特許第6586151号(P6586151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6586151
(24)【登録日】2019年9月13日
(45)【発行日】2019年10月2日
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20190919BHJP
【FI】
   H04L27/26 420
   H04L27/26 114
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-241566(P2017-241566)
(22)【出願日】2017年12月18日
(65)【公開番号】特開2019-110414(P2019-110414A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】大芝 淳
【審査官】 大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−299676(JP,A)
【文献】 特開2008−153775(JP,A)
【文献】 特開2005−168000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数軸方向の複数のサブキャリアと時間軸方向の複数のシンボルとを含む信号を被測定装置(1)から入力し、入力した入力信号を測定する測定装置(10)であって、
前記入力信号は、
振幅及び位相が既知のパイロットシンボル及び前記振幅及び前記位相が未知のデータシンボルのいずれか一方が同一時刻の前記各サブキャリアに配置された配置型式を示す第1の信号フォーマット(30)と、
同一時刻の前記各サブキャリアに前記パイロットシンボルが配置されたものと前記データシンボルが配置されたものとが混在した配置型式を示す第2の信号フォーマット(40)と、のいずれか一方に基づいて生成されたものであって、シンボル間干渉を回避するためのガードインターバルを有し、
前記第1及び前記第2の信号フォーマットのいずれか一方をユーザに設定させる信号フォーマット設定手段(18a)と、
設定された信号フォーマットに基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出手段(20)と、
前記シンボルタイミングが検出された信号を測定する測定手段(16)と、
を備え、
前記シンボルタイミング検出手段は、
前記第1の信号フォーマットにおける前記パイロットシンボルのレプリカ信号を生成するレプリカ生成部(22)と、
生成された前記レプリカ信号と前記入力信号とを相関演算する第1の相関演算部(24)と、
前記入力信号を遅延させた比較信号と前記入力信号とを相関演算する第2の相関演算部(25)と、
前記第1又は前記第2の相関演算部による相関結果に基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出部(26)と、
前記信号フォーマット設定手段において前記第1の信号フォーマットが設定された場合には前記第1の相関演算部を選択し、前記第2の信号フォーマットが設定された場合には前記第2の相関演算部を選択する相関演算選択部(23)と、
を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記相関演算選択部は、前記第2の信号フォーマットが設定された場合に、同一時刻の前記各サブキャリアにおいて、前記パイロットシンボルが配置されたサブキャリアの個数に対する前記データシンボルが配置されたサブキャリアの個数の比が所定値以下の場合には前記第1の相関演算部を選択するものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記入力信号が、OFDM変調方式又はシングルキャリアブロック伝送方式の変調信号であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記シンボルタイミング検出手段は、前記ガードインターバルを除去するためのシンボルタイミングを検出するものであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の測定装置(10)を用いて前記入力信号を測定する測定方法であって、
前記第1及び前記第2の信号フォーマットのいずれか一方をユーザに設定させる信号フォーマット設定ステップ(S11)と、
設定された信号フォーマットに基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出ステップ(S13、S17〜S19)と、
前記シンボルタイミングが検出された信号を測定する測定ステップ(S23)と、
を含み、
前記シンボルタイミング検出ステップは、
前記第1の信号フォーマットにおける前記パイロットシンボルのレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成ステップ(S13)と、
