特許第6586106号(P6586106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6586106ホログラフィックフォトポリマー配合物における書込モノマーとしての芳香族グリコールエーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586106
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】ホログラフィックフォトポリマー配合物における書込モノマーとしての芳香族グリコールエーテル
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20190919BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20190919BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20190919BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20190919BHJP
【FI】
   C08F2/44 C
   C08F2/50
   C08F20/10
   G03H1/02
【請求項の数】18
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-564015(P2016-564015)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公表番号】特表2017-513994(P2017-513994A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】EP2015056178
(87)【国際公開番号】WO2015161969
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2018年3月22日
(31)【優先権主張番号】14165956.5
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フェッケ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブルーダー,フリードリッヒ−カール
(72)【発明者】
【氏名】ロール,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ワイザー,マルク−ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ホーネル,デニス
(72)【発明者】
【氏名】バーナス,ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ワルツ,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲン,レイナー
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−040529(JP,A)
【文献】 特開2008−266550(JP,A)
【文献】 特表2013−510203(JP,A)
【文献】 特開2015−040224(JP,A)
【文献】 特開平08−034707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/06
C08F 6/00−246/00
C08G 59/00−59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)書込モノマーとして、一般式(I)
【化1】
(式中、アリールは、置換又は非置換芳香族基であり、R及びRはそれぞれ独立して、式(II)又は式(III)
【化2】
(式中、
は、最大6個の炭素原子を有し、酸素原子及び/又は硫黄原子を含んでもよい有機基であり、及び
は、−H、−CHの群から選択される基である。)の基である。)の少なくとも1つの芳香族グリコールエーテルと、
B)マトリックスポリマーと、
C)光開始剤
とを含むフォトポリマー配合物(ただし、上記式(I)から以下の式(1−1)
【化3】
で表される化合物を除く)
【請求項2】
前記アリール基が、前記芳香族系内に、5〜21個、好ましくは5〜18個、さらに好ましくは6〜16個、より好ましくは6〜12個、最も好ましくは6〜10個の炭素原子及び/又はヘテロ原子を含むことを特徴とする請求項1に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項3】
前記アリール基が、n−アルキル、分岐鎖アルキル、アルキルオキシ、フェニル、ベンジル、フェニルアルキル、ナフチル、メチルチイル、エチルチイル、アルキルチイル、アルキルチオアルキル、フェノキシ、フェニルチイル、ナフチルチイル、フッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素の群から選択される1〜5個、好ましくは1〜3個の同一又は異なる置換基で、好ましくは、メチル、エチル、チオメチル、メトキシ、フェニルの群から選択される1〜3個の同一又は異なる置換基で置換されることを特徴とする請求項1及び2のいずれかに記載のフォトポリマー配合物。
【請求項4】
前記アリール基が、フェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、チオメチルフェニル、メトキシフェニル、ビフェニル及びナフチルの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項5】
が、−CH−、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CHCHOCHCH−、−CHCHOCHCHOCHCH−の群から選択される基であり、好ましくは−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、−CHCHCHCH−の群から選択される基であり、最も好ましくは−CHCH−であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項6】
前記R基が式(II)の基であり、及び前記R基が式(III)の基であり、ここで、前記R基は特に−CHCH−基でもよいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項7】
前記R基が式(III)の基であり、及び前記R基が式(II)の基であり、ここで、前記R基は特に−CHCH−基でもよいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項8】
前記マトリックスポリマーB)が架橋されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項9】
前記マトリックスポリマーがポリウレタン、好ましくはポリエステルC4ポリエーテルポリオールに基づくポリウレタンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項10】
単量体のフルオロウレタンをさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項11】
前記フルオロウレタンが、式(IV)
【化4】
(式中、m≧1且つm≦8、及びR、R、Rはそれぞれ独立して、水素、あるいは非置換、そうでなければヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐鎖、環状又は複素環式の有機基であり、ここで、好ましくは、前記R基、R基、R基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1個のフッ素原子で置換され、及び、より好ましくは、Rは少なくとも1個のフッ素原子を有する有機基である。)の少なくとも1つの化合物を含むか、又はこれらからなることを特徴とする請求項10に記載のフォトポリマー配合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物を含む、又は請求項1〜11のいずれか一項に記載のフォトポリマー配合物を使用して得ることができるホログラフィック媒体。
【請求項13】
少なくとも1つのホログラムが内部に露光された、請求項12に記載のホログラフィック媒体。
【請求項14】
前記ホログラムが、反射型、透過型、インライン、オフアクシス、全開口トランスファー、白色光透過型、デニシューク、オフアクシス反射型又はエッジリットホログラム、そうでなければホログラフィックステレオグラム、好ましくは反射型、透過型又はエッジリットホログラムであることを特徴とする請求項13に記載のホログラフィック媒体。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のホログラフィック媒体を含む表示装置。
【請求項16】
チップカード、身分証明書類、3D画像、製品保護ラベル、ラベル、銀行券又はホログラフィック光学素子の製造のための、特に表示装置のための請求項13又は14に記載のホログラフィック媒体の使用。
【請求項17】
式(I)
【化5】
(式中、アリールは、メチルフェニル、エチルフェニル、チオメチルフェニル、メトキシフェニル、ビフェニル及びナフチルの群から選択される基であり、及び
及びRはそれぞれ独立して、式(II)又は式(III)
【化6】
(式中、
は、最大6個の炭素原子を有し、酸素原子及び/又は硫黄原子を含んでもよい有機基であり、
は、−H、−CHの群から選択される基である。)の基である。)の芳香族グリコールエーテル。
【請求項18】
記R基及びR基のうちの1つが式(II)の基であり、及び、前記R基及びR基のうちの1つが式(III)の基であり、ここで、Rは特に−CHCH−基でもよいことを特徴とする請求項17に記載の芳香族グリコールエーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書込モノマー、マトリックスポリマー及び光開始剤を含むフォトポリマー配合物に関する。さらに本発明は、本発明のフォトポリマー配合物を使用して得ることができる露光されていないホログラフィック媒体、及び本発明の露光されていないホログラフィック媒体内にホログラムを露光することにより得ることができる露光されたホログラフィック媒体を提供する。本発明は同じく、チップカード、身分証明書類、3D画像、製品保護ラベル、ラベル、銀行券又はホログラフィック光学素子の製造のための本発明の露光されたホログラフィック媒体の使用のための本発明の露光されたホログラフィック媒体を含む表示装置、及び特定の芳香族グリコールエーテルを提供する。
【背景技術】
【0002】
フォトポリマー配合物の使用のために、ホログラフィック露光によりフォトポリマー内に生じる屈折率コントラストΔnによって極めて重要な役割が果たされる。ホログラフィック露光では、信号光波及び参照光波の干渉場(最も単純な場合では、2つの平面波の干渉場)は、例えば、干渉場において高強度の位置の高屈折率アクリレートの局所的な光重合によって屈折率格子にマッピングされる。フォトポリマー内の屈折率格子(ホログラム)には、信号光波のすべての情報が含まれる。ホログラムに参照光波のみを当てることにより、その時に信号を復元することができる。したがって、入射する参照光の強度に対する復元される信号の強度は回折効率と呼ばれ、以下ではDEと呼ぶ。
【0003】
2つの平面波の重ね合わせの結果生じるホログラムの最も単純な場合では、DEは、入射する参照光と回折光の強度の総和に対する復元時の回折光の強度の比である。一定の輝度で信号を可視化するのに必要な参照光の量に関して、DEが大きいほど、ホログラムの効率は高くなる。
【0004】
高屈折率アクリレートは、低屈折率の領域と高屈折率の領域の間に高振幅の屈折率格子を形成することができ、したがって、フォトポリマー配合物内に高DE及び高Δnのホログラムを生じさせることができる。ここで、DEは、Δnとフォトポリマーの層厚dの積によって決まることに留意されたい。例えば、単色光照射下でホログラムが目に見える(復元される)角度範囲の幅は、単に層厚dによって決まる。例えば、ホログラムに白色光を照射するとき、ホログラムの再生に寄与し得るスペクトル範囲の幅も同じく、単に層厚dによって決まる。dが小さいほど、受け入れられるそれぞれの幅が大きくなる。したがって、明るく、容易に目に見えるホログラムを生成するつもりであれば、DEを最大にするために、Δnを高く、厚さdを小さくすることが目標である。このことは、Δnが高いほど、DEを損なうことなく、明るいホログラムの層厚dを、より自由に設定できることを意味する。したがって、Δnの最適化は、フォトポリマー配合物の最適化において非常に重要である(P.Hariharan,Optical Holography,2nd Edition,Cambridge University Press,1996)。
【0005】
国際公開第2008/125229号には、高分子量の単官能性及び二官能性書込モノマーを含むフォトポリマー配合物が開示されている。これらの配合物から作られる媒体は、例えば、データ記憶のための適合性が良好な反射型ホログラムを書き込むために使用することができる。しかし、配合物の製造及び加工において問題が起こる:例えば、存在する書込モノマーは粘度が高く、又はT値が高い(T=ガラス転移温度)。これは、フォトポリマー配合物内の書込モノマー及びそれから生じる媒体の分布を均一にすることが難しいことを意味する。さらに、既知の配合物が使用されるとき、書込モノマーの凝集体がポリマーマトリックス内に形成されることがあり、これは、媒体又はそこで露光されるホログラムの品質を著しく損なう。このような場合、ホログラフィック材料は曇る。
