特許第6586013号(P6586013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6586013高硬度および高弾性率を有するイオン交換可能ガラス
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  • 特許6586013-高硬度および高弾性率を有するイオン交換可能ガラス 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586013
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】高硬度および高弾性率を有するイオン交換可能ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/095 20060101AFI20190919BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20190919BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C03C3/095
   C03C3/097
   C03C21/00 101
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-544104(P2015-544104)
(86)(22)【出願日】2013年11月20日
(65)【公表番号】特表2015-535521(P2015-535521A)
(43)【公表日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】US2013070869
(87)【国際公開番号】WO2014081747
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年11月4日
(31)【優先権主張番号】61/728,944
(32)【優先日】2012年11月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ダナ クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ティモシー マイケル
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−172043(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057338(WO,A1)
【文献】 国際公開第2001/034531(WO,A1)
【文献】 国際公開第2002/004371(WO,A1)
【文献】 特開2001−114531(JP,A)
【文献】 特開2000−357318(JP,A)
【文献】 特開2008−097821(JP,A)
【文献】 特表2011−522767(JP,A)
【文献】 特開2002−097037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C03C 1/00−14/00
DB名 INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
51mol%〜62mol%のSiO
18.5mol%〜28.5mol%のAl
14mol%のNaO、および
5.5mol%〜6.5mol%のYを含み、
2を超えるモル比[Al(mol%)/Y(mol%)]および少なくとも80GPaのヤング率を有する、ガラス。
【請求項2】
51mol%〜61mol%のSiO、および、
6.5mol%のYを含む、請求項1記載のガラス。
【請求項3】
さらに、少なくとも1種の二価の金属酸化物を含み、該少なくとも1種の二価の金属酸化物が、ZnOおよび1種以上のアルカリ土類酸化物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載のガラス。
【請求項4】
さらに、Y以外の少なくとも1種の希土類酸化物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項5】
さらに、B、P、およびTiOのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項6】
少なくとも700℃の歪み点を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項7】
少なくとも660kgf/mm(6468MPa)の200gf(1.96N)ビッカース硬度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項8】
