(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線吸収剤(C)が、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物。
前記紫外線吸収剤(C)が、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む、請求項9〜13のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難いため、近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料として急速に普及してきている。
このような光学材料に関し、たとえば特許文献1には、エピスルフィド基を有する化合物と分子内に2個以上のメルカプト基を有する化合物を含有する組成物からなる重合性組成物が開示されており、これを重合させ、樹脂とすることで、高屈折率、低分散な光学材料が得られることが示されている。
【0003】
ところで、近年にあっては、眼鏡レンズのような光学材料に対し、物体の輪郭や色彩を明瞭にし、視覚疲労などを軽減するため、レンズを通して視認される物体のコントラストを改善することが望まれている。
【0004】
ここで、コントラストを向上させるためには、眩しさを与えやすい波長帯を可能な限り選択的に遮光(カット)する必要がある。例えば、ネオジム化合物は、585nm付近の可視光を高選択的に吸収することができ、このネオジム化合物またはテトラアザポルフィリン化合物などの誘起色素を含む眼鏡レンズは、視認される物体のコントラストを向上させることが知られている。ネオジム化合物のような希土類金属化合物が視認される物体のコントラストを改善することができるのは、可視光領域での吸収波長帯における吸光スペクトルのピーク形状が極めてシャープな点、すなわち吸収波長領域が狭く、波長選択性が高い点に起因している。この波長選択性が高いことにより、視認性に必要な波長帯では大きな透過率を有し、かつ眩しさに悪影響を与える波長帯を選択的に吸収するという効果を得ることができる。
一方、テトラアザポルフィリン化合物は、ネオジム化合物と同様に、優れた防眩性能とコントラスト性の改善を眼鏡レンズに付与することができる。つまり、特定吸収波長におけるピークのシャープさに由来して585nm付近以外での光透過性が良好で明視野が確保できるため、防眩性と視認性(コントラスト性)のバランスが極めて良好な眼鏡レンズを提供できる。
【0005】
特許文献2の実施例には、テトラアザポルフィリン化合物をモノマー組成物中に予め溶解させておき、その後、重合してレンズを得る方法が記載されている。また、特許文献3の実施例には、テトラアザポルフィリン化合物をプレポリマーに混合し、その後、加熱硬化してレンズを得る方法が記載されている。
【0006】
一方、従来から、眼が紫外線に曝露することによる悪影響が、問題視されている。さらに、近年、自然光、オフィス機器の液晶ディスプレイや、スマートフォンまたは携帯電話等の携帯機器のディスプレイ等からの発光に含まれる青色光により、眼の疲れや痛みを感じるなど、眼への影響が問題となってきており、眼が、紫外線から400〜420nm程度の比較的短波長の青色光に曝露する量を低減させることが望まれてきている。
【0007】
すなわち、プラスチックレンズに付与される別の機能として紫外線カット機能が挙げられる。近年、紫外線(UV)をカットする機能を有するプラスチックレンズの開発が進められている。
ここで、420nm程度の短波長青色光の眼への影響については、非特許文献1に記載されている。
この文献では、411nmと470nmのピーク波長の異なる青色LED光の照射による網膜神経細胞(ラットの培養網膜神経R28細胞)へのダメージを検証している。その結果、411nmにピーク波長を有する青色光の照射(4.5W/m
2)は24時間以内に網膜神経細胞の細胞死を引き起こすのに対し、470nmにピーク波長を有する青色光では、同じ量の照射でも細胞に変化は起こらないことが示されており、400〜420nm波長の光の暴露を抑えることが目の障害予防に重要であることが示されている。
また、長い間、眼に青色光の照射を浴びることは、眼精疲労やストレスを受けることが懸念されており、加齢黄斑変性を引き起こす要因と考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
すなわち、本技術分野においては、紫外線や青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる光学材料の開発が強く望まれており、また、このような光学材料を実現することのできる重合性組成物の開発も望まれていた。このような事情から、本発明は、紫外線や青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる光学材料を得ることのできる重合性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、重合性組成物を構成する成分について、適切に組み合わせることで、硬化物を得た際に外観に優れ、かつ、紫外線や青色光の遮断効果を効果的に向上できることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は以下に示すことができる。
[1] エピスルフィド化合物(A)と、
有機系色素(B)と、
紫外線吸収剤(C)と、
重合触媒(D)と、を含有し、
有機系色素(B)は、当該有機系色素(B)のクロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、該ピーク(P)の最大吸光係数を示すピーク頂点(Pmax)の吸光係数(ml/g・cm)が0.5×10
5以上であり、該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲であ
り、
前記重合触媒(D)が、アミン化合物である、光学材料用重合性組成物。
[2] 前記エピスルフィド化合物(A)が以下の一般式(1)で表される化合物である、[1]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化1】
(一般式(1)中、nは0または1を示す。)
