(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
商用交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、前記直流電圧を降圧することにより、検査対象の複数の2次電池を充電し、前記複数の2次電池の電圧を昇圧し、昇圧された電圧を交流電圧に変換して前記商用交流電源側に電力が回収可能に構成され、前記複数の2次電池を充放電することにより、前記複数の2次電池の電気的特性を検査する充放電検査装置であって、
前記商用交流電源と前記2次電池との間に設けられた複数の電圧変換器と、
前記商用交流電源、前記2次電池、前記複数の電圧変換器を接続する複数の配線と、を備え、
前記商用交流電源から前記複数の2次電池それぞれに至る複数の経路のすべてにおいて、前記複数の配線のうち、実効的な電圧レベルが最も大きな経路に使用される配線が、その他の経路に使用される配線より長い、充放電検査装置。
前記交直電圧変換器と前記第1の直流電圧変換器との間の配線の長さ、ならびに、前記第1の直流電圧変換器と前記第2の直流電圧変換器との間の配線の長さは、前記第2の直流電圧変換器と前記2次電池との間の配線の長さ、よりも長い、請求項2の充放電検査装置。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池、ニッケル水素電池をはじめとする繰り返し充電可能な2次電池が広く利用されている。2次電池はその出荷前に、充放電検査装置を用いて正常に機能するかが検査される。
【0003】
図1は、本発明者らが検討した比較技術に係る充放電検査装置の構成を示す図である。充放電検査装置2rは、検査対象の2次電池1を充電し、あるいは放電することにより、2次電池1の電気的特性が仕様を満たしているかを検査する。2次電池1は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが例示されるが、特に限定されない。
【0004】
充放電検査装置2は、フィルタ3、回生コンバータ4、双方向コンバータ6、昇降圧コンバータ8、2本の第1直流ラインLP1、LN1、2本の第2直流ラインLP2、LN2、を備える。
【0005】
フィルタ3は、EMC対策のために商用交流電源PSと回生コンバータ4の間に設けられ、ノイズを除去する。
【0006】
2次電池1に蓄えられたエネルギーを商用交流電源PSに放電する場合を想定し、回生コンバータ4は、入力側と出力側で双方向にエネルギーを授受できるように構成される。力行運転時には、コントローラ10aは、商用交流電源PSからの商用三相交流電圧V
U〜V
Wが整流されるように、各相のトランジスタMHU、MHU、MHV、MLU、MLV、MLWを制御する。その結果、2本の第1直流ラインLP1、LN1の間には、平滑用キャパシタC1によって平滑化された第1直流リンク電圧V1が発生する。200Vの商用交流電圧が供給される場合、第1直流リンク電圧V1は300V程度(≒282V)となる。
【0007】
また回生運転時には、コントローラ10aは、2本の第1直流ラインLP1、LN1の間に生ずる第1直流リンク電圧V1が三相交流電圧V
U〜V
Wに変換されるように、各相のトランジスタMHU、MHU、MHV、MLU、MLV、MLWを制御する。その結果、2次電池1からの電力が商用交流電源PS側に回収される。
【0008】
双方向コンバータ6もまた、1次側(P)と2次側(S)との間で双方向にエネルギーを授受できるように構成される。
【0009】
第1ブリッジ回路B1および第2ブリッジ回路B2を構成するスイッチは、コントローラ10bによって制御される。コントローラ10aと10bは、通信可能となっており、コントローラ10bは、上流のコントローラ10aからの指令にもとづいて動作し、また、コントローラ10aに対して、実際の電池電圧Vbat、充放電電流の測定値を送信する。
【0010】
絶縁トランスT1の1次巻線W1の巻数は、2次巻線W2の巻数より大きく、第2直流リンク電圧V2は、第1直流リンク電圧V1の数分の1倍〜1/10倍程度となる。たとえば、V2=25V〜50V(以下、50Vとする)程度に設定される。
【0011】