【0006】
ホログラムのある特定の形態は透過型ホログラムの形態であり、その特徴は、ホログラムの生成の過程で、ホログラフィック媒体に参照波及び物体波を同じ側から照射することである。透過型ホログラムには様々な用途がある。とりわけ、本明細書においては、回折光学素子としてライトガイドを挙げるべきである。このような光学素子は、分光学又は天文学など、要求が厳しい用途において使用することができる。これらの光学素子は同じく、電子ディスプレイ、例えば、3D表示における使用に適している。
【0007】
干渉する物体波及び信号波の幾何配置のため、透過型ホログラムにおける格子間隔は、反射型ホログラムと比べて大きい。波長によって、格子間隔は500〜1000nmの間になり得る。フォトポリマーにおけるホログラム形成機構は書込モノマーの拡散に基づいており、十分遠く拡散可能であり、透過型ホログラムに通例となっている大きな格子間隔を備える書込モノマーが必要とされている。しかし、これは、高い屈折率コントラスト(Δn)を実現可能にするための前提条件である。反射型ホログラムの分野において既知のフォトポリマーは、この目的には不適当であることが多く、又は屈折率コントラストが十分に高くならない。
【0008】
国際公開第2012/020061号には、(メタ)アクリレート基を含み、且つチオエーテルに基づく特定の書込モノマー、ならびにフォトポリマー配合物、及び、これらを含む、特に透過型ホログラムを記録するための媒体が記載されている。しかし、書込モノマーを調製するために用いられる工程は不利な点を有する:すなわち、第1のステップにおいて、エポキシドとチオールを触媒作用のもとで反応させてヒドロキシ官能性チオエーテルを得、次に、これらを第2のステップにおいてイソシアネート官能性アクリレートと反応させる。しかし、チオールの反応は比較的遅い反応であり、通常臭いの強い反応物を完全に変換させることは実現が難しい。また、生産環境におけるこれらの材料の取り扱い及び反応容器の洗浄は、比較的高いレベルの費用及び不便を伴う。さらに、未変換の遊離チオールはフリーラジカル重合を阻害するため、チオールを含まずに調製することができる記載の生成物の代替物を見出すことが望ましいであろう。
【0009】
さらに、国際公開第2012/020061号及び国際公開第2008/125199号の書込モノマーの不利な点は、高粘度且つペースト状の材料を有することである。このことは、効率がよく、迅速で、均一な成分の混合が実現可能であるため、フォトポリマー配合物の製造を困難にする。さらに、これら高粘度の書込モノマーは濾過が難しく、一般に取り扱いに不利である。さらに、有機溶媒を使う必要があることもあり、これは、職業安全及び環境保護の理由で不利である。さらに、溶媒は、例えば、比較的高レベルの複雑さを伴うだけで、フィルムの形態で媒体から除去できるが、この場合、やはり、例えば表面欠陥の形で品質の低下があり得るため、特に層厚の大きいホログラフィック媒体の製造において溶媒を使用することは不利である。しかし、このような欠陥は多くの場合において容認できないが、その理由は、媒体はこの時、意図されている高精度の光学的機能をもはや実現できないためである。
【0010】
さらに、別の成分中で書込モノマーの溶解度が高いとき、これは一般にフォトポリマー配合物の開発において有利である。すなわち、この場合、配合物中の成分の量比を比較的広い範囲内で変化させることができて、これは特定の用途に適合させることが著しく容易になり、あるいは実際にいくらでも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/125229号
【特許文献2】国際公開第2012/020061号
【特許文献3】国際公開第2008/125199号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】P.Hariharan,Optical Holography,2nd Edition,Cambridge University Press,1996
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の目的は、溶媒を添加することなく、存在する書込モノマーが速やかに、且つ容易に溶解する、初めに記載したタイプのフォトポリマー配合物を提供することであった。さらに、チオールを使用することなく、存在する書込モノマーを調製することが可能であるべきである。最後に、フォトポリマーの層厚が6μmを超えるときに低ヘイズ値を有し、すなわち、5%未満のヘイズ値を有し、0.02を超える高い屈折率コントラスト(Δn)を持つ透過型ホログラムを内部に露光することができるホログラフィック媒体をフォトポリマー配合物から得ることが可能であるべきである。
【0014】
この目的は、
A)書込モノマーとして、一般式(I)
【化1】
【0015】
(式中、アリールは、置換又は非置換芳香族基であり、R及びRはそれぞれ独立して、式(II)又は式(III)
【化2】
【0016】
(式中、
は、最大6個の炭素原子を有し、酸素原子及び/又は硫黄原子を含んでもよい有機基であり、及び
は、−H、−CHの群から選択される基である。)の基である。)の少なくとも1つの芳香族グリコールエーテルと、
B)マトリックスポリマーと、
C)光開始剤
とを含むフォトポリマー配合物により達成される。
【0017】
驚いたことに、本発明のフォトポリマー配合物を利用して、透過型ホログラムの記録に特に適したホログラフィック媒体を得ることができることが明らかになっている。これらの媒体は低いヘイズ値を有し、さらに、高い屈折率コントラスト(Δn)も与える。さらに、存在する書込モノマーは、チオールを使用することなく調製することができ、溶媒を添加することなく配合物に速やかに溶解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】λ=532nm(DPSSレーザー=ダイオード励起固体レーザー)におけるホログラフィック媒体試験機(HMT)の幾何配置を示す。
図2】角度離調ΔΩに対してプロットした測定された回折効率ηを丸で、Kogelnik理論へのあてはめを実線で示す。図は実施例4.4を示す。
図3】角度離調ΔΩに対してプロットした測定された回折効率ηを丸で、Kogelnik理論へのあてはめを実線で示す。図は実施例4.8を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
式(I)の化合物は、例えば、2段階の工程において調製することができる。この工程では、第1のステップにおいて、単官能性〜三官能性アリールグリシジルエーテルをまず(メタ)アクリル酸と反応させることができる。適した触媒、例えばホスフィン、ホスホニウム化合物、ブレンステッド酸又はアミンの存在下での添加は、好ましくは、一級アルコールよりも二級アルコールが多く生成されるように、オキシランの立体障害の少ない側で実施される。続いて、生成されたアルコールをイソシアナトアルキル(メタ)アクリレートに加えることができて、R=(メタ)アクリル酸及びR=カルボニルアミノアルキル(メタ)アクリレートを持つ化合物を主に与える。以下の式のスキームは、再び合成戦略を示す。
【化3】
【0020】
同じく、エポキシドに対する(メタ)アクリル酸の添加の位置選択性に影響を与える特定の触媒を使用することができる。したがって、触媒としてコバルト(III)錯体を使用して、二級アルコールのみを調製することができる(A.Bukowska et al.,Journal of Molecular Catalysis A:Chemical 225(2005),p.7−10及びその中で引用されている文献を参照)。したがって、位置異性体的に純粋な生成物を得ることも可能である。
【0021】
有利な実施形態では、式(I)の化合物において、アリール基は、芳香族系内に、5〜21個、好ましくは5〜18個、さらに好ましくは6〜16個、より好ましくは6〜12個、最も好ましくは6〜10個の炭素原子及び/又はヘテロ原子を含む。
【0022】
式(I)の化合物において、アリール基が、n−アルキル、分岐鎖アルキル、アルキルオキシ、フェニル、ベンジル、フェニルアルキル、ナフチル、メチルチイル、エチルチイル、アルキルチイル、アルキルチオアルキル、フェノキシ、フェニルチイル、ナフチルチイル、フッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素の群から選択される1〜5個、好ましくは1〜3個の同一又は異なる置換基で、好ましくは、メチル、エチル、チオメチル、メトキシ、フェニルの群から選択される1〜3個の同一又は異なる置換基で置換されるとき、同じく有利である。
【0023】
式(I)の化合物において、アリール基が、フェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、チオメチルフェニル、メトキシフェニル、ビフェニル及びナフチルの群から選択されるとき最も好ましい。
【0024】
が、−CH−、−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−、−CHCHOCHCH−、−CHCHOCHCHOCHCH−の群から選択される基であり、好ましくは−CHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCH(CH)−、−CHCHCHCH−の群から選択される基であり、最も好ましくは−CHCH−であるときも有利である。
【0025】
別の実施形態では、R基は式(II)の基であり、R基は式(III)の基であり、ここで、R基は特に−CHCH−基でもよい。あるいは、R基は式(III)の基でもよく、R基は式(II)の基でもよく、ここで、R基は特に−CHCH−基でもよい。
【0026】
使用されるマトリックスポリマーB)は、非晶性熱可塑性プラスチック、例えばポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、あるいはメチルメタクリレート、メタクリル酸又は他のアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートのコポリマー、ならびにアクリル酸、例えばポリブチルアクリレート、ならびにポリ酢酸ビニル及びポリビニルブチレート、これらの部分的に加水分解された誘導体(ポリビニルアルコールなど)、及びエチレン及び/又は別の(メタ)アクリレートとのコポリマー、ゼラチン、セルロースエステル及びセルロースエーテル(メチルセルロースなど)、セルロースアセトブチレート、シリコーン、例えばポリジメチルシリコーン、ポリウレタン、ポリブタジエン及びポリイソプレン、ならびにポリエチレンオキシド、エポキシ樹脂、特に脂肪族エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリカーボネートならびに米国特許第4994347号明細書及びその中で引用されている系でもよい。
【0027】
しかし、マトリックスポリマーがポリウレタンであるとき特に好ましい。
【0028】
マトリックスポリマーが架橋されたとき特に好ましい。マトリックスポリマーが三次元的に架橋されたとき特に好ましい。エポキシ樹脂はカチオン相互架橋されてもよい。さらに、酸/無水物、アミン、ヒドロキシアルキルアミド及びチオールを架橋剤として使用することもできる。
【0029】
シリコーンは、一成分系として水の存在下で縮合(ブレンステッド酸の触媒作用を受けていてもよい。)により、又は、二成分系としてケイ酸エステル又は有機スズ化合物の添加により架橋することができる。同じく可能性があるのは、ビニルシラン系におけるヒドロシリル化である。
【0030】
不飽和化合物、例えばアクリロイル官能性ポリマー又は不飽和エステルは、アミン又はチオールと架橋させることができる。ビニルエーテルのカチオン重合も可能である。
【0031】
マトリックスポリマーが架橋された、特に三次元的に架橋されたポリウレタンであるとき最も好ましい。
【0032】
ポリウレタンは、特に、少なくとも1つのポリイソシアネート成分a)と、少なくとも1つのイソシアネート反応性成分b)とを反応させることによって得ることができる。
【0033】
ポリイソシアネート成分a)は、少なくとも2個のNCO基を有する少なくとも1つの有機化合物を含む。これらの有機化合物は、特に、単量体のジ−及びトリイソシアネート、ポリイソシアネートならびに/又はNCO官能性プレポリマーでもよい。ポリイソシアネート成分a)は、単量体のジ−及びトリイソシアネート、ポリイソシアネートならびに/又はNCO官能性プレポリマーの混合物を含んでもよく、あるいは、これらからなっていてもよい。
【0034】
使用される単量体のジ−及びトリイソシアネートは、それ自体当業者に周知の任意の化合物、又はこれらの混合物でもよい。これらの化合物は、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族又は脂環式の構造を有してもよい。単量体のジ−及びトリイソシアネートは、少量のモノイソシアネート、すなわち、1個のNCO基を有する有機化合物を含んでもよい。
【0035】