イオン交換され、該イオン交換されたガラスが、その表面から内部へと少なくとも40μmの圧縮応力層深さまで広がる圧縮層を有し、該圧縮層が、少なくとも800MPaの圧縮応力を有し、該イオン交換されたガラスが、少なくとも750kgf/mm(7350MPa)の200gf(1.96N)ビッカース硬度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のガラス。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下、2012年11月21日に出願された米国特許出願第61/728944号明細書に対する優先権の恩典を主張するものであり、なお、本出願は当該出願の内容に依拠し、ならびに当該出願の全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、イオン交換可能なアルカリアルミノケイ酸ガラスに関する。とりわけ、本開示は、イットリア含有アルカリアルミノケイ酸ガラスに関する。さらにより具体的には、本開示は、高レベルの硬度および弾性率を有するイットリア含有アルカリアルミノケイ酸ガラスの例について説明する。
【背景技術】
【0003】
硬質で透明なカバー材料、例えば、単結晶サファイアなど、は、時々、家電製品用のカバーガラスまたはディスプレイウィンドウなどのガラス物品において保護層として使用される。硬質コーティングは、硬度の好適な増加を提供することができる一方で、そのようなコーティングは、接触剥離に対して影響を受けやすい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
高硬度および高弾性率を有するイオン交換可能ガラスを提供する。カバーガラスの基本の配合組成は、NaO、Y、Al、およびSiOを含む。当該ガラスはさらに、P、B、TiO、ならびに任意のアルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物、および希土類酸化物、ならびに他の二価の金属酸化物も含み得る。本明細書において説明されるイオン交換可能ガラスはより高い硬度を提供し、これは、微小延性引っ掻き損傷に対してより高い抵抗性を提供する。これらのガラスのイオン交換は、摩擦損傷によって生じるクラッキングに対するそれらの抵抗性を高め、さらに表面損傷の形成後の強度維持を向上させる。
【0005】
したがって、本開示の一態様は、SiO、Al、NaO、および約7mol%までのYを含みかつ2を超えるモル比[Al(mol%)/Y(mol%)]を有するイオン交換可能ガラスを提供する。
【0006】
第二態様は、SiO、Al、NaO、およびYを含みかつ2を超えるモル比[Al(mol%)/Y(mol%)]および少なくとも75GPaのヤング率を有するガラスを提供する。
【0007】
本開示の第三態様は、SiO、Al、NaO、およびYを含みかつ少なくとも2のモル比[Al(mol%)/(Y(mol%))]および少なくとも660kgf/mm(約6468MPa)の200gf(約1.96N)ビッカース硬度を有するガラスを提供する。
【0008】
本開示のこれらおよび他の態様、利点、および顕著な特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】イットリアアルカリアルミノケイ酸ガラスの三元系状態図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、同様の参照文字は、図面に示される幾つかの図全体を通じて、同様のまたは対応する部分を示す。特に明記されない限り、「上部」、「底部」、「外側」、「内側」などの用語は、便宜のための言葉であって、限定的な用語として解釈されるべきではないことも理解されたい。さらに、ある群が、複数の要素およびそれらの組み合わせの群のうちの少なくとも1つを含むと記載される場合には常に、当該群は、個別にまたはお互いとの組み合わせのいずれかにおいて、任意の数のこれらの列挙される要素を含み得るか、から実質的になり得るか、またはからなり得ることは理解されたい。同様に、ある群が、複数の要素およびその組み合わせの群の少なくとも1つからなると記載されている場合は常に、当該群は、個々にまたはお互いとの組み合わせのいずれかにおいて、任意の数のこれらの列記された要素からなり得ることは理解されたい。特に明記されない限り、数値の範囲は、列挙される場合、当該範囲の上限および下限の両方、ならびにそれらの間の任意の範囲を含む。本明細書において使用される場合、特に明記されない限り、単数形の名詞は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。本明細書および図面において開示される様々な特徴は、あらゆる組み合わせにおいて使用することができることも理解されたい。
【0011】
本明細書において使用される場合、用語「ガラス」は、ガラスおよびガラスセラミックの両方を包含する。用語「ガラス物品」は、それらの広義の意味において使用され、よって全体的にまたは部分的にガラスおよび/またはガラスセラミックで作製された任意の物体を包含する。
【0012】