前記信号フォーマット設定ステップにおいて前記第1の信号フォーマットが設定された場合には、生成された前記レプリカ信号と前記入力信号とを相関演算する第1の相関演算ステップ(S17)と、
前記信号フォーマット設定ステップにおいて前記第2の信号フォーマットが設定された場合には、前記入力信号を遅延させた比較信号と前記入力信号とを相関演算する第2の相関演算ステップ(S18)と、
前記第1又は前記第2の相関演算ステップによる相関結果に基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出ステップ(S19)と、
を含むことを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調方式により変調された入力信号を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線LANやLTE(Long Term Evolution)などの広帯域な無線伝送システムでは、OFDM変調方式やシングルキャリアブロック伝送方式などのブロック伝送方式が用いられている。ブロック伝送方式では、データシンボルをFFT処理し、周波数領域に変換したあと周波数領域でサブキャリアに送信系列をマッピングし、等化処理などを行った後に時間領域の信号に変換して送信信号とする。さらに、時間領域に変換された信号の後端の一部をガードインターバルとしてその信号の前方に付加することで、マルチパスフェージングによるチャネル間干渉に耐性を持たせている。そのため、ブロック伝送方式では、復調する際、付加したガードインターバルの位置を正確に推定する必要がある。
【0003】
ガードインターバルの位置を正確に推定する装置としては、特許文献1に記載されたタイミング検出装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された従来のものは、周波数領域の受信信号とレプリカ信号の複素共役を対応するサブキャリア毎に乗算するレプリカ信号F乗算部と、レプリカ信号乗算後の周波数領域の受信信号を時間領域の信号に変換するIDFT部と、時間領域の信号を電力化し、電力値の最大ピークを検出したタイミングを出力するピーク検出部と、を備え、ガードインターバルの位置を推定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5717585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無線通信機器の測定装置には、ブロック伝送方式で用いられるサブキャリアの信号フォーマットをユーザが設定できる機能を有するものがある。なお、サブキャリアの信号フォーマットとは、サブキャリアに含まれるパイロットシンボルやデータシンボルの配置を設定する型式をいう。
【0007】
しかしながら、従来のものは、通信規格で定められた、固定された信号フォーマットに基づいた信号を対象としているので、サブキャリアの信号フォーマットをユーザが設定する測定装置に従来のものを適用した場合には、信号フォーマットの設定に加え、その信号フォーマットに適合したシンボルタイミング同期手法もユーザに設定させる必要が生じてしまい、操作が煩雑になるという課題があった。
【0008】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたもので、ユーザに、シンボルタイミング同期手法を意識させることなく、信号フォーマットを設定させるだけで被測定信号を簡便に測定することができる測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る測定装置は、周波数軸方向の複数のサブキャリアと時間軸方向の複数のシンボルとを含む信号を被測定装置(1)から入力し、入力した入力信号を測定する測定装置(10)であって、前記入力信号は、振幅及び位相が既知のパイロットシンボル及び前記振幅及び前記位相が未知のデータシンボルのいずれか一方が同一時刻の前記各サブキャリアに配置された配置型式を示す第1の信号フォーマット(30)と、同一時刻の前記各サブキャリアに前記パイロットシンボルが配置されたものと前記データシンボルが配置されたものとが混在した配置型式を示す第2の信号フォーマット(40)と、のいずれか一方に基づいて生成されたものであって、シンボル間干渉を回避するためのガードインターバルを有し、前記第1及び前記第2の信号フォーマットのいずれか一方をユーザに設定させる信号フォーマット設定手段(18a)と、設定された信号フォーマットに基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出手段(20)と、前記シンボルタイミングが検出された信号を測定する測定手段(16)と、を備え、前記シンボルタイミング検出手段は、前記第1の信号フォーマットにおける前記パイロットシンボルのレプリカ信号を生成するレプリカ生成部(22)と、生成された前記レプリカ信号と前記入力信号とを相関演算する第1の相関演算部(24)と、前記入力信号を遅延させた比較信号と前記入力信号とを相関演算する第2の相関演算部(25)と、前記第1又は前記第2の相関演算部による相関結果に基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出部(26)と、前記信号フォーマット設定手段において前記第1の信号フォーマットが設定された場合には前記第1の相関演算部を選択し、前記第2の信号フォーマットが設定された場合には前記第2の相関演算部を選択する相関演算選択部(23)と、を備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の請求項1に係る測定装置は、設定された信号フォーマットに基づいて被測定装置から入力した入力信号のシンボルタイミングを検出するので、ユーザに、シンボルタイミング同期手法を意識させることなく、信号フォーマットを設定させるだけで被測定信号を簡便に測定することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係る測定装置は、前記相関演算選択部は、前記第2の信号フォーマットが設定された場合に、同一時刻の前記各サブキャリアにおいて、前記パイロットシンボルが配置されたサブキャリアの個数に対する前記データシンボルが配置されたサブキャリアの個数の比が所定値以下の場合には前記第1の相関演算部を選択するものである構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明の請求項2に係る測定装置は、第2の信号フォーマットが設定された場合でも、第1の相関演算部を選択してシンボルタイミングを検出し、被測定信号を測定することができる。
【0013】
本発明の請求項3に係る測定装置は、前記入力信号が、OFDM変調方式又はシングルキャリアブロック伝送方式の変調信号である構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の請求項3に係る測定装置は、OFDM変調方式又はシングルキャリアブロック伝送方式の変調信号を被測定信号としてシンボルタイミングを検出し、被測定信号を測定することができる。
【0015】
本発明の請求項4に係る測定装置は、前記シンボルタイミング検出手段は、前記ガードインターバルを除去するためのシンボルタイミングを検出するものである構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の請求項4に係る測定装置は、ガードインターバルを除去するためのシンボルタイミングを検出することができる。
【0017】
本発明の請求項5に係る測定方法は、請求項1に記載の測定装置(10)を用いて前記入力信号を測定する測定方法であって、前記第1及び前記第2の信号フォーマットのいずれか一方をユーザに設定させる信号フォーマット設定ステップ(S11)と、設定された信号フォーマットに基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出ステップ(S13、S17〜S19)と、前記シンボルタイミングが検出された信号を測定する測定ステップ(S23)と、を含み、前記シンボルタイミング検出ステップは、前記第1の信号フォーマットにおける前記パイロットシンボルのレプリカ信号を生成するレプリカ信号生成ステップ(S13)と、前記信号フォーマット設定ステップにおいて前記第1の信号フォーマットが設定された場合には、生成された前記レプリカ信号と前記入力信号とを相関演算する第1の相関演算ステップ(S17)と、前記信号フォーマット設定ステップにおいて前記第2の信号フォーマットが設定された場合には、前記入力信号を遅延させた比較信号と前記入力信号とを相関演算する第2の相関演算ステップ(S18)と、前記第1又は前記第2の相関演算ステップによる相関結果に基づいて前記入力信号のシンボルタイミングを検出するシンボルタイミング検出ステップ(S19)と、を含む構成を有している。
【0018】
この構成により、本発明の請求項5に係る測定方法は、設定された信号フォーマットに基づいて被測定装置から入力した入力信号のシンボルタイミングを検出するので、ユーザに、シンボルタイミング同期手法を意識させることなく、信号フォーマットを設定させるだけで被測定信号を簡便に測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ユーザに、シンボルタイミング同期手法を意識させることなく、信号フォーマットを設定させるだけで被測定信号を簡便に測定することができるという効果を有する測定装置及び測定方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における測定装置のブロック構成図である。
