(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586095
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】新規な抗ネトリン1抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20190919BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20190919BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20190919BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20190919BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20190919BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20190919BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18ZNA
C07K16/46
C07K14/47
A61K39/395 N
A61P43/00 105
A61P35/00
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-545904(P2016-545904)
(86)(22)【出願日】2015年1月9日
(65)【公表番号】特表2017-505607(P2017-505607A)
(43)【公表日】2017年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2015050306
(87)【国際公開番号】WO2015104360
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年11月8日
(31)【優先権主張番号】14305034.2
(32)【優先日】2014年1月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513045574
【氏名又は名称】ネトリス ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジーン−ガイ・デルクロ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ドゥアン
【審査官】
林 康子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−514464(JP,A)
【文献】
特表2008−506703(JP,A)
【文献】
特表2009−528525(JP,A)
【文献】
J Neurosci (2000), Vol.20, No.15, p.5792-5801
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00〜19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY/WPIDS(STN)
PubMed
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 配列番号3の配列からなる単離若しくは精製されたポリペプチド、若しくは配列番号3に対して少なくとも95%の同一性を有するバリアントポリペプチド、若しくは配列番号35の配列の22アミノ酸を含む配列番号3のフラグメントからなるバリアント、又は
- 配列番号4の配列のcDNA、若しくは遺伝子コードの縮重によるそのバリアント、若しくは配列番号4に対して少なくとも95%の同一性を有するバリアントcDNAによってコードされる単離若しくは精製されたポリペプチド。
【請求項2】
配列が配列番号35に示す通りである請求項1に記載のポリペプチド、又は配列番号35に対して少なくとも95%の同一性を有するバリアントポリペプチド。
【請求項3】
配列番号36の配列のcDNA若しくは遺伝子コードの縮重によるそのバリアント、又は配列番号36に対して少なくとも95%の同一性を有するバリアントcDNAによってコードされる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
配列番号4若しくは36の配列のcDNA、又は遺伝子コードの縮重によるそのバリアント、又は配列番号4若しくは36に対して少なくとも95%の同一性を有するバリアントcDNA。
【請求項5】
モノクローナル抗体を調製するための、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチドの使用。
【請求項6】
ネトリン1に対して、配列番号3若しくは35のアミノ酸配列を有する結合領域、又は配列番号3若しくは35に対して少なくとも95%の同一性を有するバリアント結合領域に特異的に結合するネトリン1結合性モノクローナル抗体であって、結合性ポリペプチドが、ネトリン1に結合する性質を有し、UNC5受容体又はDCC受容体を介して腫瘍細胞の細胞死又はアポトーシスを誘発する、ネトリン1結合性モノクローナル抗体。
【請求項7】
配列番号5の配列のCDR1-H、配列番号6の配列のCDR2-H、配列番号7の配列のCDR3-H、並びに配列番号8の配列のCDR1-L、配列YASのCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含むネトリン1結合性モノクローナル抗体であって、抗体が、ネトリン1に結合し、UNC5受容体又はDCC受容体を介して腫瘍細胞の細胞死又はアポトーシスを誘発する性質を有する、ネトリン1結合性モノクローナル抗体。
【請求項8】
配列番号28の配列のCDR1-H、配列番号29の配列のCDR2-H、配列番号30の配列のCDR3-H、並びに配列番号31の配列のCDR1-L、配列番号32の配列のCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含むネトリン1結合性モノクローナル抗体であって、抗体が、ネトリン1に結合し、UNC5受容体又はDCC受容体を介して腫瘍細胞の細胞死又はアポトーシスを誘発する性質を有する、ネトリン1結合性モノクローナル抗体。
【請求項9】
そのエピトープ結合性フラグメントである、請求項6から8のいずれか一項に記載のネトリン1結合性モノクローナル抗体。
【請求項10】
配列番号10及び11両方のアミノ酸配列又は配列番号12及び13両方のアミノ酸配列を含む、請求項6から9のいずれか一項に記載のネトリン1結合性モノクローナル抗体。
【請求項11】
配列番号14及び20、15及び21、16及び22、17及び23、17及び24、16及び25、17及び26、17及び22、18及び25、並びに16及び21の対から選択されるアミノ酸配列の対を含む、請求項6から10のいずれか一項に記載のネトリン1結合性モノクローナル抗体。
【請求項12】
軽鎖にヒトカッパ定常ドメイン、及び重鎖にヒトIgG1定常ドメインをさらに含む、請求項11に記載のネトリン1結合性モノクローナル抗体。
【請求項13】
請求項6から12のいずれか一項に記載の抗体、及び薬学的に許容されるビヒクル、担体、又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項14】
ネトリン1受容体を発現する腫瘍細胞を有するがんに対して対象を処置するための、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
ネトリン1受容体及びネトリン1を発現する腫瘍細胞、又はネトリン1を発現する間質細胞内にネトリン1を発現する腫瘍細胞を有するがんに対して対象を処置するための、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記がんが、腫瘍細胞がネトリン1受容体、特にUNC5クラスのもの、とりわけUNC5B及び/若しくはUNC5A、並びに/又はDCCを発現又は過剰発現しているがんである、請求項14又は15に記載の組成物。
【請求項17】
抗体を含む前記組成物が、患者において化学療法薬と併用される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記化学療法薬が、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル(5FU)、パクリタキセル、又はシスプラチンである、請求項17に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネトリン1の存在下でUNC5受容体等のネトリン1受容体を有する腫瘍細胞、特にネトリン1を発現する腫瘍の細胞死又はアポトーシスの誘発において有用である、ネトリン1結合性ポリペプチド又は抗体、及びがんを処置するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ネトリン1はネトリンファミリーのメンバーであり、軸索ナビゲーションの手がかりであり、この両方が、魅力的かつ反発的な状況で、神経系の発達において主要な役割を果たす。ネトリン1に対する主な受容体は、DCC(直腸結腸がんにおける欠失(Deleted in Colorectal Cancer))及びUNC5(ヒトにおけるUNC5A、UNC5B、UNC5C、UNC5D、マウスにおけるUNC5H1、UNC5H2、UNC5H3、UNC5H4)であり、これらは全て、依存性受容体のファミリーに属する(Keino-Masu、1996年、Cell、87:175〜185頁; Ackermann、1997年、Nature、386:838〜842頁; Hong、1999年、Cell、97:927〜941頁; Mehlen、1998年、Nature、395:801〜804頁)。依存性受容体は、これらそれぞれのリガンドの非存在下でアポトーシスを誘発する能力を共有し、それによってこの能力は、それぞれのリガンドの結合時にブロックされる(Mehlen、2004年、Cell Mol Life Sci、61:1854〜1866頁; Bredesen、2005年、Cell Death Differ、12:1031〜1043頁)。
【0003】
多様なヒトのがんにおいて、DCCの発現の低減又は喪失、よってDCC誘発性アポトーシスの低減又は喪失が観察されている(Kinzler、1996年、Proc Natl Acad Sci、100:4173〜4178頁)。更に、UNC5遺伝子も、殆どの直腸結腸腫瘍において下方制御されることが観察されており、依存性受容体UNC5の喪失は、腫瘍細胞に対して選択的な利点を表すことが指摘される(Bernet、2007年、Gastroenterology、133:180〜1848頁; Shin、2007年、Gastroenterology、133:1849〜1857頁)。しかし、依存性受容体DCC及びUNC5の下方制御だけが多様な腫瘍細胞の生存を増強するわけではなく、これらのリガンドであるネトリン1のオートクリン発現が観察されている。特に、大多数の乳房腫瘍、すなわち転移性乳がんは、ネトリン1の発現の増大を表すことが示されている(Fitamant、2008年、Proc Natl Acad Sci、105:4850〜4855頁)。現在まで、UNC5の細胞外部分の2つの免疫グロブリン(Ig)サブドメインがネトリン1の結合を担うことが実証されているが、両ドメインとも完全なネトリン1の結合に必要であるか否かは明らかではない(Geisbrecht、2003年、J. Biol. Chem.、278:32561〜32568頁; Kruger、2004年、J. Neur.、24:10826〜10834頁)。
【0004】
以前に示されている通り、DCCの外部ドメイン又はこの外部ドメインの一部(ネトリン1囮タンパク質として作用する)によってネトリン1を中和すると、依存性受容体DCC及び/又はUNC5を発現する腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘発することができる(EP-A1-1 989 546)。この外部ドメイン又はこの外部ドメインの一部は、乳がん細胞の肺への転移を低減することができる(Fitamantら、2008)。更に、この外部ドメイン又はこの外部ドメインの一部は、高レベルのネトリン1を発現する非小細胞肺がん細胞及び神経芽細胞腫細胞の細胞死のパーセント値を増大することも実証されている(Delloye-Bourgeois、2009年、J Natl Cancer Inst、101:237〜247頁; Delloye-Bourgeois、2009年、JEM、206:833〜847頁)。WO2012025618は、改善されたDCC囮を有するDCC融合タンパク質を開示している。