適した単量体のジ−及びトリイソシアネートの例は、ブタン1,4−ジイソシアネート、ペンタン1,5−ジイソシアネート、ヘキサン1,6−ジイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び/又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,8−ジイソシアナト−4−(イソシアナトメチル)オクタン、ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタン及び/又はビス(2’,4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン及び/又は任意の異性体含有量を有するこれらの混合物、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、異性体のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,4−及び/又は2,6−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン(ヘキサヒドロトリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、H−TDI)、フェニレン1,4−ジイソシアネート、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタン2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)及び/又は類似の1,4異性体、あるいは上述の化合物の任意の所望の混合物である。
【0036】
適したポリイソシアネートは、ウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、アミド、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオン及び/又はイミノオキサジアジンジオンの構造を有する化合物であり、上述のジ−又はトリイソシアネートから得ることができる。
【0037】
より好ましくは、ポリイソシアネートは、オリゴマー化された脂肪族及び/又は脂環式ジ−もしくはトリイソシアネートであり、上述の脂肪族及び/又は脂環式ジ−もしくはトリイソシアネートを特に使用することができる。
【0038】
イソシアヌレート、ウレトジオン及び/又はイミノオキサジアジンジオンの構造を有するポリイソシアネート、及びHDIに基づくビウレット、又はこれらの混合物が特に非常に好ましい。
【0039】
適したプレポリマーはウレタン基及び/又は尿素基を含み、上記のNCO基の変更により形成される別の構造を含んでもよい。この種類のプレポリマーは、例えば、前述の単量体のジ−及びトリイソシアネートならびに/又はポリイソシアネートa1)とイソシアネート反応性化合物b1)との反応により得ることができる。
【0040】
使用されるイソシアネート反応性化合物b1)は、アルコール、アミノ又はメルカプト化合物でもよく、好ましくはアルコールである。これらは特にポリオールでもよい。最も好ましくは、使用されるイソシアネート反応性化合物b1)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオール及び/又はポリウレタンポリオールでもよい。
【0041】
適したポリエステルポリオールは、例えば、直鎖ポリエステルジオール又は分岐鎖ポリエステルポリオールであり、これらは、脂肪族、脂環式又は芳香族のジ−又はポリカルボン酸又はこれらの無水物と2個以上のOH官能基の多価アルコールとの反応により、既知の方法で得ることができる。適したジ−又はポリカルボン酸の例は、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸又はトリメリット酸などのポリ塩基性カルボン酸、及びフタル酸無水物、無水トリメリット酸又は無水コハク酸などの酸無水物、又はこれらの任意の所望の混合物である。ポリエステルポリオールは、ヒマシ油など、天然の原料に基づいてもよい。同じく、ポリエステルポリオールは、ラクトンのホモ−又はコポリマーに基づくことができて、これらは、好ましくは、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン及び/又はメチル−ε−カプロラクトンなどのラクトン又はラクトン混合物と、例えば、前述のタイプの、2個以上のOH官能基の多価アルコールなどのヒドロキシ官能性化合物との付加により得られる。
【0042】
適したアルコールの例は、すべての多価アルコール、例えば、C−C12ジオール、異性体のシクロヘキサンジオール、グリセロール、又はこれらの任意の所望の混合物である。
【0043】
適したポリカーボネートポリオールは、それ自体既知の方法で、有機カーボネート又はホスゲンと、ジオール又はジオール混合物との反応により得ることができる。
【0044】
適した有機カーボネートは、ジメチル、ジエチル及びジフェニルカーボネートである。
【0045】
適したジオール又は混合物は、ポリエステルセグメントの文脈においてそれ自体言及した2個以上のOH官能基の多価アルコール、好ましくはブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール及び/又は3−メチルペンタンジオールを含む。ポリエステルポリオールをポリカーボネートポリオールに変換することもできる。
【0046】
適したポリエーテルポリオールは、環状エーテルとOH−又はNH−官能性スターター分子との重付加生成物であり、ブロック状構造のものでもよい。
【0047】
適した環状エーテルは、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、及びこれらの任意の所望の混合物である。
【0048】
使用されるスターターは、ポリエステルポリオールの文脈においてそれ自体言及した2個以上のOH官能基の多価アルコールでもよく、一級又は二級アミン及びアミノアルコールでもよい。
【0049】
好ましいポリエーテルポリオールは、プロピレンオキシドのみに基づく前述のタイプのもの、又はさらに1−アルキレンオキシドを伴うプロピレンオキシドに基づくランダム又はブロックコポリマーである。特に好ましいのは、プロピレンオキシドホモポリマー、ならびにオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位及び/又はオキシブチレン単位を含むランダム又はブロックコポリマーであり、ここで、すべてのオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位及びオキシブチレン単位の総量に基づくオキシプロピレン単位の割合は、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも45重量%の量になる。この場合、オキシプロピレン及びオキシブチレンは、それぞれあらゆる直鎖及び分岐鎖のC及びC異性体を包含する。
【0050】
さらに、ポリオール成分b1)の成分として、多官能性、イソシアネート反応性化合物として適しているのは、同様に、低分子量(すなわち500g/mol以下の分子量を持つ。)、短鎖(すなわち2〜20個の炭素原子を含む。)脂肪族、芳香脂肪族又は脂環式の二官能性、三官能性又は多官能性アルコールである。
【0051】
これらは、例えば、前述の化合物に加えて、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、位置異性体のジエチルオクタンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−及び1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン又は2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートでもよい。適したトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又はグリセロールである。適したさらに多官能基のアルコールは、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール又はソルビトールである。
【0052】
ポリオール成分が、二官能性ポリエーテル、ポリエステル、あるいは一級OH官能基を有するポリエーテル−ポリエステルブロックコポリエステル又はポリエーテル−ポリエステルブロックコポリマーであるとき特に好ましい。
【0053】
同じく、アミンをイソシアネート反応性化合物b1)として使用することができる。適したアミンの例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、二官能性ポリアミン、例えば、Jeffamines(登録商標)、アミン末端ポリマー、特に、10000g/mol以下の数平均モル質量を有するものである。同じく、上述のアミンの混合物を使用することができる。
【0054】
同じく、アミノアルコールをイソシアネート反応性化合物b1)として使用することができる。適したアミノアルコールの例は、異性体のアミノエタノール、異性体のアミノプロパノール、異性体のアミノブタノール及び異性体のアミノヘキサノール、又はこれらの任意の所望の混合物である。
【0055】
上述のすべてのイソシアネート反応性化合物b1)を互いに所望の通り混合することができる。
【0056】
イソシアネート反応性化合物b1)が、200g/mol以上、10000g/mol以下の数平均モル質量を有するときも同様に好ましく、さらに好ましくは500g/mol以上、8000g/mol以下、最も好ましくは800g/mol以上、5000g/mol以下である。ポリオールのOH官能基は、好ましくは1.5〜6.0個、より好ましくは1.8〜4.0個である。
【0057】
ポリイソシアネート成分a)のプレポリマーは特に、1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.3重量%未満の遊離単量体のジ−及びトリイソシアネートの残存含有量を有してもよい。
【0058】
また、ポリイソシアネート成分a)は、コーティング技術により既知のブロッキング剤とNCO基が完全に、又は部分的に反応した有機化合物を全体的又は部分的に含んでもよい。ブロッキング剤の例は、アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、ピラゾール及びアミンであり、例えば、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、ジエチルマロネート、エチルアセトアセテート、3,5−ジメチルピラゾール、ε−カプロラクタム、又はこれらの混合物である。
【0059】
ポリイソシアネート成分a)が、脂肪族で結合したNCO基を有する化合物を含むとき特に好ましく、脂肪族で結合したNCO基は、一級炭素原子に結合した基を意味すると理解される。イソシアネート反応性成分b)は好ましくは、平均で少なくとも1.5個、好ましくは2〜3個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの有機化合物を含む。本発明の文脈において、イソシアネート反応性基は、好ましくはヒドロキシル基、アミノ基又はメルカプト基であると見なされる。
【0060】
イソシアネート反応性成分は特に、数平均で少なくとも1.5個、好ましくは2〜3個のイソシアネート反応性基を有する化合物を含んでもよい。
【0061】
適した成分b)の多官能性イソシアネート反応性化合物は、例えば、前述の化合物b1)である。
【0062】
また、ポリウレタンがポリエステルC4ポリエーテルポリオールに基づいているとき最も好ましい。
【0063】
成分c)の光開始剤は通常、化学線によって活性化可能な化合物であり、書込モノマーの重合を誘発することができる。光開始剤の場合、単分子(タイプI)と二分子(タイプII)の開始剤を区別することができる。さらに、これらはその化学的性質によって、フリーラジカル、アニオン、カチオン又は混合タイプの重合のための光開始剤に区別される。
【0064】
フリーラジカル光重合用のタイプIの光開始剤(NorrishタイプI)は、照射により単分子結合が開裂してフリーラジカルを生成する。タイプIの光開始剤の例は、トリアジン、オキシム、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、ビスイミダゾール、アロイルホスフィンオキシド、スルホニウム塩及びヨードニウム塩である。
【0065】
フリーラジカル重合用のタイプIIの光開始剤(NorrishタイプII)は、感光剤としての染料及び共開始剤からなり、染料に合った光の照射により二分子反応が起こる。まず第一に、染料が光子を吸収し、励起状態から共開始剤へエネルギーを伝達する。共開始剤は、電子又はプロトンの移動あるいは直接の水素抜き取りによって重合誘発フリーラジカルを放出する。
【0066】
本発明の文脈において、タイプIIの光開始剤を使用することが好ましい。
【0067】
この種類の光開始剤系は、欧州特許出願公開第0223587号明細書に原理が記載されており、好ましくは、1又は複数の染料と(1又は複数の)アルキルアリールホウ酸アンモニウムの混合物からなる。
【0068】
アルキルアリールホウ酸アンモニウムと共に、タイプIIの光開始剤を生成する適した染料は、国際公開第2012062655号に記載されており、同じくそこに記載されているアニオンと組み合わせたカチオン染料である。
【0069】
カチオン染料は好ましくは、以下のクラスからのカチオン染料を意味すると理解される:アクリジン染料、キサンテン染料、チオキサンテン染料、フェナジン染料、フェノキサジン染料、フェノチアジン染料、トリ(ヘテロ)アリールメタン染料−特にジアミノ−及びトリアミノ(ヘテロ)アリールメタン染料、モノ−、ジ−、トリ−及びペンタメチンシアニン染料、ヘミシアニン染料、外部がカチオン性のメロシアニン染料、外部がカチオン性のニュートロシアニン染料、ゼロメチン染料−特にナフトラクタム染料、ストレプトシアニン染料。この種類の染料は、例えば、H.Berneth in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Azine Dyes,Wiley−VCH Verlag,2008,H.Berneth in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Methine Dyes and Pigments,Wiley−VCH Verlag,2008,T.Gessner,U.Mayer in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Triarylmethane and Diarylmethane Dyes,Wiley−VCH Verlag,2000に記載されている。