昇降圧コンバータ8は、第2直流リンク電圧V2を受け、それを降圧して2次電池1を充電する充電モード(力行運転)と、2次電池1の電池電圧Vbatを受け、それを昇圧して第2直流ラインLP2、LN2の間に供給する放電モード(回生運転)が切りかえ可能となっている。
【0012】
第1スイッチングトランジスタM1および第2スイッチングトランジスタM2は、コントローラ10bにより制御される。充電モードにおける昇降圧コンバータ8は、2本の第2直流ラインLP2、LN2側を入力、2次電池1を出力、第1スイッチングトランジスタM1をスイッチングトランジスタ、第2スイッチングトランジスタM2を同期整流トランジスタとする同期整流型の降圧コンバータとして動作する。放電モードにおける昇降圧コンバータ8は、2次電池1を入力、2本の第2直流ラインLP2、LN2を出力、第2スイッチングトランジスタM2をスイッチングトランジスタ、第1スイッチングトランジスタM1を同期整流トランジスタとする同期整流型の昇圧コンバータとして動作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
当初、本発明者らは、充放電検査装置2rにおいて、フィルタ3、回生コンバータ4、双方向コンバータ6をひとつの電源ラック20に収納し、昇降圧コンバータ8を、被試験デバイスである電池1の近傍に設置された別のラック(本体ラックという)22に収容することを検討した。
【0015】
2次電池1の試験に際しては、2次電池1および昇降圧コンバータ8の温度は一定に保たれることが望ましい。
図1の構成によれば、発熱が大きい電源ラック20を、温度に敏感な2次電池1および昇降圧コンバータ8を含む本体ラック22から遠ざけることができ、温度的に安定した運用が可能である。
図1の充放電検査装置2rでは、実際の運用下において、商用交流電源PSとフィルタ3の距離d1は3〜20m程度、回生コンバータ4〜双方向コンバータ6の距離d2は2m程度、双方向コンバータ6と昇降圧コンバータ8の距離d3は10〜30m程度、昇降圧コンバータ8と2次電池1の距離d4は1m程度となる。
【0016】
ここで充放電検査装置2rは、2次電池1を充電した後、2次電池1を放電するサイクルを繰り返す。省エネルギーの観点から、放電の際に2次電池1から放出される電力を、なるべく高効率で商用交流電源PS側に回収することが好ましい。
【0017】
本発明者らは、省エネ化の要請から
図1の充放電検査装置2rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0018】
いま、電力を伝送するケーブルが、単位長さ当り、抵抗成分Rを有するものと仮定すると、抵抗成分Rに電流Iが流れるときの、単位長さ当りの電力損失Pdは、Pd=R・I
2で与えられる。いま、ある一定電力Pc=I×Vを、抵抗成分Rの伝送ケーブルで伝送する場合、Pd=R・Pc
2/V
2であるから、電圧Vが小さいほど、単位長さ当りの電力損失Pdが大きくなる。
【0019】
図1の充放電検査装置2rについて検討すると、直流50Vの伝送距離d3が、直流300Vの伝送距離d2よりも長くなっている。つまり、単位長さ当りの電力損失が大きな経路の方が距離が長い構成となっているため、システム全体としての損失が大きいという問題がある。なお、以上の検討およびそこから導かれる知見を、当業者の一般的な認識ととらえてはならない。
【0020】
本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、省エネルギー化を実現可能な充放電検査装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のある態様は2次電池の充放電検査装置に関する。充放電検査装置は、(i)力行運転時に、商用交流電源からの交流電圧を直流電圧に変換し、直流電圧を降圧することにより、2次電池を充電し、(ii)回生運転時に、2次電池の電圧を昇圧し、昇圧された電圧を交流電圧に変換して商用交流電源側に回収可能に構成される。充放電検査装置は、商用交流電源から2次電池に至る経路のなかで、実効的な電圧レベルが最も大きな経路に使用される配線の長さが、その他の経路に使用される配線の長さより長く構成される。
【0022】