【0005】
EP 1 989 546 (WO2007099133)は、ネトリン1又はネトリン1受容体に特異的に対する、特に、ネトリン1受容体の細胞外ドメインに対する、又は前記ネトリン1受容体の細胞外ドメインと相互作用することができるネトリン1フラグメントに対する、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を、薬物として開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP-A1-1 989 546(WO2007099133)
【特許文献2】WO2012025618
【特許文献3】PCT/EP2013/068937
【特許文献4】EP 2 050 764 A1
【特許文献5】EP0239400
【特許文献6】WO91/09967
【特許文献7】米国特許第5,530,101号
【特許文献8】米国特許第5,585,089号
【特許文献9】EP0592106
【特許文献10】EP0519596
【特許文献11】米国特許第5,565,332号
【特許文献12】米国特許第4,444,887号
【特許文献13】米国特許第4,716,111号
【特許文献14】米国特許第5,545,806号
【特許文献15】米国特許第5,814,318号
【特許文献16】WO98/46645
【特許文献17】WO98/50433
【特許文献18】WO98/24893
【特許文献19】WO98/16654
【特許文献20】WO96/34096
【特許文献21】WO96/33735
【特許文献22】WO91/10741
【特許文献23】PCT/EP2013/068937
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Keino-Masu、1996年、Cell、87:175〜185頁
【非特許文献2】Ackermann、1997年、Nature、386:838〜842頁
【非特許文献3】Hong、1999年、Cell、97:927〜941頁
【非特許文献4】Mehlen、1998年、Nature、395:801〜804頁
【非特許文献5】Mehlen、2004年、Cell Mol Life Sci、61:1854〜1866頁
【非特許文献6】Bredesen、2005年、Cell Death Differ、12:1031〜1043頁
【非特許文献7】Kinzler、1996年、Proc Natl Acad Sci、100:4173〜4178頁
【非特許文献8】Bernet、2007年、Gastroenterology、133:180〜1848頁
【非特許文献9】Shin、2007年、Gastroenterology、133:1849〜1857頁
【非特許文献10】Fitamant、2008年、Proc Natl Acad Sci、105:4850〜4855頁
【非特許文献11】Geisbrecht、2003年、J. Biol. Chem.、278:32561〜32568頁
【非特許文献12】Kruger、2004年、J. Neur.、24:10826〜10834頁
【非特許文献13】Delloye-Bourgeois、2009年、J Natl Cancer Inst、101:237〜247頁
【非特許文献14】Delloye-Bourgeois、2009年、JEM、206:833〜847頁
【非特許文献15】Needleman及びWunsch(1970年)J. Mol. Biol.、48:443頁
【非特許文献16】Lefrancら、(2003年) Dev Comp Immunol.、27(1):55〜77頁
【非特許文献17】www.imgt.org
【非特許文献18】Harmsen及びDe Haard(2007年)Appl. Microbiol. Biotechnol.、77:13〜22頁
【非特許文献19】Padlan(1991年)Molecular Immunology、28(4/5):489〜498頁
【非特許文献20】Studnickaら、(1994年)Protein Engineering、7(6):805〜814頁
【非特許文献21】Roguskaら、(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A.、91:969〜973頁
【非特許文献22】「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038頁及び1570〜1580頁
【非特許文献23】Jenkinsら、Nat Biotech.、1996年、14:975〜81頁
【非特許文献24】Allouche M.ら、1980年、Int. J. Cancer、26、777〜782頁
【非特許文献25】Paradisiら、2013年、EMBO Mol Med (2013年)5、1821〜1834頁
【非特許文献26】Proc Natl Acad Sci U S A.、2009年10月6日、106(40):17146〜51頁
【非特許文献27】Neufert Cら(2007年) Nat Protoc、2:1998〜2004頁
【非特許文献28】Fitamantら、PNAS、2008年
【非特許文献29】Delloye-Bourgeoisら、JNCI、2009年
【非特許文献30】Delloye-Bourgeoisら、J. Exp. Med.、2009年
【非特許文献31】Linkら、Annals of Chir., Onco.、2007年
【非特許文献32】Dumartinら、Gastro、2010年
【非特許文献33】Kaufmannら、Cellular Oncology、2009年
【非特許文献34】Panastasiouら、Oncotarget、2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人はここで、受容体、特にUNC5クラス、とりわけUNC5B及びUNC5Aに対するネトリン1の特異的結合領域に対応するか、又は代替的に、抗体に結合するとネトリン1/受容体の相互作用を妨げる受容体に対するネトリン1の特異的結合領域付近の領域に対応する可能性が高い、ネトリン1上の直鎖状又は実質的に直鎖状のエピトープを決定した。この相互作用が受容体に対するネトリン1の結合、及び受容体の多量体化を阻害するという事実により、直鎖状のエピトープのこの決定で、本出願人が、ネトリン1に結合し、ネトリン1/受容体相互作用に干渉し、それにより、ネトリン1及び少なくとも1つのネトリン1受容体を発現又は過剰発現する腫瘍細胞のアポトーシス又は細胞死を誘発する抗体を生成することが可能となる。本出願人はまた、このエピトープに対するマウスモノクローナル抗体、及びこのモノクローナル抗体の多様なヒト化形態を生成した。
【0009】
ネトリン1の全長のアミノ酸配列を配列番号1に示し、それをコードするcDNAを配列番号2に示す。直鎖状のエピトープは、ネトリン1の第2のEGF様ドメインにおいて特徴付けられ、配列番号3、更にとりわけ配列番号35上に表すものである。このエピトープをコードするcDNAをそれぞれ、配列番号4、36上に表す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の目的は、よって、ネトリン1の直鎖状のエピトープを表すポリペプチド、又は前記直鎖状のエピトープのフラグメント若しくはバリアントである。より具体的に、本発明は、以下に関する:
- 配列番号3の配列の単離又は精製されたポリペプチド、
- 配列番号3に対して少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するバリアントポリペプチド、
- アミノ酸最大200、150、100、90、80、70、60、50個であり、配列番号3を含むバリアントポリペプチド又は上記に記載したバリアント配列、例えば、配列番号35として表される配列番号3の9位(A)から30位(C)のこれらのアミノ酸を含む連続したアミノ酸22個からなるバリアントポリペプチド、
- 配列番号3の連続したアミノ酸を少なくとも20、25、若しくは30個含むバリアントポリペプチド、例えば、配列番号35の配列のバリアントポリペプチド、又は上記に記載したバリアントの配列、
- 配列番号35の配列のポリペプチド、又は上記に記載したバリアントの配列、
- 配列番号4又は36の配列のcDNAによってコードされる単離又は精製されたポリペプチド。
【0011】
本発明の別の目的は、ネトリン1の直鎖状のエピトープ又は前記直鎖状のエピトープのフラグメント若しくはバリアントを表す、前記ポリペプチドをコードするcDNAである。より具体的に、本発明は以下に関する:
- 配列番号4の配列のcDNA、
- 配列番号3の配列のポリペプチドをコードするバリアントのcDNA、又は遺伝子コードの縮重によるそのバリアント、
- 先に規定したバリアントポリペプチドをコードするバリアントcDNA、特に、配列番号35のバリアントポリペプチドをコードするcDNA、例えば、配列番号36のcDNA、
- 配列番号4又は6に対して少なくとも85、90、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するバリアントcDNA。
【0012】
本発明にしたがって、バリアントポリペプチドは、ネトリン1上の直鎖状のエピトープに特異的に結合し、ネトリン1の、ネトリン1受容体、特にUNC5又はDCC、とりわけUNC5B及びUNC5Aに対する相互作用を阻害する能力を依然として維持する抗体を産生し、ネトリン1及びネトリン1受容体を発現又は過剰発現する腫瘍細胞のアポトーシス又は細胞死を誘発することができる。バリアントのcDNAは配列番号3若しくは配列番号35のポリペプチド、又はバリアントポリペプチドをコードする。
【0013】
本発明の別の目的は、モノクローナル抗体を生成するための、配列番号3若しくは35のポリペプチド、又はこれらのバリアントの使用であり、このように生成されるモノクローナル抗体も本発明の目的である。当業者であれば、形質細胞及びハイブリドーマの技術を用いて、モノクローナル抗体を生成する方法を認識している。本発明は、配列番号3若しくは35のポリペプチド、又はそのバリアントに特異的に対する抗体を生成するためのこれらの方法の使用を包含する。VH及びVLのCDRが決定され、開示されているため、特定のポリペプチド又は抗体をコードする核酸配列に基づいて、遺伝子工学によってポリペプチド又はモノクローナル抗体を生成することも、本発明の範囲内である。本発明の直鎖状のエピトープ、そのフラグメント若しくはバリアントに特異的な可変領域を有する、抗体フラグメント及び/又はヒト化抗体又は抗体フラグメントを提供するのも、本発明の範囲内である。「結合性ポリペプチド」の語は、本明細書で用いて、抗体及び抗体のバリアント、抗体の結合機能を維持するフラグメント及び組合せを包含する。
【0014】
よって、本発明は、配列番号3若しくは35のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はこれらのバリアントに特異的に結合する、ネトリン1結合性ポリペプチドにも関する。結合性ポリペプチドは、ネトリン1に結合し、UNC5又はDCC受容体を介して腫瘍細胞の細胞死又はアポトーシスを誘発する性質を有する。実際は、遊離の、又は活性のネトリン1は最早存在せず、又は不十分なレベルで存在し、そのためネトリン1受容体のアポトーシスシグナリングが活性化される。
【0015】
本発明は、配列番号7、配列番号30、又は配列番号9のアミノ酸配列を有する、1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)を含む、ネトリン1結合性ポリペプチドにも関し、結合性ポリペプチドは、ネトリン1に結合し、UNC5又はDCC受容体を介して腫瘍細胞の細胞死又はアポトーシスを誘発する性質を有する。
【0016】
ポリペプチドは、抗体でも、又は抗体のエピトープ結合性フラグメントでもよい。
【0017】
IMGTの定義を用いて、本発明は、よって、配列番号7(CDR3-H)、配列番号9(CDR3-L)、好ましくは両方のアミノ酸配列を有する、1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)を含むネトリン1結合性ポリペプチドに関する。
【0018】
より具体的に、ポリペプチドは、CDR1、CDR2、又はCDR1及びCDR2のVH及び/又はVLの付加的な存在により更に規定され得る。したがって、ポリペプチドは、配列番号7及び配列番号5、配列番号7及び配列番号6、配列番号9及び配列YAS、並びに/又は配列番号9及び配列番号8のアミノ酸配列を有する1つ又は複数のCDRを含むことができる。