[3] 前記有機系色素(B)が、以下の一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物である、[1]または[2]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化2】
(一般式(2)中、A
1〜A
8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
[4] 一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物において、Mが2価の銅原子である、[3]に記載の光学材料用重合性組成物。
[5] 前記テトラアザポルフィリン化合物が以下の化学式(3)で表される、[3]または[4]に記載の光学材料用重合性組成物。
【化3】
(化学式(3)中、Cuは2価の銅を、t-C
4H
9はターシャリ−ブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は一般式(2)におけるA
1とA
2、A
3とA
4、A
5とA
6及びA
7とA
8のいずれかひとつずつである。)
[6] 前記紫外線吸収剤(C)が、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[7
] さらにポリチオール化合物(E)を含む、[1]〜[
6]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物。
[
8] [1]〜[
7]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の硬化物により構成される、光学材料。
[
9] 有機系色素(B)を重合触媒(D)に溶解して、混合溶液を得る工程と、
エピスルフィド化合物(A)、紫外線吸収剤(C)および前記混合溶液を混合し、光学材料用重合性組成物を得る工程と、を含み、
有機系色素(B)は、当該有機系色素(B)のクロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、該ピーク(P)の最大吸光係数を示すピーク頂点(Pmax)の吸光係数(ml/g・cm)が0.5×10
5以上であり、該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲であ
り、
前記重合触媒(D)が、アミン化合物である、光学材料用重合性組成物の製造方法。
[1
0] 前記エピスルフィド化合物(A)が以下の一般式(1)で表される化合物である、[
9]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化4】
(一般式(1)中、nは0または1を示す。)
[1
1] 前記有機系色素(B)が、以下の一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物である、[
9]または[1
0]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化5】
(一般式(2)中、A
1〜A
8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
[1
2] 一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物において、Mが2価の銅原子である、[1
1]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[1
3] 前記テトラアザポルフィリン化合物が以下の化学式(3)で表される、[1
1]または[1
2]に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
【化6】
(化学式(3)中、Cuは2価の銅を、t-C
4H
9はターシャリ−ブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は一般式(2)におけるA
1とA
2、A
3とA
4、A
5とA
6及びA
7とA
8のいずれかひとつずつである。)
[1
4] 前記紫外線吸収剤(C)が、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む、[
9]〜[1
3]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法
。
[1
5] さらにポリチオール化合物(E)を含む、[
9]〜[1
4]のいずれかに記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
[1
6] [
9]〜[1
5]のいずれかに記載の製造方法により得られた光学材料用重合性組成物を加熱硬化する工程を含む、光学材料の製造方法。
[1
7] 有機系色素(B)を重合触媒(D)に溶解した混合溶液
であって、[9]〜[15]のいずれか一項に記載の製造方法に用いられる、混合溶液。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、硫黄原子を含む特定の構造を備える化合物と特定の紫外線吸収剤を組み合わせて用いることで、有害な紫外線から400〜420nm程度の青色光の遮断効果が高く、防眩性と視認性(コントラスト性)のバランスに優れ、無色透明で外観に優れる光学材料を実現できる重合性組成物を提供することができる。
このような発明が適用された光学材料は、無色透明で外観に優れるとともに有害光の眼への影響が軽減され眼精疲労やストレスなどの障害を抑えることもできるため、特にプラスチック眼鏡レンズとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を以下の実施の形態に基づいて説明する。
なお、本明細書中において、「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
【0017】
[光学材料用重合性組成物]
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、エピスルフィド化合物(A)と、特定の特定吸収を示す有機系色素(B)と、紫外線吸収剤(C)と、重合触媒(D)と、を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0018】
(エピスルフィド化合物(A))
本実施形態に用いることのできるエピスルフィド化合物としては、分子内に2個以上のエピスルフィド基を有する化合物の中から適宜選択することができる。
【0019】
このようなエピスルフィド化合物(A)の具体例としては、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3,6−トリチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフォン、4,4'−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族2,3−エピチオプロピルチオ化合物等を挙げることができ、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0020】
エピスルフィド化合物(A)としては、本発明の効果の観点から、以下の一般式(1)で示される化合物、すなわち、ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィドまたはビス(2,3−エピチオプロピル))ジスルフィドを用いることが好ましい。
【0022】
一般式(1)中、nは0または1を示す。
【0023】
(有機系色素(B))
本実施形態で使用される有機系色素(B)は、特定の吸収挙動を示すものである。
より具体的には、有機系色素(B)は、クロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、該ピーク(P)の最大吸光係数を示すピーク頂点(Pmax)の吸光係数(ml/g・cm)が0.5×10
5以上であり、該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲である。
【0024】
本実施形態において、有機系色素(B)は、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)が580nm〜590nmの間であるとよい。また、前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が40nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が25nm以下であり、かつ前記主吸収ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下であってもよい。
なお、本実施形態の有機系色素(B)は、以下の一般式(2)で表されるテトラアザポルフィルン化合物であることが好ましい。
【0026】
一般式(2)中、A
1〜A
8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。
本実施形態においては、有機系色素(B)として、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0027】
一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物について、一般式(2)中、Mは2価の銅であることがより好ましい。具体例としては以下の化学式(3)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体が挙げられ、これは、PD−311S(三井化学(株)製)の品番名に相当する。
【0029】
化学式(3)中、Cuは2価の銅を、t−C
4H
9はターシャリ−ブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は、一般式(2)におけるA
1またはA
2のいずれか、A
3またはA
4のいずれか、A
5またはA
6のいずれか、A
7またはA
8のいずれかである。
【0030】
(紫外線吸収剤(C))
本実施形態で使用される紫外線吸収剤(C)は、公知の紫外線吸収剤の中から適宜選択すればよいが、たとえば、クロロホルム溶液に溶解させた際の極大吸収波長が340nm以上360nm以下であることが好ましい。
【0031】
より具体的な紫外線吸収剤(C)の例としては、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
トリアジン化合物としては、ADEKA社製アデカスタブLA−F70、BASF社製TINUVIN400等が挙げられる。
【0032】
本実施形態においては、ベンゾトリアゾール系化合物を用いることが好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物としては、アルキル置換ベンゾトリアゾール系化合物、直鎖アルキルエステル置換ベンゾトリアゾール系化合物、クロロ置換ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
例えば、アルキル置換ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノールが挙げられ、市販品として、共同薬品社製Viosorb583、シプロ化成社製SEESEORB 709等が挙げられる。
直鎖アルキルエステル置換ベンゾトリアゾール系化合物としては、3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸オクチルと3−[3−tert−ブチル−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸2−エチルヘキシルの混合物が挙げられ、市販品として、EVER LIGHT社製 EVERSORB109等が挙げられる。
クロロ置換ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾールが挙げられ、市販品として、BASF社製TINUVIN326、シプロ化成社製SEESEORB703、共同薬品社製Viosorb550、ケミプロ化成社製KEMISORB73等が挙げられる。紫外線吸収剤(D)が、クロロホルム溶液に溶解させた際の極大吸収波長が340nm以上360nm以下の化合物であることにより、有害な紫外線から400〜420nm程度の青色光の遮断効果が非常に高く、無色透明で外観に優れる光学材料を効果的に得ることができる。
【0033】
本実施形態において、紫外線吸収剤(C)としては、これら紫外線吸収剤の1種以上を用いることが好ましく、異なる2種以上の紫外線吸収剤(C)を含有してもよい。なお、紫外線吸収剤(C)を構成する何れの紫外線吸収剤も、極大吸収ピークが340nm以上360nm以下の範囲にあることが好ましい。
