(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586054
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ルアーロッド
(51)【国際特許分類】
A01K 87/02 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
A01K87/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-137077(P2016-137077)
(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公開番号】特開2018-7584(P2018-7584A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2018年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】509204895
【氏名又は名称】東村 真義
(74)【代理人】
【識別番号】100085648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幹人
(72)【発明者】
【氏名】東村 真義
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−1362350(KR,B1)
【文献】
特開2014−209857(JP,A)
【文献】
特開2003−274811(JP,A)
【文献】
特開平9−149747(JP,A)
【文献】
実開昭53−154887(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3178453(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルアーロッドを握持して操作するとともにリールを装着するためのリールシートを一体に形成したグリップを、ロッド後端から所定長さ離間させてブランクに装着してなるルアーロッドにおいて、
ロッド後端とグリップの間のグリップの近傍に継部を形成し、
ブランクを、前記継部からロッド先端までの第1ブランクと、前記継部からロッド後端までの第2ブランクから形成し、第1ブランクを継部が存在しない1本のブランクで形成するとともに、第1ブランクの開放端部をグリップから突出させ、前記継部において第2ブランクと分割可能に連結して固定したことを特徴とするルアーロッド。
【請求項2】
前記継部において、ブランクを第1ブランクと第2ブランクに分割することにより、携行時におけるルアーロッドの全長を短縮可能とした請求項1記載のルアーロッド。
【請求項3】
グリップを握持して、リールシートに装着されたリールを操作して釣りを行う際に、第1ブランクにて魚の動作を受け止める請求項1又は2記載のルアーロッド。
【請求項4】
第1ブランクの長さ≦160cm,第2ブランクの長さ≦50cmであって、ルアーロッドの全長を160cm〜210cmとした請求項1,2又は3記載のルアーロッド。
【請求項5】
リールシートにスピニングリール又はベイトリールを装着可能とした請求項1,2,3又は4記載のルアーロッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルアーフィッシィングを楽しむためのルアーロッドに関し、特にはルアーロッドを分割可能として携行時における全長を短縮するとともに、使用時においてはブランクスルー型のルアーロッドの特性を発揮できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
レジャーフィッシングやスポーツフィッシング等のレクリエーションとしての釣りにおいては、ルアー(擬似餌)を使用したルアーフィッシングが盛んである。狙う獲物もカジキ,マグロ,カンパチ,ヒラマサ等からアジ,メバルやイカ等々の大小様々な魚であり、又海水魚から淡水魚まで生息域や生息深度も様々に異なっている。そのため、狙う獲物によって使用するルアーを選択することは勿論、使用するルアーロッドやリールも獲物や当日の釣り環境に対応して種々選択して使用している。
【0003】
ルアーロッドは使用するリールに対応してスピニングリールを装着するスピニングロッド、ベイトリールを装着するベイトロッドに大別され、更に長さ,弾性,先端の調子など多種多様であり、用途によって様々なタイプが存在する。そのため、ルアーフィッシングを楽しむ場合には、用途に応じて種類の異なる複数本のルアーロッドを準備し、その中から状況に応じて選択して使用したり、交換して使用することが多い。そして、キャスティング動作の多いルアーフィッシィングでは、軽さ,感度,強度などの優位性から、ルアーロッドのブランク(シャフト)を1つのピースから構成した1ピースロッドがよく使用されている。
【0004】
