を切り離すことができる。
また、押し切り及び引き切りを併用すれば、被切断部材28からブロック58を次のように切断可能である。すなわち、切断開始位置P1から目標点P2、P3までを押し切りし、その後、目標点P3から目標点P4までを引き切りする。これにより、被切断部材28からブロック58を切り離すことができる。
【0054】
続いて、壁状の被切断部材28から、一辺がMの三角柱のブロックを切り出す手順について説明する。
【0055】
図8(A)に示すように、切断装置10を、被切断部材28の下方へ配置し、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16を、切断開始位置P1にセットする。このとき、切断装置10の切断部16の高さを、矢印43で示すように最下位置まで下げた状態で、被切断部材28の下方から、被切断部材28の切断開始位置P1にセットする。
切断順序は、押し切りを前提とし、切断開始位置P1から目標点P2へ、続いて目標点P2から目標点P3へ切断した後、目標点P2へ戻り、目標点P2から目標点P4へ切断した後、目標点P4から目標点P3へ切断する手順が望ましい。以下、この手順に沿って説明する。
【0056】
先ず、フレーム30の軸線Sを鉛直軸Gと−45°傾斜させた状態で、シリンダー38を上昇させ、切断開始位置P1から目標点P2の間を切断する。
続いて、切断角度変更手段18で、フレーム30の軸線Sを鉛直軸Gと−15°傾斜させた状態まで移動させ、鉛直移動台座34と水平移動台座36を同時に移動させて、目標点P2から目標点P3の間を、矢印S1の方向へ距離Mだけ斜めに切断する。
【0057】
続いて、一旦、ダイヤモンドワイヤー14の走行を止め、切断部16のダイヤモンドワイヤー14を目標点P2へ戻す。
その後、切断角度変更手段18で、フレーム30の軸線Sを鉛直軸Gと45°傾斜させ、水平移動台座36を移動させて、切断部16のダイヤモンドワイヤー14を矢印S2の方向へ移動させ、目標点P2から目標点P4へ、距離Mだけ切断する。
【0058】
続いて、切断角度変更手段18で、フレーム30を鉛直軸Gと−75°傾斜させ、鉛直移動台座34と水平移動台座36を同時に移動させて、切断部16のダイヤモンドワイヤー14を矢印S3の方向へ移動させ、目標点P4から目標点P3へ距離Mだけ切断する。
【0059】
最後に、図8(B)に示すように、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16を切断開始位置P1まで戻し、切断された三角柱のブロック59(ドット部)をX軸方向へ押出し、受け台に載せて搬出する。
上述したように、本実施形態によれば、斜めに切断できるので、任意の形状に被切断部材28を切断することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図9(A)〜図10(B)を用いて、本発明の第2実施形態に係る切断装置70について説明する。図9(A)は、切断装置70の基本構成を示す斜視図であり、図9(B)〜図10(B)は、いずれも切断装置70の切断方向を変更した状態を示す斜視図である。
切断装置70は、切断用プーリー20を支持するフレームを、2つのフレーム部材に分割し、一方のフレーム部材を回動可能に連結した点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0061】
図9(A)に示すように、切断装置70は、ワイヤーソー72を有し、ワイヤーソー72のダイヤモンドワイヤー14の切断部16の両側に、一対の切断用プーリー20が設けられている。切断用プーリー20は、矢印42で示す切断方向と直交する方向に回転軸26を向け、回転軸26より、矢印42で示す切断方向の側に、ダイヤモンドワイヤー14が掛けられている。
【0062】
切断用プーリー20を挟んで、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16の反対側には、一対の角度変更用プーリー76が設けられている。角度変更用プーリー76は、ダイヤモンドワイヤー14の両側に、ダイヤモンドワイヤー14を挟んで、2個が一対に配置されている。角度変更用プーリー76の回転軸77は、切断部16のダイヤモンドワイヤー14の走行方向に向けられている。
【0063】
切断用プーリー20と切断用補助プーリー21は、回動フレーム(第一枠体)74で、一体的に回転自在に支持され、角度変更用プーリー76は、固定フレーム(第二枠体)75に、回転自在に支持されている。
固定フレーム75は、角度変更用プーリー76と補助プーリー23の間に設けられ、固定フレーム75の切断部16側の端部には、角度変更用プーリー76を支持する支持部87と、回動フレーム74と連結される連結部88が設けられている。
【0064】
ここに、連結部88は、支持部87より、切断用プーリー20に近い側(固定フレーム75の端部側)に設けられている。また、連結部88の回転中心は、回動フレーム74の回動中心78と一致させている。
これにより、固定フレーム75に、角度変更用プーリー76が回転自在に支持され、固定フレーム75と回動フレーム74が、回動可能に連結される。
【0065】
固定フレーム75には、切断角度変更手段116が設けられている。切断角度変更手段116は、正逆転可能なモータ(第二回動部材)102を有し、モータ102の回転軸には、回動アーム(第二回動部材)104が取付けられている。回動アーム104は、モータ102に取付けられた状態で、回動フレーム74の側面を両側から挟む構成とされている。これにより、回動アーム104を回転させることで、回動フレーム74に、矢印45で示す方向の連結部88を中心とした回転力を付与することができる。