本発明の別の態様もまた、充放電検査装置である。充放電検査装置は、その1次側が三相商用交流電源と接続され、1次側の巻数が2次側の巻数より大きい三相交流トランスと、2本の直流ラインと、2本の直流ラインの間にブリッジ接続された複数のスイッチ、複数のスイッチそれぞれと並列に設けられた複数の整流素子、および2本の直流ライン間に設けられた平滑用キャパシタと、を有し、(1)複数のスイッチをスイッチングすることにより、もしくはすべてオフすることにより、三相交流トランスの2次側に生ずる三相交流電圧を整流・平滑化し、2本の直流ライン間に供給し、または(2)複数のスイッチをスイッチングさせることにより、2本の直流ライン間に生ずる直流電圧を三相交流電圧に変換し、三相交流トランスの2次側に供給する回生コンバータと、2本の直流ラインの間に設けられた第1、第2スイッチングトランジスタと、第1、第2スイッチングトランジスタの接続点と2次電池の間に設けられたインダクタと、を有し、充電状態において、2本の直流ラインを入力、2次電池を出力とする降圧コンバータとして動作し、放電状態において、2次電池を入力、2本の直流ラインを出力とする昇圧コンバータとして動作するよう構成された昇降圧コンバータと、三相商用交流電源と三相交流トランスの1次側の間を接続する第1配線と、三相交流トランスの2次側と回生コンバータの1次側の間を接続する第2配線と、回生コンバータの2次側と昇降圧コンバータの1次側の間を接続する第3配線と、昇降圧コンバータの2次側と2次電池の間を接続する第4配線と、を備える。第1配線の長さは、第2、第3、第4配線の長さより長い。
【0023】
三相交流トランス、回生コンバータおよび昇降圧コンバータは、単一のラックに収容されてもよい。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、充放電検査装置である。この充放電検査装置は、その1次側が三相商用交流電源と接続され、2本の第1直流ライン間にブリッジ接続された複数のスイッチ、複数のスイッチそれぞれと並列に設けられた複数の整流素子、および2本の第1直流ライン間に設けられた平滑用キャパシタと、を有し、(1)複数のスイッチをスイッチングすることにより、もしくはすべてオフすることにより、商用三相交流電圧を整流・平滑化し、2本の直流ライン間に供給し、(2)複数のスイッチをスイッチングさせることにより、2本の直流ライン間に生ずる直流電圧を三相交流電圧に変換し、商用交流電源に供給する回生コンバータと、絶縁トランスと、2本の第1直流ラインの間に設けられ、その出力が絶縁トランスの1次巻線に接続された第1ブリッジ回路と、2本の第2直流ラインの間に設けられ、その出力が絶縁トランスの2次巻線に接続された第2ブリッジ回路と、を含む双方向コンバータと、2本の第2直流ラインの間に設けられた第1、第2スイッチングトランジスタと、第1、第2スイッチングトランジスタの接続点と2次電池の間に設けられたインダクタと、を有し、充電状態において、2本の第2直流ラインを入力、2次電池を出力とする降圧コンバータとして動作し、放電状態において、2次電池を入力、2本の第2直流ラインを出力とする昇圧コンバータとして動作するよう構成された昇降圧コンバータと、三相商用交流電源と回生コンバータの1次側の間を接続する第1配線と、回生コンバータの2次側と双方向コンバータの1次側の間を接続する第2配線と、双方向コンバータの2次側と昇降圧コンバータの1次側の間を接続する第3配線と、昇降圧コンバータの2次側と2次電池の間を接続する第4配線と、を備える。第2配線の長さは、第3、第4配線の長さより長い。
【0025】
第2、第3、第4配線には、直流電圧が伝送され、その実効的な電圧レベルは、第2、第3、第4配線の順で大きい。したがって第2配線を長くすることにより、トータルの電力損失を低減できる。
【0026】
また、第1配線の長さは、第3、第4配線の長さより長くてもよい。
第1配線を伝送する交流電圧の振幅は、第2配線を伝送する直流電圧のレベルと実効的に等しい。したがって、第1配線を第3、第4配線より長くすることにより、トータルの電力損失を低減できる。
【0027】
回生コンバータが、第1のラックに収容され、双方向コンバータおよび昇降圧コンバータが、第2のラックに収容されてもよい。