一方、近時は携行性を考慮して、携行時の全長を短縮することを可能とするために、ルアーロッドを2つに分割可能な2ピースロッドや3つ以上に分割可能なパックロッドも使用されている。例えば、持ち運び時においてはコンパクトな状態でありながら、釣り操作時には、竿の全長を変化させて、対象魚の変更や釣り場の状況に応じた対応を迅速に行うため、インロー継式釣り竿において、元竿を、リールシートを備えた元竿本体とその元竿本体より竿先側に位置する補助竿体とで構成した釣り竿が提供されている(特許文献1)。また、中実構造の第1穂先部と管状構造の第2穂先部とを、安定した接着剤層を確保して安定した取付強度で継ぎ合わせた竿杆を有する釣り竿も提供されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−194005号
【特許文献2】特開2009−178131号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に2ピースロッド等の分割可能なルアーロッドは、コンパクトに収納できるため持ち運びに便利ではあるものの、特許文献1,2に示すように魚の動きを受け止めて吸収するブランクの途中(グリップからロッド先端方向のブランクの途中)に分割のための継部を形成しているため、この継部によって操作時の感度の低下,重量の増加,強度低下等の弊害を来してしまう。
【0007】
これに対して、1ピースロッドは前記したようなブランクの途中における継部が存在しない分、ルアーロッドに伝わる情報を妨げるものが少ないので、感度が高く強度にも優れている。中でも、キャスティング時や釣り上げ動作時に負荷のかかるブランクがルアーロッドの先端(ディップ)からロッド後端まで1本のブランクで製造されているブランクスルー型のルアーロッドは感度,強度,軽さともに最も優れている。
【0008】
図3はブランクスルー型のルアーロッド60の要部説明図であり、図においてブランク61は、ロッド後端60aからロッド先端(図示略)まで継部のないカーボンやチタン等の適宜の素材からなる1本の部材として形成されている。62はルアーロッド60を握持するためのグリップであり、リールを装着するためのリールシート62aが一体形成されている。63はロッド後端60aを保護するための後端カバーである。なお、ブランク61には所定間隔でガイド(図示略)が装着されている。
【0009】
しかしながら、上記したブランクスルー型のルアーロッド60は、長さ寸法を短縮できないため、携行時に他人の迷惑となったり、ルアーロッドを損傷してしまったり、通常の輸送サービス手段では輸送できないこと等の不便がある。
【0010】
例えば、釣り船に乗船してルアーフィッシングを楽しむ場合には、複数本のルアーロッドを準備しておくことが多い。この場合、釣り船には他の釣り客も乗船していることが一般的であるため、他の釣り客に迷惑を掛けないようにし、又自宅から釣り場までの移動時には、公共交通機関を利用する場合は勿論、自家用車を使用する場合も、ルアーロッドの損傷防止や取扱を容易とするために、ルアーロッドの長さを弊害が生じない長さまで短縮できることが望ましい。
【0011】
近時は釣り具を宿泊先,釣り宿や自宅等まで宅配便等の輸送サービス手段を使用して輸送することも多いが、その場合にもルアーロッドの全長が問題となる。主たる輸送サービスの取扱サイズは荷物の3辺の合計サイズの最大が1.6m〜1.7m程度であり、このサイズを超える荷物は輸送料金が高額となるとともに、利便性にも欠けてしまう。1ピースロッドの多くは全長1.6m〜1.8mであり、長いものは2.1m程度である。そのため、輸送サービスの提供を受けられないものが多い。
【0012】
更に、保管時や輸送時には、変形防止や安全性のためにルアーロッドを立てた状態を保持することが最善であるが、全長1.6m〜1.8mの1ピースロッドの保管や輸送には注意が必要であり、保管時や輸送時に損傷してしまうことも多い。
【0013】
1ピースロッドには、
図3に示すブランクスルー型のルアーロッド60の外に、ブランクを継ぎ足して1ピースとしているジョイント型のルアーロッドも存在する。
図4はジョイント型のルアーロッド70の要部説明図であり、グリップ72及びリールシート72aを一体として具備するグリップブランク74とブランク71を継部75において継ぎ足して1ピースとしている。このジョイント型のルアーロッド70は、外観はブランクスルー型のルアーロッド60と同様であるが、グリップ72内に継部75が存在する。73はロッド後端70aを保護するための後端カバーである。
【0014】
しかしながら、ジョイント型のルアーロッド70は、1ピースロッドではあるものの、キャスティング時や魚を釣り上げるための操作時に負荷のかかるグリップ72及びリールシート72a内に継ぎ足しのための継部75が存在することにより、この継部75に負荷がかかって折れやすくなり、又継部75を補強するために強度を上げたり、補強部品を追加すると、感度が損なわれることとなり、その分重量も増加してしまう。
【0015】