【0019】
本発明の目的は、配列番号5の配列のCDR1-H、配列番号6の配列のCDR2-H、配列番号7の配列のCDR3-Hを含むポリペプチドである。
【0020】
本発明の目的は、配列番号8の配列のCDR1-L、配列YASのCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含むポリペプチドである。
【0021】
本発明のポリペプチドが、配列番号5の配列のCDR1-H、配列番号6の配列のCDR2-H、配列番号7の配列のCDR3-H、配列番号8の配列のCDR1-L、配列YASのCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含むのが好ましい。
【0022】
Kabatの定義を用いて、本発明は、よって、配列番号30(CDR3-H)、配列番号9(CDR3-L)、好ましくは両方のアミノ酸配列を有する1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)を含む、ネトリン1結合性ポリペプチドに関する。
【0023】
より詳しくは、ポリペプチドは、CDR1、CDR2、又はCDR1及びCDR2のVH及び/又はVLの付加的な存在によって更に規定され得る。したがって、ポリペプチドは、配列番号30及び配列番号28、配列番号30及び配列番号29、配列番号9及び配列番号32、並びに/又は配列番号9及び配列番号31のアミノ酸配列を有する1つ又は複数のCDRを含むことができる。
【0024】
本発明の目的は、配列番号28の配列のCDR1-H、配列番号29の配列のCDR2-H、配列番号30の配列のCDR3-Hを含むポリペプチドである。
【0025】
本発明の目的は、配列番号31の配列のCDR1-L、配列番号32の配列のCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含むポリペプチドである。
【0026】
本発明のポリペプチドが、配列番号28の配列のCDR1-H、配列番号29の配列のCDR2-H、配列番号30の配列のCDR3-H、配列番号31の配列のCDR1-L、配列番号32の配列のCDR2-L、及び配列番号9の配列のCDR3-Lを含むのが好ましい。
【0027】
これらのポリペプチドはネトリン1結合性ポリペプチドであり、結合性ポリペプチドは、ネトリン1に結合する性質を有し、UNC5又はDCC受容体を介して腫瘍細胞の細胞死又はアポトーシスを誘発する。これらのポリペプチドが抗体、特にモノクローナル抗体であるのが好ましい。結合性ポリペプチド又は抗体の多様な形態(これらのフラグメント及び組合せを含む)を、本明細書において後に記載する。
【0028】
第1の一連の実施形態において、本発明のポリペプチド又は抗体は、配列番号10、11、12、又は13のアミノ酸配列を含む。配列番号10及び11の両方の配列、又は配列番号12及び13の両方の配列を含むのが典型的である。
【0029】
第2の一連の実施形態において、ポリペプチド又は抗体はヒト化されており、配列番号14から19の群、及び/又は配列番号20から27の群から選択されるアミノ酸配列を含む。ポリペプチド又は抗体が、ヒト化されており、配列番号14から19の群から選択されるアミノ酸配列、及び配列番号20から27の群から選択されるアミノ酸配列を含むのが典型的である。
【0030】
特定の実施形態は、以下のヒト化抗体である。この表において第一に列挙したものは、マウスCDRのヒトIgG1へのグラフティングに対応する。HUMと呼ばれる他者は、ヒト可変フレームワーク領域を有するモノクローナル抗体である。表はまた、ヒトIgG1のCH及びCLに対する参照も示す。他のアロタイプも用いることができる。
【0031】
【表1】
【0032】
本発明の別の目的は、本発明による少なくとも1つのネトリン1結合性ポリペプチド又は抗体、及び薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤を含む医薬組成物である。一実施形態において、ポリペプチド又は抗体はヒト化されている。
【0033】
本発明の更に別の目的はがんを処置する方法であり、この場合、本発明による少なくとも1つのネトリン1結合性ポリペプチド又は抗体、及び薬学的に許容されるビヒクル又は賦形剤を含む治療有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する。一実施形態において、ポリペプチド又は抗体はヒト化されている。
【0034】
よって、組成物及び方法は、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体に関して、開示する特徴の任意の1つ又は特徴の組合せを含むことができる。
【0035】
一特徴によると、がんは、腫瘍細胞が、ネトリン1受容体、特にUNC5クラス、とりわけUNC5B及び/又はUNC5A、及び/又はDCCを発現又は過剰発現するものである。ネトリン1の存在下で前記受容体、特にUNC5クラス、とりわけUNC5B及び/又はUNC5A、及び/又はDCCに対するネトリン1の結合のために、腫瘍細胞が、ネトリン1受容体関連のアポトーシスを回避するのが典型的である。一特徴によると、がんは、腫瘍細胞又は形質細胞がネトリン1を発現又は過剰発現するがんである。
【0036】
がんのいくつかの実施形態は、転移性乳がん、非小細胞肺がん、高悪性度の神経芽細胞腫、膵臓腺癌、原発性メラノーマ、メラノーマ転移、卵巣がん、神経膠芽腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、高悪性度B細胞リンパ腫、肉腫、腎腺癌、頭部及び頸部のがん、精巣がん(例えば、胚性癌、奇形腫、卵黄嚢腫瘍)、腎臓がん、胃がん、子宮がんを含む。
【0037】
所与の細胞が、ネトリン1依存性受容体DCC及び/若しくはUNC5を表面上に発現するか、又はネトリン1遺伝子発現の著しい上方制御を示すかを決定する方法は、当技術分野では周知であり、それだけには限定されないが、IHC(免疫組織化学)のFACS(蛍光標示式細胞分取器)、定量的PCR(例えば、6量体刺激性(hexamer primed)cDNAで)、又は代替的に色素産生性色素ベースのタンパク質検出技術(例えば、銀若しくはクーマシーブルー染色)と対にしたウエスタンブロット、又は溶液中及びゲル上のタンパク質に対する蛍光ベース及び発光ベースの検出方法、ブロット及びマイクロアレイ、例えば免疫染色、並びに免疫沈降、ELISA、マイクロアレイ、並びに質量分析法を含む。本発明の状況において、言及したあらゆるがんの難治性のバージョンを含めた、処置しようとするがんの例を本明細書に列挙する。ネトリン1の過剰発現は、よって、本明細書に開示し、提供するプライマーなどの適切なプライマーを用いて、正常組織、又はネトリン1を過剰発現しない同様のがんに関して、RT-PCRによって測定してもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、組成物及び方法は、ネトリン1を発現又は過剰発現するがんを処置するためであり、この発現又は過剰発現は、がんそのものに関連し、又は化学治療薬処置単独により誘発され、又は両方である。
【0039】
本発明の目的は、化学療法薬、及び本明細書に開示するポリペプチド又は抗体を、それを必要とする患者に投与することを含む、併用の抗がん処置の方法である。化学療法薬、及びポリペプチド又は抗体は有効量である。
【0040】
本発明の別の目的は、患者において、化学療法薬と併用して用いる抗がん薬物として用いるための、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体を含む組成物である。本発明は、化学療法薬で処置されている患者において抗がん薬物として用いるための、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体を含む組成物にも関する。
【0041】
本発明の別の目的は、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体と併用の、患者において用いる抗がん薬物として用いるための、化学療法薬を含む組成物である。本発明は、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体で処置されている患者において抗がん薬物として用いるための、化学療法薬を含む組成物にも関する。
【0042】
本発明の別の目的は、同時に、別々に、又は逐次的に患者に投与するための、化学療法薬、及び本明細書に開示するポリペプチド又は抗体を含む、組成物又はキットオブパーツである。
【0043】
本発明の別の目的は、抗がん薬物又は抗がん処置として用いるための、同時に、別々に、又は逐次的に患者に投与するための、化学療法薬、及び本明細書に開示するポリペプチド又は抗体を含む、組成物又はキットオブパーツである。
【0044】
本発明の別の目的は、薬学的に許容される担体又はビヒクル中の、化学療法薬、及び本明細書に開示するポリペプチド又は抗体を含む組成物である。
【0045】
本発明の別の目的は、抗がん薬物として用いるための、薬学的に許容される担体又はビヒクル中の、化学療法薬、及び本明細書に開示するポリペプチド又は抗体を含む組成物である。
【0046】
更に別の目的は、化学療法薬との患者の併用処置を意図する抗がん薬物を調製するための、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体の使用である。
【0047】
更に別の目的は、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体との患者の併用処置を意図する、抗がん薬物を調製するための、化学療法薬の使用である。
【0048】
更に別の目的は、併用の抗がん薬物を調製するための、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体、及び化学療法薬の使用である。
【0049】
更に別の目的は、同時に、別々に、又は逐次的に患者に投与するための、併用の抗がん薬物組成物、又はキットオブパーツを調製するための、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体、及び化学療法薬の使用である。
【0050】
本発明の特徴にしたがって、以下に更に説明する通り、化学療法薬は、がん細胞においてネトリン1の過剰発現を誘発する薬物であり、本明細書に開示するポリペプチド又は抗体は、この過剰発現に関わらず、ネトリン1受容体誘発性のアポトーシス又は細胞死を促進する。
【0051】
化学療法薬は、特に、がん細胞におけるネトリン1の過剰発現を誘発する薬物である。薬物がネトリン1の過剰発現を誘発することの決定は、生検からの細胞系統又は細胞等、あらゆるがん細胞上で容易に行うことができる。一実施形態において、アッセイは、生検等からの、処置しようとするがんからの細胞上で行われる。別の一実施形態において、アッセイは、処置しようとするがんに代表的である、細胞系統等の細胞上で行われる。別の一実施形態において、アッセイは、A549又はH460細胞系統に対してなされる。アッセイは、化学療法薬で処置した細胞と、処置しなかった細胞との間のネトリン1遺伝子の発現を比較することを含み得る。発現は、その内容全体が参照により援用され、又は当業者であれば参照することができるPCT/EP2013/068937に記載される通り、PCR、特に定量的RT-PCRにより、例えば、本明細書に開示し、提供するプライマー(配列番号33及び34)を用いて、測定してもよい。この過剰発現を誘発するこれらのファミリーにおける薬物の分類は、PCT/EP2013/068937に記載される通り、以下の材料及び方法に記載する方法にしたがって、A549又はH460細胞系統に対して簡単に行うことができる。
【0052】
化学療法薬は、特に細胞毒性薬である。いくつかの好ましい実施形態において、薬物は、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル(5FU)、パクリタキセル(例えば、Taxol)、又はシスプラチンである。
【0053】
一実施形態において、薬物は、細胞毒性抗生物質である。細胞毒性抗生物質は、アクチノマイシン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、プリカマイシン、又はマイトマイシンであってよい。アントラサイクリンは、ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン(idarubicine)、又はエピルビシン(epirubicine)であってよい。
【0054】