【0028】
これらの態様によると、実効的な電圧レベルが最も大きな経路、すなわち単位長さ当りの電力損失が最も小さくなる経路の長さを長く割り当てることにより、トータルの電力損失を低減することができる。
【0029】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、充放電検査装置を省エネルギー化できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る充放電検査装置2を示すブロック図である。充放電検査装置2は、検査対象の2次電池1を充電し、あるいは放電することにより、2次電池1の電気的特性が仕様を満たしているかを検査する。2次電池1は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池などが例示されるが、特に限定されない。
【0035】
充放電検査装置2は、(i)力行運転時に、商用交流電源PSからの三相交流電圧を直流電圧に変換し、直流電圧を降圧することにより、2次電池1を充電する。また充放電検査装置2は、(ii)回生運転時に、2次電池1の電圧Vbatを昇圧し、昇圧された電圧を交流電圧に変換して商用交流電源PS側に回収する。
【0036】
この充放電検査装置2は、商用交流電源PSから2次電池1に至る経路のなかで、実効的な電圧レベルが最も大きな経路に使用される配線の長さが、その他の経路に使用される配線の長さより長く構成される。以下、その構成について具体的に説明する。
【0037】
充放電検査装置2は、フィルタ3、回生コンバータ4、双方向コンバータ6、昇降圧コンバータ8、を備える。
【0038】
フィルタ3は、EMC対策のために商用交流電源PSと回生コンバータ4の間に設けられ、ノイズを除去する。
【0039】
回生コンバータ4は、入力側と出力側で双方向にエネルギーを授受できるように構成される。
回生コンバータ4は、2本の第1直流ラインLP1、LN1の間にブリッジ接続された複数のスイッチ(アーム)MHU、MHV、MHW、MLU、MLV、MLWと、複数のスイッチMHU、MHV、MHW、MLU、MLV、MLWそれぞれと並列に設けられた複数の整流素子(ダイオード)D1〜D6と、2本の第1直流ラインLP1、LN1の間に設けられた平滑用キャパシタC1と、を有する。複数のスイッチMHU、MHV、MHW、MLU、MLV、MLWは、コントローラ10aによって制御される。
【0040】
力行運転時には、複数のスイッチMHU、MHV、MHW、MLU、MLV、MLWを三相交流電圧と同期してスイッチングすることにより商用交流電源PSからの商用三相交流電圧V
U〜V
Wが同期整流され、平滑用キャパシタC1によって平滑化される。その結果、2本の第1直流ラインLP1、LN1の間に第1直流リンク電圧V1が発生する。200Vの商用交流電圧が供給される場合、第1直流リンク電圧V1は300V程度となる。
【0041】
また回生運転時には、複数のスイッチMHU、MHV、MHW、MLU、MLV、MLWを適切な周波数および位相でスイッチングさせることにより、2本の第1直流ラインLP1、LN1の間に生ずる第1直流リンク電圧V1が三相交流電圧V
U〜V
Wに変換され、電力が商用交流電源PS側に回収される。
【0042】
双方向コンバータ6もまた、1次側(P)と2次側(S)との間で双方向にエネルギーを授受できるように構成される。双方向コンバータ6は、絶縁トランスT1、第1ブリッジ回路B1、第2ブリッジ回路B2、平滑用キャパシタC2を有する。第1ブリッジ回路B1は、2本の第1直流ラインLP1、LN1の間に設けられ、その出力は、絶縁トランスT1の1次巻線W1に接続される。第2ブリッジ回路B2は、2本の第2直流ラインLP2、LN2の間に設けられ、その出力は、絶縁トランスT1の2次巻線W2と接続される。
【0043】
第1ブリッジ回路B1および第2ブリッジ回路B2を構成するスイッチは、コントローラ10bによって制御される。絶縁トランスT1の1次巻線W1の巻数は、2次巻線W2の巻数より大きく、第2直流リンク電圧V2は、第1直流リンク電圧V1の数分の1倍〜1/10倍程度となる。たとえば、V2=25V〜50V程度に設定される。以下、V2=50Vとする。
【0044】