よって、ブランクスルー型のルアーロッド60は、感度,強度,軽さ等のルアーロッドとしての基本的性能には優れているものの、全長を短縮させることができないため、保管時や輸送時の取扱性に課題を有する。一方、特許文献1,2に示すような2ピースロッド等の分割可能なルアーロッドは、全長を短縮させることができ、取り扱い性にはすぐれているものの感度,強度,軽さ等のルアーロッドとしての基本的性能に課題を残している。更に、ジョイント型のルアーロッド70は全長を短縮させることができないとともに、ブランクスルー型のルアーロッド60に比べて感度,強度,軽さ等のルアーロッドとしての基本的性能において構造的な課題を内在している。
【0016】
そこで、本発明は上記した分割可能なルアーロッドとブランクスルー型のルアーロッドの双方の長所を同時に活かすとともに、双方の課題を同時に解決するという新たな課題を設定し、この新たな課題を解決するために、ルアーロッドを分割可能として携行時における全長を短縮するとともに、使用時においてはブランクスルー型のルアーロッドの感度を具備した新規なルアーロッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明はその目的を達成するために、ルアーロッドを握持して操作する
とともにリールを装着するためのリールシートを一体に形成したグリップを
、ロッド後端から所定長さ離間させてブランクに装着してなるルアーロッドにおいて、ロッド後端とグリップの間の
グリップの近傍に継部を形成し、
ブランクを、前記継部からロッド先端までの第1ブランクと、前記継部からロッド後端までの第2ブランクから形成し、第1ブランクを継部が存在しない1本のブランクで形成
するとともに、第1ブランクの開放端部をグリップから突出させ、前記継部において第2ブランクと分割可能に連結して固定したルアーロッドを基本として提供する。
【0018】
そして、
前記継部において、ブランクを第1ブランクと第2ブランクに分割することにより、携行時におけるルアーロッドの全長を短縮可能とし、グリップを握持して、リールシートに装着されたリールを操作して釣りを行う際に、第1ブランクにて魚の動作を受け止める。
【0019】
また、
第1ブランクの長さ≦160cm,第2ブランクの長さ≦50cmであって、ルアーロッドの全長を160cm〜210cmとし、リールシートにスピニングリール又はベイトリールを装着可能とした。
【発明の効果】
【0020】
上記構成の本発明によれば、ロッド後端とリールシートの間の
グリップの近傍に継部を形成し、該継部においてルアーロッドを分割することができるため、保管時や輸送時においてルアーロッドの全長を短縮することができ、取扱性を向上させるとともに、ロッド先端等の損傷を防ぐことができる。更に、全長を短縮させることによって、各種の輸送サービスの取扱サイズ内に納めることができるため、ルアーロッドに各種輸送サービスによる輸送適性を付与することができる。
【0021】
そして、分割のための継部
を、ロッド後端と
グリップの間のグリップの近傍に形成し、ブランクを、前記継部からロッド先端までの第1ブランクと、前記継部からロッド後端までの第2ブランクから形成し、キャスティング時や釣り上げ動作時に最も負荷のかかる
第1ブランクを継部が存在しない1本のブランクで形成しているため、ルアーロッドとして良好な感度を維持することができる。更に、継部は感度に影響を与えない位置にあるため、十分な強度を付与することができ、補強対策を講じることも可能である。
【0022】
よって、本発明によれば、2ピースロッドやオフセットグリップ型のルアーロッドの長所を活かしつつ、ブランクスルー型のルアーロッドの性能を発揮することができる。即ち、ルアーロッドを分割可能として携行時における全長を短縮するとともに、使用時においてはブランクスルー型のルアーロッドの感度を具備した新規なルアーロッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】ブランクスルー型のルアーロッドの要部説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面に基づいて本発明にかかるルアーロッドの実施形態を説明する。
図1は本発明にかかるルアーロッドの要部説明図、
図2はその全体図である。図において、1は本発明にかかるルアーロッドであり、アングラーがルアーロッド1を握持して操作するためのグリップ30をロッド後端1aから所定長さDだけ離間させてブランク10(シャフト)に装着している。グリップ30には、ルアーロッド1にリール装着するためのリールシート30aを一体に形成している。また、ロッド後端1aの所定範囲を後端カバー50で被覆している。このグリップ30,リールシート30a及び後端カバー50の素材としては特に限定はないが、通常ポリエチレンよりも弾性が高いEVA樹脂(エチレンと酢酸ビニルとの共重合樹脂)、或いはコルクを用いるのが適当である。リールシート30aにはスピニングリール又はベイトリールを装着可能である。40はリールから繰り出したラインを挿通するための環状のガイドである。