【0034】
(重合触媒(D))
本実施形態において、重合触媒(D)としては、ルイス酸、アミン化合物、有機酸、アミン有機酸塩等が挙げられ、ルイス酸、アミン化合物、アミン有機酸塩が好ましく、アミン化合物がより好ましい。
なお、これらの化合物は公知の重合触媒の中から適宜選択することができる。
【0035】
また、本実施形態においては、重合触媒(D)は前述の有機系色素(B)を溶解する化合物が用いられる。このような点から、本実施形態における重合触媒(D)は室温または加温した際に液体であることが好ましい。
また、プロセス効率を鑑み、室温条件下で液体である重合触媒(D)をより好ましく用いることができる。
【0036】
本実施形態において、重合触媒(D)としてアミン化合物を用いることが好ましい。このアミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、N,N'−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、ビシクロオクタンジアミン(DABCO)等の3級アミン類;
テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラヘキシルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩類;
イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、ベンジルメチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール等のイミダゾール類;
ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類;
1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシエチル−4−ピペリジノール、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとの混合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のヒンダードアミン類が挙げられる。本実施形態においては、重合触媒(D)として、これらから選択された少なくとも1種を用いることができる。
本実施形態においては、本発明の効果の観点から、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンを用いることが好ましい。
【0037】
その他、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリn−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、塩化アルミ、フッ化アルミ、トリフェニルアルミ、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等のルイス酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロ硼酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ燐酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ砒酸、無水酢酸等の酸無水物類の重合触媒が挙げられるが、これら例示化合物のみに限定されるものではない。
【0038】
(ポリチオール化合物(E))
本実施形態に係る光学材料用重合性組成物には、さらにポリチオール化合物(E)が含まれていてもよい。本実施形態に係るポリチオール化合物(E)とは、分子内に2以上のメルカプト基(チオール基)を有する化合物を意味する。
【0039】
ポリチオール化合物(E)としては、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物等を挙げることができる。
【0040】
本実施形態においては、ポリチオール化合物(E)として、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)から選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンから選択される少なくとも一種を用いることがより好ましい。
【0041】
(ポリ(チオ)イソシアネート化合物(F))
本実施形態に係る光学材料用重合性組成物には、さらにポリ(チオ)イソシアネート化合物(F)が含まれていてもよい。本実施形態に係るポリ(チオ)イソシアネート化合物(F)とは、分子内に2以上の(チオ)イソシアナト基を有する化合物を意味する。
【0042】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、1,3,5−トリス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;
1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物;等を挙げることができる。
また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0043】
イソチオシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、リジンジイソチオシアネートメチルエステル、リジントリイソチオシアネート、m−キシリレンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソチオシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソチオシアナトエチル)ジスルフィド等の脂肪族ポリイソチオシアネート化合物;
イソホロンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、メチルシクロヘキサンジイソチオシアネート、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソチオシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソチオシアネート化合物;
トリレンジイソチオシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソチオシアネート、ジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソチオシアネート等の芳香族ポリイソチオシアネート化合物;
2,5−ジイソチオシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)チオフェン、2,5−イソチオシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソチオシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソチオシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソチオシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソチオシアナトメチル)−1,3−ジチオラン等の含硫複素環ポリイソチオシアネート化合物;等を挙げることができる。
また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
【0044】
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、さらに、その他の成分として、内部離型剤、樹脂改質剤、光安定剤、ブルーイング剤等を含んでいてもよい。
また、本実施形態の光学材料用重合性組成物は、架橋性を向上させる観点から、硫黄を含んでもよい。
【0045】
(内部離型剤)
内部離型剤としては、酸性リン酸エステルを用いることができる。酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。
例えば、STEPAN社製のZelecUN、三井化学社製のMR用内部離型剤、城北化学工業社製のJPシリーズ、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、大八化学工業社製のAP、DPシリーズ等、を用いることができる。
【0046】
(樹脂改質剤)
また、本実施形態の光学材料用重合性組成物には、得られる樹脂の光学物性、耐衝撃性、比重等の諸物性の調節及び、当該組成物の粘度やポットライフの調整を目的に、樹脂改質剤を本発明の効果を損なわない範囲で加えることができる。
樹脂改質剤としては、例えば、アルコール化合物、エポキシ化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等が挙げられる。
【0047】
(光安定剤)
光安定剤としては、たとえば、ヒンダードアミン系化合物を用いることができる。ヒンダードアミン系化合物は、市販品としてChemtura社製のLowilite76、Lowilite92、BASF社製のTinuvin144、Tinuvin292、Tinuvin765、ADEKA社製のアデカスタブLA−52、LA−72、城北化学工業社製のJF−95等を挙げることができる。
【0048】
(ブルーイング剤)
ブルーイング剤としては、可視光領域のうち橙色から黄色の波長域に吸収帯を有し、樹脂からなる光学材料の色相を調整する機能を有するものが挙げられる。ブルーイング剤は、さらに具体的には、青色から紫色を示す物質を含む。
【0049】
次に、本実施形態の光学材料用重合性組成物の組成について説明する。
本実施形態において、有機系色素(B)の含有量は、当該成分の効果を十分に発揮させる観点から、光学材料用重合性組成物100重量部に対し、たとえば0.0001〜0.1重量部であり、好ましくは0.0002〜0.01重量部であり、より好ましくは0.0005〜0.005重量部である。
また、紫外線吸収剤(C)の含有量は、当該成分の効果を十分に発揮させる観点から、光学材料用重合性組成物100重量部に対し、たとえば0.1〜1.0重量部であり、好ましくは0.2〜0.8重量部であり、より好ましくは0.3〜0.6重量部である。
【0050】
なお、本実施形態において他の添加成分の量は、通常、少量であるため、光学材料用重合性組成物100重量部は、「エピスルフィド化合物(A)、有機系色素(B)、紫外線吸収剤(C)と重合触媒(D)との合計100重量部」、または「エピスルフィド化合物(A)、有機系色素(B)、紫外線吸収剤(C)と重合触媒(D)と必要に応じて加えられる、ポリチオール化合物(E)の合計100重量部」、または「エピスルフィド化合物(A)、有機系色素(B)、紫外線吸収剤(C)と重合触媒(D)と必要に応じて加えられる、ポリ(チオ)イソシアネート化合物(F)の合計100重量部」、または「エピスルフィド化合物(A)、有機系色素(B)、紫外線吸収剤(C)と重合触媒(D)と必要に応じて加えられる、ポリチオール化合物(E)およびポリ(チオ)イソシアネート化合物(F)の合計100重量部」とすることもできる。
【0051】
[光学材料用重合性組成物の製造方法]
本実施形態の光学材料用重合性組成物は、上記の成分を所定の方法で混合することにより得ることができる。
組成物中の各成分の混合順序や混合方法は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されず、公知の方法で行うことができる。公知の方法としては、例えば、添加物を所定量含むマスターバッチを作製して、このマスターバッチを溶媒に分散・溶解させる方法などがある。
【0052】
本実施形態においては、以下の工程1、工程2を経ることにより、光学材料用重合性組成物を得ることが好ましい。
工程1:有機系色素(B)を重合触媒(D)に溶解し、混合溶液を得る。
工程2:エピスルフィド化合物(A)、紫外線吸収剤(C)および前記混合溶液を配合し、光学材料用重合性組成物を得る。
【0053】
ここで、本発明者らは、重合触媒(D)、とりわけアミン化合物は有機系色素(B)との相溶性が高いことを見出している。すなわち、これらを混合して混合溶液を調製することにより、有機系色素(B)を得られる樹脂に均一に分散させることができる。すなわち、本実施形態の混合溶液を用い、該混合溶液に他の成分を混合することにより、有機系色素(B)が均一に分散された光学材料用重合性組成物を得ることができ、結果として有機系色素(B)が均一に分散された光学材料を得ることができる。このように、本実施形態の混合溶液を用いることにより、紫外線や青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる光学材料を好適に得ることができる。