図2】本発明の一実施形態における信号フォーマットの説明図である。
図3】本発明の一実施形態におけるシンボルタイミング検出装置の入力信号が時間多重パイロット型である場合の相関演算処理の一例を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態におけるシンボルタイミング検出装置の入力信号が分散パイロット型である場合の相関演算処理の一例を模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態における測定装置のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る測定装置及び測定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、本発明に係る測定装置を、OFDM変調方式の変調信号を被測定装置(DUT)から入力し、入力した入力信号を測定する測定装置に適用した例を挙げて説明する。
【0022】
まず、本発明に係る測定装置の一実施形態における構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態における測定装置10は、周波数変換部11、ADC12、GI除去部13、FFT演算部14、復調部15、測定部16、表示部17、操作部18、シンボルタイミング検出装置20を備えている。この測定装置10は、例えば、DUT1からの入力信号を解析するシグナルアナライザである。
【0024】
測定装置10は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。測定装置10は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータを測定装置10の各機能部として機能させるようになっている。
【0025】
なお、OFDM変調方式等の直交周波数分割多重方式の信号を測定する測定装置では、実際には、I相成分とQ相成分に分けて処理を行う構成が含まれているが、本実施形態では、説明を簡略にするために、これらの構成の説明は省略している。
【0026】
周波数変換部11は、DUT1から入力した入力信号を周波数変換し、アナログ値のベースバンド信号としてADC12に出力するようになっている。
【0027】
ADC(アナログデジタルコンバータ)12は、アナログ値のベースバンド信号を所定のサンプリング時刻ごとにサンプリングすることによりデジタル値のベースバンド信号に変換してGI除去部13及びシンボルタイミング検出装置20に出力するようになっている。
【0028】
GI(ガードインターバル)除去部13は、シンボルタイミング検出装置20から所定のシンボルタイミングの検出信号を入力し、入力した検出信号に基づいて、入力信号からガードインターバルを除去するようになっている。なお、ガードインターバルは、DUT1において、シンボル間干渉を回避する目的で出力信号に付された冗長信号を含む期間である。この冗長信号は、DUT1において、IFFT出力信号系列の後端の一定区間をコピーして、IFFT出力信号系列の先端に付加されたものである。なお、このガードインターバルの区間(サンプル長)は既知である。
【0029】
FFT演算部14は、GI除去部13から出力される時間領域のベースバンド信号を周波数領域のベースバンド信号に変換して復調部15に出力するようになっている。
【0030】
復調部15は、FFT演算後の信号に対して復調を行うようになっている。復調された信号は、測定部16に出力される。
【0031】
測定部16は、復調された信号に対し、所定の測定を行うようになっている。測定結果のデータは、表示部17に出力される。この測定部16は、測定手段の一例である。
【0032】
表示部17は、測定部16によって得られた測定結果を画面に表示するようになっている。
【0033】
操作部18は、DUT1を測定する測定項目や測定条件、判定条件等のパラメータを設定するためユーザが操作するものであり、例えば、タッチパネルやハードウェアキーで構成されたキーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイス、これらを制御する制御回路等で構成される。この操作部18は、信号フォーマット設定部18aを備えている。
【0034】
信号フォーマット設定部18aは、DUT1が出力する信号、すなわち、測定装置10が入力するマルチキャリアのOFDM変調信号の信号フォーマットを設定するものである。また、信号フォーマット設定部18aは、各パイロットシンボルの振幅及び位相をユーザに設定させるものである。なお、信号フォーマット設定部18aは、信号フォーマット設定手段の一例である。以下に、本実施形態における信号フォーマットについて、図2を用いて具体的に説明する。
【0035】
図2は、周波数軸方向の複数のサブキャリアと時間軸方向の複数のシンボルとを含むOFDM変調信号の信号フォーマットを模式的に示している。図中、斜線を付した矩形はパイロットシンボルを含むサブキャリア、白抜きの矩形はデータシンボルを含むサブキャリアを示している。