一実施形態において、薬物はアルキル化剤である。アルキル化剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン等の白金誘導体、又はシクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、チオテパ等の他のアルキル化剤であってよい。他のクラスは、エピポドフィロトキシン(epipodophylotoxine)、例えば、エトポシド、トポイソメラーゼインヒビター(カンプトテシン)、例えば、イリノテカン、トポテカン、DNAの副溝のアルキル化剤、例えば、Trabectedine (YONDELIS)、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセドを含む。
【0055】
一実施形態において、薬物はタキサン又は他のチューブリン標的化剤である。タキサンは、パクリタキセル若しくはドセタキセルでも、又はエリブリン(乳がん用に最近認可された)でもよい。
【0056】
一実施形態において、薬物は、以下等の高悪性腫瘍薬である:
- 乳房ホルモン療法剤:例えば、タモキシフェン、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、フェソロデックス(faslodex)、
- 前立腺ホルモン療法剤:例えば、LHRHアゴニスト、ビカルタミド、アビラテロン、
- モノクローナル抗体:例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブ、
- キナーゼインヒビター:例えば、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、クリゾチニブ、アキシチニブ。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の定義、及びさらなる実施形態、変形、及び代替:
本明細書で用いる、「参照配列に対して少なくとも85%同一の」配列は、その全長に対して、参照配列の全体の長さと85%又はそれを超える、特に90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、又は100%の配列同一性を有する配列である。
【0058】
「配列同一性」のパーセント値は、比較ウインドウにわたって最適にアラインされた2つの配列を比べることにより決定することができ、比較ウインドウにおけるポリペプチド配列の部分は、2配列の最適なアラインメントに対して、参照配列(付加又は欠失を含まない)に比べて付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセント値は、両方の配列において同一のアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して、マッチする位置の数を得、マッチした位置の数を、比較のウインドウにおける位置の合計数によって除し、結果に100を乗じて配列同一性のパーセント値を得ることにより算出される。比較に最適な配列のアラインメントは、包括的なペアワイズのアラインメントにより、例えば、Needleman及びWunsch(1970年)J. Mol. Biol.、48:443頁のアルゴリズムを用いて行われる。配列同一性のパーセント値は、BLOSUM62マトリクスとともにNeedleプログラム、及び以下のパラメータgap-open=10、gap-extend=0.5等を用いて容易に決定することができる。
【0059】
本発明の状況において、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、化学的性質(例えば、荷電又は疎水性)が同様の側鎖基を有する別のアミノ酸残基により置換されるものである。全般的に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能上の性質を実質的に変更しない。化学的性質が同様の側鎖を有するアミノ酸のグループの例には、1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン、3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン、4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン、6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、並びに7)イオウ含有側鎖:システイン及びメチオニンが含まれる。保存的なアミノ酸置換のグループは:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン-トリプトファン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0060】
本出願を通して、「含む(comprising)」の語は、特に言及する全ての特徴、及び任意の、付加的な、不特定の特徴を包含するものと解釈されたい。本明細書で用いる「含む」の語の使用は、特に言及する特徴以外の特徴が存在しない実施形態も開示する(すなわち、「からなる」)。
【0061】
「抗体」は、2本の重鎖がジスルフィド結合によって相互に連結され、各重鎖がジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている、天然の、又は慣例的な抗体であってよい。軽鎖は、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)の2タイプが存在する。抗体分子の機能上の活性を決定する、主な重鎖のクラス(又はアイソタイプ)は5つ存在し、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEである。各鎖は、別個の配列ドメインを含む。軽鎖は、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)の2つのドメイン又は領域を含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)、並びに3つの定常ドメイン(集合的にCHと呼ぶ、CH1、CH2、及びCH3)の4つのドメインを含む。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)両方の可変領域が、抗原に対する結合の認識及び特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移動、補体結合、及びFc受容体(FcR)に対する結合等、重要な生物学的性質を授ける。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1本の軽鎖及び1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体接続性部位と抗原決定基との間の構造上の相補性にある。抗体接続性部位は、主に、高頻度可変性の、又は相補性決定領域(CDR)由来である残基から作成される。ときに、非高頻度可変性の(nonhypervariable)、又はフレームワーク領域(FR)由来の残基が全体のドメイン構造に、ゆえに接続性部位に影響を及ぼす。
【0062】
「相補性決定領域」又は「CDR」は、天然の免疫グロブリン結合性部位の天然のFv領域の結合親和性及び特異性を一緒に規定するアミノ酸配列を意味する。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々それぞれ、CDR1-L、CDR2-L、CDR3-L、及びCDR1-H、CDR2-H、CDR3-Hと呼ばれる3つのCDRを有する。慣例的な抗体の抗原結合性部位は、それゆえ、重鎖及び軽鎖各々のV領域からのCDRセットを含む6つのCDRを含む。
【0063】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR間に挿入されたアミノ酸配列を意味し、すなわち、単一の種における異なる免疫グロブリン間で比較的保存されている、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖の可変領域のこれらの部分を意味する。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々、それぞれFR1-L、FR2-L、FR3-L、FR4-L、及びFR1-H、FR2-H、FR3-H、FR4-Hと呼ばれる4つのFRを有する。
【0064】
本明細書で用いる「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト抗体のフレームワーク領域に実質的に同一(約85%、又はそれを超える、特に90%、95%、97%、99%、又は100%)であるフレームワーク領域である。
【0065】
本発明の状況において、免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖におけるCDR/FRの定義は、IMGT定義に基づいて決定しなければならない(Lefrancら、(2003年) Dev Comp Immunol.、27(1):55〜77頁; www.imgt.org)。
【0066】
本明細書で用いる「抗体」の語は、慣例的な抗体及びそのフラグメント、並びに単一ドメイン抗体及びそのフラグメント、特に単一ドメイン抗体の可変重鎖、及びキメラの、ヒト化、二重特異的、又は多重特異的抗体を意味する。
【0067】
本明細書で用いる、抗体又は免疫グロブリンは、より最近記載され、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である、「単一ドメイン抗体」も含む。単一ドメイン抗体の例には、重鎖抗体、軽鎖を天然に欠く抗体、慣例的な4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された単一ドメイン抗体が含まれる。単一ドメイン抗体は、それだけには限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、及びウシを含めたあらゆる種に由来することができる。単一ドメイン抗体は、軽鎖を欠く重鎖抗体として公知の、天然に存在する単一ドメイン抗体であってよい。特に、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、及びグアナコ等のラクダ科種は、軽鎖を天然に欠く重鎖抗体を生成する。ラクダの重鎖抗体もCH1ドメインを欠く。
【0068】
軽鎖を欠くこれらの単一ドメイン抗体の可変重鎖は、当技術分野において「VHH」又は「ナノボディ」として公知である。慣例的なVHドメイン同様、VHHは4つのFR及び3つのCDRを含む。ナノボディは、慣例的な抗体を凌ぐ利点を有し、すなわち、ナノボディはIgG分子より約10倍小型であり、その結果、適切にフォールディングされた機能上のナノボディはin vitro発現によって生成することができ、高収率を実現する。更に、ナノボディは非常に安定であり、プロテアーゼの作用に対して抵抗性である。ナノボディの性質及び生成は、Harmsen及びDe Haard(Harmsen及びDe Haard(2007年)Appl. Microbiol. Biotechnol.、77:13〜22頁)に概説されている。
【0069】
本明細書で用いる「モノクローナル抗体」又は「mAb」の語は、特定の抗原に対する、単一のアミノ酸組成の抗体分子を意味し、いかなる特定な方法による抗体の生成を必要としないと解釈されたい。モノクローナル抗体は、単一クローンのB細胞又はハイブリドーマによって生成してもよいが、組換え、すなわちタンパク質工学により生成してもよい。
【0070】
(慣例的な)抗体の「フラグメント」は、インタクトな抗体の部分、特に、インタクトな抗体の抗原結合性領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、抗体フラグメントから形成される、Fv、Fab、F(ab')
2、Fab'、dsFv、(dsFv)
2、scFv、sc(Fv)
2、ダイアボディ、二重特異的及び多重特異的抗体が含まれる。慣例的な抗体のフラグメントは、重鎖抗体又はVHH等の単一ドメイン抗体であってもよい。
【0071】
「Fab」の語は、分子量約50000Da及び抗原結合性活性を有する抗体フラグメントを意味し、Fabでは、プロテアーゼであるパパインでIgGを処置することによって得られたフラグメントの中で、H鎖のN末端側のおよそ半分及びL鎖全体が、ジスルフィド結合によって一緒に結合されている。
【0072】
「F(ab')
2」の語は、分子量約100000Da及び抗原結合性活性を有する抗体フラグメントを意味し、F(ab')