【0054】
なお、重合触媒(D)として、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンまたはN,N−ジメチルシクロヘキシルアミンと、有機系色素(B)として化学式(3)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体との組み合わせが好ましい。
この工程1において、有機系色素(B)は、重合触媒(D)の合計100重量部に対して0.01〜5.0重量部、好ましくは0.5〜3.0重量部となる量で含むことができる。
この工程1における混合温度は、5〜40℃、好ましくは、10〜30℃とすることができる。添加順序、添加速度は、各成分を均一に混合することができれば特に限定されない。混合時間についても、上記観点から、5〜120分、好ましくは、30〜60分とすることができる。混合時の圧力条件は特に制限されず、常圧下でも、加圧下でも構わない。
このようにして得られた混合溶液(色素溶液)は、取扱いが容易であり、光学材料の生産性が向上する。
【0055】
その後、工程2において、エピスルフィド化合物(A)、紫外線吸収剤(C)および前記混合溶液を配合し、光学材料用重合性組成物を得ることができる。また、この工程2において、ポリチオール化合物(E)、ポリ(チオ)イソシアネート化合物(F)、その他各種添加剤を加えることができる。
また、前述の混合溶液に含まれる重合触媒(D)とは別に、この工程2において、別途重合触媒(D)を添加することもできる。
なお、この工程2における混合温度、混合時間については任意に設定できる。また、先述の工程1と同様の条件を採用してもよい。
【0056】
[光学材料]
続いて、本実施形態に係る光学材料について説明する。
本実施形態の光学材料は、前述の光学材料用重合性組成物を硬化(たとえば加熱硬化)させ、硬化物とすることにより得ることができる。
本実施形態で示す光学材料は、たとえば、光学材料用重合性組成物を注型重合する方法により得ることができる。
【0057】
具体的には、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールドのキャビティ内に光学材料用重合性組成物を注入する。この時、得られるプラスチックレンズに要求される物性によっては、必要に応じて、減圧下での脱泡処理や加圧、減圧等の濾過処理等を行うこともできる。
【0058】
そして、組成物が注入された後、レンズ注型用鋳型をオーブン中または水中等の加熱可能装置内で所定の温度プログラムにて加熱して硬化成型する。得られた成形体は、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
本実施形態の成形体(100重量部)は、紫外線吸収剤(C)を0.1〜0.8重量部、好ましくは0.2〜0.6重量部、より好ましくは0.3〜0.5重量部含むことができる。これにより、有害な紫外線から400〜420nm程度の青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる光学材料を好適に提供することができる。
本実施形態の成形体は、所望の形状とし、必要に応じて形成されるコート層や他の部材等を備えることにより、様々な光学材料として用いることができる。
【0059】
本実施形態の光学材料用重合性組成物から得られた光学材料は、透明性に優れるとともに着色が抑制され、さらに眼精疲労やストレスなどの障害を抑えることができる。特に440nmにおける光透過率が80%以上であることにより、無色透明の外観に優れた光学材料を得ることができる。
【0060】
[光学材料の用途]
次に、本実施形態の光学材料の用途について説明する。
本実施形態の光学材料は、特定の組成を含む重合性組成物から得られるものであり、とくに波長400nm〜420nmの光をカットし、透明性が高く、物性バランスに優れた光学材料である。
【0061】
本実施形態で示す光学材料としては、プラスチック眼鏡レンズ、ゴーグル、視力矯正用眼鏡レンズ、撮像機器用レンズ、液晶プロジェクター用フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、コンタクトレンズなどの各種プラスチックレンズ、発光ダイオード(LED)用封止材、光導波路、光学レンズや光導波路の接合に用いる光学用接着剤、光学レンズなどに用いる反射防止膜、液晶表示装置部材(基板、導光板、フィルム、シートなど)に用いる透明性コーティングまたは、車のフロントガラスやバイクのヘルメットに貼り付けるシートやフィルム、透明性基板等を挙げることができる。
【0062】
本実施形態で示す光学材料は、厚さ2mmにおいて、波長440nmの光透過率が80%以上、好ましくは83%以上であり、590nmの光透過率が70%以下、好ましくは50%以下であり、且つ410nmの光透過率が10%以下であり、好ましくは5%以下である。上記光透過率の範囲であれば、有害な紫外線から420nm程度の青色光の遮断効果が高く、無色透明で外観に優れる。また、440nmの光透過率を80%以上とすることにより、無色透明の外観に優れた光学材料を得ることができる。なお、これらの数値範囲は任意に組み合わせることができる。
【0063】
[プラスチック眼鏡レンズ]
本実施形態の光学材料を用いて、プラスチック眼鏡レンズを得ることができる。なお、必要に応じて、片面又は両面にコーティング層を施して用いてもよい。
【0064】
コーティング層として、具体的には、プライマー層、ハードコート層、反射防止層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層はそれぞれ単独で用いることも複数のコーティング層を多層化して使用することもできる。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても、異なるコーティング層を施してもよい。
【0065】