【0036】
図2(a)及び(b)に示すように、本実施形態における測定装置10がDUT1から入力するOFDM変調信号の信号フォーマットは、大別して2種類ある。
【0037】
まず、図2(a)に示した第1の信号フォーマット30について説明する。この第1の信号フォーマット30は、振幅及び位相が既知のパイロットシンボル及び振幅及び位相が未知のデータシンボルのいずれか一方が同一時刻の各サブキャリアに配置された配置型式である。以下、この信号フォーマットを時間多重パイロット型という。
【0038】
図2(a)に示すように、時間多重パイロット型において、例えば、シンボル31は全サブキャリアがパイロットシンボルを含んでいる。また、シンボル32は全サブキャリアがデータシンボルを含んでいる。
【0039】
次に、図2(b)に示した第2の信号フォーマット40について説明する。この第2の信号フォーマット40は、同一時刻の各サブキャリアにパイロットシンボルが配置されたものとデータシンボルが配置されたものとが混在した配置型式である。以下、この信号フォーマットを分散パイロット型という。
【0040】
図2(b)に示すように、分散パイロット型において、例えば、シンボル41は、パイロットシンボルを含むサブキャリアと、データシンボルを含むサブキャリアとが周波数軸方向に混在している。
【0041】
図1に戻り、シンボルタイミング検出装置20は、信号フォーマット取得部21、レプリカ生成部22、相関演算選択部23、レプリカ相関部24、GI相関部25、シンボルタイミング検出部26を備えている。このシンボルタイミング検出装置20は、シンボルタイミング検出手段の一例である。
【0042】
信号フォーマット取得部21は、操作部18の信号フォーマット設定部18aから、ユーザが設定した信号フォーマットのデータと、その信号フォーマットに含まれる各パイロットシンボルの振幅及び位相のデータとを取得するようになっている。
【0043】
レプリカ生成部22は、信号フォーマット取得部21によって取得された信号フォーマットが時間多重パイロット型である場合には、信号フォーマット取得部21から時間多重パイロット型のデータを取得してパイロットシンボルのレプリカ信号を生成するようになっている。例えば、レプリカ生成部22は、図2(a)に示したシンボル31のレプリカ信号を生成するものである。
【0044】
相関演算選択部23は、信号フォーマット取得部21によって取得された信号フォーマットに基づいて、入力したベースバンド信号をレプリカ相関部24又はGI相関部25に出力するようになっている。具体的には、相関演算選択部23は、入力したベースバンド信号の出力先として、信号フォーマット取得部21によって取得された信号フォーマットが、時間多重パイロット型である場合にはレプリカ相関部24を選択し、分散パイロット型である場合にはGI相関部25を選択するようになっている。
【0045】
なお、相関演算選択部23は、信号フォーマットが分散パイロット型であっても、レプリカ相関部24を選択可能な構成とすることができる。例えば、信号フォーマットが分散パイロット型である場合に、同一時刻の各サブキャリアにおいて、パイロットシンボルが配置されたサブキャリアの個数Npに対するデータシンボルが配置されたサブキャリアの個数Ndの比(Nd/Np)が所定値以下の場合には、相関演算選択部23がレプリカ相関部24を選択可能としてもよい。なお、所定値の範囲は、例えば実験により、レプリカ相関部24がシンボルタイミングを検出できる範囲を求めることにより定めることができる。
【0046】
具体的には、例えば、256個のサブキャリアがある場合、パイロットシンボルが配置されたサブキャリアの個数Np=253、データシンボルが配置されたサブキャリアの個数Nd=3のときにレプリカ相関部24がシンボルタイミングを検出できるのであれば、両者の比Nd/Np=3/253以下のときに相関演算選択部23がレプリカ相関部24を選択可能な構成とすることができる。
【0047】
レプリカ相関部24は、相関演算選択部23によって選択された場合、すなわち、入力信号が時間多重パイロット型の場合には、レプリカ生成部22によって生成されたレプリカ信号と入力信号とを相関演算するようになっている。このレプリカ相関部24は、第1の相関演算部の一例である。
【0048】
GI相関部25は、相関演算選択部23によって選択された場合、すなわち、入力信号が分散パイロット型の場合には、入力信号を遅延させた比較信号と入力信号とを相関演算するようになっている。このGI相関部25は、第2の相関演算部の一例である。
【0049】
シンボルタイミング検出部26は、レプリカ相関部24又はGI相関部25による相関結果に基づいて入力信号のシンボルタイミングを検出し、その旨を示す検出信号をGI除去部13に出力するようになっている。この検出信号により、GI除去部13がガードインターバルを除去するタイミングが得られる。また、この検出信号により、DUT1からの入力信号と、FFT演算部14によるFFT演算との同期を確立することができる。