2は、プロテアーゼであるペプシンでIgGを処置することによって得られたフラグメントの中で、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合しているFabよりわずかに大きい。
【0073】
単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、共有結合性に連結されているVH::VLヘテロ二量体であり、ペプチドをコードするリンカーによって連結される、VH及びVLをコードする遺伝子を含む遺伝子融合から、通常発現される。本発明のヒトscFvフラグメントは、特に遺伝子組換え技術を用いることにより好適な立体配置に保持されるCDRを含む。二価及び多価の抗体フラグメントは、一価のscFvの会合によって自発的に形成してもよく、又は二価のsc(Fv)
2等、ペプチドリンカーによって一価のscFvをカップリングすることにより産生してもよい。
【0074】
「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH::VLヘテロ二量体である。
【0075】
「(dsFv)
2」は、ペプチドリンカーによってカップリングされた2つのdsFvを意味する。
【0076】
「二重特異的抗体」又は「BsAb」の語は、単一の分子内で2つの抗体の抗原結合性部位を組み合わせる抗体を意味する。よって、BsAbは、2つの異なる抗原を同時に結合することができる。EP 2 050 764 A1等に記載されている通り、遺伝子工学を増大性の頻度で用いて、所望のセットの結合性の性質及びエフェクター機能を有する抗体又は抗体誘導体がデザインされ、改変され、生成されている。
【0077】
「多重特異的抗体」の語は、単一の分子内で2つ以上の抗体の抗原結合性部位を組み合わせる抗体を意味する。
【0078】
「ダイアボディ」の語は、2つの抗原結合性部位を有する小型の抗体フラグメントを意味し、これらのフラグメントは、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続されている重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH-VL)。非常に短いため同じ鎖上の2つのドメイン間に対形成させることができないリンカーを用いることにより、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインとの対形成を強いられ、2つの抗原結合性部位を作り出す。
【0079】
特定の一実施形態において、エピトープ結合性フラグメントは、Fv、Fab、F(ab')
2、Fab'、dsFv、(dsFv)
2、scFv、sc(Fv)
2、ダイアボディ、及びVHHからなる群から選択される。
【0080】
本明細書で用いる「キメラ抗体」は、定常領域又はその部分が、改変され、置き換えられ、又は交換され、その結果可変領域が異なる種の定常領域に連結され、又は別の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体である。「キメラ抗体」は、可変領域、又はその部分が、改変され、置き換えられ、又は交換され、その結果定常領域が異なる種の可変領域に連結され、又は別の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体も意味する。
【0081】
「ヒト化抗体」の語は、最初は全面的に、又は部分的に非ヒト起源であり、ヒトにおける免疫応答を避けるため、又は最小にするために、特に重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域における、ある種のアミノ酸を置き換えるように改変されている抗体を意味する。ヒト化抗体の定常ドメインは、殆どの場合、ヒトCH及びCLドメインである。一実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト起源の定常ドメインを有する。本明細書で用いる「ヒト化抗体」の語は、CDR等、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体を意味する。
【0082】
「ポリペプチド」又は「ネトリン1結合性ポリペプチド」の語は、これらの全ての種類の抗体、これらのフラグメント、又は組合せを包含するために用いられる。
【0083】
ヒト化の目標は、ヒトに導入するために、マウス抗体等の異種抗体の免疫原性を低減する一方で、抗体の完全な抗原結合親和性及び特異性を維持することである。ヒト化抗体、又は他の哺乳動物による拒絶反応なし(non-rejection)に適応された抗体を、リサーフェシング(resurfacing)及びCDRグラフティング等のいくつかの技術を用いて生成してもよい。本明細書における、リサーフェシング技術は、分子モデリング、統計学的分析、及び突然変異誘発の組合せを用いて、抗体可変領域の非CDR表面を、標的の宿主の公知の抗体の表面に似せるように改変するものである。
【0084】
抗体は、CDRグラフティング(EP0239400; WO91/09967;米国特許第5,530,101号及び第5,585,089号)、べニアリング又はリサーフェシング(EP0592106; EP0519596; Padlan(1991年)Molecular Immunology、28(4/5):489〜498頁; Studnickaら、(1994年)Protein Engineering、7(6):805〜814頁; Roguskaら、(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A.、91:969〜973頁)、及びチェインシャフリング(米国特許第5,565,332号)を含めた多様な他の技術を用いてヒト化することができる。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法を含めた、当技術分野で公知の多様な方法によって作成することができる。米国特許第4,444,887号、第4,716,111号、第5,545,806号、及び第5,814,318号;並びに国際特許出願WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735、及びWO91/10741も参照されたい。
【0085】
本発明の状況において、本明細書で用いる「処置する」又は「処置」の語は、このような語が適用される障害若しくは状態を、又はこのような障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状を、逆転し、緩和し、進行を阻害し、又は防止することを意味する。
【0086】
本明細書で用いる「がんを処置する」の語は、腫瘍の悪性細胞の増殖、及び/又は前記腫瘍からの転移の進行の阻害を意味する。このような処置により、腫瘍の増殖の退行、すなわち、測定可能な腫瘍のサイズの減少もまねくことができる。特定の一実施形態において、このような処置は、腫瘍又は転移の部分的な退行をまねく。別の特定の一実施形態において、このような処置は、腫瘍又は転移の完全な退行をまねく。
【0087】
本発明にしたがって、「患者」又は「それを必要とする患者」の語は、悪性腫瘍に罹患している、又は罹患する可能性が高い、ヒト又は非ヒトの哺乳動物を意図する。
【0088】
特定の一実施形態において、処置しようとする患者は、他の抗がん処置で以前に処置されていてもよい。特に、処置しようとする患者は、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、及び/又はパクリタキセル、ドセタキセルベースのレジメンで以前に処置されていてもよい。
【0089】
本発明のポリペプチド又は抗体の「治療有効量」は、あらゆる医学的処置に適用できる理にかなった損益比で、前記がん疾患を処置するのに十分な量を意味する。しかし、本発明のポリペプチド又は抗体の合計1日使用量(total daily usage)は、担当の医師により、健全な医学的判断の範囲内で決定される。あらゆる特定の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、処置される障害及び障害の重症度;使用する特定のポリペプチド又は抗体の活性;使用する特定の組成物、患者の体重、全体的な健康状態、性別、及び食事;使用する特定のポリペプチド又は抗体の、投与時間、投与経路、及び排泄速度;処置の期間;使用する特定のポリペプチド又は抗体と併用して又は同時に用いる薬物;並びに医学の技術分野において周知の同様の因子を含めた様々な因子に依存する。特定の一実施形態において、患者に投与するポリペプチド又は抗体の前記治療有効量は、体表面積あたり5mg/m
2から500mg/m
2の範囲、より詳しくは150mg/m
2から450mg/m
2の範囲の用量である。
【0090】
さらなる一実施形態において、本発明のポリペプチド又は抗体は、処置しようとする患者に応じたプロトコール(年齢、体重、処置歴等)にしたがって繰り返し投与され、これらは、熟練の医師が決定することができる。
【0091】
「薬学的に」又は「薬学的に許容される」は、適宜、哺乳動物、特にヒトに投与した場合、有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応を生成しない分子実体及び組成物を意味する。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、非毒性の固体、半流動、又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、又はあらゆるタイプの製剤補助剤を意味する。
【0092】
本発明のポリペプチド又は抗体を含む医薬組成物の形態、及び投与経路は、処置しようとする状態、疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び性別等に当然依存する。
【0093】
本発明のポリペプチド又は抗体は、局所的な、経口の、非経口の、鼻腔内の、静脈内の、筋肉内の、皮下の、又は眼内の投与等のために調合することができる。特定の一実施形態において、本発明のポリペプチド又は抗体は静脈内投与される。
【0094】
特に、本発明のポリペプチド又は抗体を含む医薬組成物は、注射することが可能な製剤に対して薬学的に許容されるビヒクルを含むことができる。これらは特に、等張の、滅菌の、食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、若しくは塩化マグネシウム等、又はこのような塩の混合物)であってよく、或いは、乾燥した、特に、場合によって滅菌水又は生理学的食塩水を加えると注射用液剤を構成できる凍結乾燥組成物であってよい。
【0095】
医薬組成物を調製するために、有効量の本発明のポリペプチド又は抗体を、薬学的に許容される担体又は水性媒体中に溶解又は分散してもよい。
【0096】
注射使用に適する薬剤形態(pharmaceutical form)には、滅菌水溶液剤又は分散剤、及び滅菌注射用液剤又は分散剤を即時調製するための滅菌粉末剤が含まれる。いずれの場合も、形態は滅菌でなければならず、容易な注射可能性(syringability)が存在する程度に液体でなければならない。これは製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対抗して保存しなければならない。
【0097】
担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、並びにこれらの適切な混合物を含む、溶媒又は分散媒体であってよい。例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散剤の場合は必要とされる粒子径の維持により、及び界面活性剤、安定化剤、凍結保護物質、又は抗酸化剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、抗菌剤及び抗真菌剤によってもたらすことができる。多くの場合、糖類又は塩化ナトリウム等の等張剤を含むのが好ましい。
【0098】
滅菌の注射用液剤は、必要量の有効化合物を、適宜、上記に列挙した他のいくつかの成分と一緒に好適な溶媒中に組み入れた後、ろ過滅菌することにより調製される。一般的に、分散剤は、滅菌の多様な有効成分を、ベースとなる分散媒体、及び上記に列挙したものから必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクル中に組み入れることにより調製される。滅菌の注射用液剤を調製するための滅菌粉末剤の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥法及び凍結乾燥法であり、これらの方法により先に滅菌ろ過した溶液から、有効成分プラスあらゆる付加的な所望の成分の粉末が生じる。