【0070】
フェナジン染料、フェノキサジン染料、フェノチアジン染料、トリ(ヘテロ)アリールメタン染料−特にジアミノ−及びトリアミノ(ヘテロ)アリールメタン染料、モノ−、ジ−、トリ−及びペンタメチンシアニン染料、ヘミシアニン染料、ゼロメチン染料−特にナフトラクタム染料、ストレプトシアニン染料が特に好ましい。
【0071】
カチオン染料の例は、アストラゾンオレンジG、ベーシックブルー3、ベーシックオレンジ22、ベーシックレッド13、ベーシックバイオレット7、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、アズールA、2,4−ジフェニル−6−(4−メトキシフェニル)ピリリウム、サフラニンO、Astraphloxin、ブリリアントグリーン、クリスタルバイオレット、エチルバイオレット及びチオニンである。
【0072】
好ましいアニオンは特に、C−〜C25−アルカンスルホネート、好ましくはC13−〜C25−アルカンスルホネート、C−〜C18−パーフルオロアルカンスルホネート、少なくとも3個の水素原子をアルキル鎖内に持つC−〜C18−パーフルオロアルカンスルホネート、C−〜C25−アルカノエート、C−〜C25−アルケノエート、C−〜C25−アルキルスルファート、好ましくはC13−〜C25−アルキルスルファート、C−〜C25−アルケニルスルファート、好ましくはC13−〜C25−アルケニルスルファート、C−〜C18−パーフルオロアルキルスルファート、少なくとも3個の水素原子をアルキル鎖内に持つC−〜C18−パーフルオロアルキルスルファート、少なくとも4当量のエチレンオキシド及び/又は4当量のプロピレンオキシドに基づくポリエーテルスルファート、ビス(C−〜C25−アルキル、C−〜C−シクロアルキル、C−〜C−アルケニル又はC−〜C11−アラルキル)スルホスクシネート、少なくとも8個のフッ素原子で置換されたビス−C−〜C10−アルキルスルホスクシネート、C−〜C25−アルキルスルホアセテート、ハロゲン、C−〜C25−アルキル、パーフルオロ−C−〜C−アルキル及び/又はC−〜C12−アルコキシカルボニルの群からの少なくとも1つの基で置換されたベンゼンスルホネート、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−〜C25−アルキル、C−〜C12−アルコキシ、アミノ、C−〜C12−アルコキシカルボニル又は塩素で置換されていてもよいナフタレン−又はビフェニルスルホネート、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、C−〜C25−アルキル、C−〜C12−アルコキシ、C−〜C12−アルコキシカルボニル又は塩素で置換されていてもよいベンゼン−、ナフタレン−又はビフェニルジスルホネート、ジニトロ、C−〜C25−アルキル、C−〜C12−アルコキシカルボニル、ベンゾイル、クロロベンゾイル又はトリルで置換されたベンゾエート、ナフタレンジカルボン酸のアニオン、ジフェニルエーテルジスルホネート、脂肪族C〜Cアルコール又はグリセロールのスルホン化又は硫酸化された、少なくともモノ不飽和でもよいC〜C25脂肪酸エステル、ビス(スルホ−C−〜C−アルキル)C−〜C12−アルカンジカルボキシレート、ビス(スルホ−C−〜C−アルキル)イタコネート、(スルホ−C−〜C−アルキル)C−〜C18−アルカンカルボキシレート、(スルホ−C−〜C−アルキル)アクリレート又はメタクリレート、最大12個のハロゲン基で置換されていてもよいトリスカテコールホスフェートであり、テトラフェニルボレート、シアノトリフェニルボレート、テトラフェノキシボレート、C−〜C12−アルキルトリフェニルボレート(ここで、フェニル基又はフェノキシ基が、ハロゲン、C−〜C−アルキル及び/又はC−〜C−アルコキシで置換されていてもよい。)、C−〜C12−アルキルトリナフチルボレート、テトラ−C−〜C20−アルコキシボレート、7,8−又は7,9−ジカルバニドウンデカボレート(1−)又は(2−)(これは、ホウ素原子及び/又は炭素原子上で1個又は2個のC−〜C12−アルキル基又はフェニル基で置換されていてもよい。)、ドデカヒドロジカルバドデカボレート(2−)あるいはB−C−〜C12−アルキル−C−フェニルドデカヒドロジカルバドデカボレート(1−)(ここで、ナフタレンジスルホネートなどの多価アニオンの場合、Aは1当量のこのアニオンを表し、且つ、ここで、アルカン基及びアルキル基は、分岐していても、且つ/又はハロゲン、シアノ、メトキシ、エトキシ、メトキシカルボニルもしくはエトキシカルボニルで置換されていてもよい。)の群からのアニオンである。
【0073】
染料のアニオンAが、1〜30の範囲の、より好ましくは1〜12の範囲の、特に好ましくは1〜6.5の範囲のAClogPを有するときも同様に好ましい。AClogPは、J.Comput.Aid.Mol.Des.2005,19,453;Virtual Computational Chemistry Laboratory,http://www.vcclab.orgにしたがって計算される。
【0074】
適したアルキルアリールホウ酸アンモニウムは、例えば、次の通りである(Cunningham et al.,RadTech’98 North America UV/EB Conference Proceedings,Chicago,Apr.19−22,1998):テトラブチルアンモニウムトリフェニルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリフェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリナフチルヘキシルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(4−tert−ブチル)フェニルブチルボレート、テトラブチルアンモニウムトリス(3−フルオロフェニル)ヘキシルボレートヘキシルボレート([191726−69−9]、CGI 7460、BASF SE(バーゼル、スイス)の製品)、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムジペンチルジフェニルボレート及びテトラブチルアンモニウムトリス(3−クロロ−4−メチルフェニル)ヘキシルボレート([1147315−11−4]、CGI 909、BASF SE(バーゼル、スイス)の製品)。
【0075】
これらの光開始剤の混合物を使用することが有利なことがある。使用される照射線源にしたがって、光開始剤のタイプ及び濃度を、当業者に既知の方法で調整しなければならない。さらに詳しくは、例えば、P.K.T.Oldring(Ed.),Chemistry&Technology of UV&EB Formulations For Coatings,Inks&Paints,vol.3,1991,SITA Technology,London,p.61−328に記載されている。
【0076】
吸収スペクトルが400〜800nmのスペクトル範囲を少なくとも部分的に含む染料と、染料に合った少なくとも1つの共開始剤との組み合わせを光開始剤が含むとき最も好ましい。
【0077】
青、緑及び赤から選択されるレーザー光の色に適した少なくとも1つの光開始剤がフォトポリマー配合物中に存在するときも同様に好ましい。
【0078】
フォトポリマー配合物が、青、緑及び赤から選択される少なくとも2つのレーザー光の色に対して、それぞれ1つの適した光開始剤を含むときもさらに好ましい。
【0079】
最後に、フォトポリマー配合物が、青、緑及び赤のレーザー光の色それぞれに対して、1つの適した光開始剤を含むとき最も好ましい。
【0080】
特に高い屈折率コントラストは、フォトポリマー配合物が、別の書込モノマーA)として、式(I)の書込モノマー、好ましくはアクリレート官能性又はメタクリレート官能性書込モノマーも含むとき実現できる。単官能性書込モノマー、特に米国特許出願公開第2010/0036013号明細書に記載の単官能性ウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0081】
適したアクリレート書込モノマーは特に、一般式(IV)
【化4】
【0082】
(式中、n≧1且つn≦4、Rは、非置換、そうでなければヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐鎖、環状又は複素環式の有機基であり、且つ/又は、Rは水素、又は非置換、そうでなければヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐鎖、環状又は複素環式の有機基である。)の化合物である。より好ましくは、Rは水素又はメチルであり、且つ/又は、Rは、非置換、そうでなければヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐鎖、環状又は複素環式の有機基である。
【0083】
アクリレート及びメタクリレートはそれぞれ、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルを指す。好ましく使用できるアクリレート及びメタクリレートの例は、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルメタクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、フェニルチオエチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−ナフチルメタクリレート、1,4−ビス(2−チオナフチル)−2−ブチルアクリレート、1,4−ビス(2−チオナフチル)−2−ブチルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、及びこれらのエトキシル化類似化合物、N−カルバゾリルアクリレートである。
【0084】
ウレタンアクリレートは、少なくとも1つのアクリル酸エステル基及び少なくとも1つのウレタン結合を有する化合物を意味すると理解される。この種類の化合物は、例えば、ヒドロキシ官能性アクリレート又はメタクリレートをイソシアネート官能性化合物と反応させることによって得ることができる。
【0085】
この目的のために使用できるイソシアネート官能性化合物の例は、モノイソシアネート、ならびにa)において言及した単量体のジイソシアネート、トリイソシアネート及び/又はポリイソシアネートである。適したモノイソシアネートの例は、フェニルイソシアネート、異性体のメチルチオフェニルイソシアネートである。ジ−、トリ−又はポリイソシアネートは前述し、また、トリフェニルメタン4,4’,4’’−トリイソシアネート及びトリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート、又はウレタン、尿素、カルボジイミド、アシル尿素、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオン、イミノオキサジアジンジオン構造を持つこれらの誘導体、ならびにこれらの混合物。芳香族のジ−、トリ−又はポリイソシアネートが好ましい。
【0086】
ウレタンアクリレートの調製に有用なヒドロキシ官能性アクリレート又はメタクリレートには、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えば、Tone(登録商標)M100(Dow、シュヴァルバッハ、ドイツ)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、エトキシル化、プロポキシル化又はアルコキシル化トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールなどの多価アルコールのヒドロキシ官能性モノ−、ジ−又はテトラアクリレートなどの化合物、あるいはこれらの技術的な混合物が含まれる。2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート及びポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0087】
20〜300mg KOH/gのOH含有量を有する、基本的に既知のヒドロキシル含有エポキシ(メタ)アクリレート、又は20〜300mg KOH/gのOH含有量を有するヒドロキシル含有ポリウレタン(メタ)アクリレート、又は20〜300mg KOH/gのOH含有量を有するアクリル化ポリアクリレート、及びこれらの混合物、ならびにヒドロキシル含有不飽和ポリエステルとの混合物、及びポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物、又はヒドロキシル含有不飽和ポリエステルとポリエステル(メタ)アクリレートの混合物を同じく使用することができる。
【0088】
トリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート及び/又はm−メチルチオフェニルイソシアネートと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコール官能性アクリレートとの反応から得ることができるウレタンアクリレートが特に好ましい。
【0089】