【0050】
次に、シンボルタイミング検出装置20の機能について、図3図4を用いて説明する。
【0051】
図3は、シンボルタイミング検出装置20の入力信号が時間多重パイロット型である場合の処理の一例を模式的に示している。
【0052】
図3に示すように、入力信号は、時間軸方向に連続的に連なったOFDMシンボルを有する。OFDMシンボルは、ガードインターバル(GI)と有効シンボルとを含む。
【0053】
レプリカ相関部24は、レプリカ生成部22によって生成されたレプリカ信号51を例えば1サンプルずつ時間遅延させながら入力信号との相互相関演算を実行する。
【0054】
シンボルタイミング検出部26は、レプリカ相関部24によって算出された相関値が最大となる時間的位置を求めることにより、有効シンボルの先頭52を検出することができる。
【0055】
図4は、シンボルタイミング検出装置20の入力信号が分散パイロット型である場合の処理の一例を模式的に示している。
【0056】
図4に示すように、入力信号は、時間軸方向に連続的に連なったOFDMシンボルを有する。OFDMシンボルは、ガードインターバル(GI)と有効シンボルとを含む。ガードインターバルのサンプルは、有効シンボルの後端サンプル61がコピーされたものである。
【0057】
GI相関部25は、入力信号を遅延させた比較信号62を生成し、この比較信号62を例えば1サンプルずつ時間遅延させながら入力信号との相互相関演算を実行する。
【0058】
シンボルタイミング検出部26は、GI相関部25によって算出された相関値が最大となる時間的位置を求める。図示の例では、比較信号62のガードインターバルと後端シンボル61とが時間的に一致した位置で相関値が最大となり、両者の時間長(シンボル長)は既知であるので、シンボルタイミング検出部26は、有効シンボルの先頭63を検出することができる。
【0059】
以上のように、測定装置10は、被測定信号の信号フォーマットが時間多重パイロット型である場合には、パイロットシンボルのレプリカ信号と入力信号との相互相関演算によってシンボルタイミングを検出する構成を有する。一方、測定装置10は、被測定信号の信号フォーマットが分散パイロット型である場合には、入力信号を遅延させた比較信号と入力信号との相互相関演算によってシンボルタイミングを検出する構成を有する。
【0060】
この構成により、測定装置10は、被測定信号の信号フォーマットに適合したシンボルタイミングを検出(FFT演算との同期を確立)することができる。以下に具体的に説明する。
【0061】
まず、被測定信号の信号フォーマットが分散パイロット型である場合に、パイロットシンボルのレプリカ信号を用いて同期を確立しようとすると、そのレプリカ信号には振幅及び位相が未知のデータシンボルを含めることはできないため、好適なレプリカ信号が得られない。そのため、この手法では、同期を正確に確立することができない。
【0062】
また、被測定信号の信号フォーマットが時間多重パイロット型である場合に、ガードインターバルを用いて同期を確立しようとすると、同期の確立自体は可能である。しかしながら、例えば、被測定信号の信号品質が比較的悪い状況で、ガードインターバルを用いた場合には、パイロットシンボルのレプリカ信号を用いる構成よりも同期性能が劣化する可能性がある。なぜならば、一般にガードインターバル長は、実運用に必要な最低限の長さで設定されるため、ガードインターバルを用いた場合には、パイロットシンボルのレプリカ信号によってシンボル全体を用いて同期を確立するよりも利用できる情報が少なくなるからである。
【0063】
以上の2点より、従来の測定装置を使用する場合には、ユーザは、自身が測定対象とする信号フォーマットに合わせて適切なシンボルタイミング同期手法を意識して設定する操作をしなければ、正常な測定ができないという課題があった。
【0064】
また、所望の測定結果が得られない場合に、ユーザが、信号フォーマットの違いによりシンボルタイミング同期手法が異なることに気が付かなければ、原因究明に時間を要する結果となるという課題もあった。
【0065】
これに対し、本実施形態における測定装置10は、前述のように、被測定信号の信号フォーマットが時間多重パイロット型又は分散パイロット型である場合に応じて、入力信号との相互相関演算によってシンボルタイミングを検出する構成を有するので、被測定信号の信号フォーマットに好適なシンボルタイミング同期手法を選択して被測定信号を測定することができる。
【0066】
次に、本実施形態における測定装置10の動作について図5を用いて説明する。図5は、本実施形態における測定方法を説明するためのフローチャートである。
【0067】