【0099】
調合時、溶液を、剤形(dosage formulation)と適合する様式で、治療上有効であるような量において投与する。製剤は、上記に記載した注射用液剤のタイプ等、多様な剤形において容易に投与されるが、薬物放出カプセル剤等も用いることができる。
【0100】
水溶液における非経口投与には、液剤を、例えば、必要であれば適切に緩衝化しなければならず、液体の希釈剤を最初に、十分な食塩水又はグルコースで等張にしなければならない。これらの特定の水溶液剤は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の投与に特に適する。この関連で、用いることができる滅菌の水性媒体は、本開示に鑑みて当業者には公知である。例えば、1用量を等張NaCl溶液1mL中に溶解し、皮下注入用液体1000mLに加え、又は提唱される注入部位に注射することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、1035〜1038頁及び1570〜1580頁を参照されたい)。用量におけるいくつかの変形が、処置する対象の状態に応じて必ず生じる。投与を担う者は、ともかく、個々の対象に好適な用量を決定する。
【0107】
本発明を、これから、非限定的な実施形態と考えられる実施例を用いて更に詳しく記載する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】ヒトネトリン1に対するマウス4C11のELISA結合アッセイを示す図である。多様な濃度の4C11を、FLAGでタグ付けしたネトリン1(APOTECH社)でコーティングした96ウエルマイクロタイタープレート上でインキュベートした。結合した4C11を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(Jackson Immunoresearch社)とコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG、及び化学発光基質(PIERCE ECL社ウエスタンブロッティング基質)を用いて検出した。発光を、Tecan社Infinite F-500ルミノメータ上で読み取った。
【
図2】UNC5B-Fc上へのネトリン1の結合の、4C11による阻害を示す図である。多様な濃度の4C11の存在下、FLAGでタグ付けしたネトリン1(APOTECH社)を、UNC5B-Fc(Netris社)でコーティングした96ウエルマイクロタイタープレート上でインキュベートした。結合したネトリン1を、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(Sigma社)とコンジュゲートした抗FLAG抗体、及び化学発光基質 (PIERCE ECL社ウエスタンブロッティング基質)を用いて検出した。発光を、Tecan社Infinite F-500ルミノメータ上で読み取った。
【
図3】アミノ酸14個のペプチド-ペプチドオーバーラップを有するヒトネトリン1の配列全体を網羅する、アミノ酸15個の直鎖状ペプチド590個のアレイを用いて、4C11の直鎖状のエピトープのマッピングを行ったことを示す図である。ペプチド上の4C11の結合を、ペルオキシダーゼ(POD)で標識した抗マウスIgG及び化学発光基質を用いて明らかにした。
【
図4】マウス4C11抗体によって認識された、ネトリン1エピトープ(第2のEGF様ラミニンドメインに位置する)のアミノ酸配列を示す図である。
【
図5】マウス4C11抗体の存在下、A549腺癌性ヒト肺胞基底上皮細胞におけるカスパーゼ3の誘導を示す図である。
【
図6】マウス4C11抗体で処置したヌードマウスにおけるヒト異種移植の増殖阻害を示す図である。A549ヒト肺腺癌上皮細胞を、胸腺欠損(すなわち免疫不全)ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍がおよそ100mm
3に到達した後、マウス(1群あたりn=10)を、週1回、4C11 5mg/kg又はアイソタイプ対照(MOPC21)で腹腔内処置した。
【
図7】マウス4C11抗体で処置したヌードマウスにおけるヒト異種移植の増殖阻害を示す図である。GRANTA-519ヒトマントル細胞リンパ腫細胞を、胸腺欠損(すなわち免疫不全)ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍がおよそ100mm
3に到達した後、マウス(1群あたりn=10)を、週1回又は週2回、4C11で、又はビヒクル(PBS)で腹腔内処置した。
【
図8】ラットの移植可能な骨肉腫の増殖における、ヒト化4C11抗体(hum03)のin vivo効果を示す図である。ラット骨肉腫腫瘍を、前脛骨の(paratibial)位置に、骨膜裸出後、移植した(n=7)。ラットを週2回、ヒト化4C11 hum03 4.4mg/kg、又はドキソルビシン(2mg/kg)あり若しくはなしのアイソタイプ対照、又はPBSを腹腔内注射することにより処置した。図は、17日目の腫瘍増大倍数を示す。
【
図9】抗ネトリン1ヒト化4C11モノクローナル抗体(NET1-H-mAb)HUM03のNET1結合性ドメインのPepscan分析を示す図である。Pepscanの生データは、590個の直鎖状ペプチドの重複性ペプチドライブラリーに対してヒト化4C11mAbをスクリーニングすることにより得た(x軸)。相互作用のシグナル強度を、y軸上に可視化する。ピークは、以下のアミノ酸配列に対応する: ARRCRFNMELYKLSGRKSGGVC(配列番号35)。
【実施例1】
【0109】
抗体の産生、スクリーニング、及びヒト化
HTP(商標)マウスに、ネトリン1-Fc(Adipogen社)100μgを8回注射した(2日毎;完全フロイントアジュバント存在下で1回目の注射、その他は不完全アジュバントとともに)。ハイブリドーマ融合を、1回目の免疫化の2週間後に行った(Abpro社、Lexington、MA)。ハイブリドーマ上清を、特異的なモノクローナル抗ネトリン1抗体に対して、二重抗原(dual-antigen)ELISAアッセイ(ネトリン1-Fc及び無関係のFcキメラタンパク質)を用いてスクリーニングした。第2のELISA型のアッセイを用いて、ネトリン1のDCC又はUNC5h2との相互作用をブロックすることができるモノクローナル抗体を選択した。次いで、マウスモノクローナル抗体(マウス4C11又はNET1-M-mAb)を選択した。この抗体は配列番号12及び13からなる。
【0110】
ヒト化を以下の通り行った:マウス4C11の軽鎖及び重鎖のCDR配列をコードする二本鎖DNAフラグメントを、ヒトフレームワークのプールと合わせた。次いで、全長の可変ドメインを、哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。軽鎖可変ドメインを、分泌シグナル及びヒトカッパ定常ドメインとインフレームでクローニングした。重鎖可変ドメインを、リーダー配列及びヒトIgG1定常ドメインとインフレームでクローニングした。ライブラリーの多様性、並びにLC及びHCリーディングフレームの完全性を、配列決定により点検した。単一のクローンを、96ウエルのフォーマットにおいて整列させ、プラスミドDNAを、CHO細胞中へのトランスフェクション用に調製した。ヒト化ライブラリーを、96ウエルのフォーマットにおいて、CHO細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクトしたCHO細胞からの上清を、次いで、トランスフェクション48時間後に収集し、ネトリン1結合及び競合ELISAアッセイによってスクリーニングした。上位10ヒットの軽鎖及び重鎖の可変ドメインを配列決定し、アラインし、分析した。上記に記載したヒト化抗体HUM01-10を産生した。
【実施例2】
【0111】
Mabの生成及びプロテインAの精製
重鎖及び軽鎖をコードする核酸配列に基づいてモノクローナル抗体を生成するための方法は、当業者に公知である。本明細書に開示する配列に基づいて、当業者であれば、配列番号3若しくは35の直鎖状のエピトープ又はこれらのあらゆるバリアントに対する多様なマウス、ヒト化、及び完全ヒト化抗体、例えば、マウス4C11、並びにヒト化HUM1-10及びHUM1'-10'抗体を生成することができる。
【0112】
哺乳動物細胞は、ヒトに適用するのに最も適合する形態のタンパク質をグリコシル化する能力があるため、治療用糖タンパク質を生成するための宿主として好ましい(Jenkinsら、Nat Biotech.、1996年、14:975〜81頁)。用いることができる哺乳動物の宿主細胞には、ヒトHela、283、H9及びJurkat細胞、マウスNIH3T3及びC127細胞、Cos1、Cos7及びCV1アフリカミドリザル細胞、ウズラQC1-3細胞、マウスL細胞、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞が含まれる。細菌は滅多にタンパク質をグリコシル化せず、酵母菌、糸状菌、昆虫及び植物細胞等の他のタイプの共通の宿主同様、血流からの速やかなクリアランスに関連するグリコシル化パターンを生じる。
【0113】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞により、遺伝的に安定な、高度に増殖性のクローン細胞系統を一貫して産生できる。CHO細胞は、単純なバイオリアクター中で無血清培地を用いて高密度に培養することができ、安全で再現性のあるバイオプロセスの開発が可能になる。他の、通常用いられる動物細胞には、仔ハムスター腎(BHK)細胞、NSO-及びSP2/0-マウスミエローマ細胞が含まれる。トランスジェニック動物からの生成も試験されている(Jenkinsら、Nat Biotech.、1996年、14:975〜81頁)。
【0114】
典型的な哺乳動物発現ベクターは、mRNAの転写開始を媒介するプロモーターエレメント[SV40からの初期及び後期プロモーター、レトロウイルス、例えばRSV、HTLV1、HIV1からの末端反復配列(LTR)、及びサイトメガロウイルス(mCMV、hCMV)の初期プロモーター]、タンパク質コード配列、並びに転写物の転写及びポリアデニル化の終結に必要とされるシグナル[BGH polyA、単純ヘルペスウイルスpolyAのヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子(TKpa)、Late SV40 polyA、及び3’ UTR_Beta_Globin_polyA]を含む。付加的なエレメントには、エンハンサー(Eμ、hIE1)、Kozak配列、シグナルペプチド、並びにRNAスプライシングのためのドナー及びアクセプタ部位が隣接する介在配列が含まれる。本発明を実践する上で用いるのに適する発現ベクターには、例えば、pcDNA3.1、pcDNA3.3、pOptiVEC、pRSV、pEμMCMV、pMCMVHE-UTR-BG、pHCMVHE-UTR-BG、pMCMV-UTR-BG、pHCMV-UTR-BG、pMCMVHE-SV40、pHCMVHE-SV40、pMCMV-SV40、pHCMV-SV40、pMCMVHE-TK、pHCMVHE-TK、pMCMV-TK、pHCMV-TK、pMCMVHE-BGH、pHCMVHE-BGH、pMCMV-BGH、pHCMV-UTR-BGH)等のベクターが含まれる。
【0115】
空のCHO Easy C細胞に、通常の一過性又は安定なトランスフェクション手順にしたがって、軽鎖及び重鎖に対するMAb発現ベクターを同時トランスフェクトする。H鎖及びL鎖の分泌は、それぞれのヒトIgHリーダー配列により可能になる。軽鎖及び重鎖に対するコード領域を、多重のクローニング部位においてMAb発現ベクター中に導入する。形質転換体を、正しい配向及びリーディングフレームに対して分析し、発現ベクターをCHO細胞系統にトランスフェクトしてもよい。
【0116】
CHO細胞から生成された細胞培養液を回収し、リン酸緩衝食塩水、pH7.2で平衡化したHi Trap rプロテインAカラム(GE Healthcare社、Saint Cyr au Mont d’Or、France)上にローディングする。非結合性タンパク質を流し、引き続きPBSバッファーで数回洗浄することにより除去する。pH3.0の0.1Mクエン酸の溶出ステップを用いて、MAbをプロテインAカラムから溶出する。カラム溶離液をA280によってモニタリングする。MAbのピークをプールする。
【実施例3】
【0117】
ネトリン1に対する4C11抗体のELISA型の結合アッセイ(
図1)