同じく、書込モノマーは、α,β−不飽和カルボン酸誘導体などの別の不飽和化合物、例えば、マレエート、フマレート、マレイミド、アクリルアミド、ならびにビニルエーテル、プロペニルエーテル、アリルエーテル、及びジシクロペンタジエニル単位を含む化合物、ならびにオレフィン不飽和化合物、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及び/又はオレフィンを含むことができて、又はこれらからなることができる。
【0090】
さらに好ましい実施形態において、フォトポリマー配合物は、単量体のフルオロウレタンをさらに含む。
【0091】
フルオロウレタンが、式(V)
【化5】
【0092】
(式中、m≧1且つm≦8、R、R、Rはそれぞれ独立して、水素、あるいは非置換、そうでなければヘテロ原子で置換されていてもよい直鎖、分岐鎖、環状又は複素環式の有機基であり、ここで、好ましくは、R基、R基、R基のうちの少なくとも1つが、少なくとも1個のフッ素原子で置換され、より好ましくは、Rは少なくとも1個のフッ素原子を有する有機基である。)の少なくとも1つの化合物を含むか、又はこれらからなるとき特に好ましい。
【0093】
本発明のさらに好ましい実施形態において、フォトポリマー配合物は、10%〜89.999重量%、好ましくは20%〜70重量%のマトリックスポリマー、3%〜60重量%、好ましくは10%〜50重量%の書込モノマー、0.001%〜5重量%、好ましくは0.5%〜3重量%の光開始剤を含み、0%〜4重量%、好ましくは0〜2重量%の触媒、0%〜5重量%、好ましくは0.001%〜1重量%の安定剤、0%〜40重量%、好ましくは10%〜30重量%の単量体のフルオロウレタン及び0%〜5重量%、好ましくは0.1%〜5重量%の別の添加剤を含んでもよく、ここで、すべての成分の総和は100重量%である。
【0094】
使用される触媒は、ウレタン化触媒、例えば、ビスマス、スズ、亜鉛又は鉄の有機誘導体又は無機誘導体でもよい(2012/062658に記載の化合物も参照)。特に好ましい触媒は、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、鉄(III)トリスアセチルアセトネート、ビスマス(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)及びスズ(II)ビス(2−エチルヘキサノエート)である。さらに、触媒として立体障害アミンを使用することもできる。
【0095】
使用される安定剤は、
a)フリーラジカル阻害剤、例えばフェノール(パラ−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(ionol)、及びオリゴマーのionol(例えば、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)など)、ならびにHALSアミンと呼ばれるもの(例えば、N,N’−ビスホルミル−N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ヘキサメチレンジアミン)、N−アルキル−HALS、N−アルコキシ−HALS及びN−アルコキシエチル−HALS化合物、ならびにフェノチアジン;
b)酸化防止剤、例えばジホスホナイト、ジスルフィド及びチオエーテル;及び/又は
c)UV吸収剤(シアノアクリレート(例えば、エチル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)、ベンゾトリアゾール(例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール)、ベンゾフェノン(例えば、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン)、ベンゾトリアゾール(例えば、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール)及びオキサニリドなど)
でもよい。
【0096】
使用される別の添加剤は、
a)レベリング剤(湿潤剤)、例えば、ポリアクリレート、シリコーン、ハイブリッドポリマー(例えば、シリコーン処理されたアクリレート)(これらは、表面張力を調整することで知られる。)及び/又は
b)帯電防止剤
c)チキソトロピック剤
d)増粘剤及び/又は
e)殺生物剤
でもよい。
【0097】
20%〜70重量%のマトリックスポリマー、20%〜50重量%の書込モノマー、0.001%〜5重量%の光開始剤、0%〜2重量%の触媒、0.001%〜1重量%のフリーラジカル安定剤を含み、10%〜30重量%のフルオロウレタンを含んでもよく、0.1%〜5重量%の別の添加剤を含んでもよいフォトポリマー配合物を使用することが特に好ましい。
【0098】
本発明は、特に、本発明のフォトポリマー配合物を含むフィルムの形態のホログラフィック媒体、又は本発明のフォトポリマー配合物を使用することにより得ることができるホログラフィック媒体も提供する。本発明は、その上さらに、ホログラフィック媒体の製造における本発明のフォトポリマー配合物の使用を提供する。
【0099】
本発明によるホログラフィック媒体の1つの好ましい実施形態において、少なくとも1つのホログラムがその中に露光されている。
【0100】
とりわけ、ホログラムは、反射型、透過型、インライン、オフアクシス、全開口トランスファー、白色光透過型、デニシューク、オフアクシス反射型又はエッジリットホログラム、そうでなければホログラフィックステレオグラム、好ましくは反射型、透過型又はエッジリットホログラムでもよい。
【0101】
ホログラムの可能な光学的機能は、レンズ、ミラー、偏向ミラー、フィルター、拡散レンズ、指向性拡散素子(directed diffusion element)、回折素子、ライトガイド、導波管、映写レンズ及び/又はマスクなどの光学素子の光学的機能に対応する。さらに、複数のこのような光学的機能は、例えば、光の入射にしたがって光が異なる方向に曲げられるように、このようなホログラムにおいて組み合わせることができる。例えば、このような装置を用いて、別の補助器具、例えば、偏光器又はシャッター眼鏡なしで、自動車用ヘッドアップディスプレイ又はヘッドマウントディスプレイにおいて使用する、立体感のある視覚的印象を受けることができる裸眼立体電子ディスプレイ又はホログラフィック電子ディスプレイを作ることができる。
【0102】
これらの光学素子は、しばしば、ホログラムが露光された方法及びホログラムの寸法にしたがって、特定の周波数選択性を有する。このことは、LED又はレーザー光などの単色光源が使用されるとき特に重要である。例えば、周波数選択的に光を曲げ、同時にフルカラーディスプレイを可能にするためには、補色(RGB)あたり1つのホログラムが必要である。したがって、特定のディスプレイ装置において、いくつかのホログラムが媒体内で重ねられて露光されなければならない。
【0103】
さらに、本発明の媒体により、例えば、個人肖像、機密文書の生体認証表示のためのホログラフィー像又はホログラフィック表示、あるいは、一般的に、広告用の画像又は画像構造、セキュリティーラベル、ブランド保護、ブランディング、ラベル、デザイン要素、装飾、イラスト、コレクション用カード、写真など、ならびに上で詳しく述べた製品との組み合わせを含めた、デジタルデータを表すことができる画像のホログラフィー像又はホログラフィック表示を生成することもできる。ホログラフィー像は三次元像の印象を有することができるが、光を当てる光源(移動光源を含む。)などからの角度にしたがって、動画像、短編映画又はいくつかの様々な対象物を表現してもよい。この様々な可能性のある設計のために、ホログラム、特に体積ホログラムは、前述の用途において魅力的な技術的解決策となる。多種多様な異なる露光方法(シフト多重、空間多重又は角度多重)を用いて、このようなホログラムをデジタルデータの記憶のために使用することもできる。
【0104】
本発明は、本発明のフォトポリマー配合物を使用することによりホログラフィック媒体を製造するための工程も提供する。
【0105】
したがって、フォトポリマー配合物は特に、ホログラフィック媒体の製造のためにフィルムの形態で使用することができる。この場合、可視スペクトルの範囲内の光に対して透明(400〜780nmの波長帯で85%を超える透過率。)な材料又は複合材料のプライは、キャリヤー基材として片側又は両側がコーティングされ、カバー層が(1又は複数の)フォトポリマープライに施されてもよい。
【0106】
キャリヤー基材に好ましい材料又は複合材料は、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースアセテート、セルロース水和物、ニトロセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、ポリエポキシド、ポリスルホン、セルローストリアセテート(CTA)、ポリアミド(PA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール又はポリジシクロペンタジエンあるいはこれらの混合物に基づく。これらは、より好ましくは、PC、PET、PA、PMMA及びCTAに基づく。複合材料は、フィルムラミネート又は共押出品でもよい。好ましい複合材料は、スキームA/B、A/B/A又はA/B/Cのうちの1つにしたがって形成された二重及び三重のフィルムである。PC/PET、PET/PC/PET及びPC/TPU(TPU=熱可塑性ポリウレタン)が特に好ましい。
【0107】
キャリヤー基材の材料又は複合材料は、片側又は両側に、抗接着、帯電防止、疎水化又は親水化の仕上げが施されてもよい。述べた変更形態は、フォトポリマー層に向いている側で、フォトポリマープライを破壊せずにキャリヤー基材から引き離せるようにするという目的にかなう。フォトポリマープライから反対側のキャリヤー基材の改質は、例えば、ロールラミネータ、特にロール・ツー・ロール工程での加工の場合に存在する特定の機械的な要求を本発明の媒体が確実に満たすのに役立つ。
【0108】
本発明は同じく、本発明のホログラフィック媒体を含む光ディスプレイを提供する。
【0109】
このような光ディスプレイの例は、液晶、有機発光ダイオード(OLED)、LEDディスプレイパネルに基づく画像化ディスプレイ、回折光選択に基づく微小電子機械システム(MEMS)、エレクトロウェッティングディスプレイ(E−インク)及びプラズマディスプレイスクリーンである。この種類の光ディスプレイは、裸眼立体及び/又はホログラフィックディスプレイ、透過型及び反射型映写スクリーン、プライバシーフィルター及び二方向マルチユーザースクリーンのための切換可能な制限された発光特性を持つディスプレイ、仮想ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイ、イルミネーションシンボル、警告ランプ、信号ランプ、フラッドライト及びディスプレイパネルでもよい。
【0110】
さらに、本発明はまた、チップカード、身分証明書類、3D画像、製品保護ラベル、ラベル、銀行券又はホログラフィック光学素子の製造のための、特に表示装置のための本発明のホログラフィック媒体の使用も提供する。
【0111】
最後に、同様に、式(I)
【化6】
【0112】
(式中、アリールは、置換芳香族基、又は非置換フェニルを除く非置換芳香族基であり、及び
及びRはそれぞれ独立して、式(II)又は式(III)
【化7】
【0113】
(式中、
は、最大6個の炭素原子を有し、酸素原子及び/又は硫黄原子を含んでもよい有機基であり、
は、−H、−CHの群から選択される基である。)の基である。)の芳香族グリコールエーテルである。
【0114】
本明細書において、アリールが、メチルフェニル、エチルフェニル、チオメチルフェニル、メトキシフェニル、ビフェニル及びナフチルの群から選択される基であり、且つ/又は、それぞれの場合において、R基及びR基のうちの1つが式(II)の基であり、且つ、それぞれの場合において、R基及びR基のうちの1つが式(III)の基であり、ここで、Rが特に−CHCH−基でもよいとき特に好ましい。
【0115】
アリール基が、n−アルキル、分岐鎖アルキル、アルキルオキシ、フェニル、ベンジル、フェニルアルキル、ナフチル、メチルチイル、エチルチイル、アルキルチイル、アルキルチオアルキル、フェノキシ、フェニルチイル、ナフチルチイル(napthylthiyl)、フッ素、塩素、臭素及び/又はヨウ素の群から選択される1〜5個、好ましくは1〜3個の同一又は異なる置換基で、好ましくは、メチル、エチル、チオメチル、メトキシ、フェニルの群から選択される1〜3個の同一又は異なる置換基で置換されるときも同様に好ましい。
【0116】
[実施例]
本発明を、実施例により以下で詳細に説明する。
【0117】
図面は以下のことを示す。
【0118】
図1は、λ=532nm(DPSSレーザー=ダイオード励起固体レーザー)におけるホログラフィック媒体試験機(HMT)の幾何配置を示す。
【0119】
図2は、角度離調ΔΩに対してプロットした測定された回折効率ηを丸で、Kogelnik理論へのあてはめを実線で示す。図は実施例4.4を示す。
【0120】
図3は、角度離調ΔΩに対してプロットした測定された回折効率ηを丸で、Kogelnik理論へのあてはめを実線で示す。図は実施例4.8を示す。
【0121】
試験方法:
粘度の測定:
粘度は、Physica MCR 51(Anton Paar製)粘度計を用いて測定した。この目的のために、サンプルを平衡させ、ボールを懸濁させた(低粘度η<10000mPasの場合:23℃、ボール直径25mm(CP−25)、高粘度η>10000mPasの場合:50℃、ボール直径60mm(CP−60))。約0.5〜1gの生成物をプレートの上に置き、生成物でボールが完全に濡れるように、ボールが落ちるようにした。過剰な生成物をふき取った。せん断速度(低粘度では約500 1/s、高粘度では約100 1/s)は測定器により自動的に設定された。それぞれの場合において20回の測定を行い、平均を求めた。