昇降圧コンバータ8は、第2直流リンク電圧V2を受け、それを降圧して2次電池1を充電する充電モードと、2次電池1の電池電圧Vbatを受け、それを昇圧して第2直流ラインLP2、LN2の間に供給する放電モードが切りかえ可能となっている。
【0045】
昇降圧コンバータ8は、第1スイッチングトランジスタM1、第2スイッチングトランジスタM2、インダクタL1を備える。
第1スイッチングトランジスタM1および第2スイッチングトランジスタM2は、2本の第2直流ラインLP2、LN2の間に直列に設けられる。インダクタL1は、第1スイッチングトランジスタM1と第2スイッチングトランジスタM2の接続点N1と2次電池1の間に設けられる。
【0046】
第1スイッチングトランジスタM1および第2スイッチングトランジスタM2は、コントローラ10bにより制御される。充電モードにおける昇降圧コンバータ8は、2本の第2直流ラインLP2、LN2側を入力、2次電池1を出力、第1スイッチングトランジスタM1をスイッチングトランジスタ、第2スイッチングトランジスタM2を同期整流トランジスタとする同期整流型の降圧コンバータとして動作する。放電モードにおける昇降圧コンバータ8は、2次電池1を入力、2本の第2直流ラインLP2、LN2を出力、第2スイッチングトランジスタM2をスイッチングトランジスタ、第1スイッチングトランジスタM1を同期整流トランジスタとする同期整流型の昇圧コンバータとして動作する。
【0047】
コントローラ10aとコントローラ10bの間は、双方向で通信可能となっており、コントローラ10aと10bは、通信可能となっており、コントローラ10bは、上流のコントローラ10aからの指令にもとづいて動作し、また、コントローラ10aに対して、実際の電池電圧Vbat、充放電電流の測定値を送信する。
【0048】
たとえば、1チャンネルの回生コンバータ4に対して、複数チャンネルの双方向コンバータ6が接続されてもよい。また1チャンネルの双方向コンバータ6に対して、複数チャンネルの昇降圧コンバータ8が接続されてもよい。
この場合、双方向コンバータ6は、その下流に接続される複数の昇降圧コンバータ8の総消費電力が正のとき力行運転し、負のとき回生運転するように、コントローラ10bによって制御される。
また、回生コンバータ4は、その下流に接続される複数の双方向コンバータ6の総消費電力が正のとき力行運転し、負のとき回生運転するように、コントローラ10aによって制御される。
【0049】
本実施の形態において、回生コンバータ4およびコントローラ10aは、第1ラック30に収容される。また、双方向コンバータ6、昇降圧コンバータ8およびコントローラ10bは、第1ラック30と独立した第2ラック32に収容される。
【0050】
商用交流電源PSと回生コンバータ4の1次側の間は、第1配線40によって接続される。回生コンバータ4の2次側と双方向コンバータ6の1次側の間は、第2配線42によって接続される。また双方向コンバータ6の2次側と昇降圧コンバータ8の1次側の間は第3配線44によって接続される。昇降圧コンバータ8の2次側と2次電池1の間は、第4配線46によって接続される。
【0051】
各配線は、ツイストケーブル、同軸ケーブル、ブスバー、あるいはそれらの組み合わせで構成することができる。
【0052】
第2配線42、第3配線44、第4配線46にはいずれも直流電圧が伝送され、それぞれの電圧レベル(直流値)は、300V、50V、5Vと、第2配線42、第3配線44、第4配線46の順で大きい。そこで第2配線42の長さd2は、第3配線44、第4配線46の長さd3、d4より長い。
【0053】
また、第1配線40を伝送する交流電圧の振幅(実効値200V)は、第2配線42を伝送する直流電圧の振幅(300V)と実効的に等しいといえる。したがって、第1配線40の長さは、第3配線44、第4配線46より長く設計される。
【0054】
以上が充放電検査装置2の構成である。
続いてその利点を説明する。たとえば
図2の充放電検査装置2において、d1=3〜20m、d2=5m、d3=1m、d4=1mであるとする。比較のために、商用交流電源PSから2次電池1までの距離が等しいとし、
図1の充放電検査装置2rにおいて、d1=3〜20m、d2=2m、d3=4m、d4=1mとする。