96ウエル白色マイクロタイタープレート(Costar 3912 Corning社)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)100μL中、His-タグ付けしたネトリン1(R&D社 6419-N1)100ngと、4℃で一夜インキュベートした。PBS-0.05% Tween-20 (PBS-T)300μLで3回洗浄した後、PBS-3% BSA100μLを加えることによってプレートをブロックし、室温で1時間インキュベートした。PBS-T 300μLで3回洗浄した後、プレートを、多様な量(10ngから1200ng)の抗ネトリン1抗体とインキュベートした。PBS-T 300μLで3回洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした関連の2次抗体100μL(例えば、ヤギ抗ヒトIgG(Fc) Sigma社 A0170、又はヤギ抗マウスIgG軽鎖特異的(カッパ)Jackson Immunoresearch社 115-035-174)をPBST-3% BSA中1/10000希釈したものを加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。PBS-T300μLで3回洗浄した後、HRPの発光基質100μL(ECLウエスタンブロッティング基質、PIERCE社)を加えた。5分から10分後、発光をTecan社Infinite F-500ルミノメータ上で読み取った。
【0118】
図1は、ELISA型のアッセイにおける、4C11マウス抗体の、吸着されたネトリン1に対する典型的な用量依存性の相互作用を示す。
【0119】
50%の結合を可能にする抗体の濃度(EC
50)を、
図1に示すS字形の結合曲線から算出する。Table 1(表3)は、様々なマウス抗体(4C11抗体全体、並びにFab及びFab'2フラグメント)、並びにヒト化4C11抗体のEC
50値(μg/mL及びnMにおける)を表す。
【0120】
【表3】
【0121】
HUM03をさらなる実験に選択した。HUM03を、本明細書以降ヒト化4C11と、時に呼び得る。
【実施例4】
【0122】
表面プラズモン共鳴法による抗体結合アッセイ
抗体の結合性質を、関連するソフトウエアBiacore T100 Control Biacore TI 00 Evaluationを備えたBiacore T l 00 (GE Healthcare社)、及びアッセイフォーマットとしてChip:CM5-Chipを用いて分析した。
【0123】
マウス4C11(IgG1)抗体(配列番号12及び13)を、アミンカップリングした捕捉分子を介して捕捉した。増大性の濃度の一連のネトリン1を注射した。アミンカップリングした捕捉分子単独を有するチップ表面を、可能なバッファー効果又はネトリン1の非特異的結合を修正するための、参照の対照表面として用いた。
【0124】
捕捉分子:抗マウスIgG抗体(ヤギ由来、Jackson Immuno Research社)。
【0125】
捕捉分子のアミンカップリング。製造元の指示による標準のアミンカップリング:ランニングバッファー:HBS-Nバッファー、EDC/NHSの混合物による活性化、リガンド密度の目標10000RU;捕捉-抗体をカップリングバッファー10mM NaAc、pH4.5中で希釈、c=30μg/mL;最終的に残存する活性化されたカルボキシル基を、1Mエタノールアミンを注入することによりブロックした。
【0126】
4C11抗体捕捉:フローセル2から4上で4C11抗体を捕捉:流速5μL/分、接触時間72秒、c(抗マウスIgG抗体)=5nM。捕捉バッファー:PBS(pH7.4)、0.005% Tween20。
【0127】
分析物試料:古典的な濃度段階を、流速50μL/分で、5又は6個の増大濃度の分析物を連続的に注入することにより測定した(c=2〜164nM)。ランニングバッファー:20mM Hepes pH7.4、600mM NaCl、0.005% Tween 20。分析物を3分間注入し、90秒の解離段階が続いた。
【0128】
捕捉した4C11に対するネトリン1の結合動態の表面プラズモン共鳴法(SPR)半定量分析を、本発明においてヒトネトリン1に対して提供し、記載する、4C11マウス抗体の結合のBIAcore分析を用いて行った。4C11抗体を、チップ表面上、アミンカップリングした抗ヒトIgG(Fc)分子を介して捕捉した。一連の増大濃度のヒトネトリン1を注入し、動態結合挙動をSPR変化によってモニタリングした。相対的単位(RU)対対照のチップとしての変化をy軸上に、経時的に(x軸)記録した。注入された様々な濃度のヒトネトリン1の、捕捉された分析物4C11の代表的な会合及び解離曲線が観察された。
【0129】
次いで、動態パラメータを、通常の二重参照(double referencing)(対照参照:捕捉分子に対する分析物の結合;フローセル:ブランクとしてネトリン1の濃度「0」)、及びモデルの滴定動態1:1結合と計算を用いることにより算出した。
【0130】
Table 2(表4)は、PBS中25℃でSPR(BIACORE(登録商標)T100)によって測定した親和性データを示す。
【0131】
【表4】
【実施例5】
【0132】
4C11はUNC5Bに対するネトリン1の結合を阻害する(
図2)
96ウエル白色マイクロタイタープレート(Costar 3912 Corning社)を、リン酸緩衝食塩水(PBS)100μL中、UNC5B-Fc (R&D社1006-UN-050)又はDCC-Fc (R&D社844-DC-050)のいずれか100ngと、4℃で一夜インキュベートした。PBS-0.05% Tween-20 (PBS-T) 300μLで3回洗浄した後、PBS-2% BSA100μLを加えることによりプレートをブロックし、室温で1時間インキュベートした。PBS-T 300μLで3回洗浄した後、プレートを、50ng/mL FLAG-タグ付けしたネトリン1(Adipogen社)及び多様な量(0,2ngから3000ng)の4C11抗体を含むPBS-1% BSA 100μLと、室温で1時間インキュベートした。PBS-T300μLで3回洗浄した後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP) (Sigma社A8592)にコンジュゲートした抗FLAG M2モノクローナル抗体100μLをPBST-1%BSA中1/5000希釈したものを加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。PBS-T300μLで3回洗浄した後、HRPの発光基質100μL(ECLウエスタンブロッティング基質、PIERCE社)を加えた。5分から10分後、発光をTecan Infinite F-500ルミノメータ上で読み取った。
【0133】
図2は、ELISA型のアッセイにおける、UNC5Bに対するネトリン1の結合の、増大量のマウス4C11マウス抗体による典型的な用量依存性の阻害を示す。
【0134】
50%の阻害を可能にする抗体の濃度(IC
50)を、
図2に示すS字形の結合曲線から算出する。Table 1(表3)は、様々なマウス抗体(4C11抗体全体、並びにFab及びFab'2フラグメント)、並びにヒト化4C11抗体のIC
50値(μg/mL及びnMにおける)を示す。
【実施例6】
【0135】
マウス4C11のネトリン1エピトープマッピング(
図3及び
図4)
アミノ酸14個のペプチド-ペプチドオーバーラップを有するヒトネトリン1(シグナルペプチドなし)の配列全体を網羅する、アミノ酸15個の直鎖状ペプチド590個のアレイを用いて、エピトープのマッピングを行った。直鎖状のペプチドを、標準のFmoc化学反応を用いて合成し、トリフルオロ酢酸を用いて脱保護した。共有結合性に連結しているペプチドを含む、455ウエルのクレジットカードフォーマットのポリプロピレンカードを、5%SQ(SQ、Super-Q、PBST中4%ウマ血清(v/v)、5%オバルブミン(w/v))を含むPBST(PBS-1% Tween80)中、25℃で30分間インキュベートした。洗浄後、ペプチドを、4C11(1μg/mL)PBST-0.1% SQとインキュベートした。洗浄後、ペプチドを1/1000希釈の抗マウス抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(SouthernBiotech社)と、25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質である2,2'-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)及び2マイクロタイターの3パーセントH2O2を加える。1時間後、色の発色を、電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムで定量する。
【0136】
図3は、マウス4C11が、配列番号3:VACNCNLHARRCRFNMELYKLSGRKSGGVCLNCRHNTAGRHCHに含まれるペプチドと特異的に相互作用することを示す。
【0137】
図4は、マウス4C11抗体によって認識されるエピトープの位置を示すカートゥーンである。このエピトープは、ネトリン1の第2のEGF様ドメインによって運ばれる。
【0138】
ヒトNET1の配列全体を網羅するアミノ酸15個の直鎖状ペプチド590個のスポットアレイを用いた、Pepscanエピトープマッピング。
図9に示す通り、抗体HUM03は、NET1のV-2ドメイン内に存在するアミノ酸配列「ARRCRFNMELYKLSGRKSGGVC」(配列番号35)に対応する8個の重複するペプチドに結合する。抗体の結合性エピトープは、このように、UNC5Bとの相互作用に関与するNET1ドメインと重複する。NET1のV-2ドメインがHUM03との相互作用を本当に担うことを確認するために、本発明者らは突然変異体の収集物を産生しこれらの突然変異体の、抗体及びUNC5Bとのin vitroの結合アッセイを行った。点突然変異K358Lは、HUM03との相互作用を減少させるのに十分であった。三重突然変異R348A-R349A-R351Aは、相互作用を低減した。
【実施例7】
【0139】
ヒトA549肺腺癌上皮細胞における4C11誘発性カスパーゼ3(
図5)
1日目に、細胞を無血清培地に播種した(1ウエルあたり1mLの6ウエルプレート中、1ウエルあたり細胞1.8×10
5個)。2日目に、培地を、ビヒクル(Ctrl)、マウス4C11抗体、又はマウスIgG1、k無関係抗体(Ab)(10μg/mL)のいずれかを含む新鮮な無血清培地1mLで置き換えた。処置は2連で行った。3日目に、同一に処置した2つのウエルから細胞を収集し、1つのプールとして合わせた。遠心分離後、細胞ペレットを、Caspase 3/CPP32 Fluorimetric Assay Kit(Gentaur Biovision社、Brussels、Belgium)において提供される溶解バッファー55μL中に再懸濁した。次いで、上記に言及したキットを用いてカスパーゼ3活性を測定することにより、アポトーシスをモニタリングした。値を全て、対照に対して標準化した。
【0140】
図5は、マウス4C11抗体が、ヒトA549肺腺癌上皮細胞においてカスパーゼ3活性を誘発することを示す。
【実施例8】
【0141】
A549(ヒト肺腺癌上皮細胞)のin vivoの4C11誘発性腫瘍増殖阻害(
図6)及びGRANTA(ヒトマントル細胞リンパ腫細胞)細胞の異種移植(
図7)
7週齢(体重20〜22g)胸腺欠損nu/nuメスマウスを、Charles River動物施設から得た。マウスを、フィルタが上部の(filter-topped)滅菌ケージに収容し、病原体フリーの動物施設において維持した。腫瘍は全て、PBS 200μL中腫瘍細胞(A549細胞10
7個又はGRANTA細胞10
6個)を皮下注射することによって、マウスの右側腹中に埋め込んだ。腫瘍が確立したら(V≒100mm
3、注射後およそ15〜20日)、4C11抗体での処置を開始した。マウスに、4C11抗体(多様な用量及びスケジュール)、ビヒクル(PBS)、又はアイソタイプ対照(MOPC21)の腹腔内注射を与えた(マウスn=10)。腫瘍サイズをノギスで測定した。腫瘍体積を、式、v=0.5*(長さ*幅
2)で計算した。
【0142】
A549異種移植片を有するマウスを、週1回、4C11 5mg/kgで処置し、GRANTA異種移植片を有するマウスに、週1回又は2回、低用量の4C11(2mg/kg)を与えた。
【0143】
図6及び
図7は、免疫不全マウスにおいて異種移植した、ヒトA549肺腺癌上皮細胞(A)及びヒトGRANTAヒトマントル細胞リンパ腫(B)の腫瘍増殖の有意な抑制を実証した。
【0144】
4C11抗体は、A549及びGRANTA腫瘍増殖の阻害を示す。