【0025】
ルアーロッド1の本体となるブランク10は、ロッド後端1aとグリップ30の間におけるグリップ30の近傍に形成された継部20において分割可能であり、継部20からロッド先端1bまでの第1ブランク10aと継部20からロッド後端1aまでの第2ブランク10bから形成している。そして、継部20からロッド先端1b方向の第1ブランク10aを1本のブランクで形成している。よって、ルアーロッド1は継部20において、分割することにより、保管時や輸送時等の不使用時において、第2ブランク10bを分割することによりルアーロッド1の全長を短縮することが可能となり、ルアーロッド1の全長を第1ブランク10a長さに短縮することができる。
【0026】
継部20の構造は特に限定はなく、印籠継ぎ,並継ぎ等適宜の継ぎ構造を採用することが可能である。本実施形態では、グリップ30から突出した第1ブランク10aの開放端部を第2ブランク10b内に挿通して一体となるように固定した。この第1ブランク10aの長さL1を≦160cm、第2ブランク10bの長さL2は≦50cm程度が適当であり、ルアーロッド1の全長Lを160cm〜210cmとするとよい。
【0027】
ルアーロッド1の使用時には、継部20において、第1ブランク10aと第2ブランク10bを連結して固定し、グリップ30に所定のリールを装着し、ラインをリールからガイド40を介して繰り出し、適宜のルアーを装着して使用する。キャスティング時,ルアーの操作時や魚を釣り上げるための操作時には、グリップ30を握持して操作する。そのため、キャスティング時や釣り上げ動作時に負荷のかかるルアーロッド1を握持するグリップ30やリールを装着するリールシート30aより前方、即ちロッド先端1b方向の第1ブランク10aは1本のブランク素材から形成されており、継部は存在しない。
【0028】
魚を釣り上げる際の感度は専らグリップ30よりロッド先端1b方向の第1ブランク10aによって決定され、同様に魚を釣り上げる際の負荷を受けるグリップ30よりロッド先端1b方向の第1ブランク10a上に存在する。よって、本発明によれば、ルアーロッド1の操作時には感度,強度等において、ブランクスルー型のルアーロッド60の特性を実現することができる。なお、継部20の存在により、部品点数が増加し、その分重量増加を伴うが、重量増加の原因となる継部20はグリップ30より後方に配置されるため、持ち重りを感じにくい。
【0029】
一方、不使用時や保管時,輸送時には、継部20において、第1ブランク10aと第2ブランク10bを分割することによって、第2ブランク10bの全長分だけルアーロッド1の全長を短縮することができ、コンパクトに収納できて、携行時に他人の迷惑となったり、ルアーロッドを損傷してしまったりすることがない。また、各種の輸送サービスの提供を受けることが可能である。この第2ブランク10bを分割することによる長さの短縮は数値上は僅かであるが、これにより、従来不可能であった輸送サービス手段による輸送を可能とすることができる。例えば、全長180cmのルアーロッド1は宅配便で輸送することができないが、30cmの第2ブランクを取り外して分割すれば、全長150cmとなって、輸送することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上記構成の本発明によれば、ロッド後端とリールシートの間の所定箇所に継部を形成し、該継部においてルアーロッドを分割することができるため、保管時や輸送時においてルアーロッドの全長を短縮することができ、取扱性を向上させるととともに、ロッド先端等の損傷を防ぐことができる。更に、全長を短縮させることによって、各種の輸送サービスの取扱サイズ内に納めることができるため、ルアーロッドに各種輸送サービスによる輸送適性を付与することができる。
【0031】
そして、分割のための継部は、ロッド後端とリールシートの間にあって、継部から先端方向のブランクを1本のブランクで形成しているため、キャスティング時や釣り上げ動作時に最も負荷のかかるリールシートからロッド先端までの間に継部が存在しない1本のブランクで形成しているため、ルアーロッドとして良好な感度を維持することができる。更に、継部は感度に影響を与えない位置にあるため、十分な強度を付与することができ、補強対策を講じることも可能である。
【0032】
よって、本発明によれば、2ピースロッドやオフセットグリップ型のルアーロッドの長所を活かしつつ、ブランクスルー型のルアーロッドの性能を発揮することができる。即ち、ルアーロッドを分割可能として携行時における全長を短縮するとともに、使用時においてはブランクスルー型のルアーロッドの感度を具備した新規なルアーロッドを提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…ルアーロッド
1a…ロッド後端
1b…ロッド先端
10…ブランク
10a…第1ブランク
10b…第2ブランク
20…継部
30…グリップ
30a…リールシート
40…ガイド
50…後端カバー