【0066】
モータ102は、固定金具114で固定フレーム75に固定され、固定フレーム75に固定された状態で、回動アーム104を回動可能とされている。
これにより、モータ102の回転方向へ、回動フレーム74を、連結部88を中心に回動させることができる。
【0067】
本実施形態においては、図9(A)に示すように、回動フレーム74を鉛直方向に向けた状態において、矢印42で示す切断方向が鉛直方向上向きとなる。これにより、ワイヤーソー72を鉛直方向上方へ移動させることにより、被切断部材28を下から上へ切断することができる。
【0068】
また、図9(B)に示すように、回動フレーム74を鉛直軸Gに対して角度αだけ回動させることで、矢印42で示す切断方向を、鉛直軸Gに対して角度αの方向とすることができる。
この場合には、鉛直移動台座34、及び水平移動台座36を制御して、切断部16のダイヤモンドワイヤー14を、鉛直軸Gに対して角度αの方向へ移動させればよい(図1参照)。
【0069】
図10(A)に示すように、鉛直軸Gに対して角度+90度(水平方向)の方向に切断する場合には、回動フレーム74を鉛直軸Gに対して角度90度まで回動させる。この状態で、鉛直移動台座34を一定の位置に維持し、水平移動台座36を、水平方向(切断方向)へ移動させればよい(図1参照)。
【0070】
図10(B)に示すように、鉛直軸に対して角度−90度(水平方向)の方向に切断する場合には、回動フレーム74を、鉛直軸に対して角度90度だけ回動させる。この状態で、鉛直移動台座34を一定の位置に維持し、水平移動台座36を、水平方向(切断方向)へ移動させればよい(図1参照)。
他の構成や被切断部材の切断手順等は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0071】
(第3実施形態)
図11を用いて、本発明の第3実施形態に係る切断装置100について説明する。
図11は、切断装置100の斜視図である。
切断装置100は、フレーム30を移動させる切断角度変更手段68の構成が、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0072】
図11に示すように、フレーム30の鉛直移動台座34側には、フレーム30を、角度変更用プーリー22の回転軸32を中心に回動させる、切断角度変更手段68が設けられている。
切断角度変更手段68は、正逆転可能なモータ(第一回動部材)48を有し、モータ48には、ピニオン歯車(第一回動部材)66が取り付けられている。
【0073】
即ち、モータ48は、フレーム30のX軸方向の外側側面に固定され、ラック歯車55は、角度変更用プーリー22の回転軸32を中心にした扇形に形成され、円弧部材50の側面に、円弧に沿って曲げられた状態で取付けられている。ピニオン歯車66はラック歯車55と咬合されている。
【0074】
また、円弧部材50の側面には、ラック歯車54と平行に、スライドレール57が設けられている。スライドレール57は、フレーム30の補助プーリー23側の端部に設けられたスライド部61と、摺動可能に接合されている。これにより、モータ48を回転させても、ピニオン歯車66とラック歯車55の咬合が確保され、フレーム30を安定して移動させることができる。
【0075】
これにより、ピニオン歯車66をラック歯車55に沿って移動させることにより、フレーム30の鉛直移動台座34側を、角度変更用プーリー22の回転軸32を中心に移動させることができる。この結果、フレーム30が回転軸32を中心に回動され、切断部16の切断方向を変更することができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0076】
(第4実施形態)
図12(A)〜図13を用いて、本発明の第4実施形態に係る切断装置80について説明する。図12(A)は、切断装置80の基本構成を示す斜視図であり、(B)は、図12(A)のY1−Y1線断面であり、水平方向回転手段を示す断面図である。図13は、切断装置80で切断した被切断部材の切断面を示す斜視図である。
切断装置80は、鉛直移動台座34が、水平方向に回転可能に支持されている点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0077】
図12(A)、(B)に示すように、切断装置80は、水平移動台座(第二基台、移動手段)82と、水平移動台座(第三基台、移動手段)84を有している。
水平移動台座82は、鉛直移動台座34を支持した状態で、水平移動台座84に支持されている。水平移動台座84は、台座86に支持され、水平方向へ移動可能とされている。また、水平移動台座82と水平移動台座84との間には、水平方向回転手段64が設けられている。
【0078】
図12(B)に示されるように、水平方向回転手段64は、水平移動台座82及び水平移動台座84と回転軸120を共有している。水平移動台座84の上面には、直径D1の凸状の軸部62Tが設けられている。一方、水平移動台座82の下面には、軸部62T及びスラスト軸受108を収容する凹部62Dが設けられている。
【0079】
スラスト軸受(水平方向回転手段)108は、例えば、スラスト玉軸受とされており、一対の軌道盤108A、108Bと、複数のボール108Cとを有している。一対の軌道盤108A、108Bは、リング状に形成されており、軸方向に互いに対向して配置されている。また、一対の軌道盤108A、108Bのうち、一方の軌道盤108Aは、内部に軸部62Tが挿入された状態で、水平移動台座84の上面に固定されている。また、他方の軌道盤108Bは、内部に軸部62Tが挿入された状態で水平移動台座82の下面に固定されている。