用語「実質的に」および「約」は、任意の定量比較、値、測定値、または他の表現に起因し得る不確実性の本質的度合いを表すために、本明細書において用いられ得ることに留意されたい。これらの用語も、検討中の主題の基本機能における変化を結果として生じることなく、定量的表現が、述べられた参考値から変わり得る程度を表すために、本明細書において用いられる。
【0013】
概して図に対し、特に図1に関して、例示は、特定の実施形態を説明する目的のためであって、本発明をそれらに限定することを意図するものではないことは理解されるであろう。
【0014】
本明細書において、イオン交換可能ガラスならびに、高硬度および高弾性率を有するイオン交換ガラスについて説明する。これらのガラスは、SiO(シリカ)、Al(アルミナ)、NaO、およびY(イットリア)を含み、この場合、当該ガラスのモル比Al(mol%)/Y(mol%)は2を超え、いくつかの実施形態では、2.1を超える。本明細書において説明されるイオン交換可能ガラスは、単結晶サファイアほど硬くはないが、イオン交換することにより、高表面圧縮および深い圧縮層深さを達成することが可能である。イオン交換は、摩擦損傷によって生じるクラッキングに対するガラスの抵抗性を高め、ならびに表面損傷の形成後の当該ガラスの強度維持を向上させる。当該イオン交換可能ガラスは、多くのイオン交換可能なもしくはイオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスよりも硬く、微小延性引っ掻きに対して抵抗性である。
【0015】
図1は、イットリアナトリウムアルミノケイ酸ガラスの三元系状態図の等温線であり、ガラスを形成したか、多層へと分離したか、または失透した試料の組成を示している。図1にプロットされた各試料は、14mol%のNaOを含有する。図1に示されるSiO、Al、およびYの成分は、三元系状態図上での組成を表すために、86で割られている。図1から分かるように、イットリアを含有するナトリウムアルミノケイ酸ガラスは、相分離もしくは失透が容易に生じる大きな組成上の範囲もしくは領域を有する。いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるガラスは、最大7mol%までのYを含み、したがって、そのような失透は避けられる。
【0016】
図1から分かるように、相分離は、NaOとアルミナのモル比(NaO(mol%)/Al(mol%))が1:1である組成において容易に生じるように見え、そのような相分離の程度は、イットリアの含有量の増加に伴って増加する。アルミナに対してNaOが過剰に存在するかまたはアルミナがNaOに対して過剰に存在するガラスは、高品質の(すなわち、非常に透明でクリアな)均質ガラスを形成する。したがって、本明細書において説明されるガラスにおいて、そのような相分離を避けるために、いくつかの実施形態では、当該比率(NaO(mol%)/Al(mol%))は1を超え、他の実施形態では、当該比率(NaO(mol%)/Al(mol%))は1未満である。
【0017】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるガラスは、約40mol%〜約82mol%のSiOを含み、いくつかの実施形態においては、約50mol%〜約80mol%のSiOを含む。本明細書において説明されるガラスは、約4mol%〜約40mol%のAlも含み、いくつかの実施形態においては、約4mol%〜約30mol%のAlを含む。本明細書において説明されるガラスは、約4mol%〜約26mol%のNaOも含み、いくつかの実施形態においては、約12.5mol%〜約18mol%のNaOを含む。最後に、いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるガラスは、約1.5mol%〜約7mol%のYを含む。いくつかの実施形態においては、当該ガラスは、約40mol%〜約82mol%のSiO;約4mol%〜約40mol%のAl;約4mol%〜約26mol%のNaO;および約1.5mol%〜約7mol%のYを含む。他の実施形態において、当該ガラスは、約50mol%〜約80mol%のSiO;約4mol%〜約30mol%のAl;約12.5mol%〜約18mol%のNaO;および約1.5mol%〜約7mol%のYを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、当該ガラスはさらに、NaO以外の少なくとも1種のアルカリ金属酸化物;すなわち、LiO、KO、RbO、および/またはCsO、を含み得る。ある特定の実施形態において、当該ガラスは、リチア(LiO)を実質的に含み得ない。いくつかの実施形態において、当該ガラスはさらに、少なくとも1種のアルカリ土類酸化物および/または他の二価の金属の酸化物(例えば、ZnO)を含み得る。いくつかの実施形態において、当該ガラスはさらに、イットリア以外に少なくとも1種の追加の希土類(すなわち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc)の酸化物、例えば、Laおよび/またはSc、も含み得る。いくつかの実施形態において、当該ガラスはさらに、B、P、およびTiOのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0019】