【0055】
ここで、第2配線42および第3配線44に着目する。単位長さ当りの抵抗成分Rを有するケーブル中を、電力Pcが電圧レベルVにて長さX伝送するときの電力損失Pdは、
Pd=X×R×Pc
2/V
2
となる。
図1の充放電検査装置2rでは、第2配線42での損失Pd2、第3配線44での損失Pd3はそれぞれ、
Pd2=2×R・Pc
2/300
2
Pd3=4×R・Pc
2/50
2
となる。一例としてPc=100Wとすると、電力損失の合計P
TOTALは、
P
TOTAL=R×(2/9+16)≒R×16.2 [W]
となる。
【0056】
一方、
図2の充放電検査装置2では、第2配線42での損失Pd2、第3配線44での損失Pd3はそれぞれ、
Pd2=5×R・Pc
2/300
2
Pd3=1×R・Pc
2/50
2
となる。Pc=100Wを代入すると、電力損失の合計P
TOTALは、
P
TOTAL=R×(5/9+4)≒R×4.6 [W]
となる。
【0057】
したがって、実施の形態に係る充放電検査装置2によれば、比較技術に係る充放電検査装置2rに比べて、電力損失を低減することができる。
【0058】
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態に係る充放電検査装置2aを示すブロック図である。充放電検査装置2aは、フィルタ3、三相交流トランス9、回生コンバータ4、昇降圧コンバータ8、コントローラ10、2本の直流ラインLP、LNを備える。なお、
図1と共通の回路ブロックについては説明を省略し、もしくは簡略化する。
【0059】
三相交流トランス9の1次側は、フィルタ3を介して三相商用交流電源PSと接続される。三相交流トランス9の1次側の巻数n1は、2次側の巻数n2より大きく構成される。三相交流トランス9の構成は特に限定されず、スター・スター結線、スター・デルタ結線、デルタ・スター結線、デルタ・デルタ結線のいずれのタイプを用いてもよい。
【0060】
三相交流トランス9の2次側に生ずる交流電圧V
U’、V
V’、V
W’と、商用交流電圧V
U、V
V、V
Wの振幅の比は、三相交流トランス9の巻線比に応じて定まる。たとえば三相交流トランス9の巻線比をn1:n2=10:1程度とした場合、V
U’、V
V’、V
W’は20Vとなる。
【0061】
三相交流トランス9の2次側は、回生コンバータ4と接続される。回生コンバータ4は、直流ラインLP、LNの間に設けられており、その構成は
図1の回生コンバータ4と同様である。
【0062】
昇降圧コンバータ8は、直流ラインLP、LNの間に設けられており、その構成は
図1の昇降圧コンバータ8と同様である。
【0063】
商用交流電源PSと三相交流トランス9の1次側の間は、第1配線50により接続される。三相交流トランス9の2次側と回生コンバータ4の1次側の間は、第2配線52により接続される。回生コンバータ4の2次側と昇降圧コンバータ8の1次側の間は、第3配線54により接続される。昇降圧コンバータ8の2次側と2次電池1の間は、第4配線56により接続される。
【0064】
フィルタ3、三相交流トランス9、回生コンバータ4、昇降圧コンバータ8は、単一のラック34に収容される。
【0065】
第1配線50、第2配線52、第3配線54、第4配線56のうち、それぞれを伝送する電圧のうち、実効的なレベル/振幅が最も大きいのは、第1配線50を伝送する交流電圧(200V)である。そこで、本実施の形態では、第1配線50の長さd1が、第2配線52、第3配線54、第4配線56の長さより長く設計される。
【0066】
一例として、d1=3〜20m、d2=d3=d4=1m程度としてもよい。
【0067】
以上が
図2の充放電検査装置2aの構成である。続いてその動作を、充電検査、放電検査に分けて説明する。
【0068】
1.充電検査
充電検査時に、回生コンバータ4のスイッチMHU〜MLWは、オフ状態とされる。このとき回生コンバータ4の入力側には、三相交流トランス9によって降圧された交流電圧V
U’〜V
W’が供給される。回生コンバータ4はダイオード整流回路として動作し、その結果、直流ラインLP、LN間には、25V程度の直流リンク電圧V3が発生する。昇降圧コンバータ8は、回生コンバータ4からの直流リンク電圧V3を受け、2次電池1を充電する。