操作部18をユーザが操作することにより、DUT1を測定する測定項目や測定条件、判定条件等のパラメータが設定され、信号フォーマット設定部18aによりDUT1からのOFDM変調信号の信号フォーマットが設定される(ステップS11)。
【0068】
信号フォーマット取得部21は、操作部18の信号フォーマット設定部18aから、ユーザが設定した信号フォーマットのデータと、その信号フォーマットに含まれる各パイロットシンボルの振幅及び位相のデータとを取得する(ステップS12)。
【0069】
レプリカ生成部22は、信号フォーマット取得部21によって取得された信号フォーマットが時間多重パイロット型である場合には、信号フォーマット取得部21から時間多重パイロット型のデータを取得してパイロットシンボルのレプリカ信号を生成する(ステップS13)。なお、このステップS13の処理を、後述するステップS16とS17との間に行うことにしてもよい。
【0070】
周波数変換部11は、DUT1から被測定信号を入力し(ステップS14)、入力した入力信号を周波数変換してアナログ値のベースバンド信号としてADC12に出力する(ステップS15)。ADC12は、アナログ値のベースバンド信号をデジタル値のベースバンド信号に変換してGI除去部13及びシンボルタイミング検出装置20に出力する。
【0071】
相関演算選択部23は、信号フォーマット取得部21によって取得された信号フォーマットが時間多重パイロット型であるか否かを判断する(ステップS16)。
【0072】
ステップS16において、相関演算選択部23は、信号フォーマットが時間多重パイロット型であると判断した場合には、ADC12から入力した入力信号をレプリカ相関部24に出力する。レプリカ相関部24は、レプリカ生成部22によって生成されたレプリカ信号と入力信号とを相関演算する(ステップS17)。
【0073】
一方、ステップS16において、相関演算選択部23は、信号フォーマットが時間多重パイロット型であると判断しなかった場合、すなわち、入力信号が分散パイロット型であると判断した場合には、ADC12から入力した入力信号をGI相関部25に出力する。GI相関部25は、入力信号を遅延させた比較信号と入力信号とを相関演算する(ステップS18)。
【0074】
シンボルタイミング検出部26は、レプリカ相関部24又はGI相関部25による相関結果に基づいて、有効シンボルの先頭を検出し(ステップS19)、その旨を示す検出信号をGI除去部13に出力する。
【0075】
GI除去部13は、シンボルタイミング検出部26から入力した検出信号に基づいて、入力信号からガードインターバルを除去する(ステップS20)。
【0076】
FFT演算部14は、FFT演算処理により、GI除去部13から出力される時間領域のベースバンド信号を周波数領域のベースバンド信号に変換して復調部15に出力する(ステップS21)。
【0077】
復調部15は、FFT演算後の信号に対して復調調理を実行し(ステップS22)、復調した信号を測定部16に出力する。
【0078】
測定部16は、復調された信号に対し、操作部18で設定された所定の測定を行って(ステップS23)、測定結果のデータを表示部17に出力する。
【0079】
表示部17は、測定部16によって得られた測定結果を画面に表示する(ステップS24)。
【0080】
以上のように、本実施形態における測定装置10は、設定された信号フォーマットに基づいてDUT1から入力した入力信号のシンボルタイミングを検出する構成としたので、ユーザに、シンボルタイミング同期手法を意識させることなく、信号フォーマットを設定させるだけで被測定信号を簡便に測定することができる。
【0081】
なお、前述の実施形態では、被測定信号としてOFDM変調方式の変調信号を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、シングルキャリアブロック伝送方式の変調信号や、その他のブロック伝送方式の変調信号を被測定信号としても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係る測定装置及び測定方法は、ユーザに、シンボルタイミング同期手法を意識させることなく、信号フォーマットを設定させるだけで被測定信号を簡便に測定することができるという効果を有し、OFDM変調方式やシングルキャリアブロック伝送方式の変調信号を測定する測定装置及び測定方法として有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 DUT(被測定装置)
10 測定装置
16 測定部(測定手段)
18 操作部
18a 信号フォーマット設定部(信号フォーマット設定手段)
20 シンボルタイミング検出装置(シンボルタイミング検出手段)
21 信号フォーマット取得部
23 相関演算選択部
24 レプリカ相関部(第1の相関演算部)
25 GI相関部(第2の相関演算部)
26 シンボルタイミング検出部
30 第1の信号フォーマット
40 第2の信号フォーマット
図1
図2
図3
図4
図5