本明細書において説明されるイットリア含有ガラスの実施例が、表1に一覧されている。様々な実施例に対して特定されたAl/Yモル比の値と、これらのガラスの物理特性(密度、モル体積、ヤング率、剛性率、ポアソン比、歪み点、アニール点、および軟化点)も表1に一覧されている。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書において説明されるガラスは、当技術分野において公知のダウンドロー法、例えば、フュージョンドロー法およびスロットドロー法など、を用いたガラスの製造を可能にする、温度に対する粘度依存性を有する。例えば、当該ガラスは、約1154℃の温度において160kP(キロポアズ)(約16kPa・s)、約1539℃の温度において200P(約20Pa・s)、約1213℃の温度において35kP(約3.5kPa・s)を有し得る。あるいは、当該ガラスは、当技術分野において公知の他の方法、例えば、フロート法およびキャスト法など、によって形成することができる。
【0021】
本明細書において説明されるガラスは、いくつかの実施形態において、イオン交換によって強化され得る。当該ガラスは、例えば、KNOを含むかまたはKNOから実質的になる溶融塩浴に約450℃の温度で約24時間浸漬することによってイオン交換することができるが、他のカリウム塩(例えば、KCl、KSOなど)、異なる温度(例えば、300℃〜500℃)、異なるイオン交換時間(例えば、1〜48時間)、および複数のイオン交換浴への連続浸漬も使用することができる。イオン交換プロセスにおいて、ガラスの表面もしくは表面近傍のナトリウムイオンの一部が、ガラスのある深さまで塩浴中のカリウムイオンと交換され、その結果として、圧縮応力下にあり(圧縮層とも呼ばれる)かつ表面からガラスのバルク中のある深さまで(圧縮応力層深さ)広がる層が当該ガラスに形成される。ガラス中でのNaイオンとKイオンとの交換の結果として、当該圧縮層は、カリウムで富化され得る。いくつかの実施形態において、カリウム濃度は、表面において最大値を有し、修正誤差関数に従って減少する。
【0022】
圧縮応力および圧縮応力層深さは、当技術分野において公知の手段を用いて測定される。そのような手段としては、これらに限定されるわけではないが、市販の器具(例えば、Luceo Co.,Ltd.(東京、日本)によって製造されたFSM−6000など)を使用した表面応力の測定(FSM)が挙げられ、ならびに圧縮応力および圧縮応力層深さを測定する方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」と題されるASTM 1422C−99、および「Standard Test Method for Non−Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed, Heat−Strengthened, and Fully−Tempered Flat Glass」と題されるASTM 1279.19779に記載されており、なお、これらの参考文献の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(SOC)の正確な測定に依拠する。一方で、SOCは、ファイバおよび四点曲げ試験法(これらは両方とも、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress−Optical Coefficient」と題されるASTM standard C770−98(2008)に記載されており、それらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)、およびバルクシリンダー法など、当技術分野において公知の方法によって測定される。FSM−6000の使用により複数の画像が得られ、これは、イットリア含有ガラスのより高い屈折率にアクセスするために組み合わされる。
【0023】
ガラス表面に損傷抵抗性および引っ掻き抵抗性を提供するが剥離しやすい傾向にある、ダイアモンド状炭素やサファイアなどの引っ掻き抵抗性コーティングと異なり、ガラスの圧縮層は、ガラスのそれ自体の表面に圧縮応力を提供する。本明細書において説明されるガラスは、イオン交換することによって、少なくとも約800MPaの圧縮応力と少なくとも40μmの圧縮応力層深さとを有する圧縮層を形成することができる。表2には、450℃のKNO溶融塩浴において24時間イオン交換した場合の、表1に一覧されるガラスにおいて得られた圧縮応力および圧縮応力層深さが一覧されている。
【0024】