【実施例9】
【0145】
ラット骨肉腫におけるヒト化4C11(hum03)とドキソルビシンとの間の相乗作用(
図8)
放射線誘発性ラット骨肉腫は、骨膜裸出後、前脛骨の位置に移植された、移植可能なモデルに変換された(Allouche M.ら、1980年、Int. J. Cancer、26、777〜782頁を参照されたい)。ネトリン1はこの腫瘍では発現されなかったため、本発明者らは、最近公開した通り、ネトリン1及びその受容体の発現を、化学療法剤(Dox、ドキソルビシン)を用いて刺激した(Paradisiら、2013年、EMBO Mol Med(2013年)5、1821〜1834頁を参照されたい)。骨肉腫を移植したラットに、週2回、ヒト化4C11 hum03(4.4mg/kg)又はビヒクル(ctr)の腹腔内注射を与えた。数匹の動物に、加えて、ドキソルビシンの腹腔内注射(2mg/kg)を与えた。腫瘍サイズをノギスで測定した。腫瘍体積を、式、v=0.5*(長さ*幅
2)で計算した。並行して、MRIを用いて増殖パターンを追跡する。
【0146】
図8は、骨肉腫の増殖の阻害が、4C11及びドキソルビシンで同時に処置した動物において実現されることを示す。
【実施例10】
【0147】
炎症により産生された自然発生結腸がんの炎症モデルにおけるマウス4C11の効果。(IBD(炎症性腸疾患)関連直腸結腸がんのマウスモデル)
(Proc Natl Acad Sci U S A.、2009年10月6日、106(40):17146〜51頁を参照されたい)
マウスを、以前に記載されている通り、週2回、AOM+DSSで処置し、PBS又は4C11 2mg/kgで腹腔内処置した(n=7) (Neufert Cら(2007年) Nat Protoc、2: 1998〜2004頁を参照されたい)。簡潔に述べると、病原菌フリーの8週齢野生型Balb/Cメスマウスに、PBS中に溶解したAOM 10mg/kg体重を、腹腔内注射した。翌日、飲料水中2.5% DSSを1週間にわたって与え、その後通常の水を2週間与えた。マウスを、2週ごとに1週間、実験第10週までDSSで処置し、1週間あたり3回、4C11又はPBSを注射した。第10週の初めに動物を堵殺し、結腸を組織学的分析用に除去した。Table 3(表5)は、4C11抗体でマウスを処置すると、炎症駆動性の結腸腺癌の発生を防止又は減速することを明らかに示す。
【0148】
Table 3(表5):in vivoの炎症駆動性の結腸腫瘍に対する、抗ネトリンmAbである4C11の効果。IBD(炎症性腸疾患)関連結腸直腸がんのマウスモデルを、すでに記載されている通りに産生した(Proc Natl Acad Sci U S A.、2009年10月6日、106(40):17146〜51頁)。マウスを最初に、アゾキシメタン(AOM)及び硫酸デキストランナトリウム(DSS)で処置して結腸直腸がんを誘発した。マウスを、PBS又は4C11 2mg/kgで、週2回、腹腔内処置した(n=7)。マウスを堵殺した。除去した結腸を、組織学的分析用にホルムアルデヒド中で固定した。Table 3(表5)は、多様な前がん性又はがん性結腸病変を表すマウスのパーセント値を表す。
【0149】
【表5】
【実施例11】
【0150】
ヒトがん細胞におけるネトリン1タンパク質の定量
免疫ブロット分析用に、細胞を、改変RIPAバッファー(50mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaCl、1% NP-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、1mM EDTA、プロテアーゼインヒビターカクテル、及び5mM DTT)中に超音波によって溶解し、4℃で1時間インキュベートする。細胞のデブリを遠心分離(10000g、4℃で15分)によってペレット化し、タンパク質抽出物(1レーンあたり200 μg)を10% SDS-ポリアクリルアミドゲル上にローディングし、PVDFシート(Millipore Corporation社、Billerica、MA、U.S.A.)上にブロッティングする。フィルタを、PBS/0.1% Tween20中10%脱脂粉乳及び5%BSA(PBS-T)で一夜ブロックし、次いで、ウサギポリクローナルα-ネトリン1(1:500希釈、クローンH104、Santa Cruz Biotechnology社、Santa Cruz、CA、USA)、及びマウスモノクローナルβ-アクチン(Santa Cruz Biotechnologies社)抗体と2時間インキュベートする。PBS-Tで3回洗浄した後、フィルタを好適なHRP-コンジュゲート二次抗体(1:10000、Jackson ImmunoResearch社、Suffolk、UK)と1時間インキュベートする。検出を、West Dura Chemiluminescence System (Pierce社、Rockford、IL、U.S.A.)を用いて行う。
【0151】
免疫蛍光試験用に、細胞を剥離し、カバーガラス上でサイトスピナー(Shandon Cytospin 3、Thermo Scientific社)を用いて遠心分離し、4%(v/v)パラホルムアルデヒドで30分間固定する。次いで、細胞を、0.2% Triton X-100/PBS中で30分間透過処理し、2%BSA及び2%正常ロバ血清を含むPBS中でブロックする。内因性ネトリン1を、ラットモノクローナルα-ネトリン1抗体(R&D systems社)及びAlexa-488ロバ抗ラットIgG (Molecular probes社)を用いて染色する。核を、Hoescht染色(Sigma社)を用いて対比染色する。
【実施例12】
【0152】
UNC5-TRAP又はヒト化4C11抗体での処置の候補とするための、ネトリン1を過剰発現し、DCC及び/又はUNC5A及び/又はB及び/又はC及び/又はDを発現するがんの例
ネトリン1を過剰発現する症例のパーセント値を、ネトリン1及びネトリン1受容体の発現が定量されているがんの各タイプに対して示す。
- 転移性乳がんの60%(Fitamantら、PNAS、2008年)、
- 非小細胞肺がんの47%(Delloye-Bourgeoisら、JNCI、2009年)、
- 高悪性度神経芽細胞腫の38%(Delloye-Bourgeoisら、J. Exp. Med.、2009年)、
- 膵臓腺癌の61%(Linkら、Annals of Chir. Onco.、2007年; Dumartinら、Gastro、2010年)、
- 原発性メラノーマ(n=7)、メラノーマ転移(n=6)の100%(Kaufmannら、Cellular Oncology、2009年)、
- 卵巣がんの76%(Panastasiouら、Oncotarget、2011年)、
- 神経膠芽腫の65%、
- 急性骨髄性白血病及び慢性リンパ性白血病の60%、
- 高悪性度B細胞リンパ腫の50%、
- 肉腫の30%、
- 腎腺癌の40%、
- 頭部及び頸部のがんの22%、
- 精巣がん(胚性癌の36%、奇形腫の50%、卵黄嚢腫瘍の100%)、
- 腎臓がんの50%、
- 胃がんの26%、
- 子宮がんの19%。
【実施例13】
【0153】
PCT/EP2013/068937によるネトリン1発現又は過剰発現の評価を可能にする定量RT-PCR
総RNAを、NucleoSpin(登録商標)RNA IIキット(Macherey Nagel社、Duren、Germany)を用い、製造元のプロトコールにしたがって抽出する。RT-PCR反応を、iScript(登録商標)cDNA Synthesisキット(Biorad社)で行う。総RNA 1μg を、以下のプログラムを用いて逆転写する:25℃で5分間、42℃で30分間、及び85℃で5分間。発現試験用に、標的の転写物を、LightCycler(登録商標)2.0装置(Roche Applied Science社)において、LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green Iキット(Roche Applied Science社)を用いて増幅する。標的遺伝子の発現を、ハウスキーピング遺伝子として用いる、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)及びホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子に対して標準化する。ハウスキーピング遺伝子に対して標準化された、標的の転写物の量を、比較上のC
T法を用いて算出する。標的遺伝子及びハウスキーピング遺伝子の効率がおよそ等しいことを実証するために、確認実験を行う。プライマーの配列は以下の通りである:
フォワードプライマー:aaaagtactgcaagaaggactatgc 配列番号33。
リバースプライマー:ccctgcttatacacggagatg 配列番号34。
【実施例14】
【0154】
PCT/EP2013/068937によるヒトがん細胞におけるネトリン1タンパク質の定量
免疫ブロット分析用に、細胞を、改変RIPAバッファー(50mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaCl、1% NP-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、1mM EDTA、プロテアーゼインヒビターカクテル、及び5mM DTT)中で超音波によって溶解し、4℃で1時間インキュベートする。細胞のデブリを遠心分離(10000g、4℃で15分)によってペレット化し、タンパク質抽出物(1レーンあたり200μg)を10% SDS-ポリアクリルアミドゲル上にローディングし、PVDFシート(Millipore Corporation社、Billerica、MA、U.S.A.)上にブロッティングする。フィルタを、PBS/0.1% Tween 20中10%脱脂粉乳及び5% BSA(PBS-T)で一夜ブロックし、次いでウサギポリクローナルαネトリン1(1:500希釈、クローンH104、Santa Cruz Biotechnology社、Santa Cruz、CA、USA)及びマウスモノクローナルβアクチン(Santa Cruz Biotechnologies社)抗体と2時間インキュベートする。PBS-Tで3回洗浄した後、フィルタを、好適なHRP-コンジュゲートした二次抗体(1:10000、Jackson ImmunoResearch社、Suffolk、UK)と1時間インキュベートする。検出を、West Dura Chemiluminescence System (Pierce社、Rockford、IL、U.S.A.)を用いて行う。
【0155】
免疫蛍光試験用に、細胞を剥離し、カバーガラス上でサイトスピナー(Shandon Cytospin 3、Thermo Scientific社) を用いて遠心分離し、4%(v/v)パラホルムアルデヒドで30分間固定する。次いで、細胞を、0.2% Triton X-100/PBS中で30分間透過処理し、2% BSA及び2%正常ロバ血清を含むPBS中でブロックする。内因性ネトリン1を、ラットモノクローナルα-ネトリン1抗体(R&D systems社)、及びAlexa-488ロバ抗ラットIgG(Molecular probes社)を用いて染色する。核を、Hoescht染色(Sigma社)を用いて対比染色する。
【実施例15】
【0156】
in vivo異種移植モデル
対数増殖における、様々なヒト細胞系統(肺腺癌上皮細胞系統H358及びA549、並びにマントル細胞リンパ腫細胞系統GRANTA-519、並びにびまん性大細胞リンパ腫ocily3)を培養物から収集し、滅菌PBSで2回洗浄し、カウントし、細胞5×10
6個をPBS中に再懸濁した後、5週齢のSwiss/ヌードメスマウスの右側腹部上に皮下埋め込んだ。腫瘍体積(V)を、ノギスで、式、V=0.5(長さ×幅
2)により決定した。腫瘍100+/-20mm
3を確立した後、群に無作為化した(マウス各10匹)。抗ネトリン1抗体又はアイソタイプ対照を、週2回、マウスに10mg/kg静脈内(H358、A549、oci-ly3)又は腹腔内(GRANTA-519)注射した。腫瘍増殖阻害のパーセント(%TGI)を、以下の表に示す日(d)に移植した各細胞系統に対して決定し、式、TGI(%)=(1-T/C)×100によって算出し、式中、Tは、d日目の試験群(抗ネトリン1抗体で処置)の平均腫瘍体積を示し、Cはアイソタイプ対照処置群の平均体積を示す。腫瘍増殖阻害<50%が、意味があると考える。
【0157】
【表6】
【0158】
本発明のマウス及びヒト化抗体には、効率的な腫瘍増殖阻害効果があった。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]