【0122】
屈折率の測定:
高粘度で固体の生成物については、透過スペクトル及び反射スペクトルからサンプルの波長に対する屈折率nを得ることにより、波長589nmで屈折率を求めた。この目的のために、厚さ約100〜300mmのサンプルのフィルムを5重量パーセントの酢酸エチル溶液から石英ガラススライド上に吐出した。この層集合体の透過及び反射スペクトルをSTEAG ETA−Optik製CD−Measurement System ETA−RT分光装置を用いて測定し、次に、n個の層厚及びスペクトルプロファイルを測定された透過スペクトル及び反射スペクトルにあてはめた。これは、分光装置の内部ソフトウェアを用いて行い、さらに石英ガラス基板のn個のデータ(ブランク測定において事前に測定した。)を必要とした。
【0123】
液体生成物については、アッベ屈折計を用いて589nmで屈折率を測定した。この測定は、測定器の洗浄した測定プリズム上に生成物を3滴落とし、照明プリズムを折りたたみ、次に、2分以内で20℃まで平衡させて行った。続いて、観察視野内で、明/暗の境界の位置を屈折計の十字線に正確に合わせた。設定値の変動がなくなったら、測定器で屈折率を小数第4位まで読み取った。二重測定を行った。最大0.0002目盛の差まで許容した。
【0124】
ヘイズ値の測定
ヘイズ値はASTM D 1003にしたがって測定した。ヘイズ値は透過する光のパーセントであり、光波から平均で2.5°を超えてずれる。ヘイズ値を測定するため、ガラス表面の指紋及び汚れによる結果の歪みを避けるために、測定前にホログラフィック試験片の外側を洗浄した。次に、試験片を分析するため、BYK−Gardner Haze−Gard Plus測定器に挿入した。「透過配置におけるツインビーム干渉によるホログラフィック媒体のホログラフィック特性DE及びΔnの測定」のセクションで以下で説明するように、Kogelnikによる理論上のブラッグ曲線のシミュレーションにおいて試験片の層厚を測定した。
【0125】
書込モノマーの溶解時間の測定
1.47gのポリオール成分を錠剤管に導入し、スターラーバーを加え、錠剤管をマグネチックスターラーの上に配置した。続いて、撹拌しながら試験される書込モノマー1.00gを加え、目視で透明で均質な溶液が生成するのにかかる時間を測定した。
【0126】
イソシアネート含有量
報告したNCO値(イソシアネート含有量)は、DIN EN ISO 11909にしたがって測定した。
【0127】
反応混合物中のNCO基の完全な変換、すなわち、これらがないことをIR分光法により検出した。したがって、反応混合物のIRスペクトルにNCOのバンド(2261cm−1)が見られないとき、完全な変換を仮定した。
【0128】
固形分
未塗装のブリキ缶のふた、及びペーパークリップを用いて風袋重量を確認した。次に、分析されるサンプル約1gを秤量し、次に、適切に曲げたペーパークリップと共にブリキ缶のふたの中に均一に分布させた。ペーパークリップは測定のためにサンプル内に残した。出発重量を測定し、次に、実験室用オーブン内で組立品を125℃で1時間加熱し、次に、最終重量を測定した。固形分は以下の式により求めた:最終重量[g]*100/出発重量[g]=固体の重量%。
【0129】
透過配置におけるツインビーム干渉によるホログラフィック媒体のホログラフィック特性DE及びΔnの測定
生成された媒体のホログラフィック特性について、図1による測定装置により、以下の通り試験した:
図1は、媒体の回折効率(DE)を測定したホログラフィック試験装置を以下のラベルと共に示す:M=ミラー、S=シャッター、SF=空間フィルター、CL=コリメータレンズ、λ/2=λ/2板、PBS=偏光感受性ビームスプリッター、D=検出器、I=虹彩絞り、α=−22.3°、β=22.3°は、サンプルの外側(媒体の外側)で測定されるコヒーレントなビームの入射角である。RD=ターンテーブルの参照方向。
【0130】
空間フィルター(SF)をコリメーションレンズ(CL)と共に利用して、DPSSレーザー(発光波長532nm)のビームを平行で均一なビームに変換した。信号及び参照波の最終的な断面は、虹彩絞り(I)によって固定される。虹彩絞りの開口部の直径は0.4cmである。偏光依存ビームスプリッター(PBS)は、レーザービームを、2つのコヒーレントな同一偏光のビームに分ける。λ/2板により、参照波の出力は2.0mWに、信号波の出力は2.0mWに設定した。出力は、サンプルを除いた半導体検出器(D)を用いて求めた。参照波の入射角(α)は−22.3°である;信号波の入射角(β)は22.3°である。角度はビーム方向に垂直なサンプルから進んで測定される。したがって、図1によれば、αは負号を、βは正号を有する。サンプル(媒体)の位置において、2つの重なり合うビームの干渉場は、サンプルに当たる2つのビームの角の二等分線に平行な明暗の縞(strip)のパターンを生じさせた(透過型ホログラム)。格子周期とも呼ばれる縞の間隔Λは、媒体において、〜700nmである(媒体の屈折率は〜1.504と仮定)。
【0131】
以下のようにして、ホログラムを媒体中に記録した:
●露光時間tの間、両方のシャッター(S)を開く。
【0132】
●その後、シャッター(S)を閉じて、媒体のまだ未重合の書込モノマーを5分間拡散させる。
【0133】
次に、記録されたホログラムを以下のようにして再生した。信号波のシャッターは閉じたままであった。参照波のシャッターを閉じた。参照波の虹彩絞りを直径1mm未満まで閉じた。これにより、媒体のすべての回転角(Ω)に対して、ビームが常に完全にあらかじめ記録されたホログラム内にあるようにした。ターンテーブルは、コンピュータ制御で、ΩminからΩmaxの角度範囲を角度ステップ幅0.05°で掃引した。Ωは、ターンテーブルの参照方向に垂直なサンプルから測定される。ターンテーブルの参照方向(Ω=0)は、ホログラムの記録時に、参照波及び信号波の入射角が同じ絶対値、すなわち、α=−22.3°及びβ=22.3°を持つときに得られる。通常、対称な透過型ホログラム(α=−β)を書き込む(記録する)過程の干渉場において以下があてはまる:
α=θ
θは、媒体の外側の実験室系における半角である。したがって、この場合、θ=−22.3°である。回転Ωの角度に対するそれぞれの設定において、ゼロ次の透過ビームの出力を対応する検出器Dにより、1次の回折ビームの出力を検出器Dにより測定した。回折効率は、角度Ωのそれぞれの設定において、以下の商として計算した:
【数1】
【0134】
は、回折ビームの検出器の出力であり、Pは、透過ビームの検出器の出力である。
【0135】
上述の工程により、ブラッグ曲線(回折効率ηを、記録されたホログラムの回転角Ω□の関数として表す。)を測定し、コンピュータに保存した。さらに、ゼロ次に透過した強度も回転角Ωに対して記録し、コンピュータに保存した。
【0136】
ホログラムの中心の回折効率(DE=η0)をΩ=0において求めた。
【0137】
ここで、屈折率コントラストΔn及びフォトポリマー層の厚さdを、結合波理論(H. Kogelnik,The Bell System Technical Journal,Volume 48,November 1969,Number 9 p.2909−2947参照。)により、測定されたブラッグ曲線にあてはめた。評価工程を以下で説明する:
透過型ホログラムのブラッグ曲線η(Ω)については、Kogelnikによれば:
【数2】
【0138】
ここで:
【数3】
【0139】
ホログラムの再生において、上で同様に説明の通り:
【数4】
【0140】
ブラッグ条件下、「位相緩和(dephasing)」DP=0。それに対応して次のようになる:
α=θ
sin(α)=n・sin(α)
νは格子厚さ、ξは記録された屈折率格子の離調パラメータである。nは、フォトポリマーの平均屈折率であり、1.504に設定した。λは、真空におけるレーザー光の波長である。
【0141】
中心の回折効率(DE=η0)は、ξ=0のとき、次のように計算される:
【数5】
【0142】
回折効率の測定データ及び理論上のブラッグ曲線は、図2及び図3に示す通り、回転Ωの角度に対してプロットされている。
【0143】
DEは既知なので、理論上のブラッグ曲線の形状は、Kogelnikによれば、フォトポリマー層の厚さdによってのみ求められる。DEの測定値及び理論値が常に一致するように、所与の厚さdに対してDEによりΔnを補正する。したがって、最初の二次極小の角度位置及び理論上のブラッグ曲線の最初の二次極大の高さが、最初の二次極小の角度位置及び測定されるブラッグ曲線の最初の二次極大の高さと一致するまでdは調整される。
【0144】
図2及び図3は、結合波理論(Kogelnik理論とも呼ばれる。)により実験データにあてはめた、理論的に計算したブラッグ曲線ηを実線で示し、比較のために、回転Ωの角度に対してプロットした、実験的に求めた回折効率(円記号)を示す。
【0145】
Δnが飽和値に達する、ホログラムを記録する過程で入射レーザービームの平均エネルギー照射量を求めるために、配合物について、この手順を異なる露光時間tで異なる媒体に対しておそらく数回繰り返した。平均エネルギー照射量Eは、角度α及びβ(P=2.00mWでの参照波及びP=2.00mWでの信号波)、露光時間tならびに虹彩絞りの直径(0.4cm)に対応する2つの成分ビームの出力から以下の通り計算される:
【数6】
【0146】
化学薬品:
それぞれの場合において、既知の場合、CAS番号を角かっこ内に記載した。
【0147】
m−クレゾール [108−39−4]−ABCR GmbH&Co KG(カールスルーエ、ドイツ)
3−エチルフェノール [620−17−7]−Fluka/Sigma−Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)
3−(メチルチオ)フェノール [1073−29−6]−ABCR GmbH&Co KG(カールスルーエ、ドイツ)
4−(メチルチオ)フェノール [1073−72−9]−Sigma−Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)
炭酸カリウム Sigma−Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)
エピブロモヒドリン [3132−64−7]−Sigma−Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)
フェニルグリシジルエーテル Denacol EX141;Nagase ChemteX Corporation(大阪、日本)
トリフェニルホスフィン [603−35−0]ABCR GmbH&Co KG(カールスルーエ、ドイツ)
アクリル酸 [79−10−7]Acros Organics(ヘール、ベルギー)
メタクリル酸 [79−41−4]Acros Organics(ヘール、ベルギー)
Ionol [128−37−0]Merck KGaA(ダルムシュタット、ドイツ)
2−[(ビフェニル−2−イルオキシ)メチル]オキシラン Denacol EX142;Nagase ChemteX Corporation(大阪、日本)
2−[(2−メチルフェノキシ)メチル]オキシラン [2210−79−9]Sigma−Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)
2−イソシアナトエチルアクリレート [13641−96−8]−Karenz(登録商標)AOI,SHOWA DENKO K.K.,Fine Chemicals Group,Specialty Chemicals Department,Chemicals Division(日本)
2−イソシアナトエチルメタクリレート [30674−80−7]−Karenz(登録商標)MOI、SHOWA DENKO K.K.,Fine Chemicals Group,Specialty Chemicals Department,Chemicals Division(日本)
1,2−シクロヘキサンアミノ−N,N’−ビス(3,5−ジ−t−ブチルサリチリデン)コバルト(III)p−トルエンスルホン酸一水和物 [672306−06−8]ABCR GmbH&Co KG(カールスルーエ、ドイツ)
1−イソシアナト−3−(メチルスルファニル)ベンゼン [28479−19−8]−Sigma−Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)
トリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェート Desmodur(登録商標)RFE(Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、ドイツ)の製品)
ジブチルスズジラウレート [77−58−7]−ウレタン化触媒Desmorapid Z、Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、ドイツ)
Fomrez(登録商標)UL 28 ウレタン化触媒(Momentive Performance Chemicals(米国コネティカット州ウィルトン)の商品)。
【0148】
Addocat(登録商標)SO スズベースの触媒(RheinChemie(マンハイム、ドイツ)製)
Desmodur(登録商標)N 3900 Bayer MaterialScience AG(レーバークーゼン、DE)の製品、ヘキサンジイソシアネートベースのポリイソシアネート、イミノオキサジアジンジオンの割合は少なくとも30%、NCO含有量:23.5%。
【0149】