これらのコーティング層はそれぞれ、紫外線吸収剤(C)以外の公知の紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上する目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高めるための公知の添加剤を併用してもよい。塗布によるコーティングを行う層に関しては塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤を使用してもよい。
【0066】
以上、本発明を実施形態により説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の効果を損なわない範囲で様々な態様を取り得ることができる。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本発明の実施例において用いた評価方法は以下の通りである。
【0068】
<評価方法>
・光線透過率
測定機器として、島津製作所社製 島津分光光度計 UV−1600を使用し、2mm厚のプラノーレンズを用いて紫外−可視光スペクトル(380−800nm)を測定した。
・溶解性試験
調製した混合溶液(マスターバッチ)を20℃から40℃に昇温させ、混合撹拌し、所定時間経過後に粘度等の性状を確認した。性状が変化したものについては×、変化がなかったものについては○とした。また、所定時間経過後、一部を取り出し1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、フィルター上を確認した。フィルター上に化合物が残っているものについては×、残っていないものを〇とした。上記2つの確認方法において両方とも○のものを〇とし、どちらか1つあるいは2つとも×のものを×とした。
【0069】
[製造例1]
有機系色素である、化学式(3)で表されるテトラ−t−ブチル−テトラアザポルフィリン・銅錯体(製品名:PD−311S、三井化学(株)製) 1.0重量部をN,N−ジシクロヘキシルメチルアミン 100重量部に加え、40℃で5時間撹拌し、混合溶液(1)を作製した。
この混合溶液(1)とは別に、表1に示される各量比にて、PD−311SをN,N−ジシクロヘキシルメチルアミンに溶解させ、前述の溶解性試験を行った。結果は表1に示した通りである。
【0070】
[製造例2〜4]
N,N−ジシクロヘキシルメチルアミンを各化合物に変更した以外は製造例1と同様な方法で各種混合溶液を得た。作製した各種混合溶液について、溶解性試験を実施した。結果を表1に示す。
なお、表1に示される記号は、以下に示される化合物に対応するものである。
D−1:N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン
D−2:N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン
E−1:5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール化合物
A−1:ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド
【0071】
【表1】
【0072】
[実施例1]
製造例1で調製した混合溶液(1) 0.064重量部、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン 0.013重量部を5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール化合物6.4重量部に混合溶解させ、組成物(a)を得た。
次に、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製 TINUVIN326:最大吸収波長352nm)0.28 重量部、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド 63.6重量部を20℃で1時間攪拌し均一溶液を得た。この均一溶液に、組成物(a)を加えて20℃で攪拌し組成物(b)を得た。
この組成物(b)を600Paにて1時間脱泡を行い、1μmPTFEフィルターにて濾過を行った後、成型モールドに注入した。この成型モールドを重合オーブンに入れ、30℃〜80℃まで19時間かけて昇温して重合した。重合後、オーブンから取り出して成型モールドを冷却し、成型モールドから離型させ、2mm厚の成形体を得た。得られた成形体に120℃で3時間アニール処理を行った。
このアニール処理を行った成形体について、光透過率を測定した結果、波長440nmの光透過率が83.6%であり、420nmの光透過率が15.7%であり、410nmの光透過率が0.1%であり、590nmの光透過率が26.6%であった。実施例1において得られたスペクトルチャートを
図1に示した。
【0073】
[比較例1]
混合溶液(1)をN,N−ジシクロヘキシルメチルアミンに、2−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−メチルフェニル)−クロロベンゾトリアゾール(BASF社製 TINUVIN326:最大吸収波長352nm)0.28 重量部を2−(2-ヒドロキシ−5−t-ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(BASF社製 TINUVIN PS:最大吸収波長342nm)0.7重量部に変更した以外は実施例1と同様な方法で成形体を得た。
このアニール処理を行った成形体について、光透過率を測定した結果、波長440nmの光透過率が84.0%であり、420nmの光透過率が76.9%であり、410nmの光透過率が52.8%であり、590nmの光透過率が84.9%であった。比較例1において得られたスペクトルチャートを
図1に示した。
【0074】
この出願は、2015年9月16日に出願された日本出願特願2015−183427号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
1. エピスルフィド化合物(A)と、
有機系色素(B)と、
紫外線吸収剤(C)と、
重合触媒(D)と、を含有し、
有機系色素(B)は、当該有機系色素(B)のクロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、ピーク(P)の最大吸光係数を示すピーク頂点(Pmax)の吸光係数(ml/g・cm)が0.5×105以上であり、該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲である、光学材料用重合性組成物。