【0080】
一対の軌道盤108A、108Bの対向面には、互いに対向する一対の軌道溝63T、63Dが形成されている。一対の軌道溝63T、63Dは環状に形成されており、この一対の軌道溝63T、63Dの間に複数のボール(玉)108Cが収容されている。複数のボール108Cは、図示しない保持器によって軌道溝63T、63D内に保持されている。これらのボール108Cが軌道溝63T、63Dに沿って移動することにより、一対の軌道盤108A、108Bが回転軸120を中心として相対回転可能になっている。
【0081】
また、水平移動台座82の下面と水平移動台座84の上面との間には、スラスト軸受108によって隙間が形成されている。これにより、水平移動台座84と水平移動台座82とが回転軸120を中心に矢印118で示す方向へ相対回転可能とされている。
【0082】
また、水平移動台座84には、水平移動台座82を回転させる、正逆転が可能なモータ122が取付けられている。モータ122には、ピニオン歯車124が取付けられている。水平移動台座82の底面には、回転軸120を中心とした円形に、ピニオン歯車124と咬合するラック歯車126が設けられている。
【0083】
本構成によれば、鉛直移動台座34が、ワイヤーソー12及び切断角度変更手段18を支持した状態で、水平移動台座82に支持され、水平移動台座82は水平移動台座84に支持されている。水平移動台座82は、水平移動台座82と水平移動台座84の間に設けられた水平方向回転手段64により、矢印118で示す方向へ回転可能とされている。
【0084】
これにより、図13に示すように、ダイヤモンドワイヤー14の切断部16の走行方向を、X軸方向に対して、任意の角度で傾斜させることができる。また、切断部16を傾斜させたまま、傾斜角度をストッパー110で維持し、鉛直移動台座34を、鉛直方向及び水平第2方向へ移動させることできる。
この結果、被切断部材28を、傾斜面で切断することができ(ドット部参照)、障害物を効率的に避ける等、切断の自由度を高めることができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0085】
(第5実施形態)
図14(A)、(B)を用いて、本発明の第5実施形態に係る切断装置90について説明する。図14(A)は、切断装置90の基本構成を示す斜視図であり、(B)は、切断装置90の切断状態を示す斜視図である。
切断装置90は、第4実施形態に係る切断装置80を、上下方向(Z軸の方向)が逆になるように回転させて、上下方向を反対にした状態で、被切断部材112を上方から切断可能な構成とした点において、第4実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0086】
図14(A)に示すように、切断装置90は、ワイヤーソー12と切断角度変更手段18を支持し、上下方向に移動可能とされた鉛直移動台座34、鉛直移動台座34を支持し、水平方向に回転可能とされた水平移動台座92、水平移動台座92を支持し、水平方向に移動可能とされた水平移動台座94、及び、水平移動台座94を支持し、四隅に脚部98が設けられた台座96を有している。
【0087】
なお、切断装置90のそれぞれの構成部材の上下方向の接合部は、切断装置90の状態において、上下方向を反対にして(上下方向をひっくり返して)設置しても、落下等の不具合が生じず、第1実施形態から第4実施形態で説明した、それぞれの機能を発揮可能に接合されている。
【0088】
これにより、図14(B)に示すように、切断装置90を、上下方向を逆さに設置することにより、脚部98が、鉛直移動台座34、水平移動台座92、水平移動台座94を、移動可能に支持する構成となる。この結果、上端部が開放された被切断部材112の上方から、被切断部材112の上部を切り取ることができる。
切断装置90の他の構成は、基本的に第4実施形態と同じであり、説明は省略する。
なお、本実施形態は、第1実施形態〜第3実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
10、70、80、90、100 切断装置
12、72 ワイヤーソー
14 ダイヤモンドワイヤー(切断用ワイヤー)
16 切断部
18、68、116 切断角度変更手段
20 切断用プーリー
21 切断用の補助プーリー
22 角度変更用プーリー(第一角度変更用プーリー)
24 フレーム(枠体)
26 切断用プーリーの回転軸
27 切断用の補助プーリーの回転軸
28、112 被切断部材
30 フレーム(枠体)
32 第一角度変更用プーリーの回転軸
34 鉛直移動台座(第一基台、移動手段)
36、82 水平移動台座(第二基台、移動手段)
46 フレーム(枠体)
48 モータ(第一回動部材、切断角度変更手段)
54 ラック歯車(切断角度変更手段)
64 水平方向回転手段
66 ピニオン歯車(第一回動部材、切断角度変更手段)
76 角度変更用プーリー(第二角度変更用プーリー)
77 第二角度変更用プーリーの回転軸
78 連結部の回動中心
84 水平移動台座(第三基台、移動手段)
87 第二角度変更用プーリーの支持部
88 連結部
102 モータ(第二回動部材、切断角度変更手段)
104 ピニオン歯車(第二回動部材、切断角度変更手段)
108 スラスト軸受(水平方向回転手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14