CGI−909 テトラブチルアンモニウムトリス(3−クロロ−4−メチルフェニル)(ヘキシル)ボラート[1147315−11−4]はBASF SE(以前はCiba Inc.)の製品である。
【0150】
トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート [28679−16−5]−ABCR GmbH&Co KG(カールスルーエ、ドイツ)
1H,1H−7H−パーフルオロヘプタン−1−オール [335−99−9]−ABCR GmbH&Co KG(カールスルーエ、ドイツ)
クリスタルバイオレット [548−62−9]Sigma−Aldrich Chemie GmbH(シュタインハイム、ドイツ)
Irgacure(登録商標)250 [344562−80−7]、ヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−、ヘキサフルオロホスファート(1−)BASF SEの製品
本発明の書込モノマー:
オキシランを調製するための一般的な方法(実施例1.5〜1.7;使用される他のオキシランは市販されている)
初めに、1当量のフェノール及び2.4当量の炭酸カリウムを2−ブタノンに入れた。次に、3当量のエピブロモヒドリンを室温で徐々に加えた。2−ブタノンの量は、総量の50重量パーセントに対応するものであった。フェノールが2−ブタノンに十分に溶解したか事前に確認した。次に、炭酸カリウム懸濁液を還流下、沸騰させた。
【0151】
H NMRスペクトロスコピー(時間の記載については下記参照。)により確認して、完全に変換されたら、炭酸カリウムを濾過して取り出し、混合物をロータリーエバポレーターにて濃縮した。これにより、さらにワークアップを行わずに液体の透明な生成物を得た。これらの一部は有色であった。使用したフェノールに基づく収率は定量的であった。
【0152】
[実施例1.5]2−[(3−メチルフェノキシ)メチル]オキシラン
反応物: 11.9g m−クレゾール
45.2g エピブロモヒドリン
36.4g 炭酸カリウム
93.5g 2−ブタノン
条件: 86℃で16.5時間及び70℃で49.5時間
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.18(t,1H),6.77(d,1H),6.68−6.75(m,2H),4.18(dd,1H),3.95(dd,1H),3.24(m,1H),2.89(dd,1H),2.73(dd,1H),2.32(s,3H)。
【0153】
[実施例1.6]2−[(3−エチルフェノキシ)メチル]オキシラン
反応物: 12.2g 3−エチルフェノール
41.1g エピブロモヒドリン
33.1g 炭酸カリウム
86.4g 2−ブタノン
条件: 86℃で19.3時間及び70℃で50時間
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.40(t,1H),6.80(dd,1H),6.77(m,2H),6.70(dd,1H),4.40(dd,1H),3.95(dd,1H),3.35(m,1H),2.85(dd,1H),2.75(dd,1H),2.65(q,2H),1.25(t,3H)。
【0154】
[実施例1.7]2−{[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]メチル}オキシラン
反応物: 15.4g 4−(メチルチオ)フェノール
45.2g エピブロモヒドリン
36.4g 炭酸カリウム
97.1g 2−ブタノン
条件: 86℃で16.3時間及び70℃で50.2時間
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.25(AA’ BB’,2H),6.88(AA’ BB’,2H),4.20(dd,1H),3.90(dd,1H),3.40(m,1H),2.85(dd,1H),2.73(dd,1H),2.40(s,3H)。
【0155】
(メタ)アクリル酸−オキシラン付加生成物を調製するための一般的な方法(実施例2.1〜2.11)
初めに、オキシラン、触媒、安定剤及び(メタ)アクリル酸を、ガラス製精密撹拌機及び撹拌機モーター、ならびに乾燥管を備えた三つ口フラスコに入れた。混合物を90℃まで加熱し、H NMRスペクトルにおいて、95%を超えるオキシラン基が変換されたことが明らかになるか、又はオキシラン基がもはや検出できなくなるまでこの温度で撹拌を続けた。(MC=主成分、SC=二次成分)
[実施例2.1+2.2]2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート及び1−ヒドロキシ−3−フェノキシプロパン−2−イルアクリレート(約85:15)の混合物
反応物: 75.3g フェニルグリシジルエーテル(Denacol EX141)
328mg トリフェニルホスフィン
36.0 アクリル酸
1.1mg ionol
条件: 反応時間 37時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0156】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.23−7.32(m,2H),6.92−7.00(m,1H),6.84−6.92(m,2H),6.46(d,1H),6.16(dd,1H),5.97(d,1H),5.28(p,1H from SC),3.9−4.45(m,5H),2.72(t,1H from SC,OH),2.60(s,broad,1H,OH)。
【0157】
[実施例2.3]2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート及び1−ヒドロキシ−3−フェノキシプロパン−2−イルメタクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 37.7g フェニルグリシジルエーテル(Denacol EX141)
164mg トリフェニルホスフィン
21.5g メタクリル酸
0.6mg ionol
条件: 反応時間 34.5時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0158】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.25−7.32(m,2H),6.96(t,1H),6.91(d,2H),6.14(s,1H),5.60(s,1H),5.28(p,1H from SC),3.35(m,2H from MC),4.29(p,1H from MC),4.20(d,2H from SC),4.0−4.1(m,2H from MC),3.94(m,2H from SC),2.69(s,broad,1H,OH),1.95(s,3H)。
【0159】
[実施例2.4]2−ヒドロキシ−3−(2−メチルフェノキシ)プロピルアクリレート及び1−ヒドロキシ−3−(2−メチルフェノキシ)プロパン−2−イルアクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 16.4g 2−[(2−メチルフェノキシ)メチル]オキシラン
66mg トリフェニルホスフィン
7.2g アクリル酸
11.8mg ionol
条件: 反応時間 17時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0160】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.1−7.2(m,2H),6.88(t,1H),6.80(d,1H),6.44(d,1H),6.18(dd,1H),5.88(d,1H),5.32(p,1H from SC),4.35−4.45(m,2H from MC),4.29(p,1H from MC),4.19(d,2H from SC),4.0−4.1(m,2H from MC),3.96(m,2H from SC),2.93(s,broad,1H,OH),2.22(s,3H from MC),2.20(s,3H,from SC)。
【0161】
[実施例2.5]2−ヒドロキシ−3−(3−メチルフェノキシ)プロピルアクリレート及び1−ヒドロキシ−3−(3−メチルフェノキシ)プロパン−2−イルアクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 16.5g 実施例1.5
66mg トリフェニルホスフィン
7.3g アクリル酸
11.9mg ionol
条件: 反応時間 17時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0162】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.13−7.20(t,1H),6.78(d,1H),6.68−6.75(m,2H),6.45(d,1H),6.18(dd,1H),5.87(d,1H),5.28(p,1H from SC),4.3−4.4(m,2H from MC),4.28(p,1H from MC),4.15−4.25(m,2H from SC),3.98−4.08(m,2H from MC),3.94(m,2H from SC),2.90(s,broad,1H,OH),2.30(s,3H)。
【0163】
[実施例2.6]2−ヒドロキシ−3−(3−エチルフェノキシ)プロピルアクリレート及び1−ヒドロキシ−3−(3−エチルフェノキシ)プロパン−2−イルアクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 15.3g 実施例1.6
56mg トリフェニルホスフィン
6.2g アクリル酸
10.8mg ionol
条件: 反応時間 17時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0164】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.13−7.20(m,1H),6.80(d,1H),6.75(s,1H),6.71(dd,1H),6.45(d,1H),6.18(dd,1H),5.85(d,1H),5.28(p,1H from SC),4.3−4.4(m,2H from MC),4.25(p,1H from MC),4.19(d,2H from SC),3.99−4.07(m,2H from MC),3.93(d,2H from SC),3.35(s,broad,1H,OH),2.60(q,2H),1.21(t,3H)。
【0165】
[実施例2.7]2−ヒドロキシ−3−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]プロピルアクリレート及び1−ヒドロキシ−3−[4−(メチルスルファニル)フェノキシ]プロパン−2−イルアクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 35.7g 実施例1.7
119mg トリフェニルホスフィン
13.1g アクリル酸
24.4mg ionol
条件: 反応時間 70℃で39時間
GC−MS(EI) 保持時間(GCにおいて、アセトニトリル溶液から主成分に対して10%を超えて現れるすべての二次成分のみ述べる。):
1.100%:17.59分(MS−EI:m/e=55、125、129、140、268):異性体の主な生成物(M=268)
2.17.8%:3.03分(MS−EI:m/e=27、45、55、72):アクリル酸(M=72)
3.11.2%:21.30分(MS−EI:m/e=55、57、115、129、353、382):3−({4−[3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシ]フェニル}スルファニル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート(M=382)
[実施例2.8]3−(ビフェニル−2−イルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び1−(ビフェニル−2−イルオキシ)−3−ヒドロキシプロパン−2−イルアクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 191.2g 2−[(ビフェニル−2−イルオキシ)メチル]オキシラン(Denacol EX142)
0.525g トリフェニルホスフィン
57.6g アクリル酸
2.5mg ionol
条件: 反応時間 90℃で24.5時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0166】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.45(d,2H),7.38(t,2H),7.2−7.35(m,3H),7.15(t,2H),6.96(d,2H),6.37(dd,1H),6.13(dd,1H),5.81(d,1H),5.28(p,1H from SC),4.37(t,1H from SC,OH),4.28−4.35(m,2H),4.15(m,2H from MC),4.13(p,1H),3.95−4.06(m,2H),3.75(m,2H from SC),2.74(s,broad,1H,OH)。
【0167】
GC−MS 1.1% アクリル酸、7.8% 2−[(ビフェニル−2−イルオキシ)メチル]オキシラン(反応物)、1.5% 反応物+HCl、2.7% 反応物+H2O、73.2% 生成物(異性体)、2.2% 生成物+アクリル酸、2.7% 反応物+ビフェニルフェノール、3.3% 生成物+反応物