2. 前記エピスルフィド化合物(A)が以下の一般式(1)で表される化合物である、1.に記載の光学材料用重合性組成物。
(一般式(1)中、nは0または1を示す。)
3. 前記有機系色素(B)が、以下の一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物である、1.または2.に記載の光学材料用重合性組成物。
(一般式(2)中、A1〜A8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
4. 一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物において、Mが2価の銅原子である、3.に記載の光学材料用重合性組成物。
5. 前記テトラアザポルフィリン化合物が以下の化学式(3)で表される、3.または4.に記載の光学材料用重合性組成物。
(化学式(3)中、Cuは2価の銅を、t-C4H9はターシャリ−ブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は、一般式(2)におけるA1またはA2のいずれか、A3またはA4のいずれか、A5またはA6のいずれか、A7またはA8のいずれかである。)
6. 前記紫外線吸収剤(C)が、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む、1.〜5.のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物。
7. 前記重合触媒(D)が、アミン化合物である、1.〜6.のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物。
8. さらにポリチオール化合物(E)を含む、1.〜7.のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物。
9. 1.〜8.のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物の硬化物により構成される、光学材料。
10. 有機系色素(B)を重合触媒(D)に溶解して、混合溶液を得る工程と、
エピスルフィド化合物(A)、紫外線吸収剤(C)および前記混合溶液を混合し、光学材料用重合性組成物を得る工程と、を含み、
有機系色素(B)は、当該有機系色素(B)のクロロホルム又はトルエン溶液で測定された可視光吸収分光スペクトルにおいて、565nm〜605nmの間に主吸収ピーク(P)を有し、該ピーク(P)の最大吸光係数を示すピーク頂点(Pmax)の吸光係数(ml/g・cm)が0.5×105以上であり、該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/4の吸光度におけるピーク幅が50nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の1/2の吸光度におけるピーク幅が30nm以下であり、かつ該ピーク(P)のピーク頂点(Pmax)の吸光度の2/3の吸光度におけるピーク幅が20nm以下の範囲である、光学材料用重合性組成物の製造方法。
11. 前記エピスルフィド化合物(A)が以下の一般式(1)で表される化合物である、10.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
(一般式(1)中、nは0または1を示す。)
12. 前記有機系色素(B)が、以下の一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物である、10.または11.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
(一般式(2)中、A1〜A8は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、炭素数1〜20の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数1〜20のモノアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のジアルキルアミノ基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基、ヘテロアリール基、炭素数6〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基を表し、連結基を介して芳香族環を除く環を形成しても良く、Mは2個の水素原子、2価の金属原子、2価の1置換金属原子、4価の2置換金属原子、又はオキシ金属原子を表す。)
13. 一般式(2)で表されるテトラアザポルフィリン化合物において、Mが2価の銅原子である、12.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
14. 前記テトラアザポルフィリン化合物が以下の化学式(3)で表される、12.または13.に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
(化学式(3)中、Cuは2価の銅を、t-C4H9はターシャリ−ブチル基を表し、その4個の置換基の置換位置は、一般式(2)におけるA1またはA2のいずれか、A3またはA4のいずれか、A5またはA6のいずれか、A7またはA8のいずれかである。)
15. 前記紫外線吸収剤(C)が、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物を含む、10.〜14.のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
16. 前記重合触媒(D)が、アミン化合物である、10.〜15.のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
17. さらにポリチオール化合物(E)を含む、10.〜16.のいずれか一項に記載の光学材料用重合性組成物の製造方法。
18. 10.〜17.のいずれか一項に記載の製造方法により得られた光学材料用重合性組成物を加熱硬化する工程を含む、光学材料の製造方法。
19. 有機系色素(B)を重合触媒(D)に溶解した混合溶液。