本明細書において説明されるガラスはさらに、他のイオン交換可能なアルカリアルミノケイ酸ガラスにおいて観察される歪み点よりもかなり高い歪み点も有する。一実施形態において、当該ガラスは、少なくとも約700℃の歪み点を有し、いくつかの実施形態においては、少なくとも約760℃の歪み点を有する。それに対し、Corning(登録商標) Incorporatedによって製造されたガラスコード2317は、約640℃未満の歪み点を有する。
【0025】
本明細書において説明されるガラスは、高められた硬度およびヤング率を有する。硬度値は、通常、押し込みクラッキング抵抗性の増加と共に減少するが、当該ガラスの硬度は、パッキング密度の減少に伴って減少し、これは、低弾性率にも反映される。低いパッキング密度は、強度を制限するクラックの形成前のかなりの程度の変形を可能にするが、微小延性形態での小さな溝状の引っ掻きに対するガラスの抵抗性に対しても有害である。微小延性引っ掻き形態は、任意の横方向のクラックが表面または任意の表面の放射状クラックと交差することのない、永久的な引っ掻き溝の存在として定義される。このタイプの引っ掻きは、小体積のガラスを移動させる接触の際に生じる。イットリアをドープしたガラスの硬度を高めることで、より柔らかいガラスと比較した場合、所定の接触に対する引っ掻きの幅および/または深さはより小さくなる。本明細書において説明されるガラスは、そのような小さな溝状の引っ掻きに対するガラスの抵抗性を高める、少なくとも75ギガパスカル(GPa)のヤング率を有し、いくつかの実施形態においては80GPaのヤング率を有する。それに対し、Corning(登録商標) Incorporatedによって製造される、コード2317ガラスおよび関連するアルカリアルミノケイ酸ガラスは、典型的には、約75GPa以下のヤング率を有する。塩基性ナトリウムアルミノケイ酸ガラスの基本組成にイットリウムなどの希土類金属を添加することで、結果として、非常に密に詰まったガラスネットワークが生じ、これにより、結果として、より高い硬度およびヤング率が得られる。
【0026】
イオン交換されたアルカリアルミノケイ酸ガラスは、典型的には、約650kgf/m(約6370Pa)の200グラム重(gf)(約1.96N)ビッカース硬度値を有するが、その一方で、本明細書において説明されるガラスは、少なくとも750kgf/mm(約7350MPa)の200グラム重(gf)(約1.96N)ビッカース硬度値を有し、いくつかの実施形態においては、イオン交換した場合、少なくとも790kgf/mm(約7742MPa)の200グラム重(gf)(約1.96N)ビッカース硬度値を有する。非強化(すなわち、イオン交換されていない)の場合、本明細書において説明されるガラスは、少なくとも660kgf/mm(約6468MPa)の200gf(約1.96N)ビッカース硬度を有する。表3には、表1に一覧されているガラスから選択されたガラスにおいて得られたビッカース硬度値が一覧されており、これには、イオン交換されたガラスのデータとイオン交換されていないガラスのデータとが含まれる。
【0027】
本明細書において説明されるガラスは、いくつかの実施形態において、電子装置、例えば、これらに限定されるわけではないが、エンターテイメントデバイス、ラップトップコンピュータ、タブレットなどのディスプレイのカバーガラスまたはウィンドウとして使用することができる。そのような用途のために、当該ガラスは、平面シートまたは三次元シートへと形成され、ならびに、典型的には、所望のレベルの表面圧縮応力を提供するためにイオン交換される。いくつかの実施形態において、当該ガラスは、約0.1mm〜約1.5mmの範囲の厚さを有し、他の実施形態では、約0.2mm〜約1.0mmの範囲、さらに他の実施形態では約0.2mm〜約0.7mmの範囲、さらに他の実施形態では約0.2mm〜約0.5mmの範囲の厚さを有する。
【0028】
イオン交換した表1に一覧されるガラスを測定したビッカース押し込み放射状クラッキング閾値を表2に一覧する。本明細書において説明されるビッカース押し込み半径方向クラッキング閾値測定は、押し込み荷重を0.2mm/分においてガラス表面に適用し、その後荷重を取り除くことによって実施した。押し込み最大荷重は10秒間維持する。押し込みクラッキング閾値は、10回の押し込みうちの50%が、押し込み圧痕の隅から発生する任意の数の放射状/中央クラックを示すような、押し込み荷重において定義される。所定のガラス組成に対して閾値が満たされるまで最大荷重を増加させる。全ての押し込み測定は、50%の相対湿度の室温において実施する。
【0029】
【表1-1】
【0030】
【表1-2】
【0031】
【表1-3】
【0032】
【表1-4】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
説明目的で典型的な実施の形態を述べてきたが、先の記載は、本発明の範囲への制限と考えるべきではない。したがって、本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な改変、適用、および変更が当業者に想起されるであろう。
図1