【0069】
2.放電検査
放電検査時に、昇降圧コンバータ8は、放電モードに設定される。そして、電池電圧Vbatを受け、それを昇圧して直流ラインLP、LNの間に、直流リンク電圧V3を発生させる。
【0070】
コントローラ10は、2次電池1の放電にともない回収される電力が、回生コンバータ4を動作させるための消費電力を上回る場合には、回生コンバータ4を動作させ、2次電池1の放電にともない昇降圧コンバータ8から供給される電力を、三相交流トランス9を介して商用交流電源PSへと回収する。
【0071】
このように、実施の形態に係る充放電検査装置2aによれば、回生コンバータ4および昇降圧コンバータ8の動作を切りかえることにより、商用交流電源PSからの電力によって2次電池1を充電するとともに、2次電池1の放電時には、2次電池1に蓄えられたエネルギーを商用交流電源PS側に回収できる。
【0072】
第2の実施の形態では、三相交流トランス9によって商用交流電圧V
U〜V
Wを降圧するため、
図1の回生コンバータ4の後段の双方向コンバータ6が不要となるため、回路の部品点数を大幅に削減することができ、システムの簡素化、低コスト化を図ることができる。またそれにより、フィルタ3、三相交流トランス9、回生コンバータ4、昇降圧コンバータ8を単一のラック34に収容することが可能となる。
【0073】
また、双方向コンバータ6が存在しないため、双方向コンバータ6により消費されていた電力も削減できるため、全体としての消費電力の点でも優れている。
【0074】
さらに
図2の充放電検査装置2aでは、三相交流トランス9によって1次側と2次側が電気的に絶縁される。
図1の充放電検査装置2では、絶縁トランスT1が、充放電検査装置2の中段に設けられているため、絶縁トランスT1より前段の回路ブロック、具体的には第1ブリッジ回路B1や回生コンバータ4の信頼性が低下した場合に、その影響が商用交流電源に及ぶことになる。これに対して
図2の充放電検査装置2aでは、三相交流トランス9の前段には、フィルタ3のみが設けられ、その他には能動素子、受動素子が設けられない。この構成によれば、回生コンバータ4および昇降圧コンバータ8の信頼性が低下した場合に、その影響が商用交流電源PSに影響が及ぶのを防止できる。
【0075】
さらに
図2では、フィルタ3が三相交流トランス9よりも前段に設けられている。三相交流トランス9は、1次側の巻数n1の方が2次側の巻数n2より大きいため、三相交流トランス9を介してある電力量を伝送する際に、1次側は、小電流、高電圧、2次側は大電流、低電圧となる。一般的にチョークコイルを有するフィルタ3のコストは、電流容量が大きいほど高くなるため、フィルタ3を三相交流トランス9の前段に配置することにより、安価なフィルタを用いることができる。
【0076】
この充放電検査装置2aによっても、第1の実施の形態と同様に、単位長さ当りの電力損失が最も小さな配線の長さを長くすることにより、トータルの電力損失を低減することができる。
【0077】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0078】
第2の実施の形態において、フィルタ3を三相交流トランス9の後段に、すなわち三相交流トランス9と回生コンバータ4の間に設けてもよい。回生コンバータ4の直前にフィルタ3を配置する場合には、その回生コンバータ4に最適化されて製造、販売されるフィルタ3を利用することができ、システム設計が容易となる。またこの変形例では、充放電検査装置2aのすべての構成要素が三相交流トランス9の2次側に配置されることとなり、フィルタ3の信頼性が低下した場合に、その影響が商用交流電源PSに及ぶのを防止できる。
【0079】
実施の形態では、2次電池1を充放電する充放電検査装置2を例に説明したが、本発明の適用範囲はそれに限定されない。近年、一般家庭用の蓄電池が普及を見せており、あるいは車載用の蓄電池からの電力を、家電製品に供給する試みがなされている。実施の形態に係る充放電検査装置は、そのような用途にも利用できる。
【0080】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。