[実施例2.9]2−ヒドロキシ−3−(1−ナフチルオキシ)プロピルアクリレート及び1−ヒドロキシ−3−(1−ナフチルオキシ)プロパン−2−イルアクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 46.0g 2−[(1−ナフチルオキシ)メチル]オキシラン
0.151g トリフェニルホスフィン
16.6g アクリル酸
0.6mg ionol
条件: 反応時間 22.7時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0168】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=8.18−8.25(m,1H),7.73−7.80(m,1H),7.38−7.49(m,3H),7.29−7.35(2x t,1H),6.76(d,1H),6.44(2x d,1H),6.15 (2x dd,1H),5.82(d,1H),5.43(p,1H from SC),4.35−4.50(m,3H from MC),4.30(d,2H from SC),4.13−4.18(m,2H from MC),3.98(d,2H from SC),3.32(s,broad,1H,OH),2.70(t,1H from SC,OH)。
【0169】
[実施例2.10]2−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロピルアクリレート及び1−ヒドロキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロパン−2−イルアクリレートの混合物(約85:15)
反応物: 10.8g 1,2−エポキシ−3−(2−メトキシフェノキシ)プロパン
0.039g トリフェニルホスフィン
4.3g アクリル酸
7.6mg ionol
条件: 反応時間 29.3時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0170】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=6.82−7.01(m,4H),6.44(2x d,1H),6.15(2x dd,1H),5.82(d,1H),5.28(p,1H from SC),4.30−4.42(m,2H from MC),4.27(m,1H from MC),4.12(dd,1H from MC,BX),4.04(dd,1H from MC,AX),3.98(d,2H from SC),3.78−3.85(m,3H,O−Me from MC and from SC+2H from SC),3.21(s,broad,1H,OH)。
【0171】
[実施例2.11]2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート
反応物: 8.3g フェニルグリシジルエーテル
0.030g 1,2−シクロヘキサンアミノ−N,N’−ビス(3,5−ジ−t−ブチルサリチリデン)コバルト(III)p−トルエンスルホン酸一水和物
3.9g アクリル酸
0.1mg ionol
条件: 反応時間 室温で40時間
ワークアップ:5gの未精製の生成物を酢酸ブチル及びトルエンの混合物25gで希釈し、次に、重力カラム(gravity column)によりコバルト触媒を除去し、0.005mgのionolを加えて、ロータリーエバポレーターにて溶媒混合物を除去した。
【0172】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.28(m,2H),6.98(tt,1H),6.92(dd,2H),6.46(dd,1H),6.17(dd,1H),5.87(dd,1H),4.32−4.42(m,2H),4.28(m,1H),4.00−4.09(m,2H),2.65(d,1H,OH)。NMRによる純度>92%。
【0173】
本発明の芳香族グリコールエーテル書込モノマーを調製するための一般的な方法(実施例3.1〜3.11)
初めに、前駆体(実施例2.1〜2.11)、ジブチルスズジラウレート及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを、ガラス製精密撹拌機及び撹拌機モーター、ガス入口及び乾燥管を備えた三つ口フラスコに入れた。続いて、混合物を60℃まで加熱し、空気をゆっくり流し、撹拌しながら2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートを約半時間以内で滴下した。IRスペクトルにもはやNCOのバンド(2261cm−1)が観察できなくなるまで撹拌を続けた。表1は、本発明の書込モノマーの反応条件の詳細及び特性評価結果を示す:
【表1】
【0174】
実施例3.1
【化9】
【0175】
実施例3.2
【化10】
【0176】
実施例3.3
【化11】
【0177】
実施例3.4
【化12】
【0178】
実施例3.5
【化13】
【0179】
実施例3.6
【化14】
【0180】
実施例3.7
【化15】
【0181】
実施例3.8
【化16】
【0182】
実施例3.9
【化17】
【0183】
実施例3.10
【化18】
【0184】
実施例3.11
[比較例C1]:ホスホロチオイルトリス(オキシベンゼン−4,1−ジイルカルバモイルオキシエタン−2,1−ジイル)トリスアクリレート[1072455−04−9]
初めに、500mL丸底フラスコに、0.1gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、0.05gのジブチルスズジラウレート及び213.07gのトリス(p−イソシアナトフェニル)チオホスフェートの27%酢酸エチル溶液を入れ、これを60℃まで加熱した。続いて、42.37gの2−ヒドロキシエチルアクリレートを滴下し、イソシアネート含有量が0.1%未満に低下するまで混合物をそのまま60℃で保持した。この後に冷却し、減圧下で酢酸エチルを完全に除去した。生成物が半結晶性の固体として得られた。得られた生成物は、n20=1.5430(589nm)であった。
【0185】
[比較例C2]:6,13−ビス[(ビフェニル−2−イルオキシ)メチル]−9,10−ジメチル−4,15,20−トリオキソ−5,14,19−トリオキサ−8,11−ジチア−3,16−ジアザドコサ−21−エン−1−イルアクリレート
比較例2は、ジチオール及びオキシランから第1の段階において調製される(国際公開第2012/020061号の実施例4a+bも参照)。
【0186】
初めに、オキシラン及び触媒を、ガラス製精密撹拌機及び撹拌機モーター、ならびに乾燥管を備えた三つ口フラスコに入れた。混合物を60〜80℃まで加熱し、次に、ジチオールを滴下した。続いて、H NMRスペクトルにおいて、95%を超えるオキシラン基が変換されたことが明らかになるか、又はオキシラン基がもはや検出できなくなるまで指定の温度で撹拌を続けた。
【0187】
段階1 3,3’−(ブタン−2,3−ジイルジスルファンジイル)ビス[1−(ビフェニル−2−イルオキシ)プロパン−2−オール]
反応物: 14.3g 2−[(ビフェニル−2−イルオキシ)メチル]オキシラン(Denacol EX142)
36mg 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド
3.7g 2,3−ブタンジチオール
条件: 滴下時、反応温度60℃、80℃、反応時間48.5時間
無色透明な粘性のある液体が得られた。
【0188】
H NMR(CDCl,400MHz):δ(1H)=7.45(d,2H),7.38(t,2H),7.32(m,3H),7.16(t,1H),6.97(d,1H),4.05(d,2H),3.95(m,1H),2.65(dd,1H),2.58(dd,1H),2.4−2.55(m,2H),1.5−1.65(m,2H)
段階2:6,13−ビス[(ビフェニル−2−イルオキシ)メチル]−9,10−ジメチル−4,15,20−トリオキソ−5,14,19−トリオキサ−8,11−ジチア−3,16−ジアザドコサ−21−エン−1−イルアクリレート
初めに、段階1、ジブチルスズジラウレート及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを、ガラス製精密撹拌機及び撹拌機モーター、ガス入口及び乾燥管を備えた三つ口フラスコに入れた。続いて、混合物を60℃まで加熱し、空気をゆっくり流し、2−イソシアナトエチルアクリレートを約半時間以内で滴下した。IRスペクトルにもはやNCOのバンド(2261cm−1)が観察できなくなるまで撹拌を続けた。
【0189】
反応物: 18.0g 段階1の生成物
8.5g 2−イソシアナトエチルアクリレート
13mg ジブチルスズジラウレート
3mg 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール
条件: 60℃で35分で滴下(発熱性!)、
次いで、60℃で反応時間16時間
透明で、ほぼ無色の高粘度の生成物が得られた。
【0190】
20 1.5840(589nm)
[比較例C3〜C5]:
比較例4〜6を国際公開第2012/020061号の比較例3と同様に生成し、これらの粘度を測定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0191】
ポリオール成分:
初めに、1Lフラスコに0.18gのAddocat(登録商標)SO、374.8gのε−カプロラクトン及び374.8gの二官能性ポリテトラヒドロフランポリエーテルポリオール(OH当量650g/mol)を入れ、これを120℃まで加熱し、固形分(不揮発性成分の部分)が99.5重量%又はそれ以上になるまでこの温度で保持した。続いて、混合物を冷却し、生成物がワックス状固体として得られた。
【0192】
ウレタンアクリレート1:2−({[3−(メチルスルファニル)フェニル]カルバモイル}オキシ)エチルプロパ−2−エノエート
初めに、100mL丸底フラスコに、0.02gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、0.01gのDesmorapid(登録商標)Z、11.7gの3−(メチルチオ)フェニルイソシアネートを入れ、混合物を60℃まで加熱した。続いて、8.2gの2−ヒドロキシエチルアクリレートを滴下し、イソシアネート含有量が0.1%未満に低下するまで混合物をそのまま60℃で保持した。この後に冷却した。生成物が無色の液体として得られた。
【0193】
フッ素化ウレタン:ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプチル)−(2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイル)ビスカルバメート
初めに、6L丸底フラスコに0.50gのDesmorapid Z及び1200gのトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを入れ、混合物を80℃まで加熱した。続いて、3798gの1H,1H,7H−パーフルオロヘプタン−1−オールを滴下し、イソシアネート含有量が0.1%未満に低下するまで混合物をそのまま80℃で保持した。この後に冷却した。生成物が無色のオイルとして得られた。
【0194】
本発明の媒体及び本発明でない媒体(試験片)の製造(実施例4.1〜4.11及び比較例C4.1〜C4.5)
2.940gの前述のポリオール成分を、2.000gのそれぞれの書込モノマー(実施例3.1〜3.11及び比較例C4.1〜C4.5)、2.000gの前述のウレタンアクリレート1、2.000gの前述のフッ素化ウレタン、0.15gのCGI 909、15mgのクリスタルバイオレット、15mgのIrgacure 250、サイズ9.18μmのガラスビーズ15mg及び0.517gのN−エチルピロリドンと混合し、それによって、透明な(場合によってはわずかに曇った)溶液を得た。この後に30℃まで冷却し、545mgのDesmodur(登録商標)N 3900を混ぜ合わせ、混合を再開した。この後、最後に6mgのFomrez UL 28を混ぜ合わせ、短時間の混合を再開した。次に、生じる液体混合物をガラススライド(Corning(NY 14831、米国)製、Micro slide plane:厚さ0.96〜1.06mm、75mm×50mm、タイプ:2947−75×50)に塗布し、その上を第2のガラススライドで覆った。この試験片を室温で12時間保管し、工程内で硬化させた。続いて、光を排除して媒体をパッケージ化した。
【0195】
本発明の媒体及び本発明でない媒体の物理的データの測定
ホログラフィック特性DE及びΔnの測定は、「試験方法」のセクションの上述の工程により行った。
【0196】
ヘイズ値の測定も同じく「試験方法」のセクションの上述の工程により行った。ただし、測定に先行して、初めに色がもはや目視で認知できなくなるまで、それぞれの媒体を周囲光の下、室温で約15〜30分間漂白したことを除く。
【0197】
測定結果を表3に示す。
【表3】
【0198】
表3から明らかなように、式(1)の書込モノマーを含む本発明の配合物からなるホログラフィック媒体は、透過型ホログラムにおいてΔn>0.02を超える同等又はよりよいホログラフィック性能を示した。さらに、本発明の実施例は、低ヘイズ値のホログラフィック媒体の製造に適しており、6μmを超える層厚で、5%未満のヘイズ値を示す。本発明の実施例4.1〜4.11において、書込モノマーは、溶媒を添加せずに5分よりもはるかに短い時間で速やかに、且つ容易に溶解するが、比較例C1〜C5の書込モノマーは、完全に溶解するのに、はるかに長い時間がかかる。したがって、フォトポリマー配合物の製造は、比較例において、はるかに時間がかかる。
図1
図2
図3